(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記参照スペクトル算出手段は、前記複数の干渉光のスペクトルの代表値を算出し、前記代表値を前記参照スペクトルとして求めることを特徴とする請求項5に記載の光画像計測装置。
前記参照スペクトル算出手段は、前記複数の干渉光のスペクトルに対しフーリエ変換を施すことにより得られた複数の実数部と複数の虚数部のそれぞれを昇順又は降順にソートし、中央値となる実数部と虚数部に対し逆フーリエ変換を施すことにより得られた実数部を前記参照スペクトルとして求めることを特徴とする請求項7に記載の光画像計測装置。
前記基準スペクトルは、前記被測定物体に対して前記信号光の照射位置を走査することにより得られた複数のAラインのいずれか1つにおける干渉光のスペクトルであることを特徴とする請求項9に記載の光画像計測装置。
前記基準スペクトルは、前記被測定物体に対して走査された最初のAラインの干渉光のスペクトルであることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の光画像計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明に係る光画像計測装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。この発明に係る光画像計測装置は、OCTを用いて被測定物体の断層画像や3次元画像を形成する。この明細書では、OCTによって取得される画像をOCT画像と総称することがある。また、OCT画像を形成するための計測動作をOCT計測と呼ぶことがある。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
【0026】
以下の実施形態では、被測定物体を生体眼(被検眼、眼底)とし、フーリエドメインタイプのOCTの手法により眼底のOCT計測を行う光画像計測装置が適用された眼底撮影装置について説明する。特に、実施形態に係る眼底撮影装置は、スウェプトソースタイプのOCTの手法を用いて眼底のOCT画像及び眼底像の双方を取得可能である。なお、スウェプトソースタイプ以外のタイプ、たとえばスペクトラルドメインのOCTの手法を用いる光画像計測装置に対して、この発明に係る構成を適用することも可能である。また、この実施形態ではOCT装置と眼底カメラとを組み合わせた装置について説明するが、眼底カメラ以外の眼底撮影装置、たとえばSLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)、スリットランプ、眼科手術用顕微鏡などに、この実施形態に係る構成を有するOCT装置を組み合わせることも可能である。また、この実施形態に係る構成を、単体のOCT装置に組み込むことも可能である。
【0027】
[構成]
図1及び
図2に示すように、眼底撮影装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100及び演算制御ユニット200を含んで構成される。眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有する。OCTユニット100には、眼底のOCT画像を取得するための光学系が設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備している。
【0028】
〔眼底カメラユニット〕
図1に示す眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efを角膜側から見た正面画像(眼底像)を取得するための光学系が設けられている。眼底像には、観察画像や撮影画像などが含まれる。観察画像は、たとえば、近赤外光を用いて所定のフレームレートで形成されるモノクロの動画像である。撮影画像は、たとえば、可視光をフラッシュ発光して得られるカラー画像、又は近赤外光若しくは可視光を照明光として用いたモノクロの静止画像であってもよい。眼底カメラユニット2は、これら以外の画像、たとえばフルオレセイン蛍光画像やインドシアニングリーン蛍光画像や自発蛍光画像などを取得可能に構成されていてもよい。
【0029】
眼底カメラユニット2には、被検者の顔を支持するための顎受けや額当てが設けられている。更に、眼底カメラユニット2には、照明光学系10と撮影光学系30とが設けられている。照明光学系10は眼底Efに照明光を照射する。撮影光学系30は、この照明光の眼底反射光を撮像装置(CCDイメージセンサ(単にCCDと呼ぶことがある)35、38。)に導く。また、撮影光学系30は、OCTユニット100からの信号光を眼底Efに導くとともに、眼底Efを経由した信号光をOCTユニット100に導く。
【0030】
照明光学系10の観察光源11は、たとえばハロゲンランプにより構成される。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efを照明する。なお、観察光源としてLED(Light Emitting Diode)を用いることも可能である。
【0031】
観察照明光の眼底反射光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この眼底反射光は、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に結像される。CCDイメージセンサ35は、たとえば所定のフレームレートで眼底反射光を検出する。表示装置3には、CCDイメージセンサ35により検出された眼底反射光に基づく画像(観察画像)が表示される。なお、撮影光学系30のピントが前眼部に合わせられている場合、被検眼Eの前眼部の観察画像が表示される。
【0032】
撮影光源15は、たとえばキセノンランプにより構成される。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。撮影照明光の眼底反射光は、観察照明光のそれと同様の経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりCCDイメージセンサ38の受光面に結像される。表示装置3には、CCDイメージセンサ38により検出された眼底反射光に基づく画像(撮影画像)が表示される。なお、観察画像を表示する表示装置3と撮影画像を表示する表示装置3は、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、被検眼Eを赤外光で照明して同様の撮影を行う場合には、赤外の撮影画像が表示される。また、撮影光源としてLEDを用いることも可能である。
【0033】
LCD(Liquid Crystal Display)39は、固視標や視力測定用指標を表示する。固視標は被検眼Eを固視させるための指標であり、眼底撮影時やOCT計測時などに使用される。
【0034】
LCD39から出力された光は、その一部がハーフミラー33Aにて反射され、ミラー32に反射され、合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
【0035】
LCD39の画面上における固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。被検眼Eの固視位置としては、たとえば従来の眼底カメラと同様に、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。また、固視標の表示位置を任意に変更することも可能である。
【0036】
更に、眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様にアライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための指標(アライメント指標)を生成する。フォーカス光学系60は、眼底Efに対してフォーカス(ピント)を合わせるための指標(スプリット指標)を生成する。
【0037】
アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)は、絞り52、53及びリレーレンズ54を経由してダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により被検眼Eの角膜に投影される。
【0038】
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46及び上記孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を通過し、ミラー32により反射され、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33に反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に投影される。CCDイメージセンサ35による受光像(アライメント指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。ユーザは、従来の眼底カメラと同様の操作を行ってアライメントを実施する。また、演算制御ユニット200がアライメント指標の位置を解析して光学系を移動させることによりアライメントを行ってもよい(オートアライメント機能)。
【0039】
フォーカス調整を行う際には、照明光学系10の光路上に反射棒67の反射面が斜設される。フォーカス光学系60のLED61から出力された光(フォーカス光)は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65に反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
【0040】
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同様の経路を通ってCCDイメージセンサ35により検出される。CCDイメージセンサ35による受光像(スプリット指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。演算制御ユニット200は、従来と同様に、スプリット指標の位置を解析して合焦レンズ31及びフォーカス光学系60を移動させてピント合わせを行う(オートフォーカス機能)。また、スプリット指標を視認しつつ手動でピント合わせを行ってもよい。
【0041】
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用の光路からOCT計測用の光路を分岐させている。ダイクロイックミラー46は、OCT計測に用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。このOCT計測用の光路には、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40と、光路長変更部41と、ガルバノスキャナ42と、合焦レンズ43と、ミラー44と、リレーレンズ45とが設けられている。
【0042】
光路長変更部41は、
