特許第6180851号(P6180851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180851
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】自動検針システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/54 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   H04B3/54
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-180901(P2013-180901)
(22)【出願日】2013年9月2日
(65)【公開番号】特開2015-50620(P2015-50620A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010386
【氏名又は名称】NECマグナスコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100127199
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】前多 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博之
【審査官】 金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−004389(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125315(WO,A1)
【文献】 特開2006−253971(JP,A)
【文献】 特開2011−114443(JP,A)
【文献】 特開2010−124394(JP,A)
【文献】 6.9 スマートグリッド用のIEEE標準ネットワーク,インプレス標準教科書シリーズ スマートグリッド教科書,株式会社インプレスジャパン,2011年 3月 1日,初版,p.140−143
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要者の電力使用量を計測する複数の電力メータと、
前記複数の電力メータの各々から第1の電力量データを収集する第1のサーバと、
前記第1のサーバに接続された第1のPLCモデムと、
前記複数の電力メータの各々に接続されるとともに、電力線を介して前記第1のPLCモデムと通信を行う複数の第2のPLCモデムと、
需要者宅内の電力を管理する第2のサーバと、
前記第2のサーバに接続された第3のPLCモデムと、
前記複数の電力メータのうち前記第2のサーバを導入する需要者の電力メータに接続されるとともに、前記電力線を介して前記第3のPLCモデムと通信を行う第4のPLCモデムとを備え、
前記第1乃至第4のPLCモデムは、いずれも10kHz〜450kHzの周波数帯域にてOFDM変調方式による電力線通信を行うものであり、
前記第1のPLCモデムと前記第2のPLCモデムとの間の第1の通信に用いるサブキャリア群の周波数配置と、前記第3のPLCモデムと前記第4のPLCモデムとの間の第2の通信に用いるサブキャリア群の周波数配置が相互干渉しない程度にずれていることを特徴とする自動検針システム。
【請求項2】
前記第1および第2の通信に用いる各サブキャリアのバンド幅はBwであり、
前記第1の通信に用いるサブキャリア群の周波数配置と前記第2の通信に用いるサブキャリア群の周波数配置とのずれ量はBw/4である、請求項1に記載の自動検針システム。
【請求項3】
前記第1および第2の通信に用いる各サブキャリアのバンド幅はBwであり、
前記第1の通信に用いるサブキャリア群の中から選ばれた中心周波数が最も低いサブキャリアの当該中心周波数をfc1とし、
前記第2の通信に用いるサブキャリア群の中から選ばれた中心周波数が最も低いサブキャリアの当該中心周波数をfc2とするとき、
中心周波数の差(|fc1−fc2|)が、Bw/4である、請求項1に記載の自動検針システム。
【請求項4】
前記第2の通信のサブキャリア数は、前記第1の通信のサブキャリア数よりも1つ少ない、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動検針システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLC(Power Line Communication:電力線通信)を利用した電力使用量の検針システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電力会社においては、各需要者の電力使用量を遠隔地から収集する自動検針システムの導入が進みつつある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
