(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180907
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】負荷支持構造どうしを急速に分離させるための機構
(51)【国際特許分類】
F41H 13/00 20060101AFI20170807BHJP
F41H 7/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
F41H13/00
F41H7/02
【請求項の数】25
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-252905(P2013-252905)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2014-122781(P2014-122781A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年12月11日
(31)【優先権主張番号】61/745,096
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/828,965
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513309096
【氏名又は名称】オークランド・ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エー・ラチャ
(72)【発明者】
【氏名】セイード・エー・ネサール
(72)【発明者】
【氏名】メフメット・エイチ・ユーラス
【審査官】
畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02732765(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0302751(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41H 13/00
F41H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離機構であって、
部材に形成されたリンク開口内にスライド可能に受領されるリンクと;
前記リンクに形成されたピン穴と、前記部材に形成された受領穴と、の双方の穴内にスライド可能に受領されたピンであるとともに、前記リンクをその第1位置に着脱可能に保持するよう機能するピンと;
前記部材に対して連結された第1ブロックであるとともに、前記ピン穴に対して連通した起動部材受領通路を備えた第1ブロックと;
前記起動部材受領通路内に配置されていて前記起動部材受領通路と連通通路とが交わった位置のエッジに対して当接して保持された起動部材であるとともに、起動されたときには、前記ピンを前記ピン穴の外部の長手方向チャネル内へと変位させるための高圧ガスを放出し、これにより、前記リンクを前記第1位置から変位させ、前記長手方向チャネルは前記ピン穴の直径よりも大きい直径を有する、起動部材と;
段付き部を備えた保持キャップであるとともに、前記段付き部の直径は前記長手方向チャネルの直径よりも小さく、且つ前記ピンの直径よりも小さく、前記ピンは、前記ピン穴から変位された場合に、前記保持キャップによって保持され、前記保持キャップの端面は、前記分離機構の第2ブロックの端部壁に接続され、前記保持キャップは、前記ピンの変位に先立って、前記第2ブロックの端部壁の反対側に周囲雰囲気へ連通する通路を含んだ、保持キャップと;
を具備し、
前記連通通路は前記起動部材受領通路と前記ピン穴との間にあり、
前記第2ブロックは、前記部材に連結され且つ前記部材に関して前記第1ブロックとは反対側に配置されており、
この第2ブロックが、前記長手方向チャネルを備えており、
前記連通通路が、テーパー形状または円錐台形状を有し、
このテーパー形状または円錐台形状が、前記起動部材受領通路のサイズから、前記連通通路と前記ピン穴とを連結している長手方向通路のサイズへと、移行していることを特徴とする分離機構。
【請求項2】
請求項1記載の分離機構において、
さらに、前記部材に対して連結されたスプリング保持部材を具備し、
前記受領穴が、前記スプリング保持部材を貫通して形成されていることを特徴とする分離機構。
【請求項3】
請求項2記載の分離機構において、
さらに、前記スプリング保持部材内に配置されていて、前記ピンを前記リンクに対して係合させるよう付勢する、スプリングを具備し、
