特許第6180867号(P6180867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180867
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】建設機械のエンジン支持構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 5/12 20060101AFI20170807BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   B60K5/12 C
   E02F9/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-197347(P2013-197347)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-63186(P2015-63186A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田淵 聡
(72)【発明者】
【氏名】木村 康正
(72)【発明者】
【氏名】増田 京子
(72)【発明者】
【氏名】上田 員弘
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−087462(JP,A)
【文献】 特開2004−090767(JP,A)
【文献】 特開2005−083019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 5/12
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のフレームにエンジンを支持する建設機械のエンジン支持構造において、
前記フレームから突出して設けられて対向する一対のサポートフレームを備え、前記エンジンを下方から支持するマウントブラケットと、
前記一対のサポートフレーム間に固定された複数の板状部材と、
を有し、
各板状部材は、他の前記板状部材の少なくとも1つに、互いの長手方向が交差するようにして接合されており、
前記一対のサポートフレームと少なくとも3つの前記板状部材とで閉空間が形成されていることを特徴とする建設機械のエンジン支持構造。
【請求項2】
3つの前記板状部材が、四角形の3つの辺をなすように接合されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械のエンジン支持構造。
【請求項3】
少なくとも1つの前記板状部材の一端が前記フレームに接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建設機械のエンジン支持構造。
【請求項4】
前記閉空間内に制振性を有する材料、または、運動により制振性を発現する材料が封入されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建設機械のエンジン支持構造。
【請求項5】
前記閉空間内に硬化剤が注入されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建設機械のエンジン支持構造。
【請求項6】
前記マウントブラケットは、前記マウントブラケット上に取り付けられた防振部材を介して前記エンジンを下方から支持しており、
前記一対のサポートフレーム間の上部に空間が形成されるように、各板状部材が配置されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の建設機械のエンジン支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のエンジンを支持する建設機械のエンジン支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の建設機械のエンジンは、建設機械のフレームから突出して設けられたマウントブラケットに対して、防振部材を介して取り付けられる。このような構造とすることで、エンジンで発生した振動は防振部材で低減される。
【0003】
また、特許文献1には、エンジン、ラジエータ、および、シュラウドを支持する支持フレームを、防振ゴムを介してマウントブラケットの上部に取り付けた建設機械のエンジン支持構造が開示されている。この構造によると、エンジンの振動によって冷却ファンがシュラウドに干渉することがないため、ばね定数が十分に低い防振ゴムを用いることができて、高い防振性能を実現することができる。
【0004】
