特許第6180918号(P6180918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180918
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】液量検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/30 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   G01F23/30 B
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-262604(P2013-262604)
(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-118041(P2015-118041A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平原 伸介
(72)【発明者】
【氏名】池谷 昌紀
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−170528(JP,U)
【文献】 特開2012−145385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/30 − 23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に貯留されている液体の液量に応じた検出信号を出力する液量検出装置であり、
容量の異なる複数の貯留部を備えた容器内において、前記複数の貯留部にそれぞれ設置される複数の検出器と、
前記容器内に配置され、複数の検出器から出力される信号に基づいて、容器内の液量に応じた検出信号を出力する出力回路と、
各検出器と出力回路の間に配置され、当該検出器から出力される信号を補正して出力回路に出力する補正回路と、を有し、
各検出器は、フロートと、フロートの上下方向の運動を回転運動に変換するアーム部材と、アーム部材の回転運動に応じたアナログ信号を出力する磁気センサと、を有し、
前記補正回路のそれぞれは、前記複数の検出器のうち対応する検出器の内部に配置され、当該検出器から出力される各信号のスケールが同一になるように補正し、
出力回路は、各補正回路から出力される補正されたアナログ信号が入力され、それら入力される複数のアナログ信号に基づいて容器内の液量に応じたアナログ検出信号を出力する、液量検出装置。
【請求項2】
前記複数の貯留部は、各貯留部の液位は相互に独立して変化可能であるように構成され、
検出器は、貯留部毎に配置されており、
各補正回路は、対応する貯留部に貯留可能な液体の最大液量と、容器に貯留可能な液体の最大液量の比に応じた抵抗を有する、請求項1に記載の液量検出装置。
【請求項3】
複数の検出器のそれぞれにおいて、当該検出器の磁気センサと、その磁気センサからのアナログ信号が入力される補正回路とが同一の基板に搭載されている、請求項2に記載の液量検出装置。
【請求項4】
複数の検出器のうちの1つの検出器の磁気センサと、その磁気センサからのアナログ信号が入力される補正回路と、複数の検出器のうちの他の検出器の磁気センサからのアナログ信号が入力される補正回路と、が同一の基板に搭載されている、請求項2に記載の液量検出装置。
【請求項5】
出力回路は、各補正回路から出力されるアナログ信号の電圧値を加算する加算機能を備えている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液量検出装置。
【請求項6】
容器は、第1深さの第1貯留部と、第2深さの第2貯留部を含む前記複数の貯留部と、第1貯留部の上部と第2貯留部の上部を接続する接続部と、を有し、接続部の深さが第1深さ及び第2深さよりも浅くされた鞍型容器であり、
検出器は、第1貯留部と第2貯留部のそれぞれに配置されており、
出力回路が鞍型容器内に配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液量検出装置。
【請求項7】
出力回路は、各補正回路から出力されるアナログ信号の電圧値を加算する加算部と、その加算部から出力されるアナログ信号を増幅する信号増幅部と、を有しており、
信号増幅部は、加算部から出力されるアナログ信号の出力レンジが所定の出力レンジとなるように、加算部から出力されるアナログ信号を増幅する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液量検出装置。
【請求項8】
異なる容量を有する複数の貯留部を備えた容器内に貯留されている液体の液量に応じた検出信号を出力する液量検出装置であり、
