(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に従って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に適用される携帯情報端末装置(携帯情報端末機器とも称す)の外観を示す斜視図である。携帯情報端末装置1は、例えば、ガス、水道、電力量等の検針時に携帯されて、ガス等の使用量の結果を現場で記録媒体にプリントし、プリントした記録媒体を切り離して使用者に直接手渡しを可能とする装置である。
【0011】
図1の左上に示す座標(XYZ)は、以降で示す各図との方向関係を規定する座標である。また、
図1の左上に図示するように、
図1で示す携帯情報端末装置1の下側を前方側、上側を後方側と呼ぶ。また、X方向を幅方向、Z方向を高さ方向とも呼ぶ。
【0012】
携帯情報端末装置1は、前方側に操作関連部を、後方側にプリンタ関連部をそれぞれ有し、略縦長で後方側が底部方向に膨らんだ形状である。携帯情報端末装置1は、プリンタ関連部として、後方側に用紙供給部(用紙供給装置とも呼ぶ)5、後方側上面に上部カバー50、上部カバー50から中央寄りの内部に印字部60を有する。
【0013】
用紙供給部5は、用紙収納部10と用紙案内部20を有する。用紙収納部10は、折り畳み用紙を収納するための空間を内部に有する。携帯情報端末装置1の底部の膨らんだ部分が用紙収納部10である。尚、用紙収納部10は、着脱可能で、使用する折り畳み用紙のサイズにより、サイズの異なる用紙収納部に交換可能としてもよい。用紙案内部20は、折り畳み用紙から引き出された連続用紙を、印字部60まで案内するもので、用紙収納部10の上部に設けられる。
【0014】
上部カバー50は、携帯情報端末装置1の本体部7に対してP方向に回動することで、開閉可能に設けられる。
図1は、上部カバー50が閉じられた状態を示す。上部カバー50の表面には、上部カバー50の開閉時に指を入れるための凹部52が形成される。上部カバー50を閉止した状態で、上部カバー50の先端部と本体部7との間には若干の隙間が設けられて、用紙が排出される排紙口54が形成される。
【0015】
ロック釦58は、上部カバー50を閉止状態に保持しておくための釦である。ロック釦58をロック解除位置に移動させることで、上部カバー50を開放することができる。また、携帯情報端末装置1の後方端には、用紙収納部10の開閉を係止する係止部10aが係止状態で保持される。係止部10aは、用紙収納部10の一部である。
【0016】
携帯情報端末装置1は、操作関連部として、表示部100と入力部110を有し、入力部110の下側側面に電池カバー120を有する。表示部100は、操作メニューあるいは入力あるいは取得されたデータ等を表示するもので、例えば液晶ディスプレーである。入力部110は、操作指示あるいは各種データを入力するもので、例えばキーボードから構成される。電池カバー120は、入力部110の下に設けられる電池収納室を保護するものである。電池カバー120の表面に設けられるレバー122は、電池カバー120の開閉を操作するツマミである。携帯情報端末装置1を長手方向に沿ってMMで断面した形状を
図2以降に示す。
【0017】
図2は、
図1の携帯情報端末装置1を右方向から見たMM断面図で、携帯情報端末装置1の用紙供給部5(用紙収納部10と用紙案内部20)及び印字部60の構成を示す断面図である。なお、
図2は、折り畳み用紙200が用紙収納部10に収納はされているが、用紙は引き出されていない状態である。
【0018】
用紙収納部10は、樹脂製の薄いシート材が折り曲げられて箱状に形成されたものである。用紙収納部10は、折り畳まれた連続用紙(折り畳み用紙200)を2つ折りにして収納する。用紙収納部10の後方側の側壁10bは、折り畳み用紙200の入口を開閉する扉である。側壁10bは、用紙収納部10の底部10cと根元で繋がっていて、根本から+P方向に回動可能である。側壁10bを+P方向に回動することで、用紙収納部10の後方側が開放される。
図2は、側壁10bが閉止位置の状態である。開放された後方側から折り畳み用紙200を収納することができる。側壁10bの先端に係止部10aに繋がっていて、係止部10aを本体部7に係止させることで、側壁10bが閉止位置に保持される。
【0019】
