特許第6180931号(P6180931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6180931癌の診断および/または予後のための新規な抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180931
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】癌の診断および/または予後のための新規な抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20170807BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170807BHJP
   C12N 5/16 20060101ALI20170807BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20170807BHJP
   C12N 15/02 20060101ALI20170807BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20170807BHJP
   C40B 30/04 20060101ALI20170807BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 33/577 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 33/532 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C07K16/30ZNA
   C12N15/00 A
   C12N5/16
   C12P21/08
   C12N15/00 C
   C12M1/34 F
   C40B30/04
   C12Q1/02
   G01N33/53 D
   G01N33/577 B
   G01N33/574 A
   G01N33/532 A
   G01N33/53 Y
   G01N33/48 P
   G01N33/15 Z
   G01N33/50 Z
【請求項の数】25
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2013-517276(P2013-517276)
(86)(22)【出願日】2011年6月29日
(65)【公表番号】特表2013-539355(P2013-539355A)
(43)【公表日】2013年10月24日
(86)【国際出願番号】EP2011060930
(87)【国際公開番号】WO2012007280
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年6月27日
(31)【優先権主張番号】61/359,623
(32)【優先日】2010年6月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10305703.0
(32)【優先日】2010年6月29日
(33)【優先権主張国】EP
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4246
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4247
(73)【特許権者】
【識別番号】500033483
【氏名又は名称】ピエール、ファーブル、メディカマン
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ、ジュアンオー
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 GOETSCH LILIANE,BIOMARKERS IN MEDICINE,FUTURE MEDICINE LTD,2010年 2月 1日,V4 N1,P149-170
【文献】 Patrick C. MA,Cancer Res,2005年,Vol.65, No.4,Pages 1479-1488
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍上にて、cMetのリガンド非依存性活性化形態に結合する単離された抗体またはその機能性断片であって、
a)
− IMGTに従って定義される以下の3つのCDR、それぞれ、配列番号1の配列を有するCDR−L1、配列番号2の配列を有するCDR−L2、および配列番号3の配列を有するCDR−L3、を含む軽鎖;ならびに、
− IMGTに従って定義される以下の3つのCDR、それぞれ、配列番号4の配列を有するCDR−H1、配列番号5の配列を有するCDR−H2、および配列番号6の配列を有するCDR−H3、を含む重鎖、
を有する抗体またはその機能性断片、または、
b)
− IMGTに従って定義される以下の3つのCDR、それぞれ、配列番号9の配列を有するCDR−L1、配列番号10の配列を有するCDR−L2、および配列番号11の配列を有するCDR−L3、を含む軽鎖;ならびに、
− IMGTに従って定義される以下の3つのCDR、それぞれ、配列番号12の配列を有するCDR−H1、配列番号13の配列を有するCDR−H2、および配列番号14の配列を有するCDR−H3、を含む重鎖、
を有する抗体またはその機能性断片、
から選択されることを特徴とする、単離された抗体またはその機能性断片。
【請求項2】
i)cMetの非活性化形態および/またはリガンド依存性活性化形態に結合しないこと;ならびに、所望により、
ii)リガンドHGFのcMetへの結合をブロックしないこと;ならびに、所望により、
iii)アミノ酸残基1から950までのcMetの細胞外領域と相互作用を起こすこと、
を特徴とする、請求項1に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項3】
a) 配列番号7のアミノ酸配列を有する配列の軽鎖可変ドメイン、および配列番号8のアミノ酸配列を有する配列の重鎖可変ドメインを含む抗体またはその機能性断片;または、
b) 配列番号15のアミノ酸配列を有する配列の軽鎖可変ドメイン、および配列番号16のアミノ酸配列を有する配列の重鎖可変ドメインを含む抗体またはその機能性断片、から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体を分泌する能力を有するマウスハイブリドーマであって、前記マウスハイブリドーマは、2009年11月18日に、パリのパスツール研究所、CNCMにI−4247の番号で寄託されたハイブリドーマ、および2009年11月18日に、パリのパスツール研究所、CNCMにI−4246の番号で寄託されたハイブリドーマから選択される、マウスハイブリドーマ。
【請求項5】
腫瘍上にて、i)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合しない、2009年11月18日に、パリのパスツール研究所、CNCMにI‐4247の番号で寄託されたハイブリドーマ、もしくは2009年11月18日に、パリのパスツール研究所、CNCMにI‐4246の番号で寄託されたハイブリドーマ、またはこれらのサブクローンから得られるモノクローナル抗体。
【請求項6】
単離された核酸であって、それは、以下の核酸:
a) 請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載の抗体をコードする核酸;
) 配列番号33および34、または41および42の配列を含む核酸;
)に定める前記核酸の対応するRNA;ならびに、
) a)および)に定める前記核酸の相補核酸、
から選択されることを特徴とする、単離された核酸。
【請求項7】
cMetのリガンド非依存性活性化形態の識別のための、請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはそれらの機能性断片を含む剤。
【請求項8】
サンプル中にて、cMetのリガンド非依存性活性化形態と、cMetの非活性化もしくはリガンド依存性活性化形態を含むcMetのその他の形態とを区別するための方法であって、該方法は:
a) 前記サンプルを、請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載の抗体またはそれらの機能性断片と接触させる工程、ならびに、
b) 前記結合タンパク質もしくは抗体の前記サンプルとの結合を検出する工程、
を含む、方法。
【請求項9】