このスプリングが、段付きキャビティ内に配置され、
前記高圧ガスが、前記リンクを変位させる際には、前記ピンを、前記ピン穴から外部へと変位させるよう機能するとともに、前記ピンを、前記段付きキャビティ内へと変位させるよう機能することを特徴とする分離機構。
【請求項4】
請求項1記載の分離機構において、
さらに、
前記リンクに形成されたチャネルであるとともに、前記リンクに形成された前記ピン穴に対して連通し且つ前記リンク開口と連通したチャネルと;
前記部材に対して連結されたチューブであるとともに、軸線方向に調節可能なプラグを有したチューブと;
を具備し、
前記リンクに形成されたチャネルは、前記リンク開口を介して前記チューブと連通していることを特徴とする分離機構。
【請求項5】
請求項1記載の分離機構において、
さらに、前記第1ブロックに対して連結された端部キャップを具備し、
前記起動部材が、前記端部キャップの端面に対して当接しており、これにより、前記起動部材が保持されるようになっていることを特徴とする分離機構。
【請求項6】
分離機構であって、
ブラケットに形成されたリンク開口内にスライド可能に受領されるリンクと;
前記リンクに形成されたピン穴と、前記ブラケットに形成された受領穴と、の双方の穴内にスライド可能に受領されたピンであるとともに、前記リンクをその第1位置に着脱可能に保持するよう機能するピンと;
前記ブラケットに対して連結された第1ブロックであるとともに、前記ピン穴に対して連通した起動部材受領通路を備えた第1ブロックと;
前記起動部材受領通路内に配置されていて前記起動部材受領通路と連通通路とが交わった位置のエッジに対して当接して保持された起動部材であるとともに、起動されたときには、前記ピンを前記ピン穴の外部の長手方向チャネルへと変位させるための高圧ガスを放出し、これにより、前記リンクを前記第1位置から変位させ、前記リンクを前記ブラケットに対して自由にスライドさせ、前記長手方向チャネルは前記ピン穴の直径よりも大きい直径を有する、起動部材と;
段付き部を備えた保持キャップであるとともに、前記段付き部の直径は前記長手方向チャネルの直径よりも小さく、且つ前記ピンの直径よりも小さく、前記ピンは、前記ピン穴から変位された場合に、前記保持キャップによって保持され、前記保持キャップの端面は、前記分離機構の第2ブロックの端部壁に接続され、前記保持キャップは、前記ピンが前記ピン穴内に配置された場合に、前記第2ブロックの端部壁の反対側に周囲雰囲気へ連通する通路を含んだ、保持キャップと;
を具備し、
前記連通通路は前記起動部材受領通路と前記ピン穴との間にあり、前記連通通路、前記起動部材受領通路、および前記ピン穴は同軸上に整列されており、
前記第2ブロックは、前記ブラケットに連結され且つ前記ブラケットに関して前記第1ブロックとは反対側に配置されており、
この第2ブロックが、前記長手方向チャネルを備えており、
前記連通通路が、テーパー形状または円錐台形状を有し、
このテーパー形状または円錐台形状が、前記起動部材受領通路のサイズから、前記連通通路と前記ピン穴とを連結している長手方向通路のサイズへと、移行していることを特徴とする分離機構。
【請求項7】
請求項6記載の分離機構において、
前記起動部材が、前記エッジとは反対側においては、前記第1ブロックに対して連結されたキャップの端面に対して当接しており、
前記キャップが、前記第1ブロックに対して対向して配置されていることを特徴とする分離機構。
【請求項8】
請求項6記載の分離機構において、
前記起動部材の接続リード線が、前記第1ブロックに取り付けられた端部キャップ内に形成されたキャップ開口を通して延出されていることを特徴とする分離機構。
【請求項9】
請求項6記載の分離機構において、
前記ピンが、前記ピン穴と前記受領穴との長手方向軸線に対して同軸的に位置合わせされていることを特徴とする分離機構。
【請求項10】
請求項9記載の分離機構において、
前記起動部材受領通路と、前記長手方向チャネルと、連通通路と、前記キャップ開口と、の各々が、前記長手方向軸線に対して同軸的に位置合わせされていることを特徴とする分離機構。
【請求項11】
請求項6記載の分離機構において、
前記ピンの直径が、前記ピン穴と前記受領穴との双方内においてスライド適合し得るように選択されていることを特徴とする分離機構。
【請求項12】
請求項6記載の分離機構において、
前記長手方向通路が、前記ピンの直径よりも小さな直径を有し、これにより、前記ピンが前記長手方向通路内へと変位できないようになっていることを特徴とする分離機構。