図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、OCT計測用の光路の光路長を変更する。この光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正や、干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、たとえばコーナーキューブと、これを移動する機構とを含んで構成される。
【0043】
ガルバノスキャナ42は、OCT計測用の光路を通過する光(信号光LS)の進行方向を変更する。それにより、眼底Efを信号光LSで走査することができる。ガルバノスキャナ42は、たとえば、信号光LSをx方向に走査するガルバノミラーと、y方向に走査するガルバノミラーと、これらを独立に駆動する機構とを含んで構成される。それにより、信号光LSをxy平面上の任意の方向に走査することができる。ガルバノスキャナ42は、この実施形態において、被検眼に対する信号光LSの照射位置を走査する「走査手段」の一例である。
【0044】
〔OCTユニット〕
図2を参照しつつOCTユニット100の構成の一例を説明する。OCTユニット100には、眼底EfのOCT画像を取得するための光学系が設けられている。この光学系は、従来のスウェプトソースタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、波長走査型(波長掃引型)光源からの光を信号光と参照光とに分割し、眼底Efを経由した信号光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光を検出する干渉光学系である。干渉光学系における干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、演算制御ユニット200に送られる。
【0045】
光源ユニット101は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を走査(掃引)可能な波長走査型(波長掃引型)光源を含んで構成される。光源ユニット101は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。光源ユニット101から出力された光を符号L0で示す。
【0046】
光源ユニット101から出力された光L0は、光ファイバ102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。偏波コントローラ103は、たとえばループ状にされた光ファイバ102に対して外部から応力を与えることで、光ファイバ102内を導かれる光L0の偏光状態を調整する。
【0047】
偏波コントローラ103により偏光状態が調整された光L0は、光ファイバ104によりファイバカプラ105に導かれて信号光LSと参照光LRとに分割される。
【0048】
参照光LRは、光ファイバ110によりコリメータ111に導かれて平行光束となる。平行光束となった参照光LRは、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、コーナーキューブ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRと信号光LSの光路長(光学距離)を合わせるための遅延手段として作用する。分散補償部材113は、参照光LRと信号光LSの分散特性を合わせるための分散補償手段として作用する。
【0049】
コーナーキューブ114は、コリメータ111により平行光束となった参照光LRの進行方向を逆方向に折り返す。コーナーキューブ114に入射する参照光LRの光路と、コーナーキューブ114から出射する参照光LRの光路とは平行である。また、コーナーキューブ114は、参照光LRの入射光路及び出射光路に沿う方向に移動可能とされている。この移動により参照光LRの光路(参照光路)の長さが変更される。
【0050】
コーナーキューブ114を経由した参照光LRは、波長板(たとえばλ/4板又はλ/2板)115、分散補償部材113、及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換されて光ファイバ117に入射し、偏波コントローラ118に導かれて参照光LRの偏光状態が調整される。波長板115は、偏光方向を調整する光学部材である。また、波長板115は、参照光LRの位相ずれを求めるために用いられる。
図2では、波長板115は、参照光LRの光路に配置される。波長板115は、この実施形態における「光学部材」の一例である。
【0051】
偏波コントローラ118は、たとえば、偏波コントローラ103と同様の構成を有する。偏波コントローラ118により偏光状態が調整された参照光LRは、光ファイバ119によりアッテネータ120に導かれて、演算制御ユニット200の制御の下で光量が調整される。アッテネータ120により光量が調整された参照光LRは、光ファイバ121によりファイバカプラ122に導かれる。
【0052】
ファイバカプラ105により生成された信号光LSは、光ファイバ127により導かれ、コリメータレンズユニット40により平行光束とされる。平行光束にされた信号光LSは、光路長変更部41、ガルバノスキャナ42、合焦レンズ43、ミラー44、及びリレーレンズ45を経由してダイクロイックミラー46に到達する。そして、信号光LSは、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに照射される。信号光LSは、眼底Efの様々な深さ位置において散乱(反射を含む)される。眼底Efによる信号光LSの後方散乱光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ105に導かれ、光ファイバ128を経由してファイバカプラ122に到達する。
【0053】
ファイバカプラ122は、光ファイバ128を介して入射された信号光LSと、光ファイバ121を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバカプラ122は、所定の分岐比(たとえば1:1)で、信号光LSと参照光LRとの干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。ファイバカプラ122から出射した一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ123、124により検出器125に導かれる。
【0054】
検出器125は、たとえば一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらによる検出結果の差分を出力するバランスドフォトダイオード(Balanced Photo Diode:以下、BPD)である。検出器125は、その検出結果(検出信号)を演算制御ユニット200に送る。演算制御ユニット200は、たとえば一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、検出器125により得られた検出結果に基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことで断層画像を形成する。演算制御ユニット200は、形成された画像を表示装置3に表示させる。
【0055】
この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。この実施形態では、干渉光学系は、ファイバカプラ105及び122、検出器125、並びにこれらの間で参照光LRや信号光LSを導く光ファイバや各種光学素子を含んで構成される。干渉光学系は、光源ユニット101を更に含んで構成されてもよい。この干渉光学系は、この実施形態における「干渉光学系」の一例である。
【0056】
〔演算制御ユニット〕
演算制御ユニット200の構成について説明する。演算制御ユニット200は、検出器125から入力される検出信号を解析して眼底EfのOCT画像を形成する。そのための演算処理は、従来のスウェプトソースタイプのOCT装置と同様である。
【0057】
また、演算制御ユニット200は、眼底カメラユニット2、表示装置3及びOCTユニット100の各部を制御する。たとえば演算制御ユニット200は、眼底EfのOCT画像を表示装置3に表示させる。
【0058】
また、眼底カメラユニット2の制御として、演算制御ユニット200は、観察光源11、撮影光源15及びLED51、61の動作制御、LCD39の動作制御、合焦レンズ31、43の移動制御、反射棒67の移動制御、フォーカス光学系60の移動制御、光路長変更部41の移動制御、ガルバノスキャナ42の動作制御などを行う。
【0059】
また、OCTユニット100の制御として、演算制御ユニット200は、光源ユニット101の動作制御、コーナーキューブ114の移動制御、検出器125の動作制御、アッテネータ120の動作制御、偏波コントローラ103、118の動作制御などを行う。
【0060】
演算制御ユニット200は、たとえば、従来のコンピュータと同様に、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、眼底撮影装置1を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。演算制御ユニット200は、各種の回路基板、たとえばOCT画像を形成するための回路基板を備えていてもよい。また、演算制御ユニット200は、キーボードやマウス等の操作デバイス(入力デバイス)や、LCD等の表示デバイスを備えていてもよい。
【0061】
眼底カメラユニット2、表示装置3、OCTユニット100及び演算制御ユニット200は、一体的に(つまり単一の筺体内に)構成されていてもよいし、2つ以上の筐体に別れて構成されていてもよい。
【0062】
〔制御系〕
眼底撮影装置1の制御系の構成について
図3及び
図4を参照しつつ説明する。
【0063】
(制御部)
眼底撮影装置1の制御系は、制御部210を中心に構成される。制御部210は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイス等を含んで構成される。制御部210には、主制御部211と記憶部212が設けられている。
【0064】
(主制御部)
主制御部211は前述の各種制御を行う。特に、主制御部211は、眼底カメラユニット2の合焦駆動部31A、光路長変更部41及びガルバノスキャナ42、更にOCTユニット100の光源ユニット101、参照駆動部114A、偏波コントローラ103、118、アッテネータ120、検出器125を制御する。
【0065】
合焦駆動部31Aは、合焦レンズ31を光軸方向に移動させる。それにより、撮影光学系30の合焦位置が変更される。なお、主制御部211は、図示しない光学系駆動部を制御して、眼底カメラユニット2に設けられた光学系を3次元的に移動させることができる。この制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングとは、被検眼Eの運動に合わせて装置光学系を移動させるものである。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとピント合わせが実行される。トラッキングは、被検眼Eを動画撮影して得られる画像に基づき被検眼Eの位置や向きに合わせて装置光学系をリアルタイムで移動させることにより、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持する機能である。
