特許第6180822号(P6180822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180822
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4402 20060101AFI20170807BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20170807BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20170807BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20170807BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A61K31/4402
   A61K31/4166
   A61K31/19
   A61P31/04
   A61P17/10
   A61K9/06
   A61K9/08
   A61K9/107
   A61P43/00 121
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-136618(P2013-136618)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-10061(P2015-10061A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100151828
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 将市
(74)【代理人】
【識別番号】100133651
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 慶子
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸子
【審査官】 新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−332237(JP,A)
【文献】 特開2007−308430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00−09/72
A61K 47/00−47/69
A61P 17/00
A61P 31/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イブプロフェンピコノール及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種、及び
(B)アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルリチン酸二カリウム、及びグリチルリチン酸モノアンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種の抗炎症剤
を含有し、(A)成分1重量部に対する(B)成分の配合割合が、0.01〜0.7重量部であり、pH8.0以下である、医薬組成物。
【請求項2】
(A)成分の含有量が、医薬組成物100重量%中、0.1〜10.0重量%である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
(B)抗炎症剤の含有量が、医薬組成物100重量%中、0.01〜5.0重量%である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
液剤、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤、乳化剤である、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
さらにpH調整剤を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
水中油型組成物である、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
抗菌作用を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
グラム陽性細菌に対する抗菌作用を有する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ニキビの治療及び/又は予防のために使用され得る、請求項1〜8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
外用組成物である、請求項1〜9のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物に関する。より詳細には、本発明は、優れた抗菌作用を有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
真菌や細菌といった雑菌が感染することにより引き起こされる疾患に対しては、従来から、その治療及び/又は予防のために、抗菌作用を示す物質が使用されている。また、健常人においても、皮膚に一般に存在する皮膚常在性細菌が種々の原因(例えば、体調の変化、ストレス、寒冷、乾燥、不適切な洗浄等)により異常増殖して皮膚に悪影響を及ぼすことがあり、このような場合にも抗菌作用を示す物質が用いられている。
【0003】
