(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180883
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】液体噴出ポンプ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20170807BHJP
B05B 11/00 20060101ALI20170807BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B05B11/00 101H
B05B11/00 101J
B65D83/00 K
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-226727(P2013-226727)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-85971(P2015-85971A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝之
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】
宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−115748(JP,A)
【文献】
特開平10−236511(JP,A)
【文献】
特開2005−103425(JP,A)
【文献】
特開2012−180095(JP,A)
【文献】
特許第4026025(JP,B2)
【文献】
実開平01−174073(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0243748(US,A1)
【文献】
特開2002−192026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B05B 11/00
B65D 83/00
F04B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体の口頚部外周に取り付けた装着筒により容器体内に下端を垂下させた状態でシリンダを固定するとともに、該シリンダ上部に外気導入用の吸気孔を穿設してなる固定吸引部と、該固定吸引部上端中央の開口より上方付勢状態で上下動可能に突出させたステム上端にノズル付き押し下げヘッドを設けた作動部材とを備え、該作動部材の上下動により容器体内の液を吸い上げてノズルより噴出する如く構成するとともに、作動部材を押し下げた状態で固定吸引部に係止可能に構成してなる液体噴出ポンプにおいて、
前記シリンダ上部に摺動可能に嵌合させて前記吸気孔を閉塞可能な摺動閉塞部と、該摺動閉塞部を下部外周より周突設するとともに、固定吸引部上端開口に挿入させた基筒部とからなり、前記作動部材が最下降の係止状態に移行する際に、作動部材上部に設けた下向き段部により押し下げられて吸気孔を閉塞する如く構成した閉塞筒部材を設け、
前記作動部材のステム下部には、前記シリンダに摺動可能に嵌合させるとともに、前記作動部材と固定吸引部との係止を解除させて前記作動部材が最上昇状態に移行する際に、前記摺動閉塞部の下端を上端により押し上げて、摺動閉塞部に代わって吸気孔を閉塞するピストンを設けたことを特徴とする液体噴出ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴出ポンプに関し、流通時、使用時のいずれにおいても、シリンダ上部に設けた吸気孔を通じた液漏れを防止し、また、浴室等の水場で使用する場合に、水が前記吸気孔を通じて容器体内に侵入することを抑制しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体噴出ポンプとして、例えば特許文献1に記載されるようなものが知られている。
図7及び
図8に示すように、このような従来の液体噴出ポンプ100は、容器体の口頚部外周に取り付けた装着筒101により容器体内に下端を垂下させた状態でシリンダ102を固定するとともに、該シリンダ上部に外気導入用の吸気孔103を穿設してなる固定吸引部104と、該固定吸引部上端中央の開口105より上方付勢状態で上下動可能に突出させたステム106上端にノズル付き押し下げヘッド107を設けた作動部材108とを備え、該作動部材108の上下動により容器体内の液を吸い上げてノズルより噴出する如く構成するとともに、作動部材108を押し下げた状態で固定吸引部104に係止可能に構成してなる。
【0003】