【0066】
参照駆動部114Aは、参照光の光路に設けられたコーナーキューブ114を、この光路に沿って移動させる。それにより、参照光の光路長が変更される。
【0067】
また、主制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。
【0068】
(記憶部)
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、たとえば、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。また、記憶部212には、眼底撮影装置1を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
【0069】
(画像形成部)
画像形成部220は、検出器125からの検出信号に基づいて、眼底Efの断層画像の画像データを形成する。この処理には、従来のスウェプトソースタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理に加えて、後述のFPNを除去する処理が含まれている。画像形成部220は、この実施形態における「画像形成手段」の一例である。
【0070】
画像形成部220は、たとえば、前述の回路基板を含んで構成される。なお、この明細書では、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを同一視することがある。
【0071】
画像形成部220は、干渉光学系により検出された干渉光LCに基づいて被検眼Eの画像を形成する。この際、画像形成部220は、波長板115(光学部材)による位相ずれを求め、求められた位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相を補正し、補正された干渉光のスペクトルに基づいて被検眼Eの画像を形成する。干渉光のスペクトルは、検出器125から出力される。
【0072】
また、画像形成部220は、求められた位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相をピクセルレベルで補正することが可能である。FPNの要因の1つとして、干渉光の検出信号を取り込む手段(たとえば、DAQ(Data Acquisition Board))の動作クロックと、波長走査型光源(光源ユニット101)における波長走査タイミング(いわゆるkクロック)との位相ずれがある。この位相ずれは、検出信号の取り込みタイミングをピクセルレベルでシフトさせる。従って、ピクセルレベルで干渉光のスペクトルの位相を補正することにより、上記の原因に基づくFPNを除去することが可能となる。また、サブピクセルレベルで干渉光のスペクトルの位相を補正することによりFPNを除去することができず、却って画質を劣化させてしまう事態を回避することもできる。
【0073】
また、画像形成部220は、求められた位相ずれをピクセルレベルに相当する位相ずれに変換し、変換されたピクセルレベルに相当する位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相を補正することが可能である。これにより、サブピクセルレベルの位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相を補正した後、この位相補正をピクセルレベルに変換する場合と比較して、高精度な位相補正の処理を簡素化することができる。
【0074】
このような画像形成部220は、位相補正部221と、スペクトル演算部222と、参照スペクトル算出部223とを含んで構成されている。
【0075】
位相補正部221は、信号光LSの各照射位置におけるAラインについて、波長板115による位相ずれを求め、求められた位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相を補正する。照射位置は、ガルバノスキャナ42によって被検眼Eに対して走査される。スペクトル演算部222は、Aライン毎に、位相補正部221により位相が補正された干渉光のスペクトルから予め算出された参照スペクトルを差し引く。
【0076】
参照スペクトルは、干渉光のスペクトルに基づいて算出される。参照スペクトル算出部223は、ガルバノスキャナ42により走査された複数の照射位置における複数の干渉光のスペクトルに基づいて参照スペクトルを算出する。これにより、バックグラウンドスペクトルを別途取り込んでおく必要がなくなる。バックグラウンドスペクトルは、光学系を予め決められた経路に切り換えることで取得されるが、切り換え後の光学系の経路上の影響や計測環境の影響を受ける場合がある。たとえば、切り換え後の光学系の経路の違いによって、その反射光に起因してバックグラウンドスペクトルに与える影響の度合いが異なることがある。また、たとえば、計測環境の違いによって、バックグラウンドスペクトルそのものが変化することがある。このようなバックグラウンドスペクトルを参照スペクトルとして干渉光のスペクトルを補正すると画質が低下することがある。この実施形態によれば、上記の各種の影響を受けることなく、FPNを除去することが可能となる。
【0077】
位相補正部221は、この実施形態における「位相補正手段」の一例である。スペクトル演算部222は、この実施形態における「スペクトル演算手段」の一例である。参照スペクトル算出部223は、この実施形態における「参照スペクトル算出手段」の一例である。
【0078】
画像形成部220は、スペクトル演算部222により得られたスペクトルに基づいて被検眼Eの画像を形成する。すなわち、画像形成部220は、スペクトル演算部222により得られたスペクトルにフーリエ変換等を施すことで被検眼Eの画像を形成する。
【0079】
(画像処理部)
画像処理部230は、画像形成部220により形成された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。たとえば、画像処理部230は、画像の輝度補正や分散補正等の各種補正処理を実行する。また、画像処理部230は、眼底カメラユニット2により得られた画像(眼底像、前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。たとえば、画像処理部230は、トラッキングの実行時において、被検眼Eの前眼部を動画撮影して得られた画像を解析して被検眼Eの位置及び向きを求める処理を行う。
【0080】
画像処理部230は、断層画像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行して、眼底Efの3次元画像の画像データを形成する。なお、3次元画像の画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像の画像データとしては、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、画像処理部230は、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像の画像データを形成する。表示部240A等の表示デバイスには、この擬似的な3次元画像が表示される。
【0081】
また、3次元画像の画像データとして、複数の断層画像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数の断層画像を、走査線の位置関係に基づいて3次元的に配列させることで得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断層画像を、1つの3次元座標系により表現する(つまり1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。
【0082】
以上のように機能する画像処理部230は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、回路基板等を含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、上記機能をマイクロプロセッサに実行させるコンピュータプログラムが予め格納されている。
【0083】
(ユーザインターフェイス)
ユーザインターフェイス240には、表示部240Aと操作部240Bとが含まれる。表示部240Aは、前述した演算制御ユニット200の表示デバイスや表示装置3を含んで構成される。操作部240Bは、前述した演算制御ユニット200の操作デバイスを含んで構成される。操作部240Bには、眼底撮影装置1の筐体や外部に設けられた各種のボタンやキーが含まれていてもよい。たとえば眼底カメラユニット2が従来の眼底カメラと同様の筺体を有する場合、操作部240Bは、この筺体に設けられたジョイスティックや操作パネル等を含んでいてもよい。また、表示部240Aは、眼底カメラユニット2の筺体に設けられたタッチパネルなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
【0084】
なお、表示部240Aと操作部240Bは、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。たとえばタッチパネルのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部240Bは、このタッチパネルとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部240Bに対する操作内容は、電気信号として制御部210に入力される。また、表示部240Aに表示されたグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)と、操作部240Bとを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。
【0085】
[動作]
眼底撮影装置1の動作について説明する。
【0086】
図5は、眼底撮影装置1の動作の一例を表す。この動作例には、画像に基づく被検眼Eと装置光学系との位置合わせの処理と、画像に基づく走査領域の設定処理とが含まれる。位置合わせの処理には、OCT計測のためのアライメント(オートアライメント)、ピント合わせ(オートフォーカス)、トラッキング(オートトラッキング)が含まれる。
【0087】
(S1:リアルタイム近赤外動画像の取得を開始)
まず、観察光源11からの照明光(可視カットフィルタ14により近赤外光となる)で眼底Efを連続照明することにより、眼底Efの近赤外動画像の取得を開始する。この近赤外動画像は、連続照明が終了するまでリアルタイムで得られる。この動画像を構成する各フレームの画像は、フレームメモリ(記憶部212)に一時記憶され、画像処理部230に逐次送られる。
【0088】
なお、被検眼Eには、アライメント光学系50によるアライメント指標と、フォーカス光学系60によるスプリット指標とが投影されている。よって、近赤外動画像にはアライメント指標とスプリット指標とが描画されている。これら指標を用いてアライメントやピント合わせを行うことができる。また、被検眼Eには、LCD39による固視標も投影されている。被検者は、この固視標を凝視するように指示を受ける。