【請求項13】
請求項6記載の分離機構において、
前記分離機構が、前記ピンが前記ピン穴と前記受領穴との双方内に同時に配置された結合状態とされた際には、前記ピンが、前記第1ブロックの端部壁に対して直接的に当接していることを特徴とする分離機構。
【請求項14】
請求項6記載の分離機構において、
さらに、前記長手方向チャネルを周囲雰囲気に対して連通させる開放通路を具備していることを特徴とする分離機構。
【請求項15】
請求項14記載の分離機構において、
前記長手方向チャネルと前記段付き部分との各々が、前記分離機構の長手方向軸線に対して同軸的に位置合わせされていることを特徴とする分離機構。
【請求項16】
請求項6記載の分離機構において、
前記起動部材受領通路が、連通通路を介して長手方向通路に対して連通していることを特徴とする分離機構。
【請求項17】
請求項1に記載の分離機構において、
前記保持キャップは、前記ピンよりも柔らかい材料から形成されていることを特徴とする分離機構。
【請求項18】
請求項6に記載の分離機構において、
前記保持キャップは、前記ピンよりも柔らかい材料から形成されていることを特徴とする分離機構。
【請求項19】
請求項1に記載の分離機構において、
前記連通通路は、前記起動部材受領通路よりも小さい直径を有することを特徴とする分離機構。
【請求項20】
請求項19に記載の分離機構において、
前記連通通路のより小さい直径は前記起動部材受領通路のより大きい通路と交わって、前記エッジを形成していることを特徴とする分離機構。
【請求項21】
請求項1に記載の分離機構において、
前記連通通路、前記起動部材受領通路、および前記ピン穴は同軸上に整列されていることを特徴とする分離機構。
【請求項22】
請求項21に記載の分離機構において、
前記連通通路は、前記起動部材受領通路よりも小さい直径を有することを特徴とする分離機構。
【請求項23】
請求項22に記載の分離機構において、
前記連通通路のより小さい直径は前記起動部材受領通路のより大きい通路と交わって、前記エッジを形成していることを特徴とする分離機構。
【請求項24】
請求項6に記載の分離機構において、
前記連通通路は、前記起動部材受領通路よりも小さい直径を有することを特徴とする分離機構。
【請求項25】
請求項24に記載の分離機構において、
前記連通通路のより小さい直径は前記起動部材受領通路のより大きい通路と交わって、前記エッジを形成していることを特徴とする分離機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年12月21日付けで出願された米国特許予備出願第61/745,096号の優先権を主張するものである。この文献の記載内容は、参考のためここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、負荷支持構造を第2構造から分離させるための機構に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ここでは、必ずしも従来技術ではないけれども、本出願に関連した背景情報について説明する。
【0004】
構造部材どうしは、例えばブラケットやリンクやピンといったような公知の連結機構を使用して、連結することができる。例えば軍用乗用車両や武装乗用車両といったような車両は、壁構造や床構造や天井構造を内部構造に対して連結するためのそのような連結機構を備えている。ある種の例においては、爆風や衝突等といったようなものから急激に印加された負荷は、例えば車両の床や壁や天井といったような、構造の第1部分内に受領される。乗員に対して負荷が伝達されることを防止するために、急激に印加された負荷を受領する第1構造を、乗員を支持している第2構造から、分離させることが望ましい。そのような急激な負荷状況においては、車両の乗員に対しての負荷伝達を最小化し得るようあるいは防止し得るよう、分離操作は、400マイクロ秒以内で行われなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】本明細書においては、先行技術文献は、記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それら構造どうしを分離させるための公知の方法においては、400マイクロ秒以内という時間内で分離操作を行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここでは、本発明の概要について説明する。ここでの説明は、本発明のすべての特徴点を網羅するものではない。
