(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180858
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20170807BHJP
F25D 23/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
F25D11/00 101A
F25D23/00 302D
F25D23/00 302L
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-185845(P2013-185845)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2015-52429(P2015-52429A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2015年11月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】福島工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 真吾
(72)【発明者】
【氏名】神田 精一郎
【審査官】
庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−051543(JP,A)
【文献】
特開2008−048637(JP,A)
【文献】
特開昭63−172876(JP,A)
【文献】
特開昭59−056028(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0196427(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒配管(9)で圧縮機(10)、凝縮器(11)、および膨張部(12)と接続されて、貯蔵室(2)内の空気と熱交換可能に構成された熱交換器(13)と、熱交換器(13)に熱交換風を送給する送風ファン(16)とを備える貯蔵庫であって、
熱交換器(13)は、膨張部(12)で減圧された低圧冷媒が供給される冷却部(17)と、減圧前の高圧冷媒が供給される加熱部(18)と、冷却部(17)および加熱部(18)に固定される複数枚のフィン(19)とを含み、
熱交換器(13)を通過する熱交換風の上流側に冷却部(17)が配置され、冷却部(17)より下流側に加熱部(18)が配置されており、
圧縮機(10)および送風ファン(16)を運転するとともに、冷却部(17)および加熱部(18)に対する冷媒の供給を制御することにより、
冷却部(17)の周囲を通過する熱交換風の冷却と、加熱部(18)の周囲を通過する熱交換風の加熱とのうち少なくとも1つを行って、貯蔵室(2)内の温度を調整することができ、
さらに、熱交換風に含まれる水蒸気を熱交換器(13)の表面で凝縮させることによる除湿と、熱交換器(13)の表面に付着する水分を蒸発させて熱交換風に含ませることによる加湿とのうち少なくとも1つを行って、貯蔵室(2)内の湿度を調整することができ、
貯蔵庫の運転モードを、貯蔵室(2)内の温度および湿度を低下させる降温除湿モードと、貯蔵室(2)内の温度を上昇させ湿度を低下させる昇温除湿モードと、貯蔵室(2)内の温度および湿度を上昇させる昇温加湿モードと、貯蔵室(2)内の温度を低下させ湿度を上昇させる降温加湿モードとに切り替えて、貯蔵室(2)内の温度および湿度を調整することができ、
降温除湿モードにおいては、膨張部(12)で減圧された低圧冷媒液を冷却部(17)に供給し、
昇温除湿モードにおいては、前記低圧冷媒液を冷却部(17)に供給するとともに、圧縮機(10)から吐出される高圧冷媒ガスが凝縮器(11)で凝縮された高圧冷媒液を加熱部(18)に供給し、
昇温加湿モードにおいては、前記高圧冷媒ガスを加熱部(18)に供給し、
降温加湿モードにおいては、前記低圧冷媒液を冷却部(17)に供給し、その供給量を時間の経過に伴って減少させることを特徴とする貯蔵庫。
【請求項2】
昇温加湿モードにおいて、前記高圧冷媒ガスを加熱部(18)に供給するとともに、前記低圧冷媒液を冷却部(17)に供給する請求項1に記載の貯蔵庫。
【請求項3】
冷媒配管(9)が、圧縮機(10)、凝縮器(11)、加熱部(18)、膨張部(12)、および冷却部(17)をループ状に接続する主配管(23)と、加熱部(18)をバイパスする第1バイパス管(24)と、凝縮器(11)をバイパスする第2バイパス管(25)とを有しており、
第1バイパス管(24)は、凝縮器(11)と加熱部(18)の間で主配管(23)から分岐して、加熱部(18)と膨張部(12)の間で主配管(23)に合流しており、
第2バイパス管(25)は、圧縮機(10)と凝縮器(11)の間で主配管(23)から分岐して、第1バイパス管(24)が分岐する個所と加熱部(18)の間で主配管(23)に合流しており、
冷媒配管(9)には、複数の弁(26・27)からなる冷媒の流路切替機構が設けられており、
流路切替機構は、
降温除湿モードにおいては、第1バイパス管(24)に冷媒を流して加熱部(18)を迂回することにより、圧縮機(10)、凝縮器(11)、膨張部(12)、および冷却部(17)を順に循環する冷媒の流れを形成し、
昇温除湿モードにおいては、両バイパス管(24・25)を遮断することにより、主配管(23)で接続した圧縮機(10)、凝縮器(11)、加熱部(18)、膨張部(12)、および冷却部(17)を順に循環する冷媒の流れを形成し、