【0089】
(S2:アライメント)
画像処理部230は、光学系によって被検眼Eを動画撮影することにより得られるフレームを逐次に解析して、アライメント視標の位置を求め、光学系の移動量を算出する。制御部210は、画像処理部230により算出された光学系の移動量に基づいて図示しない光学系駆動部を制御することにより、オートアライメントを行う。
【0090】
(S3:ピント合わせ)
画像処理部230は、光学系によって被検眼Eを動画撮影することにより得られるフレームを逐次に解析して、スプリット視標の位置を求め、合焦レンズ31の移動量を算出する。制御部210は、画像処理部230により算出された合焦レンズ31の移動量に基づいて合焦駆動部31Aを制御することにより、オートフォーカスを行う。
【0091】
(S4:トラッキングを開始)
続いて、制御部210は、オートトラッキングを開始する。具体的には、画像処理部230は、光学系によって被検眼Eを動画撮影することにより逐次に得られるフレームをリアルタイムで解析して、被検眼Eの動き(位置の変化)を監視する。制御部210は、逐次に取得される被検眼Eの位置に合わせて光学系を移動させるように図示しない光学系駆動部を制御する。それにより、被検眼Eの動きに対して光学系をリアルタイムで追従させることができ、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持することが可能となる。
【0092】
(S5:走査領域を設定)
制御部210は、近赤外動画像を表示部240Aにリアルタイムで表示させる。ユーザは、操作部240Bを用いることにより、この近赤外動画像上に走査領域を設定する。設定される走査領域は1次元領域でも2次元領域でもよい。
【0093】
なお、信号光LSの走査態様や注目部位(視神経乳頭、黄斑部、病変部等)が予め設定されている場合などには、これら設定内容に基づいて制御部210が走査領域を設定するように構成することも可能である。具体的には、画像処理部230による画像解析により注目部位を特定し、制御部210が、この注目部位を含むように(たとえば、この注目部位が中心に位置するように)所定パターンの領域を設定する。
【0094】
また、過去に実施されたOCT計測と同じ走査領域を設定する場合(いわゆるフォローアップ)、制御部210は、この過去の走査領域をリアルタイム近赤外動画像上に再現して設定することができる。その具体例として、制御部210は、過去の検査で設定された走査領域を表す情報(走査態様等)と、この走査領域が設定された近赤外眼底像(静止画、たとえばフレームでよい)とを対応付けて記憶部212に記憶している(実用上は、患者IDや左右眼情報とも対応付けられる)。制御部210は、過去の近赤外眼底像と現在の近赤外動画像のフレームとの位置合わせを行い、過去の近赤外眼底像における走査領域に対応する現在の近赤外動画像中の画像領域を特定する。これにより、過去の検査で適用された走査領域が現在の近赤外動画像に対して設定される。
【0095】
(S6:OCT計測)
制御部210は、光源ユニット101や光路長変更部41を制御するとともに、ステップS5で設定された走査領域に基づいてガルバノスキャナ42を制御することにより、眼底EfのOCT計測を行う。
【0096】
画像形成部220は、OCT計測により得られた干渉光のスペクトルに基づいて眼底Efの断層画像を形成する。走査態様が3次元スキャンである場合、画像処理部230は、画像形成部220により形成された複数の断層画像に基づいて眼底Efの3次元画像を形成する。以上で、この動作例は終了となる(エンド)。
【0097】
なお、上記ステップS4、S5の順序を入れ替えてもよい。また、上記ステップS4、S5では、近赤外動画像を表示させ、この近赤外動画像上に走査領域を設定しているが、走査領域の設定態様はこれに限定されるものではない。たとえば、近赤外動画像における一のフレームの画像(基準画像と呼ぶ)を表示させるとともに、そのバックグラウンドでオートトラッキングを実行する。基準画像上に走査領域が設定されると、制御部210は、基準画像と、現にオートトラッキングに供されている画像との間の位置合わせを行うことにより、基準画像上に設定された走査領域に対応するリアルタイム近赤外動画像中の画像領域を特定する。この処理によっても上記ステップS4、S5と同様にリアルタイム近赤外動画像中に走査領域を設定できる。更に、この方法によれば、静止画像上に走査領域を設定することができるので、現にオートトラッキングされている動画像上に設定する場合よりも作業の容易化や確実化を図ることができる。
【0098】
この実施形態では、検出器125により得られた干渉光のスペクトルに対してフーリエ変換を施すことにより、次のようなプロファイルが得られる。
【0099】
図6は、この実施形態におけるプロファイルの一例を表す。
図6は、横軸がインデックスを表し、縦軸が平均パワー(平均強度)を表す。インデックスは、フーリエ変換での周波数を表す変数である。波数は周波数に比例するため、インデックスは波数を表す変数でもある。また、インデックスは、眼底Efの深度(z)方向の座標位置にも対応する変数である。
【0100】
図6に示すプロファイルにおいて略パルス状に平均パワーが変化する部分にFPNが現れる。FPNが現れるインデックスを特定することにより、特定されたインデックスに対応する周波数も特定することができ、FPNの要因の特定が可能となる場合がある。
図6では、ノイズFN2、FN3は、光源及び電気系に起因するFPNであり、パターンFN4は、網膜層の信号である。ノイズFN6は、波長板115の前面と後面における多重反射に起因したノイズであり、高い平均パワーで安定している。
【0101】
そこで、この実施形態では、以下のように、波長板115におけるFPNに基づいて位相ずれを求めることにより、画像やノイズの態様にかかわらずFPNが除去された画像の取得を可能にする。
【0102】
[FPNの除去処理]
図7は、この実施形態に係る眼底撮影装置1における具体的なFPNの除去処理の一例を表す。この動作例は、ステップS6におけるOCT計測により干渉光のスペクトルが得られた後であって断層画像が形成される前に、画像形成部220により実行される処理である。
図7に示す処理は、Aライン毎に波長板115の位相ずれを求め、求められた位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相を補正する処理と、1断層画像内で1つの参照スペクトルを算出する処理と、Aライン毎にFPNを除去する処理とを含む。
【0103】
(S11:1断層画像のスペクトルを取得)
図5のステップS6におけるOCT計測では、眼底Efにおける各照射位置の干渉光を検出することにより得られた干渉光のスペクトルが、たとえば記憶部212に保存される。ここで、1断層画像(Bスキャン画像)が1024ライン分のAスキャン画像により構成されるものとする。1断層画像分に相当する1024ライン分のスペクトルが得られると、画像形成部220は、これらを内部の図示しない記憶部にロードすることにより、1断層画像の干渉光のスペクトルを取得する。画像形成部220は、この記憶部にロードされたスペクトルに対して処理を行う。
【0104】
(S12:干渉光のスペクトルの位相を補正)
画像形成部220は、位相補正部221において、Aライン毎に、波長板115の位相ずれを求め、求められた位相ずれが零になる方向に当該Aラインの干渉光のスペクトルの位相を補正する。このとき、位相補正部221は、各Aラインについて、基準となる位相を有する基準スペクトルと当該Aラインの干渉光のスペクトルとの相関値に基づいて波長板115の位相ずれを求める。基準スペクトルは、被検眼に対して信号光LSの照射位置を走査することにより得られた複数のAラインのいずれか1つにおける干渉光のスペクトルとすることが可能である。ステップS12の具体的な処理内容については、後述する。
【0105】
(S13:参照スペクトルを算出)
画像形成部220は、参照スペクトル算出部223において、参照スペクトルを算出する。参照スペクトル算出部223は、上記のように、被検眼Eに対する信号光LCの複数の照射位置における複数のAラインの干渉光のスペクトルに基づいて参照スペクトルを算出する。この実施形態では、参照スペクトル算出部223は、複数の干渉光のスペクトルの代表値を、参照スペクトルとして求める。ここでは、参照スペクトル算出部223は、代表値として複数の干渉光のスペクトルの中央値を求める。その具体例として、参照スペクトル算出部223は、複数のAラインの干渉光のスペクトルに対しFFT処理(広義には、フーリエ変換処理。以下、同様。)を施すことにより得られた複数の実数部と複数の虚数部のそれぞれを昇順又は降順にソートし、中央値となる実数部と虚数部に対し逆フーリエ変換を施すことにより実数部を求める。この実数部が、参照スペクトルとして用いられる。ステップS13の具体的な処理内容については、後述する。これ以降のステップS14〜ステップS19の各ステップは、Aライン毎に実行される。
【0106】
(S14:FPNを除去)
画像形成部220は、スペクトル演算部222において、Aライン毎に、ステップS12において位相補正された当該Aラインの干渉光のスペクトルから、ステップS13において算出された参照スペクトルを差し引くことによりFPNを除去する。
【0107】
(S15:アポダイゼーション処理)
画像形成部220は、図示しないアポダイゼーション処理部において、ステップS14において得られたスペクトルに対し、アポダイゼーション処理を行う。アポダイゼーション処理は、ステップS14において得られたスペクトルにアポダイゼーション関数を掛け合わせることにより、メインローブの振幅の低下をある程度抑えつつサイドローブの振幅を低下させて、ダイナミックレンジを高める処理である。アポダイゼーション関数としては、公知のハニング窓やガウス窓や矩形窓などの窓関数がある。
【0108】
(S16:分散補償)
画像形成部220は、図示しない分散補償部において、分散特性のばらつき等を数値的に補償する。その具体例として、分散補償部は、アポダイゼーション処理後の当該Aラインの干渉光のスペクトルS
0(ζ)に対し、次の式(1)に従って、分散補償後のスペクトルS
1(ζ)を求める。
【0110】
式(1)において、係数a
2は、所定の2次関数f
2(ζ)の係数であり、係数a
3は、所定の3次関数f
3(ζ)の係数である。係数a
2、a
3は、事後的に変更することが可能である。なお、ζは、
図6で説明したインデックスである。式(1)は、スペクトルS
0(ζ)の位相項に対し、(a
2・f
2(ζ)+a
3・f
3(ζ))を掛け合わせることにより分散を補償する式である。
【0111】
(S17:FFT処理、S18:振幅成分を算出)
画像形成部220は、分散補償後のスペクトルS
1(ζ)に対し、公知のFFTを施す。その後、画像形成部220は、FFT処理により得られた実数部Reと虚数部Imとを用いて、各インデックスζの値について次の式(2)に従って振幅成分Apを求める。式(2)において、ζは、インデックスである。これにより、当該Aラインの各画素について振幅成分が求められる。
【0113】
(S19:次のAライン?)
