(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
近年、スマートフォン、タブレット端末等のモバイル電気機器の薄型化、軽量化に伴い、これらに搭載されるリチウムイオン電池やリチウムポリマー電池の外装材としては、旧来の金属缶に代えて、厚さ20〜100μm程度のアルミニウム箔の両面にプラスチックフィルムを貼り合わせたラミネート外装材が用いられて軽量化が図られている。また、その応用として、電気自動車等の電源や、蓄電用途の大型電源、キャパシタ等も、上記構成のラミネート外装材で包装することが検討されている。
【0004】
一般に、外装材に金属缶を使用するリチウムイオン電池では、金属缶の材料として厚さ0.2mm以上のアルミニウム材、鉄材、ステンレス材が使用されており、これらの金属材料は材料強度が高いことから、電極の残留応力による缶の反り変形や、電解液等の分解で発生するガスで生じる内圧上昇による缶の膨れを抑制することができる。
【0005】
一方、外装材として、アルミニウム箔の両面にプラスチックフィルムを貼り合わせたラミネート外装材を使用したリチウムイオン電池やリチウムポリマー電池、特にスマートフォンや自動車用に使用される大型で厚みが薄いリチウムイオン電池やリチウムポリマー電池では、外装材の強度が十分ではないことから、電極の残留応力によるラミネート外装材の反り変形や、電解液等の分解で発生するガスで生じる内圧上昇によるラミネート外装材の膨れを抑制することができなかった。
【0006】
このような外装材の変形や膨れを防止できるものとして、特許文献1には、複数個の電池で構成される組電池本体部と、少なくとも熱可塑性樹脂フィルム及び厚さ15〜120μmの第一軟質アルミニウム箔を構成層として含む第一外装材と、少なくとも熱可塑性樹脂フィルム及び厚さ150〜400μmの第二軟質アルミニウム箔を構成層として含む第二外装材とを備え、前記第一外装材は、前記組電池本体部を収容し得る収容ケースと、該収容ケースの上面開放口の周縁から略水平方向の外方に向けて延ばされた封止用周縁部とを有する立体形状に成形され、前記第二外装材は、平面状であり、前記第一外装材の収容ケース内に前記組電池本体部が収容され、該組電池本体部の上に前記第二外装材が配置され、該第二外装材の周縁部と前記第一外装材の封止用周縁部とが接合されて封止されてなるラミネート組電池が記載されている。この電池では、組電池本体部の上に配置される第二外装材は、厚さ150〜400μmの厚さの大きい第二軟質アルミニウム箔を含んでいるから、電池内部の内圧による外装材の膨れ、変形を防止することができる。
【0007】
また、特許文献2には、複数個の電池で構成される組電池本体部と、少なくとも軟質アルミニウム箔及び熱可塑性樹脂フィルムを構成層として含む第一外装材と、少なくとも硬質金属箔及び熱可塑性樹脂フィルムを構成層として含む第二外装材とを備え、前記第一外装材は、前記組電池本体部を収容し得る収容ケースと、該収容ケースの上面開放口の周縁から略水平方向の外方に向けて延ばされた封止用周縁部とを有する立体形状に成形され、前記第二外装材は、平面状であり、前記第一外装材の収容ケース内に前記組電池本体部が収容され、該組電池本体部の上に前記第二外装材が配置され、該第二外装材の周縁部と前記第一外装材の封止用周縁部とが接合されて封止されてなるラミネート組電池が記載されている。この電池では、組電池本体部の上に配置される第二外装材は、硬質金属箔を含んでいるから、電池内部の内圧による外装材の膨れ、変形を防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、変形を十分に防止するには、第二軟質アルミニウム箔の厚さを大きくする必要があり、そうすると、得られるラミネート電池(外装材で外装された電池)の重量エネルギー密度が低下するという問題があった。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術では、第二外装材が硬質金属箔を含んでいるので、外装材の強度が向上して、外装材の膨れや変形を防止する効果がある一方、スマートフォンや自動車用に使用される大型で厚みが薄いラミネート電池では、電極の残留応力によるラミネート外装材の反り変形を十分に防止することはできなかった。
【0011】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、電気化学デバイス(電池等)が大型で厚みが薄いものであっても、重量エネルギー密度を低下させることなく、デバイス本体部を外装している外装材の反り変形や、内圧上昇による外装材の膨れを十分に防止することができる電気化学デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0013】