請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載の抗体またはそれらの機能性断片を含む、cMetのリガンド非依存性活性化形態に関連する発癌性障害を生体外にて診断するための、または前記cMetのリガンド非依存性活性化形態に関連する発癌性障害の発症についての予後を免疫標識によって判定するための、剤。
【請求項10】
請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載の抗体またはそれらの機能性断片を含み、対象中にて、cMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する腫瘍の存在および/または位置を、免疫標識によって検出する方法に用いられる剤であって、ここで、前記方法は:
a) 前記対象からのサンプルを、前記抗体またはそれらの機能性断片と接触させる工程、ならびに、
b) 前記抗体の前記サンプルとの結合を検出する工程、
を含む、剤。
【請求項11】
請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載の抗体またはそれらの機能性断片を含み、対象からのcMet発現腫瘍中のcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルを免疫標識によって測定する方法に用いられる剤であって、ここで、前記方法は:
a) 前記対象からのサンプルを、前記抗体またはそれらの機能性断片と接触させる工程、ならびに、
b) 前記サンプル中にて、cMetのリガンド非依存性活性化形態へ結合する抗体のレベルを定量する工程、
を含む、剤。
【請求項12】
前記cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルが、免疫組織化学分析(IHC)によって測定される、請求項11に記載の剤。
【請求項13】
請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載の抗体またはそれらの機能性断片を含み、対象において、cMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する腫瘍を免疫標識によって診断するための、またはcMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する腫瘍の発症についての予後を免疫標識によって判定するための方法に用いられる剤であって、前記方法は:
a) 請求項11に記載の前記cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルを測定する工程、ならびに、
b) 工程a)の前記発現レベルを、正常組織からのcMetのリガンド非依存性活性化形態のレファレンス発現レベルと比較する工程、
を含む、剤。
【請求項14】
請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載の抗体またはそれらの機能性断片を含み、対象における腫瘍のcMetのリガンド非依存性活性化形態の状態を免疫標識によって判定する方法に用いられる剤であって、ここで、前記方法は:
a) 請求項11に記載のcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルを測定する工程、
b) cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルについて、前記腫瘍のスコア付けを行う工程、ならびに、
c)前記スコアをコントロールサンプルから得られたものと比較する工程、
を含む、剤。
【請求項15】
請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載の抗体またはそれらの機能性断片を含み、抗−cMetのリガンド非依存性活性化形態結合タンパク質もしくは抗体またはその断片による治療に対して、発癌性障害が感受性を有するかどうかを判定する方法に用いられる剤であって、ここで、前記方法は:
a) 請求項11に記載の対象における腫瘍の前記cMetのリガンド非依存性活性化形態の状態を免疫標識によって判定する工程、ならびに、
b)前記状態が、cMetのリガンド非依存性活性化形態(+)である場合、前記発癌性障害は、抗−cMetのリガンド非依存性活性化形態結合タンパク質もしくは抗体またはその断片による治療に対して感受性を有すると判定する工程、
を含む、剤。
【請求項16】
請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載の抗体またはそれらの機能性断片を少なくとも含み、前記抗体は標識されている、キット。
【請求項17】
対象におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する腫瘍の存在および/または位置を免疫標識によって検出するための請求項16に記載のキットであって、前記キットは、さらに、前記標識された抗体とcMetのリガンド非依存性活性化形態との結合の度合いを検出するのに有用である試薬を含む、キット。
【請求項18】
請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載の抗体またはそれらの機能性断片を含む、cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合することができる結合タンパク質の識別のための剤。
【請求項19】
cMetのリガンド非依存性活性化形態に対する結合パートナーを識別する方法であって、
a) 前記cMetのリガンド非依存性活性化形態を、請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載の抗体またはそれらの機能性断片と接触させる工程;
b) a)の複合体を、化合物ライブラリと接触させる工程、
c) a)の複合体を分解する化合物を識別する工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項20】
cMetのリガンド非依存性活性化形態を精製するための方法であって、それは、以下の工程:
a) 請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載の抗体またはそれらの機能性断片を、サンプルと共に、前記抗体と前記cMetのリガンド非依存性活性化形態との特異的結合を可能とする条件下にてインキュベートする工程;ならびに、
b) 前記サンプルから前記抗体を分離し、精製された前記cMetのリガンド非依存性活性化形態を得る工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項21】
請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載の抗体またはそれらの機能性断片とcMetのリガンド非依存性活性化形態との結合によって形成される複合体。
【請求項22】
生物活性化合物を、cMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する細胞へ特異的に標的化するための、請求項1、2、3、および5のいずれか一項に記載の抗体またはそれらの機能性断片を含む剤。
【請求項23】
i)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの非活性化形態および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合しない抗体またはその機能性断片を作製するための方法であって、前記方法は、それが:
a) cMetタンパク質またはその断片を発現するトランスフェクトされた細胞株、または腫瘍細胞株により、マウスを免疫化する工程;
b) 抗体産生細胞を前記マウスから取り出す工程;
c) 前記抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を得る工程;
d) スクリーニングアッセイを行って、i)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合しない抗体を産生するハイブリドーマ細胞を選別する工程;
e) 前記選別されたハイブリドーマを、前記抗体を産生する細胞培養液中にて培養する工程;ならびに、
f) 前記細胞培養液から前記抗体を取り出す工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項24】
工程d)の前記スクリーニングアッセイが、IHCスクリーニングアッセイから成る、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記IHCスクリーニングアッセイが:
a) 異なる形態のcMetを発現する腫瘍から組織セクションを採取する工程、