ステップS11においてロードされたBスキャン画像を構成するAライン数(1024ライン)分の処理が終了したとき(ステップS19:NO)、画像形成部220は、一連の処理を終了する(エンド)。一方、ステップS11においてロードされたBスキャン画像を構成するAライン数分の処理が終了していないとき(ステップS19:YES)、画像形成部220は、ステップS14に戻って、次のAラインについて、同様の処理を繰り返す。
【0114】
1断層画像を構成する全画素の振幅成分が求められると、画像形成部220は、たとえば、振幅成分Amに対し20×log
10(Am+1)により対数変換を施す。その後、画像処理部220は、1断層画像内で基準ノイズレベルを決め、基準ノイズレベルを基準に、上記のように対数変換された振幅成分に応じて各画素に対し所定の輝度値範囲内のいずれかの値を割り当てる。画像形成部220は、割り当てられた各画素の輝度値を用いて画像を形成する。
【0115】
[干渉光のスペクトルの位相補正処理]
図8は、
図7のステップS12の具体的な処理例のフロー図を表す。ステップS12の処理は、基準スペクトルに対してFFTを施す処理と、各Aラインの干渉光のスペクトルに対してFFTを施す処理と、基準スペクトルと各Aラインの干渉光のスペクトルとの相関値を演算する処理と、ピクセルレベルに相当する位相ずれを算出する処理と、算出された位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相を補正する処理とを含む。
【0116】
(S21:基準スペクトルに対するFFT処理)
位相補正部221は、基準スペクトルに対しFFTを施す。このFFT処理は、インデックスζの範囲(たとえば0〜1375)に対応するデータサイズ(たとえば「1376」)で行われる。基準スペクトルは、ガルバノスキャナ42によって走査された複数の照射位置における複数のAラインの干渉光のスペクトルのいずれか1つであり、たとえばガルバノスキャナ42によって走査された最初の照射位置におけるAラインの干渉光のスペクトルとすることができる。
【0117】
(S22:実数部、虚数部を保存)
位相補正部221は、ステップS22におけるFFT処理により得られた実数部Re(R)[0]〜Re(R)[1375]、及び虚数部Im(R)[0]〜Im(R)[1375]を、図示しない記憶部に保存する。ステップS23以降では、Aライン毎に処理が実行される。
【0118】
(S23:対象スペクトルに対するFFT処理)
位相補正部221は、当該Aラインの干渉光のスペクトル(対象スペクトル)に対しFFTを施す。このFFT処理は、インデックスζの範囲に対応するデータサイズ(たとえば「1376」)で行われる。
【0119】
(S24:相関値を演算)
位相補正部221は、実数部及び虚数部のそれぞれについて、基準スペクトルと当該Aラインの干渉光のスペクトル(対象スペクトル)の相関値を演算する。その具体例として、位相補正部221は、次の式(3)に従って、実数部の相関値ReX及び虚数部の相関値ImXを求める。なお、式(3)において、Re(R)[ζ]は、基準スペクトルの実数部を表し、Im(R)[ζ]は、対象スペクトルの虚数部を表し、Re(T)[ζ]は、対象スペクトルの実数部を表し、Im(T)[ζ]は、対象スペクトルの虚数部を表している。
【0121】
(S25:波長板による位相ずれを算出)
位相補正部221は、ステップS24において算出された相関値に基づいて波長板115による位相ずれを算出する。ここで、波長板115の前面に対応するインデックスζ=566とし、波長板115の後面に対応するインデックスζ=577とする。
図6に示すようなプロファイルを解析することにより、波長板115の前面や後面に対応するインデックスを事前に取得することが可能である。波長板115の前面(インデックスζ=566)による位相ずれφ[rad]は、次の式(4)に従って求められる。
【0123】
(S26:ピクセルレベルの位相ずれを算出)
位相補正部221は、ステップS25において算出されたサブピクセルレベルの位相ずれからピクセルレベルに相当する位相ずれを算出する。ステップS26の具体的な処理内容については、後述する。
【0124】
(S27:共役な位相を乗じて逆FFT処理)
位相補正部221は、ステップS26で算出されたピクセルレベルに相当する位相ずれが零になるように当該Aラインの干渉光のスペクトルの位相を補正する。その具体例として、位相補正部221は、ステップS26で算出されたピクセルレベルに相当する位相ずれに、これに対応した共役な位相を乗じて当該Aラインの干渉光のスペクトルに対し逆FFTを施す。
【0125】
たとえば、位相補正部221は、後述するように、ピクセルレベルの位相ずれについて、波長板115に対応したインデックスζ=566で割って1波数に相当する位相ずれφ1を求める。位相補正部221は、位相の補正量φ2(ζ)=φ1×ζを用いて次の式に従って共役な位相を乗じる。
【0127】
続いて、位相補正部221は、式(5)により得られた実数部Re1(ζ)及び虚数部Im1(ζ)に対し逆FFTを施す。
【0128】
(S28:実数部を出力)
位相補正部221は、ステップS27における逆FFT処理により得られた実数部Re1(ζ)及び虚数部Im1(ζ)のうち実数部Re1(ζ)を位相補正されたスペクトルとして出力する。
【0129】
(S29:次のAライン?)
1断層画像を構成するAライン数(1024ライン)分の処理が終了したとき(ステップS29:NO)、位相補正部221は、一連の処理を終了する(エンド)。一方、1断層画像を構成するAライン数分の処理が終了していないとき(ステップS29:YES)、位相補正部221は、ステップS23に戻って、次のAラインについて、同様の処理を繰り返す。
【0130】
[ピクセルレベルに相当する位相ずれの算出]
図8のステップS26において、事前に設定されたピクセルシフト範囲内でシフトされるピクセル数をpとすると、位相ずれφは、式(6)のように表される。
【0132】
位相補正部221は、誤差d(たとえば0.5)を考慮した範囲で場合分けすることにより、上記のピクセルシフト範囲内でピクセルレベルに相当する位相ずれを算出する。ここでは、ピクセルシフト範囲のピクセル数pは、−1、0、1、2のいずれかであるものとする。
【0133】
波長板115の前面(インデックスζ=566)では、式(6)より、p=−1、0、1、2のとき、ピクセルレベルの位相ずれφ
−1〜φ
2[rad]は次のようになる。
p=−1:φ
−1=2π×(−1)/1376×566=−2.5845808[rad]
p= 0:φ
0=2π×0/1376×566=0[rad]
p= 1:φ
1=2π×1/1376×566=2.584508[rad]
p= 2:φ
2=2π×2/1376×566−2π=−1.114169[rad]
【0134】
位相補正部221は、ステップS25で求められた位相ずれφについて、次のようにピクセルレベルに相当する位相ずれを求める。
【0135】
図9は、位相補正部221によるピクセルレベルに相当する位相ずれの算出処理の一例を表す。
【0136】
(S31:φ>φ
0−d 且つ φ<φ
0+d?)