自動検針システムでは、親機PLCモデム(以下、検針用親機PLCモデムという)が電柱等に取り付けられ、検針データを親機PLCモデムに送信するための子機PLCモデム(以下、検針用子機PLCモデムという)が各需要者の電力メータに内蔵される。これらのPLCモデムは電柱と電力メータとを結ぶ電力線を通信路として利用するので、新規に通信線を敷設する必要がなく、導入コストの面で非常に有利である。
【0004】
一方、エコロジーの観点から節電への関心が高まっており、ITを使って最適なエネルギー管理を実現するHEMS(Home Energy Management System:家庭内電力管理システム)を導入する家庭が増えてきている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
HEMSでは中央制御装置としてのHEMSサーバが用いられる。HEMSサーバはエアコンなどの各家電機器の運転状況や消費電力をモニタリングしながらそれらを自動制御する。HEMSによれば、エネルギー需給を可視化し、電気を自動制御して生活の快適さを保ちながら節電することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−223063号公報
【特許文献2】特開2011−254229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
HEMSにおいて、家庭内の全消費電力を把握するために電力メータから電力量データを取得したいという要望がある。しかし、電力メータ及び自動検針システムは電力会社の管理下で運用されており、HEMSは各家庭内で閉じられたシステムであるため、相互の連携は困難である。
【0008】
そこで、電力メータ内にHEMS用子機PLCモデムを設置し、HEMSサーバにHEMS用親機PLCモデムを接続し、自動検針システムとは無関係にHEMSサーバが電力メータと通信する方法が検討されている。この場合、HEMSサーバから親機−子機PLCモデムを介して電力メータに向けて電力量データの送信リクエストを送信すると、電力メータが電力量データをHEMSサーバに向けて送信するようにあらかじめ手順を設定しておけばよい。この方法によれば、HEMS側でも電力量データを利用することが可能となる。
【0009】
しかしながら、電力メータはHEMS用子機PLCモデムおよびHEMS用親機PLCモデムを介してHEMSサーバに向けて電力量データを送信すると、HEMS用子機PLCモデムの送信信号が同じ電力線に接続されている他の需要者の検針用子機PLCモデムに届いてしまうという問題がある。このとき、他の検針用子機PLCモデムが検針用親機PLCモデムと通信している最中であれば、信号が干渉して通信障害となるおそれがある。自動検針システムには検針データを極めて高い収率で確実に収集できることが求められており、そのためには通信障害の原因を徹底的に排除する必要がある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、電力メータとHEMSサーバとの間でPLCモデムを用いた電力線通信を実現しつつ、検針システム側の親機−子機PLCモデム間の通信障害を抑えて検針データの収率を高めることが可能な自動検針システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明による自動検針システムは、需要者の電力使用量を計測する複数の電力メータと、前記複数の電力メータの各々から第1の電力量データを収集する第1のサーバと、前記第1のサーバに接続された第1のPLCモデムと、前記複数の電力メータの各々に接続されるとともに、電力線を介して前記第1のPLCモデムと通信を行う複数の第2のPLCモデムと、需要者宅内の電力を管理する第2のサーバと、前記第2のサーバに接続された第3のPLCモデムと、前記複数の電力メータのうち前記第2のサーバを導入する需要者の電力メータに接続されるとともに、前記電力線を介して前記第3のPLCモデムと通信を行う第4のPLCモデムとを備え、前記第1のPLCモデムと前記第2のPLCモデムとの間のOFDM変調方式による第1の通信に用いるサブキャリア群の周波数配置と、前記第3のPLCモデムと前記第4のPLCモデムとの間のOFDM変調方式による第2の通信に用いるサブキャリア群の周波数配置がずれていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、検針システム及びHEMSのいずれか一方から見た他方の信号はノイズとみなされるので、通信の相互干渉を防止することができる。したがって、第1の電力メータと第2のサーバとの間でPLCモデムを用いた電力線通信を実現しつつ、検針システム側の第1−第2PLCモデム間の通信障害を抑えて検針データの収率を高めることができる。