b) 請求項23の工程c)に記載のハイブリドーマ細胞を用いて、工程a)の前記異なる組織セクションに対して同時にIHC染色を施す工程、
c) 前記cMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する組織セクション上では特異的な反応性を有し、その他の組織セクション上では反応性を有さないハイブリドーマ細胞を選別する工程、
を含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者における増殖性疾患の予後および/または診断の分野に関する。より詳細には、本発明は、ヒトcMet受容体へ特異的に結合する能力を有する新規な抗体、ならびにこれらの抗体をコードするアミノ酸および核酸配列に関する。本発明は、さらに、cMetの発現に関連する病理学的過剰増殖性発癌性障害の検出および診断のための前記抗体の使用、ならびに対応する方法を含む。特定の実施形態では、このような障害は、正常時と比較して増加したcMetポリペプチドの発現に関連する発癌性障害、またはcMetの過剰発現と関係するその他のいずれかの病態である。最後に、本発明は、特定の癌の予後または診断のためのそのような抗体を少なくとも含む、製品、および/または組成物、またはキットを含む。
【背景技術】
【0002】
トラスツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、イマチニブ、およびゲフィチニブ阻害剤などの受容体チロシンキナーゼ(RTK)を標的とする剤により、選択された癌の治療のためにこの種類のタンパク質を標的とすることの重要性が示されてきた。
【0003】
cMetは、RONおよびSEAも含むRTKのサブファミリーのプロトタイプメンバーである。cMet RTKファミリーは、その他のRTKファミリーと構造的に異なり、散乱係数(SF)とも称される肝細胞増殖因子(HGF)に対する公知の唯一の高親和性受容体である[非特許文献1;非特許文献2]。cMetおよびHGFは、様々な組織中にて広く発現され、それらの発現は通常、それぞれ、上皮および間葉系由来の細胞に限定される[非特許文献3;非特許文献4]。これらはいずれも、正常な哺乳類の発達に必要とされ、細胞遊走、形態形成分化、および三次元細管構造の組織化、ならびに成長および血管新生において特に重要であることが示されている[非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7]。cMetおよびHGFの制御された調節は、哺乳類の発達、組織の維持、および修復において重要であることが示されている一方[非特許文献8;非特許文献9]、それらの調節不全は、癌の進行と関係付けられている。
【0004】
cMetの不適切な活性化によって進められる異常シグナル伝達は、ヒトの癌において最もよく見られる変化の1つであり、腫瘍形成および転移において極めて重要な役割を担っている[非特許文献10;非特許文献11]。
【0005】
cMetの不適切な活性化は、cMetの過剰発現を含むリガンド依存性および非依存性のメカニズムにより、および/またはパラ分泌もしくは自己分泌活性化により、または機能獲得型変異(gain in function mutation)を介して発生し得る[非特許文献12]。しかし、ATPおよびチロシン含有ペプチド基質に対するキナーゼの結合親和性および結合動態を調節するためには、リガンドの存在下または非存在下におけるcMet受容体のオリゴマー化が必要である[非特許文献13]。活性化されたcMetは、シグナル伝達エフェクターを、細胞質ドメインに位置するそのマルチドッキング部位に動員し、その結果、Ras‐MAPK、PI3K、Src、およびStat3を含む複数の重要なシグナル伝達経路が活性化される[非特許文献14]。これらの経路は、腫瘍細胞の増殖、浸潤、および血管新生、ならびにアポトーシスの回避に不可欠である[非特許文献15;非特許文献16]。加えて、他のRTKと比較したcMetのシグナル伝達の独特の一面は、接着斑複合体、およびα6β4インテグリン[非特許文献17]、プレキシンB1、またはセマフォリン[非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20]などの非キナーゼ結合パートナーとのその報告された相互作用であり、このことにより、この受容体による細胞機能の調節の複雑性がさらに増加し得る。最後に、最近のデータは、cMetが、ゲフィチニブまたはエルロチニブに対する腫瘍の耐性に関与している可能性を示しており、このことは、EGFRおよびcMetの両方を標的とする化合物の組み合わせが非常に重要である可能性を示唆している[非特許文献21]。
【0006】
ここ数年の間に、癌細胞株におけるcMetシグナル伝達を弱化するための多くの様々な戦略が開発されてきた。このような戦略には、i)cMetまたはHGF/SFに対する中和抗体[非特許文献22;非特許文献23]またはHGF/SFアンタゴニストNK4の使用によるcMetへのリガンド結合の阻害[非特許文献24]、ii)キナーゼ活性を遮断するcMetに対する低分子ATP結合部位阻害剤[非特許文献25]、iii)マルチドッキング部位へのアクセスに干渉する組換えSH2ドメインポリペプチド、および受容体もしくはリガンド発現を低下させるRNAiまたはリボザイム、が含まれる。これらの手法のほとんどは、cMetの選択的な阻害を示して、腫瘍の阻害という結果が得られており、このことは、cMetが癌の治療的介入において重要であり得ることを示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】D.P. Bottaro et al., Science 1991, 251:802-804
【非特許文献2】L. Naldini et al., Eur. Mol. Biol. Org. J. 1991, 10:2867-2878
【非特許文献3】M.F. Di Renzo et al., Oncogene 1991, 6:1997-2003
【非特許文献4】E. Sonnenberg et al., J. Cell. Biol. 1993, 123:223-235
【非特許文献5】F. Baldt et al., Nature 1995, 376:768-771
【非特許文献6】C. Schmidt et al., Nature. 1995:373:699-702
【非特許文献7】Tsarfaty et al., Science 1994, 263:98-101
【非特許文献8】Nagayama T et al., Brain Res. 2004, 5;999(2):155-66
【非特許文献9】Tahara Y et al., J Pharmacol Exp Ther. 2003, 307(1):146-51
【非特許文献10】Birchmeier et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2003, 4:915-925
【非特許文献11】L. Trusolino and Comoglio P.M., Nat Rev. Cancer. 2002, 2(4):289-300
【非特許文献12】J.G. Christensen, Burrows J. and Salgia R., Cancer Latters. 2005, 226:1-26
【非特許文献13】Hays JL et al., Biochemistry, 2004 Aug 17, 43:10570-8
【非特許文献14】Gao CF et al., Oncogene. 2000, 19(49):5582-9
【非特許文献15】Furge KA et al., Trends Cell Biol. 2003 Mar, 13(3):122-30
【非特許文献16】Fan S et al., Oncogene. 2000 Apr 27, 19(18) : 2212-23
【非特許文献17】Trusolino L et al., J Biol Chem. 1999, 274(10):6499-506
【非特許文献18】Giordano S et al., Nat Cell Biol. 2002, 4(9):720-4
【非特許文献19】Conrotto P et al., Blood. 2005, 105(11):4321-9
【非特許文献20】Conrotto P, Corso S, Gamberini S, Comoglio PM, Giordano S, Oncogene. 2004, 23:5131-7
【非特許文献21】Engelman JA at al., Science, 2007, 316: 1039-43
【非特許文献22】Cao B et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2001, 98(13):7443-8