上記皮膚常在性細菌の異常増殖を一因とする皮膚疾患としては、例えば、尋常性ざ瘡(いわゆるニキビ)等がよく知られている。このニキビの原因菌となる上記皮膚常在性細菌としては、皮膚表面上に存在する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:以下、「S.aureus」ともいう)や皮膚の脂腺深部に存在するアクネ桿菌(Propionibacterium acnes:以下、「P.acnes」ともいう)等が知られている。例えば、思春期等でホルモンバランスが変化して皮脂が多量に分泌されると、或いはストレス等が原因で角層のターンオーバーが遅延し角質肥厚を生じさせて皮脂の排出が上手くいかなくなり皮脂が毛穴に詰まってくると、上記皮膚常在性細菌が皮脂を栄養として異常増殖し、皮脂を遊離脂肪酸に分解してコメドを生じさせる。また、この遊離脂肪酸が酸化されることで周囲に炎症を引き起こし、ニキビ症状は悪化の一途を辿ることになる。従って、ニキビの治療及び/又は予防には、先ず原因菌となる黄色ブドウ球菌やアクネ桿菌の異常増殖を抑えることが重要である。
【0004】
これまでのニキビの治療薬としては、局所的な抗菌剤であるクリンダマイシン等の抗生物質やアゼライン酸等が用いられている。また、消炎・鎮痛作用を有する非ステロイド剤の一種であるイブプロフェンピコノールも、ニキビの治療薬として知られている(特許文献1及び非特許文献1〜2参照)。このイブプロフェンピコノールは、アクネ桿菌によって引き起される白血球遊走を阻止する作用、アクネ桿菌由来のリパーゼ活性を阻害する作用等を作用機序として消炎・鎮痛作用を発揮し、ニキビ症状を改善することが知られている。しかし、イブプロフェンピコノールは抗菌作用を殆ど有さない。例えば非特許文献2には、イブプロフェンピコノールは、in vitroで各種の真菌・細菌に対して一部に弱い作用を示すものの、抗菌作用は殆ど有さないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−223118号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】早川律子ら、西日本皮膚科、47巻5号、p899〜908、1985年
【非特許文献2】谷口恭章ら、西日本皮膚科、47巻5号、p888〜898、1985年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術に鑑みてなされたものであり、優れた抗菌作用を有するイブプロフェンピコノール含有医薬組成物を提供することを目的とする。さらに本発明は、製剤中のイブプロフェンピコノールの安定性にも優れたイブプロフェンピコノール含有医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のpH条件下で、イブプロフェンピコノール及び/又はその塩と抗炎症剤とを組み合わせて用いることにより、両成分の作用が相俟って優れた抗菌作用を発揮し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。さらに本発明者は検討を重ね、両成分を組み合わせることにより、イブプロフェンピコノールの製剤中の安定性も高められることを見出した。
【0009】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0010】
<1>(A)イブプロフェンピコノール及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、「(A)成分」ともいう)、及び(B)(A)成分以外の抗炎症剤(以下、「(B)抗炎症剤」ともいう)を含有し、pH8.0以下である、医薬組成物。
【0011】
<2>(B)抗炎症剤が、アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、イプシロンアミノカプロン酸、アズレン、グアイアズレン及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種である、<1>に記載の医薬組成物。
【0012】
<3>(A)成分の含有量が、医薬組成物100重量%中、0.1〜10.0重量%である、<1>又は<2>に記載の医薬組成物。
【0013】
<4>(B)抗炎症剤の含有量が、医薬組成物100重量%中、0.01〜5.0重量%である、<1>〜<3>のいずれかに記載の医薬組成物。
【0014】
<5>(A)成分1重量部に対して、(B)抗炎症剤を0.01〜5重量部の割合で含有する、<1>〜<4>のいずれかに記載の医薬組成物。
【0015】
<6>水中油型組成物である、<1>〜<5>のいずれかに記載の医薬組成物。
【0016】
<7>抗菌作用を有する、<1>〜<6>のいずれかに記載の医薬組成物。
【0017】
<8>グラム陽性細菌に対する抗菌作用を有する、<7>に記載の医薬組成物。
【0018】
<9>ニキビの治療及び/又は予防のために使用され得る、<1>〜<8>のいずれかに記載の医薬組成物。
【0019】
<10>外用組成物である、<1>〜<9>のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた抗菌作用を有するイブプロフェンピコノール含有医薬組成物を提供することができる。さらに本発明は、製剤中のイブプロフェンピコノールの安定性にも優れたイブプロフェンピコノール含有医薬組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
[医薬組成物]
本発明の医薬組成物は、(A)成分及び(B)抗炎症剤を含有し、pH8.0以下である。当該医薬組成物は、上記特定のpH条件下で、抗炎症剤である(A)成分に加えて、(A)成分以外の抗炎症剤である(B)抗炎症剤を含有すること、即ち、上記特定の抗炎症剤を組み合わせることで、優れた抗菌作用を発揮することができる。また、当該医薬組成物は、(B)抗炎症剤を併用することで、(A)成分の製剤中の安定性を向上させることもできる。当該医薬組成物は、本発明の各効果が高められると共に、ニキビに対してより有効な治療及び/又は予防効果を発揮させ得るという観点から、(C)成分を含有してもよく、さらに本発明の効果を損なわない限り、その他の成分等を含有してもよい。以下、当該医薬組成物の必須成分である(A)成分及び(B)抗炎症剤、必要に応じて添加する(C)成分、並びにその他の成分等について詳述する。