[1]外側層としての耐熱性樹脂延伸フィルム層と、内側層としての熱可塑性樹脂未延伸フィルム層と、これら両フィルム層間に配設された金属箔層とを含む第一外装材と、
外側層としての耐熱性樹脂延伸フィルム層と、内側層としての熱可塑性樹脂未延伸フィルム層と、これら両フィルム層間に配設された金属箔層とを含む第二外装材と、
電気化学デバイス本体部と、を備え、
前記第一外装材における外側層側の表面に1ないし複数条のリブが突設され、
前記第二外装材は、前記電気化学デバイス本体部を収容し得る収容ケースと、該収容ケースの上面開放口の周縁から略水平方向の外方に向けて延ばされた封止用周縁部とを有する立体形状に成形され、
前記第二外装材の収容ケース内に前記電気化学デバイス本体部が収容され、該電気化学デバイス本体部の上に前記第一外装材がその内側層側を内方にして配置され、該第一外装材の内側層の周縁部と、前記第二外装材の封止用周縁部の内側層とが接合されて封止されていることを特徴とする電気化学デバイス。
【0014】
[2]前記リブの高さが0.5mm〜5mmである前項1に記載の電気化学デバイス。
【0015】
[3]前記第一外装材において前記リブが複数条設けられている前項1または2に記載の電気化学デバイス。
【0016】
[4]前記リブは、前記外側層、前記内側層および前記金属箔層を含む積層材が、部分的に折り重ね加工されることによって、突設形成されたものであり、
前記リブの内部における前記折り重ね加工により重ね合わされた内側層同士が溶着接合されている前項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【0017】
[5]前記第一外装材の厚さが0.05mm〜0.3mmである前項4に記載の電気化学デバイス。
【0018】
[6]前記第一外装材の内側層の厚さが0.02mm〜0.1mmである前項4または5に記載の電気化学デバイス。
【0019】
[7]前記第一外装材の金属箔層として硬質アルミニウム箔が用いられている前項1〜6のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【発明の効果】
【0020】
[1]の発明では、第一外装材における外側層側の表面に1ないし複数条のリブが突設されているから、電気化学デバイス(電池等)が大型で厚みが薄いものであっても、重量エネルギー密度を低下させることなく、電極の残留応力による外装材の反り変形(電極の反り変形)や、電解液等の分解で発生するガスで生じる内圧上昇による外装材の膨れを十分に防止することができる。
【0021】
[2]の発明では、リブの高さが0.5mm〜5mmに設定されており、高さが0.5mm以上であることで電気化学デバイス(電池等)において外装材の反り変形や膨れを十分に防止できると共に、高さが5mm以下であることで電気化学デバイス(電池等)の全体厚さを抑制できる。
【0022】
[3]の発明では、リブが複数条設けられているから、電気化学デバイス(電池等)において外装材の反り変形や膨れの防止効果をさらに向上させることができる。
【0023】
[4]の発明では、外側層、内側層および金属箔層を含む積層材が、部分的に折り重ね加工されることによってリブが突設形成されたものであり、リブの形成が容易である。また、リブの内部における折り重ね加工により重ね合わされた内側層同士が溶着接合されているから、安定して立ち上がったリブを形成できる。
【0024】
[5]の発明では、外装材の厚さが0.05mm〜0.3mmに設定されており、0.05mm以上であることでリブの厚さを十分に確保できて、電気化学デバイス(電池等)において外装材の反り変形や膨れを十分に防止できると共に、0.3mm以下であることで折り重ね加工によるリブの形成が容易になる。
【0025】
[6]の発明では、内側層の厚さが0.02mm〜0.1mmであるから、外装材の内側層の周縁部同士をヒートシールした際に該ヒートシール部に隙間が残存することを十分に防止できて電解液漏れを十分に防止できるものとなる。
【0026】
[7]の発明では、金属箔層として硬質アルミニウム箔が用いられているから、電気化学デバイス(電池等)において外装材の反り変形や膨れをより十分に抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る電気化学デバイス20の一実施形態を
図3に示す。この電気化学デバイス20は、第一外装材(リブ付き外装材)1と、第二外装材31と、電気化学デバイス本体部10とを備えている。
【0029】
前記第一外装材1は、
図1に示すように、外側層としての耐熱性樹脂延伸フィルム層2と、内側層としての熱可塑性樹脂未延伸フィルム層3と、これら両フィルム層2、3間に配置された金属箔層4とを含む積層体からなり、前記積層体における外側層2側の表面に複数条のリブ(突条部)5が突設された構成が採用されている。前記複数条のリブ5は、互いに離間して配置されている(