【非特許文献23】Martens T et al., Clin Cancer Res. 2006, 12(20):6144-52
【非特許文献24】Kuba K et al., Cancer Res., 2000, 60:6737-43
【非特許文献25】Christensen JG et al., Cancer Res. 2003, 63 : 7345-55
【発明の概要】
【0008】
本発明は、発癌性障害、特にcMetの発現を特徴とする障害、またはcMetの異常発現によって媒介される障害の検出および/またはモニタリングのための診断または予後バイオマーカーとして用いることができる少なくとも1つの試薬を提供することを目的とする。
【0009】
本明細書では、この基準を満たす新規な抗体について記載する。
【0010】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な記述および例から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第一の態様では、本発明の主題は、cMetタンパク質(cMet)、好ましくはヒトcMetのリガンド非依存性活性化形態へ高い親和性で特異的に結合し、従って、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現によって媒介される病理学的過剰増殖性発癌性障害を診断するための方法に有用であり得る結合タンパク質、またはその機能性断片もしくは誘導体である
【0012】
リガンド非依存性活性化は、i)cMetの過剰発現の場合にHGFの非存在下にて発生する受容体の二量体化(通常はcMet遺伝子の増幅と繋がっている)、またはii)cMetの細胞内ドメイン内での活性化突然変異、またはiii)これらの両方へと続く、cMetの構成的リン酸化に関連する。
【0013】
第一の態様では、本発明は、腫瘍上にて、i)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの(1もしくは複数の)非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合しない、結合タンパク質、またはその機能性断片もしくは誘導体に関する。
【0014】
「結合タンパク質」の表現は、別のタンパク質または分子との特異的なまたは全般的な親和性を有するいずれかのペプチド鎖のことであると理解される必要がある。タンパク質が接触され、結合が可能である場合は、複合体を形成する。本発明の結合タンパク質は、限定されないが、好ましくは、抗体、抗体の断片もしくは誘導体、タンパク質、またはペプチドであってよい。
【0015】
「(1もしくは複数の)機能性断片および/または(1もしくは複数の)誘導体」の表現は、本明細書にて後に詳細に定義される。
【0016】
「腫瘍上にて」の表現は、本発明に従う結合タンパク質の報告された特性が、生体内の腫瘍環境下にて存在し、生体外の例だけではないということであると理解される必要がある。より詳細には、以下の実施例から明らかであるように、それらは、天然の環境に可能な限り近い環境を表すエキソビボ実験、または市販の組織マイクロアレイ(TMA)によるヒト腫瘍の分析によって実証された。
【0017】
本発明は、天然の形態のタンパク質に関するものではないこと、すなわち、それらは、その天然環境には存在せず、天然源からの精製による単離もしくは取得、またはそれ以外では遺伝子組換えによる、もしくは化学合成による取得が可能であり、従ってそれらは、続いてさらに記載されるように、非天然アミノ酸を含有し得ることは、本明細書にて理解される必要がある。
【0018】
本発明の実施形態によると、前述のように、リガンド肝細胞増殖因子(HGF)のcMetへの結合を遮断しない、結合タンパク質、またはその機能性断片もしくは誘導体が開示される。
【0019】
より詳細には、本発明の結合タンパク質、またはその機能性断片もしくは誘導体は、アミノ酸残基1から950のcMetの細胞外領域と相互作用する。
【0020】
第一の実施形態によると、本発明は、少なくとも配列番号1、2、3、4、5、6、17、18、19、20、もしくは21を含む配列のCDRの中から選択される少なくとも1つのCDR、または、その配列が、最適アライメント後に、配列番号1、2、3、4、5、6、17、18、19、20、もしくは21の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する少なくとも1つのCDRを含む、結合タンパク質、またはその機能性断片もしくは誘導体に関する。
【0021】
第二の実施形態によると、本発明は、少なくとも配列番号9、10、11、12、13、14、22、23、24、25、もしくは26を含む配列のCDRの中から選択される少なくとも1つのCDR、または、その配列が、最適アライメント後に、配列番号9、10、11、12、13、14、22、23、24、25、もしくは26の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する少なくとも1つのCDRを含む、結合タンパク質、またはその機能性断片もしくは誘導体に関する。
【0022】
抗体の「機能性断片」とは、特に、断片Fv、scFv(sc=単鎖(simple chain))、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv‐Fcもしくは二重特異性抗体、またはその半減期が延長されたいずれかの断片などの抗体断片を意味する。そのような機能性断片は、本明細書にて後に詳細に記述される。
【0023】
抗体の「誘導化合物」または「誘導体」とは、特に、ペプチド骨格、およびその認識される能力を保存するための元の抗体のCDRの少なくとも1つからなる結合タンパク質を意味する。当業者に公知であるそのような誘導化合物は、本明細書にて後により詳細に記述される。
【0024】
第一の実施形態において、本発明の結合タンパク質、またはその機能性断片もしくは誘導体は、配列番号1〜6の配列からなる群より選択される少なくとも1つのCDRを含む抗原結合ドメインを含む。
【0025】
別の実施形態において、本発明の結合タンパク質、またはその機能性断片もしくは誘導体は、配列番号9〜14の配列からなる群より選択される少なくとも1つのCDRを含む抗原結合ドメインを含む。
【0026】
さらに、本発明の好ましい実施形態では、前記結合タンパク質、またはその機能性断片もしくは誘導体は、単離された抗体からなる。
【0027】
より好ましくは、本発明は、遺伝子組換えまたは化学合成によって得られた、本発明に従う抗体、その誘導化合物、またはその機能性断片を含む。
【0028】
好ましい実施形態によると、本発明に従う抗体、またはその誘導化合物もしくは機能性断片は、それがモノクローナル抗体からなることを特徴とする。
【0029】
「モノクローナル抗体」とは、ほぼ均質である抗体集団に由来する抗体を意味するものとして理解される。より詳細には、集団の個々の抗体は、最小限の割合で見出され得る数個の天然の突然変異の可能性を除いて同一である。言い換えると、モノクローナル抗体は、単一の細胞クローン(例えば、ハイブリドーマ、均質な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた真核宿主細胞、均質な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた原核宿主細胞など)の成長に由来する均質な抗体から成り、一般的には、唯一つのクラスおよびサブクラスの重鎖、ならびに唯一つのタイプの軽鎖を特徴とする。モノクローナル抗体は、高い特異性を有し、単一の抗原に対して指向される。加えて、種々の決定因子またはエピトープに対して指向される種々の抗体を通常は含むポリクローナル抗体の製剤とは対照的に、モノクローナル抗体の各々は、抗原の単一エピトープに対して指向される。
【0030】
本発明は、天然の形態の抗体に関するものではないこと、すなわち、それらは、その天然環境から入手されるものではなく、天然源からの精製によって単離もしくは取得されるか、または遺伝子組換えによって、もしくは化学合成によって取得され、従ってそれらは、以下に記載されるように、非天然アミノ酸を有し得ることは、本明細書にて理解される必要がある。
【0031】
より詳細には、本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つは、それが、配列番号1、2、3、17、18の配列のCDRの少なくとも1つ、または、最適アライメント後に、配列番号1、2、3、17、18の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する少なくとも1つの配列を含む軽鎖を有することを特徴とする。
