特許第6180893号(P6180893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180893
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】メッキ装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/31 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   C23C18/31 E
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-235328(P2013-235328)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-94019(P2015-94019A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】395010794
【氏名又は名称】名古屋メッキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】吉永 聡
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 延之
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04143618(US,A)
【文献】 実開平01−154666(JP,U)
【文献】 特開昭48−085435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のメッキ槽と、
前記第1のメッキ槽との間で前記メッキ液を循環させる第1の供給タンクと、
前記第1のメッキ槽とは異なる第2のメッキ槽と、
前記第2のメッキ槽との間で前記メッキ液を循環させる第2の供給タンクと、
前記第1の供給タンク及び前記第2の供給タンクとそれぞれ接続し、前記メッキ液を回収可能な予備タンクと、
前記第1のメッキ槽と前記第2のメッキ槽との間を移動可能に構成されて、前記第1のメッキ槽及び前記第2のメッキ槽のうち選択した一方のメッキ槽にメッキ対象物を浸漬させるガイド機構と、
前記第1の供給タンク、前記第2の供給タンク及び前記ガイド機構を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、一方のメッキ槽にメッキ液を貯留して他方のメッキ槽を空とする状態を、前記第1のメッキ槽と前記第2のメッキ槽とで交互に切り替えるとともに、メッキ液を貯留するメッキ槽の切り替えに対応して前記ガイド機構を切り替えることを特徴とするメッキ装置。
【請求項2】
前記制御部は、メッキ液が貯留されたメッキ槽についての当該メッキ液の状態を監視し、当該メッキ液の状態が所定の判定レベルに到達したことを条件に、前記第1のメッキ槽と前記第2のメッキ槽とで状態の切り替えを行うことを特徴とする請求項1に記載されたメッキ装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1のメッキ槽を空状態にする場合には、前記第1の供給タンクを経由して前記第1のメッキ槽から前記予備タンクへとメッキ液を回収し、当該第1のメッキ槽にメッキ液を貯留する場合には、前記第1の供給タンクを経由して前記予備タンクから前記第1のメッキ槽へとメッキ液を供給し、
前記第2のメッキ槽を空状態にする場合には、前記第2の供給タンクを経由して前記第2のメッキ槽から前記予備タンクへとメッキ液を回収し、当該第2のメッキ槽にメッキ液を貯留する場合には、前記第2の供給タンクを経由して前記予備タンクから前記第2のメッキ槽へとメッキ液を供給することを特徴とする請求項1又は2に記載されたメッキ装置。
【請求項4】
前記第1の供給タンク及び前記第2の供給タンクにそれぞれ接続し、洗浄液を貯留する洗浄液タンクをさらに有し、
前記制御部は、前記第1のメッキ槽及び前記第2のメッキ槽のうち貯留状態から空状態へと切り替えが行われたメッキ槽について、当該メッキ槽に接続する供給タンクに対し前記洗浄液タンクから洗浄液を供給し、当該供給タンクと前記メッキ槽との間で洗浄液を循環させ、その後、当該洗浄液を前記洗浄液タンクへと回収することを特徴とする請求項1又は2に記載されたメッキ装置。
