(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも3つの区間に区分した検出区間においてステッピングモータが発生する所定の基準しきい値を超える誘起信号を検出し、前記各区間において前記基準しきい値を超える誘起信号を検出したか否かを表すパターンに基づいて回転状況を検出する回転検出部と、
相互にエネルギが相違する複数種類の主駆動パルスの中から、前記回転検出部が検出した回転状況に応じた主駆動パルスを選択して前記ステッピングモータを駆動する制御部とを備え、
前記回転検出部は、前記複数の区間の中の最初の区間である第1区間において前記基準しきい値を超える誘起信号を検出しないときは、前記最初の区間以外の少なくとも一つの区間の終了位置を所定量後方にシフトして検出することを特徴とするステッピングモータ制御回路。
前記検出区間を、主駆動パルスによる駆動後の前記第1区間、前記第1区間よりも後の第2区間、前記第2区間よりも後の第3区間に区分し、主駆動パルスのランクを変更しない状態において、前記第1区間は前記ステッピングモータのロータを中心とする空間の第2象限において前記ロータの最初の正方向回転状況を判定する区間、前記第2区間は第2象限及び第3象限において前記ロータの最初の正方向回転状況を判定する区間、前記第3区間は第3象限において前記ロータの最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間であり、
前記回転検出部は、前記第1区間において前記基準しきい値を超える誘起信号を検出しない場合には、前記基準しきい値を超える誘起信号を検出した場合よりも前記第2区間の終了位置を所定量後方にシフトして検出することを特徴とする請求項1記載のステッピングモータ制御回路。
前記回転検出部は、前記第1区間において前記基準しきい値を超える誘起信号を検出しない場合に、前記第2区間の終了位置を所定量後方にシフトして前記第2区間の幅を広くすると共に前記検出区間の幅が変化しないように前記第3区間の幅を狭くして検出することを特徴とする請求項2記載のステッピングモータ制御回路。
前記回転検出部は、前記制御部が前記主駆動パルスによって前記ステッピングモータを駆動する度に、前記第1区間において前記基準しきい値を超える誘起信号を検出しない場合には前記基準しきい値を超える誘起信号を検出した場合よりも前記第2区間の終了位置を所定量後方にシフトして検出することを特徴とする請求項2又は3記載のステッピングモータ制御回路。
前記回転検出部は、前記最初の区間以外の少なくとも一つの区間の終了位置を所定量後方にシフトした後、前記最初の区間において前記基準しきい値を超える誘起信号を検出したときは、前記後方にシフトした区間の終了位置を元に戻して検出を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路。
前記回転検出部は、前記後方にシフトした区間の終了位置を元に戻して検出を行う場合において、主駆動パルスのランクアップが必要であることを示すパターンが所定回数得られたときは、前記所定回数得られるまでは主駆動パルスのランクを維持し、前記所定回数得られたとき前記元に戻した区間の終了位置を所定量後方にシフトして検出することを特徴とする請求項5記載のステッピングモータ制御回路。
前記回転検出部は、前記第1区間において前記基準しきい値を超える誘起信号を検出しない場合には前記第2区間の終了位置を後方の第2終了位置に設定して検出し、前記第1区間において前記基準しきい値を超える誘起信号を検出した場合には前記第2区間の終了位置を前記第2終了位置よりも前方の第1終了位置に設定すると共に前記第1区間と第2区間の境界を前記第1区間において前記基準しきい値を超える誘起信号を検出しない場合よりも後方の位置に設定して検出することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路。
前記回転検出部は、前記複数の区間中の最初の区間において前記基準しきい値を超える誘起信号を所定の複数回検出したときは、前記最初の区間の終了位置を後方に所定量シフトして以後の検出を行うことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路。
前記回転検出部は、前記最初の区間において前記基準しきい値を超える誘起信号を所定の複数回検出した場合に、前記最初の区間の終了位置を後方にシフトして前記最初の区間の幅を所定量広くすると共に前記検出区間の幅が変化しないように他の区間の幅を狭くして以後の検出を行うことを特徴とする請求項9記載のステッピングモータ制御回路。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の各実施の形態に係るステッピングモータ制御回路、前記ステッピングモータ制御回路を備えたムーブメント、前記ムーブメントを備えたアナログ電子時計に共通するブロック図で、アナログ電子腕時計の例を示している。
図1において、アナログ電子時計は、所定周波数の信号を発生する発振回路101、発振回路101で発生した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生する分周回路102、アナログ電子時計を構成する各電子回路要素の制御や駆動パルスの変更制御等の制御を行う制御回路103、制御回路103からの制御信号に基づいてモータ回転駆動用の駆動パルスを選択し出力する駆動パルス選択回路104、駆動パルス選択回路104からの駆動パルスによって回転駆動されるステッピングモータ105、ステッピングモータ105によって回転駆動され時刻を表示するための時刻針(
図1の例では時針107、分針108、秒針109の3種類)や日にち表示用のカレンダ表示部110を有するアナログ表示部106を備えている。
【0013】
また、アナログ電子時計は時計ケース113を備えており、時計ケース113の外面側にアナログ表示部106が配設され又、時計ケース113の内部にはムーブメント114が配設されている。
また、アナログ電子時計は、ステッピングモータ105の自由振動によって発生し回転状況を表す誘起信号VRsを所定の検出区間Tにおいて検出する回転検出回路111、回転検出回路111が所定の基準しきい電圧(基準しきい値)Vcompを超える誘起信号VRsを検出した時刻と複数の区間とを比較して前記誘起信号VRsがどの区間において検出されたのかを判別し、回転の有無や負荷に対する駆動パルスの駆動エネルギの余裕の程度といったステッピングモータ105の回転状況を表す検出信号を出力する負荷検出回路112を有している。
尚、本発明の各実施の形態では後述するように、ステッピングモータ105が回転したか否かを検出する検出区間Tは複数の区間に区分している。
【0014】
回転検出回路111は、前記特許文献1に記載された回転検出回路と同様の原理を利用して誘起信号VRsを検出する構成のものであり、ステッピングモータ105が回転した場合等のように回転動作が一定速度を超える場合には所定の基準しきい電圧Vcompを越える誘起信号VRsが発生し、モータ105が回転しなかった場合等のように回転動作が一定速度以下の場合には誘起信号VRsが基準しきい電圧Vcompを越えないように基準しきい電圧Vcompが設定されている。
負荷検出回路112は、前記複数の区間の中の最初の区間において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが検出されないときは、前記最初の区間以外の少なくとも一つの区間の終了位置を所定量後方にシフトして、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号が検出された区間を判定する。
【0015】
発振回路101、分周回路102、制御回路103、駆動パルス選択回路104、ステッピングモータ105、回転検出回路111及び負荷検出回路112はムーブメント114の構成要素である。
一般に、時計の動力源、時間基準などの装置からなる時計の機械体をムーブメントと称する。電子式のものをモジュールと呼ぶことがある。時計としての完成状態では、ムーブメントには文字板、針が取り付けられ、時計ケースの中に収容される。
【0016】
ここで、発振回路101及び分周回路102は信号発生部を構成し、アナログ表示部106は時刻表示部を構成している。回転検出回路111及び負荷検出回路112は回転検出部を構成している。制御回路103及び駆動パルス選択回路104は制御部を構成している。また、発振回路101、分周回路102、制御回路103、駆動パルス選択回路104、回転検出回路111及び負荷検出回路112はステッピングモータ制御回路を構成している。
【0017】
図2は、本発明の各実施の形態で使用するステッピングモータ105の構成図で、アナログ電子時計で一般に用いられている時計用ステッピングモータの例を示している。
図2において、ステッピングモータ105は、ロータ収容用貫通孔203を有するステータ201、ロータ収容用貫通孔203に回転可能に配設されたロータ202、ステータ201と接合された磁心208、磁心208に巻回されたコイル209を備えている。ステッピングモータ105をアナログ電子時計に用いる場合には、ステータ201及び磁心208はネジ(図示せず)によって地板(図示せず)に固定され、互いに接合される。コイル209は、第1端子OUT1、第2端子OUT2を有している。
【0018】
ロータ202は、2極(S極及びN極)に着磁されている。磁性材料によって形成されたステータ201の外端部には、ロータ収容用貫通孔203を挟んで対向する位置に複数(
図2ではの例では2個)の切り欠き部(外ノッチ)206、207が設けられている。各外ノッチ206、207とロータ収容用貫通孔203間には可飽和部210、211が設けられている。
【0019】
可飽和部210、211は、ロータ202の磁束によっては磁気飽和せず、コイル209が励磁されたときに磁気飽和して磁気抵抗が大きくなるように構成されている。ロータ収容用貫通孔203は、輪郭が円形の貫通孔の対向部分に複数(
図2の例では2つ)の半月状の切り欠き部(内ノッチ)204、205を一体形成した円孔形状に構成されている。
【0020】
切り欠き部204、205は、ロータ202の停止位置を決めるための位置決め部を構成している。コイル209が励磁されていない状態では、ロータ202は、
図2に示すように前記位置決め部に対応する位置、換言すれば、ロータ202の磁極軸Aが、切り欠き部204、205を結ぶ線分と直交するような位置(角度θ0位置)に安定して停止している。ロータ202の回転軸(回転中心)を中心とするXY座標空間を4つの象限(第1象限I〜第4象限IV)に区分している。
【0021】
いま、駆動パルス選択回路104から矩形波の駆動パルスをコイル209の端子OUT1、OUT2間に供給して(例えば、第1端子OUT1側を正極、第2端子OUT2側を負極)、
図2の矢印方向に電流iを流すと、ステータ201には破線矢印方向に磁束が発生する。
これにより、可飽和部210、211が飽和して磁気抵抗が大きくなり、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は
図2の矢印方向に180度回転し、磁極軸が角度θ1位置で安定的に停止する。
尚、ステッピングモータ105を回転駆動することによって通常動作(本発明の各実施の形態はアナログ電子時計であるため運針動作)を行わせるための回転方向(
図2では反時計回り方向)を正方向とし、その逆(時計回り方向)を逆方向としている。
【0022】
次に、駆動パルス選択回路104から、逆極性の矩形波の駆動パルスをコイル209の端子OUT1、OUT2に供給して(前記駆動とは逆極性となるように、第1端子OUT1側を負極、第2端子OUT2側を正極)、
図2の反矢印方向に電流を流すと、ステータ201には反破線矢印方向に磁束が発生する。
これにより、可飽和部210、211が先ず飽和し、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は前記と同一方向(正方向)に180度回転し、磁極軸が角度θ0位置で安定的に停止する。
【0023】
以後、このように、コイル209に対して極性の異なる信号(交番信号)を供給することによって、前記動作が繰り返し行われて、ロータ202を180度ずつ矢印方向に連続的に回転させることができるように構成されている。尚、本発明の各実施の形態では、駆動パルスとして、相互にエネルギの異なる複数の主駆動パルスP11〜P1n及び前記各主駆動パルスP1よりもエネルギの大きい補正駆動パルスP2を用いている。
制御回路103は、基本的には、相互に極性の異なる主駆動パルスP1で交互に駆動することによってステッピングモータ105を回転駆動し、主駆動パルスP1で回転できなかった場合には、当該主駆動パルスP1と同極性の補正駆動パルスP2で回転駆動する。
【0024】
図3は、本発明の実施の形態において、主駆動パルスP1によってステッピングモータ105を駆動した場合のタイミング図で、負荷に対する主駆動パルスP1のエネルギの余裕度を表す状態、ロータ202の回転挙動、誘起信号VRsの発生タイミング、回転状況を表す誘起信号VRsのパターン(各区間T1〜T3における誘起信号VRsの判定値)を示している。
図3において、P1は主駆動パルスP1の駆動範囲を表すと共にロータ202が主駆動パルスP1によって回転駆動される範囲を表し、又、a〜eは主駆動パルスP1の駆動停止後の自由振動によるロータ202の回転位置を表す領域である。
【0025】
主駆動パルスP1による駆動後にステッピングモータの回転状況を検出するための検出区間Tが設けられており、検出区間Tは、最初の所定時間を区間T1(最初の区間である第1区間)、区間T1よりも後の所定時間を区間T2(第2区間)、区間T2よりも後の所定時間を区間T3(第3区間)に区分されている。