【0022】
<(A)成分>
(A)成分は、イブプロフェンピコノール及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種である。(A)成分は、単独では、抗菌作用を殆ど示さないが、当該医薬組成物において(B)抗炎症剤と併用することにより、特定のpH条件下、相乗的に作用して優れた抗菌作用を示す。
【0023】
本発明におけるイブプロフェンピコノールは、通常の医薬品に使われるものであればよく、例えば日本薬局方医薬品規格収載品を使用することができる。イブプロフェンピコノールの塩としては、例えば、硫酸、塩酸又はリン酸等の鉱酸の塩、マレイン酸又はメタンスルホン酸等の有機酸の塩、ナトリウム又はカリウム等のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられる。イブプロフェンピコノール及び/又はその塩は、合成によって入手してもよく、市販品を用いてもよい。
【0024】
本発明の医薬組成物における(A)成分の含有量は、特に制限されないが、本発明の効果発現の観点から、医薬組成物100重量%中、0.1〜10.0重量%が好ましく、0.1〜5.0重量%であることがより好ましく、0.5〜3.0重量%であることがさらに好ましい。
【0025】
<(B)抗炎症剤>
(B)抗炎症剤は、(A)成分以外の抗炎症剤、即ちイブプロフェンピコノール及びその塩以外の抗炎症剤である。(B)抗炎症剤は、単独では、抗菌作用を殆ど示さないが、本発明の医薬組成物において(A)成分と併用することにより、特定のpH条件下、相乗的に作用して優れた抗菌作用を示す。さらに、当該医薬組成物において(B)抗炎症剤は、(A)成分の安定性を向上させる効果も奏する。
【0026】
(B)抗炎症剤としては、上述のような抗炎症剤であり、かつ特定のpH条件下に(A)成分と相乗的に作用して抗菌作用を示す化合物であれば特に限定されないが、(A)成分との相乗作用に優れるという観点から、アラントイン及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、サリチル酸誘導体、アミノカプロン酸、アズレン及びその誘導体、酸化亜鉛、酢酸トコフェロール、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン並びにこれらの塩が好ましい。中でも、アラントイン及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、サリチル酸誘導体、アミノカプロン酸、アズレン及びその誘導体、並びにこれらの塩がより好ましく、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、イプシロンアミノカプロン酸、アズレン、グアイアズレン及びこれらの塩がさらに好ましく、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、イプシロンアミノカプロン酸、アズレン、グアイアズレン及びこれらの塩がさらにより好ましく、アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、及びグリチルリチン酸モノアンモニウムが特に好ましい。当該医薬組成物における(A)成分の安定性も考慮すると、アラントイン及びグリチルレチン酸が最も好ましい。
なお、ここで「誘導体」とは、記載の化合物のエステル、エーテル、アルキル化物、配糖体等をいう。またここで「塩」とは、例えば、硫酸、塩酸又はリン酸等の鉱酸の塩、マレイン酸又はメタンスルホン酸等の有機酸の塩、ナトリウム又はカリウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等をいう。また、本発明において、(B)抗炎症剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明の医薬組成物における(B)抗炎症剤の含有量は、特に制限されないが、本発明の効果発現の観点から、医薬組成物100重量%中、0.01〜5.0重量%が好ましく、0.01〜3.0重量%であることがより好ましく、0.01〜2.0重量%であることがさらに好ましい。
【0028】
当該医薬組成物における(A)成分と(B)抗炎症剤との含有割合については、特に制限されないが、(A)成分1重量部に対して、(B)抗炎症剤が0.01〜5重量部が好ましく、0.01〜1重量部であることがより好ましく、0.01〜0.7重量部であることがさらに好ましい。上記含有割合であれば、当該医薬組成物において、(A)成分と(B)抗炎症剤とが相乗的に作用して優れた抗菌作用を発揮することができる。また、上記のような含有割合とすることにより、(A)成分の製剤中の安定性をも著しく向上させることができる。
【0029】
<(C)成分>
(C)成分は、清涼化剤、殺菌剤、ビタミン類、及び有機酸からなる群より選択される少なくとも1種である。本発明の医薬組成物に清涼化剤を配合した場合には、皮膚の引き締め効果による使用感向上や殺菌力向上が期待される。殺菌剤を配合した場合には、ニキビ等を悪化させる菌の異常増殖をさらに高度に抑制できることが期待される。ビタミン類を配合した場合には、皮脂腺の機能亢進を抑制する作用が期待される。そして、有機酸を配合した場合には、肌へのピーリング効果でターンオーバーを促進し、角質肥厚を改善して皮脂の排出促進に繋がることが期待される。従って、このような(C)成分を配合することによって、抗菌作用や(A)成分の製剤中の安定性が高められるだけでなく、使用感改善の他、ニキビに対する治療及び/又は予防効果も高められた医薬組成物とすることができる。
【0030】