【0032】
さらにより好ましくは、本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つは、それが、それぞれCDR‐L1、CDR‐L2、およびCDR‐L3である以下の3つのCDRを含む軽鎖を有することを特徴とし、ここで:
− CDR‐L1は、配列番号1もしくは17の配列、または最適アライメント後に、配列番号1もしくは17の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含み;
− CDR‐L2は、配列番号2もしくは18の配列、または最適アライメント後に、配列番号2もしくは18の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含み;ならびに、
− CDR‐L3は、配列番号3の配列、または最適アライメント後に、配列番号3の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む。
【0033】
本発明は、従って、抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体について記載するものであり、これらは、腫瘍上にて、i)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの(1もしくは複数の)非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合せず、前記抗体は、それが、それぞれCDR‐L1、CDR‐L2、およびCDR‐L3である、IMGTに従って定義される以下の3つのCDRを含む軽鎖を有することを特徴とし、ここで、CDR‐L1は、配列番号1の配列を含み、CDR‐L2は、配列番号2の配列を含み、CDR‐L3は、配列番号3の配列を含む。
【0034】
別の特定の実施形態によると、本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つは、それが、それぞれCDR‐L1、CDR‐L2、およびCDR‐L3である、Kabatに従って定義される以下の3つのCDRを含む軽鎖を有することを特徴とし、ここで、CDR‐L1は、配列番号17の配列を含み、CDR‐L2は、配列番号18の配列を含み、CDR‐L3は、配列番号3の配列を含む。
【0035】
別の実施形態によると、本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つは、それが、配列番号4、5、6、19、20、もしくは21の配列のCDRの少なくとも1つ、または、最適アライメント後に、配列番号4、5、6、19、20、もしくは21の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する少なくとも1つの配列を含む重鎖を有することを特徴とする。
【0036】
好ましい形では、本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つは、それが、それぞれCDR‐H1、CDR‐H2、およびCDR‐H3である以下の3つのCDRを含む重鎖を有することを特徴とし、ここで:
− CDR‐H1は、配列番号4もしくは19の配列、または最適アライメント後に、配列番号4もしくは19の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含み;
− CDR‐H2は、配列番号5もしくは20の配列、または最適アライメント後に、配列番号5もしくは20の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含み;ならびに、
− CDR‐H3は、配列番号6もしくは21の配列、または最適アライメント後に、配列番号6もしくは21の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む。
【0037】
本発明は、従って、抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体について記載するものであり、これらは、腫瘍上にて、i)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの(1もしくは複数の)非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合せず、前記抗体は、それが、それぞれCDR‐H1、CDR‐H2、およびCDR‐H3である、IMGTに従って定義される以下の3つのCDRを含む重鎖を有することを特徴とし、ここで、CDR‐H1は、配列番号4の配列を含み、CDR‐H2は、配列番号5の配列を含み、CDR‐H3は、配列番号6の配列を含む。
【0038】
別の特定の実施形態によると、本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つは、それが、それぞれCDR‐H1、CDR‐H2、およびCDR‐H3である、Kabatに従って定義される以下の3つのCDRを含む重鎖を有することを特徴とし、ここで、CDR‐H1は、配列番号19の配列を含み、CDR‐H2は、配列番号20の配列を含み、CDR‐H3は、配列番号21の配列を含む。
【0039】
より詳細には、本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つは、それが、配列番号9、10、11、22、23の配列のCDRの少なくとも1つ、または、最適アライメント後に、配列番号9、10、11、22、23の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する少なくとも1つの配列を含む軽鎖を有することを特徴とする。
【0040】
さらにより好ましくは、本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つは、それが、それぞれCDR‐L1、CDR‐L2、およびCDR‐L3である以下の3つのCDRを含む軽鎖を有することを特徴とし、ここで:
− CDR‐L1は、配列番号9もしくは22の配列、または最適アライメント後に、配列番号9もしくは22の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含み;
− CDR‐L2は、配列番号10もしくは23の配列、または最適アライメント後に、配列番号10もしくは23の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含み;ならびに、
− CDR‐L3は、配列番号11の配列、または最適アライメント後に、配列番号11の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む。
【0041】
本発明は、従って、抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体について記載するものであり、これらは、腫瘍上にて、i)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの(1もしくは複数の)非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合せず、前記抗体は、それが、それぞれCDR‐L1、CDR‐L2、およびCDR‐L3である、IMGTに従って定義される以下の3つのCDRを含む軽鎖を有することを特徴とし、ここで、CDR‐L1は、配列番号9の配列を含み、CDR‐L2は、配列番号10の配列を含み、CDR‐L3は、配列番号11の配列を含む。
【0042】
別の特定の実施形態によると、本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つは、それが、それぞれCDR‐L1、CDR‐L2、およびCDR‐L3である、Kabatに従って定義される以下の3つのCDRを含む軽鎖を有することを特徴とし、ここで、CDR‐L1は、配列番号22の配列を含み、CDR‐L2は、配列番号23の配列を含み、CDR‐L3は、配列番号11の配列を含む。
【0043】
別の実施形態によると、本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つは、それが、配列番号12、13、14、24、25、26の配列のCDRの少なくとも1つ、または、最適アライメント後に、配列番号12、13、14、24、25、26の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する少なくとも1つの配列を含む重鎖を有することを特徴とする。
【0044】