検出区間Tにおいて誘起信号VRsを検出する場合、回転検出回路111は所定のサンプリング周期で誘起信号VRsをサンプリングすることによって誘起信号VRsを検出するように構成されている。検出区間Tは複数のサンプリング周期によって構成されており、前記各サンプリング周期において誘起信号VRsをサンプリングすることにより、複数の時点で誘起信号VRsが検出される。
【0026】
このように、主駆動パルスP1による駆動後から始まる検出区間T全体を3つ以上の区間(本実施の形態では3つの区間(区間T1、区間T2、区間T3)に区分している。尚、本実施の形態では、主駆動パルスP1による駆動後の誘起信号VRsを回転状況の判定に用いない区間(マスク区間)は設けていない。
ロータ202を中心として、その回転によってロータ202の主磁極Aが位置するXY座標空間を第1象限I〜第4象限IVに区分した場合、通常負荷を駆動する際の主駆動パルスP1のエネルギの余裕の大きさ(エネルギ余裕度)に応じて、区間T1、区間T2、区間T3は次のように表すことができる。ここで、通常負荷とは通常時に駆動される負荷を意味しており、本実施の形態では、軽い所定重量の時刻針(時針107、分針108、秒針109)を駆動する場合の負荷を通常負荷としている。
【0027】
また
図3において、エネルギ状態が「通常針で十分なエネルギ状態」、「ややエネルギ低い状態」、「かなりエネルギ低い状態」、「非回転状態」は、軽い所定重量の時刻針(通常針)を用いて回転駆動したときのタイミング図であり、エネルギ状況が「搭載針大の状態」は、時刻針を通常針よりも重量あるいはモーメントの大きい時刻針を用いて回転駆動したときのタイミング図である。
【0028】
負荷に対する主駆動パルスP1のエネルギ状態が「ややエネルギ低い状態」(主駆動パルスP1のランクアップやランクダウンは行わず主駆動パルスP1を変更しなくてもステッピングモータ105を回転させることが可能な状態(ランク維持)であり、誘起信号VRsのパターン(1,1,0/1)が得られる状態)において、区間T1はロータ202を中心とする空間の第2象限IIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T2は第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。
【0029】
尚、誘起信号VRsのパターンにおいて、所定の基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが検出された場合を「1」、所定の基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが検出されなかった場合を「0」として表し、「0/1」は誘起信号VRsが所定の基準しきい電圧Vcompを超えても超えなくてもどちらでもよいことを表している。
【0030】
エネルギ状態が「ややエネルギが低い状態」よりも所定量減少した「かなりエネルギが低い状態」(ステッピングモータ105を回転させることはできるが、安定してステッピングモータ105を回転させるには主駆動パルスP1のランクアップが必要な状態であり、誘起信号パターン(1,0,1)が得られる状態)において、区間T1はロータ202を中心とする空間の第2象限IIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T2は第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況及び最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。
【0031】
負荷に対する主駆動パルスのエネルギが、搭載針が大で十分なエネルギ状態の可能性が有る場合、即ち、区間T1が「0」の場合には、区間T2の終了位置Tcompを所定量後方(区間T3側)へシフトし、「ややエネルギが低い状態」等の各状態よりも区間T2の幅が所定量広くなるようにして回転状況を検出する。
即ち、負荷に対する主駆動パルスのエネルギが「通常針で十分なエネルギ状態」(主駆動パルスP1を1ランク小さいエネルギの主駆動パルスP1に変更(ランクダウン)した場合でもステッピングモータ105を回転させることが可能な状態であり、誘起信号パターン(0,1,0)が得られる状態)、「搭載針大で十分なエネルギ状態」(主駆動パルスP1を1ランク小さいエネルギの主駆動パルスP1にランクダウンした場合でもステッピングモータ105を回転させることが可能な状態であり、誘起信号パターン(0,1,0)が得られる状態)、及び、「かなりエネルギ低い状態」(今回の駆動ではステッピングモータを回転させることはできたが回転させることができなくなる可能性があるため主駆動パルスP1を1ランクアップする必要がある状態であり、誘起信号パターン(0,0,1)が得られる状態)においては、検出区間T(区間T1、T2、T3を合計した区間)の幅は前述した「ややエネルギが低い状態」等の各状態と同じであるが、区間T2の終了位置Tcompがこれらの状態のときに用いる区間T2よりも所定量後方にシフトさせて回転状況を検出する。
尚、検出区間Tの幅は必ずしも一定にする必要はなく、区間T2の終了位置Tcompを所定量シフトした場合の幅と所定量シフトしない場合の幅を変えるようにしてもよい。
【0032】
エネルギ状態が「かなりエネルギが低い状態」の中の最もエネルギが低い状態(誘起信号パターン(0,0,1)が得られる状態)において、区間T1はロータ202を中心とする空間の第2象限IIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T2は第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況及び最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。
【0033】
一方、負荷に対する主駆動パルスP1のエネルギが「通常針で十分なエネルギ状態」において、区間T1はロータ202を中心とする空間の第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T2は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況及び最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転後の回転状況を判定する区間である。
【0034】
負荷に対する主駆動パルスのエネルギが「通常針で十分なエネルギ」よりも所定量小さい「搭載針大で十分なエネルギ状態」において、区間T1はロータ202を中心とする空間の第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T2は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況及び最初の逆方向回転の回転状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。
【0035】
Vcompはステッピングモータ105で発生する誘起信号VRsの電圧レベルを判定する基準しきい電圧であり、ステッピングモータ105が回転した場合等のようにロータ202が所定速度を超える速い動作を行った場合には誘起信号VRsが基準しきい電圧Vcompを超え、回転しない場合等のようにロータ202が所定速度を超える速い動作を行わない場合には誘起信号VRsが基準しきい電圧Vcompを超えないように基準しきい電圧Vcompは設定されている。
【0036】
図4は本発明の第1の実施の形態の動作をまとめて区間T2の終了位置Tcompを変更する前と後で示した判定チャートである。
図4において、前述したとおり、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出した場合を判定値「1」、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出できなかった場合を判定値「0」と表している。また、「0/1」は、判定値が「1」、「0」のどちらでもよいことを表している。
【0037】
図4に示すように、回転検出回路111が基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsの有無を検出し、負荷検出回路112が前記誘起信号VRsの検出時期(区間)を判定したパターンに基づいて、制御回路103内部に記憶した
図4の判定チャートを参照して、制御回路103及び駆動パルス選択回路104は主駆動パルスP1のランクアップやランクダウンあるいは補正駆動パルスP2による駆動等のパルス制御を行ってステッピングモータ105を回転制御する。
【0038】
例えば、制御回路103は、パターン(0/1,0,0)の場合、ステッピングモータ105が回転していない(非回転)と判定して、補正駆動パルスP2によってステッピングモータ105を駆動するように駆動パルス選択回路104を制御した後、次回駆動時に1ランク上の主駆動パルスP1にランクアップして駆動するように駆動パルス選択回路104を制御する。
制御回路103は、パターン(0,1,0/1)の場合、通常針で十分なエネルギ状態の回転と判定して、この状態が所定回数(N回)連続して行われた場合には主駆動パルスP1の駆動エネルギをランクダウンするようにパルス制御を行う。
【0039】
図4「変更前」に示すように区間T1が「0」の場合でも区間T2の幅を変えないときには、パターン(0,0,1)が得られる場合、「搭載針大で十分なエネルギの状態」なのか「かなりエネルギ低い状態」なのか判別できないが、本実施の形態の
図4「変更後」に示すように、区間T1が「0」の場合に区間T2の終了位置Tcompを変えることにより、「搭載針大で十分なエネルギの状態」のときにはパターン(0,1,0)が得られ、「かなりエネルギ低い状態」のときにはパターン(0,0,1)が得られるため、適正な主駆動パルスP1を用いた回転駆動が行われることになる。
図5は、本発明の第1の実施の形態の動作を示すフローチャートであり、主として制御回路103の処理を示すフローチャートである。
【0040】
以下、
図1〜
図5を参照して、本発明の実施の形態の動作を詳細に説明する。
図1において、発振回路101は所定周波数の基準クロック信号を発生し、分周回路102は発振回路101で発生した前記信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生し、制御回路103に出力する。
【0041】
制御回路103は、前記時計信号を計数して計時動作を行い、先ず主駆動パルスP1nのエネルギランクnを1にすると共に回数Nを0にして(
図5のステップS501)、最小パルス幅の主駆動パルスP11でステッピングモータ105を回転駆動するように制御信号を出力する(ステップS502、S503)。開始時に確実に動作させたい場合は、開始時のエネルギランクをP11より大きいエネルギのパルスに設定しても良いが、本実施の形態では、P11とする。
【0042】
駆動パルス選択回路104は、制御回路103からの制御信号に対応する主駆動パルスP11を選択してステッピングモータ105を回転駆動する。ステッピングモータ105は主駆動パルスP11によって回転駆動されて、時刻針107〜109(日付が変わるときにはカレンダ表示部110)を回転駆動する。これにより、ステッピングモータ105が正常に回転した場合には、表示部106では、時刻針107〜109によって現在時刻が表示される。また、カレンダ表示部110によって今日の日付が表示される。
【0043】
主駆動パルスP11による駆動後の検出区間Tにおいて、回転検出回路111は所定の基準しきい電圧Vcompを超えるステッピングモータ105の誘起信号VRsを検出し又、負荷検出回路112は前記誘起信号VRsの検出時刻tは区間T1内と判定したか否かの判定結果(即ち、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが区間T1内で検出したか否かの判定結果)を表す検出信号を制御回路103に出力する。制御回路103は、負荷検出回路112からの検出信号に基づいて、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが区間T1内で検出されたか否かの判定を行う(ステップS504)。
【0044】
負荷検出回路112は、処理ステップS504において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T1内で検出していないと判定した場合には(パターンが(0,x,x)の場合である。但し判定値「x」は判定値が「1」か「0」かについて問わないことを意味する。)、区間T2の終了位置Tcompを終了位置(第1終了位置)Tcomp1から後方(区間T3側)の終了位置(第2終了位置)Tcomp2へ所定量シフトさせて、区間T2の幅を広くする(ステップS505)。
尚、負荷検出回路112の区間の変更は、負荷検出回路112自身が行うように構成してもよく又、制御回路103が負荷検出回路112の区間を変更するように制御するよう構成してもよい。後者の場合、制御回路103が有する負荷検出回路112の区間を変更する制御機能も含めて回転検出部を構成することになる。
【0045】
検出区間Tの幅は一定にする必要はないが、本実施の形態では検出区間Tの幅は一定値に設定しているため、区間T2の幅が広くなるにともない区間T3の幅は狭くなる。