また、特許文献2には、エンジンブラケットの内部に共鳴空間を設けたエンジンの騒音低減構造が開示されている。共鳴空間は連通孔を介してエンジン内部と連通しており、ヘルムホルツ共鳴器を構成している。この構造によると、エンジン騒音遮蔽カバーや吸音材を外付けすることなく、効果的にエンジン放射音を低減することができる。
【0005】
また、特許文献3には、エンジン用ブラケットが備える一対のエンジン用支持脚板の間にエンジン用補強板を固定した建設機械のアッパーフレームが開示されている。この構造によると、エンジン用ブラケットの強度や剛性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−147444号公報
【特許文献2】特開2005−226614号公報
【特許文献3】特開2013−87462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来のエンジン支持構造では、個々のマウントブラケットが独立しているため、剛性が低く固有振動数が低い。また、マウントブラケットの固有振動数と一致する周波数帯域では十分な制振効果を得ることができない。そのため、エンジンの振動が十分に減衰されずにフレームに伝播し、フレーム内を固体伝播した振動が運転室付近や運転室内に伝達することで、操作者に不快感を与えるという問題がある。
【0008】
これに対して、特許文献1のエンジン支持構造は、低周波振動の伝達を減衰させることを目的としており、可聴域の振動の伝播を考慮した構造となっていない。また、特許文献2の騒音低減構造は、空気伝播を低減するものであり、固体伝播に対しては効果がない。また、特許文献3のエンジン用補強板は、エンジン用ブラケットの変形を防ぐためのものであって、エンジンの振動の伝播を考慮したものではない。
【0009】
本発明の目的は、エンジンの振動に起因する騒音を低減させることが可能な建設機械のエンジン支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における建設機械のエンジン支持構造は、建設機械のフレームにエンジンを支持する建設機械のエンジン支持構造において、前記フレームから突出して設けられて対向する一対のサポートフレームを備え、前記エンジンを下方から支持するマウントブラケットと、前記一対のサポートフレーム間に固定された複数の板状部材と、を有し、各板状部材は、他の前記板状部材の少なくとも1つに、互いの長手方向が交差するようにして接合されており、前記一対のサポートフレームと少なくとも3つの前記板状部材とで閉空間が形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、一対のサポートフレーム間に板状部材を固定することで、マウントブラケットの剛性が向上し、マウントブラケットの固有振動数が高くなる。さらに、一対のサポートフレーム間に複数の板状部材を固定し、各板状部材を、他の板状部材の少なくとも1つに、互いの長手方向が交差するようにして接合することで、接合部においてマウントブラケットの剛性が向上する。よって、板状部材同士を接合しない場合よりも少ない数の板状部材で、マウントブラケットの剛性を効率よく高めることができて、マウントブラケットの固有振動数を高めることができる。そして、板状部材の剛性や大きさを変化させることで、マウントブラケットの固有振動数を変化させることができる。よって、マウントブラケットの固有振動数を変化させることで、運転室内で共鳴が起こりやすい周波数帯域など、聴感に影響が大きいと思われる周波数帯域に、マウントブラケットの固有振動数が一致しないようにすることができる。これにより、エンジンの振動が十分に減衰され、運転室内での共鳴による増幅が起こり難くなるので、エンジンの振動に起因する騒音を低減させることができる。また、一対のサポートフレームと少なくとも3つの板状部材とで閉空間を形成することで、閉空間が形成された部分においてマウントブラケットの剛性が向上する。よって、閉空間を形成することで、閉空間を形成しない場合よりも少ない数の板状部材で、マウントブラケットの剛性を効率よく高めることができる。これにより、部品点数を削減することができる。
【0012】
また、本発明における建設機械のエンジン支持構造においては、3つの前記板状部材が、四角形の3つの辺をなすように接合されていてよい。上記の構成によれば、3つの板状部材を、四角形の3つの辺をなすように接合することで、これら3つの板状部材と一対のサポートフレームとで仕切られた、開口を有する空間が形成され、このような空間が形成された部分においてマウントブラケットの剛性が向上する。よって、開口を有する空間を形成することで、開口を有する空間を形成しない場合よりも少ない数の板状部材で、マウントブラケットの剛性を効率よく高めることができる。これにより、部品点数を削減することができる。