前記複数の貯留部にそれぞれ設置される複数の検出器と、
容器内に配置され、複数の検出器から出力される信号に基づいて、容器内の液量に応じた検出信号を出力する出力回路と、
前記複数の検出器と出力回路との間に配置され、当該検出器から出力される信号を補正して出力回路に出力する補正回路と、を有し、
出力回路は、各検出器から出力されるアナログ信号を加算する加算部と、その加算部から出力されるアナログ信号を増幅する信号増幅部と、を有しており、
前記補正回路のそれぞれは、前記複数の検出器のうち対応する検出器の内部に配置され、当該検出器から出力される各信号のスケールが同一となるように補正し、
信号増幅部は、加算部から出力されるアナログ信号の出力レンジが所定の出力レンジとなるように、加算部から出力されるアナログ信号を増幅する、液量検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、容器内に貯留されている液体の液量を検出する液量検出装置(例えば、自動車等の燃料タンク内に貯留される燃料の液量を検出する装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液量検出装置には、容器内に複数の検出器が配置されたものがある。例えば、特許文献1の液量検出装置は、メイン貯留部とサブ貯留部を備える鞍型の燃料タンクに貯留される燃料の液量を検出する。この液量検出装置は、メイン貯留部に貯留される燃料の液位(液量)を検出する抵抗式の燃料センダと、サブ貯留部に貯留される燃料の液位(液量)を検出する抵抗式の燃料センダを備えている。これら複数の燃料センダと燃料メータは直列に接続され、これら複数の燃料センダからの信号が燃料メータに入力されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−288589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の液量検出装置では抵抗式の検出器が用いられる。抵抗式の検出器は、部品の摩耗や異物による影響を受け、液位(液量)を正確に検出できない場合がある。このため、磁気センサを利用した検出器を用いることが検討されている。しかしながら、磁気センサを利用した検出器の場合、容器内に複数の検出器を配置しようとすると、抵抗式の検出器の場合と異なり、複数の検出器を液量メータに直列に接続することができない。このため、そのままでは各検出器から液量メータに信号を出力しなければならず、出力信号ラインが多数になるという問題がある。本明細書は、磁気センサを利用した検出器を用いた場合において、容器内に複数の検出器を配置したときでも、出力信号ラインの増加を抑制することができる液量検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示される液量検出装置は、容器内に貯留されている液体の液量に応じた検出信号を出力する。この液量検出装置は、容器内に設置される複数の検出器と、複数の検出器から出力される信号に基づいて、容器内の液量に応じた検出信号を出力する出力回路と、検出器毎に、当該検出器と出力回路の間に配置され、当該検出器から出力される信号を補正して出力回路に出力する補正回路と、を有している。各検出器は、フロートと、フロートの上下方向の運動を回転運動に変換するアーム部材と、アーム部材の回転運動に応じたアナログ信号を出力する磁気センサと、を有している。出力回路は、各補正回路から出力される補正されたアナログ信号が入力され、それら入力される複数のアナログ信号に基づいて容器内の液量に応じたアナログ検出信号を出力する。
【0006】
上記の液量検出装置では、複数の検出器からのアナログ信号が対応する補正回路を介して出力回路に入力される。出力回路は、複数の補正回路から入力されるアナログ信号に基づいて、容器内の液量に応じたアナログ信号を出力する。したがって、複数の検出器からの信号が出力回路を介して外部機器に出力されるため、液量検出装置と外部機器とを接続する信号出力ラインの増加を抑制することができる。また、各検出器からの信号は、対応する補正回路を介して出力回路に入力されるため、出力回路で処理し易いように補正回路で補正することができる。その結果、出力回路の機能を簡易なものとすることができる。
【0007】