そして、保管、運搬等の流通時に容器を倒した場合でも、容器体内の液がシリンダ102の吸気孔103を通じて固定吸引部104の上端開口105から漏出することを防止できるようにするために、作動部材108が最下降の係止状態に移行する際に、作動部材108上部に設けた下向き段部109により押し下げられて、
図8に示したように、吸気孔103を閉塞する閉塞筒部材110を設けていた。該閉塞筒部材110は、使用時には、作動部材108と固定吸引部104との係止を解除させて、作動部材108が最上昇状態に移行するに際し、作動部材108により押し上げられて、
図7に示したように、吸気孔103を開放させるように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4026025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したような従来の液体噴出ポンプ100では、使用時に容器を倒した場合に、シリンダ102の吸気孔103を通じて容器体内の液の漏出を生じるおそれがあった。また、浴室等の水場で使用する場合に、水が、ステム106の外周面と閉塞筒部材110の内周面との隙間から、シリンダ102の吸気孔103を介して容器体内に侵入するおそれもあった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために開発されたもので、流通時、使用時のいずれにおいても、シリンダ上部に設けた吸気孔を通じた液漏れを防止し、また、水場で使用する場合に、水が前記吸気孔を通じて容器体内に侵入することを抑制することができる液体噴出ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
1.容器体の口頚部外周に取り付けた装着筒により容器体内に下端を垂下させた状態でシリンダを固定するとともに、該シリンダ上部に外気導入用の吸気孔を穿設してなる固定吸引部と、該固定吸引部上端中央の開口より上方付勢状態で上下動可能に突出させたステム上端にノズル付き押し下げヘッドを設けた作動部材とを備え、該作動部材の上下動により容器体内の液を吸い上げてノズルより噴出する如く構成するとともに、作動部材を押し下げた状態で固定吸引部に係止可能に構成してなる液体噴出ポンプにおいて、
前記シリンダ上部に摺動可能に嵌合させて前記吸気孔を閉塞可能な摺動閉塞部と、該摺動閉塞部を下部外周より周突設するとともに、固定吸引部上端開口に挿入させた基筒部とからなり、前記作動部材が最下降の係止状態に移行する際に、作動部材上部に設けた下向き段部により押し下げられて吸気孔を閉塞する如く構成した閉塞筒部材を設け、
前記作動部材のステム下部には、前記シリンダに摺動可能に嵌合させるとともに、前記作動部材と固定吸引部との係止を解除させて前記作動部材が最上昇状態に移行する際に、前記摺動閉塞部の下端を上端により押し上げて、摺動閉塞部に代わって吸気孔を閉塞するピストンを設けたことを特徴とする液体噴出ポンプ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作動部材と固定吸引部との係止を解除させて作動部材が最上昇状態に移行する際に、作動部材のステム下部に設けたピストンの上端により、閉塞筒部材の摺動閉塞部の下端を押し上げて、シリンダ上部に設けた吸気孔を、摺動閉塞部に代わってピストンで閉塞することができる。
【0009】
したがって、本発明によれば、流通時、使用時のいずれにおいても、シリンダ上部に設けた吸気孔を通じた液漏れを防止し、また、水場で使用する場合に、水が前記吸気孔を通じて容器体内に侵入することを抑制することができる液体噴出ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液体噴出ポンプを容器体に装着し、作動部材を最上昇状態とした液体噴出ポンプ付き容器の要部を示す半断面側面図である。
【
図3】
図1の作動部材を最下降の係止状態とした液体噴出ポンプ付き容器の要部を示す半断面側面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る液体噴出ポンプを容器体に装着し、作動部材を最上昇状態とした液体噴出ポンプ付き容器の要部を示す半断面側面図である。
【
図6】
図4の作動部材を最下降の係止状態とした液体噴出ポンプ付き容器の要部を示す半断面側面図である。
【
図7】従来の液体噴出ポンプを容器体に装着し、作動部材を最上昇状態とした液体噴出ポンプ付き容器の要部を示す縦断面図である。
【
図8】
図7の作動部材を最下降の係止状態とした液体噴出ポンプ付き容器の要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1〜