【0013】
また、本発明における建設機械のエンジン支持構造においては、少なくとも1つの前記板状部材の一端が前記フレームに接合されていてよい。上記の構成によれば、少なくとも1つの板状部材の一端をフレームに接合することで、接合部においてマウントブラケットの剛性が向上する。よって、板状部材の一端をフレームに接合することで、板状部材の一端をフレームに接合しない場合よりも少ない数の板状部材で、マウントブラケットの剛性を効率よく高めることができる。これにより、部品点数を削減することができる。
【0015】
また、本発明における建設機械のエンジン支持構造においては、前記閉空間内に制振性を有する材料、または、運動により制振性を発現する材料が封入されていてよい。上記の構成によれば、閉空間内に制振性を有する材料、または、運動により制振性を発現する材料を封入することで、サポートフレームを伝播する振動を減衰させることができる。これにより、運転室に伝達するエンジン振動を低減させることができる。
【0016】
また、本発明における建設機械のエンジン支持構造においては、前記閉空間内に硬化剤が注入されていてよい。上記の構成によれば、閉空間内に硬化剤を注入することで、閉空間が形成された部分においてマウントブラケットの剛性がさらに向上する。よって、閉空間内に硬化剤を注入することで、閉空間内に硬化剤を注入しない場合よりも少ない数の板状部材で、マウントブラケットの剛性を効率よく高めることができる。これにより、部品点数を削減することができる。
【0017】
また、本発明における建設機械のエンジン支持構造において、前記マウントブラケットは、前記マウントブラケット上に取り付けられた防振部材を介して前記エンジンを下方から支持しており、前記一対のサポートフレーム間の上部に空間が形成されるように、各板状部材が配置されていてよい。上記の構成によれば、一対のサポートフレーム間の上部に空間が形成されるように各板状部材を配置することで、マウントブラケット上に防振部材を取り付ける作業を行い易くすることができる。これにより、工数を削減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の建設機械のエンジン支持構造によると、一対のサポートフレーム間に複数の板状部材を固定するとともに、各板状部材を、他の前記板状部材の少なくとも1つに、互いの長手方向が交差するようにして接合することで、マウントブラケットの固有振動数が高くなるので、運転室内で共鳴が起こりやすい周波数帯域など、聴感に影響が大きいと思われる周波数帯域に、マウントブラケットの固有振動数が一致しないようにすることができる。これにより、エンジンの振動が十分に減衰され、運転室内での共鳴による増幅が起こり難くなるので、エンジンの振動に起因する騒音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】油圧ショベルの側面図である。
図2】エンジンルーム内を後部側(A方向)から見た図である。
図3】エンジンをB方向から見た図である。
図4図3のC−C断面図である。
図5図3のC−C断面図である。
図6図3のC−C断面図である。
図7】振動レベルの解析結果を示すグラフである。
図8図3のC−C断面図である。
図9図3のC−C断面図である。
図10図3のC−C断面図である。
図11図3のC−C断面図である。
図12図3のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
[第1実施形態]
(油圧ショベルの構成)
本発明の第1実施形態による建設機械のエンジン支持構造(エンジン支持構造)1は、図1に示すように、建設機械である油圧ショベル10に設けられている。なお、建設機械は油圧ショベル10に限定されない。
【0022】
油圧ショベル10は、下部走行体11上に上部旋回体12が旋回自在に搭載され、この上部旋回体12の前部に掘削装置13が装着されて構成されている。下部走行体11は、上部旋回体12が搭載されるカーボディ(図示せず)の左右両側にクローラ式走行装置14を備えている。上部旋回体12を構成するアッパーフレーム(フレーム)15の後部には、アッパーフレーム15、および、パネルやボンネット等のエンジンガード部材16で囲われたエンジンルーム17が設けられている。このエンジンルーム17内には、エンジンとその関連機器が設置されている。また、アッパーフレーム15の前部には運転室18が設けられ、オペレータは運転室18内において座席に着座した状態で操作レバーの操作等を行う。