図1参照)。なお、前記リブ(突条部)5の形成数は、1個であってもよい。
【0030】
本実施形態では、前記リブ5は、前記外側層2、前記内側層3および前記金属箔層4を含む平面状の積層体が、部分的に折り重ね加工されることによって、突設形成されたものである(
図1参照)。そして、前記リブ5の内部における前記折り重ね加工により重ね合わされた内側層3、3同士が加熱により溶着一体化されて溶着接合部6が形成されており、このような溶着接合部(内側層同士の溶着接合部)6の形成によって前記リブ5の突設状態が解消されない(リブ5が無くならない)ものとなされている。このような平面状の積層体に部分的に折り重ね加工を行うことによって、前記リブ5が形成されているので、生産性に優れている。前記部分的な折り重ね加工は、例えば、人の手によって部分的に折り重ね部を形成せしめた状態で、該折り重ね部分を、テスター産業株式会社製の装置(品番:TP−701−B)を用いてヒートシールして溶着一体化するという作業を順次進めていくことによって、行うことができるが、これは一例を示したものに過ぎず、特にこのような手法、装置に限定されるものではない。
【0031】
なお、本発明では、前記リブ5の形成手法は、上記の部分的な折り重ね加工に限定されるものではなく、他の手法が採用されてもよい。
【0032】
前記第二外装材31は、外側層としての耐熱性樹脂延伸フィルム層2と、内側層としての熱可塑性樹脂未延伸フィルム層3と、これら両フィルム層間に配設された金属箔層4とを含む構成である(
図2参照)。
【0033】
前記第二外装材41は、冷間プレス成形等のプレス成形等により、前記電気化学デバイス本体部10を収容し得る収容凹部42aを有する収容ケース42と、該収容ケース42の上面側の開放口の周縁から略水平方向の外方に向けて延ばされた封止用周縁部43とを備えた立体成形体41Aに形成されている(
図2、4参照)。
【0034】
前記収容ケース42は、平面視略矩形状の底面壁42Xの四辺のそれぞれから側面壁42Yが立設されてなり、上面が開口されている。前記立体成形体41Aの収容ケース42の内面を構成している(収容ケース42の内部空間に露出している)のが熱可塑性樹脂未延伸フィルム層3であり、前記収容ケース42の外面を構成している(外部に露出している)のが耐熱性樹脂延伸フィルム層2である(
図2参照)。
【0035】
前記電気化学デバイス本体部10には、
図4に示すように、正極タブ31、正極用タブフィルム32、負極タブ33、負極用タブフィルム34が取り付けられている。
【0036】
しかして、
図3、4に示すように、前記第二外装材41からなる立体成形体41Aの収容ケース42内に、略直方体形状の電気化学デバイス本体部10が収容され、該電気化学デバイス本体部10の上に前記第一外装材(リブ付き外装材)1がその内側層3側を内方(下側)にして配置され、該第一外装材1の内側層3の周縁部と、前記立体成形体41A(第二外装材41)の封止用周縁部43の内側層3とがヒートシールによりシール接合されて封止されることによって、本発明の電気化学デバイス20が構成されている。
【0037】
図3において、13は、前記第一外装材1の周縁部と、前記立体成形体41Aの封止用周縁部43とで形成されたヒートシール部である。
図5は、前記ヒートシール部13でのシール接合状態を示す断面図である。
図5に示すように、前記ヒートシール部13において、第一外装材1と第二外装材41の間に隙間は残存しておらず、即ちヒートシール部13での内側層3同士の溶着接合部14に隙間は存在しておらず、従って電解液等の内容物の液漏れを十分に防止することができる。
【0038】
上記電気化学デバイス20では、蓋体を構成する外装材として、上記リブ付き外装材1を用いているから、電気化学デバイス(電池等)20において、電極31、33の残留応力による第一外装材1、第二外装材41の反り変形(電極31、33の反り変形)や、電解液等の分解で発生するガスで生じる内圧上昇による第一外装材1、第二外装材41の膨れを十分に防止することができる。
【0039】
本発明において、前記リブ5の高さHは、0.5mm〜5mmに設定されるのが好ましい。リブ5の高さが0.5mm以上であることで、電気化学デバイス本体部10を外装した外装材1、41の反り変形(電極の残留応力による電極の反り変形)や、外装材1、41の膨れを十分に防止できると共に、高さが5mm以下であることで電気化学デバイス(電池等)20の全体厚さを抑制できる。中でも、前記リブ5の高さHは、1mm〜2mmに設定されるのが特に好ましい。
【0040】
前記リブ5は、前記リブ付き外装材(第一外装材)1において複数条(複数個)設けられているのが好ましい。この場合には、電気化学デバイス20において、外装材1、41の反り変形(電極の残留応力による電極の反り変形)や外装材1、41の膨れの防止効果をさらに向上させることができる。