本明細書で開示される他の液量検出装置は、液量検出装置から出力される信号の出力レンジを所望のレンジとすることを可能とする。すなわち、この種の液量検出装置は、通常、液量メータに接続されて用いられ、液量検出装置からの検出信号(アナログ信号)が液量メータに入力される。液量メータは、液量検出装置からの検出信号の電圧値に応じて、容器に貯留されている液体の液量を表示する。このため、液量検出装置から出力される検出信号の出力レンジが変化すると、そのままでは液量メータに正しく液量が表示されないこととなる。ここで、容器内に複数の検出器を設置し、これら複数の検出器から出力されるアナログ信号を出力回路を介して液量メータに入力する構成を採用すると、検出器から出力される信号を液量メータに直接入力する場合と比較して、液量メータに入力されるアナログ信号の出力レンジが変化することがある。このため、液量メータに正しく液量を表示するためには、液量メータを別途調整しなければならない。そこで、本明細書で開示される他の液量検出装置は、液量検出装置から出力される信号の出力レンジを所望のレンジとすることで、液量メータを調整することなく、液量メータに正しく液量を表示することを可能とする。
【0008】
すなわち。本明細書で開示される他の液量検出装置は、容器内に貯留されている液体の液量に応じた検出信号を出力する。この液量検出装置は、容器内に設置される複数の検出器と、複数の検出器から出力される信号に基づいて、容器内の液量に応じた検出信号を出力する出力回路と、を有している。出力回路は、各検出器から出力されるアナログ信号を加算する加算部と、その加算部から出力されるアナログ信号を増幅する信号増幅部と、を有している。信号増幅部は、加算部から出力されるアナログ信号の出力レンジが所定の出力レンジとなるように、加算部から出力されるアナログ信号を増幅する。
【0009】
この液量検出装置でも、複数の検出器からの信号が出力回路を介して外部機器(例えば、液量メータ)に出力されるため、液量検出装置と外部機器とを接続する信号出力ラインの増加を抑制することができる。また、出力回路は、各検出器から出力される信号を加算し、その加算した信号の出力レンジが所望のレンジとなるように増幅する。このため、外部機器(例えば、液量メータ等)を調整することなく、外部機器を正しく動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例の液量検出装置の構成を示す図。
図2】出力回路の回路構成を示す回路図。
図3】磁気センサユニットの機能を説明するための図。
図4】液量検出装置の回路構成の他の例を示す図。
図5】液量検出装置の回路構成の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に、以下に説明する実施例の特徴を列記する。なお、ここに列記する特徴は、何れも独立して有効なものである。
【0012】
(特徴1) 本明細書で開示される液量検出装置では、容器は、液体を貯留する複数の貯留部を有しており、各貯留部の液位は相互に独立して変化可能であってもよい。検出器は、貯留部毎に配置されていてもよい。各補正回路は、対応する貯留部に貯留可能な液体の最大液量と、容器に貯留可能な液体の最大液量の比に応じた抵抗を有していてもよい。このような構成によると、各貯留部に貯留される液位(液量)が各検出器で検出され、各検出器から出力される信号が対応する貯留部の容量比に応じた抵抗によって補正される。これによって、出力回路での処理を容易なものとすることができる。
【0013】
(特徴2) 本明細書で開示される液量検出装置では、複数の検出器のそれぞれにおいて、当該検出器の磁気センサと、その磁気センサからのアナログ信号が入力される補正回路とが同一の基板に搭載されていてもよい。このような構成では、検出器の磁気センサと、その検出器に対応する補正回路とが同一の基板に搭載される。このため、容器に液量検出装置を設置する際に、磁気センサと補正回路を接続する作業を不要とすることができる。
【0014】
(特徴3) 本明細書で開示される液量検出装置では、複数の検出器のうちの1つの検出器の磁気センサと、その磁気センサからのアナログ信号が入力される補正回路と、複数の検出器のうちの他の検出器の磁気センサからのアナログ信号が入力される補正回路とが同一の基板に搭載されていてもよい。このような構成によると、1つの基板に複数の補正回路を搭載することで、他の検出器については、その磁気センサと対応する補正回路を同一の基板に搭載する必要を無くすことができる。
【0015】
(特徴4) 本明細書で開示される液量検出装置では、出力回路は、各補正回路から出力されるアナログ信号の電圧値を加算する加算機能を備えていてもよい。このような構成によると、各補正回路から出力されるアナログ信号の電圧値が加算され、加算された信号(電圧値)が出力回路から出力される。このため、補正回路による補正を適切に行うことで、加算された信号(電圧値)によって容器に貯留される液量を表すことができる。
【0016】
なお、ここで「加算」とは、複数の補正回路から出力されるアナログ信号の電圧値(例えば、V1,V2)をそのまま加算(例えば、V1+V2)することを意味するだけでなく、これらのアナログ信号の電圧値に係数kを乗算した値を加算(例えば、k1×V1+k2×V2)することも含まれる。したがって、複数の検出器から出力されるアナログ信号の電圧値(例えば、V1,V2)の平均値(例えば、1/2×(V1+V2))を算出することも、ここでいう「加算」することに相当する。
