特許第6180846号(P6180846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180846
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】水晶発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   H03B5/32 E
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-165936(P2013-165936)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-35732(P2015-35732A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】石井 康人
【審査官】 ▲高▼須 甲斐
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−020747(JP,U)
【文献】 実開昭59−118307(JP,U)
【文献】 特開2000−341044(JP,A)
【文献】 特開2004−297166(JP,A)
【文献】 特開平07−297639(JP,A)
【文献】 特開2000−082922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子と、前記水晶振動子の一端に接続し、前記水晶振動子の出力信号を増幅するトランジスタとを備えた水晶発振器であって、
経時変化によって容量が低下する特性を備えるエージング特性調整用コンデンサを設け、
前記水晶振動子の他端には、前記エージング特性調整用コンデンサの一端のみが接続され、前記エージング特性調整用コンデンサの他端が接地され、
前記エージング特性調整用コンデンサの前記特性が、経時変化によって発振周波数が変動する前記水晶振動子のエージング特性を相殺するよう調整されていることを特徴とする水晶発振器。
【請求項2】
エージング特性調整用コンデンサは、バリキャップダイオードであることを特徴とする請求項1記載の水晶発振器。
【請求項3】
エージング特性調整用コンデンサは、複数の直列接続のコンデンサ又は複数の並列接続のコンデンサ若しくはそれらの組み合わせで構成されていることを特徴とする請求項1記載の水晶発振器。
【請求項4】
複数のコンデンサの内のいずれかをバリキャップダイオードとしたことを特徴とする請求項3記載の水晶発振器。
【請求項5】
エージング特性調整用コンデンサは、セラミックコンデンサ、電解コンデンサ、タンタルコンデンサ、マイラコンデンサ、フィルムコンデンサのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の水晶発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振器に係り、特に良好なエージング特性を備えると共に、低コストで、小型化を図ることができる水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来、水晶発振器の経時変化による出力周波数の変化(エージング特性)を小さく抑えようとすると、水晶振動子のブランクや電極、サポートや封止、パッケージに至るまで経時変化の小さい高安定仕様の材料を用いて、経時変化の小さい製造方法で製造することが必要となっている。
【0003】
ところで、水晶発振器は、用途によって小型化及び表面実装化が要求されるものがあり、小型化及び表面実装化に対応すると、搭載される水晶振動子によってエージング特性が良好ではないものがある。
【0004】
そのような水晶発振器においてエージング特性を補正する技術も知られているが、システムICやROM(Read Only Memory)等を使用した回路によって実現されるため、高価で、回路規模が大きく、小型化の妨げになる。
【0005】
[関連技術]
尚、水晶発振器のエージング特性を良好にする技術としては、特開2001−308641号公報「圧電発振器」(東洋通信機株式会社、特許文献1)、特開2008−178040号公報「発振器」(日本電波工業株式会社、特許文献2)がある。
【0006】
特許文献1には、圧電発振器において、リミッタ回路が、負荷容量の端子間インピーダンスを制御することにより、優れた経年時特性とすることが記載されている。
特許文献2には、発振器の帰還ループに、インダクタンスとバリキャップダイオードから成る周波数選択回路を設け、バリキャップダイオードの容量を制御することにより、発振器の経時変化に応じて負性抵抗を調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−308641号公報