上記清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、アネトール、リモネン、オイゲノール等のテルペン類(これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。);ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ウイキョウ油、ハッカ油、ケイヒ油、ローズ油、テレビン油等の精油等が挙げられる。
【0031】
上記殺菌剤としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、クロルヘキシジン、サリチル酸、塩化ベンザルコニウム、アクリノール、エタノール、塩化ベンゼトニウム、クレゾール、グルコン酸及びその誘導体、ポピドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素、トリクロカルバン、トリクロサン、感光素101号、感光素201号、パラベン、フェノキシエタノール、1,2−ペンタンジオール、塩酸アルキルジアミノグリシン、ピロクトオラミン、ミコナゾール等が挙げられる。
【0032】
上記ビタミン類としては、水溶性ビタミン及び油溶性ビタミンのいずれであってもよく、例えば、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、5’−リン酸ピリドキサール、及びそれらの塩(例えば、塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、塩酸ピリドキサミン)等のビタミンB6類;パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール(パンテノール)、D−パンテサイン、D−パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル、及びそれらの塩等のパントテン酸類;ニコチン酸、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸メチル、ニコチン酸β−ブトキシエチル、ニコチン酸1−(4−メチルフェニル)エチル、ニコチン酸アミド、及びそれらの塩等のニコチン酸類;γ−オリザノール、チアミン、ジベンゾイルチアミン、チアミンセチル、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミントリリン酸エステル、及びそれらの塩(例えば、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、チアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チアミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チアミントリリン酸エステルモノリン酸塩)等のビタミンB1類;リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル、及びそれらの塩等のビタミンB2類;ビオチン、ビオシチン、及びそれらの塩等のビオチン類;葉酸、プテロイルグルタミン酸、及びそれらの塩等の葉酸類;シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン、及びそれらの塩等のビタミンB12類;アスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸−2−グルコシド、3−O−エチルアスコルビン酸等のアスコルビン酸誘導体、及びそれらの塩(例えば、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム)等の水溶性のビタミンC類;dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム等のビタミンE類;アスコルビゲン−A、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ジパルミチン酸L−アスコルビル、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル等の油溶性のビタミンC類;エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等のビタミンD類;フィロキノン、ファルノキノン等のビタミンK類;フェルラ酸等のビタミン様作用因子等が挙げられる。
【0033】
上記有機酸としては、例えば、グルコン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、クエン酸、グルタミン酸、コハク酸、シュウ酸、フマル酸、プロピオン酸、リンゴ酸、サリチル酸、グリコール酸、フィチン酸、酒石酸、酢酸、乳酸、及びこれらの塩が挙げられる。塩としては、例えば、硫酸、塩酸又はリン酸等の鉱酸の塩、マレイン酸又はメタンスルホン酸等の有機酸の塩、ナトリウム又はカリウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。なお、上記有機酸には、(B)抗炎症剤に該当する化合物は含まれないものとする。
【0034】
本発明の医薬組成物における(C)成分の含有量は、当該成分の効果発現の観点から、医薬組成物100重量%中、0.01〜5重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがより好ましい。
【0035】
<その他の成分>
本発明の医薬組成物は、以上説明した(A)成分及び(B)抗炎症剤を含有し、必要に応じて(C)成分を含有し、さらにその他、種々の目的に応じて、保湿成分、多価アルコール、スクラブ剤、紫外線吸収成分、紫外線散乱成分、収斂成分、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、洗浄成分、角質柔軟成分、細胞賦活化成分、老化防止成分、血行促進作用成分、美白成分等のその他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。中でも、多価アルコールを含有することが好ましい。なお、これらのその他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、その他の成分であって上記(C)成分としても挙げられているものは、本発明において(C)成分としての機能も果たす。