区間T2の第2終了位置Tcomp2をどの位置にするかは、使用する時刻針の重さ等に応じて適宜設定することができる。例えば、当初の区間T3の1/2位置まで終了位置Tcompをシフトさせるように構成することができる。
また、第2区間として、区間の終了位置Tcompが異なる複数の区間を用意しておき、使用する時刻針の重さ等に応じて適切な区間を選択して使用することにより、区間終了位置Tcompを所定量後方にシフトさせて回転状況を検出するように構成することができる。
【0046】
制御回路103は、前述したようにして終了位置Tcompを所定量シフトした区間(新区間)T2において、回転検出回路111及び負荷検出回路112が基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出したか否かを判定する(ステップS506)。
制御回路103は、処理ステップS506において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを新区間T2内で検出していないと判定した場合(パターンが(0,0,x)の場合である。)、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを、前述したようにして幅を狭くした区間T3内で検出したか否かを判定する(ステップS507)。
【0047】
制御回路103は、処理ステップS507において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T3内で検出していないと判定した場合(パターンが(x,0,0)の場合であり、非回転の場合である。)、処理ステップS503の主駆動パルスP1と同極性の補正駆動パルスP2によってステッピングモータ105を強制的に回転させた後(ステップS508)、当該主駆動パルスP1のランクnを1ランクアップして主駆動パルスP1(n+1)に変更する(ステップS509)。
【0048】
負荷検出回路112が区間T2の終了位置Tcompを第1終了位置Tcomp1へ戻した後、処理ステップS503へ戻る(ステップS516)。これにより、検出区間Tの各区間T1〜T3は初期設定された位置及び幅に戻る。
次回の駆動は前記のようにして設定された主駆動パルスP1(n+1)によって行われ又、区間T2の終了位置Tcompが第1終了位置Tcomp1に設定された状態で回転検出動作が開始されることになる。
【0049】
制御回路103は、処理ステップS507において、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T3内で検出したと判定した場合(パターンが(x,0,1)の場合である。)、補正駆動パルスP2による駆動は行わずに主駆動パルスP1を1ランクアップして主駆動パルスP1(n+1)に変更すると共に回数Nを0にリセットする(ステップS510)。その後、処理ステップS516を介して処理ステップS503に戻る。次回の駆動は前記のようにして設定された主駆動パルスP1(n+1)によって行われ又、区間T1〜T3が前述のようにして初期設定された状態で回転検出動作が開始されることになる。
【0050】
制御回路103は、処理ステップS506において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2内で検出したと判定した場合(パターンが(0,1,x)の場合である。)、回数Nに1加算した後(ステップS511)、回数Nが所定回数になったか否かを判定する(ステップS512)。
【0051】
制御回路103は、処理ステップS512において、回数Nが所定回数になっていないと判定した場合は処理ステップS516を介して処理ステップS503に戻り、回数Nが所定回数になったと判定した場合には主駆動パルスP1を1ランクダウンして主駆動パルスP1(n−1)に変更すると共に回数Nを0にリセットする(ステップS513)。その後、処理ステップS516を介して処理ステップS503に戻る。次回の駆動は前記のようにして設定された主駆動パルスP1(n−1)によって行われ又、区間T1〜T3が前述のようにして初期設定された状態で回転検出動作が開始されることになる。
【0052】
一方、負荷検出回路112は、処理ステップS504において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T1内で検出たと判定した場合には(パターンが(1,x,x)の場合である。)、区間T2の終了位置Tcompを変更することなく当該区間T2内において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出したか否かを判定する。制御回路103は、処理ステップS504において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T1内で検出したと判定した場合、回転検出回路111及び負荷検出回路112が区間T2内において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出したか否かを判定する(ステップS514)。
【0053】
制御回路103は、処理ステップS514において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2内で検出していないと判定した場合(パターンが(1,0,x)の場合である。)、処理ステップS507に移行して、変更していない区間T3内で基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出したか否かを判定する。
制御回路103は、処理ステップS514において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2内で検出したと判定した場合(パターンが(1,1,x)の場合である。)、回数Nを0にリセットする(ステップS515)。その後、処理ステップS516を介して処理ステップS503に戻る。
【0054】
以上述べたように、本発明の第1の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路は、少なくとも3つの区間T1、T2、T3に区分した検出区間Tにおいてステッピングモータ105が発生する所定の基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出し、各区間T1、T2、T3において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出したか否かを表すパターンに基づいて回転状況を検出する回転検出部と、相互にエネルギが相違する複数種類の主駆動パルスP1の中から、前記回転検出部が検出した回転状況に応じた主駆動パルスP1を選択してステッピングモータ105を駆動する制御部と、を備え、前記回転検出部は、前記複数の区間T1、T2、T3の中の最初の区間である第1区間T1において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出しないときは、最初の区間T1以外の少なくとも一つの区間T2、T3の終了位置Tcompを所定量後方にシフトして検出することを特徴としている。
【0055】
ここで、検出区間Tを、主駆動パルスP1による駆動後の第1区間T1、第1区間T1よりも後の第2区間T2、第2区間T2よりも後の第3区間T3に区分し、主駆動パルスP1のランクnを変更しないややエネルギ低い状態において、第1区間T1はステッピングモータ105のロータ202を中心とする空間の第2象限IIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、第2区間T2は第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、第3区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間であり、前記回転検出部は、第1区間T1において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出しない場合には、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出した場合よりも第2区間T2の終了位置Tcompを所定量後方にシフトして検出するように構成することができる。
【0056】
また、前記回転検出部は、前記制御部が主駆動パルスP1によってステッピングモータ105を駆動する度に、第1区間T1において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出しない場合には基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出した場合よりも第2区間T2の終了位置Tcompを所定量後方にシフトして検出するように構成することができる。
また、前記回転検出部は、第1区間T1において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出しない場合に、第2区間T2の終了位置Tcompを所定量後方にシフトして第2区間T2の幅を広くすると共に検出区間Tの幅が変化しないように第3区間T3の幅を狭くして検出するように構成することができる。
【0057】
また、処理ステップS505で区間T2の終了位置Tcompを第2終了位置Tcomp2に設定するまでは区間T2の終了位置Tcompを第1終了位置Tcomp1にすると共に、処理ステップS505で区間T2の終了位置Tcompを一旦第2終了位置Tcomp2に設定した後は区間T2の終了位置Tcompを第2終了位置Tcomp2に固定するように構成することができる。また、処理ステップS504の処理を行う度に区間T2の終了位置Tcompを第1終了位置Tcomp1に戻して以降の誘起信号VRsの区間判定を行うように構成することができる。
【0058】
したがって、負荷が大きい場合でも駆動エネルギの余裕の程度を正確に検出することにより、適正な駆動エネルギの駆動パルスで駆動して、エネルギの浪費を抑制することが可能になる。
また、ランクアップを駆動余裕が低下してきた場合にのみ適用させることができ、不要なランクアップによる電力浪費を抑制することが可能になる。
また、電源として電池を用いた場合でも、搭載する針モーメントによって電池寿命が大幅に変動/低下することを防止し、目標電池寿命を満足できる搭載針モーメントの限界値を向上させることができ、製品付加価値を向上させることができる。
【0059】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路、ムーブメント及びアナログ電子時計について説明する。
前記実施の形態において、区間T2の終了位置Tcompを第2終了位置Tcomp2に設定した後、区間T1において誘起信号「1」を検出すると、区間T2の終了位置Tcompを第1終了位置Tcomp1に戻すように構成することができるが、この場合、駆動余裕が低下したパターンが得られると主駆動パルスP1を直ちにランクアップする場合がある。このため、時刻針107〜109として重量が大きい大針を使用している場合にはロータ202の回転が遅く誘起信号VRsの発生が遅れるため、エネルギが不足していない(ランクアップが不要)にも拘わらずパターン(1,0,1)が検出され、不必要にランクアップを行う可能性がある。
【0060】
本発明の第2の実施の形態は、係る問題を解決するために成されたものであり、終了位置Tcompを変更する際に不必要にランクアップしないようにしてエネルギの浪費を抑制しようとするものである。
図6は本発明の第2の実施の形態の動作を説明するためのタイミング図で、
図3と同一部分には同一符号を付している。
【0061】
図6においても
図3と同様に、検出区間Tを、主駆動パルスP1による駆動後の第1区間T1、第1区間T1よりも後の第2区間T2、前記第2区間よりも後の第3区間に区分し、主駆動パルスP1のランクを変更しない状態(ランク維持状態)において、第1区間T1はステッピングモータ105のロータ202を中心とする空間の第2象限IIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、第2区間T2は第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、第3区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。
【0062】
また、
図7は本発明の第2の実施の形態の動作を示すフローチャートであり、
図5と同一処理を行う部分には同一符号を付している。
本他の実施の形態のブロック図、使用するステッピングモータの構成図、判定チャートは、各々、
図1、
図2、
図4と同じである。
【0063】
以下、本発明の第2の実施の形態について、
図1、
図2、
図4、
図6、
図7を用いて、前記実施の形態と相違する部分について動作を説明する。
制御回路103は、時計信号を計数して計時動作を行い、先ず主駆動パルスP1のエネルギランクnを1に、同一エネルギの主駆動パルスによる連続駆動回数Nを0に又、所定のパターン(本他の実施の形態ではパターン(1,0,1))が連続して検出された回数の計数値である負荷判定計数値Mを0にリセットして(
図7のステップS801)、最小パルス幅の主駆動パルスP11でステッピングモータ105を回転駆動するように制御信号を出力する(ステップS502、S503)。
【0064】