また、用紙収納部10を構成するシート材は、透明にしてもよい。透明であれば、折り畳み用紙200を湾曲させて用紙収納部10に収納した後の用紙送り状態を、外部から容易に視認することができ、また、折り畳み用紙200の残量等を視認することもできる。その他、用紙ジャム等のような用紙に関するトラブルを直ちに発見することができる。なお、折り畳み用紙200を湾曲させて収納することで、元に戻ろうとする用紙の反発力により用紙収納部10内での位置ずれは、ある程度規制されている。
【0020】
連続用紙が折り畳まれた折り畳み用紙200は、中央で2つ折りにされ、2つ折りにされた折り畳み用紙200が上下で向かい合うような状態で、用紙収納部10に収納される。折り畳み用紙200の両端の折り返し端部200aと折り返し端部200bが上下で向かい合うように、収納される。
【0021】
図3は、折り畳み用紙200を模式的に示す図である。折り畳み用紙200は、幅方向に平行な折り目(ミシン目部分)で交互に折り畳まれた複数の用紙が積層されて構成される。この折り畳み用紙200は、例えば、折り目で切り離し後の寸法規格がユーザごとに定められていて、一例として幅(80mm)×長さ(200mm)の用紙が、折り目を境として交互に折り畳まれている。折り畳み用紙200は、内側から用紙が引き出されていく。なお、以下では、折り畳まれた状態と引き出された状態を区別するために、折り畳まれた状態の用紙を折り畳み用紙200と称し、引き出された状態の用紙を用紙210と称する。
【0022】
図2に戻る。用紙収納部10の上部に用紙案内部20が設けられる。用紙案内部20は、用紙収納部10から引き出される用紙を印字部60まで案内するものである。用紙案内部20の後方側の位置には、仕切り板22が設けられる。仕切り板22は、用紙案内部20の幅方向全体に渡った長さで、後方側が高く前方側が低くなるような角度で斜面を形成するように設けられる。仕切り板22は、用紙210を案内するものとして、第1案内部22aと斜面部22bを有する。
【0023】
第1案内部22aは、仕切り板22の後方側の端部に設けられ、略上方向に凸となるような半円状の曲面である。斜面部22bは、第1案内部22aで後方側に位置し、略一定角度で前方側に傾斜する部分である。
【0024】
第1案内部22aは、第1案内部22aの先端と用紙収納部10の側壁10bとの間に所定の隙間K1が確保される位置に設けられる。第1案内部22aと用紙収納部10の側壁10bの間の空隙(隙間K1)を、第1空隙24とも呼ぶ。
【0025】
また、第1案内部22aの先端は、折り返し端部200aからLだけ後方側に突出した位置に設けられる。折り畳み用紙200から用紙を引き出す場合に、折り返し端部200a(200b)から遠ざかる方向(後方側)に引き出すことで、引き出し時の負荷を減少させることができるからである。
【0026】
仕切り板22の斜面部22bの端部から前方側の位置に第2案内部26が設けられる。第2案内部26は、上部カバー50の一部が略下に向かって凸状の曲面形状を形成している。具体的には、第2案内部26は、上部カバー50の凹部52を形成する部分の内壁によって形成される。第2案内部26と用紙200の間には所定の隙間K2が設けられる。第2案内部26と用紙200の間の空隙(隙間K2)を、第2空隙28とも呼ぶ。
つまり、用紙収納部10は、携帯情報端末装置1の底部に配置され、折り畳み用紙200を上下に2つ折り状態にして、上下で重なる折り畳み用紙200の折り返し部分を一方の端部とし、2つ折りの湾曲部分を他方の端部となるようにして、折り畳み用紙200を収納する。そして、用紙案内部20は、第1案内部材22aを一方の端部の上方に配置し、第2案内部26を第1案内部22aよりも低い位置で、かつ第1案内部22aよりも他方の端部に近い位置に配置する。
【0027】
印字部60は、プラテン62と、用紙210に印字する記録ヘッド64と、プラテン62を回転させる駆動モータ66をそれぞれ有する。プラテン62は、折り畳み用紙200から用紙210を引き出す用紙駆動部材であると共に、用紙210を記録ヘッド64に押圧する押圧部材でもある。
【0028】
記録ヘッド64としては、熱により用紙210に印字可能なサーマルヘッドが用いられている。これにより、ノンインパクト方式で用紙210に必要な情報が印字される。ただし、熱印字方式に限らず、例えばワイヤドット等のインパクト方式による印字手段を用いてもよい。また、記録ヘッド64による印字は、電気基板68により制御され、電気基板68から送信された信号が、ハーネス70を経由した信号により、印字を行う。