昇温加湿モードにおいては、第2バイパス管(25)に冷媒を流して凝縮器(11)を迂回することにより、圧縮機(10)、加熱部(18)、膨張部(12)、および冷却部(17)を順に循環する冷媒の流れを形成し、
降温加湿モードにおいては、凝縮器(11)と加熱部(18)の間で主配管(23)を遮断するとともに、両バイパス管(24・25)を遮断することにより、膨張部(12)を経由して冷却部(17)に供給される冷媒の量を時間の経過に伴って減少させる、請求項2に記載の貯蔵庫。
【請求項4】
流路切替機構が、主配管(23)と第1バイパス管(24)の分岐個所に配置される切替弁(26)と、第2バイパス管(25)に配置される開閉弁(27)とで構成されており、
切替弁(26)は、凝縮器(11)から送給された冷媒を加熱部(18)へ流す開状態と、凝縮器(11)から送給された冷媒を第1バイパス管(24)へ流す迂回状態と、凝縮器(11)から送給された冷媒を遮断する閉状態とに切り替えることができ、
開閉弁(27)は、第2バイパス管(25)を開放する開状態と、第2バイパス管(25)を遮断する閉状態とに切り替えることができ、
降温除湿モードにおいては、切替弁(26)を迂回状態、開閉弁(27)を閉状態とし、
昇温除湿モードにおいては、切替弁(26)を開状態、開閉弁(27)を閉状態とし、
昇温加湿モードにおいては、切替弁(26)を閉状態、開閉弁(27)を開状態とし、
降温加湿モードにおいては、切替弁(26)および開閉弁(27)を閉状態とする、請求項3に記載の貯蔵庫。
【請求項5】
冷却部(17)が、熱交換器(13)を通過する熱交換風の方向に、複数段にわたって配置されている請求項1から4のいずれかに記載の貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庫内温度および庫内湿度の調整機能を備えた貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る貯蔵庫においては、貯蔵庫内の温度管理に加えて湿度管理を行って、庫内に収容した食品、例えばチョコレートを好適な状態で保管し、あるいは熟成を行うが、このように貯蔵庫内の湿度調整機能を備えた貯蔵庫は、例えば特許文献1および特許文献2に公知である。特許文献1の貯蔵庫はワイン用の保冷庫であり、この保冷庫では、庫内空気を冷却または加熱する熱交換器と、一対の湿度調整器とが、背面板で収納室と隔てられた庫内空気通風路に配置されている。熱交換器を流れる不凍液等の熱媒体は、熱電変換素子(ペルチェ素子)によって冷却または加熱される。湿度調整器は、固体高分子電解質膜の両側に多孔性電極からなる陽極と陰極とを貼り合わせて構成されており、両極に負の直流電圧を印加すると、触媒の作用によって、陽極では空気中の水分が分解され、陰極では逆に水分が生成される。すなわち、陽極では除湿効果が生じ、陰極では加湿効果が生じる。一対の湿度調整器のうち一方は、陰極が庫内に臨む加湿器であり、他方は陽極が庫内に臨む除湿器である。以上のように構成されるワイン保冷庫によれば、庫内温度の検出値に基づき熱電変換素子の吸熱と放熱とを切り替えることにより、庫内空気を冷却または加熱して、庫内温度を設定値に維持することができる。また、庫内湿度の検出値に基づき加湿器と除湿器をオンオフ制御することにより、庫内空気を加湿または除湿して、庫内湿度を設定値に維持することができる。
【0003】
特許文献2には、加湿器と除湿器を備えた冷蔵クローズドショーケースが開示されている。そこでの加湿器および除湿器は、冷凍サイクルを構成する熱交換器(冷却器)とともに、外箱と内箱の間のダクト内に配置されている。具体的には加湿器は、給水管からドレン水または通常の水の供給を受ける加湿皿と、加湿皿を加熱する加湿ヒータとで構成されており、加湿皿の水を加湿ヒータで加熱して蒸発させることにより、ダクトを流れる冷気を加湿する。除湿器は、冷凍サイクルの圧縮機と凝縮器の間に設けた加熱パイプと、除湿ヒータとで構成されており、両者は熱交換器の風下側に配置されている。圧縮機から吐出される高温の冷媒ガスを加熱パイプに流し、さらに除湿ヒータを通電すると、熱交換器を通過した冷気を加熱して、冷気の相対湿度を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−205739号公報(段落番号0025、0030、0043〜0045、
図10)
【特許文献2】特開平02−213683号公報(第2頁右下段、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係るワイン保冷庫のように、熱交換器とは別に一対の湿度調整器(加湿器と除湿器)を設けると、熱交換器のみを備える一般の保冷庫に比べて、湿度調整器を設ける分だけ部品点数が増加し、製造コストが上昇する。また、湿度調整器における消費電力の分だけランニングコストが上昇する。さらに、湿度調整器の定期的な点検や着霜の除去などのメンテナンスの手間が増加する。特許文献2に係るショーケースにおいても、加湿器を加湿皿と加湿ヒータで構成し、除湿器の一部を除湿ヒータで構成するので、特許文献1と同様の問題が生じる。加湿皿に対する給水設備が不可欠になる不利もある。
【0006】