【0013】
本発明において、前記第1および第2の通信に用いる各サブキャリアのバンド幅はBwであり、前記第1の通信に用いるサブキャリア群の周波数配置と前記第2の通信に用いるサブキャリア群の周波数配置とのずれ量はBw/4であることが好ましい。また、前記第1および第2の通信に用いる各サブキャリアのバンド幅はBwであり、前記第1の通信に用いるサブキャリア群の中から選ばれた中心周波数が最も低いサブキャリアの当該中心周波数をfc1とし、前記第2の通信に用いるサブキャリア群の中から選ばれた中心周波数が最も低いサブキャリアの当該中心周波数をfc2とするとき、中心周波数の差(|fc1−fc2|)が、Bw/4であることが好ましい。この構成によれば、第1および第2の通信にそれぞれ用いる2つのサブキャリア群の周波数配置を最も大きくずらすことができる。したがって、通信の相互干渉を確実に防止することができ、検針データの収率を高めることができる。
【0014】
本発明において、前記第2の通信のサブキャリア数は、前記第1のサブキャリア数よりも1つ少ないことが好ましい。この構成によれば、サブキャリアを規定の周波数範囲内に収めつつ、できるだけ多くのサブキャリアを用いてHEMS側のOFDM変調方式による通信を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電力メータとHEMSサーバとの間でPLCモデムを用いた電力線通信を実現しつつ、検針システム側の親機−子機PLCモデム間の通信障害を抑えて検針データの収率を高めることが可能な自動検針システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の好ましい実施の形態による自動検針システムの構成を示す模式図である。
図2図2は、PLCモデムの構成を機能的に示すブロック図である。
図3図3は、自動検針システムにおけるCSMA/CAの問題を簡単に説明するための模式図である。
図4図4は、サブキャリア群の周波数配置を模式的に示す図であって、(a)は検針システム側の通信に用いるサブキャリア群、(b)はHEMS側の通信に用いるサブキャリア群をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の好ましい実施の形態による自動検針システムの構成を示す模式図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態による自動検針システム1は、例えば集合住宅10の各戸10a〜10dの電力使用量を検針するためのものであり、電柱2等に設置された検針用親機PLCモデム11(第1のPLCモデム)と、各戸の電力メータ12a〜12dにそれぞれ内蔵された検針用子機PLCモデム13a〜13d(第2のPLCモデム)ならびにHEMS用子機PLCモデム14a〜14d(第4のPLCモデム)と、HEMSを導入する家庭に設置されたHEMSサーバ17と、HEMSサーバ17において電力線通信を実現するためのHEMS用親機PLCモデム18(第3のPLCモデム)とを備えている。
【0020】
変電所3から供給される電力は柱上トランス4、電力引き込み線5a、電力メータ12a〜12dおよびブレーカ16a〜16dを経由して各需要者a〜dの家電機器9a〜9dにそれぞれ供給される。検針用親機PLCモデム11の一方の通信端子は例えば光ネットワーク6を介して検針サーバ7(第1のサーバ)に接続されており、他方の通信端子は電力引き込み線5aに接続されている。
【0021】
電力メータ12a〜12d内の検針用子機PLCモデム13a〜13dの一方の通信端子は対応する電力メータ12a〜12dのコントローラ15a〜15dにそれぞれ接続されており、他方の通信端子は電力引き込み線5aに接続されている。HEMS用子機PLCモデム14a〜14dも同様に、その一方の通信端子は対応する電力メータ12a〜12dのコントローラ15a〜15dにそれぞれ接続されており、他方の通信端子は電力引き込み線5aに接続されている。
【0022】
なお、各子機PLCモデムが電力メータ12a〜12d内に内蔵されている場合、コントローラ15a〜15bはそれらのPLCモデムに対する狭義の電力メータとして位置付けられ、検針用子機PLCモデム13a〜13dならびにHEMS用子機PLCモデム14a〜14bは狭義の電力メータに接続されており、コントローラ15a〜15dの動作は電力メータ12a〜12dの動作と等価であると考えることができる。