【0036】
上記保湿成分としては、例えば、ジグリセリントレハロース;ヒアルロン酸ナトリウム、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、キチン、キトサン等の高分子化合物;グリシン、アスパラギン酸、アルギニン等のアミノ酸;乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等の天然保湿因子;セラミド、コレステロール、リン脂質等の脂質;カミツレエキス、ハマメリスエキス、チャエキス、シソエキス等の植物抽出エキス等が挙げられる。
【0037】
上記多価アルコールとしては、炭素数2〜10のものが好ましく、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプレングリコール、1、3−ブチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオールが好ましく、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、イソプレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールがより好ましい。
【0039】
上記スクラブ剤としては、例えば、アプリコット核粉末、アーモンド殻粉末、アンズ核粉末、塩化ナトリウム粒、オリーブ核粉末、海水乾燥物粒、キャンデリラワックス、くるみ殻粉末、さくらんぼ核粉末、サンゴ粉末、炭粉末、はしばみ殻粉末、ポリエチレン末、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0040】
上記紫外線吸収成分としては、例えば、オクチルトリアゾン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸等が挙げられる。
【0041】
上記紫外線散乱成分としては、例えば、含水ケイ酸、ケイ酸亜鉛、ケイ酸セリウム、ケイ酸チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化鉄、無水ケイ酸等の無機化合物、これらの無機化合物を含水ケイ酸、水酸化アルミニウム、マイカやタルク等の無機粉体で被覆したり、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ナイロン等の樹脂粉体に複合化したもの、さらにシリコーン油や脂肪酸アルミニウム塩等で処理したもの等が挙げられる。
【0042】
上記収斂成分としては、例えば、硫酸亜鉛、塩化アルミニウム、スルホ石炭酸亜鉛、タンニン酸等が挙げられる。
【0043】
上記ペプチド又はその誘導体としては、例えば、ケラチン分解ペプチド、加水分解ケラチン、コラーゲン、魚由来コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン分解ペプチド、コラーゲン分解ペプチド、加水分解コラーゲン、塩化ヒドロキシプロピルアンモニウム加水分解コラーゲン、エラスチン分解ペプチド、コンキオリン分解ペプチド、加水分解コンキオリン、シルク蛋白分解ペプチド、加水分解シルク、ラウロイル加水分解シルクナトリウム、大豆蛋白分解ペプチド、加水分解大豆蛋白、小麦蛋白、小麦蛋白分解ペプチド、加水分解小麦蛋白、カゼイン分解ペプチド、アシル化ペプチド(パルミトイルオリゴペプチド、パルミトイルペンタペプチド、パルミトイルテトラペプチド等)等が挙げられる。
【0044】
上記アミノ酸又はその誘導体としては、例えば、ベタイン(トリメチルグリシン)、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、β−アラニン、スレオニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、タウリン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸、カルニチン、カルノシン、クレアチン等が挙げられる。
【0045】
上記洗浄成分としては、例えば、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム又はステアリン酸カリウム等のアルカリ金属塩、アルカノールアミド塩又はアミノ酸塩等から選ばれる石けん類;ココイルグルタミン酸Na、ココイルメチルタウリンNa等のアミノ酸系界面活性剤;ラウレス硫酸Na等のエーテル硫酸エステル塩;ラウリルエーテル酢酸Na等のエーテルカルボン酸塩;アルキルスルホコハク酸エステルNa等のスルホコハク酸エステル塩;ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド;ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム等のモノアルキルリン酸エステル塩;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等のベタイン型両性界面活性剤;ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0046】
上記角質柔軟成分としては、例えば、乳酸、サリチル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、フルーツ酸、フィチン酸、尿素、イオウ等が挙げられる。
【0047】