本発明の目的は、加湿器や除湿器を用いることなく、庫内空気を加湿または除湿して庫内の湿度を好適に維持でき、従って、全体構造を簡素化して製造コスト、ランニングコスト、およびメンテナンスの手間を削減できる貯蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る貯蔵庫は、冷媒配管9で圧縮機10、凝縮器11、および膨張部12と接続されて、貯蔵室2内の空気と熱交換可能に構成された熱交換器13と、熱交換器13に熱交換風を送給する送風ファン16とを備える。熱交換器13は、膨張部12で減圧された低圧冷媒が供給される冷却部17と、減圧前の高圧冷媒が供給される加熱部18と、冷却部17および加熱部18に固定される複数枚のフィン19とを含む。熱交換器13を通過する熱交換風の上流側に冷却部17を配置し、冷却部17より下流側に加熱部18を配置する。圧縮機10および送風ファン16を運転するとともに、冷却部17および加熱部18に対する冷媒の供給を制御することにより、冷却部17の周囲を通過する熱交換風の冷却と、加熱部18の周囲を通過する熱交換風の加熱とのうち少なくとも1つを行って、貯蔵室2内の温度を調整することができ、さらに、熱交換風に含まれる水蒸気を熱交換器13の表面で凝縮させることによる除湿と、熱交換器13の表面に付着する水分を蒸発させて熱交換風に含ませることによる加湿とのうち少なくとも1つを行って、貯蔵室2内の湿度を調整することができることを特徴とする。なお本発明において「高圧冷媒」とは、圧縮機10から吐出される高圧冷媒ガスと、高圧冷媒ガスが凝縮器11で凝縮された高圧冷媒液とを含む概念である。
【0008】
貯蔵庫の運転モードを、貯蔵室2内の温度および湿度を低下させる降温除湿モードと、貯蔵室2内の温度を上昇させ湿度を低下させる昇温除湿モードと、貯蔵室2内の温度および湿度を上昇させる昇温加湿モードと、貯蔵室2内の温度を低下させ湿度を上昇させる降温加湿モードとに切り替えて、貯蔵室2内の温度および湿度を調整する。降温除湿モードにおいては、膨張部12で減圧された低圧冷媒液を冷却部17に供給する。昇温除湿モードにおいては、前記低圧冷媒液を冷却部17に供給するとともに、圧縮機10から吐出される高圧冷媒ガスが凝縮器11で凝縮された高圧冷媒液を加熱部18に供給する。昇温加湿モードにおいては、前記高圧冷媒ガスを加熱部18に供給する。降温加湿モードにおいては、前記低圧冷媒液を冷却部17に供給し、その供給量を時間の経過に伴って減少させる。
【0009】
昇温加湿モードにおいては、前記高圧冷媒ガスを加熱部18に供給するとともに、前記低圧冷媒液を冷却部17に供給することが好ましい。
【0010】
冷媒配管9は、圧縮機10、凝縮器11、加熱部18、膨張部12、および冷却部17をループ状に接続する主配管23と、加熱部18をバイパスする第1バイパス管24と、凝縮器11をバイパスする第2バイパス管25とを有している。第1バイパス管24は、凝縮器11と加熱部18の間で主配管23から分岐して、加熱部18と膨張部12の間で主配管23に合流している。第2バイパス管25は、圧縮機10と凝縮器11の間で主配管23から分岐して、第1バイパス管24が分岐する個所と加熱部18の間で主配管23に合流している。冷媒配管9には、複数の弁26・27からなる冷媒の流路切替機構を設ける。流路切替機構は、降温除湿モードにおいては、第1バイパス管24に冷媒を流して加熱部18を迂回することにより、圧縮機10、凝縮器11、膨張部12、および冷却部17を順に循環する冷媒の流れを形成する。昇温除湿モードにおいては、両バイパス管24・25を遮断することにより、主配管23で接続した圧縮機10、凝縮器11、加熱部18、膨張部12、および冷却部17を順に循環する冷媒の流れを形成する。昇温加湿モードにおいては、第2バイパス管25に冷媒を流して凝縮器11を迂回することにより、圧縮機10、加熱部18、膨張部12、および冷却部17を順に循環する冷媒の流れを形成する。降温加湿モードにおいては、凝縮器11と加熱部18の間で主配管23を遮断するとともに、両バイパス管24・25を遮断することにより、膨張部12を経由して冷却部17に供給される冷媒の量を時間の経過に伴って減少させる。
【0011】
流路切替機構を、主配管23と第1バイパス管24の分岐個所に配置される切替弁26と、第2バイパス管25に配置される開閉弁27とで構成する。切替弁26は、凝縮器11から送給された冷媒を加熱部18へ流す開状態と、凝縮器11から送給された冷媒を第1バイパス管24へ流す迂回状態と、凝縮器11から送給された冷媒を遮断する閉状態とに切り替えることができる。開閉弁27は、第2バイパス管25を開放する開状態と、第2バイパス管25を遮断する閉状態とに切り替えることができる。降温除湿モードにおいては、切替弁26を迂回状態、開閉弁27を閉状態とする。昇温除湿モードにおいては、切替弁26を開状態、開閉弁27を閉状態とする。昇温加湿モードにおいては、切替弁26を閉状態、開閉弁27を開状態とする。降温加湿モードにおいては、切替弁26および開閉弁27を閉状態とする。
【0012】