【0023】
エンジンルーム17内を後部側(A方向)から見た図である図2に示すように、エンジンルーム17内にはエンジン21とその関連機器が設けられている。エンジン21は、その図中左側にファン22を備え、エンジン21の図中右側には油圧ポンプ23が設けられている。エンジン21のファン22側は、アッパーフレーム15に固定されたファン側支持部材31で支持され、エンジン21の油圧ポンプ23側は、アッパーフレーム15に固定されたポンプ側支持部材32で支持されている。
【0024】
エンジン21をB方向から見た図である図3に示すように、ファン側支持部材31は、エンジン21の両側にそれぞれ設けられている。なお、ポンプ側支持部材32についても同様である。ファン側支持部材31は、アッパーフレーム15から突出して設けられたマウントブラケット2と、エンジン21に取付けられたエンジン側ブラケット33と、エンジン側ブラケット33とマウントブラケット2との間に設けられたエンジンマウント(防振部材)34とを有している。エンジンマウント34は、弾性部材を含んで構成されており、マウントブラケット2に対して鉛直方向に取り付けられている。
【0025】
マウントブラケット2は、水平方向に対向する一対のサポートフレーム3と、各サポートフレーム3の上端が接続された天板4と、を有している。天板4にはエンジンマウント34のボルトが挿通される穴が設けられており、この穴に挿入されたボルトにナットを螺合させることで、エンジンマウント34が天板4に固定される。
【0026】
(エンジン支持構造の構成)
本実施形態のエンジン支持構造1は、油圧ショベル10のアッパーフレーム15にエンジン21を支持するものであって、図3のC−C断面図である図4に示すように、ファン側支持部材31のマウントブラケット2と、マウントブラケット2の一対のサポートフレーム3間に固定された3つの板状部材5と、を有している。なお、板状部材5の数はこれに限定されない。本実施形態において、板状部材5は金属製である。このように、一対のサポートフレーム3間に板状部材5を固定することで、マウントブラケット2の剛性が向上し、マウントブラケット2の固有振動数が高くなる。
【0027】
また、最も上に配置された板状部材5aの中間部に、板状部材5aの下に配置された板状部材5bの上端が当接されることで、板状部材5bが板状部材5aに、互いの長手方向が直交するようにして接合されているとともに、最も下に配置された板状部材5cの図中左端部に、板状部材5bの下端が当接されることで、板状部材5bが板状部材5cに、互いの長手方向が直交するようにして接合されている。このように、各板状部材5a〜5cを他の板状部材5a〜5cの少なくとも1つに、互いの長手方向が直交するようにして接合することで、接合部においてマウントブラケット2の剛性が向上する。よって、板状部材5同士を接合することで、板状部材5同士を接合しない場合よりも少ない数の板状部材5で、マウントブラケット2の剛性を効率よく高めることができる。なお、2つの板状部材5は、互いの長手方向が直交するようにして接合される構成に限定されず、互いの長手方向が交差するようにして接合されていればよい。
【0028】
また、3つの板状部材5は、四角形の3つの辺をなすように接合されている。このように、3つの板状部材5を、四角形の3つの辺をなすように接合することで、これら3つの板状部材5と一対のサポートフレーム3とで仕切られた、開口を有する空間36が形成され、このような空間36が形成された部分においてマウントブラケット2の剛性が向上する。よって、開口を有する空間36を形成することで、開口を有する空間36を形成しない場合よりも少ない数の板状部材5で、マウントブラケット2の剛性を効率よく高めることができる。
【0029】
また、最も下に配置された板状部材5cの図中右端がアッパーフレーム15に当接されることで、板状部材5cの右端がアッパーフレーム15に接合されている。このように、板状部材5の一端をアッパーフレーム15に接合することで、接合部においてマウントブラケット2の剛性が向上する。よって、板状部材5の一端をアッパーフレーム15に接合することで、板状部材5の一端をアッパーフレーム15に接合しない場合よりも少ない数の板状部材5で、マウントブラケット2の剛性を効率よく高めることができる。
【0030】
そして、板状部材5の剛性や大きさ、数が調整されることで、マウントブラケット2の固有振動数が、運転室18内で共鳴が起こりやすい周波数帯域など、聴感に影響が大きいと思われる周波数帯域に一致しないようにされている。これにより、エンジン21の振動が十分に減衰され、運転室18内での共鳴による増幅が起こり難くなるので、エンジン21の振動に起因する騒音を低減させることができる。