【0029】
プラテン62は、上部カバー50の前方側端部の内側に回転自在に取付けられる。上部カバー50は、本体部7に軸支され、軸を中心としてP方向に回動可能となっている。プラテン62は、ゴム等の弾性体からなり、上部カバー50の回動軸と平行に配置される。つまり、第2案内部26は、携帯情報端末装置1に開閉可能な上部カバー50の内側に形成されることになる。
【0030】
駆動モータ66は、記録ヘッド64を挟んでプラテン62と対向する側に配置される。記録ヘッド64は、不図示の弾性体による付勢力でプラテン62側に常時付勢され、記録ヘッド64により、用紙210に各種情報が印字される。排紙口54には、用紙210をカットするためのカッタ刃(不図示)が設けられる。
【0031】
印字準備時には、上部カバー50を開操作(+P方向へ回動)して、用紙案内部20を開放して、用紙210を記録ヘッド64まで引出してセットする。セット後、上部カバー50の閉操作(−P方向)することで、上部カバー50に設けられたプラテン62が記録ヘッド64に密着されて、用紙セットが完了する。
【0032】
図4は、
図3と同一方向から見た断面図で、折り畳み用紙200が引き出される印字中の状態である。折り畳み用紙200の状態から排紙口54まで案内される用紙210の各位置を、順番に用紙210a〜用紙210fで示す。また、印字は用紙210の記録ヘッド64側にされるので、用紙210の記録ヘッド64側の面を印刷面α(第1の面とも称す)、その逆側の面を非印刷面β(第2の面とも称す)と表示する。
【0033】
折り畳み用紙200から引き出される用紙210は、用紙収納部10から用紙案内部20に入る。用紙210は、折り畳み用紙200から第1案内部22aの手前まで、後方側に向かって斜め上方向に直線的に第1案内部22aまで進む(用紙210a)。
【0034】
用紙210は、第1案内部22aで、第1案内部22aの曲面に沿って、印刷面αを内側、非印刷面βを外側にして、斜め上方向に凸状に屈曲しながら、方向を変える(用紙210b)。用紙210は、第1案内部22aを通過した後は、斜面部22bと平行に前方に向かって斜め下方向に進む(用紙210c)。
【0035】
用紙210は、第2案内部26で、第2案内部26の曲面に沿って、印刷面αを外側、非印刷面βを内側にして、下に凸状に屈曲しながら、方向を前方に向かって斜め上に変える(用紙210d)。用紙210は、第2案内部26を通過した後は、プラテン62と記録ヘッド64の間に吸い込まれる(用紙210e)。用紙210は、プラテン62と記録ヘッド64の間を通過して印字された後、排紙口54から排出される(用紙210f)。
【0036】
以上に示す用紙の経路は、太線で示すようにS字を横にしたような形状を構成する。つまり、用紙案内部20は、第1案内部22aと第2案内部26とにより、用紙を略S字状に案内するとも言える。
【0037】
図5の各図は、2重に引き出された用紙の部分が第1案内部22aで分離される様子を時系列で模式的に説明する図である。
図5の各図は、用紙の非印刷面β側に付着した2重に引き出された用紙が、第1案内部22aによって分離される様子を説明する図である。
図5A、
図5B、
図5Cは、時系列の順番である。
図5の各図は、
図3と同一方向から見た断面図であるが、説明に不要な箇所は省略して図示する。
【0038】
図5Aは、印字実行中に、折り畳み用紙200から用紙210が引き出される際に、用紙210の折り目210mに後続する折り目220mが付着した状態で引き出された状態を示す図である。なお、折り目の位置を分かりやすくするために、折り目を黒丸で示す。
【0039】
折り畳み用紙200は束の状態で保管されることが多いので、用紙210の折り目210mに後続する折り目220mが弱い力ではあるが付着してしまい、付着された状態で引き出されてしまうことがある。この2重に引き出された用紙(以下、2重部分220と称す)のままで、プラテン62と記録ヘッド64の間に入ると、用紙詰りが発生して印字は中断され、ユーザは、詰まった紙の取出し処理を行って、再度印刷を指示しなければならなくなり、ユーザに余分な作業を強いてしまう。
【0040】
図5Aは、用紙210の折り目210mの非印刷面βに後続する折り目220mが付着した状態で、用紙210が折り畳み用紙200から引き出される様子を示す図である。
【0041】