冷却部17は、熱交換器13を通過する熱交換風の方向に複数段にわたって配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、貯蔵室2内の空気と熱交換可能な熱交換器13に、膨張部12で減圧された低圧冷媒が流れる冷却部17と、減圧前の高圧冷媒が流れる加熱部18とを設けた。そのうえで、冷却部17および加熱部18に対する冷媒の供給を制御することにより、冷却部17の周囲を通過する熱交換風の冷却と、加熱部18の周囲を通過する熱交換風の加熱とのうち少なくとも1つを行って、貯蔵室2内の温度を調整するようにした。さらに、熱交換風に含まれる水蒸気の凝縮すなわち除湿と、熱交換器13の表面の水分の蒸発すなわち加湿とのうち少なくとも1つを行って、貯蔵室2内の湿度を調整するようにした。つまり、熱交換器13が貯蔵室2内の温度調整器としてはもちろん、湿度調整器としても機能するようにしたので、専用の湿度調整器を省略して、貯蔵庫の全体構造を簡素化することができる。従って、専用の湿度調整器を備える従来の貯蔵庫に比べて、部品点数を減らして製造コストを削減し、また、消費電力を減らしてランニングコストを削減し、さらに、専用の湿度調整器の定期的な点検や着霜の除去などのメンテナンスの手間を削減することができる。
【0014】
貯蔵庫の運転モードを、貯蔵室2内の温度および湿度を低下させる降温除湿モードと、貯蔵室2内の温度を上昇させ湿度を低下させる昇温除湿モードと、貯蔵室2内の温度および湿度を上昇させる昇温加湿モードと、貯蔵室2内の温度を低下させ湿度を上昇させる降温加湿モードとに切り替えて、貯蔵室2内の温度および湿度を調整する。これによれば、貯蔵室2内の検出温度および検出湿度を設定値と比較し、比較結果から最適なモードを選択して実行することにより、貯蔵室2内の温度および湿度を速やかに設定値に近付けることができる。例えば、検出温度および検出湿度が共に設定値よりも高い場合には、降温除湿モードを実行し、検出温度が設定値よりも低く検出湿度が設定値よりも高い場合には、昇温除湿モードを実行するのが効果的である。また、検出温度と検出湿度が共に設定値よりも低い場合には、昇温加湿モードを実行し、検出温度が設定値よりも高く検出湿度が設定値よりも低い場合には、降温加湿モードを実行するのが効果的である。
【0015】
具体的には、降温除湿モードにおいては、膨張部12で減圧された低圧冷媒液を冷却部17に供給することにより、冷却部17の内部で低圧冷媒液を蒸発させて、冷却部17を冷却する。これにより、冷却部17の周囲を通過する熱交換風が冷却されるとともに、当該熱交換風中の水分が凝縮して、冷却部17やフィン19の表面に付着し霜となる。つまり、降温除湿モードにおいては、熱交換器13を通過する熱交換風の温度と湿度が共に低下する。この熱交換風を貯蔵室2へ吹出し続けることにより、貯蔵室2内の温度および湿度を低下させることができる。
【0016】
昇温除湿モードにおいては、先の降温除湿モードと同様に冷却部17を冷却し、さらに、凝縮器11から加熱部18へ高圧冷媒液を供給することにより、加熱部18を加熱する。従って、熱交換器13を通過する熱交換風は、まず冷却部17の周囲で冷却および除湿され、次いで加熱部18の周囲で加熱される。冷却部17による冷却作用に対し、加熱部18による加熱作用が勝ることにより、熱交換器13を通過する間に熱交換風の温度は上昇し、また、冷却部17による除湿作用によって湿度は低下する。この熱交換風を貯蔵室2へ吹出し続けることにより、貯蔵室2内の温度を上昇させ、湿度を低下させることができる。凝縮器11で凝縮された高圧冷媒液の温度は、圧縮機10から吐出される高圧冷媒ガスの温度よりは低く、膨張部12で減圧された低圧冷媒液の温度よりは高い「中温」である。加熱部18に中温の冷媒液を供給すると、冷却部17を低温の冷媒液が流れていることと相俟って、冷却部17等の表面に付着する霜を全くもしくは殆ど融解させることなく、加熱部18の周囲を通過する熱交換風を加熱することができる。
【0017】
昇温加湿モードにおいては、圧縮機10から加熱部18へ高圧冷媒ガスを供給することにより、加熱部18を先の昇温除湿モードよりも高い温度まで加熱する。この高熱を受けて、冷却部17やフィン19に付着する霜が融解し、さらに送風ファン16から送給される熱交換風によって蒸発する。この水蒸気が熱交換風に混合することにより、熱交換風の湿度が上昇する。また、加熱部18が発する高熱により、熱交換風の温度も上昇する。つまり、昇温加湿モードにおいては、熱交換風の温度と湿度が共に上昇する。この熱交換風を貯蔵室2へ吹出し続けることにより、貯蔵室2内の温度および湿度を上昇させることができる。
【0018】
降温加湿モードにおいては、冷却部17に対する低圧冷媒液の供給量を、時間の経過に伴って減少させる。冷却部17に低圧冷媒液が充分に供給される間は、先の降温除湿モードと同様に、熱交換器13を通過する熱交換風が冷却および除湿される。この熱交換風が貯蔵室2へ吹出されることにより、貯蔵室2内の温度および湿度が低下する。しかし、時間の経過に伴って冷却部17内の冷媒が減少すると、冷却部17の表面温度が貯蔵室2の室温近くまで上昇して、熱交換器13を通過する熱交換風による熱交換が行われなくなる。また、冷却部17の表面温度が上昇すると、送風ファン16に熱交換風が送給されることと相俟って、冷却部17やフィン19に付着する霜が融解し蒸発する。この水蒸気が熱交換器13を通過する熱交換風に混合することにより、熱交換風の湿度が上昇する。つまり、冷却部17内の冷媒の減少後は、熱交換風の温度は変化せず湿度は上昇する。この熱交換風を貯蔵室2へ吹出し続けることにより、降温加湿モードの開始時に一旦低下した湿度を、開始時点を超える値まで上昇させることができる。つまり、降温加湿モードの全体では、貯蔵室2内の温度は開始時に比べて低下し、湿度は開始時に比べて上昇する。
【0019】