駆動パルス選択回路104は、制御回路103からの制御信号に対応する主駆動パルスP11を選択してステッピングモータ105を回転駆動する。ステッピングモータ105は主駆動パルスP11によって回転駆動されて、時刻針107〜109(日付が変わるときにはカレンダ表示部110)を回転駆動する。これにより、ステッピングモータ105が正常に回転した場合には、表示部106では、時刻針107〜109によって現在時刻が表示される。また、カレンダ表示部110によって今日の日付が表示される。
【0065】
主駆動パルスP11による駆動後の検出区間Tにおいて、回転検出回路111は所定の基準しきい電圧Vcompを超えるステッピングモータ105の誘起信号VRsを検出し又、負荷検出回路112は前記誘起信号VRsの検出時刻tは区間T1内と判定したか否かの判定結果(即ち、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが区間T1内で検出したか否かの判定結果)を表す検出信号を制御回路103に出力する。制御回路103は、負荷検出回路112からの検出信号に基づいて、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが区間T1内で検出されたか否かの判定を行う(ステップS802)。
【0066】
負荷検出回路112は、処理ステップS802において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T1内で検出していないと判定した場合には(パターンが(0,x,x)の場合である。)、負荷判定を終了済みか否か(本他の実施の形態では、時刻針107〜109が通常針(仕様上の平均的負荷量の針)か大針(仕様上の上限を超えている負荷量の針)か否かの判定が終了しているか否か)を判定する(ステップS803)。
【0067】
負荷検出回路112は、処理ステップS803において負荷判定(負荷が通常針か大針かの判定)を終了していると判定した場合には直ちに処理ステップS506に移行し、負荷判定が終了していないと判定した場合には区間T2の終了位置Tcompを第2終了位置Tcomp2に設定して区間T2の幅を広くした後(ステップS505)、処理ステップS506に移行する。以後、制御回路103は、前記実施の形態と同様にしてパターン判定やパルス制御動作を行った後、ステップS503に戻る(ステップS506〜S509、S511〜S513)。
尚、前記実施の形態同様に、負荷検出回路112の区間の変更は、負荷検出回路112自身が行うように構成してもよく又、制御回路103が負荷検出回路112の区間を変更するように制御するよう構成してもよい。
【0068】
このように、処理ステップS803では既に負荷判定を終了しているか否か判定し、負荷判定を終了している場合は、区間T2の終了位置Tcompとして、負荷判定時に設定された終了位置Tcompを用いる。未だ負荷判定が終了していない場合は処理ステップS505により、区間T2の終了位置Tcompを第2終了位置Tcomp2に所定量シフトする。尚、終了位置Tcomp1、Tcomp2の時刻の大小関係は前記実施の形態で述べたようにTcomp1<Tcomp2である。
【0069】
図6において、通常針で十分なエネルギ状態の場合、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsは区間T2内にのみ発生するので、誘起信号VRsのパターンは(0,1,0)となり回数Nが増加して、主駆動パルスP1のランクダウンが可能となる。
一方、
図6において、大針で十分なエネルギ状態の場合には、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsは通常針でエネルギも十分な場合に比べ、発生時刻が遅れる。これは、負荷量が大きいためロータ202の回転速度が遅くなり、誘起信号VRsの発生が遅れるためである。
【0070】
この場合、区間T2の終了位置Tcompが変更されずに第1終了位置Tcomp1の状態では、誘起信号VRsのパターンは(0,0,1)となるため、ランクアップされてしまい、消費電力が浪費されることになる。
しかしながら本他の実施の形態では、処理ステップS505において、区間T2の終了位置Tcompが第2終了位置Tcomp2と遅い時刻に設定されるため、誘起信号VRsのパターンは(0,1,0)となり、回数Nが増加し、主駆動パルスP1のランクダウンが可能となる。
【0071】
負荷検出回路112は、処理ステップS802において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T1内で検出したと判定した場合には(主駆動パルスP1のエネルギがやや低下した場合であり、パターンが(1,x,x)の場合である。)、負荷判定が終了しているか否かを判定する(ステップS804)。
負荷検出回路112は、処理ステップS804において負荷判定が終了していると判定した場合、区間T2の終了位置Tcompが既に終了位置Tcomp1又はTcomp2に設定されているので、処理ステップS514に移行して、以後制御回路103は、前記実施の形態と同様にしてパターンの判定やパルス制御動作を行う(ステップS514、S515、S507〜S509)。
【0072】
負荷検出回路112は、処理ステップS804において負荷判定が終了していないと判定した場合、区間T2の終了位置Tcompを第1終了位置Tcomp1に戻す(ステップS805)。
図6において通常針でややエネルギ低い状態2では、誘起信号VRsのパターンは(1,1,0)となり主駆動パルスP1のランクが維持されることになる。
【0073】
搭載針が大針でややエネルギ低い1の状態では、第1終了位置Tcomp1で区切られた区間T2と区間T3において、搭載針が大きいため通常針よりもロータ202の回転速度が遅く、通常針では区間T2に出現していた基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが区間T3で発生する事になる。この場合、パターン(1,0,1)が得られランクアップされることになる。このように、処理ステップS802でエネルギがやや低下し区間T1に判定値「1」が得られると、搭載針が大針の場合は、ランク維持ではなく、即座にランクアップすることになり、電力を浪費することになるが、これを防ぐために以下の処理を行うようにしている。
【0074】
制御回路103は、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2内で検出したか否かを判定する(ステップS806)。
制御回路103は、処理ステップS806において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2内で検出したと判定した場合(パターンが(1,1,x)の場合である。)、回数Nを0にリセットした後(ステップS812)、負荷判定が終了した旨の指示を行って(例えば負荷判定が終了した旨表すフラグを立てて)処理ステップS503に戻る(ステップS811)。このようにして、処理ステップS812を経由する場合の誘起信号VRsのパターンにより、負荷が通常針であると判定され、区間T2の終了位置Tcompは第1終了位置Tcomp1に設定される。
【0075】
制御回路103は、処理ステップS806において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2内で検出していないと判定した場合(パターンが(1,0,x)の場合である。)、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T3内で検出したか否かを判定する(ステップS807)。
【0076】
制御回路103は、処理ステップS807において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T3内で検出していないと判定した場合(パターンが(1,0,0)の場合である。)、補正駆動パルスP2によって駆動した後(ステップS813)、主駆動パルスP1を1ランクアップして主駆動パルスP1(n+1)にすると共に回数Nを0にリセットした後(ステップS814)、負荷判定済みを指示して処理ステップS503に戻る(ステップS811)。
このようにして、処理ステップS813、S814を経由する場合の誘起信号VRsのパターンにより、負荷が通常針であると判定され、区間T2の終了位置Tcompは第1終了位置Tcomp1に設定される。
【0077】
制御回路103は、処理ステップS807において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T3内で検出したと判定した場合(パターンが(1,0,1)の場合である。)、負荷判定計数値Mに1加算した後(ステップS808)、負荷判定計数値Mが所定値に到達したか否かを判定する(ステップS809)。
制御回路103が処理ステップS809において負荷判定計数値Mが所定値に到達した(即ちパターン(1,0,1)を所定回数連続して維持した)と判定すると、負荷検出回路112は区間T2の終了位置Tcompを第2終了位置Tcomp2に設定する(ステップS810)。この場合、制御回路103は、負荷判定済みの指示をした後(ステップS811)、処理ステップS503に戻る。
【0078】
制御回路103は、パターン(1,0,1)が所定回数連続して得られたことにより、負荷が大きいために誘起信号VRsの発生が遅れたものと判定し、負荷が大針であると判定され、区間T2の終了位置Tcompは第2終了位置Tcomp2に設定される。
制御回路103は、処理ステップS809において負荷判定計数値Mが所定値に到達していないと判定すると、直ちに処理ステップS503に戻る。
【0079】
図6において、搭載針が大針でややエネルギ低い2の状態では、区間T2の終了位置Tcompが第2終了位置Tcomp2に設定されたため、誘起信号Vrsのパターンが(1,1,0)となり、主駆動パルスP1のランクが維持されることになる。
尚、処理ステップS802、S804〜S811の処理において、区間T1の判定値が「1」の場合には、一旦、区間T2の終了位置Tcompを第1終了位置Tcomp1に戻すが(ステップS805)、主駆動パルスP1のランクアップが必要であることを示すパターン(本他の実施の形態ではパターン(1,0,1))が所定回数連続して得られたときは、前記所定回数得られるまでは主駆動パルスP1をランクアップすることなく維持し、前記パターンが前記所定回数得られたとき前記元に戻した区間T2の終了位置Tcompを第1終了位置Tcomp1から後方の第2終了位置Tcomp2に所定量シフトして以降の検出を行うことになる。このように、終了位置Tcompを変更する際に、ランクアップを示すパターンが発生しても、負荷を決定するまではランク維持するため、不必要にランクアップすることがなく、エネルギの浪費を抑制するができる。
【0080】
処理ステップS811においては、負荷を決定し終了位置Tcompの設定を終了した場合に負荷判定済みという状態に設定する。
処理ステップS803、S804では、処理ステップS811で負荷判定が終了したか否かが判定される。負荷検出回路112は、誘起信号VRsのパターンに基づいて負荷判定を終了した後は、区間T2等の最初の区間T1以外の区間の終了位置Tcompを当該サイクル内では変更しない。負荷検出回路112は、電池交換時やシステムリセット時に、
図7の処理を行うことによって負荷判定を実施し、区間T2等の終了位置Tcompを設定する。
【0081】
以上のように本発明の第2の実施の形態によれば、前記第1の実施の形態と同様の効果を奏するばかりでなく、不必要にランクアップすることなく消費電力の浪費を抑制することが可能になる。また、搭載する針モーメントによって電池寿命が大幅に変動/低下することを防止し、目標電池寿命を満足できる搭載針モーメントの限界値を向上させることができ、製品付加価値を向上させることができる等の効果を奏する。
【0082】
また、本発明の第1、第2の実施の形態に係るムーブメント114によれば、負荷が大きい場合でも駆動エネルギの余裕の程度を正確に検出することにより、適正な駆動エネルギの駆動パルスで駆動して、エネルギの浪費を抑制することが可能なアナログ電子時計を構築することができる等の効果を奏する。
【0083】
また、本発明の第1、第2の実施の形態に係るアナログ電子時計によれば、負荷が大きい場合でも駆動エネルギの余裕の程度を正確に検出することにより、適正な駆動エネルギの駆動パルスで駆動して、エネルギの浪費を抑制することが可能になり、電源として電池を使用する場合に長期間の使用が可能になる等の効果を奏する。
【0084】
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。本第3の実施の形態においても、ブロック図及びステッピングモータ105の構成は
図1、
図2と同じである。
図8は、本発明の第3の実施の形態において、主駆動パルスP1によってステッピングモータ105を駆動した場合のタイミング図で、負荷に対する主駆動パルスP1のエネルギの余裕度を表す状態、ロータ202の回転挙動、誘起信号VRsの発生タイミング、回転状況を表す誘起信号VRsのパターン(各区間T1〜T3における誘起信号VRsの判定値)を示している。
【0085】
図8においても
図3と同様に、検出区間Tを、主駆動パルスP1による駆動後の第1区間T1、第1区間T1よりも後の第2区間T2、前記第2区間よりも後の第3区間に区分している。
Tcomp1は区間T1と区間T2の境界、Tcomp2は区間T2と区間T3の境界である。境界Tcomp1の位置として、複数(本実施の形態では、第1位置(前方)K1及び第1位置K1よりも後方の第2位置(後方)K2の2種類)の位置が用意されており、ステッピングモータ105の回転状況に応じていずれかの位置K1又はK2に設定して回転状況の検出が行われる。
【0086】