ステップS25で求められたサブピクセルレベルの位相ずれφについて、φ>(φ
0−d)、且つ、φ<(φ
0+d)のとき(ステップS31:YES)、位相補正部221は、ステップS32に移行する。φ>(φ
0−d)、且つ、φ<(φ
0+d)ではないとき(ステップS31:NO)、位相補正部221は、ステップS33に移行する。
【0137】
(S32:φ1=φ
0/566)
位相補正部221は、ピクセル数p=0に相当するピクセルレベルの位相ずれφ1を求める。ここでは、位相補正部221は、(φ
0/ζ)=(φ
0/566)を求めることにより1波数当たりのピクセルレベルの位相ずれφ1を求める。
【0138】
(S33:φ>φ
1−d 且つ φ<φ
1+d?)
ステップS25で求められたサブピクセルレベルの位相ずれφについて、φ>(φ
1−d)、且つ、φ<(φ
1+d)のとき(ステップS33:YES)、位相補正部221は、ステップS34に移行する。φ>(φ
1−d)、且つ、φ<(φ
1+d)ではないとき(ステップS33:NO)、位相補正部221は、ステップS35に移行する。
【0139】
(S34:φ1=φ
1/566)
位相補正部221は、ピクセル数p=1に相当するピクセルレベルの位相ずれφ1を求める。ここでは、位相補正部221は、(φ
1/ζ)=(φ
1/566)を求めることにより1波数当たりのピクセルレベルの位相ずれφ1を求める。
【0140】
(S35:φ>φ
2−d 且つ φ<φ
2+d?)
ステップS25で求められたサブピクセルレベルの位相ずれφについて、φ>(φ
2−d)、且つ、φ<(φ
2+d)のとき(ステップS35:YES)、位相補正部221は、ステップS36に移行する。φ>(φ
2−d)、且つ、φ<(φ
2+d)ではないとき(ステップS35:NO)、位相補正部221は、ステップS37に移行する。
【0141】
(S36:φ1=φ
2/566)
位相補正部221は、ピクセル数p=2に相当するピクセルレベルの位相ずれφ1を求める。ここでは、位相補正部221は、(φ
2/ζ)=(φ
2/566)を求めることにより1波数当たりのピクセルレベルの位相ずれφ1を求める。
【0142】
(S37:φ>φ
−1−d 且つ φ<φ
−1+d?)
ステップS25で求められたサブピクセルレベルの位相ずれφについて、φ>(φ
−1−d)、且つ、φ<(φ
−1+d)のとき(ステップS37:YES)、位相補正部221は、ステップS38に移行する。φ>(φ
−1−d)、且つ、φ<(φ
−1+d)ではないとき(ステップS37:NO)、位相補正部221は、ステップS39に移行する。
【0143】
(S38:φ1=φ
−1/566)
位相補正部221は、ピクセル数p=−1に相当するピクセルレベルの位相ずれφ1を求める。ここでは、位相補正部221は、(φ
−1/ζ)=(φ
−1/566)を求めることにより1波数当たりのピクセルレベルの位相ずれφ1を求める。
【0144】
(S39:φ1=0)
位相補正部221は、1波数当たりのピクセルレベルの位相ずれφ1として0を設定する。ステップS39は、事前に設定されたピクセルシフト範囲内での位相ずれが算出できないときに実行される処理であり、位相ずれφ1として0以外の値が設定されてもよい。
【0145】
ステップS32、S34、S36、S38、S39に続いて、位相補正部221は、一連の動作を終了する(エンド)。
【0146】
[参照スペクトルの算出処理]
図10は、
図7のステップS13の具体的な処理例のフロー図を表す。ステップS13の処理は、各Aラインの干渉光のスペクトルに対するFFT処理と、FFT処理結果の中央値を算出する処理と、参照スペクトルを求める処理とを含む。
【0147】
(S41:i=0)
参照スペクトル算出部223は、複数のAラインの1つを特定するための変数iを初期化する。ここでは、変数iの初期値として0が設定される。
【0148】
(S42:第iのAラインの干渉光のスペクトルに対するFFT処理)
参照スペクトル算出部223は、第iのAラインの干渉光のスペクトルに対しFFT処理(データサイズ=1376)を施す。
【0149】
(S43:次のAライン?、S44:iをインクリメント)
1断層画像を構成するAライン数(1024ライン)分の処理が終了したとき(ステップS43:YES)、参照スペクトル算出部223は、変数iをインクリメントして(ステップS44)、ステップS42に移行する。一方、1断層画像を構成するAライン数分の処理が終了していないとき(ステップS43:NO)、参照スペクトル算出部223は、ステップS45に移行する。
【0150】
(S45:実数部の中央値を算出)
参照スペクトル算出部223は、ステップS42におけるFFT処理により得られた複数の実数部の中央値を算出する。その具体例として、参照スペクトル算出部223は、複数の実数部を昇順又は降順にソートし、その中央値を算出する。1断層画像を構成するAライン数が2n(nは自然数。以下、同様。)の場合、参照スペクトル算出部223は、ソートすることにより得られたn番目の実数部と(n+1)番目の実数部との平均値を中央値として算出することができる。Aライン数が(2n+1)の場合、参照スペクトル算出部223は、ソートすることにより得られた(n+1)番目の実数部を中央値として算出することができる。
【0151】
(S46:虚数部の中央値を算出)
参照スペクトル算出部223は、ステップS42におけるFFT処理により得られた複数の虚数部の中央値を算出する。その具体例として、参照スペクトル算出部223は、複数の虚数部を昇順又は降順にソートし、その中央値を算出する。1断層画像を構成するAライン数が2nの場合、参照スペクトル算出部223は、ソートすることにより得られたn番目の虚数部と(n+1)番目の虚数部との平均値を中央値として算出することができる。Aライン数が(2n+1)の場合、参照スペクトル算出部223は、ソートすることにより得られた(n+1)番目の虚数部を中央値として算出することができる。
【0152】
(S47:算出された実数部、虚数部に対する逆FFT処理)
参照スペクトル算出部223は、ステップS45において算出された実数部の中央値と、ステップS46において算出された虚数部の中央値とに対し、逆FFTを施す。
【0153】
(S48:実数部を出力)
参照スペクトル算出部223は、ステップS47における逆FFT処理により得られた実数部及び虚数部のうち実数部を参照スペクトルとして出力する。以上で、この動作例は終了となる(エンド)。
【0154】
[処理結果の例]
図11及び
図12は、FPNの要因に対応したインデックス近傍の位相ずれの算出結果の一例を示す。
図11は、波長板115に対応するインデックス(=566)近傍の位相ずれの算出結果の一例を表す。
図12は、光源又は電気系に対応するインデックス(=110)の近傍における位相ずれの算出結果の一例を表す。
図11及び
図12は、横軸にインデックス、縦軸にサブピクセルレベルに相当する位相ずれφ[rad]を表し、Aライン毎の位相ずれを表している。
【0155】
図11に示すように、波長板115の前面に対応するインデックスの近傍では、位相ずれが安定しており、シフトするピクセル数を−1、0、1、2のいずれかに割り当てることが可能である。これに対し、
図12に示すように、光源又は電気系に対応するインデックス近傍では、位相ずれが不安定であり、シフトするピクセル数を−1、0、1、2のいずれかに割り当てることは不可能である。従って、波長板115の前面において安定した位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相を補正することで、これまで完全な除去が困難であったFPNの除去を高精度に行うことが可能となる。
【0156】
図13は、この実施形態に係る眼底撮影装置1により取得された断層画像の一例を表す。
図13は、眼底の断層画像(Bスキャン画像)であり、縦方向が深度方向(z方向)を表し、横方向が走査方向(xy平面における所定方向)を表す。
【0157】
図13に示す断層画像IMG1は、各照射位置におけるAスキャン画像を走査方向に並べることにより取得される。Aスキャン画像は、上記のように波長板115の前面による位相ずれに基づいて位相補正された干渉光のスペクトルを用いて取得されたものである。この実施形態によれば、
図16に現れたFPNが除去された眼底Efの断層画像を安定して取得することが可能となる。
【0158】
この実施形態では、光学部材としての波長板115が参照光LRの光路に配置された場合について説明したが、波長板115は、信号光LSの光路に配置されてもよい。たとえば、
図2のファイバカプラ105、122の間の信号光LSの光路に、波長板115が配置される。
【0159】
[効果]
眼底撮影装置1は、実施形態に係る光画像計測装置が適用された眼底撮影装置の一例である。以下、実施形態に係る光画像計測装置の効果について説明する。
【0160】
実施形態に係る光画像計測装置は、干渉光学系(たとえばファイバカプラ105、122、検出器125、及びこれらの間で参照光LRや信号光LSを導く光ファイバや各種光学素子)と、画像形成手段(たとえば画像形成部220)とを有する。干渉光学系は、光学部材(たとえば波長板115)を有する。