昇温加湿モードにおいて、高圧冷媒ガスを加熱部18に供給するとともに、低圧冷媒液を冷却部17に供給するようにしていると、加熱部18の周囲で加熱される前の熱交換風を、冷却部17の周囲で冷却することができる。これにより、熱交換器13を通過した後の熱交換風の温度が、通過する前に比べて極端に上昇することを防ぐことができるので、貯蔵室2内の温度が急激に上昇することを防ぐことができる。また、低圧冷媒液を冷却部17に供給することにより冷却部17を冷却すると、冷却部17やフィン19に付着する霜が、加熱部18から伝わる高熱によって急激に融解し、蒸発することを防止できる。これにより、熱交換器13を通過した後の熱交換風の湿度が、通過する前に比べて極端に上昇することを防ぐことができるので、貯蔵室2内の湿度が急激に上昇することを防ぐことができる。
【0020】
冷媒配管9が、圧縮機10、凝縮器11、加熱部18、膨張部12、および冷却部17をループ状に接続する主配管23と、加熱部18をバイパスする第1バイパス管24と、凝縮器11をバイパスする第2バイパス管25とを有し、複数の弁26・27からなる流路切替機構によって、冷媒の流路が切り替えられる構成を採ることができる。これによれば、複数の弁26・27を操作して、各管23〜25を開放・遮断するだけの簡単な制御によって、4種の運転モードを切り替えて、貯蔵室2内の温度および湿度を調整することができる。
【0021】
具体的には、第1バイパス管24に冷媒を流して加熱部18を迂回することにより、圧縮機10、凝縮器11、膨張部12、および冷却部17の順に冷媒を循環させて、降温除湿モードを実行できる。また、両バイパス管24・25を遮断することにより、主配管23で接続した圧縮機10、凝縮器11、加熱部18、膨張部12、および冷却部17の順に冷媒を循環させて、昇温除湿モードを実行できる。また、第2バイパス管25に冷媒を流して凝縮器11を迂回することにより、圧縮機10、加熱部18、膨張部12、および冷却部17の順に冷媒を循環させて、昇温加湿モードを実行できる。また、凝縮器11と加熱部18の間で主配管23を遮断するとともに、両バイパス管24・25を遮断することにより、膨張部12を経由して冷却部17に供給される冷媒の量を時間の経過に伴って減少させて、降温加湿モードを実行できる。
【0022】
流路切替機構を、主配管23と第1バイパス管24の分岐個所に配置される切替弁26と、第2バイパス管25に配置される開閉弁27との2個の弁だけで構成すると、部品点数を少なくして製造コストを削減し、さらに、流路切替機構の制御構造を簡素化することができる。
【0023】
冷却部17を熱交換風の方向に複数段にわたって配置すると、加熱部18から比較的近い段では、加熱部18に高温高圧の冷媒ガスを流す昇温加湿モードを実行した際に、加熱部18から伝わる熱によって、その周囲に付着する霜が融解する。一方、加熱部18から比較的遠い段では、近い段に比べて加熱部18から熱が伝わり難く、従って、周囲に付着する霜は融解し難い。このように、昇温加湿モードにおいて、冷却部17やフィン19に付着する霜の一部だけを融解させると、霜の融解・蒸発によって発生する水蒸気量を制限して、貯蔵室2内の湿度が大幅に上昇することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る貯蔵庫の冷媒回路図である。
【
図3】貯蔵庫の機器室の内部構造を示す縦断側面図である。
【
図4】降温除湿モードにおける冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
【
図5】昇温除湿モードにおける冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
【
図6】昇温加湿モードにおける冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
【
図7】降温加湿モードにおける冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施形態) 本発明をチョコレート熟成用の貯蔵庫に適用した実施形態を、
図1から
図7を用いて説明する。この貯蔵庫は、成型後の包装されたチョコレートを、温度15〜20℃、湿度50%以下の環境下で、約3〜4週間熟成させる。
図2において貯蔵庫は、正面が開口する断熱箱1の内部に形成される貯蔵室2と、断熱箱1の一側に隣接する状態で配置される機器室3とを備えている。貯蔵室2の正面開口は、扉4で揺動開閉される。機器室3には、貯蔵室2を設定温度および設定湿度に維持するための調温調湿ユニットと、設定温度および設定湿度を変更操作するための操作部5などが収容されている。機器室3の正面には機器室パネル6が着脱可能に装着されており、この機器室パネル6に形成された開口を介して、操作部5が機器室パネル6の外面に露出している。
【0026】
図1において調温調湿ユニットは、冷媒配管9で接続される圧縮機10、凝縮器11、キャピラリーチューブ(膨張部)12、および熱交換器13と、凝縮器11に対して熱交換風を送給する凝縮器ファン15と、熱交換器13に対して熱交換風を送給する送風ファン16などで構成される。熱交換器13は、キャピラリーチューブ12で減圧された低圧冷媒が供給される冷却部17と、減圧前の高圧冷媒が供給される加熱部18と、冷却部17および加熱部18に固定される一群のフィン19などで構成される。各フィン19は冷却部17と加熱部18に跨って固定されており、これらフィン19を介して冷却部17と加熱部18は互いに熱伝導可能である。
【0027】