好ましい形では、本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つは、それが、それぞれCDR‐H1、CDR‐H2、およびCDR‐H3である以下の3つのCDRを含む重鎖を有することを特徴とし、ここで:
− CDR‐H1は、配列番号12もしくは24の配列、または最適アライメント後に、配列番号12もしくは24の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含み;
− CDR‐H2は、配列番号13もしくは25の配列、または最適アライメント後に、配列番号13もしくは25の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含み;ならびに、
− CDR‐H3は、配列番号14もしくは26の配列、または最適アライメント後に、配列番号14もしくは26の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む。
【0045】
本発明は、従って、抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体について記載するものであり、これらは、腫瘍上にて、i)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの(1もしくは複数の)非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合せず、前記抗体は、それが、それぞれCDR‐H1、CDR‐H2、およびCDR‐H3である、IMGTに従って定義される以下の3つのCDRを含む重鎖を有することを特徴とし、ここで、CDR‐H1は、配列番号12の配列を含み、CDR‐H2は、配列番号13の配列を含み、CDR‐H3は、配列番号14の配列を含む。
【0046】
別の特定の実施形態によると、本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つは、それが、それぞれCDR‐H1、CDR‐H2、およびCDR‐H3である、Kabatに従って定義される以下の3つのCDRを含む重鎖を有することを特徴とし、ここで、CDR‐H1は、配列番号24の配列を含み、CDR‐H2は、配列番号25の配列を含み、CDR‐H3は、配列番号26の配列を含む。
【0047】
本明細書において、「ポリペプチド」、「ポリペプチド配列」、「ペプチド」、および「抗体化合物またはそれらの配列へ結合したタンパク質」の用語は、交換可能である。
【0048】
本発明は、天然の形態の抗体に関するものではないこと、すなわち、それらは、その天然環境から入手されるものではなく、天然源からの精製によって単離もしくは取得されるか、または遺伝子組換えによって、もしくは化学合成によって取得され、従ってそれらは、以下に記載されるように、非天然アミノ酸を有し得ることは、本明細書にて理解される必要がある。
【0049】
第一の実施形態において、相補性決定領域またはCDRとは、Kabat et al.によって定義されるように(Kabat et al., Sequences of proteins of immunological interest, 5th Ed., U.S. Department of Health and Human Services, NIH, 1991, and later editions)、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の高頻度可変領域を意味する。3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDRが存在する。本明細書にて、「CDR」および「複数のCDR」の用語は、場合に応じて、抗体の、それが認識する抗原またはエピトープに対する結合親和性を担うアミノ酸残基の大部分を含有する領域の1つ以上、またはさらにはそのすべてを示すために用いられる。
【0050】
第二の実施形態において、CDR領域または(1もしくは複数の)CDRは、IMGTによって定義されるように、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の高頻度可変領域を示すことを意図している。
【0051】
IMGTの独特なナンバリングは、抗原受容体、鎖型、または種が何であれ、可変ドメインを比較するために定義されたものである[Lefranc M.-P., Immunology Today 18, 509 (1997) / Lefranc M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999) / Lefranc, M.-P., Pommie, C, Ruiz, M., Giudicelli, V., Foulquier, E., Truong, L., Thouvenin-Contet, V. and Lefranc, Dev. Comp. Immunol, 27, 55-77 (2003)]。IMGTの独特なナンバリングにおいて、保存アミノ酸は、同じ位置を有し、例えば、システイン23(1st‐CYS)、トリプトファン41(CONSERVED‐TRP)、疎水性アミノ酸89、システイン104(2nd‐CYS)、フェニルアラニンまたはトリプトファン118(J‐PHEまたはJ‐TRP)である。IMGTの独特なナンバリングは、フレームワーク領域(FR1‐IMGT:位置1から26、FR2‐IMGT:39から55、FR3‐IMGT:66から104、およびFR4‐IMGT:118から128)および相補性決定領域:CDR1‐IMGT:27から38、CDR2‐IMGT:56から65、およびCDR3‐IMGT:105から117、の標準化された範囲決定(standardized delimitation)を提供する。ギャップは非占有位置を表すことから、CDR‐IMGT長(角括弧中にドットで区切られた形で示され、例えば[8.8.13])は、非常に重要な情報となる。IMGTの独特なナンバリングは、IMGT Colliers de Perlesと称される2Dグラフィック画像[Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., Immunogenetics, 53, 857-883 (2002) / Kaas, Q. and Lefranc, M.-P., Current Bioinformatics, 2, 21-30 (2007)]、およびIMGT/3D構造‐DBにおける3D構造[Kaas, Q., Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., T cell receptor and MHC structural data. Nucl. Acids. Res., 32, D208-D210 (2004)]に用いられる。
【0052】
3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDRが存在する。本明細書にて、CDRまたは複数のCDRの用語は、場合に応じて、抗体の、それが認識する抗原またはエピトープに対する親和性による結合を担うアミノ酸残基の大部分を含有するこれらの領域の1つ、またはいくつか、またはさらにはそのすべてを示すために用いられる。
【0053】
より明確にするために、以下の記載において、より詳細には表2a、2b、および3において、CDRは、IMGTナンバリングおよびKabatナンバリングによって定義されることは理解される必要がある。
【0054】
本発明の意味において、核酸またはアミノ酸の2つの配列間の「同一性パーセント」とは、最適アライメント後に得られる、比較されるべき2つの配列間で同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセントを意味し、このパーセントは、純粋に統計的なものであり、2つの配列間の違いは、それらの長さに沿ってランダムに分布されている。2つの核酸またはアミノ酸配列の比較は、従来、それらの最適アライメントを行った後に配列を比較することで行われるものであり、前記比較は、セグメントによって、または「アライメントウィンドゥ(alignment window)」を用いることによって実施することができる。比較のための配列の最適アライメントは、手作業による比較に加えて、Smith and Waterman (1981)[Ad. App. Math. 2:482]の局地的相同性アルゴリズム(local homology algorithm)により、Neddleman and Wunsch (1970)[J. Mol. Biol. 48:443]の局地的相同性アルゴリズムにより、Pearson and Lipman (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444]の類似性探索法(similarity search method)により、またはこれらのアルゴリズムを用いるコンピュータソフトウェアにより(Wisconsin Genetics Software PackageのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Genetics Computer Group,575 Science Dr., Madison, WI、または比較ソフトウェア BLAST NRまたはBLAST Pによる)行ってよい。