【0161】
干渉光学系は、波長走査型光源(たとえば光源ユニット101に含まれる波長走査型光源)からの光を信号光(たとえば信号光LS)と参照光(たとえば参照光LR)とに分割し、被測定物体(たとえば被検眼E)を経由した信号光と参照光との干渉光(たとえば干渉光LC)を検出する。光学部材は、信号光の光路又は参照光の光路に配置される。画像形成手段は、干渉光学系により検出された干渉光に基づいて被測定物体の画像を形成する。画像形成手段は、光学部材による位相ずれを求め、求められた位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相を補正し、補正された干渉光のスペクトルに基づいて画像を形成する。
【0162】
SS−OCTでは、波長走査型光源や電気系のジッターや各種光学素子の多重反射等に起因して、取得された画像にFPNが現れることが知られている。この実施形態では、信号光や参照光の光路に配置された光学部材において位相が安定していることに着目し、画像形成手段は、この光学部材による位相ずれを求め、求められた位相ずれに基づいて補正された干渉光のスペクトルにより被測定物体の画像を形成する。これにより、光源や電気系や画像やノイズの態様にかかわらず、FPNの要因となった干渉光のスペクトルの位相ずれを安定して補正することが可能となり、SS−OCTにおいて取得された画像に現れるFPNを除去することが可能となる。また、画像処理によりFPNを除去する必要がなくなるため、処理負荷の軽減と、リアルタイムでFPNが除去された画像の取得に寄与することができる。
【0163】
実施形態に係る光画像計測装置では、画像形成手段は、位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相をピクセルレベルで補正するようにしてもよい。
【0164】
FPNの要因の1つとして、干渉光の検出信号を取り込む手段の動作クロックと、波長走査型光源における波長走査タイミングとの位相ずれがある。この位相ずれは、干渉光の検出信号の取り込みタイミングをピクセルレベルでシフトさせる。従って、ピクセルレベルで干渉光のスペクトルの位相を補正することにより、上記の要因に基づくFPNを除去することが可能となる。また、サブピクセルレベルで干渉光のスペクトルの位相を補正することによりFPNを除去することができず、却って画質を劣化させてしまう事態を回避することもできる。
【0165】
実施形態に係る光画像計測装置では、画像形成手段は、位相ずれをピクセルレベルに相当する位相ずれに変換し、変換されたピクセルレベルに相当する位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相を補正するようにしてもよい。
【0166】
このような光画像計測装置によれば、サブピクセルレベルの位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相を補正した後、この位相補正をピクセルレベルに変換する場合と比較して、高精度な位相補正の処理を簡素化することができる。
【0167】
実施形態に係る光画像計測装置は、走査手段を含み、画像形成手段は、位相補正手段と、スペクトル演算手段とを含んで構成されていてもよい。
【0168】
走査手段は、被測定物体に対する信号光の照射位置を走査する。位相補正手段は、各照射位置におけるAラインについて、光学部材による位相ずれを求め、求められた位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相を補正する。スペクトル演算手段は、Aライン毎に、位相補正手段により補正された干渉光のスペクトルから予め算出された参照スペクトルを差し引く。画像形成手段は、スペクトル演算手段により得られたスペクトルに基づいて被測定物体の画像を形成する。
【0169】
このような光画像計測装置によれば、Aライン毎に、光学部材による位相ずれに基づいて位相が補正された干渉光のスペクトルから参照スペクトルを差し引くことによりFPNを除去するようにしたので、ハードウェアを大幅に追加することなく簡素なスペクトルの演算処理でFPNを除去することが可能な光画像計測装置を提供できる。
【0170】
実施形態に係る光画像計測装置では、画像形成手段は、参照スペクトル算出手段を含んで構成されていてもよい。参照スペクトル算出手段は、走査手段により走査された複数の照射位置における複数の干渉光のスペクトルに基づいて参照スペクトルを算出する。
【0171】
このような光画像計測装置によれば、干渉光のスペクトルから参照スペクトルを算出するようにしたので、バックグラウンドスペクトルを別途取り込んでおく必要がなくなる。バックグラウンドスペクトルは、光学系を予め決められた経路に切り換えることで取得できるが、経路上の影響や計測環境の影響を受ける場合があり、バックグラウンドスペクトルを基準とすると画質が低下することがある。この実施形態によれば、上記の影響を受けることなく、FPNを除去することが可能となる。
【0172】
実施形態に係る光画像計測装置では、参照スペクトル算出手段は、複数の干渉光のスペクトルの代表値を算出し、代表値を参照スペクトルとして求めるようにしてもよい。参照スペクトル算出手段は、代表値として複数の干渉光のスペクトルの中央値を算出するようにしてもよい。
【0173】
このような光画像計測装置によれば、バックグラウンドスペクトルを別途取り込んでおくことなく、簡素な処理で参照スペクトルを算出することが可能となる。
【0174】
実施形態に係る光画像計測装置では、参照スペクトル算出手段は、複数の干渉光のスペクトルに対しフーリエ変換処理を施すことにより得られた複数の実数部と複数の虚数部のそれぞれを昇順又は降順にソートし、中央値となる実数部と虚数部に対し逆フーリエ変換を施すことにより得られた実数部を参照スペクトルとして求めるようにしてもよい。
【0175】
このような光画像計測装置によれば、複数の干渉光のスペクトルの強度や位相の偏りに影響を受けることなく参照スペクトルを算出することができるので、たとえば干渉スペクトルの平均を参照スペクトルとして求める場合に比べて、より高精度にFPNを除去することが可能となる。
【0176】
実施形態に係る光画像計測装置では、画像形成手段は、基準スペクトルと干渉光のスペクトルとの相関値に基づいて光学部材による位相ずれを求めるようにしてもよい。
【0177】
このような光画像計測装置によれば、光学部材における安定した位相ずれを演算処理により算出し、安定したFPNの除去が可能な光画像計測装置を提供することができる。
【0178】
実施形態に係る光画像計測装置では、基準スペクトルは、被測定物体に対して信号光の照射位置を走査することにより得られた複数のAラインのいずれか1つの干渉光のスペクトルであってもよい。
【0179】
このような光画像計測装置によれば、バックグラウンドスペクトルを取り込むことなく、簡素な演算処理でFPNの除去が可能な光画像計測装置を提供することができる。
【0180】
実施形態に係る光画像計測装置では、基準スペクトルは、被測定物体に対して走査された最初のAラインの干渉光のスペクトルであってもよい。
【0181】
このような光画像計測装置によれば、参照スペクトルを求めるための演算処理を、簡素化することができる。
【0182】
実施形態に係る光画像計測装置では、光学部材は、偏光子であってもよい。
【0183】
このような光画像計測装置によれば、取得画像に影響を与えることなく、安定した位相ずれを検出して高精度なFPNの除去を行うことができる。
【0184】
実施形態に係る光画像計測装置では、被測定物体は、生体眼であってもよい。
【0185】
このような光画像計測装置によれば、FPNが除去された眼底の断層画像を取得することができる。
【0186】
[変形例]
上記の実施形態の変形例を説明する。以下の各変形例を、上記実施形態で説明した任意の構成に組み合わせることができる。
【0187】
(第1の変形例)
上記の実施形態では、参照光の光路に1つの波長板115が配置された場合について説明したが、信号光の光路又は参照光の光路に複数の波長板が配置されていてもよい。すなわち、干渉光学系における信号光の光路又は参照光の光路に複数の光学部材が配置されていてもよい。以下、第1の変形例に係る光画像計測装置が適用された眼底撮影装置について、上記の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0188】
図14は、第1の変形例に係るOCTユニットの構成の一例を表す。
図14において、
図2と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0189】
第1の変形例に係るOCTユニット100aの構成が