【0031】
また、一対のサポートフレーム3間の上部に空間6が形成されるように、板状部材5aが天板4から所定間隔をあけて配置されている。このように、サポートフレーム3間の上部に空間6が形成されるように各板状部材5a〜5cを配置することで、マウントブラケット2上にエンジンマウント34を取り付ける作業を行い易くすることができる。即ち、エンジンマウント34のボルトを天板4の穴4aに通し、ナットを螺合させる際に、空間6内にスパナ等の締結工具や手を挿入することができるので、締結作業が容易になる。
【0032】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るエンジン支持構造1によると、一対のサポートフレーム3間に板状部材5を固定することで、マウントブラケット2の剛性が向上し、マウントブラケット2の固有振動数が高くなる。さらに、一対のサポートフレーム3間に3つの板状部材5を固定し、各板状部材5a〜5cを、他の板状部材5a〜5cの少なくとも1つに、互いの長手方向が交差するようにして接合することで、接合部においてマウントブラケット2の剛性が向上する。よって、板状部材5同士を接合しない場合よりも少ない数の板状部材5で、マウントブラケット2の剛性を効率よく高めることができて、マウントブラケット2の固有振動数を高めることができる。そして、板状部材5の剛性や大きさを変化させることで、マウントブラケット2の固有振動数を変化させることができる。よって、マウントブラケット2の固有振動数を変化させることで、運転室18内で共鳴が起こりやすい周波数帯域など、聴感に影響が大きいと思われる周波数帯域に、マウントブラケット2の固有振動数が一致しないようにすることができる。これにより、エンジン21の振動が十分に減衰され、運転室18内での共鳴による増幅が起こり難くなるので、エンジン21の振動に起因する騒音を低減させることができる。
【0033】
また、3つの板状部材5を、四角形の3つの辺をなすように接合することで、これら3つの板状部材5と一対のサポートフレーム3とで仕切られた、開口を有する空間36が形成され、このような空間36が形成された部分においてマウントブラケット2の剛性が向上する。よって、開口を有する空間36を形成することで、開口を有する空間36を形成しない場合よりも少ない数の板状部材5で、マウントブラケット2の剛性を効率よく高めることができる。これにより、部品点数を削減することができる。
【0034】
また、板状部材5cの一端をアッパーフレーム15に接合することで、接合部においてマウントブラケット2の剛性が向上する。よって、板状部材5cの一端をアッパーフレーム15に接合することで、板状部材5cの一端をアッパーフレーム15に接合しない場合よりも少ない数の板状部材5で、マウントブラケット2の剛性を効率よく高めることができる。これにより、部品点数を削減することができる。
【0035】
また、一対のサポートフレーム3間の上部に空間6が形成されるように各板状部材5a〜5cを配置することで、マウントブラケット2上にエンジンマウント34を取り付ける作業を行い易くすることができる。これにより、工数を削減することができる。
【0036】
[第2実施形態]
(エンジン支持構造の構成)
次に、本発明の第2実施形態に係るエンジン支持構造201について説明する。なお、上述した構成要素と同じ構成要素については、同じ参照番号を付してその説明を省略する。本実施形態のエンジン支持構造201が第1実施形態のエンジン支持構造1と異なる点は、図3のC−C断面図である図5に示すように、一対のサポートフレーム3と4つの板状部材205とで閉空間7が形成されている点である。
【0037】
本実施形態においては、水平方向に固定された板状部材205aの図中右端が、垂直方向に固定された板状部材205cの中間部に当接されることで、板状部材205aが板状部材205cに、互いの長手方向が直交するようにして接合され、水平方向に固定された板状部材205dの中間部に、板状部材205cの下端が当接されることで、板状部材205cが板状部材205dに、互いの長手方向が直交するようにして接合され、斜めに固定された板状部材205bの上端が、板状部材205aの図中左端に当接されることで、板状部材205bが板状部材205aに、互いの長手方向が交差するようにして接合され、板状部材205dの図中左端が、板状部材205bの中間部に当接されることで、板状部材205dが板状部材205bに、互いの長手方向が交差するようにして接合されている。このように、4つの板状部材205が、四角形をなすように接合されることにより、一対のサポートフレーム3と4つの板状部材205とで閉空間7が形成されている。