検出区間Tや区間T3の幅は必ずしも一定にする必要はないが、境界Tcomp1の位置が変わっても検出区間Tの幅や区間T3の幅は変わらないようにしている。したがって、境界Tcomp1が第1位置K1のときに比べて第2位置K2の時は、区間T1の幅が広くなると共に区間T2の幅が狭くなる。
【0087】
境界Tcomp1の位置K1、K2をどのような位置に設定するかは、使用する時刻針の重さ等に応じて適宜設定することができる。例えば、第1位置K1のときの区間T2の幅が、第2位置K2のときの幅の2倍になるように構成することができる。
また、位置K1、K2として、複数種類の位置を用意しておき、使用する時刻針の重さ等に応じて適切な位置を選択して使用することにより、良好な回転検出を実現できるように構成することができる。
【0088】
検出区間Tにおいて誘起信号VRsを検出する場合、回転検出回路111は所定のサンプリング周期で誘起信号VRsをサンプリングすることによって誘起信号VRsを検出するように構成されている。検出区間Tは複数のサンプリング周期によって構成されており、前記各サンプリング周期において誘起信号VRsをサンプリングすることにより、複数の時点で誘起信号VRsが検出される。
【0089】
このように、主駆動パルスP1による駆動後から始まる検出区間T全体を3つ以上の区間(本実施の形態では3つの区間T1〜T3)に区分している。尚、本第3の実施の形態においても、主駆動パルスP1による駆動後の誘起信号VRsを回転状況の判定に用いない区間(マスク区間)は設けていない。
【0090】
ロータ202を中心として、その回転によってロータ202の磁極軸Aが位置するXY座標空間を第1象限I〜第4象限IVに区分した場合、通常負荷を駆動する際の主駆動パルスP1のエネルギの余裕の大きさ(エネルギ余裕度)に応じて、区間T1、区間T2、区間T3は次のように表すことができる。ここで、通常負荷とは通常時に駆動される負荷を意味しており、本実施の形態では、軽い所定重量の時刻針(時針107、分針108、秒針109)を駆動する場合の負荷を通常負荷としている。
【0091】
負荷に対する主駆動パルスP1のエネルギ状態が「ややエネルギ低い状態」(主駆動パルスP1のランクアップやランクダウンは行わず主駆動パルスP1を変更しなくてもステッピングモータ105を回転させることが可能な状態(ランク維持の状態)であり、誘起信号VRsのパターン(1,1,0)が得られる状態)において、第1区間T1はステッピングモータ105のロータ202を中心とする空間の第2象限IIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、第2区間T2は第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、第3区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。この状態では、境界Tcomp1を第2位置K2に設定して回転状況の検出が行われる。
【0092】
エネルギ状態が「ややエネルギが低い状態」よりも所定量減少した「かなりエネルギが低い状態」(ステッピングモータ105を回転させることはできるが、安定してステッピングモータ105を回転させるには主駆動パルスP1のランクアップが必要な状態であり、誘起信号パターン(1,0,1)が得られる状態)において、区間T1はロータ202を中心とする空間の第2象限IIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T2は第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。この状態では、区間T1が「1」のため、境界Tcomp1を第2位置K2に設定して回転状況の検出が行われる。
【0093】
エネルギ状態が「かなりエネルギが低い状態」よりも所定量減少した「駆動余裕僅か状態」(ステッピングモータ105を回転させることはできるが、安定してステッピングモータ105を回転させるには主駆動パルスP1のランクアップが必要な状態であり、誘起信号パターン(1,0,1)が得られる状態)において、区間T1はロータ202を中心とする空間の第2象限IIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T2は第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況及び最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。
【0094】
この状態でも、境界Tcomp1を第2位置K2に設定して回転状況の検出が行われる。仮に境界Tcomp1を変更せずに位置K1に維持した場合、駆動余裕僅か状態であるにも関わらず、回転が遅くなってパターン(1,1,1)が得られてランクが維持される恐れがあるが、区間T1が「1」の場合に境界Tcomp1を位置K2に変更することにより、パターン(1,0,1)が得られてランクアップされて適正なエネルギの主駆動パルスP1で駆動されることになる。
【0095】
エネルギ状態が「駆動余裕僅か状態」よりも所定量減少した「非回転状態」(ステッピングモータ105を回転させることができず、誘起信号パターン(1,0,0)が得られる状態)において、区間T1はロータ202を中心とする空間の第2象限IIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T2は第2象限II及び第1象限Iにおいてロータ202の最初の逆方向回転状況を判定する区間、区間T3は第1象限Iにおいてロータ202の最初の逆方向回転状況及び2回目の正方向回転以後の回転状況を判定する区間である。この状態では、境界Tcomp1を第2位置K2に設定して回転状況の検出が行われる。
【0096】
エネルギ状態が「ややエネルギが低い状態」よりも所定量増加した「駆動余裕通常状態」(ステッピングモータ105を回転させることが可能で、所定回数連続して回転させること(PCDカウント)ができた場合には主駆動パルスP1をランクダウンさせる状態であり、誘起信号パターン(0,1,0)が得られる状態)において、区間T1はロータ202を中心とする空間の第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T2は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況及び最初の逆方向回転状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。この状態では、区間T1が「0」のため、境界Tcomp1を第1位置K1に設定して回転状況の検出が行われる。
【0097】
エネルギ状態が「駆動余裕通常状態」よりも所定量増加した「駆動余裕大状態」(ステッピングモータ105を回転させることが可能で、所定回数連続して回転させること(PCDカウント)ができた場合には主駆動パルスP1をランクダウンさせる状態であり、誘起信号パターン(0,1,0)が得られる状態)において、区間T1はロータ202を中心とする空間の第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T2は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。この状態でも区間T1が「0」のため、境界Tcomp1を第1位置K1に設定して回転状況の検出が行われる。
【0098】
図9は本発明の第3の実施の形態の動作をまとめた判定チャートである。
図9において、前述したとおり、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出した場合を判定値「1」、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出できなかった場合を判定値「0」と表している。また、「0/1」は、判定値が「1」、「0」のどちらでもよいことを表している。
【0099】
図9に示すように、回転検出回路111が基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsの有無を検出し、負荷検出回路112が前記誘起信号VRsの検出時期を判定したパターンに基づいて、制御回路103内部に記憶した
図9の判定チャートを参照して、制御回路103及び駆動パルス選択回路104は主駆動パルスP1のランクアップやランクダウンあるいは補正駆動パルスP2による駆動等のパルス制御を行ってステッピングモータ105を回転制御する。
【0100】
例えば、制御回路103は、パターン(0/1,0,0)の場合、ステッピングモータ105が回転していない(非回転)と判定して、補正駆動パルスP2によってステッピングモータ105を駆動するように駆動パルス選択回路104を制御した後、次回駆動時に1ランク上の主駆動パルスP1にランクアップして駆動するように駆動パルス選択回路104を制御する。
制御回路103は、パターン(0,1,0/1)の場合、通常針で十分なエネルギ状態の回転と判定して、この状態が所定回数連続して行われた場合には主駆動パルスP1の駆動エネルギをランクダウンするようにパルス制御を行う。
【0101】
区間T1が「1」の場合でも境界Tcomp1を変更せずに位置K1に維持した場合、駆動余裕僅か状態においてパターン(1,1,1)が得られてランクが維持される場合があり、そのため非回転となって補正駆動パルスP2による駆動の可能性がある。しかしながら、区間T1が「1」の場合には境界Tcomp1を位置K2に変更することにより、パターン(1,0,1)が得られてランクアップされることになるため、ランクアップされ、適切なエネルギの主駆動パルスP1による駆動が行われ、補正駆動パルスP2による駆動が回避される。
図10は、本発明の第3の実施の形態の動作を示すフローチャートであり、主として制御回路103の処理を示すフローチャートである。
図5と同一処理を行う部分には同一符号を付している。
【0102】
以下、
図1、
図2、
図8〜
図10を参照して、第1の実施の形態と相違する部分について、本発明の第3の実施の形態の動作を詳細に説明する。
制御回路103は、分周回路102からの時計信号を計数して計時動作を行い、先ず主駆動パルスP1nのエネルギランクnを1にすると共に回数Nを0にして(
図10のステップS501)、最小パルス幅の主駆動パルスP11でステッピングモータ105を回転駆動するように制御信号を出力する(ステップS502、S503)。
【0103】
制御回路103は、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T1内で検出したか否かの判定を行い(ステップS504)、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T1内で検出していないと判定した場合(パターンが(0,x,x)の場合である。)、第1の実施の形態と同様に、処理ステップS506〜S513の処理を行う。
【0104】
処理ステップS509、S510、S513の後、負荷検出回路112が区間T1の終了位置である区間T1と区間T2間の境界Tcomp1を第1位置K1(前方)に設定した後(ステップS102)、処理ステップS503へ戻る。これにより、検出区間Tの各区間T1〜T3は初期設定された位置及び幅に戻る。次回の処理ステップS504における回転検出は境界Tcomp1を第1位置K1に設定した状態で行われる。当該処理ステップS504において区間T1の判定値が「0」の場合には、以降の区間(区間T2、T3)における回転検出は、境界Tcomp1を第1位置K1に設定した状態で行われる。
【0105】
一方、負荷検出回路112は、処理ステップS504において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T1内で検出したと判定した場合には(パターンが(1,x,x)の場合である。)、境界Tcomp1を第2位置K2(後方)に設定する(ステップS101)。
【0106】
制御回路103は、境界Tcomp1を第2位置K2に設定した状態の区間T2内において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出したか否かを判定する(ステップS514)。即ち、区間T1における判定値が「1」のため、処理ステップS101において境界Tcomp1が第2位置K2に設定されて、以降の回転検出(区間T2、T3における回転検出)が行われる(ステップS514、S515)。
【0107】
処理ステップS515の後、負荷検出回路112が境界Tcomp1を第1位置K1に設定した後(ステップS102)、処理ステップS503へ戻る。これにより、検出区間Tの各区間T1〜T3は初期設定された位置及び幅に戻る。次回の処理ステップS504における回転検出は境界Tcomp1を第1位置K1に設定した状態で行われる。
【0108】
以上述べたように、本発明の第3の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路は、複数の区間T1〜T3に区分した検出区間Tにおいてステッピングモータ105が発生する所定の基準しきい値Vcompを超える誘起信号VRsを検出し、各区間T1〜T3において基準しきい値を超える誘起信号VRsを検出したか否かを表すパターンに基づいて回転状況を検出する回転検出部と、相互にエネルギが相違する複数種類の主駆動パルスP1の中から、前記回転検出部が検出した回転状況に応じた主駆動パルスP1を選択してステッピングモータ105を駆動する制御部と、を備え、前記回転検出部は、複数の区間T1〜T3の中の最初の区間T1において基準しきい値Vcompを超える誘起信号VRsを検出したときは、最初の区間T1において基準しきい値Vcompを超える誘起信号を検出しないときよりも、最初の区間T1と2番目の区間T2の境界Tcomp1を後方に設定し2番目の区間T2の幅を狭くして検出することを特徴としている。