冷媒配管9は、圧縮機10、凝縮器11、加熱部18、膨張部12、および冷却部17をループ状に接続する主配管23と、加熱部18をバイパスする第1バイパス管24と、凝縮器11をバイパスする第2バイパス管25とで構成される。第1バイパス管24は、凝縮器11と加熱部18の間で主配管23から分岐して、加熱部18と膨張部12の間で主配管23に合流している。第2バイパス管25は、圧縮機10と凝縮器11の間で主配管23から分岐して、第1バイパス管24が分岐する個所と加熱部18の間で主配管23に合流している。
【0028】
この冷媒配管9には、切替弁26と開閉弁27からなる流路切替機構が設けられる。切替弁26は三方弁で構成されて、主配管23と第1バイパス管24の分岐個所に配置される。切替弁26は、凝縮器11から送給された冷媒を加熱部18へ流す開状態と、凝縮器11から送給された冷媒を第1バイパス管24へ流す迂回状態と、凝縮器11から送給された冷媒を遮断する閉状態とに切り替えることができる。開閉弁27は二方弁で構成されて、第2バイパス管25の中途部に配置される。開閉弁27は、第2バイパス管25を開放する開状態と、第2バイパス管25を遮断する閉状態とに切り替えることができる。主配管23における圧縮機10の上流側にはアキュムレータ28が配置されており、凝縮器11と切替弁26の間にはドライヤ29が配置されている。加熱部18とキャピラリーチューブ12の間には、キャピラリーチューブ12から加熱部18へ向かって冷媒が逆流するのを防ぐための逆止弁30が配置されている。
【0029】
図3に示すように機器室3には、熱交換器13および送風ファン16を収容する断熱ケース33が設けられている。断熱ケース33の一側面と、機器室3に臨む断熱箱1の一側面とには、それぞれ開口が形成されており、これら両開口を介して、断熱ケース33の内部空間すなわち熱交換室34と貯蔵室2とが連通している。送風ファン16の作用によって貯蔵室2から熱交換室34へ吸入された空気は、熱交換器13に対して入口面13aから進入し、熱交換器13の内部を通過する間に熱交換されて、出口面13bから抜出たのち、貯蔵室2へ吹出される。
【0030】
熱交換器13は全体としてブロック状に形成されており、その入口面13aと出口面13bを除く各面は、断熱ケース33の内壁あるいは貯蔵室2に臨む遮蔽板35によって覆われている。冷却部17は、熱交換器13の入口面13a側の下半部に配置され、加熱部18は出口面13b側の上半部に配置されている。つまり、熱交換器13を通過する熱交換風の上流側に冷却部17が配置され、冷却部17より下流側に加熱部18が配置されている。冷却部17と加熱部18はそれぞれ、熱交換風の方向に2段にわたって配置されており、各段においてフィン19の群を貫通しながら、繰返し前後に反転する状態で配置されている。遮蔽板35の一端に連続して、送風ファン16を支持するファン支持板36が設けられている。熱交換器13の入口面13aに臨む断熱ケース33の底壁には、ドレンパン37が配置されている。熱交換器13からドレンパン37に流下した除霜排水は、排水口38から熱交換室34の外側へ排出され、さらにドレン管39を介して機器室3の外側へ排出される。
【0031】
調温調湿ユニットは、貯蔵室2の内部の温度状態および湿度状態に応じて、貯蔵室2内の温度および湿度を低下させる降温除湿モード(
図4)と、貯蔵室2内の温度を上昇させ湿度を低下させる昇温除湿モード(
図5)と、貯蔵室2内の温度および湿度を上昇させる昇温加湿モード(
図6)と、貯蔵室2内の温度を低下させ湿度を上昇させる降温加湿モード(
図7)の4種の運転モードのいずれかで稼動されて、貯蔵室2の内部の温度状態および湿度状態を好適化する。
【0032】
図4に示すように、降温除湿モードにおける切替弁26は、凝縮器11から送給された冷媒を第1バイパス管24へ流す迂回状態に切り替えられており、開閉弁27は、第2バイパス管25を遮断する閉状態に切り替えられている。この状態では、冷媒が圧縮機10、凝縮器11、キャピラリーチューブ12、および冷却部17の順に循環する。詳しくは、圧縮機10から吐出される高温高圧の冷媒ガスが、凝縮器11で凝縮されて中温高圧の冷媒液となり、次いでキャピラリーチューブ12で減圧されて低温低圧の冷媒液となる。この冷媒液が冷却部17の内部で蒸発し、冷却部17が冷却されると、冷却部17の周囲を通過する熱交換風が冷却されるとともに、熱交換風中の水分が凝縮して、冷却部17やフィン19の表面に付着し霜となる。つまり、降温除湿モードにおいては、熱交換器13を通過する熱交換風の温度と湿度が共に低下する。この熱交換風を貯蔵室2へ吹出し続けることにより、貯蔵室2内の温度および湿度を低下させることができる。
【0033】
図5に示すように、昇温除湿モードにおける切替弁26は、凝縮器11から送給された冷媒を加熱部18へ流す開状態に切り替えられており、開閉弁27は閉状態に切り替えられている。この状態では、冷媒が圧縮機10、凝縮器11、加熱部18、キャピラリーチューブ12、および冷却部17の順に循環する。昇温除湿モードは、凝縮器11で凝縮された中温高圧の冷媒液を加熱部18に供給する点で、先の降温除湿モードと相違する。加熱部18に中温高圧の冷媒液を供給してこれを加熱すると、冷却部17の周囲を通過して低温低湿となった熱交換風が、加熱部18の周囲で加熱されて、温度が上昇すると共に湿度(相対湿度)が低下する。湿度が低下するのは、熱交換風の温度が上昇するのに対し、熱交換風中の水分量は変わらないからである。加熱部18による加熱作用は、冷却部17による冷却作用に勝っており、従って、熱交換器13を通過した後の熱交換風の温度は、熱交換器13に流入する前の熱交換風の温度と比べても高くなる。つまり、昇温除湿モードにおいては、熱交換器13を通過する熱交換風の温度が上昇し湿度が低下する。この熱交換風を貯蔵室2へ吹出し続けることにより、貯蔵室2内の温度を上昇させ、湿度を低下させることができる。