上記細胞賦活化成分としては、例えば、γ−アミノ酪酸等のアミノ酸類;レチノール、チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類等のビタミン類;グリコール酸、乳酸等のα−ヒドロキシ酸類;タンニン、フラボノイド、サポニン、感光素301号等が挙げられる。
【0048】
上記老化防止成分としては、例えば、パンガミン酸、カイネチン、ウルソール酸、ウコンエキス、スフィンゴシン誘導体、ケイ素、ケイ酸、N−メチル−L−セリン、メバロノラクトン等が挙げられる。
【0049】
上記血行促進作用成分としては、植物(例えば、オタネニンジン、アシタバ、アルニカ、イチョウ、ウイキョウ、エンメイソウ、オランダカシ、カミツレ、ローマカミツレ、カロット、ゲンチアナ、ゴボウ、コメ、サンザシ、シイタケ、ショウガ、セイヨウサンザシ、セイヨウネズ、センキュウ、センブリ、タイム、チョウジ、チンピ、トウガラシ、トウキ、トウニン、トウヒ、ニンジン、ニンニク、ブッチャーブルーム、ブドウ、ボタン、マロニエ、メリッサ、ユズ、ヨクイニン、リョクチャ、ローズマリー、ローズヒップ、チンピ、トウキ、トウヒ、モモ、アンズ、クルミ、トウモロコシ等)に由来する成分;アセチルコリン、イクタモール、カンタリスチンキ、ガンマーオリザノール、セファランチン、トラゾリン、ニコチン酸トコフェロール、グルコシルヘスペリジン等が挙げられる。
【0050】
上記美白成分としては、例えば、トコフェロール、トラネキサム酸等が挙げられる。
【0051】
<pH>
本発明の医薬組成物のpHは、(A)成分と(B)抗炎症剤とが相乗的に作用して抗菌作用を効果的に発揮できるような条件に調整する必要があり、具体的にはpH8.0以下である。上記抗菌作用の観点から好ましくはpH3.0〜8.0であり、より好ましくはpH3.5〜7.5である。なお、このpHは、例えば後述するpH調整剤の使用により調整することができる。
【0052】
<医薬組成物の製造方法>
本発明の医薬組成物の製造方法は特に制限されず、必須成分である(A)成分及び(B)抗炎症剤、必要に応じて配合される(C)成分の他、通常の、医薬組成物を製造するのに必要な各種成分(上記その他の成分、後述する基剤又は担体、添加剤等)を適宜選択、配合して、常法により製造することができる。なお、本発明の医薬組成物は乳化を行った組成物であってもよいし、可溶化させた組成物であってもよい。その場合水中油型でも油中水型のいずれでもよいが、本発明の効果発現の観点及び使用感(べたつき、のび、しっとり感等)の観点から水中油型の組成物であることが好ましい。
【0053】
<医薬組成物の用途>
本発明の医薬組成物は、以上説明したとおり、特定のpH条件下で(A)成分及び(B)抗炎症剤を含有することにより優れた抗菌作用を備えるため、各種の真菌や細菌が感染することにより引き起こされる疾患の治療や予防に使用することができる。当該医薬組成物は、細菌に対する抗菌作用、特にグラム陽性細菌に対する抗菌作用に優れ、中でもニキビの原因菌である黄色ブドウ球菌及びアクネ桿菌に対する抗菌作用に優れる。そのため当該医薬組成物は、ニキビの治療や予防のための皮膚外用剤として好適に使用することができる。特に特許文献1等に示される従来のイブプロフェンピコノール含有ニキビ治療薬では、イブプロフェンピコノールが抗菌作用を殆ど有していないが、本発明ではこれと(B)抗炎症剤とを特定のpH条件下に組み合わせることで抗菌作用をも発揮するので、より高い治療・予防効果が期待される。なお、本発明の医薬組成物の用法・用量等は特に制限されず、例えば皮膚外用剤として外皮へ用いられる。その適用量や用法は特に制限されず、また、使用対象の年齢や症状の程度等によって異なるが、通常、一日数回(例えば、朝と晩の一日2回程度)、適量(例えば、約0.01〜1g程度)を皮膚等の外皮(特に、症状の気になる患部、例えばニキビの発生する部位)に適用(例えば、塗布、噴霧、貼付)する等して用いることができる。
【0054】
<製剤>
本発明の医薬組成物は、その必須成分及び上記で説明したその他の成分等を、医薬品に通常使用される基剤又は担体、及び必要に応じて、後述する添加剤と共に常法に従い混合して、必要に応じて乳化又は可溶化を行い、各種の製剤形態の医薬組成物とすることができる。
【0055】
上記基剤又は担体としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ゲル化炭化水素(プラスチベース等)、オゾケライト、α−オレフィンオリゴマー、軽質流動パラフィン等の炭化水素;メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性分岐シリコーン、ポリグリセリン変性分岐シリコーン、アクリルシリコーン、フェニル変性シリコーン、シリコーンレジン等のシリコーン油;ヤシ油、オリーブ油、コメヌカ油、シアバター等の油脂;ホホバ油、ミウロウ、キャンデリラロウ、ラノリン等のロウ類;セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、フィトステロール、コレステロール等の高級アルコール;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;カラギーナン;ポリビニルブチラート;ポリエチレングリコール;ジオキサン;ブチレングリコールアジピン酸ポリエステル;アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット等のエステル類;デキストリン、マルトデキストリン等の多糖類;カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル;水等が挙げられる。本発明の医薬組成物が多価アルコールを含む場合、多価アルコールは基剤又は担体としての役割も果たす場合がある。中でも、本発明の医薬組成物は水及び/又は低級アルコールを含むものとすることが好ましく、水を含むものとすることがより好ましい。このように水分を含有する製剤は一般に、(A)成分を不安定にさせてその含量低下を招くことが懸念されるが、本発明によればこのように水分を含む製剤であっても(A)成分の安定性を改善することができる。かかる観点に鑑みれば、本発明の医薬組成物は、医薬組成物100重量%中、水を30重量%以上含むものであってもよく、50重量%以上含むものであってもなおよい。