【特許文献2】特開2008−178040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の水晶発振器では、良好なエージング特性を備え、且つ小型化を図ることができる水晶発振器を低コストで実現することは困難であるという問題点があった。
【0009】
尚、特許文献1及び特許文献2には、水晶振動子の接地端子側に、水晶振動子のエージング特性を相殺するような容量抜け特性を備えたコンデンサを備えることは記載されていない。
【0010】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、低コストで、良好なエージング特性を備えると共に小型化を図ることができる水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、前記水晶振動子の一端に接続し、水晶振動子の出力信号を増幅するトランジスタとを備えた水晶発振器であって、経時変化によって容量が低下する特性を備えるエージング特性調整用コンデンサを設け、水晶振動子の他端には、エージング特性調整用コンデンサの一端のみが接続され、エージング特性調整用コンデンサの他端が接地され、エージング特性調整用コンデンサの特性が、経時変化によって発振周波数が変動する水晶振動子のエージング特性を相殺するよう調整されていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、上記水晶発振器において、エージング特性調整用コンデンサは、バリキャップダイオードであることを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、上記水晶発振器において、エージング特性調整用コンデンサは、複数の直列接続のコンデンサ又は複数の並列接続のコンデンサ若しくはそれらの組み合わせで構成されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、上記水晶発振器において、複数のコンデンサの内のいずれかをバリキャップダイオードとしたことを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、上記水晶発振器において、エージング特性調整用コンデンサは、セラミックコンデンサ、電解コンデンサ、タンタルコンデンサ、マイラコンデンサ、フィルムコンデンサのいずれかであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水晶発振器によれば、水晶振動子と、水晶振動子の一端に接続し、水晶振動子の出力信号を増幅するトランジスタとを備えた水晶発振器であって、経時変化によって容量が低下する特性を備えるエージング特性調整用コンデンサを設け、水晶振動子の他端には、エージング特性調整用コンデンサの一端のみが接続され、エージング特性調整用コンデンサの他端が接地され、エージング特性調整用コンデンサの特性が、経時変化によって発振周波数が変動する水晶振動子のエージング特性を相殺するよう調整されている水晶発振器としているので、エージング特性調整用コンデンサの容量低下の特性による水晶振動子の発振周波数の変動によって、水晶振動子が元来備えているエージング特性が補償され、優れたエージング特性を備え、小型化を図ることができる水晶発振器を低コストで実現できる効果がある。
【0017】
また、本発明によれば、エージング特性調整用コンデンサが、バリキャップダイオードである上記水晶発振器としているので、実装後であってもエージング特性調整用コンデンサの容量を微調整することができ、水晶振動子のエージング特性に応じた最適な容量として、優れたエージング特性を備えた水晶発振器を実現できる効果がある。
【0018】
また、本発明によれば、エージング特性調整用コンデンサは、複数の直列接続のコンデンサ又は複数の並列接続のコンデンサ若しくはそれらの組み合わせで構成されている上記水晶発振器としているので、水晶振動子のエージング特性に応じて容量抜け特性を最適化することができ、優れたエージング特性を備えた水晶発振器を実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係る水晶発振器の構成を示す回路図である。
図2】水晶振動子のエージング特性の例を示す特性図である。
図3】一般的なコンデンサの経年変化特性の例を示した特性図である。
図4】調整用コンデンサの別の接続例を示す回路図である。
図5】負荷容量に対する共振周波数オフセット量の一例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る水晶発振器は、水晶振動子と接地端子との間に、経時変化によって容量が低下するコンデンサを設け、当該コンデンサによる水晶振動子の周波数変化が、水晶振動子のマイナス傾向のエージング特性を相殺するプラス傾向の特性となるように調整されているものであり、エージング特性の良好な水晶発振器を低コストで実現できるものである。