【0034】
図6に示すように、昇温加湿モードにおける切替弁26は、凝縮器11から送給された冷媒を遮断する閉状態に切り替えられており、開閉弁27は、第2バイパス管25を開放する開状態に切り替えられている。この状態では、冷媒が圧縮機10、加熱部18、キャピラリーチューブ12、および冷却部17の順に循環する。昇温加湿モードは、圧縮機10から吐出された高温高圧の冷媒ガスが、凝縮器11で凝縮されることなく、第2バイパス管25を介して加熱部18に流れ込む点で、先の昇温除湿モードと相違する。昇温除湿モードにおいては、凝縮器11で凝縮された中温の冷媒液が加熱部18に供給されるが、冷却部17の側に低温の冷媒液が供給されているので、冷却部17やフィン19に付着する霜は全くもしくは殆ど融解しない。これに対し、昇温加湿モードにおいては、中温の冷媒液よりも高温の冷媒ガスが加熱部18に供給されるので、冷却部17の側に低温の冷媒液が供給されていても、冷媒ガスの高熱が加熱部18からフィン19を介して冷却部17まで伝わり、冷却部17やフィン19に付着する霜が融解し、さらに送風ファン16から送給される熱交換風によって蒸発する。この水蒸気が熱交換風に混合することにより、熱交換風の湿度が上昇する。また、加熱部18が発する高熱により、熱交換風の温度も上昇する。つまり、昇温加湿モードにおいては、熱交換風の温度と湿度が共に上昇する。この熱交換風を貯蔵室2へ吹出し続けることにより、貯蔵室2内の温度および湿度を上昇させることができる。
【0035】
昇温加湿モードにおいて、膨張部12で減圧された低温低圧の冷媒液を冷却部17に供給すると、加熱部18の周囲で加熱される前の熱交換風を、冷却部17の周囲で冷却することができる。これにより、熱交換器13を通過した後の熱交換風の温度が、通過する前に比べて極端に上昇することを防ぐことができるので、貯蔵室2内の温度が急激に上昇することを防ぐことができる。また、冷却部17に低温低圧の冷媒液を供給することにより冷却部17を冷却すると、冷却部17やフィン19に付着する霜が、加熱部18から伝わる高熱によって急激に融解し、蒸発することを防止できる。これにより、熱交換器13を通過した後の熱交換風の湿度が、通過する前に比べて極端に上昇することを防ぐことができるので、貯蔵室2内の湿度が急激に上昇することを防ぐことができる。
【0036】
また、昇温加湿モードにおいて、冷却部17やフィン19に付着する霜の全てが融解することは無く、主に冷却部17の風下側の段、すなわち加熱部18に近い方の段の周囲に付着する霜だけが融解する。冷却部17の風上側の段、すなわち加熱部18から遠い方の段では、近い方の段に比べて加熱部18から熱が伝わり難く、従って、周囲に付着する霜は融解し難い。このように、昇温加湿モードにおいて、冷却部17やフィン19に付着する霜の一部だけを融解させると、霜の融解・蒸発によって発生する水蒸気量を制限して、貯蔵室2内の湿度が大幅に上昇することを防ぐことができる。
【0037】
図7に示すように、降温加湿モードにおける切替弁26および開閉弁27は共に閉状態に切り替えられている。つまり、凝縮器11と加熱部18の間で主配管23が遮断されるとともに、両バイパス管24・25が遮断されている。これにより、凝縮器11から加熱部18に対する冷媒の流入と、凝縮器11から第1バイパス管24を介したキャピラリーチューブ12に対する冷媒の流入と、圧縮機10から第2バイパス管25を介した加熱部18に対する冷媒の流入とが遮断される。従って、降温加湿モードにおいては、先の3種のモードのように冷媒は循環せず、降温加湿モードの開始時に切替弁26および開閉弁27の下流側に残存する冷媒が、加熱管18、膨張部12、および冷却部17を順に通過して圧縮機10に至り、圧縮機10の下流側に回収される(ポンプダウン運転)。
【0038】
降温加湿モードの開始直後は、加熱部18などの内部に位置する冷媒が、キャピラリーチューブ12で減圧されて低温低圧の冷媒液となって、冷却部17へ流れ込む。冷却部17に低温低圧の冷媒液が充分に供給される間は、先の降温除湿モードと同様に、熱交換器13を通過する熱交換風が冷却および除湿される。この熱交換風が貯蔵室2へ吹出されることにより、貯蔵室2内の温度および湿度が低下する。しかし、上記のように管23〜25が遮断されているため、冷却部17に供給される冷媒の量は、時間の経過に伴って減少する。冷却部17内の冷媒が減少すると、冷却部17の表面温度が貯蔵室2の室温近くまで上昇して、熱交換器13を通過する熱交換風による熱交換が行われなくなる。また、冷却部17の表面温度が上昇すると、送風ファン16が熱交換風が送給されることと相俟って、冷却部17やフィン19に付着する霜が融解し蒸発する。この水蒸気が熱交換器13を通過する熱交換風に混合することにより、熱交換風の湿度が上昇する。つまり、冷却部17内の冷媒の減少後は、熱交換風の温度は変化せず湿度は上昇する。この熱交換風を貯蔵室2へ吹出し続けることにより、降温加湿モードの開始時に一旦低下した湿度を、開始時点を超える値まで上昇させることができる。つまり、降温加湿モードの全体では、貯蔵室2内の温度は開始時に比べて低下し、湿度は開始時に比べて上昇する。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る貯蔵庫は、降温除湿モード、昇温除湿モード、昇温加湿モード、および降温加湿モードの4種の運転モードを備えている。次の表1は、各運転モードにおける弁26・27の開閉状態と、圧縮機10およびファン15・16の運転状態とをまとめたものである。圧縮機10および送風ファン16は、モードにかかわらず常時運転する。凝縮器ファン15は、凝縮器11に冷媒が流れる降温除湿モードおよび昇温除湿モードにおいては運転し、凝縮器11に冷媒が流れない(滞留する)昇温加湿モードおよび降温加湿モードにおいては停止する。なお、貯蔵室2内の検出温度および検出湿度が共に設定値に維持されており、貯蔵室2の温度および湿度を変化させる必要が無い状況では、圧縮機10および両ファン15・16の運転を全て停止する。