【0056】
本発明の医薬組成物が水及び低級アルコール以外の基剤又は担体を含む場合、上記基剤または担体としては、例えば、高級アルコール、炭化水素、油脂、エステル類、シリコーン油、ロウ類、ビニル系高分子が好ましく、高級アルコール、エステル油、シリコーン油、ビニル系高分子がより好ましい。これらの成分の中では、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジメチコン、シクロメチコン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、カルボキシビニルポリマーがさらに好ましい。
【0057】
以上説明した基剤又は担体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。またそれらの使用量は当業者に公知の範囲から適宜選択される。
【0058】
<製剤形態>
本発明の医薬組成物の製剤形態は特に限定されず、例えば、軟膏剤、液剤、懸濁剤、乳化剤(乳液及びクリーム)、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、パップ剤、エアゾール剤、固形剤等が挙げられる。これらのうち、液状〜半固体状の製剤形態が好ましく、特に、液剤、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤、乳化剤に適用すると有用である。これらの製剤は、常法、例えば第16改正日本薬局方製剤総則に記載の方法等に従い製造することができる。
【0059】
<添加剤>
本発明の医薬組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品に添加される公知の添加剤、例えば、界面活性剤、安定化剤、酸化防止剤、着色剤、パール光沢付与剤、分散剤、キレート剤、pH調整剤、保存剤、増粘剤、刺激低減剤等を添加することができる。中でも、界面活性剤、pH調整剤、増粘剤を添加することが好ましい。これらの添加剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0060】
上記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のいずれでもよく、例えば、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(HCO−40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(HCO−50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO−60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80等の硬化ヒマシ油誘導体;モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル;グリセリンアルキルエーテル;アルキルグルコシド;ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ステアリルアミン、オレイルアミン等のアミン類;ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等のシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、非イオン性界面活性剤が好ましく、硬化ヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがより好ましい。
【0061】
上記安定化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0062】
上記酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸、L−システイン塩酸塩等が挙げられる。
【0063】
上記着色剤としては、例えば、無機顔料、天然色素等が挙げられる。
【0064】
上記パール光沢付与剤としては、例えば、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコール等が挙げられる。
【0065】
上記分散剤としては、例えば、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸架橋コポリマー、有機酸等が挙げられる。
【0066】
上記キレート剤としては、例えば、EDTA・2ナトリウム塩、EDTA・カルシウム・2ナトリウム塩等が挙げられる。
【0067】
上記pH調整剤としては、例えば、無機酸(塩酸、硫酸等)、有機酸(乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム等)、無機塩基(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)等が挙げられる。中でも、無機塩基及び/又は有機塩基が好ましく、水酸化カリウム、トリエタノールアミンがより好ましい。
【0068】
上記保存剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0069】