【0109】
ここで、最初の区間T1と2番目の区間T2の境界Tcomp1の位置として、第1位置K1と、第1位置K1よりも後方の第2位置K2が用意されて成り、前記回転検出部は、最初の区間T1において基準しきい値Vcompを超える誘起信号VRsを検出したときは、境界Tcomp1を第2位置K2に設定して2番目T2以降の区間で誘起信号VRsを検出し回転状況を検出するように構成することができる。
【0110】
また、最初の区間T1と2番目の区間T2の境界Tcomp1の位置として、第1位置K1と、第1位置K1よりも後方の第2位置K2が用意されて成り、前記回転検出部は、最初の区間T1において基準しきい値Vcompを超える誘起信号VRsを検出しないときは、境界Tcomp1を第1位置K1に設定して2番目T2以降の区間で誘起信号VRsを検出し回転状況を検出するように構成することができる。
【0111】
また、検出区間Tを、主駆動パルスP1による駆動後の第1区間T1、第1区間T1よりも後の第2区間T2、第2区間T2よりも後の第3区間T3に区分し、主駆動パルスP1のランクを変更しない状態(ランク維持の状態)において、第1区間T1はステッピングモータ105のロータ202を中心とする空間の第2象限IIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、第2区間T2は第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、第3区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。
【0112】
負荷検出回路112は、区間T1において基準しきい値Vcompを超える誘起信号VRsを検出したときは境界Tcomp1を第2位置K2に設定して区間T2以降の検出を行い、区間T1において基準しきい値Vcompを超える誘起信号VRsを検出しなかったときは境界Tcomp1を第1位置K1に設定して区間T2以降の検出を行うように構成することができる。
【0113】
したがって、負荷が大きく回転が遅くなった場合でも駆動エネルギの余裕の程度を正確に検出することにより、適正な駆動エネルギの駆動パルスで駆動して、エネルギの浪費を抑制することが可能になる。
また、駆動余裕が低下してきた場合にのみランクアップさせることができ、不要なランクアップによる電力浪費を抑制することが可能になる。
【0114】
また、電源として電池を用いた場合でも、搭載する針モーメントによって電池寿命が大幅に変動/低下することを防止し、目標電池寿命を満足できる搭載針モーメントの限界値を向上させることができ、製品付加価値を向上させることができる。
また、駆動余裕過多にも関わらずランクダウンできない、あるいは、駆動余裕無いにも関わらずランクアップできないといった回転検出上の不具合を解消し、安定駆動を実現することが可能である。
【0115】
また、本発明の第3の実施の形態に係るムーブメント114によれば、負荷が大きい場合でも駆動エネルギの余裕の程度を正確に検出することにより、適正な駆動エネルギの駆動パルスで駆動して、エネルギの浪費を抑制することが可能なアナログ電子時計を構築することができる。
【0116】
また、本発明の第3の実施の形態に係るアナログ電子時計によれば、負荷が大きい場合でも駆動エネルギの余裕の程度を正確に検出することにより、適正な駆動エネルギの駆動パルスで駆動して、エネルギの浪費を抑制することが可能になり、電源として電池を使用する場合に長期間の使用が可能になる。
【0117】
図11は、本発明の第4の実施の形態において、主駆動パルスP1によってステッピングモータ105を駆動した場合のタイミング図で、負荷に対する主駆動パルスP1のエネルギの余裕度を表す状態、ロータ202の回転挙動、誘起信号VRsの発生タイミング、回転状況を表す誘起信号VRsのパターン(各区間T1〜T3における誘起信号VRsの判定値)を示している。
【0118】
図11においても
図3と同様に、負荷に対する主駆動パルスP1のエネルギ状態が「ややエネルギ低い状態」(主駆動パルスP1のランクアップやランクダウンは行わず主駆動パルスP1を変更しなくてもステッピングモータ105を回転させることが可能な状態(ランク維持)であり、誘起信号VRsのパターン(1,1,0/1)が得られる状態)において、区間T1はロータ202を中心とする空間の第2象限IIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T2は第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。
また、他のエネルギ状態においても、区間T1〜T3とロータ202の回転位置との関係は
図3と同じである。
尚、本第4の実施の形態においても、ブロック図及びステッピングモータの構成は
図1、
図2と同じである。
【0119】
前述したように、第1の実施の形態では
図3に示すように負荷検出回路112は、区間T1が「1」のとき区間T2と区間T3の境界(即ち区間T2の終了位置)を前方の第1終了位置Tcomp1に設定すると共に、区間T1が「0」のとき区間T2と区間T3の境界(即ち区間T2の終了位置)を後方の第2終了位置Tcomp2に設定するように構成している。
また、第3の実施の形態では
図8に示すように負荷検出回路112は、区間T1が「0」のとき区間T1と区間T2の境界(即ち区間T1の終了位置)Tcomp1を前方の第1位置K1に設定すると共に、区間T1が「1」のとき区間T1と区間T2の境界(即ち区間T1の終了位置)Tcomp1を後方の第2位置K2に設定するように構成している。
【0120】
これに対して本発明の第4の実施の形態では、負荷検出回路112が第1の実施の形態と第3の実施の形態の双方の処理を行うように構成している。
即ち、本第4の実施の形態では、
図11に示すように負荷検出回路112は、区間T1が「0」の場合、区間T1と区間T2の境界(即ち区間T1の終了位置)Tcomp1を前方の第1位置K1に設定すると共に、区間T2と区間T3の境界(即ち区間T2の終了位置)Tcomp2を後方の第2終了位置に設定する。
【0121】
また負荷検出回路112は、区間T1が「1」の場合は、区間T1と区間T2の境界(即ち区間T1の終了位置)Tcomp1を後方の第2位置K2に設定すると共に、区間T2と区間T3の境界(即ち区間T2の終了位置)Tcomp2を第2終了位置よりも前方の第1終了位置に設定するように構成している。
【0122】
これにより、負荷検出回路112は、区間T1が「1」の場合には区間T1が「0」の場合よりも区間T2の幅を狭くして検出するよう構成されている。
また、区間T1は、全検出区間Tにおける先頭の検出領域を必ず含むように構成されている。即ち、区間T1においては、必ず最初に出現する検出用パルス(誘起信号VRsを検出するためのサンプリングパルス)による検出が行われるように構成されている。
【0123】
以下、
図1、
図2、
図11を参照して、本発明の第4の実施の形態の特徴部分の動作を説明する。前記特徴部分以外の構成や動作は前記第3の実施の形態と同じである。
前記第1〜第3の実施の形態と同様に、制御回路103が時計信号を計数して計時動作を行い、駆動パルス選択回路104が主駆動パルスP1によってステッピングモータ105を回転駆動すると、回転検出回路111は駆動後の検出区間Tにおいてステッピングモータ105が発生する基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出し、負荷検出回路112は基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが区間T1において検出したか否かの判定結果を表す検出信号を制御回路103に出力する。
【0124】
負荷検出回路112は、区間T1において回転検出回路111が基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号を検出していないと判定した場合(区間T1の判定値が「0」の場合)、区間T2と区間T3の境界(即ち区間T2の終了位置)Tcomp2を後方の第2終了位置に設定する。
尚、初期設定として区間T1と区間T2の境界Tcomp1(即ち区間T1の終了位置)は第2位置K2よりも前方の第1位置K1に設定されているため、各駆動サイクルにおける回転検出動作が終了する度に、負荷検出回路112は、区間T1と区間T2の境界Tcomp1を前方の第1位置K1に設定して回転検出を行う。
【0125】
このように、負荷検出回路112は、区間T1が「0」の場合、ステッピングモータ105の駆動余裕は十分取れており、主駆動パルスP1をランクアップさせる必要は無いと判断し、搭載針などの影響で誘起信号VRsの出力が遅れることも考慮に入れ、区間T2と区間T3の境界Tcomp2を後方の第2終了位置にシフトして以後の区間T2、T3の判定を行う。
【0126】
一方、負荷検出回路112は、区間T1において回転検出回路111が基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号を検出したと判定した場合(区間T1の判定値が「1」の場合)、区間T2と区間T3の境界(即ち区間T2の終了位置)Tcomp2を前記第2終了位置よりも前方の第1終了位置に設定すると共に、区間T1と区間T2の境界Tcomp1を、第1位置K1よりも後方の第2位置K2に設定する。これにより、区間T2の幅を狭くして検出を行う。
【0127】
このように、区間T1の判定値が「1」の場合、主駆動パルスP1に駆動余裕がなくランクアップが必要な段階に近づいており、またさらに、駆動余裕無いため回転が遅くなり、区間T1で発生すべき誘起信号VRsが遅れて区間T2内で発生する恐れがあるため、区間T1と区間T2の境界Tcomp1を後方にシフトさせると共に、区間T2と区間T3の境界Tcomp2を前方にシフトさせて検出を行うことにより、正確な回転検出を可能にする。
尚、区間T1は、全検出区間Tの先頭の検出領域を必ず含むように構成されている。これにより、区間T1において、必ず最初に出力される検出用パルス(サンプリングパルス)による検出が行われるように構成されている。
【0128】
以上のように、本発明の第4の実施の形態によれば、前述した実施の形態と同様の効果を奏するばかりでなく、大針装着による過剰ランクアップや、突発的な回転誤検出によるランクダウンの発生を抑制することができ、消費電流の増加を防止することができる。
また、駆動余裕が過多になった場合、区間T1は判定値が「0」となるべきにも拘わらず「1」となって誘起信号VRsパターン(1,1,0)と誤判定したり、あるいは駆動余裕ぎりぎりの状態における誘起信号VRsパターン(1,1,0)と誤判定するような事態の発生を同時に解消することができる。
したがって、適正なパルス制御を実現することで、消費電流減と、駆動余裕無い場合の適正なパルス設定により、長寿命、安定動作を行うことが可能になる。
【0129】
次に本発明の第5の実施の形態について説明する。本第5の実施の形態においても、ブロック図及びステッピングモータ105の構成は
図1、
図2と同じである。
図12は、本発明の第5の実施の形態において、主駆動パルスP1によってステッピングモータ105を駆動した場合のタイミング図で、負荷に対する主駆動パルスP1のエネルギの余裕度を表す状態、ロータ202の回転挙動、誘起信号VRsの発生タイミング、回転状況を表す誘起信号VRsのパターン(各区間T1〜T3における誘起信号VRsの判定値)、モータ挙動を示している。前記第1〜第4実施の形態と同じ部分には同じ記号を付している。
【0130】
本第5の実施の形態では、区間T1における判定値「1」が所定回数累積して得られる場合には、区間T1における判定値「0」が得られる場合よりも、区間T1の幅が広くなるように変化させている。
負荷検出回路112は、区間T1において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを所定回数検出した場合(
図12における「ややエネルギ低い状態」、「かなりエネルギ低い状態」、「非常にエネルギ低い状態」、「非回転状態」の場合)には、区間T1において基準しきい値Vcompを超える誘起信号VRsを検出しない場合(
図12における「十分なエネルギ状態」の場合)よりも、区間T1の終了位置(即ち区間T1と区間T2の境界)Tcompを後方に所定量シフトした状態(第1終了位置Tcomp1から第2終了位置Tcomp2へシフトした状態)で、区間T2以降の検出を行うように構成している。
【0131】
図12においても
図3と同様に、負荷に対する主駆動パルスP1のエネルギ状態が「ややエネルギ低い状態」(主駆動パルスP1のランクアップやランクダウンは行わず主駆動パルスP1を変更せずに維持してステッピングモータ105を回転させることが可能な状態(ランク維持の状態)であり、誘起信号VRsのパターン(1,1,0)が得られる状態)において、第1区間T1はステッピングモータ105のロータ202を中心とする空間の第2象限IIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、第2区間T2は第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、第3区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。
【0132】