【0041】
以上の4種の運転モードを備える本実施形態の貯蔵庫によれば、貯蔵室2内の検出温度および検出湿度と、操作部5で設定した設定値とを制御部で比較し、比較結果から最適な運転モードを選択して実行することにより、貯蔵室2内の温度および湿度を速やかに設定値に近付けることができる。例えば、検出温度および検出湿度が共に設定値よりも高い場合には、降温除湿モードを実行し、検出温度が設定値よりも低く検出湿度が設定値よりも高い場合には、昇温除湿モードを実行するのが効果的である。また、検出温度と検出湿度が共に設定値よりも低い場合には、昇温加湿モードを実行し、検出温度が設定値よりも高く検出湿度が設定値よりも低い場合には、降温加湿モードを実行するのが効果的である。なお、貯蔵室2内の検出温度および検出湿度は、それぞれ図示していない温度センサーおよび湿度センサーで検出されて、各センサーの検出信号が制御部へと出力される。
【0042】
次に、制御部による運転モードの切替制御の一例を説明する。通常時は昇温除湿モードと降温加湿モードを交互に実行して、貯蔵室2内の温度を(設定温度±2)℃の範囲に維持する。具体的には、貯蔵室2内の検出温度が(設定温度−2)℃まで低下すると、昇温除湿モードに切り替えて貯蔵室2内の温度を上昇させ、貯蔵室2内の検出温度が(設定温度+2)℃まで上昇すると、降温加湿モードに切り替えて貯蔵室2内の温度を低下させる。貯蔵室2内の湿度は、昇温除湿モードにおいては低下し、降温加湿モードにおいては上昇するから、設定湿度を中心にして一定範囲内で上下に変動しながら、設定湿度付近に維持される。
【0043】
扉4の長時間の開放などの外乱によって、貯蔵室2内の温度が(設定温度±2)℃の範囲から外れて、昇温除湿モードと降温加湿モードだけでは貯蔵室2内の温度と湿度を設定値に維持することが難しくなった場合に、降温除湿モードあるいは昇温加湿モードを実行する。降温除湿モードは、冷却部17に対して低温低圧の冷媒を供給し続けるので、降温加湿モードに比べて空気の冷却能力に優れる。従って、降温除湿モードを実行することにより、貯蔵室2内の温度を速やかに低下させることができる。また、昇温加湿モードは、圧縮機10から吐出された高温高圧の冷媒ガスを加熱部18に供給するので、凝縮器11で凝縮された中温高圧の冷媒液を加熱部18に供給する昇温除湿モードに比べて、空気の加熱能力に優れる。従って、昇温加湿モードを実行することにより、貯蔵室2内の温度を速やかに上昇させることができる。降温除湿モードあるいは昇温加湿モードを行って外乱の影響を解消した後は、昇温除湿モードと降温加湿モードを交互に実行する通常時に復帰する。こうした一連の制御は、制御部に記憶させてあるプログラムに従って自動的に行われる。
【0044】
本実施形態に係る貯蔵庫では、冷却部17やフィン19に付着した霜を融解・蒸発させることにより、貯蔵室2内の湿度を上昇させるので、通常は除霜運転を行わず、霜の付着量が過剰になった場合にのみ除霜運転を行って、霜の付着量を減少させる。除霜運転は、送風ファン16の運転を停止する点以外は、先に説明した昇温加湿モードと同一である。送風ファン16による送風が無い状態では、融解した霜の多くが蒸発することなくドレンパン37に流下する。ドレンパン37に流下した除霜排水は、排水口38から熱交換室34の外側へ排出され、さらにドレン管39を介して機器室3の外側へ排出される。霜を融解・蒸発させて貯蔵室2を加湿する本実施形態の加湿方法によれば、庫内(貯蔵室2および熱交換室34の内部)に存在する水分量を越えて、貯蔵室2が加湿されることは無い。
【0045】
上記の実施形態では、熱交換器13の各フィン19が冷却部17と加熱部18に跨って固定されていたが、全てのフィン19が両管17・18に跨る必要は無く、両管17・18に跨るフィン19とは別に、冷却部17と加熱部18の一方のみに固定されるフィン19を設けることができる。流路切替機構は、切替弁26と開閉弁27の2個の弁からなる構成に限られず、例えば、主配管23と第1バイパス管24の分岐個所に配置した切替弁26に代えて、主配管23と第1バイパス管24の分岐個所の下流側に、それぞれ開閉弁(二方弁)を設けることができる。本発明の適用対象は、上記の実施形態で説明したチョコレート熟成用の貯蔵庫に限られず、例えば、野菜、果物、玄米、ワイン等の保冷庫などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
9 冷媒配管
10 圧縮機
11 凝縮器
12 膨張部(キャピラリーチューブ)
13 熱交換器
16 送風ファン
17 冷却部
18 加熱部
19 フィン
23 主配管
24 第1バイパス管
25 第2バイパス管
26 切替弁
27 開閉弁