【0008】
いくつかの見地においては、分離機構は、ブラケットに形成されたリンク開口内にスライド可能に受領されるリンクを具備している。ピンは、リンクに形成されたピン穴とブラケットに形成された受領穴との双方の穴内にスライド可能に受領されたときには、リンクを着脱可能に保持するよう機能する。ブラケットに対して連結された第1ブロックは、ピン穴に対して連通した起動部材受領通路を備えている。起動部材は、起動部材受領通路内に配置されていて、起動部材受領通路のエッジに対して当接して保持されている。起動部材は、起動されたときには、ピンをピン穴の外部へと変位させるための高圧ガスを放出し、これにより、リンクを分離機構から分離させる。
【0009】
他の見地においては、分離機構は、ブラケットに形成されたリンク開口内にスライド可能に受領されるリンクを具備している。ピンは、リンクに形成されたピン穴とブラケットに形成された受領穴との双方の穴内にスライド可能に受領される。第1ブロックが、ブラケットに対して連結されている。第1ブロックは、連通通路を介して長手方向通路に対して連通した起動部材受領通路を備えている。起動部材は、起動部材受領通路内に配置されていて、連通通路のエッジに対して当接して保持されており、反対側においては、第1ブロックに対して連結されたキャップの端面に対して当接している。第2ブロックが、ブロックに対して連結されていて、ブラケットまわりにおいて第1ブロックとは反対側に配置されている。この第2ブロックは、ピンの直径よりも大きなチャネル直径を有した長手方向チャネルを備え、チャネル直径がピンの直径よりも大きいことのために、ピンは、長手方向チャネル内において自由に変位することができる。保持キャップの端面は、第2ブロックの端部壁に対して連結されている。保持キャップは、段付き部分を備え、この段付き部分の直径が、チャネル直径よりも小さく、なおかつ、ピンの直径よりも小さいものとされている。
【0010】
さらなる応用は、以下の説明により、明らかとなるであろう。本明細書における説明やいくつかの実施形態は、例示のためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【0011】
添付の図面は、選択された実施形態を図示する目的のためのものに過ぎず、すべての可能な態様を図示しているわけではない。添付の図面は、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図4における1−1断面を示す断面図であって、負荷支持構造を迅速に分離させるための本発明による機構を示している。
【
図2】
図1と同様の断面図であって、起動部材から解放されたエネルギーによって駆動されたピンを示している。
【
図3】
図2と同様の断面図であって、ブラケットからの移動後におけるリンクを示している。
【
図4】負荷支持構造を迅速に分離させるための本発明による様々な機構を備えた車両を示す側方からの断面図である。
【
図5】負荷支持構造を迅速に分離させるための本発明による機構を駆動するためのシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
複数の図面にわたって、対応する参照符号は、対応する構成部材を示している。
【0014】
以下においては、本発明の例示としての様々な実施形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、分離機構10は、リンク12を具備している。リンク12は、ブラケット16内に形成されたリンク開口14を規定しているキャビティまたは穴内において、スライド可能に受領されている。ピン18は、リンク12内に形成されたピン穴20内と、ブラケット16内に形成されていてリンク12の第1位置を規定する受領穴22内と、の双方において、スライド可能に受領されている。ピン18は、ピン穴20と受領穴22との長手方向軸線24に対して同軸的に位置合わせされている。ピン18の直径「A」は、ピン穴20と受領穴22との双方内にスライド的に適合し得るように選択されている。
【0016】
ブラケット16は、第1ブロック26に対して連結されている。第1ブロック26は、起動部材受領通路28を備えている。起動部材受領通路28は、連通通路32を介して、長手方向通路30に対して連通している。連通通路32は、テーパー形状すなわち円錐台形状を有するものとして図示されている。しかしながら、連通通路32は、起動部材受領通路28から長手方向通路30へとサイズ変更させ得るような任意の形状を有することができる。長手方向通路30は、ピン18の直径「A」よりも小さな直径を有している。これにより、ピン18は、長手方向通路30内を移動することができない。したがって、ピン18は、長手方向通路30の開口端のところにおいて、第1ブロック26の端部壁33に対して当接することができる。