【0021】
[実施の形態に係る水晶発振器:図1
図1は、本発明の実施の形態に係る水晶発振器の構成を示す回路図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る水晶発振器(本水晶発振器)は、コルピッツ発振器であり、水晶振動子Xと、水晶振動子Xの発振周波数を増幅するトランジスタTrとを備え、トランジスタTrの一端に水晶振動子の一端が接続されている。
【0022】
そして、トランジスタTrのコレクタには、抵抗R1を介して電源電圧が印加されると共にコンデンサC3の一端が接続され、コンデンサC3の他端は接地されている。
また、トランジスタTrのエミッタは、抵抗R2を介して接地され、ベースは、直列接続のコンデンサC1,C2を介して接地され、コンデンサC1,C2の間の点がトランジスタTrのエミッタに接続されて、出力端子が設けられている。
【0023】
更に、抵抗R1の他端が、抵抗R3の一端に接続され、抵抗R3の他端が水晶振動子XとトランジスタTrのベースとの間の点に接続されると共に、抵抗R4の一端に接続されている。抵抗R4の他端は接地されている。
【0024】
そして、本水晶発振器の特徴として、水晶振動子Xの他端が、エージング特性を調整するエージング特性調整用コンデンサ(以下「調整用コンデンサ」と記載する)C10が接続され、調整用コンデンサC10の他端は接地されている。
【0025】
調整用コンデンサC10は、水晶振動子Xのエージング特性による周波数変化を補償するものである。つまり、調整用コンデンサ10は、水晶振動子Xのエージング特性とは逆の周波数変化を引き起こす特性を備えたものである。
尚、ここでは、説明を簡単にするために調整用コンデンサ10を1つのコンデンサで構成した例について説明するが、後述するように調整用コンデンサ10を複数のコンデンサの組み合わせとして構成することも可能である。
【0026】
[水晶振動子のエージング特性:図2
次に、水晶発振器に用いられる水晶振動子のエージング特性の例について図2を用いて説明する。図2は、水晶振動子のエージング特性の例を示す特性図である。
図2に示すように、水晶振動子の出力周波数は、長期間に亘る動作によって機械的なストレスが発散されることや、パッケージ内部の材料からの微量なアウトガスの発生により、設定周波数の値からのずれを生じる。
【0027】
図2において、(A)は、機械的ストレス発散によるエージング特性を示し、(B)は、パッケージ内のアウトガス発生によるエージング特性を示している。
水晶振動子全体のエージング特性(C)は、(A)と(B)の特性の和として表され、長期(例えば数年間)における経時変化は、一般的に、設定周波数より低下するマイナス変動となる。
【0028】
[コンデンサの経年変化特性:図3
次に、一般的なコンデンサの経年変化特性について図3を用いて説明する。図3は、一般的なコンデンサの経年変化特性の例を示した特性図である。
図3に示すように、コンデンサは、時間と共に静電容量が低下する「容量抜け」が発生する。
本水晶発振器では、このコンデンサの容量抜けの特性を利用して、水晶振動子のエージング特性を補償して、水晶発振器のエージング特性の向上を図るものである。
【0029】
[エージング特性調整用コンデンサの特性]
ここで、本水晶発振器のエージング特性調整用コンデンサC10の特性について説明する。
調整用コンデンサC10は、容量抜けを生じるコンデンサであり、図1に示したように水晶振動子Xと接地端子との間に設けられている。
経時変化によって調整用コンデンサC10の静電容量が低下すると、水晶振動子の負荷容量が小さくなる。これは、水晶振動子Xの発振周波数をプラス側に変動させる要因となる。
【0030】
[負荷容量の変化と周波数オフセットの関係:図5
負荷容量の変化と発振周波数のオフセットとの関係を図5に示す。図5は、負荷容量に対する共振周波数オフセット量の一例を示す特性図である。
図5に示すように、負荷容量(CL)が小さくなると、周波数オフセット量(Δf/f)は増加する。つまり、負荷容量の減少は、発振周波数をプラス側に変動させるものとなっている。
【0031】
そこで、本水晶発振器では、予め水晶振動子Xのエージング特性を測定しておき、それに応じて、当該エージング特性を良好に相殺できるコンデンサの容量抜けの特性(容量抜け特性)のカーブを決定(算出)し、そのような容量抜け特性を備えたコンデンサを選択して、調整用コンデンサC10として水晶振動子Xに接続する。
これにより、水晶振動子Xと調整用コンデンサC10とのエージング特性が打ち消し合って、経年変化による水晶振動子Xの発振周波数の変動を抑え、水晶発振器のエージング特性を良好にすることができるものである。
【0032】