【0023】
本実施形態においては需要者aがHEMSを導入しており、HEMSサーバ(第2のサーバ)17は需要者aの宅内にのみ設置されている。HEMSサーバ17は例えばZigBee(登録商標)などの近距離無線ネットワーク8を介して宅内の個々の家電機器9aに接続されている。HEMS用親機PLCモデム18の一方の通信端子はHEMSサーバ17に接続されており、他方の通信端子は宅内の電力線5bに接続されている。なお、多くの場合、HEMSサーバ17およびHEMS用親機PLCモデム18は分電盤(不図示)の近くに設置される。
【0024】
図2は、PLCモデム(電力線モデム)の構成を機能的に示すブロック図である。このPLCモデム20は、検針用親機PLCモデム11、検針用子機PLCモデム13a〜13d、HEMS用子機PLCモデム14a〜14d、HEMS用親機PLCモデム18として用いることができる汎用的なものである。
【0025】
図2に示すように、PLCモデム20は、制御部21、メモリ22、インターフェース(I/F)23、通信部24、変調部25、送信部26、復調部27、受信部28およびマルチプレクサ29を有している。
【0026】
制御部21は、上位装置から各種の情報を取得し、取得した情報に基づいてPLCモデム20の各部を制御する。ここにいう上位装置とは、検針用親機PLCモデム11であれば検針サーバ7、HEMS用親機PLCモデム18であればHEMSサーバ17、検針用子機PLCモデム13aやHEMS用子機PLCモデム14aであれば電力メータ12aのコントローラ15aである。
【0027】
メモリ22は、制御部21の指示に従い、上位装置から入力されるデータを記憶する記憶手段である。またメモリ22には設定情報を含む各種情報が記録されている。
【0028】
インターフェース部23は、上位装置とのインターフェースであり、上位装置から上位レイヤデータを受け取り、通信部24に出力する。また、通信部24から上位レイヤデータの入力を受け、上位装置に出力する。
【0029】
通信部24はヘッダーを含む送受信信号の処理を行う機能部であり、例えばDSP(Digital Signal Processor)によって構成される。具体的な処理としては、インターフェース部23から送信すべき上位レイヤデータの供給を受け、パイロットデータや宛先MACアドレスなどを含むヘッダーと誤り訂正のための冗長データとを付加し、送信データとして変調部25に送出する。また、復調部27からヘッダーと上位レイヤデータとを含む受信データの入力を受け、その中のヘッダーに応じた処理および誤り訂正処理を行うとともに、上位レイヤデータのインターフェース部23への出力を行う。
【0030】
変調部25は、制御部21の指示に従い、OFDM変調方式並びに位相変調方式の中から一の変調方式を選択する。そして、選択した一の変調方式を用い、送信データに基づいて搬送波信号を変調し、変調方式に応じた既知の同期信号を含む所定のプリアンブルを付加するとともに、電波法施行規則の規定(搬送波出力)に則り変調処理に用いた通信方式に応じて信号の振幅を制御した後、送信部26に出力する。
【0031】
送信部26は、変調部25から入力された信号を電力線に送出可能な信号に変換してから、電力線に送出する機能を有する。具体的には、変調部25から入力されるデジタル信号をアナログ信号に変換するとともに、バンドパスフィルタを用いて不要な周波数帯の成分を取り除き、さらに所定の増幅率で増幅して、マルチプレクサ29を介して電力線に送出する。
【0032】
受信部28は、電力線に到来した信号を受信してデジタル信号に変換し、復調部27に出力する機能を有する。具体的には、マルチプレクサ29を介して受信された信号からバンドパスフィルタを用いて不要な高低周波成分を取り除き、さらに所定の増幅率で増幅した後、サンプリングしてデジタル信号に変換し、復調部27に出力する。
【0033】
復調部27は、受信部28から入力されるデジタル信号を、OFDM変調方式および位相変調方式を用いて復調する機能を有する。復調部27は、復調によって得た信号を通信部24に出力する。また復調部27は、受信部28から入力された信号から既知の同期信号を検出する同期検出機能を有している。ここで検出される同期信号は、OFDM変調方式の同期信号又は位相変調方式の同期信号であり、復調部27は、検出した同期信号から復調に用いる変調方式を決定する。
【0034】