【0017】
例えば自動車用のエアバッグ起動部材といったような起動部材34が、起動部材受領通路28内に配置されており、より小径の連通通路32の開口端すなわちエッジに対して当接して保持されている。起動部材34の反対側の端部は、第1ブロック26に対向しつつ第1ブロック26に対して連結された端部キャップ36の端面35に対して当接することができる。起動部材34の接続リード線38が、起動部材34を起動するための起動信号を受領し得るよう、端部キャップ36内に形成されたキャップ開口40を通して延出されている。いくつかの見地においては、起動部材受領通路28と、長手方向通路30と、連通通路32と、キャップ開口40と、の各々は、長手方向軸線24に対して同軸的に位置合わせされている。例示するならば、起動部材34は、米国ユタ州 Promontory 所在の Autoliv. Inc.社によって製造されている 535 THPP 50 ZPP エアバッグ起動部材とすることができる。
【0018】
ブラケット16まわりにおいて第1ブロック26と反対側には、第2ブロック42が配置されており、この第2ブロック42は、ブラケット16に対して連結されている。第2ブロック42は、長手方向チャネル44を有している。長手方向チャネル44は、ピン18の直径「A」よりも大きなチャネル直径「B」を有している。よって、ピン18は、長手方向チャネル44内へと自由に受領されることができる。保持キャップ46の端面45は、第2ブロック42の端部壁47に対して連結されている。保持キャップ46は、段部48を有している。段部48は、チャネル直径「B」よりも小さな段部直径「C」を有している、したがって、ピン18の直径「A」よりも小さな段部直径「C」を有している。開放通路50が、長手方向チャネル44を周囲雰囲気に対して連通させている。長手方向チャネル44と段部48との各々は、長手方向軸線24に対して同軸的に位置合わせされている。
【0019】
図1に示すような通常的な連結状態においては、ピン18は、構造的な連結リンクを構成しており、リンク12とブラケット16とを連結している。その後、起動部材34が起動信号を受領した際には、起動部材34が起動され、起動部材34は、長手方向通路30内へと高圧ガス51を放出する。高圧ガス51は、ピン18をスライド的に駆動し、これにより、
図2に示すように、リンク12を、ブラケット16から分離させる。
【0020】
図1,2に示すように、分離機構10のこの移動状態は、起動部材34の起動による高圧ガス51の放出の後に、起こる。高圧ガス51は、連通通路32と長手方向通路30とを充填し、ピン18の第1端面52に対して作用し、これにより、移動方向「D」におけるピン18のスライド移動を開始させる。ピン18が移動方向「D」に移動するにつれて、高圧ガス51が膨張して、受領穴22およびピン穴20を充填し、ピン18を押し続ける。最終的には、ピン18の第2端面54が段部48に対して直接的に当接し、これにより、ピンの移動が終了する。ピン18のスライド移動時には、雰囲気圧力のエアが、長手方向チャネル44および開口通路50を通して周囲雰囲気へと押し出され、これにより、ピン18のスライド移動に対する抵抗力を低減することができる。
【0021】
ピン18の長さ「E」は、段部48とリンク12の外表面56との間の距離「F」よりも、短いものとされている。これにより、ピン18が段部48に対して当接した際にピン18がリンク12のピン穴20から完全に抜け出すことが、保証される。ピン18が長手方向チャネル44内に受領された際にチャネル直径「B」によって提供されるクリアランスのために、ピン18がスライド移動途中に引っ掛かってしまわないことが、保証される。
【0022】
図3に示すように、
図2の移動状態へと到達した後には、ピン18は、移動方向「D」において、リンク12のピン穴20から完全に抜け出している。これにより、リンク12は、リンク移動方向「G」において、ブラケット16のリンク開口14内を、リンク12の第2位置に向けてすなわち移動状態に向けて、移動することができる。いくつかの見地においては、リンク移動方向「G」は、長手方向軸線24に対して直交している。リンク12に対して作用する力の方向に応じて、リンク12が、リンク移動方向「G」とは逆向きの第2のリンク移動方向「H」においてリンク開口14から抜け出し得ることに注意されたい。