【0017】
(特徴5) 本明細書で開示される液量検出装置では、容器は、第1深さの第1貯留部と、第2深さの第2貯留部と、第1貯留部の上部と第2貯留部の上部を接続する接続部と、を有し、接続部の深さが第1深さ及び第2深さよりも浅くされた鞍型容器であってもよい。この場合、検出器は、第1貯留部と第2貯留部のそれぞれに配置されており、出力回路が鞍型容器内に配置されていてもよい。このような構成によると、第1貯留部と第2貯留部と出力回路が容器内に配置されるため、これらを接続する信号ラインを容器内に配置することができる。したがって、容器の内外を貫通する信号ラインの数を減らすことができる。
【0018】
(特徴6) 本明細書で開示される液量検出装置では、出力回路は、各補正回路から出力されるアナログ信号の電圧値を加算する加算部と、その加算部から出力されるアナログ信号を増幅する信号増幅部と、を有していてもよい。信号増幅部は、加算部から出力されるアナログ信号の出力レンジが所定の出力レンジとなるように、加算部から出力されるアナログ信号を増幅してもよい。このような構成によると、出力回路から出力される信号が信号増幅部で増幅され、その出力レンジが所定のレンジとなっている。このため、外部機器を調整することなく、外部機器を適切に作動させることができる。
【実施例】
【0019】
図1に示すように、燃料量検出装置10は、自動車に搭載される鞍型の燃料タンク12に設置されている。図1に示すように、燃料量検出装置10は、第1燃料量検出器36と、第2燃料量検出器22と、出力合成回路38を備えている。第1燃料量検出器36と第2燃料量検出器22は、出力合成回路38を介して燃料メータ52に接続されている。
【0020】
まず、燃料量検出装置10が設置される鞍型の燃料タンク12について説明する。燃料タンク12は、その中央部18(接続部の一例)の底面が、中央部18の一方側に配置されたメイン貯留部14の底面、及び、中央部18の他方側に配置されたサブ貯留部16の底面に対して上方に位置している。すなわち、中央部18は、メイン貯留部14及びサブ貯留部16の上部を接続しており、中央部18の深さは、メイン貯留部14の深さ及びサブ貯留部16の深さよりも浅くされている。このため、燃料タンク12内に貯留される燃料量が減少して液位が中央部18の底面より低くなると、メイン貯留部14とサブ貯留部16のそれぞれに独立して燃料が貯留される。すなわち、メイン貯留部14に貯留される燃料の液位と、サブ貯留部16に貯留される燃料の液位は、相互に独立して変化可能となる。その結果、メイン貯留部14に貯留される燃料量のみを検出しても、燃料タンク12に貯留されている全燃料量を正確に算出することはできない。同様に、サブ貯留部16に貯留される燃料量のみを検出しても、燃料タンク12に貯留されている全燃料量を正確に算出することはできない。そこで、本実施例の燃料量検出装置10は、メイン貯留部14内の燃料量と、サブ貯留部16内の燃料量のそれぞれを検出している。
【0021】
なお、燃料タンク12のメイン貯留部14には、図示しない燃料ポンプが配置されている。燃料ポンプは、燃料タンク12内(詳細には、メイン貯留部14内)の燃料を吸引して昇圧し、昇圧した燃料を燃料タンク12の外部(すなわち、エンジン)に供給する。一方、燃料ポンプがメイン貯留部14に配置されていることから、燃料タンク12内の燃料の液位が低下したときに、サブ貯留部16内の燃料をメイン貯留部14に移送する必要がある。サブ貯留部16からメイン貯留部14への燃料の移送は、走行時の加減速や旋回時の遠心力により行われ、あるいは、燃料ポンプから吐出される燃料の一部を利用するジェットポンプ(図示しない)によって行われるようになっている。
【0022】
第1燃料量検出器36は、メイン貯留部14内に設置されている。第1燃料量検出器36は、フロート32と、フロート32に固定されたアーム部材34と、アーム部材34の基端に固定されたロータ45と、ロータ45の回転角を検出する磁気センサユニット41を備えている。フロート32は、メイン貯留部14内の燃料に浮かんでおり、燃料の液位に応じて上下方向に運動する。フロート32には、アーム部材34の先端が固定されている。アーム部材34の基端には、ロータ45が固定されている。ロータ45は、永久磁石等によって構成され、所定の磁界を発生するようになっている。ロータ45は、ケーシング43に回転可能に支持されている。磁気センサユニット41は、ケーシング43に設置されている。磁気センサユニット41は、ロータ45が発生する磁界を検出する。メイン貯留部14内の燃料の液位に応じてフロート32が上下動すると、それによってアーム部材34が揺動して、ロータ45がケーシング43に対して回転する。ロータ45が回転すると、ロータ45によって発生する磁界の向きが変化する。すると、磁気センサユニット41で検出されるロータ45の磁界の向きや強さが変化する。磁気センサユニット41は、検出されるロータ45の磁界の向きや強さに基づいて、メイン貯留部14内に貯留される燃料量に応じたアナログ信号を出力する(図2参照)。磁気センサユニット41の詳細な構成については、後で詳述する。