【0055】
2つの核酸またはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、最適アライメントを行った2つの配列を比較することによって決定され、ここで、比較される核酸またはアミノ酸配列は、2つの配列間の最適アライメントのためのレファレンス配列と比較して、付加または欠失を有していてよい。同一性パーセントの算出は、2つの配列間にてアミノ酸ヌクレオチドまたは残基が同一である位置の数を判定し、この同一位置の数をアライメントウィンドゥ中の位置の総数で除し、得られた結果に100を掛けて2つの配列間の同一性パーセントを得ることによって行われる。
【0056】
例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlのウェブサイトから入手可能であるBLASTプログラム、「BLAST 2 sequences」(Tatusova et al., "Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences", FEMS Microbiol, 1999, Lett. 174:247-250)を、初期パラメータ(特に以下のパラメータ、「open gap penalty」:5、および「extension gap penalty」:2;選択されるマトリックスは、例えば、プログラムによって提案されるマトリックスである「BLOSUM 62」)によって用いてよく;比較される2つの配列間の同一性パーセントは、このプログラムによって直接算出される。
【0057】
レファレンスアミノ酸配列に対して少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を示すアミノ酸配列について、好ましい例としては、レファレンス配列、いくつかの修飾、特には少なくとも1つのアミノ酸の欠失、付加、もしくは置換、切断、または伸長を含むものが挙げられる。1つ以上の連続する、または連続しないアミノ酸の置換の場合、置換は、置換されるアミノ酸が「同等の」アミノ酸によって置き換えられることが好ましい。本明細書において、「同等のアミノ酸」の表現は、構造アミノ酸の1つと置換されるが、それによって対応する抗体および以下で定める具体例の生物活性を恐らくは改変しないと思われるいずれのアミノ酸をも示すことを意図している。
【0058】
同等のアミノ酸は、それによって置換されるアミノ酸との構造的相同性、または恐らくは生成されると思われる種々の抗体間の生物活性の比較試験の結果のいずれかに基づいて決定することができる。
【0059】
限定されない例として、対応する修飾抗体の生物活性の大きな改変をもたらすことなく恐らくは実施されると思われる、考え得る置換をまとめたものが以下の表1であり;逆の置換は、同一条件下では当然可能である。
【0060】
【表1】
【0061】
当業者であれば、現行技術において、6つのCDRの間で最も大きい可変性(長さおよび組成)は、3つの重鎖CDRで見られ、より詳細には、この重鎖のCDR‐H3であることが公知である。
【0062】
具体的な実施形態では、本発明は、マウス抗体、またはその誘導化合物もしくは機能性断片に関する。
【0063】
本発明の別の実施形態は、抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つを開示し、それは、IMGTに従う以下の3つのCDR:
− 配列番号1の配列、または最適アライメント後に、配列番号1の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐L1;
− 配列番号2の配列、または最適アライメント後に、配列番号2の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐L2;および、
− 配列番号3の配列、または最適アライメント後に、配列番号3の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐L3、
を含む軽鎖、ならびに、
IMGTに従う以下の3つのCDR:
− 配列番号4の配列、または最適アライメント後に、配列番号4の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐H1;
− 配列番号5の配列、または最適アライメント後に、配列番号5の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐H2;および、
− 配列番号6の配列、または最適アライメント後に、配列番号6の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐H3、
を含む重鎖、
を有する。
【0064】
好ましい実施形態では、腫瘍上にて、i)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの(1もしくは複数の)非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合しない本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体は、a)それぞれCDR‐L1、CDR‐L2、およびCDR‐L3である、IMGTに従って定義される以下の3つのCDRを含む軽鎖であって、ここで、CDR‐L1は、配列番号1の配列を含み、CDR‐L2は、配列番号2の配列を含み、CDR‐L3は、配列番号3の配列を含む、軽鎖、ならびにb)それぞれCDR‐H1、CDR‐H2、およびCDR‐H3である、IMGTに従って定義される以下の3つのCDRを含む重鎖であって、ここで、CDR‐H1は、配列番号4の配列を含み、CDR‐H2は、配列番号5の配列を含み、CDR‐H3は、配列番号6の配列を含む、重鎖、を有する。
【0065】
本発明のさらに別の実施形態は、抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つを開示し、それは、IMGTに従う以下の3つのCDR:
− 配列番号9の配列、または最適アライメント後に、配列番号9の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐L1;
− 配列番号10の配列、または最適アライメント後に、配列番号10の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐L2;および、
− 配列番号11の配列、または最適アライメント後に、配列番号11の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐L3、
を含む軽鎖、ならびに、
IMGTに従う以下の3つのCDR:
− 配列番号12の配列、または最適アライメント後に、配列番号12の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐H1;
− 配列番号13の配列、または最適アライメント後に、配列番号13の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐H2;および、
− 配列番号14の配列、または最適アライメント後に、配列番号14の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐H3、
を含む重鎖、
を有する。
【0066】
好ましい実施形態では、腫瘍上にて、i)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの(1もしくは複数の)非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合しない本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体は、a)それぞれCDR‐L1、CDR‐L2、およびCDR‐L3である、IMGTに従って定義される以下の3つのCDRを含む軽鎖であって、ここで、CDR‐L1は、配列番号9の配列を含み、CDR‐L2は、配列番号10の配列を含み、CDR‐L3は、配列番号11の配列を含む、軽鎖、ならびにb)それぞれCDR‐H1、CDR‐H2、およびCDR‐H3である、IMGTに従って定義される以下の3つのCDRを含む重鎖であって、ここで、CDR‐H1は、配列番号12の配列を含み、CDR‐H2は、配列番号13の配列を含み、CDR‐H3は、配列番号14の配列を含む、重鎖、を有する。