【請求項5】
前記第1の供給タンク及び前記第2の供給タンクにそれぞれ接続し、水を貯留する水洗タンクをさらに有し、
前記制御部は、前記洗浄液の回収が終了したメッキ槽について、当該メッキ槽に接続する供給タンクに対し前記水洗タンクから水を供給し、当該供給タンクと前記メッキ槽との間で水を循環させ、その後、当該水を前記水洗タンクへと回収することを特徴とする請求項4に記載されたメッキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高強度化、軽量化及び耐屈曲化等の目的で、抗張力繊維に導電性を担保するためのメッキ処理を施したメッキ繊維が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
繊維材料の表面に金属皮膜を形成する技術としては、例えば無電解メッキ処理が知られている。この無電解メッキでは、メッキの進行に伴う還元剤の酸化により副生成物が蓄積することがあり、これにより、メッキ液の組成バランスが崩れてしまうことがある(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−108198号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】藤波知之、「無電解銅めっきの現状と将来」、表面技術、Vol.42,No.11,1991、p.12−20
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メッキ繊維を製造する際には、1本の繊維又は複数本の繊維束を長手方向に移動させながらメッキ液に浸漬させることで行うが、メッキ繊維が長尺化することで、同一のメッキ槽内においてメッキ処理が長時間に亘って施されることとなる。この場合、メッキ槽内にメッキ金属が析出し易く、さらには、析出した金属が成長することでメッキ液の組成バランスが崩れてメッキ液の分解に繋がるという問題がある。このような状態は、メッキ金属等の原材料をロスさせるばかりで、加工性の低下を招来するものであるから好ましいものとは言い難い。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属の異常析出を抑制してメッキ対象物の長尺化に対応したメッキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、本発明は、第1のメッキ槽と、第1のメッキ槽との間でメッキ液を循環させる第1の供給タンクと、第1のメッキ槽とは異なる第2のメッキ槽と、第2のメッキ槽との間でメッキ液を循環させる第2の供給タンクと、第1の供給タンク及び第2の供給タンクとそれぞれ接続し、メッキ液を回収可能な予備タンクと、第1のメッキ槽と第2のメッキ槽との間を移動可能に構成されて、第1のメッキ槽及び第2のメッキ槽のうち選択した一方のメッキ槽にメッキ対象物を浸漬させるガイド機構と、第1の供給タンク、第2の供給タンク及びガイド機構を制御する制御部とを有するメッキ装置を提供する。このメッキ装置において、制御部は、一方のメッキ槽にメッキ液を貯留して他方のメッキ槽を空とする状態を、第1のメッキ槽と第2のメッキ槽とで交互に切り替えるとともに、メッキ液を貯留するメッキ槽の切り替えに対応してガイド機構を切り替えることとしている。
【0009】
また、本発明において、制御部は、メッキ液が貯留されたメッキ槽についての当該メッキ液の状態を監視し、当該メッキ液の状態が所定の判定レベルに到達したことを条件に、第1のメッキ槽と第2のメッキ槽とで状態の切り替えを行うことが好ましい。
【0010】
制御部は、第1のメッキ槽を空状態にする場合には、第1の供給タンクを経由して第1のメッキ槽から予備タンクへとメッキ液を回収し、当該第1のメッキ槽にメッキ液を貯留する場合には、第1の供給タンクを経由して予備タンクから第1のメッキ槽へとメッキ液を供給することが好ましく、一方、第2のメッキ槽を空状態にする場合には、第2の供給タンクを経由して第2のメッキ槽から予備タンクへとメッキ液を回収し、当該第2のメッキ槽にメッキ液を貯留する場合には、第2の供給タンクを経由して予備タンクから第2のメッキ槽へとメッキ液を供給することが望ましい。
【0011】