調整用コンデンサC10としては、セラミックコンデンサ、電解コンデンサ、タンタルコンデンサ、マイラコンデンサ、フィルムコンデンサ等の汎用品を利用することができ、容量抜け特性の他にも、要求されるサイズや実装のタイプ(表面実装かリードタイプか)を考慮して、適切なコンデンサを適宜選択する。
これにより、大きなパッケージも不要となり、エージング特性が良好で、且つ小型化を図ることができる水晶発振器を低コストで実現することが可能となるものである。
【0033】
[応用例:図4
本水晶発振器の応用例について図4を用いて説明する。図4は、調整用コンデンサの別の接続例を示す回路図である。尚、図4では、水晶振動子Xから接地端子までの構成を示しており、他の構成は図1と同様である。
図4(a)は、調整用コンデンサC10としてバリキャップダイオードD1を備えた構成である。
バリキャップダイオードD1をコンデンサとして用いることにより、実装後であっても初期の容量を調整することができるものである。また、バリキャップダイオードD1は、経時変化によって容量抜けを起こすものであり、適切な容量抜け特性のバリキャップダイオードを用いることにより、水晶振動子Xのエージング特性を相殺できるものである。
【0034】
また、1つのコンデンサだけでは良好なエージング特性が得られない場合には、複数のコンデンサを用いて、エージング特性調整用コンデンサとしてもよい。
図4(b)(c)は、エージング特性調整用コンデンサとして複数のコンデンサを備えた例であり、(b)はコンデンサC11とC12を直列に接続した構成、(c)はコンデンサC13とC14を並列に接続した構成を示している。
更に、3個以上のコンデンサを用いて、直列接続と並列接続を組み合わせた構成としてもよい。
【0035】
調整用コンデンサを構成する各コンデンサの特性や接続方法を変えることにより、容量抜け特性を微調整して、複数のコンデンサによる出力周波数の経年変化を水晶振動子Xのエージング特性の反転特性に近いものとすることができ、水晶振動子Xのエージング特性を効率的に相殺して、水晶発振器のエージング特性を良好にすることができるものである。
【0036】
更に、図示は省略するが、調整用コンデンサとしてバリキャップダイオードとコンデンサとを組み合わせて用いてもよく、水晶振動子の接地端子側に、バリキャップダイオードとコンデンサとを直列に接続した構成、又は並列に接続した構成、若しくはそれらを組み合わせた構成とすることも可能である。
いずれの場合も、用いられる水晶振動子Xのエージング特性を効果的に補償するような容量抜け特性となるよう調整された調整用コンデンサを設けることにより、水晶発振器のエージング特性を良好にすることができるものである。
【0037】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る水晶発振器によれば、水晶振動子XとトランジスタTrとを備えたコルピッツ発振器であって、水晶振動子Xと接地端子との間に、経時変化によって静電容量が低下する(容量抜けを生じる)エージング特性調整用コンデンサC10を備え、エージング特性調整用コンデンサC10の容量抜け特性を最適化することにより、水晶振動子Xのマイナス方向のエージング特性を、エージング特性調整用コンデンサC10の負荷容量の減少によるプラス方向のエージング特性で効率的に相殺して、水晶発振器の出力周波数のエージング特性を良好にすることができ、また、小型化を妨げず低コストで実現できる効果がある。
【0038】
また、本水晶発振器によれば、エージング特性調整用コンデンサC10をバリキャップダイオードD1で構成した水晶発振器としているので、実装後であっても容量の微調整を行うことができ、水晶振動子Xのエージング特性に応じた最適な容量抜け特性として、水晶振動子Xのエージング特性を良好に相殺し、良好なエージング特性を備えた水晶発振器を実現できる効果がある。
【0039】
また、本水晶発振器によれば、エージング特性調整用コンデンサを複数のコンデンサの直列接続又は並列接続若しくはそれらの組み合わせで実現した構成としているので、水晶振動子Xのエージング特性に応じて容量抜け特性を微調整することができ、発振器のエージング特性を良好にすることができる効果がある。
【0040】
更に、本水晶発振器によれば、複数のコンデンサのいずれかをバリキャップダイオードとしているので、水晶振動子Xのエージング特性に応じて容量抜け特性を微調整することができ、発振器のエージング特性を良好にすることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、良好なエージング特性を備えると共に、低コストで、小型化を図ることができる水晶発振器に適している。
【符号の説明】
【0042】
X...水晶振動子、 Tr...トランジスタ、 C1〜C3...コンデンサ、 C10〜C14...エージング特性調整用コンデンサ、 R1〜R4...抵抗、 D1...バリキャップダイオード
図1
図2
図3
図4
図5