【0038】
このように、一対のサポートフレーム3と4つの板状部材205とで閉空間7を形成することで、閉空間7が形成された部分においてマウントブラケット2の剛性が向上する。よって、閉空間7を形成することで、閉空間7を形成しない場合よりも少ない数の板状部材205で、マウントブラケット2の剛性を効率よく高めることができる。
【0039】
(変形例)
本実施形態の変形例を図6に示す。図6に示すエンジン支持構造201aにおいては、一対のサポートフレーム3間に固定された5つの板状部材205と、一対のサポートフレーム3と、アッパーフレーム15とにより、2つの閉空間7a,7bが形成されている。具体的には、水平方向に固定された板状部材205aの図中右端が、垂直方向に固定された板状部材205dの中間部に接合され、板状部材205dの下端が、水平方向に固定された板状部材205cの中間部に接合され、板状部材205cの図中左端が、垂直方向に固定された板状部材205bの中間部に接合され、板状部材205bの上端が、板状部材205aの中間部に接合されている。このように、4つの板状部材205a〜205dが、四角形をなすように接合されることで、一対のサポートフレーム3と4つの板状部材205a〜205dとで閉空間7aが形成されている。また、水平方向に固定された2つの板状部材205c,205eの各々の図中右端が、アッパーフレーム15にそれぞれ接合され、板状部材205cの図中左端が、垂直方向に固定された板状部材205bの中間部に接合され、板状部材205eの図中左端が、板状部材205bの下端部に接合されている。このように、3つの板状部材205b,205c,205eとアッパーフレーム15とが、四角形をなすように接合されることで、一対のサポートフレーム3と、3つの板状部材205b,205c,205eと、アッパーフレーム15とで閉空間7bが形成されている。このように、閉空間7を複数形成することで、マウントブラケット2の剛性を効率よく高めることができる。また、一対のサポートフレーム3と複数の板状部材205とアッパーフレーム15とで閉空間7bを形成することで、より少ない数の板状部材205で、マウントブラケット2の剛性を効率よく高めることができる。
【0040】
(振動レベル評価)
次に、油圧ショベル10に本実施形態のエンジン支持構造201を設けた場合と設けない場合とで、マウントブラケット2とアッパーフレーム15との接合部における振動レベルについて数値解析を行った。その結果を図7に示す。エンジン支持構造201を設けた場合、運転室18内で共鳴が起こりやすい周波数帯域である200〜400Hzの周波数帯域において振動レベルの低下がみられた。
【0041】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るエンジン支持構造201,201aによると、一対のサポートフレーム3と4つの板状部材205とで閉空間7を形成することで、閉空間7が形成された部分においてマウントブラケット2の剛性が向上する。よって、閉空間7を形成することで、閉空間7を形成しない場合よりも少ない数の板状部材205で、マウントブラケット2の剛性を効率よく高めることができる。これにより、部品点数を削減することができる。
【0042】
[第3実施形態]
(エンジン支持構造の構成)
次に、本発明の第3実施形態に係るエンジン支持構造301について説明する。なお、上述した構成要素と同じ構成要素については、同じ参照番号を付してその説明を省略する。本実施形態のエンジン支持構造301が第2実施形態のエンジン支持構造201と異なる点は、図3のC−C断面図である図8に示すように、閉空間307内に制振性を有する材料8が設けられている点である。
【0043】
本実施形態においては、一対のサポートフレーム3間に、図5の4つの板状部材205a〜205dと同様にして、4つの板状部材305a〜305dが固定されている。そして、一対のサポートフレーム3と4つの板状部材305とで閉空間307が形成されている。そして、閉空間307内に制振性を有する材料8が封入されている。制振性を有する材料8としては、ゴム、樹脂、発泡剤等を挙げることができる。なお、制振性を有する材料8の代わりに、運動により制振性を発現する材料を封入してもよい。運動により制振性を発現する材料としては、粒状体、粉体等を挙げることができる。
【0044】
このように、閉空間307内に制振性を有する材料8、または、運動により制振性を発現する材料を封入することで、サポートフレーム3を伝播する振動を減衰させることができる。これにより、運転室18に伝達するエンジン振動を低減させることができる。