また、本発明は、第1の供給タンク及び第2の供給タンクにそれぞれ接続し、洗浄液を貯留する洗浄液タンクをさらに有していてもよい。この場合、制御部は、第1のメッキ槽及び第2のメッキ槽のうち貯留状態から空状態へと切り替えが行われたメッキ槽について、当該メッキ槽に接続する供給タンクに対し洗浄液タンクから洗浄液を供給し、当該供給タンクとメッキ槽との間で洗浄液を循環させ、その後、当該洗浄液を洗浄液タンクへと回収することが好ましい。
【0012】
また、本発明は、第1の供給タンク及び第2の供給タンクにそれぞれ接続し、水を貯留する水洗タンクをさらに有していてもよい。この場合、制御部は、洗浄液の回収が終了したメッキ槽について、当該メッキ槽に接続する供給タンクに対し水洗タンクから水を供給し、当該供給タンクとメッキ槽との間で水を循環させ、その後、当該水を水洗タンクへと回収することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、メッキ処理に供されるメッキ槽を第1のメッキ槽と第2のメッキ槽と切り替えることで、空いたメッキ槽を洗浄等のメンテナンスに供することができる。また、これを交互に繰り返すことで、メッキ金属の異常析出を未然に抑制でき、メッキ液の組成バランスが崩れた状態へと至ることを抑制することができる。これにより、メッキ金属等の原材料のロスや加工性の低下を抑制することができ、メッキ対象物の長尺化に適切に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態にかかるメッキ装置を模式的に示す説明図
図2】メッキ装置による動作手順を説明する説明図
図3】メッキ装置による動作手順を説明する説明図
図4】メッキ装置による動作手順を説明する説明図
図5】メッキ装置による動作手順を説明する説明図
図6】メッキ装置による動作手順を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施形態にかかるメッキ装置1を模式的に示す説明図である。このメッキ装置1は、メッキ対象物にメッキ処理を施す装置であり、無電解メッキによるものである。メッキ対象物は、例えば抗張力繊維であり、パラ系アラミド繊維、PBO(poly(p-phenylenebenzobisoxazole))繊維、ポリアリレート繊維、及び超高分子量ポリエチレン繊維などが該当する。
【0016】
メッキ装置1は、第1のメッキ槽2と、第1の供給タンク3と、第2のメッキ槽4と、第2の供給タンク5と、ガイド機構6と、予備タンク7と、洗浄液タンク8と、水洗タンク9と、制御部10とで構成されている。
【0017】
第1のメッキ槽2はメッキ液を貯留する槽であり、この貯留されたメッキ液に抗張力繊維Fが浸漬されることにより、当該抗張力繊維Fに対するメッキ処理を行うことができる。第1のメッキ槽2は、抗張力繊維Fの長手方向に沿って所定の長さを有しており、この抗張力繊維Fをその長手方向に移動させることにより、長尺の抗張力繊維Fについてその全域にメッキ処理を施すことができる。
【0018】
第1の供給タンク3は、第1のメッキ槽2に接続されており、第1のメッキ槽2にメッキ液を供給するものである。第1の供給タンク3は、例えば、所定容量のメッキ液を貯える貯留タンク3aと、図示しない流路(配管など)を介して当該貯留タンク3aから第1のメッキ槽2にメッキ液を供給する供給ポンプ3bとで構成されている。また、第1の供給タンク3は、第1のメッキ槽2から貯留タンク3aへとメッキ液を帰還させる流路(図示せず)を備え、第1のメッキ槽2と貯留タンク3aとの間でメッキ液を循環させることができる。この際、上述した第1のメッキ槽2では、オーバーフロー方式などの手法により、貯留される液面が一定レベルに維持されるようになっている。
【0019】
第2のメッキ槽4は、メッキ液を貯留する槽であって、第1のメッキ槽2とは独立して設けられている。第2のメッキ槽4は、第1のメッキ槽2と同様、貯留されたメッキ液に抗張力繊維Fが浸漬されることにより、当該抗張力繊維Fにメッキ処理を行うことができる。第2のメッキ槽4は、抗張力繊維Fの長手方向に沿って所定の長さを有しており、この抗張力繊維Fをその長手方向に移動させることにより、長尺の抗張力繊維Fについてその全域にメッキ処理を施すことができる。
【0020】