【0023】
第2燃料量検出器22は、第1燃料量検出器36と同一構成をしており、フロート24とアーム部材26とロータ55と磁気センサユニット31を備えている。フロート24は、サブ貯留部16内の燃料の液位に応じて上下方向に運動し、フロート24の上下運動によりアーム部材26が揺動し、ロータ55がケーシング53に対して回転する。磁気センサユニット31は、ロータ55の回転運動(詳細には、ロータ55の磁界)を検出し、その検出結果に基づいてサブ貯留部16内に貯留される燃料量に応じたアナログ信号を出力する。
【0024】
出力合成回路38は、第1燃料量検出器36が設置されたケーシング43に搭載されている。ケーシング43が燃料タンク12内(詳細には、メイン貯留部14内)に配置されていることから、出力合成回路38も燃料タンク12内に配置されている。出力合成回路38は、燃料タンク12外(例えば、運転席)に配置された燃料メータ52に接続されると共に、燃料タンク12内に配置された第1燃料量検出器36及び第2燃料量検出器22に接続されている。すなわち、出力合成回路38と第1燃料量検出器36は、電源ライン42bとグランドライン46bと信号出力ライン44bによって接続されている。第1燃料量検出器36は、電源ライン42bから供給される電源によって動作し、メイン貯留部14に貯留される燃料の燃料量を信号出力ライン44bに出力する。また、出力合成回路38と第2燃料量検出器22は、電源ライン42cとグランドライン46cと信号出力ライン44cによって接続されている。第2燃料量検出器22は、電源ライン42cから供給される電源によって動作し、サブ貯留部16に貯留される燃料の燃料量を信号出力ライン44cに出力する。出力合成回路38が燃料タンク12内に配置されているため、上述した各配線42b,42c,44b,44c,46b,46cも燃料タンク12内に配置されている。
【0025】
出力合成回路38と燃料メータ52は、電源ライン42aとグランドライン46aと信号出力ライン44aによって接続されている。したがって、燃料メータ52から供給される電源は、電源ライン42a,42bを介して第1燃料量検出器36に供給され、また、電源ライン42a,42cを介して第2燃料量検出器22に供給される。一方、第1燃料量検出器36からの出力信号(メイン貯留部14の燃料量)と、第2燃料量検出器22からの出力信号(サブ貯留部16の燃料量)は、出力合成回路38によって燃料タンク12内の燃料量に応じたアナログ信号とされ、信号出力ライン44aによって燃料メータ52に入力される。上述したように、出力合成回路38は燃料タンク12内に配置されている。このため、出力合成回路38と燃料メータ52を接続する配線(電源ライン42a,グランドライン46a,信号出力ライン44a)は、燃料タンク12の開口を塞ぐ蓋部材40を貫通し、燃料タンク12内から燃料タンク12外に伸びている。本実施例では、出力合成回路38を燃料タンク12内に配置することで、蓋部材40を貫通する配線の本数を削減している。出力合成回路38の詳細な構成については、後で詳述する。
【0026】
なお、燃料メータ52は、CPU48と表示器50を有している。CPU48には、出力合成回路38から出力されるアナログ信号が入力される。CPU48は、出力合成回路38から入力されるアナログ信号から燃料タンク12内に貯留される燃料量を特定し、その特定した燃料量を表示器50に表示する。CPU48及び表示器50は、従来公知の燃料メータにおけるそれぞれと同様に構成することができる。
【0027】
次に、磁気センサユニット41,31と出力合成回路38について詳細に説明する。図2に示すように、磁気センサユニット41,31からの信号は出力合成回路38に入力され、出力合成回路38で処理された信号が燃料メータ52に入力される。まず、磁気センサユニット41,31について説明する。
【0028】
磁気センサユニット41,31は、磁気センサと、磁気センサからの信号を変換する変換部を備えている。磁気センサは、ロータ45又は55の回転角(すなわち、アーム部材34又は26の回転角)を検出する磁気式のセンサであって、例えば、ホール素子を利用した公知のセンサを用いることができる。磁気センサは、ロータ45又は55の回転角に応じた出力信号(アナログ信号)を出力する。