【0045】
(変形例)
本実施形態の変形例を図9図11に示す。図9に示すエンジン支持構造301aでは、4つの板状部材305のうち、3つの板状部材305が、三角形をなすように接合されることにより、一対のサポートフレーム3と3つの板状部材305とで断面三角形状の閉空間307aが形成されている。図10に示すエンジン支持構造301bでは、6つの板状部材305とアッパーフレーム15とが、七角形をなすように接合されることにより、一対のサポートフレーム3と6つの板状部材305とで断面L字状の閉空間307bが形成されている。図11に示すエンジン支持構造301cでは、3つの板状部材305が、三角形をなすように接合されることにより、一対のサポートフレーム3と3つの板状部材305とで、図9の閉空間307aとは上下が逆の断面三角形状の閉空間307cが形成されている。このように、マウントブラケット2の固有振動数が、特定の周波数帯域に一致しないように、板状部材305の大きさや数を調整するのに応じて、閉空間307の大きさを適宜変更してよい。
【0046】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るエンジン支持構造301,301a,301b,301cによると、閉空間307,307a,307b,307c内に制振性を有する材料8、または、運動により制振性を発現する材料を封入することで、サポートフレーム3を伝播する振動を減衰させることができる。これにより、運転室18に伝達するエンジン振動を低減させることができる。
【0047】
[第4実施形態]
(エンジン支持構造の構成)
次に、本発明の第4実施形態に係るエンジン支持構造401について説明する。なお、上述した構成要素と同じ構成要素については、同じ参照番号を付してその説明を省略する。本実施形態のエンジン支持構造401が第3実施形態のエンジン支持構造301と異なる点は、図3のC−C断面図である図12に示すように、閉空間407内に硬化剤9が注入されている点である。
【0048】
本実施形態においては、一対のサポートフレーム3間に、図8の4つの板状部材305a〜305dと同様にして、4つの板状部材405a〜405dが固定されている。そして、一対のサポートフレーム3と4つの板状部材405とで閉空間407が形成されている。そして、閉空間407内に硬化剤9が注入されている。硬化剤9としては、モルタルやコンクリートを挙げることができる。
【0049】
また、硬化剤9が閉空間407から漏れないように、板状部材405同士が溶接されている。また、閉空間407内において、一対のサポートフレーム3間に複数の棒状フレーム35が等間隔に固定されることで、引張りに弱い硬化剤9が補強されている。
【0050】
このように、閉空間407内に硬化剤9を注入することで、閉空間407が形成された部分においてマウントブラケット2の剛性がさらに向上する。よって、閉空間407内に硬化剤9を注入することで、閉空間407内に硬化剤9を注入しない場合よりも少ない数の板状部材405で、マウントブラケット2の剛性を効率よく高めることができる。
【0051】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るエンジン支持構造401によると、閉空間407内に硬化剤9を注入することで、閉空間407が形成された部分においてマウントブラケット2の剛性がさらに向上する。よって、閉空間407内に硬化剤9を注入することで、閉空間407内に硬化剤9を注入しない場合よりも少ない数の板状部材405で、マウントブラケット2の剛性を効率よく高めることができる。これにより、部品点数を削減することができる。
【0052】
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1,201,301,401 エンジン支持構造
2 マウントブラケット
3 サポートフレーム
4 天板
5,205,305,405 板状部材
6 空間
7,307,407 閉空間
8 制振性を有する材料
9 硬化剤
10 油圧ショベル
11 下部走行体
12 上部旋回体
13 掘削装置
14 クローラ式走行装置
15 アッパーフレーム(フレーム)
16 エンジンガード部材
17 エンジンルーム
18 運転室
21 エンジン
22 ファン
23 油圧ポンプ
31 ファン側支持部材
32 ポンプ側支持部材
33 エンジン側ブラケット
34 エンジンマウント(防振部材)
35 棒状フレーム
36 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12