誘起信号VRsパターン(1,0,0)が得られる場合は、ステッピングモータ105が非回転の場合である。非回転の場合には、ロータ202が回転の途中で停止する状態(中間静止状態)と、ロータ202が最初の位置へ戻ってしまう状態(非回転状態)がある。
他のエネルギ状態において、区間T1〜T3とロータ202の回転位置との関係は
図3と同じである。
【0133】
図15は本発明の第5の実施の形態における全てのパターン及び各パターンに対応するパルス制御動作を示す判定チャートである。
回転検出回路111が基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsの有無を検出し、負荷検出回路112が前記誘起信号VRsの属する区間を判定したパターンに基づいて、制御回路103内部に記憶した
図15の判定チャートを参照して、制御回路103は主駆動パルスP1のランクアップやランクダウンあるいは補正駆動パルスP2による駆動等のパルス制御を行ってステッピングモータ105を回転制御する。
【0134】
例えば、制御回路103は、パターン(0/1,0,0)の場合、ステッピングモータ105が回転していない(中間静止状態又は非回転状態)と判定して、当該駆動サイクルにおいて補正駆動パルスP2でステッピングモータ105を駆動するように駆動パルス選択回路104を制御した後、次駆動サイクルにおいて1ランク上の主駆動パルスP1にランクアップして駆動するように駆動パルス選択回路104を制御する。
制御回路103は、パターン(0/1,0,1)の場合、かなりエネルギ低い状態又は非常にエネルギ低い状態の回転でありランクアップが必要と判定して、次駆動サイクルにおいて1ランク上の主駆動パルスP1を用いて駆動するように駆動パルス選択回路104を制御する。
【0135】
制御回路103は、パターン(1,1,0/1)の場合、ややエネルギ低い状態の回転と判定して、現在の主駆動パルスP1のランクを変更することなく維持し(ランクダウン禁止)、次駆動サイクルにおいて、前駆道サイクルと同じ主駆動パルスP1を用いて駆動するように駆動パルス選択回路104を制御する。同時に制御回路103は、十分なエネルギ状態の駆動が連続して行われた回数(ランク変更計数値N)を0にリセットする。
【0136】
制御回路103は、パターン(0,1,0/1)の場合、十分なエネルギ状態の回転と判定して、十分なエネルギ状態の駆動が連続して行われた回数を計数し、ランク変更計数値Nが所定値に達するまでは、現在の主駆動パルスP1のランクを変更することなく、次駆動サイクルにおいて同じ主駆動パルスP1を用いて駆動するように駆動パルス選択回路104を制御する。また、制御回路103は、ランク変更計数値Nが前記所定値に達したときは、次駆動サイクルにおいて1ランク下の主駆動パルスP1にランクダウンして駆動するように駆動パルス選択回路104を制御すると共に、ランク変更計数値Nを0にリセットする。前述したパターン(1,1,0/1)、(0,1,0/1)のいずれかが現れるときの駆動状態が、通常行われる駆動状態(通常駆動)である。
【0137】
このように、負荷に対する主駆動パルスP1のエネルギが十分な状態の可能性がある場合、換言すれば区間T1が「0」の場合には、区間T1の終了位置Tcompを後方(区間T2側)の終了位置Tcomp2にシフトさせない。したがって、この場合の区間T1は、区間T1が「1」のときに用いる区間T1よりも所定時間早く終了するようにして、区間T2以後の回転状況を検出する。
【0138】
一方、「ややエネルギが低い状態」、「かなりエネルギが低い状態」、「非常にエネルギが低い状態」のように区間T1において「1」が得られる状態が所定回数累積して得られた場合には、区間T1の終了位置Tcompを後方の終了位置Tcomp2にシフトさせる。本実施の形態では、検出区間Tの幅を一定値に設定しており、区間T1と区間T2の幅の合計を一定値に設定しているため、区間T1の幅が広くなるにともない、区間T2の幅が所定量狭くなるように設定して、以後の回転状況の検出を行う。
【0139】
このように、区間T1における判定値「1」が所定回数発生した場合に、区間T1の終了位置Tcompを後方に所定量シフトすることにより、ロータ202の回転が遅くなることによって誘起信号VRsが区間T1から区間T2内にずれ込んで検出されることを抑制することが可能になる。
【0140】
図13は、本第5の実施の形態の動作をより詳細に説明するためのタイミング図で、
図12と同一部分には同一符号を付している。
図13には、区間T1で判定値「1」が所定回数検出された場合でも、区間T1の終了位置を変更しない例を示している。
図13に示すように、区間T1における判定値「1」が所定の複数回得られたときでも区間T1の幅を変更しない場合、「非常にエネルギが低い状態」において、本来のパターン(1,0,1)が得られずにパターン(1,1,1)が得られ、主駆動パルスP1のランクがアップされずに維持されてしまうことになる。したがって、次駆動サイクルにおいて主駆動パルスP1による駆動が行われ、さらに駆動余裕がなくなると、非回転となって補正駆動パルスP2による駆動が行われ、消費電力が大きくなるという問題がある。しかしながら本発明の実施の形態によれば、係る事態の発生を抑制することができる。
【0141】
また
図13に示すように、「中間静止状態」においては、本来のパターン(1,0,0)が得られずに、「十分なエネルギ状態」と同じパターン(0,1,0)が得られ、中間静止状態となってしまう。本発明の実施の形態では係る事態の発生を抑制することができる。
尚、検出区間Tの幅は必ずしも一定にする必要はなく、区間T1の終了位置Tcompをシフトした場合の検出区間Tの幅と、シフトしない場合の検出区間Tの幅を変えるようにする等種々の変形が可能である。
【0142】
図14は本第5の実施の形態の動作をより詳細に説明するためのタイミング図で、
図12、
図13と同一部分には同一符号を付している。
本第5の実施の形態では、区間T1の終了位置Tcompを終了位置Tcomp2から終了位置Tcomp1に戻す場合、区間T1において判定値「0」が得られたとき直ちに終了位置Tcomp1に戻すのではなく、区間T1において判定値「0」が所定の複数回数得られた場合に終了位置Tcomp1に戻すように構成している。
【0143】
即ち、
図14に示すように、「非常にエネルギ低い状態」よりもエネルギ状態が所定量減少した「極めてエネルギ低い状態」では、ロータ202の回転が遅くなり、区間T1が終了位置Tcomp2に設定されている状態で、区間T1で判定値「0」が得られる場合がある。区間T1の判定値「0」が得られた場合に直ちに終了位置Tcomp1に戻すと、次駆動サイクル以降においてもパターン(0,1,0/1)が得られ、ランクアップが必要な状態だがランクアップされずに、さらに駆動余裕がなくなると非回転となって、補正駆動パルスP2による駆動が生じる可能性がある。
【0144】
しかしながら、本第5の実施の形態のように、区間T1において判定値「0」が所定の複数回数得られた場合に終了位置Tcomp1に戻すように構成することにより、エネルギ状態を正確に判定することが可能になり、適切な主駆動パルスP1を用いたパルス制御が可能になり、補正駆動パルスP2による駆動を低減することができる。
【0145】
また、中間静止の状態の場合には、区間T1の判定値「0」が得られた場合に直ちに終了位置Tcomp1に戻すと、パターン(0,1,0/1)が得られて回転と判定されてしまうことで、補正駆動パルスP2による駆動が行われず、その結果ロータ202が中間位置に静止してしまう可能性がある。
【0146】
本第5の実施の形態のように、区間T1において判定値「0」が所定の複数回数得られた場合に終了位置Tcomp1に戻すように構成することにより、エネルギ状態を正確に判定することが可能になる。したがって、適切な主駆動パルスP1を用いたパルス制御が可能になり、ロータ202が中間位置に停止する事態の発生を抑制し又、補正駆動パルスP2による駆動を低減することが可能になり、低消費電力化が可能になる。
図16は、本発明の実施の形態の動作を示すフローチャートであり、主として制御回路103の処理を示すフローチャートである。
【0147】
以下、
図1、
図2、
図12〜
図16を参照して、本発明の第5の実施の形態の動作を詳細に説明する。
制御回路103は、分周回路102からの時計信号を計数して計時動作を行い、先ず主駆動パルスP1nのランクnを1にリセットし、ランクnを変更するために使用するランク変更計数値(第1計数値)Nを0にリセットし、区間T1の終了位置Tcompを終了位置Tcomp2に変更するために使用する終了位置変更計数値(第2計数値)Ntを0にリセットし、又、区間T1の終了位置Tcompを終了位置Tcomp1に戻すために使用する終了位置リセット計数値(第3計数値)Nrを0にリセットする(
図16のステップS701)。ランク変更計数値N、終了位置変更計数値Nt及び終了位置リセット計数値Nrを計数するカウンタは制御回路103の機能として設けられている。
【0148】
次に制御回路103は、処理ステップS701で設定された最小パルス幅の主駆動パルスP11によりステッピングモータ105を回転駆動するよう制御信号を出力する(ステップS702、S703)。
駆動パルス選択回路104は、制御回路103からの制御信号に対応する主駆動パルスP1n(ここでは主駆動パルスP11)を選択してステッピングモータ105を回転駆動する。ステッピングモータ105は主駆動パルスP11によって回転駆動されて、時刻針107〜109(日付が変わるときにはカレンダ表示部110)を回転駆動する。これにより、ステッピングモータ105が正常に回転した場合には、表示部106では、時刻針107〜109によって現在時刻が表示される。また、カレンダ表示部110によって今日の日付が表示される。
【0149】
制御回路103は、回転検出回路111が所定の基準しきい電圧Vcompを超えるステッピングモータ105の誘起信号VRsを検出したか否かの判定、及び、負荷検出回路112が前記誘起信号VRsの検出時刻tは区間T1内と判定したか否かの判定(即ち、回転検出回路111及び負荷検出回路112が基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T1内で検出したか否かの判定)を行う(ステップS704)。
【0150】
制御回路103は、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T1内で検出していないと判定した場合には(パターンが(0,x,x)の場合である。但し判定値「x」は判定値が「1」か「0」かを問わないことを意味する。)、終了位置リセット計数値Nrに1加算する(ステップS705)。
【0151】
負荷検出回路112は終了位置リセット計数値Nrが累積して所定値になったと判定すると(ステップS706)、区間T1の終了位置Tcompを、区間T1の区間幅が狭くなる所定の第1終了位置Tcomp1に設定すると共に制御回路103は終了位置リセット計数値Nrを0にリセットする(ステップS707)。本第5の実施の形態では、第1終了位置Tcomp1は初期値である。
【0152】
検出区間Tの幅は必ずしも一定値にする必要はないが、本第5の実施の形態では検出区間Tの幅を一定値に設定しており又区間T3の幅も一定値に設定しているため、区間T1の終了位置Tcompが第1終了位置Tcomp1の場合には区間T2の幅が広くなる。また、区間T1の終了位置Tcompが第1終了位置Tcomp1よりも後方で終了する所定位置(第2終了位置Tcomp2)の場合には区間T1の区間幅が広くなるため、区間T2の幅は第1終了位置Tcomp1のときよりも狭くなる。
【0153】
区間T1の第1終了位置Tcomp1及び第2終了位置Tcomp2の位置は、使用する時刻針の重さ等に応じて適宜設定することができる。また、第2終了位置Tcomp2として相互に異なる複数の終了位置を用意しておき、使用する時刻針の重さ等に応じて適切な終了位置Tcomp2を選択して使用するように構成することができる。
【0154】
制御回路103は、前述したようにして負荷検出回路112が終了位置Tcompを初期値である第1終了位置Tcomp1に設定した状態で、区間T2において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出したか否かを判定する(ステップS708)。
一方、負荷検出回路112は、処理ステップS706において終了位置リセット計数値Nrが所定値になっていないと判定すると、終了位置Tcompを変更することなく処理ステップS708に移行して、区間T2において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出したか否かを判定する。
【0155】
このように、負荷検出回路112は、終了位置リセット計数値Nrが累積して所定値になったとき、区間T1の終了位置Tcompを第1終了位置Tcomp1に設定するように構成している。したがって、
図12〜
図14に関して前述したように、負荷に対する主駆動パルスP1のエネルギ状態を正確に判定することが可能になり、適切な主駆動パルスP1を用いたパルス制御が可能になる。
【0156】
即ち、区間T1の終了位置Tcompを第1終了位置Tcomp1に戻すことによって
図13に示したように、「十分なエネルギ状態」の検出を正確に行うことができる。また、区間T1の判定値「0」がリセットされる前に累積して所定回数計数になった場合に終了位置Tcomp1に変更しているため、エネルギ状態に応じたパルス制御をより正確に行うことが可能である。
【0157】