第2の供給タンク5は、第2のメッキ槽4に接続されており、第2のメッキ槽4にメッキ液を供給するものである。第2の供給タンク5は、例えば、所定容量のメッキ液を蓄える貯留タンク5aと、図示しない流路を介して当該貯留タンク5aから第2のメッキ槽4にメッキ液を供給する供給ポンプ5bとで構成されている。また、第2の供給タンク5は、第2のメッキ槽4から貯留タンク5aへとメッキ液を帰還させる流路(図示せず)を備え、第2のメッキ槽4と貯留タンク5aとの間でメッキ液を循環させることができる。この際、上述した第2のメッキ槽4では、オーバーフロー方式などの手法により、貯留される液面が一定レベルに維持されるようになっている。
【0021】
第1のメッキ槽2及び第2のメッキ槽4は、一方のメッキ槽2,4にメッキ液を貯留して他方のメッキ槽2,4を空とする状態に設定される。例えば、図1に示すように、第1のメッキ槽2にメッキ液を貯留しているケースでは、第2のメッキ槽4が空にされているといった如くであり、また、この逆のケースも然りである。
【0022】
ガイド機構6は、第1のメッキ槽2又は第2のメッキ槽4へと抗張力繊維Fを浸漬させるものである。このガイド機構6は、第1のメッキ槽2と第2のメッキ槽4との間を移動可能に構成されており、第1のメッキ槽2及び第2のメッキ槽4のうち選択した一方のメッキ槽2,4に抗張力繊維Fを浸漬させることができる。例えば、ガイド機構6は、抗張力繊維Fを保持する繊維ガイド6aと、この繊維ガイド6aを上下方向及び水平方向へと移動させるエアシリンダ(図示せず)などの動力機構とで構成されている。また、このガイド機構6は、抗張力繊維Fの長手方向にそって、当該抗張力繊維Fを一定のスピードで送り出すための機構をさらに備えている(例えばリール・トゥ・リール方式)。ガイド機構6が1度に取り扱うことができる抗張力繊維Fの数は、一つに限らず、複数であってもよい。
【0023】
予備タンク7は、所定容量を備えるタンクであり、第1の供給タンク3及び第2の供給タンク5のそれぞれに接続されている。この予備タンク7は、後述する様に、第1のメッキ槽2及び第1の供給タンク3に貯留されているメッキ液、又は、第2のメッキ槽4及び第2の供給タンク5に貯留されているメッキ液を回収可能な程度の容量を備えている。
【0024】
洗浄液タンク8は、メッキ槽2,4及び供給タンク3,5を洗浄するための洗浄液を貯留している。この洗浄液タンク8は、第1の供給タンク3及び第2の供給タンク5にそれぞれ接続されており、タンク内に貯留された洗浄液を供給タンク3,5にそれぞれ供給することができる。洗浄液としては、メッキ槽2,4に異常に析出した金属(銅)等を溶解することが可能なものを利用することができ、例えば硝酸などがこれに該当する。
【0025】
水洗タンク9は、メッキ槽2,4及び供給タンク3,5を水洗いするための水を貯留している。この水洗タンク9は、第1の供給タンク3及び第2の供給タンク5にそれぞれ接続されており、タンク内に貯留された水を供給タンク3,5にそれぞれ供給することができる。
【0026】
制御部10は、メッキ装置1の制御を司るものであり、メッキ装置1を構成する各要素(第1の供給タンク3、第2の供給タンク5及びガイド機構6など)を制御するものである。本実施形態との関係において、制御部10は、メッキ処理に供するメッキ槽2,4を第1のメッキ槽2と第2のメッキ槽4とで交互に切り替えるとともに、この切り替えに対応してガイド機構6を切り替えることで、抗張力繊維Fを浸漬するメッキ槽2,4を交互に切り替えることとしている。
【0027】
以下、図2図6を参照し、本実施形態にかかるメッキ装置1による具体的な動作手順について説明する。以下に示す手順は、制御部10による制御処理を通じて実現される。なお、説明の前提として、現在、第1のメッキ槽2にメッキ液が貯留され、第1のメッキ槽2にてメッキ処理が行われていることとする。この場合、制御部10は、第1の供給タンク3を制御して、第1の供給タンク3内のメッキ液を第1のメッキ槽2へと供給しており、第1のメッキ槽2におけるメッキ液は一定レベルに維持されたまま、第1の供給タンク3と第1のメッキ槽2との間でメッキ液の循環が行われる。一方、第2のメッキ槽4は空にされており、これに貯留されるメッキ液は第2の供給タンク5によって保持されている。
【0028】