【0023】
図4には、分離機構10の例示としての使用態様が示されている。
図4においては、複数の分離機構10,10’が使用されている。これら分離機構10,10’は、車両62のフロア構造60に対して偽のフロア構造58を支持している。リンク12,12’が連結された際には、分離機構10,10’は、車両の偽のフロア構造58と車両のフロア構造60との間に、クリアランススペース64を形成して維持する。いくつかの見地においては、分離機構10,10’は、車両のフロア構造60の周縁まわりに配置される。使用される分離機構10,10’の量は、偽のフロア構造58に関する静的負荷に応じて、また、偽のフロア構造58が支持している設備や乗員に応じて、変更することができる。いくつかの見地においては、45.36kg(100ポンド)という静的負荷あたりにつき、1つの分離機構10が使用される。また、分離機構10,10’は、互いに対して様々な角度で配向することができる。
図4の例においては、分離機構10,10’は、互いに対して90°という角度で配向している。
【0024】
分離機構10,10’の各々は、リンク12,12’を備えている。リンク12,12’は、第2ピン66,66’を使用して、コネクタ68,68’に対して回転可能に連結されている。コネクタ68,68’は、例えばクレビスとされ、偽のフロア構造58に対して固定的に連結されている。リンク12,12’の各々は、軸線70に対して角度アルファ(α)でもって配向している。軸線70は、車両のフロア構造60に対しておよび偽のフロア構造58に対して、直交して配向している。配向角度(α)により、リンク12,12’は、分離機構10,10’のピン18の移動後には、第2ピン66,66’に対して自由に回転することができる。リンク12,12’の回転により、車両のフロア構造60は、力あるいは負荷「K」に基づき上向き「J」に変位することができる。力あるいは負荷「K」は、例えば爆風に起因するものであり、フロア構造60に対して上向き「J」に受領されたものである。したがって、負荷「K」から車両62の乗員に対しての力伝達経路を、断つことができる。いくつかの見地においては、配向角度(α)は、約20°とされる。しかしながら、配向角度(α)は、10〜80°の間の任意の角度とすることができる。
【0025】
図5に示すように、1つまたは複数の分離機構10を制御するための、例示としての駆動システム72は、少なくとも1つの加速度計74を備えている。加速度計74は、例えば、米国バージニア州 Hampton 所在の Measurement Specialties Inc. 社によって提供されている Model 40A 型の加速度計とされる。加速度計74は、車両のフロア構造60に対して連結されている。加速度計74の出力は、信号調整器76の入力とされる。信号調整器76は、例えば、米国バージニア州 Hampton 所在の Measurement Specialties Inc. 社によって提供されている model 101 型の信号調整器とされる。信号調整器76の出力は、デジタルオシロスコープ78といったようなデバイスの入力とされる。デジタルオシロスコープ78は、例えば、米国カリフォルニア州 Santa Clara 所在の Agilent Technologies, Inc. 社によって製造されている model DSO-X 3024A 型のものとされる。デジタルオシロスコープ78からの信号は、起動部材用の電源80へと送出される。起動部材用の電源80は、個々の分離機構10に対して起動信号を送出する。例えばバッテリ82といったような電源が、駆動システム72の構成部材に対して電力を供給している。
【0026】
加速度のしきい値を示す信号が加速度計74によって検出された際には、起動部材用の電源80が、分離機構10の個々の起動部材34を起動する。いくつかの見地においては、加速度のしきい値の検出から、起動部材34に対しての信号送出を経て、ピン18の第2端面54が段部48に対して当接するまでの、合計の所要時間は、400マイクロ秒以下であり、本発明による分離機構10のサイクル時間は、200マイクロ秒である。このような所要時間の間に、例えば武器による爆発事象といったようなものが起こった際に、適切な検出を行って、車両62のフロア構造60から偽のフロア構造58を適切に分離させることができる。
【0027】