自動検針システムでは、10kHz〜450kHzの低周波数帯域の電力線通信が使用される。この電力線通信で使用される変調方式のうち、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing,直交波周波数分割多重)変調方式は、10kHz〜450kHzの帯域をフルに用い、かつサブキャリアごとの適応変調を行えるので、比較的高速かつ信頼性の高い通信を実現できるという利点を有するが、電波法施行規則において全サブキャリアの合計出力値が100mW以下に制限されている。また、115kHz又は132kHzを用いる位相変調方式(位相振幅変調方式を含む)は、搬送波出力が350mW以下に制限されている。位相変調方式は、OFDM変調方式に比べると低速な通信しかできないが、ノイズが多い環境下での通信や遠方との通信に有効である。さらに、200kHz〜450KHzのスペクトル拡散方式では搬送波出力が10mW以下に制限されており、10kHz〜200kHzのスペクトル拡散方式では搬送波出力が30mW以下に制限されている。
【0035】
このように、電力線通信では搬送波出力の最大レベルが規定されているが、検針システム側では確実な通信のため、通常は最大レベルでの通信が行われることが多い。これに対し、HEMS側では検針システム側との信号の干渉を防止するため、検針システム側の送信信号よりも低い出力レベルで送信信号を出力することが好ましいが、ほぼ最大レベルで出力することも可能である。後述するように、HEMSサーバ17と電力メータ12aとの間の通信に用いるOFDMサブキャリア群の周波数配置は、検針システム側の通信に用いるOFDMサブキャリア群の周波数配置とずれており、相互の通信干渉が発生しないからである。
【0036】
図1の構成において、電力会社による自動検針の方法は従来通りである。すなわち、各戸の検針データ(第1の電力量データ)は電力メータ12a〜12dによって計測され、検針用子機PLCモデム13a〜13dを介して検針用親機PLCモデム11に送信され、さらに光ネットワーク6を介して検針サーバ7に転送される。電力量データは、検針サーバ7からのリクエストに応じて送信されてもよく、あるいは電力メータ12a〜12dが所定のタイミングで自発的に送信してもよい。これにより、各戸の検針データが自動的に収集される。
【0037】
次に、HEMSサーバ17による電力量データの取得方法について説明する。
【0038】
HEMSサーバ17はHEMS用親機PLCモデム18およびHEMS用子機PLCモデム14aを介して電力メータ12a(第1の電力メータ)と通信可能である。HEMSサーバ17が電力メータ12aに向けて電力量データの送信リクエストを送信すると、電力メータ12aは電力量データ(第2の電力量データ)をHEMSサーバ17に返信する。しかし、HEMS用子機PLCモデム14aから送信された電力量データは、電力メータ12aにはもちろんのこと、同じ電力線5(5a,5b)に接続されている他の需要者b〜dの電力メータ12b〜12dにも到達してしまう。そのため、検針サーバ7が検針用親機PLCモデム11および検針用子機PLCモデム13a〜13dを介していずれかの電力メータ12a〜12dと通信している最中であれば信号が干渉して通信障害となることは上述したとおりである。
【0039】
また、電力線通信ではメディアアクセス制御方式としてCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)が採用されている。CSMA/CAは、同一のチャネルに複数のユーザがアクセスする際の競合を回避する方式である。CSMA/CDのように、同一のチャネルに複数のユーザが同時にアクセスすると、信号の衝突(コリジョン)が発生してしまうが、CSMA/CAはそのような衝突が起こらないように送信状況を常に監視し、通信路が所定時間以上継続して空いていることを確認した後にデータを送信する。そのため、図3に示すように、検針システム側において信号を送信しようとした際に、HEMS側の信号を検知すると、その後の所定時間内は一切の通信を行わず、所定時間経過後に信号を再送することから、無駄な待ち時間が生じることになる。
【0040】
自動検針システムでは、所定時間(たとえば30分)ごとに電力使用量を収集できることが求められているが、信号の検知が頻繁に発生すると上記の待ち時間が累積して、対象となるすべての需要者の電力メータから30分以内にデータを収集しきれないおそれがある。換言すると、電力メータの収容数を増やすことができない。そこで本実施形態においては、検針システム側のOFDM変調方式による通信に用いるサブキャリア群の周波数配置と、HEMS側のOFDM変調方式による通信に用いるサブキャリア群の周波数配置をずらすことで上記問題を解決する。
【0041】
図4は、サブキャリア群の周波数配置を模式的に示す図であって、(a)は検針システム側の通信に用いるサブキャリア群、(b)はHEMS側の通信に用いるサブキャリア群をそれぞれ示している。