【0041】
中でも、前記リブ5は、前記リブ付き外装材(第一外装材)1において2個〜20個(2条〜20条)設けられているのがより好ましい。20個以下とすることで、折り重ね加工の煩雑さを抑制できるし、第一外装材1の内側層3の周縁部と、第二外装材41(立体成形体41A)の封止用周縁部43の内側層3とを重ね合わせてヒートシールした際に均一なヒートシールを実現することができて、ヒートシール部13における内側層3同士の溶着接合部14に隙間ができることをより十分に防止できて(
図5参照)、電解液等の内容液の漏れをより十分に防止できるという効果が得られる。
【0042】
前記リブ付き外装材(第一外装材)1の厚さは、0.05mm〜0.3mmに設定されるのが好ましい。0.05mm以上であることでリブ5の厚さを十分に確保できて外装材の反り変形や膨れを十分に防止できると共に、0.3mm以下であることで折り重ね加工によるリブ5の形成が容易になる。
【0043】
前記第一外装材(リブ付き外装材)1および第二外装材41(立体成形体41A)において、その積層構成は次のような構成であるのが好ましい。即ち、金属箔層4の上面に第1接着剤層(図示しない)を介して耐熱性樹脂延伸フィルム層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の下面に第2接着剤層(図示しない)を介して熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(内側層)3が積層一体化された積層構成が採用されるのが好ましい(
図1、2参照)。
【0044】
前記耐熱性樹脂延伸フィルム層(外側層)2としては、特に限定されるものではないが、例えば、延伸ナイロンフィルム等の延伸ポリアミドフィルム、延伸ポリエステルフィルム等が挙げられる。中でも、前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えば延伸ポリエステルフィルム/延伸ポリアミドフィルムからなる複層(延伸PETフィルム/延伸ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0045】
前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2の厚さは、9μm〜50μmであるのが好ましい。延伸ポリエステルフィルムを用いる場合には厚さは9μm〜50μmであるのが好ましく、延伸ナイロンフィルムを用いる場合には厚さは15μm〜50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで外装材1、41として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで電気化学デバイス(電池等)の重量エネルギー密度の向上とコスト低減を実現できる。
【0046】
前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(内側層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、外装材1、41にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0047】
前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層3としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムにより構成されるのが好ましい。
【0048】
前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(内側層)3の厚さは、0.02mm〜0.1mmに設定されるのが好ましい。厚さが0.02mm以上であることで、第一外装材1の内側層3の周縁部と、第二外装材41(立体成形体41A)の封止用周縁部43の内側層3とを重ね合わせてヒートシールした際に該ヒートシール部13における内側層3同士の溶着接合部14に隙間が残存することを十分に防止できて内容液(電解液等)の漏れを十分に防止できる。また、厚さが0.1mm以下であることで、ヒートシール時の断熱による熱不足により溶着が不十分になるのを十分に防止できる。なお、前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層3は、単層であってもよいし、複層であってもよい。
【0049】
前記金属箔層4は、外装材1、41に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられ、アルミニウム箔が一般的に用いられる。中でも、硬質アルミニウム箔を用いるのが好ましい。前記金属箔層4の厚さは、20μm〜100μmであるのが好ましい。20μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、100μm以下であることで電気化学デバイス(電池等)の重量エネルギー密度の向上とコスト低減を実現できる。