【0029】
変換部は、磁気センサから入力される出力信号(アナログ信号)を、メイン貯留部14又はサブ貯留部16内に貯留される燃料量に応じたアナログ信号に変換する。具体的には、変換部は、磁気センサからの出力信号(アナログ信号)をメイン貯留部14又はサブ貯留部16内に貯留される燃料の燃料量(詳細には、各貯留部14,16の容量に対する燃料の比率(%))に変換するテーブルデータを備えている。すなわち、磁気センサからの出力信号(アナログ信号)の電圧値は、ロータ45又は55の回転角によって変化する。ロータ45又は55の回転角は、アーム部材34又は26の回転角である。このため、ロータ45又は55の回転角は、メイン貯留部14又はサブ貯留部16内に貯留される燃料の液位によって変化する。メイン貯留部14又はサブ貯留部16の形状(横断面形状)は既知であることから、メイン貯留部14又はサブ貯留部16内に貯留される燃料の液位が分かれば、メイン貯留部14又はサブ貯留部16内に貯留される燃料の燃料量を特定することができる。したがって、変換部は、「磁気センサの出力信号(電圧値)」を「メイン貯留部14又はサブ貯留部16の燃料量(詳細には、メイン貯留部14又はサブ貯留部16の容量に対する比率(%))」に変換するためのテーブルデータを用いて、磁気センサの出力信号(アナログ信号)を、メイン貯留部14又はサブ貯留部16内に貯留される燃料量に応じたアナログ信号に変換する。例えば、各貯留部14又は16が燃料で満たされている場合は、変換部は燃料量が100%であることを示す電位の信号に変換する。一方、各貯留部14又は16に燃料が全く貯留されていない場合は、変換部は0%であることを示す電位の信号に変換する。変換部で変換されたアナログ信号は、出力合成回路38に出力される。なお、上述の説明から明らかなように、テーブルデータは貯留部14又は16の形状によって変化する。このため、磁気センサユニット41には、メイン貯留部14の形状に応じて予め作成されたテーブルデータが記憶され、一方、磁気センサユニット31には、サブ貯留部16の形状に応じて予め作成されたテーブルデータが記憶される。
【0030】
ここで、後述するように本実施例では、出力合成回路38が反転増幅回路62を備えている。このため、磁気センサユニット41,31から出力される信号は、出力合成回路38で反転された後に燃料メータ52に入力されることとなる。そこで、燃料メータ52に公知のものを使用するために、磁気センサユニット41,31の変換部は、反転した信号を出力合成回路38に出力するように構成されている。すなわち、従来技術では、図3(a)に示すように、貯留部が燃料で満たされている場合の出力信号の電圧が[Vmax](例えば、4.5V)となる一方、貯留部に燃料が全く貯留されていない場合の出力信号の電圧が[Vmin](例えば、0V)となるように設定されている。すなわち、磁気センサユニットから出力される信号のレンジがVmax〜Vminの場合、満タンのときにVmaxとなり、空のときにVminとなるように設定される。しかしながら、本実施例の磁気センサユニット41,31では、図3(b)に示すように、貯留部14,16が燃料で満たされている場合の出力信号の電圧が[Vmin](例えば、0V)となる一方、貯留部14,16に燃料が全く貯留されていない場合の出力信号の電圧が[Vmax](例えば、4.5V)となるように設定される。これによって、出力合成回路38からの信号が従来と同様の信号となり、従来と同様の燃料メータ52を使用可能とする。
【0031】
次に、出力合成回路38について説明する。図2に示すように出力合成回路38は、磁気センサユニット41,31からの信号(アナログ信号)を補正して加算する補正加算回路60と、補正加算回路60からの信号を反転して増幅する反転増幅回路62を備えている。
【0032】
補正加算回路60は、磁気センサユニット41からの出力信号(アナログ信号)をメイン貯留部14の容量に応じて補正すると共に、磁気センサユニット31からの出力信号(アナログ信号)をサブ貯留部16の容量に応じて補正して加算する。すなわち、上述したように、磁気センサユニット41と磁気センサユニット31は同一構成を有しており、磁気センサユニット41からの出力信号(アナログ信号)のレンジは、磁気センサユニット31からの出力信号(アナログ信号)のレンジと同一とされている。その一方、メイン貯留部14の容量とサブ貯留部16の容量とは異なる。このため、磁気センサユニット41からの出力信号(アナログ信号)と、磁気センサユニット31からの出力信号(アナログ信号)とをそのまま加算すると、燃料タンク12の燃料量を正確に算出することはできない。そこで、第1燃料量検出器36(磁気センサユニット41)から出力される信号のスケール(単位燃料量当りの出力電圧値)と、第2燃料量検出器22(磁気センサユニット31)から出力される信号のスケール(単位燃料量当りの出力電圧値)とが同一となるように補正される。