【0042】
図4(a)に示すように、検針システム側のサブキャリア群は、通常の周波数配置を有している。すなわち、10kHzから450Hzまでの周波数帯域内に多数のサブキャリアが密に配置されている。本実施形態において、各サブキャリアのバンド幅Bw=16.6kHz、最も低周波側のサブキャリアSCL1の中心周波数fc1=18.8kHz、サブキャリア数N1=53である。
【0043】
一方、図4(b)に示すように、HEMS側のサブキャリア群は、通常の周波数配置を高周波側に少しずらしたものである。本実施形態において、検針システム側のサブキャリア群に対するHEMS側のサブキャリア群の周波数配置のずれ量はBw/4である。すなわち、最も低周波側のサブキャリアSCL2の中心周波数fc2=22.95kHzであり、検針システム側の中心周波数f1よりも高周波側に4.15kHzシフトしている。中心周波数の差(|fc1−fc2|)はBw/4となっている。検針システム側と同様、HEMS側の各サブキャリアのバンド幅Bw=16.6kHzである。
【0044】
HEMS側のサブキャリア群のサブキャリア数N2=52である。サブキャリア数を53のままHEMS側のサブキャリア群の周波数配置を高周波側にずらすと、最も高周波側のサブキャリアSCH2が10kHz〜450kHzの周波数帯域の外側にはみ出してしまう。そのため、HEMS側のサブキャリアの数を検針システム側よりも1つ少なくし、10kHz〜450kHzの帯域内に収めるようにしている。
【0045】
OFDM変調方式では、サブキャリアの周波数配置がずれている信号は単なるノイズとみなされ、正しく復調することができずCSMA/CAによる信号検知もできなくなる。つまり、復調可能な周波数配置のサブキャリア信号と、復調不可能な配置のサブキャリア信号とを同時に受信した場合、前者はデータとして復調され、後者はノイズとして無視される。したがって、上記のように検針システム側の通信とHEMS側の通信が同時に行われても一方の通信が他方の通信を妨害することがなく、通信の干渉を防止することができる。
【0046】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
【0047】
例えば、上記実施形態では、検針システム側の通信に用いるサブキャリア群の周波数配置とHEMS側の通信に用いるサブキャリア群の周波数配置とのずれ量をBw/4としたが、ずれ量は通信の相互干渉を防止できる(他方を復調できない)限りにおいて特に限定されず、例えばBw/6としてもよく、Bw/8としてもよい。また、上記実施形態では、HEMS側の通信のサブキャリア数が検針システム側のサブキャリア数よりも1つ少ない場合を挙げたが、本発明はこのような場合に限定されず、サブキャリア数が2つ以上少なくてもかまわない。
【0048】
また、上記実施形態では、検針用子機PLCモデム13a〜13dおよびHEMS用子機PLCモデム14a〜14dが電力メータ12a〜12dに内蔵されたものであるが、電力メータに外部から接続されるいわゆる外付けタイプであってもかまわない。また、電力メータ12a〜12dは検針用子機PLCモデム13a〜13dとHEMS用子機PLCモデム14a〜14dの2つのPLCモデムをそれぞれ内蔵しているが、1つの共通のPLCモデムで両方の機能を兼用してもかまわない。この場合は、子機PLCモデムがHEMS用親機PLCモデムと通信するタイミングが、検針用親機PLCモデムと通信するタイミングと重複しないようにすればよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、説明の便宜上、需要者aだけがHEMSを導入しており、HEMSサーバ17は需要者aの宅内にのみ設置されているが、他の需要者b〜dがHEMSを導入してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1 自動検針システム
2 電柱
3 変電所
4 柱上トランス
5a,5b 電力線
6 光ネットワーク
7 検針サーバ
8 近距離無線ネットワーク
9a〜9d 家電機器
10 集合住宅
10a〜10d 需要者の各戸
11 検針用親機PLCモデム
12a〜12d 電力メータ
13a〜13d 検針用子機PLCモデム(第2のPLCモデム)
14a〜14d HEMS用子機PLCモデム
15a〜15d コントローラ
16a〜16d ブレーカ
17 HEMSサーバ
18 HEMS用親機PLCモデム
20 PLCモデム
21 制御部
22 メモリ
23 インターフェース部
24 通信部
25 変調部
26 送信部
27 復調部
28 受信部
29 マルチプレクサ
図1
図2
図3
図4