【0050】
前記金属箔層4は、少なくとも内側の面(内側層3側の面)に、化成処理が施されているのが好ましい。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解液等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば次のような処理をすることによって金属箔に化成処理を施す。即ち、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸、クロム酸及びフッ化物の金属塩の混合物からなる水溶液
2)リン酸、クロム酸、フッ化物金属塩及び非金属塩の混合物からなる水溶液
3)アクリル系樹脂又は/及びフェノール系樹脂と、リン酸と、クロム酸と、フッ化物金属塩との混合物からなる水溶液
のいずれかを塗工した後乾燥することにより化成処理を施す。
【0051】
前記第1接着剤層としては、特に限定されるものではないが、例えば、2液反応型接着剤により形成された接着剤層等が挙げられる。前記2液反応型接着剤としては、例えば、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール及びポリエーテル系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上からなる第1液と、イソシアネートからなる第2液(硬化剤)とで構成される2液反応型接着剤などが挙げられる。即ち、反応後の接着剤種で記載すると、前記第1接着剤層としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン接着剤層、ポリエステルポリウレタン接着剤層、ポリエーテルポリウレタン接着剤層等が挙げられる。前記第1接着剤層は、例えば、前記2液反応型接着剤等の接着剤が、前記金属箔層4の上面に又は/及び前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2の下面に、グラビアコート法等の手法により塗布されることによって形成される。
【0052】
前記第2接着剤層としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、エラストマー系接着剤、フッ素系接着剤等により形成された接着剤層が挙げられる。中でも、アクリル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤を用いるのが好ましく、この場合には、外装材1、41の耐電解液性及び水蒸気バリア性を向上させることができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、第1接着剤層と第2接着剤層を設けた構成を採用しているが、これら両層は、いずれも必須の構成層ではなく、これらを設けない構成を採用することもできる。
【0054】
前記電気化学デバイス本体部10としては、特に限定されるものではないが、例えば、電池本体部、キャパシタ本体部、コンデンサ本体部等が挙げられる。前記電気化学デバイス本体部10としては、通常は、その厚さTが0.5mm〜10mmのものが用いられるが(
図4参照)、特にこの厚さに限定されるものではない。
【0055】
前記ヒートシール部13の幅は、0.5mm以上に設定するのが好ましい。0.5mm以上とすることで封止を確実に行うことができる。中でも、前記ヒートシール部13の幅は、3mm〜15mmに設定するのが好ましい。
【実施例】
【0056】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
厚さ40μmのJIS A8079で規定される軟質アルミニウム箔4の一方の面に、ポリエステル−ウレタン系接着剤(2液硬化型)を介して厚さ25μmの延伸ナイロンフィルム(外側層)2を貼合し、前記軟質アルミニウム箔4の他方の面に、ポリオレフィン系接着剤(2液硬化型)を介して厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(内側層)3を貼合した後、40℃恒温槽にて3日間の養生を行うことによって得られた積層体を2枚準備した。
【0058】
次に、一方の積層体をエンボス成形することによって、縦54mm、横33mm、深さ4mmの立体形状(上面開放の略直方体形状)に成形された収容ケース42と、該収容ケースの上面開放口の周縁から略水平方向の外方に向けて延ばされた幅5mmの封止用周縁部43とを有する立体成形体41Aを得た(
図2、4参照)。
【0059】