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る液体噴出ポンプについて詳細に例示説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る液体噴出ポンプ1は、容器体2の口頚部外周に取り付けた装着筒3により容器体2内に下端を垂下させた状態でシリンダ4を固定するとともに、該シリンダ4上部に外気導入用の吸気孔5を穿設してなる固定吸引部Aと、該固定吸引部A上端中央の開口6より上方付勢状態で上下動可能に突出させたステム7上端にノズル8付き押し下げヘッド9を設けた作動部材Bとを備え、該作動部材Bの上下動により容器体2内の液を吸い上げてノズル8より噴出する如く構成するとともに、作動部材Bを押し下げた状態で固定吸引部Aに係止可能に構成してなる。
【0012】
具体的には、固定吸引部Aは、シリンダ4と、装着筒3と、リングキャップ10とを備える。シリンダ4は、上下端を開口した筒状で、外周上部よりフランジを突設し、下端部は縮径してパイプ11嵌合用の嵌合筒部に構成し、該筒部内に上端を嵌着させたパイプ11を容器体2内下端部に垂下させる。また、シリンダ4内下端部には吸い込み弁12を設けている。
【0013】
装着筒3は、容器体2の口頚部外周に設けた雄ねじに螺合する雌ねじを内周に有する筒壁13上端より内周側へ取り付け用のフランジを突設して構成し、該フランジをシリンダ4の前記フランジの上面に装着し、また、シリンダ4上端に嵌着させたリングキャップ10により抜け出しの防止を図り、シリンダ4に対して回動可能に設けている。そして、シリンダ4のフランジ下面をパッキンを介して容器体2口頚部上面に当接させて装着筒3のフランジにより圧接係止させている。
【0014】
リングキャップ10は、ステム7を貫通させる案内筒14を回転防止用の縦リブ15を介してシリンダ4上端内周に回転不能に嵌合させるとともに、案内筒14の上下方向中央から外周側に延びるフランジの外周縁に嵌合筒16を垂設し、該嵌合筒16内周をシリンダ4上端外周に凹凸係合手段を介して抜け出し不能に嵌合させて構成している。
【0015】
作動部材Bは、押し下げヘッド9と、ステム7と、ピストン部材17と、ピストンガイド18とを備える。押し下げヘッド9は、ステム7の上端に嵌着した縦筒19を頂壁20裏面中央部より垂設するとともに、縦筒19の外周側で頂壁20より垂下壁21を垂設し、且つ縦筒19上部に基端を開口したノズル8を側方へ突出させて構成している。
【0016】
ステム7は、上下端が開口した上筒部22と、上筒部22の下端から縮径しつつ下方に延び、且つ周方向に間隔を空けて配置した複数の貫通孔23を有する縮径部24と、縮径部24の下端に垂下した下筒部25と、前記上筒部22の下端に外周側にテーパ状に延びるスカート部を介して垂設した案内筒壁部26とからなっている。
【0017】
ステム7の下部には、ピストン部材17を設けている。具体的には、ピストン部材17は、ステム7の案内筒壁部26の内周に液密に、且つ摺動可能に当接する筒状のシール筒27と、シール筒27の下端から外周側に延設したフランジの外周縁に連設した、上方及び下方に向けて拡径するスカート状のピストン28と、シール筒27の下端に垂設した環状突起29とからなる。ピストン28は、シリンダ4に摺動可能に嵌合している。
【0018】
ステム7の下筒部25には、ピストンガイド18を嵌着させている。ピストンガイド18は、ステム7の下筒部25を嵌合係止する環状の嵌合凹部30を上面に有する頂壁部31と、頂壁部31外周縁に垂設した外筒部32とを有する。外筒部32の上端外周には、外筒部32外周とシリンダ4内周との間に隙間を形成するための複数の突起33を周方向に間隔を空けて設けている。また、頂壁部31の上面には、ピストン部材17の環状突起29の下端に当接可能な環状の当接凹部34を設けている。
【0019】
ピストンガイド18と吸い込み弁12との間には、コイルスプリング35を配置している。コイルスプリング35の上端は、外筒部32の内周側で、頂壁部31の下面に当接し、ステム7を上方に付勢している。
【0020】
前述した固定吸引部Aと作動部材Bとの間には、
図3に示すように、押し下げヘッド9を押し下げ、垂下壁21に形成した雌ねじをリングキャップ10の案内筒14の上部外周に形成した雄ねじに螺合させた状態、すなわち、作動部材Bが最下降の係止状態にあるときに、吸気孔5を閉塞する閉塞筒部材36を設けている。閉塞筒部材36は、シリンダ4上部に摺動可能に嵌合させて吸気孔5を閉塞可能な摺動閉塞部37と、該摺動閉塞部37を下部(本例では下端)外周より周突設するとともに、固定吸引部A上端開口6に挿入させた基筒部38とからなり、作動部材Bが最下降の係止状態に移行する際に、作動部材B上部に設けた下向き段部39により押し下げられて吸気孔5を閉塞する如く構成している。