【0033】
例えば、メイン貯留部14で最大燃料量Q1が貯留可能とされ、サブ貯留部16で最大燃料量Q2が貯留可能とされている場合に、第1燃料量検出器36から出力される信号を係数(Q1/(Q1+Q2))により重み付けしたものとし、第2燃料量検出器22から出力される信号を係数(Q2/(Q1+Q2))により重み付けしたものとする。このような方法によると、第1燃料量検出器36と第2燃料量検出器22から出力される信号のスケールが同一となり、両者の信号を加算することで燃料タンク12に貯留されている燃料量を特定することができる。
【0034】
あるいは、図2に示すように構成してもよい。図2に示す補正加算回路60は、磁気センサユニット41からの信号出力ライン44bが抵抗R1を介して接続点64に接続され、磁気センサユニット31からの信号出力ライン44cが抵抗R2を介して接続点64に接続される。接続点64は、反転増幅回路62を介して燃料メータ52の入力端子に接続される。したがって、接続点64の電圧Voutは、磁気センサユニット41からの出力信号の電圧V1と磁気センサユニット31からの出力信号の電圧V2を抵抗R1,R2で按分した値となる。すなわち、接続点64の電圧Voutは、V2+(V1−V2)×R2/(R1+R2)=R2×V1/(R1+R2)+R1×V2/(R1+R2)となる。したがって、抵抗R1をサブ貯留部16の容量比(サブ貯留部16の容量/燃料タンク12の容量)に応じた抵抗値とし、抵抗R2をメイン貯留部14の容量比(メイン貯留部14の容量/燃料タンク12の容量)に応じた抵抗値とする。これによって、補正加算回路60からの出力信号の電圧Vout(接続点64の電圧)が、燃料タンク12の燃料量に応じた値となる。
【0035】
具体例として、メイン貯留部14の容量が30リットルであり、サブ貯留部16の容量が20リットルである場合を説明する。この場合に、磁気センサユニット41,31の出力信号のレンジを0〜4.5Vとする。そして、メイン貯留部14に燃料が20Lだけ貯留されており、サブ貯留部16に燃料が10Lだけ貯留されており、燃料タンク12には燃料が30Lだけ貯留されているものとする。この場合、磁気センサユニット41から出力される信号は4,5×20/30=3.0Vであり、磁気センサユニット31から出力される信号は4,5×10/20=2.25Vとなる。上述したように、抵抗R1をサブ貯留部16の容量比に応じた抵抗値(例えば、2kΩ)とし、抵抗R2をメイン貯留部14の容量比に応じた抵抗値(例えば、3kΩ)とすると、補正加算回路60からの出力信号の電圧Vout(接続点64の電圧)は、(3/5)×3.0+(2/5)×2.25=2.7Vとなる。したがって、出力電圧Voutが2.7Vとなり、燃料タンク12に貯留されている燃料が60%(=2.7/4.5)、すなわち、30Lを貯留していること(正しい燃料量)が示される。
【0036】
なお、メイン貯留部14の容量とサブ貯留部16の容量が同一である場合、抵抗R1と抵抗R2が同一の抵抗値となる。このため、補正加算回路60から出力される信号Voutは、磁気センサユニット41からの出力信号の電圧V1と磁気センサユニット31からの出力信号の電圧V2の平均値1/2×(V1+V2)となる。
【0037】
反転増幅回路62は、補正加算回路60から出力される信号Voutを反転して増幅し、その反転増幅した信号を燃料メータ52に出力する。上述したように、磁気センサユニット41,31から出力される信号は反転して出力されている(図3(b)に示す状態)。したがって、反転増幅回路62が補正加算回路60から出力される信号Voutを反転することで、燃料メータ52に入力される信号は反転前の状態(図3(a)に示す状態)に戻される。
【0038】
また、本実施例では、磁気センサユニット41,31と燃料メータ52の間に補正加算回路60(抵抗R1,R2)が配置される。このため、磁気センサユニット41,31と燃料メータ52の間に補正加算回路60を配置しない場合と比較して、そのままでは燃料メータ52に入力される信号の電圧が低下する。すなわち、磁気センサユニット41,31から出力される信号のレンジと、燃料メータ52に入力される信号のレンジが変化し、そのままでは燃料メータ52に正しく燃料量が表示されない。
【0039】
そこで、本実施例では、補正加算回路60から出力される信号を反転して増幅することで、燃料メータ52に入力される信号を反転前の状態(図3(a)に示す状態)に戻すと共に、磁気センサユニット41,31から出力される信号のレンジと、燃料メータ52に入力される信号のレンジとが一致するように増幅する。これによって、燃料メータ52を従来と同一の構成としても、燃料タンク12内の燃料量を燃料メータ52に正しく表示することが可能となる。