また、他方の積層体を縦80mm、横53mmの大きさに打ち抜いた後、この積層体に対して縦方向において10mm間隔で部分的に折り重ね加工を行うことによって、横方向に沿って延ばされた高さが1mmの突部(リブ予定部)を外側層側に3個形成せしめ、次いで前記突部の両側面を一対の200℃の熱板で3秒間挟み込むことによって、前記突部の内部における前記折り重ね加工により重ね合わされた内側層3、3同士を溶着接合させて、外側層2側の表面に3条(3個)のリブ5(高さHが1mm)が互いに縦方向に間隔をあけて横方向に平行状に設けられたリブ付き外装材1を得た(参考図:
図1、3)(なお、
図1、3ではリブ形成数が6個であるものを示しているが、この実施例1ではリブ形成数が3個である)。
【0060】
また、厚さ30μmの軟質アルミニウム箔、厚さ30μmのポリプロピレンフィルム、厚さ30μmの軟質の銅箔を層状に重ね合わせて縦52mm×横31mmの大きさに打ち抜いたものを40枚積層することによって、略直方体形状の電池本体部10の模擬品を作成した。
【0061】
図3、4に示すように、前記立体成形体41Aの収容凹部42aに、前記電池本体部(模擬品)10を入れた後、電池本体部10の上面に電解液(エチレンカーボネート:ジメチレンカーボネート:ジメチルカーボネートが、1:1:1の体積比率で混合された混合カーボネートにLiPF
6を添加して得られたLiPF
6濃度が1モル/Lの電解液)に、ガス発生を促すための純水を濃度5000ppmで添加した液体を5mL滴下し、次いで、電池本体部10の上に前記リブ付き外装材1をその内側層3側を内方(下方)にして載置し(即ちリブ形成側を外方(上方)に配置した態様で載置し)、しかる後、0.086MPaの減圧状態で、リブ付き外装材1の周縁部と、立体成形体41Aの封止用周縁部43とを、200℃に加熱した金属製熱板にて2秒間ヒートシールして封止することによって、
図3に示す構成の電池(模擬品)を得た。
【0062】
<実施例2>
隣り合うリブの間隔を5mmとし、リブの形成数を10条(10個)とした以外は、実施例1と同様にして電池(模擬品)を得た。リブの高さHは実施例1と同様に1mmである。
【0063】
<実施例3>
リブ付き外装材1を構成する積層体として、厚さ30μmのJIS A3003で規定される硬質アルミニウム箔4の一方の面に、ポリエステル−ウレタン系接着剤(2液硬化型)を介して厚さ12μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(外側層)2を貼合し、前記硬質アルミニウム箔4の他方の面に、ポリオレフィン系接着剤(2液硬化型)を介して厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(内側層)3を貼合した積層体を使用した以外は、実施例1と同様にして、
図3に示す構成の電池(模擬品)を得た。
【0064】
<比較例1>
リブ付き外装材1に代えて、リブなし外装材(実施例1においてリブを形成する前の平面状の積層体)を用いた以外は、実施例1と同様にして電池(模擬品)を得た。従って、この比較例1の電気化学デバイスでは、外装体にリブは全く設けられていない。
【0065】
上記のようにして得られた各電池(模擬品)について下記試験法に基づいて変形防止性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
<変形防止性能試験法>
各実施例、比較例ごとにそれぞれ9個のサンプルを準備し、予めデジタルノギスで各サンプル(電池)の厚さTを測定しておいて、これを「試験前の厚さ」とし、次いで40℃の恒温槽、60℃の恒温槽、80℃の恒温槽の中に、それぞれ3個づつ配置し、この状態で24時間経過させた後、恒温槽からサンプルを取り出し、各サンプル毎に、デジタルノギスでサンプル(電池)の厚さ(測定位置で厚さに差異があるときは厚さの最大値)Tを測定して、これを「試験後の厚さ」とし、
変形率(%)={(試験後の厚さ)−(試験前の厚さ)}÷(試験前の厚さ)×100
上記計算式により、変形率(%)を求めた。
【0068】
なお、温度のより高い恒温槽に入れたサンプル(電池)の方が内部でのガスの発生量はより多くなっている。
【0069】
表1から明らかなように、同じ温度条件での対比結果から、蓋材としてリブ付き外装材を使用した本発明の実施例1〜3の電池では、蓋材にリブなし外装材を使用して構成された比較例1の電池と比較して、変形率は十分に小さく抑制されており、外装材の反り変形や膨れを十分に防止できることがわかる。
【0070】
中でも、リブ付き外装材の金属箔層として硬質アルミニウム箔を用いた構成の実施例3の電池では、60℃、80℃の高い温度条件でも(内部でのガスの発生量が多くなっても)、比較例1の電池と比較して、変形率は格段に小さく抑制されており、実施例1、2よりも外装材の反り変形や膨れをより一層十分に抑制できることがわかる。