上記増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等のビニル系増粘剤、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のセルロース系増粘剤、グアーガム、ペクチン、プルラン、ゼラチン、ローカストビーンガム、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリエチレングリコール、ベントナイト、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、マクロゴール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー等が挙げられる。これらのうち、ビニル系増粘剤、セルロース系増粘剤が好ましく、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースがより好ましい。
【0070】
上記刺激低減剤としては、例えば、甘草エキス、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されない。
【0072】
[試験1:抗菌作用試験]
<組成物の調製>
下記の表1〜4に記載の処方に従い、常法にて、各実施例及び比較例の水中油型乳化組成物を調製した。具体的には、先ず、油溶性成分と水溶性成分をそれぞれ別々に70〜80℃で混合溶解し、油相及び水相を調製した。次いで、用意した水相をディスパー(ロボミックス、プライミクス(株)製)で十分に攪拌しながら、そこに予め調製した油相を徐々に添加し、均一になるように十分に混合させながら、室温まで冷却した。トリエタノールアミンを適量添加することによりpHの調整を行い、各実施例及び比較例の組成物を得た。
【0073】
<試験方法>
調製した各実施例及び比較例の組成物について、第十六改正日本薬局方参考情報における保存効力試験方法に従って防腐作用を検討することにより抗菌作用を評価した。具体的には、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus;グラム陽性細菌)を用い、菌液を調製した。予め調製した各実施例及び比較例の組成物に、菌液を10〜10CFU/mLになるように接種し(最終接種菌数:約120000CFU/mL)、それを試験液として25℃で保管した。接種から8時間後の試験液50μLをサンプリングし、適宜希釈後、寒天平板表面塗抹法にて試験液中の菌数を測定し、生存菌数(log値)を求めた。結果を下記表1〜4に示す。なお、下記表1〜4において、「残量」とは組成物全体の量を100重量%とする量である。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
<評価>
各組成物のpHを4.5に揃えて試験した場合の結果(表1)を見ると、基剤のみの場合(比較例5)と、それに(B)抗炎症剤としてのアラントイン、グリチルリチン酸二カリウム又はグリチルレチン酸のみを添加した比較例1〜3、及び(A)成分としてのイブプロフェンピコノールのみを添加した比較例4では、生存菌数に大きな差は認められなかった。つまり、イブプロフェンピコノール又は上記抗炎症剤単独ではS.aureusに対する抗菌作用を殆んど有さないことが分かる。一方、全く予想外のことに、イブプロフェンピコノールと上記抗炎症剤とを組み合わせて配合した実施例1〜3の組成物では、生存菌数が大幅に減少した。なお、本実験条件下では、例えば抗菌作用を示すものを使用しない場合(本実験では比較例5)と比較してlog値で0.5以上の減少がある場合、顕著な抗菌作用を有していると判断できる。この結果から、pH4.5という条件のもと、イブプロフェンピコノールと上記抗炎症剤とが相乗的に作用して、顕著な抗菌作用を発揮し得ることが明らかとなった。また、各組成物のpHを5.5に揃えて試験した場合(表2)、及び各組成物のpHを7.5に揃えて試験した場合(表3)でも同様の傾向が認められた。
【0079】
一方、各組成物のpHを8.5に揃えて試験した場合(表4)には、イブプロフェンピコノールと上記抗炎症剤とを併用しても、イブプロフェンピコノール単独の場合と生存菌数に大きな差は認められなかった。以上の結果より、イブプロフェンピコノールと上記抗炎症剤とを組み合わせて相乗的な抗菌作用を発揮させるためには、特定のpH(pH8.0)以下の組成物とする必要があることが明らかとなった。
【0080】
[試験2:熱安定性試験]
<組成物の調製>
下記の表5に記載の処方に従い、常法にて、各実施例及び比較例の水中油型組成物(透明の可溶化ゲル)を調製した。具体的には、上記試験1の組成物の調製方法と同様の方法にて調製した。
【0081】
<試験方法>
各実施例及び比較例の組成物5gをそれぞれガラス製の容量10mLのねじ口ビンに充填し、60℃遮光下にて保存した。1週間後、各組成物を半日25℃にて室温まで冷ましてから、イブプロフェンピコノールの含量を下記定量条件下でHPLCにて定量した。下記表5には、上記保存前のイブプロフェンピコノールの初期含量を100%としたときの、イブプロフェンピコノールの残存率(%)を示した。
【0082】
(定量条件)
・検出器:紫外吸光光度計(測定波長:254nm)
・カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に、粒子径5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんしたカラム(Inertsil ODS2、GLサイエンス社製)を使用した。
・カラム温度:40℃付近の一定温度
・移動相:メタノール/pH4.0の酢酸・酢酸ナトリウム緩衝液混液(4:1)
【0083】
【表5】
【0084】
<評価>
上記表5に示される通り、イブプロフェンピコノールと抗炎症剤(アラントイン又はグリチルレチン酸)とを組み合わせて配合することにより、イブプロフェンピコノールの残存率の低下が抑制され、製剤的な安定性に優れた医薬組成物とすることができることが分かった。
【0085】
以下に、本発明の医薬組成物の製剤処方例を示す。
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
【0089】
【表9】