本発明による分離機構10の様々な構成部材のために使用される材料には、制限がない。非限定的ないくつかの見地においては、リンク12と、ブラケット16と、第1ブロック26と、第2ブロック42と、端部キャップ36と、保持キャップ46とは、例えば7075-T6 アルミニウムといったようなアルミニウムから形成することができる。これにより、組立品の重量を最小化することができる。ピン18のために使用される材料は、アルミニウム材料よりも強度が大きなようなあるいはアルミニウム材料よりも硬いような材料から選択され、いくつかの見地においては、チタンとされる。
【0028】
図6に示すように、本発明のさらなる見地においては、分離機構84が、分離機構10に対して修正される。したがって、以下においては、分離機構10からの分離機構84の相違点についてのみ説明する。分離機構84は、ブラケットすなわちシリンダ88を規定するリンク開口内に収容されたリンクすなわちプランジャー86を備えている。プランジャー86は、プランジャー86の第1位置を規定する1つまたは複数のピン90によって、所定位置に堅固に保持されている。端部キャップ36’によって保持された起動部材94の点火時には、高圧ガスが、プランジャー86を貫通して形成された開口96を通して、ピン90の面98上へと作用する。これにより、圧縮スプリング92に抗して、シリンダ88の円筒壁104に対して連結されたスプリング保持部材102の段部キャビティ100内へと、ピン90を押圧する。これにより、ピン90を安定的に捕獲することができる。段部キャビティ100は、通常動作時には、ピン90のためのポジティブな保持手段として機能する。その後、プランジャー86は、シリンダ88の内部に向けてあるいはシリンダ88の外部に向けて、自由に移動することができ、プランジャー86とスプリング保持部材102との間においてピン90によって形成されていた以前の堅固な連結を分離させることができる。
【0029】
付加的には、ピン90が移動してプランジャー86との当接を解除したときには、起動部材94から放出されて残存する高圧ガスは、プランジャー86内に形成された開放チャネル106からベントされることができる。これにより、高圧ガスが、プランジャー86の移動を制御することができる。付加的には、軸線方向に位置調節可能とされたプラグ110を有したチューブ108により、この高圧シリンダ/プランジャーシステムの特性を、特定の用途に応じて変更することができる。チューブ108の通路111内におけるプラグ110の位置は、通路111のうちの、高圧ガスを受領する容積の大きさを、調節可能なものとする。そのような容積は、プランジャー86のスライド移動時には、ショックアブソーバとして機能する。図示のシステムを使用することにより、プランジャー86がシリンダ88内を移動する際に、プランジャー86の移動を制御することができる。付加的には、このシステムは、プランジャー86がシリンダ88の外部へと移動する際に、プランジャー86の移動を制御し得るように構成することができる。分離機構10の場合と同様に、分離機構84は、構成部材すなわちシリンダ88に対して連結された第1ブロック112を備えている。この第1ブロック112は、通路116を介してピン穴に対して連通した起動部材受領通路114を有している。起動部材94は、受領通路114内に配置されていて、連通通路114のエッジ118に対して当接して保持されている。
【0030】
本明細書においては、いくつかの例示としての実施形態について説明した。様々な特定の詳細が、本明細書における様々な実施形態の理解のために、特定の構成部材やデバイスや方法の例示のために、記載された。特定の詳細が使用される必要がないことは、当業者には明らかであろう。例示としての実施形態は、様々な態様でもって具現することができる。特定の詳細や例示としての実施形態は、本発明の範囲を制限するものではない。いくつかの例示としての実施形態においては、周知のプロセスや周知のデバイス構造や周知の技術については、詳細な説明が省略されている。
【0031】
本明細書において使用されている用語は、特定の例示としての実施形態を説明する目的のものであって、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書においては、「1つの」や「この」や「その」といったような単一のものを表す用語は、明らかにそうである場合を除き、複数のものをも包含することができる。「を具備している」や「を備えている」や「を有している」といったような用語は、包含的なものであり、したがって、記載された特徴点や数値やステップや操作や構成要素や構成部材の存在を特定するものであって、他の特徴点や他の数値や他のステップや他の操作や他の構成要素や他の構成部材の存在および/または追加を排除するものではない。本明細書に記載された方法ステップやプロセスや操作は、特に順序を規定しない限りにおいては、記載された順序で行われる必要はない。また、追加的なステップや代替可能なステップを使用し得ることは、理解されるであろう。