図2に示すOCTユニット100の構成と異なる点は、波長板115に代えて、波長板115a、115bが追加された点である。波長板115aは、波長板115と同じ位置に配置される。波長板115bは、コリメータ111と光路長補正部材112との間に配置される。画像形成部220は、波長板115a、115bのいずれか1つによる位相ずれを求め、求められた位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相を補正して被検眼Eの画像を形成する。たとえば、波長板115a、115bのうち、多重反射の回数が少ない方がFPNの除去に好適な波長板とすることができる。この場合、多重反射の回数が少ない方の波長板による位相ずれを求め、これに基づいて干渉光のスペクトルの位相が補正される。波長板115a、115bのうち多重反射の回数が少ない方の波長板(多重反射の回数が最少の波長板)の特定は、たとえば、ノイズの強度が高い方の波長板(ノイズの強度が最も高い波長板)を特定することにより可能になると考えられる。その他の構成及び動作は上記の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0190】
[効果]
この変形例に係る光画像計測装置は、上記の実施形態の効果に加えて、次のような効果を有する。
【0191】
この変形例に係る光画像計測装置では、干渉光学系は、信号光の光路又は参照光の光路に配置された複数の光学部材を含んで構成されていてもよい。画像形成手段は、複数の光学部材のいずれか1つによる位相ずれを求める。
【0192】
このような光画像計測装置によれば、信号光の光路又は参照光の光路に配置された複数の光学部材のいずれか1つの位相ずれを求めることで、FPNの除去に好適な位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相を補正して、FPNが除去された画像を形成することができる。なお、信号光の光路又は参照光の光路に配置された複数の光学部材それぞれによる位相ずれに基づいて干渉光のスペクトルの位相を補正するようにしてもよい。
【0193】
(第2の変形例)
上記の実施形態において、光学部材(波長板115)の内部を通過する光の光学距離の変更が可能に構成されていてもよい。このような光学部材は、たとえば、部材内を通過する光の光学距離が互いに異なる複数の光学素子を含んで構成され、これらを任意に選択して、信号光の光路又は参照光の光路に配置する。光学部材の内部を通過する光の光学距離を変更することにより、たとえば
図6に示すプロファイルにおけるインデックスを変更することができる。なお、光学部材内を通過する光の光学距離を変更する方法として、たとえば、光学部材の入射面と出射面との距離を変更する方法が挙げられる。
【0194】
[効果]
この変形例に係る光画像計測装置は、上記の実施形態の効果に加えて、次のような効果を有する。
【0195】
この変形例に係る光画像計測装置では、光学部材(たとえば波長板115)又は複数の光学部材(たとえば波長板115a、115b)の少なくとも1つは、部材内を通過する光の光学距離の変更が可能に構成されていてもよい。
【0196】
このような光画像計測装置によれば、光学系を構成する各種部材の経年劣化や計測環境の変化が生じた場合でも、光学部材の位相ずれを高精度に求めることができ、求められた位相ずれに基づいてFPNの除去を行うことが可能となる。
【0197】
この変形例に係る光画像計測装置では、光学部材は、部材内を通過する光の光学距離が互いに異なる複数の光学素子を含み、複数の光学素子が、信号光の光路又は参照光の光路に選択的に配置されてもよい。
【0198】
このような光画像計測装置によれば、ハードウェアを大幅に変更することなく、光学部材の厚みを変更することが可能となる。
【0199】
(第3の変形例)
上記の実施形態において、波長板115において安定した位相ずれを求めることができる場合に限って、FPNの除去を行うようにしてもよい。以下、第3の変形例に係る光画像計測装置が適用された眼底撮影装置について、上記の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0200】
図15は、第3の変形例に係る画像形成部の構成例のブロック図を表す。
図15は、第3の変形例に係る制御部についても合わせて図示し、
図4と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0201】
画像形成部220bは、位相補正部221と、スペクトル演算部222と、参照スペクトル算出部223と、強度検出部224bとを含んで構成されている。画像形成部220bが
図4に示す画像形成部220と異なる点は、強度検出部224bが追加された点である。強度検出部224bは、光学部材としての波長板115におけるノイズ成分(スペクトル)の強度を検出する。強度検出部224bにより得られた検出結果は、制御部210bに送られる。制御部210bは、強度検出部224bにより得られた検出結果に基づき、検出された強度が閾値以上のとき、上記の実施形態のように位相補正された干渉光のスペクトルを用いて被検眼Eの画像を形成する。
【0202】
閾値は、事後的に変更することが可能である。閾値が高いほど、波長板115による位相ずれを安定して求めることが可能となるため、求められた位相ずれに基づくFPNの除去を安定して行うことが可能となる。しかしながら、波長板115におけるノイズ成分の強度が閾値未満のとき、FPNの除去ができないケースが生ずる。一方、閾値が低いほど、強度が低いノイズ成分であっても波長板115による位相ずれを求めることが可能となるが、求められる位相ずれが不安定となり、FPNの除去を安定して行うことができないケースが生ずる。閾値は、計測環境等を考慮してFPNの除去に好適な値に事後的に変更することが望ましい。
【0203】
画像形成部220bは、
図3において画像形成部220に代えて設けられる。制御部210bは、
図3において制御部210に代えて設けられる。その他の構成及び動作は上記の実施形態と同様であるため、説明を省略する。強度検出部224bは、この変形例における「強度検出手段」の一例である。
【0204】
[効果]
この変形例に係る光画像計測装置は、上記の実施形態の効果に加えて、次のような効果を有する。
【0205】
この変形例に係る光画像計測装置は、強度検出手段(たとえば強度検出部224b)を含んで構成される。強度検出手段は、光学部材(たとえば波長板115)におけるノイズ成分の強度を検出する。画像形成手段(たとえば画像形成部220b)は、強度検出手段により検出された強度が閾値以上のとき、位相補正された干渉光のスペクトルを用いて被測定物体の画像を形成する。
【0206】
光学部材による位相ずれは、安定していることが望ましく、ノイズ成分の強度が大きいほど検出しやすくなる。このような光学部材の位相ずれを用いることで、安定してFPNを除去することが可能となる。このような光画像計測装置によれば、強度が閾値未満のときに光学部材による位相ずれは不安定であると判断し、位相補正を行うことにより取得画像の画質を劣化させてしまう事態を回避することができる。
【0207】
(その他の変形例)
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。
【0208】
上記の実施形態又はその変形例において、光学部材としての波長板115(波長板115a、115b)が信号光の光路又は参照光の光路に配置された場合について説明したが、位相ずれを求めるための光学部材は、
図2に示す既存の光学部材(波長板115を除く、たとえば光路長補正部材112や分散補償部材113やその他の光学部材)と兼用されてもよい。すなわち、波長板115を除く
図2に示すいずれかの光学部材が、上記の実施形態又はその変形例において位相ずれを求めるための光学部材として作用してもよい。
【0209】
上記の実施形態においては、光路長変更部41の位置を変更することにより、信号光LSの光路と参照光LRの光路との光路長差を変更しているが、この光路長差を変更する手法はこれに限定されるものではない。たとえば、参照光の光路に反射ミラー(参照ミラー)を配置し、この参照ミラーを参照光の進行方向に移動させて参照光の光路長を変更することによって、当該光路長差を変更することが可能である。また、被検眼Eに対して眼底カメラユニット2やOCTユニット100、100aを移動させて信号光LSの光路長を変更することにより当該光路長差を変更するようにしてもよい。また、特に被測定物体が生体部位でない場合などには、被測定物体を深度方向(z方向)に移動させることにより光路長差を変更することも可能である。
【0210】
上記の実施形態又はその変形例を実現するためのコンピュータプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な任意の記録媒体に記憶させることができる。この記録媒体としては、たとえば、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク(CD−ROM/DVD−RAM/DVD−ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。
【0211】
また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。