図5Bは、用紙210の折り目210mに後続する折り目220mが付着した状態で、第1案内部22aの前まで、引き出された様子を示す図である。2重部分220が、非印刷面β側に付着している。
【0042】
図5Cは、付着した後続する折り目220mが分離される様子を示す図である。用紙210は、第1案内部22aによって、印刷面αを内側にして屈曲されて移動する。2重部分220は、折り目部分の弱い力で付着されているだけなので、用紙210が屈曲して移動される際に、2重部分220では、屈曲されることに対する抵抗力の方が付着力よりも大きいため、2重部分220の折り目220mが折り目210mから分離される。これにより、2重部分220が矢印Q方向に向かって分離され、2重部分220が第1空隙24へ移動して、用紙210から離脱し、2重引出しが解消される。
【0043】
図6の各図は、2重に引き出された用紙の部分(以下、2重部分230と称す)が第2案内部26で分離される様子を模式的に説明する図である。
図6の各図では、用紙の印刷面α側に付着した後続する折り目230mが、第2案内部26によって分離される場合を示す図である。
図6A、
図6B、
図6C、
図6Dは、時系列の順番である。
図6の各図は、
図3と同一方向から見た断面図であるが、説明に不要な箇所は省略して図示する。
【0044】
図6Aは、印字実行中に、折り畳み用紙200から用紙210が引き出される際に、用紙210の折り目210mに後続する折り目230mが付着した状態で引き出される状態を示す。
図5で説明したと同様に、2重に引き出された用紙のままで、記録ヘッド64に入ると、エラーを発生させてしまう。
【0045】
図6Aは、用紙210の折り目210mの印刷面に後続する折り目230mが付着した状態で、用紙210が折り畳み用紙200から引き出される様子を示す図である。
【0046】
図6Bは、用紙210の折り目210mに後続する折り目230mが付着した状態で、第1案内部22aで屈曲されて移動する様子を示す図である。第1案内部22aにより屈曲されても、2重部分230は用紙210の印刷面α側に付着していて、2重部分230が用紙210の内側になるため、2重部分230が用紙210から分離することはない。
【0047】
図6Cは、用紙210に2重部分230が付着した状態で、第1案内部22aを通過して、斜面部22bの端部まで移動された様子を示す図である。
【0048】
図6Dは、付着した後続する折り目230mが分離される様子を示す図である。用紙210は、第2案内部26によって、印刷面αを外側にして屈曲して移動する。2重部分230は、折り目部分の弱い力で付着されているだけなので、用紙210が屈曲して進む際に、2重部分230では、屈曲されることに対する抵抗力の方が付着力よりも大きいため、2重部分230の折り目230mが折り目210mから分離される。これにより、2重部分230が矢印R方向に向かって分離され、2重部分230が第2空隙28へ移動して、用紙210から離脱し、2重引出しが解消される。
【0049】
以上説明した実施形態により少なくとも奏される効果を列記する。
・用紙に付着する2重部分を、途中の案内部で用紙を屈曲させることにより分離させるので、センサやアクチュエータが不要で、携帯端末の小型化が可能となる。
・用紙案内部に用紙を印刷面を内側にして屈曲させる部材(第1案内部)と、用紙を非印刷面を内側にして屈曲させる部材(第2案内部)をそれぞれ設けたので、用紙のいずれの面に2重部分があっても、確実に分離させることができる。
・屈曲させる部材(第1案内部、第2案内部)の近傍に、それぞれ分離される2重部分を受け入れる空隙(第1空隙、第2空隙)を設けたので、分離される2重部分が引っかかってしまうおそれがない。
・第2案内部を開閉可能な上カバーに設けたので、上カバーを閉める操作だけで、用紙のセットが完了する。
【0050】
以上説明した実施形態に対する変形例を列記する。
・最初に印刷面を内側にして屈曲させ、その後印刷面を外側(非印刷面を内側)にして屈曲させるようにしたが、逆の順番でもよい。
・用紙収納部を用紙案内部の下部に設けたが、用紙収納部を用紙案内部の上部に設けるようにしてもよい。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではく、実施段階でのその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。