【0032】
構成部材または層が、他の構成部材または他の層に対して、「上にある」や「係合している」や「連結されている」や「接続されている」と記載された場合には、そのような構成部材または層は、他の構成部材または他の層に対して、直接的に、上にあっても、係合していても、連結されていても、接続されていても、良く、あるいは、介在する構成部材または層が使用されていても良い。これに対し、構成部材または層が、他の構成部材または他の層に対して、「直接的に上にある」や「直接的に係合している」や「直接的に連結されている」や「直接的に接続されている」と記載された場合には、介在する構成部材または層は、存在していない。構成部材どうしの間の関係を記載するために使用される他の用語(例えば、「〜の間」と「直接的に〜の間」、「隣接して」と「直接的に隣接して」、等)は、同様に解釈されるべきである。本明細書においては、「および/または」という用語は、1つまたは複数の列挙された構成部材に関しての、任意の組合せとすべての組合せとを包含する。
【0033】
第1や第2や第3等といったような用語は、本明細書においては、様々な構成要素や構成部材や領域や層や部分を記述するために使用し得るものではあるけれども、それらの様々な構成要素や構成部材や領域や層や部分は、それら用語によって限定されるべきものではない。それら用語は、ある構成要素や構成部材や領域や層や部分を、他の構成要素や構成部材や領域や層や部分から識別するために使用されているに過ぎない。例えば第1や第2等といったような用語は、本明細書においては、明らかにそうである場合を除き、シーケンスや順序を意味するものではない。よって、例示としての実施形態における範囲を逸脱することなく、第1の構成要素や構成部材や領域や層や部分は、第2の構成要素や構成部材や領域や層や部分を構成することができる。
【0034】
例えば「内部」や「外部」や「直下」や「下方」や「下側」や「直上」や「上方」や「上側」等といったような空間的な相対関係を表す用語は、本明細書においては、添付図面に図示されたような、ある構成部材またはある特徴点の、他の構成部材または他の特徴点に対しての、位置関係を記述するために使用することができる。空間的な相対関係を表す用語は、添付図面に図示された配向性に加えて、デバイスの使用時または動作時における他の配向性を包含することができる。例えば、添付図面におけるデバイスがひっくり返された場合には、他の構成部材または特徴点に対して「下方」または「直下」として記載された構成部材または特徴点は、他の構成部材または特徴点に対して「上方」に位置することとなる。よって、「下方」という用語は、上方と下方との双方の配向性を包含することができる。デバイスは、他の配向性とすることもでき(90°回転された配向性、あるいは、他の配向性)、空間関係を表す用語は、本明細書においては、同様に解釈されるべきである。
【0035】
様々な実施形態に関する上記の説明は、例示や説明のためのものに過ぎない。それら説明は、本発明の範囲を制限するものではない。特定の実施形態における個々の構成部材や特徴点は、一般に、その特定の実施形態に限定されるものではなく、可能であれば、互換的なものであって、特に言及しなかったとしても、選択された実施形態において使用することができる。同様のことは、他にも当てはまる。そのような変形例は、本発明の範囲を逸脱するものではなく、そのような修正は、本発明の範囲内に属するものである。
【符号の説明】
【0036】
10 分離機構
12 リンク
14 リンク開口
16 ブラケット(部材)
18 ピン
20 ピン穴
22 受領穴
24 長手方向軸線
26 第1ブロック
28 起動部材受領通路
30 長手方向通路
32 連通通路
33 端部壁
34 起動部材
35 端面
36 端部キャップ
38 接続リード線
40 キャップ開口
42 第2ブロック
44 長手方向チャネル
45 端面
46 保持キャップ
47 端部壁
48 段部
51 高圧ガス
84 分離機構
86 プランジャー
88 ブラケット、シリンダ
90 ピン
92 圧縮スプリング
94 起動部材
100 段部キャビティ
102 スプリング保持部材
106 開放チャネル
108 チューブ
110 プラグ
111 通路
112 第1ブロック
114 起動部材受領通路
116 通路
118 エッジ