次に制御回路103は、処理ステップS708において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2内で検出していないと判定した場合(パターンが(0,0,x)の場合である。)、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T3内で検出したか否かを判定する(ステップS709)。
【0158】
制御回路103は、処理ステップS709において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T3内で検出していないと判定した場合(パターンが(x,0,0)の場合であり、非回転の場合である。)、当該駆動サイクルにおいて処理ステップS703の主駆動パルスP1と同極性の補正駆動パルスP2によってステッピングモータ105を強制的に回転させた後(ステップS710)、当該主駆動パルスP1のランクnを1ランクアップして主駆動パルスP1(n+1)に変更すると共に、ランク変更計数値N、終了位置変更計数値Nt及び終了位置リセット計数値Nrを0にリセットした後に処理ステップS702に戻り(ステップS711)、次駆動サイクルではこの主駆動パルスP1(n+1)によって駆動する。
【0159】
制御回路103は、処理ステップS709において、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T3内で検出したと判定した場合(パターンが(x,0,1)の場合である。)、補正駆動パルスP2による駆動は行わずに主駆動パルスP1を1ランクアップして主駆動パルスP1(n+1)に変更すると共に、ランク変更計数値N、終了位置変更計数値Nt及び終了位置リセット計数値Nrを0にリセットした後に処理ステップS702に戻り(ステップS712)、次駆動サイクルではこの主駆動パルスP1(n+1)によって駆動する。
【0160】
制御回路103は、処理ステップS708において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2内で検出したと判定した場合(パターンが(0,1,x)の場合である。)、ランク変更計数値Nに1加算した後(ステップS713)、ランク変更計数値Nが所定値になったか否かを判定する(ステップS714)。
制御回路103は、処理ステップS714において、ランク変更計数値Nが所定値になっていないと判定した場合は処理ステップS702に戻る。
【0161】
制御回路103は、処理ステップS714において、ランク変更計数値Nが所定値になったと判定した場合には主駆動パルスP1を1ランクダウンして主駆動パルスP1(n−1)に変更すると共に、ランク変更計数値N、終了位置変更計数値Nt及び終了位置リセット計数値Nrを0にリセットした後に処理ステップS702に戻り(ステップS715)、次駆動サイクルではこの主駆動パルスP1(n−1)によって駆動する。
【0162】
一方、制御回路103は、処理ステップS704において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T1内で検出したと判定した場合には(パターンが(1,x,x)の場合である。)、終了位置変更計数値Ntに1加算する(ステップS716)。
負荷検出回路112は終了位置変更計数値Ntがリセットされる前に累積して所定値になったと判定した場合(ステップS717)、負荷検出回路112は区間T1の終了位置を第2終了位置Tcomp2に設定すると共に制御回路103は終了位置変更計数値Ntを0にリセットする(ステップS718)。
負荷検出回路112はこの状態で区間T2における誘起信号VRsの判定を行い、制御回路103は、負荷検出回路112の判定結果に基づいて区間T2における判定値を得る(ステップS719)。
【0163】
負荷検出回路112は、処理ステップS717において終了位置変更計数値Ntが所定値に到達していないと判定した場合には、区間T1の終了位置Tcompを第2終了位置Tcomp2に設定することなくステップS719に移行し、この状態で区間T2における誘起信号VRsの判定を行い、制御回路103は、負荷検出回路112の判定結果に基づいて区間T2における判定値を得る(ステップS719)。
【0164】
このように、負荷検出回路112は、終了位置変更計数値Ntのリセットされる前に累積数が所定値になったとき、区間T1の終了位置Tcompを第2終了位置Tcomp2に設定するように構成している。したがって、
図12〜
図14に関して前述したように負荷が急激に増大した場合でも正確な回転検出及びパルス制御を行うことが可能になる。
【0165】
即ち、区間T1において判定値「1」が得られたときでも区間T1の幅を変更しない場合には、
図13に示すように、「非常にエネルギが低い状態」において、本来のパターン(1,0,1)が得られずにパターン(1,1,1)が得られ、主駆動パルスP1のランクが維持されてしまうことになる。
【0166】
したがって、次駆動サイクルにおいて非回転となって補正駆動パルスP2による駆動が行われる可能性があるが、本第5の実施の形態では係る事態の発生を抑制することができる。また
図13に示すように、「中間静止状態」においては、本来のパターン(1,0,0)が得られずに、「十分なエネルギ状態」と同じパターン(0,1,0)が得られ、中間静止状態となってしまう。本発明の実施の形態では係る事態の発生を抑制することができる。また、区間T1の判定値「1」が累積して所定回数得られた場合に終了位置Tcomp1に変更しているため、エネルギ状態に応じたパルス制御をより正確に行うことが可能である。
【0167】
制御回路103は、処理ステップS719において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2内で検出したと判定した場合(パターンが(1,1,x)の場合である。)、ランク変更計数値Nを0にリセットした後に処理ステップS702に戻る(ステップS720)。
【0168】
制御回路103は、処理ステップS719において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2内で検出していないと判定した場合(パターンが(1,0,x)の場合である。)、処理ステップS709に移行する。
以後、前記処理を繰り返すことにより、ステッピングモータ105の回転制御動作が行われる。
【0169】
以上述べたように、本発明の第5の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路は、少なくとも3つの区間T1〜T3に区分した検出区間Tにおいてステッピングモータ105が発生する所定の基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出し、各区間T1〜T3において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出したか否かを表すパターンに基づいて回転状況を検出する回転検出部と、相互にエネルギが相違する複数種類の主駆動パルスP1の中から、前記回転検出部が検出した回転状況に応じた主駆動パルスP1を選択してステッピングモータ105を駆動する制御部とを備え、前記回転検出部は、複数の区間T1〜T3中の最初の区間T1において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを所定の複数回検出したときは、最初の区間T1の終了位置Tcompを後方に所定量シフトして区間T2以後の検出を行うことを特徴としている。
【0170】
また、本発明の第5の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路は、ステッピングモータ105が回転したことを示す誘起信号VRsの検出時点と所定の基準時との大小関係に基づいて主駆動パルスP1を選択し、誘起信号VRsの検出区間Tを少なくとも3分割(区間T1、T2、T3)し、最初の区間T1に基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが発生した場合には主駆動パルスP1のエネルギ状態に駆動余裕が低下してきたとみなして主駆動パルスP1のランクダウンを禁止し、区間T2で発生する誘起信号VRsが区間T3へ完全移行した場合には駆動余裕が無いとみなして主駆動パルスP1をランクアップするようにしたステッピングモータ制御回路において、検出区間Tの最初の区間T1に誘起信号VRsが発生した場合、区間T1の幅を拡大させることを特徴としている。
【0171】
ここで、前記回転検出部は、最初の区間T1において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを所定の複数回検出した場合に、最初の区間T1の終了位置Tcompを後方にシフトして最初の区間T1の幅を所定量広くすると共に検出区間Tの幅が変化しないように他の区間T2の幅を狭くして以後の検出を行うように構成することができる。
また、前記回転検出部は、最初の区間T1の終了位置Tcompを後方に所定量シフトした後、最初の区間T1において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを所定の複数回検出しなかった場合には、最初の区間T1の終了位置Tcompを元に戻して以後の検出を行うように構成することができる。
【0172】
また、検出区間Tを、主駆動パルスP1による駆動後の第1区間T1、第1区間T1よりも後の第2区間T2、第2区間T2よりも後の第3区間T3に区分し、主駆動パルスP1のランクnを変更しないエネルギ状態において、第1区間T1はステッピングモータ105のロータ202を中心とする空間の第2象限IIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、第2区間T2は第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、第3区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間であり、前記回転検出部は、第1区間T1において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを前記所定の複数回検出したときは、第1区間T1の終了位置Tcompを、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出しない場合よりも後方に所定量シフトして以後の検出を行うように構成することができる。
【0173】
また、前記回転検出部は、第1区間T1において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを前記所定の複数回検出した場合に、第1区間T1の終了位置Tcompを後方にシフトして第1区間T1の幅を所定量広くすると共に検出区間Tの幅が変化しないように第2区間T2の幅を狭くして以後の検出を行うように構成することができる。
また、前記回転検出部は、第1区間T1の終了位置Tcompを後方に所定量シフトした後、第1区間T1において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを所定の複数回検出しなかった場合には、第1区間T1の幅を元に戻して狭くすると共に検出区間Tの幅が変化しないように第2区間T2の幅を広くして以後の検出を行うように構成することができる。
【0174】
したがって、主駆動パルスP1に駆動余裕が無くランクアップすべきにも関わらず、ステッピングモータ105が誘起信号VRsを発生する時期の変動によってランクアップしなくなる事態の発生を抑制することが可能になる。
また、駆動余裕が無い場合に、誘起信号VRsが区間T1から区間T2への流出することを防ぐことができ、無理にランク維持された主駆動パルスでの駆動による回転不可を回避することができる。
【0175】
また、カレンダ表示部110等の急激な負荷により、駆動余裕が無いにも関わらず、誘起信号Vrsの区間T2への流出により、ランク維持されてしまうような事態の発生を抑制して、適切なランクアップを行うことが可能になる。
また、主駆動パルスP1での回転不可状態の発生を回避することが可能になるため、補正駆動パルスP2による駆動頻度を抑制し、消費電力を抑制することが可能になる。したがって、電源として電池を使用する場合、電池寿命を長くすることができる。
【0176】
また、本発明の第5の実施の形態に係るムーブメントによれば、主駆動パルスに駆動余裕が無くランクアップすべきにも関わらず、ステッピングモータが誘起信号を発生する時期の変動によってランクアップしなくなる事態の発生を抑制することが可能なアナログ電子時計を構築することができる。
【0177】
また、本発明の第5の実施の形態に係るアナログ電子時計によれば、主駆動パルスに駆動余裕が無くランクアップすべきにも関わらず、ステッピングモータが誘起信号を発生する時期の変動によってランクアップしなくなる事態の発生を抑制することが可能になる。
尚、前記各実施の形態では、検出区間Tを3つの区間T1〜T3に区分したが、2つ以上の区間に区分してもよい。
また、境界を変える方法として、境界Tcomp1のみを変える、境界Tcomp1とともに境界Tcomp2を変える、境界Tcomp2のみを変える等の変更が可能であり、又、検出区間Tの長さに関しても不変又は可変のいずれに構成することも可能である。
【0178】
また、前記各実施の形態では、各駆動パルスのエネルギを変えるために、パルス幅が異なるようにしたが、櫛歯状のパルスの個数を変える、あるいはパルス電圧を変える等によっても駆動エネルギを変えることが可能である。
また、ステッピングモータの応用例として電子時計の例で説明したが、モータを使用する電子機器に適用可能である。