【0040】
具体的には、反転増幅回路62は、図2に示すように、オペアンプ66を備えている。オペアンプ66の−入力端子には接続点64が接続され、補正加算回路60からの出力信号Voutが入力される。オペアンプ66の−入力端子にはさらに、オペアンプ66の出力端子が抵抗R5を介して接続される。オペアンプ66の+入力端子には、電源電圧Vddを抵抗R7,R8で按分した電圧が入力される。オペアンプ66の出力端子は、抵抗R6を介して燃料メータ52に接続される。したがって、補正加算回路60からの出力信号Voutはオペアンプ66により反転増幅されて燃料メータ52に入力されることとなる。このため、抵抗R5〜R8を適切に設定することで、磁気センサユニット41,31から出力される信号のレンジと、燃料メータ52に入力される信号のレンジとが一致する。
【0041】
上述の説明から明らかなように、本実施例の燃料量検出装置10は、第1燃料量検出器36によりメイン貯留部14の燃料量を検出し、第2燃料量検出器22によりサブ貯留部16の燃料量を検出し、出力合成回路38でこれらを合算して燃料メータ52に出力する。このため、燃料検出装置10と燃料メータ52を接続する信号出力ラインを1本とすることができる。
【0042】
また、本実施例の燃料量検出装置10では、反転増幅回路62によって、燃料メータ52に入力する信号のレンジが磁気センサユニット41,31から出力される信号のレンジと同一となるように増幅される。このため、燃料メータ52から見ると、燃料メータ52に1台の燃料量検出器が接続された状態と同一の状態となる。したがって、燃料タンク12に複数の燃料量検出器が設置されたとしても、燃料メータ52の構成を変更する必要を無くすことができる。
【0043】
最後に本実施例の構成と請求項の記載との対応関係を記載しておく。出力合成回路38の抵抗R1,R2が「補正回路」の一例であり、抵抗R1,R2と接続点64を接続する配線及び反転増幅回路62が「出力回路」の一例である。また、抵抗R1,R2と接続点64を接続する配線が「加算部」の一例であり、反転増幅回路62が「反転増幅部」の一例である。
【0044】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
【0045】
例えば、上述した実施例では、燃料量検出器36,22から出力される信号を抵抗R1,R2で補正することで、メイン貯留部14の容量とサブ貯留部16の容量に応じた信号としたが、本明細書に開示の技術は、このような例に限られない。例えば、磁気センサユニット41,31において、貯留部14,16に貯留される燃料の燃料量に直接変換して信号を出力するようにしてもよい。このような構成を採る場合、磁気センサユニット41,31に記憶されるテーブルデータを対応する貯留部14,16の形状に応じたデータとするだけでよい。なお、この場合、磁気センサユニット41,31内に「補正回路」が内蔵されることとなる。
【0046】
また、上述した実施例では、磁気センサユニット41,31とは別に設けられた出力合成回路38に、磁気センサユニット41,31からの信号を補正する抵抗R1,R2を設けたが、本明細書に開示の技術は、このような例に限られない。例えば、図4に示すように、磁気センサユニット41が実装される基板70に補正用の抵抗R1を実装し、磁気センサユニット31が実装される基板76に補正用の抵抗R2を実装してもよい。あるいは、図5に示すように、磁気センサユニット41が実装される基板70に補正用の抵抗R1,R2を実装し、磁気センサユニット31が実装される基板76には補正用の抵抗を実装しなくてもよい。
【0047】
また、上述した実施例では、鞍型の燃料タンク12に設置した燃料量検出装置について説明したが、本明細書に開示の技術は、このような例に限られない。例えば、独立した複数の燃料タンクに燃料を貯留するような場合にも適用することができる。この場合、各燃料タンクに燃料量検出器が配設され、これらの検出結果が出力合成回路を介して燃料メータに出力される。
【0048】
また、上述した実施例では、燃料タンク12に2つの貯留部14,16が設けられ、これら貯留部14,16に燃料量検出器36,22が配設されたが、燃料タンクには3以上の貯留部が設けられてもよい。この場合、貯留部毎に燃料量検出器を配設し、各燃料量検出器からの出力信号が加算器に入力し、加算器において合算すればよい。
【0049】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0050】
10:燃料量検出装置
12:燃料タンク
14:メイン貯留部
16:サブ貯留部
22,36:燃料量検出器
38:出力合成回路
図1
図2
図3
図4
図5