【0021】
かかる構成によれば、保管、運搬等の流通時には、
図3に示したように、作動部材Bを螺着した状態にしておく。この際、閉塞筒部材36の摺動閉塞部37が吸気孔5を閉塞する。したがって、流通時に容器を倒した場合でも、容器体2内からシリンダ4内への液の漏出が生じることはなく、その結果、固定吸引部Aの上端開口6から液が漏出することを防止することができる。
【0022】
また、使用時には、作動部材Bと固定吸引部Aとの係止を解除させて、作動部材Bを最上昇状態に移行させるが、この際、ピストン部材17は、ピストンガイド18に押し上げられて、ピストン28上端により、閉塞筒部材36の摺動閉塞部37下端を押し上げることができる。その結果、
図2に示したように、摺動閉塞部37に代えて、ピストン28で吸気孔5を閉塞することができる。したがって、使用時においても、吸気孔5を通じた液漏れを防止することができる。また、水場で使用する場合に、水が吸気孔5を通じて容器体2内に侵入することを抑制することもできる。
【0023】
なお、容器体2内の液を吐出させるには、この状態から押し下げヘッド9を何回か上下動させて初期動作を行い、シリンダ4内に容器体2内の液を導入して準備を整える。この際、閉塞筒部材36は押し上げられた最上方位置に止まっている。次いで、押し下げヘッド9を押し下げると、シリンダ4内の加圧液が、ピストンガイド18の外筒部32外周とシリンダ4との隙間、ピストン部材17下面とピストンガイド18上面との隙間、及びステム7の縮径部24に形成した貫通孔23を通って、ノズル8から噴出する。次いで、押し下げヘッド9の押し下げを解除すると、コイルスプリング35の作用で作動部材Bが上昇し、この時、ピストン部材17の環状突起29の下端にピストンガイド18の当接凹部34が当接して封止することで、ピストンガイド18の下方のシリンダ4内が負圧化するため、容器体2内の液が吸い込み弁12を開いて導入される。
【0024】
次に、
図4〜
図6を参照して、本発明の他の実施形態に係る液体噴出ポンプについて詳細に例示説明する。
本実施形態に係る液体噴出ポンプ1’は、作動部材Bの構成が異なる他は、
図1〜
図3を用いて前述した例の液体噴出ポンプ1と同一の構成になっている。
【0025】
すなわち、本実施形態の作動部材Bは、上下端が開口した筒状になるステム7’の下部(本例では下端)に外周側に延びるフランジを介して、上方及び下方に向けて拡径するスカート状のピストン40を一体に設けている。ピストン40は、シリンダ4に摺動可能に嵌合している。また、ステム7’の下端には、コイルスプリング35の上端を嵌合させる段部が形成されている。さらに、ステム7’の内周には、ボール弁41を設けている。押し下げヘッド9は、
図1〜
図3を用いて前述した例の場合と同一の構成になっている。
【0026】
かかる構成によれば、
図1〜
図3を用いて前述した例の場合と同様の効果を得ることができる。なお、容器体2内の液を吐出させるには、押し下げヘッド9を何回か上下動させて初期動作を行った後、押し下げヘッド9を押し下げると、シリンダ4内の加圧液が、ボール弁41を開いてノズル8から噴出する。次いで、押し下げヘッド9の押し下げを解除すると、コイルスプリング35の作用で作動部材Bが上昇し、シリンダ4内が負圧化するためボール弁41が閉じ、容器体2内の液が吸い込み弁12を開いて導入される。
【0027】
なお、前述したところは、本発明の一実施形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0028】
1,1’ 液体噴出ポンプ
2 容器体
3 装着筒
4 シリンダ
5 吸気孔
6 開口
7,7’ ステム
8 ノズル
9 押し下げヘッド
10 リングキャップ
11 パイプ
12 吸い込み弁
13 筒壁
14 案内筒
15 縦リブ
16 嵌合筒
17 ピストン部材
18 ピストンガイド
19 縦筒
20 頂壁
21 垂下壁
22 上筒部
23 貫通孔
24 縮径部
25 下筒部
26 案内筒壁部
27 シール筒
28 ピストン
29 環状突起
30 嵌合凹部
31 頂壁部
32 外筒部
33 突起
34 当接凹部
35 コイルスプリング
36 閉塞筒部材
37 摺動閉塞部
38 基筒部
39 下向き段部
40 ピストン
41 ボール弁
100 液体噴出ポンプ
101 装着筒
102 シリンダ
103 吸気孔
104 固定吸引部
105 開口
106 ステム
107 押し下げヘッド
108 作動部材
109 下向き段部
110 閉塞筒部材
A 固定吸引部
B 作動部材