まず、制御部10は、第1のメッキ槽2におけるメッキ液の状態を監視し、その状態が所定の判定レベルに到達したか否かを判断する。この判断は、メッキ金属の異常析出や、メッキ液の組成バランス等を考慮して第1のメッキ槽2(メッキ処理に供されるメッキ槽)のメンテナンスを行うか否かを判断するためのものであり、実験やシミュレーションを通じてその判定レベルが予め設定されている。例えば、メッキ液の状態として比重を捉えた場合には、例えば「1.08」に到達した場合に、第1のメッキ槽2のメンテナンスを判断するといった如くである。
【0029】
メッキ液の状態が判定レベルに到達しておらず、第1のメッキ槽2のメンテナンスを行う必要がない場合には、現在の第1のメッキ槽2にてメッキ処理を継続し、上記の監視・判断を再度行うこととなる。
【0030】
一方、メッキ液の状態が判定レベルに到達しており、第1のメッキ槽2のメンテナンスを行う必要がある場合には、制御部10は、第1の供給タンク3から予備タンク7へとメッキ液を供給することで、第1のメッキ槽2及び当該第1の供給タンク3内のメッキ液を予備タンク7に回収する(図2参照)。また、制御部10は、第2の供給タンク5から第2のメッキ槽4へとメッキ液を供給する。第2のメッキ槽4にメッキ液が供給され、第2のメッキ槽4においてメッキ液が一定レベルまで上昇すると、その後は、第2の供給タンク5と第2のメッキ槽4との間でメッキ液の循環が開始される(図2参照)。
【0031】
図3に示すように、制御部10は、繊維ガイド6aを上方に移動させ抗張力繊維Fを第1のメッキ槽2から引き上げる。つぎに、制御部10は、繊維ガイド6aを左右方向に移動させ第1のメッキ槽2の上方から第2のメッキ槽4の上方まで移動させる。そして、制御部10は、繊維ガイド6aを下方方向に移動させ、抗張力繊維Fを第2のメッキ槽4に浸漬させる。これにより、抗張力繊維Fについては、第1のメッキ槽2に引き続き、第2のメッキ槽4にてメッキ処理が継続される。
【0032】
繊維ガイド6aの移動が終了すると、制御部10は、洗浄液タンク8から第1の供給タンク3へと洗浄液を供給する(図4(a)参照)。そして、制御部10は、第1の供給タンク3内の洗浄液を第1のメッキ槽2へと供給する。これにより、第1の供給タンク3と第1のメッキ槽2との間で洗浄液を循環させ、これらの内部を洗浄液にて洗浄する(図4(b)参照)。この洗浄処理が一定の期間継続されると、制御部10は、第1の供給タンク3から洗浄液タンク8へと洗浄液を供給し、第1のメッキ槽2及び当該第1の供給タンク3内の洗浄液を洗浄液タンク8に回収する(図4(c)参照)。
【0033】
洗浄液が回収されると、制御部10は、水洗タンク9から第1の供給タンク3へと水を供給する(図5(a)参照)。そして、制御部10は、第1の供給タンク3内の水を第1のメッキ槽2へと供給する。これにより、第1の供給タンク3と第1のメッキ槽2との間で水を循環させ、これらの内部を水洗いする(図5(b)参照)。この洗浄処理が一定の期間継続されると、制御部10は、第1の供給タンク3から水洗タンク9へと水を供給し、第1のメッキ槽2及び当該第1の供給タンク3内の水を水洗タンク9へと回収する(図5(c)参照)。
【0034】
つぎに、図6に示すように、予備タンク7に回収されていたメッキ液を第1の供給タンク3に戻し、メッキ液の組成を調整する。そして、制御部10は、第2のメッキ槽4におけるメッキ液の状態を監視し、その状態が所定の判定レベルに到達した場合には、第2のメッキ槽4について上述した処理を同様に実行することとしている。
【0035】
このように本実施形態において、メッキ装置は、第1のメッキ槽2と、第1のメッキ槽2との間でメッキ液を循環させる第1の供給タンク3と、第2のメッキ槽4と、第2のメッキ槽4との間でメッキ液を循環させる第2の供給タンク5と、メッキ液を回収可能な予備タンク7と、第1のメッキ槽2と第2のメッキ槽4との間を移動可能に構成されて第1のメッキ槽2及び第2のメッキ槽4のうち選択した一方のメッキ槽にメッキ対象物を浸漬させるガイド機構6と、制御部10とを有している。ここで、制御部10は、一方のメッキ槽にメッキ液を貯留して他方のメッキ槽を空とする状態を第1のメッキ槽2と第2のメッキ槽4とで交互に切り替えるとともに、メッキ液を貯留するメッキ槽2,4の切り替えに対応してガイド機構6を切り替えることとしている。
【0036】
かかる構成によれば、メッキ処理に供されるメッキ槽を第1のメッキ槽2と第2のメッキ槽4と切り替えることで、一方のメッキ槽2,4でメッキ処理を継続しつつ、空となったメッキ槽2,4について洗浄等のメンテナンスを実行することができる。また、これを交互に繰り返すことで、メッキ金属の異常析出を未然に抑制することができ、メッキ液の組成バランスが崩れた状態へと至ることを抑制することができる。これにより、メッキ金属等の原材料のロスや加工性の低下を抑制することができ、メッキ対象物の長尺化に適切に対応することができる。
【0037】
また、本実施形態において、制御部10は、メッキ液が貯留されたメッキ槽2,4についての当該メッキ液の状態を監視し、当該メッキ液の状態が所定の判定レベルに到達したことを条件に、第1のメッキ槽2と第2のメッキ槽4とで状態の切り替えを行うこととしている。
【0038】
かかる構成によれば、メッキ槽の切り替えを適切なタイミングで行うことができるので、金属の異常析出やメッキ液の組成バランスが崩れた状態へと至るといったことを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態において、制御部10は、第1のメッキ槽2を空状態にする場合には、第1の供給タンク3を経由して第1のメッキ槽2から予備タンク7へとメッキ液を回収し、当該第1のメッキ槽2にメッキ液を貯留する場合には、第1の供給タンク3を経由して予備タンク7から第1のメッキ槽2へとメッキ液を供給する。また、制御部10は、第2のメッキ槽4を空状態にする場合には、第2の供給タンク5を経由して第2のメッキ槽4から予備タンク7へとメッキ液を回収し、当該第2のメッキ槽4にメッキ液を貯留する場合には、第2の供給タンク5を経由して予備タンク7から第2のメッキ槽4へとメッキ液を供給する。
【0040】
かかる構成によれば、空状態にするメッキ槽2,4から回収するメッキ液を予備タンク7にて適切に貯留することができる。また、各メッキ槽2,4に対して予備タンク7を共用することができるので、装置全体の大型化や複雑化を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態において、制御部10は、第1のメッキ槽2及び第2のメッキ槽4のうち貯留状態から空状態へと切り替えが行われたメッキ槽2,4について、当該メッキ槽2,4に接続する供給タンク3,5に対し洗浄液タンク8から洗浄液を供給し、当該供給タンク3,5とメッキ槽2,4との間で洗浄液を循環させ、その後、当該洗浄液を洗浄液タンク8へと回収する。
【0042】
かかる構成によれば、空状態のメッキ槽2,4へと洗浄液を供給することができ、析出したメッキ金属等を溶解することができる。これにより、その後にこのメッキ槽2,4が使用される場合であってもメッキ液の組成を悪化させる要因を排除することができる。
【0043】
また、本実施形態において、制御部10は、洗浄液の回収が終了したメッキ槽2,4について、当該メッキ槽2,4に接続する供給タンク3,5に対し水洗タンク9から水を供給し、当該供給タンク3,5とメッキ槽2,4との間で水を循環させ、その後、当該水を水洗タンク9へと回収する。
【0044】
かかる構成によれば、洗浄が終了したメッキ槽2,4へと水を供給することができ、メッキ槽2,4を水洗いすることができる。これにより、その後にこのメッキ槽2,4が使用される場合であってもメッキ液の組成を悪化させる要因を排除することができる。
【0045】
以上、本実施形態にかかるメッキ装置について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、その発明の範囲において種々の変更が可能である。例えば、メッキ処理を施すメッキ対象物は、抗張力繊維に限らず、これ以外のものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 メッキ装置
2 第1のメッキ槽
3 第1の供給タンク
3a 貯留タンク
3b 供給ポンプ
4 第2のメッキ槽
5 第2の供給タンク
5a 貯留タンク
5b 供給ポンプ
6 ガイド機構
7 予備タンク
8 洗浄液タンク
9 水洗タンク
10 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6