【0067】
本発明のさらに別の実施形態は、抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つを開示し、それは、Kabatに従う以下の3つのCDR:
− 配列番号17の配列、または最適アライメント後に、配列番号17の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐L1;
− 配列番号18の配列、または最適アライメント後に、配列番号18の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐L2;および、
− 配列番号3の配列、または最適アライメント後に、配列番号3の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐L3、
を含む軽鎖、ならびに、
Kabatに従う以下の3つのCDR:
− 配列番号19の配列、または最適アライメント後に、配列番号19の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐H1;
− 配列番号20の配列、または最適アライメント後に、配列番号20の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐H2;および、
− 配列番号21の配列、または最適アライメント後に、配列番号21の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR‐H3、
を含む重鎖、
を有する。
【0068】
本発明のさらに別の実施形態は、抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の1つを開示し、それは、Kabatに従う以下の3つのCDR:
− 配列番号22の配列、または最適アライメント後に、配列番号22の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐L1;
− 配列番号23の配列、または最適アライメント後に、配列番号23の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR‐L2;および、
− 配列番号11の配列、または最適アライメント後に、配列番号11の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐L3、
を含む軽鎖、ならびに、
Kabatに従う以下の3つのCDR:
− 配列番号24の配列、または最適アライメント後に、配列番号24の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐H1;
− 配列番号25の配列、または最適アライメント後に、配列番号25の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐H2;および、
− 配列番号26の配列、または最適アライメント後に、配列番号26の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR‐H3、
を含む重鎖、
を有する。
【0069】
さらに別の実施形態によると、本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体は、それが、配列番号7のアミノ酸配列、または、最適アライメント後に、配列番号7の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む配列の軽鎖可変ドメイン;ならびに/または、配列番号8のアミノ酸配列、または、最適アライメント後に、配列番号8の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む配列の重鎖可変ドメイン、を有することを特徴とする。
【0070】
本発明は、従って、抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体について記載するものであり、これらは、腫瘍上にて、i)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの(1もしくは複数の)非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合せず、前記抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む配列の軽鎖可変ドメイン、および配列番号8のアミノ酸配列を含む配列の重鎖可変ドメインを有する。
【0071】
さらに別の実施形態によると、本発明の抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体は、それが、配列番号15のアミノ酸配列、または、最適アライメント後に、配列番号15の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む配列の軽鎖可変ドメイン;ならびに/または、配列番号16のアミノ酸配列、または、最適アライメント後に、配列番号16の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む配列の重鎖可変ドメイン、を有することを特徴とする。
【0072】
本発明は、従って、抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体について記載するものであり、これらは、腫瘍上にて、i)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの(1もしくは複数の)非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合せず、前記抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含む配列の軽鎖可変ドメイン、および配列番号16のアミノ酸配列を含む配列の重鎖可変ドメインを有する。
【0073】
上記から分かるように、本発明はまた、本発明で述べるように抗体から誘導されるいずれの化合物にも関する。
【0074】
より詳細には、本発明の抗体、または誘導化合物もしくは機能性断片は、前記誘導化合物が、元の抗体のパラトープ認識特性のすべてもしくは一部が保存されるような形で少なくとも1つのCDRがその上にグラフトされたペプチド骨格を含む結合タンパク質からなることを特徴とする。
【0075】
本発明で述べるCDR配列の中の1つ以上の配列はまた、様々な免疫グロブリンタンパク質の骨格上に存在していてもよい。この場合、タンパク質配列は、グラフトしたCDRのフォールディングが起こりやすいペプチド骨格を再現することを可能とし、それによって、そのパラトープ抗原認識特性をそれらが保存することが可能となる。
【0076】
一般的に、当業者にとって、元の抗体に由来するCDRの少なくとも1つをグラフトするタンパク質骨格の種類を決定する方法は公知である。より詳細には、そのような骨格に選択されるには、以下の基準(Skerra A., J. Mol. Recogn., 2000, 13:167-187):
− 系統発生的保存が良好であること;
− 三次元構造が既知であること(例えば、結晶学、NMR分光、または当業者に公知であるその他のいずれかの技術による);
− サイズが小さいこと;
− 転写後修飾がほとんど、もしくはまったくないこと;および/または、
− 作製、発現、および精製が容易であること、
の最も多くを満たす必要があることが公知である。
【0077】
そのようなタンパク質骨格の由来は、フィブロネクチン、好ましくはフィブロネクチンIII型ドメイン10、リポカリン、アンチカリン(Skerra A., J. Biotechnol, 2001, 74(4):257-75)、スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureus)のプロテインAのドメインBに由来するプロテインZ、チオレドキシンA、または「アンキリンリピート」(Kohl et al., PNAS, 2003, vol. 100, No.4, 1700-1705)、「アルマジロリピート」、「ロイシンリッチリピート」、および「テトラトリコペプチドリピート」などの反復モチーフを有するタンパク質、の中から選択される構造であってよいが、これらに限定されない。
【0078】
例えば、サソリ、昆虫、植物、軟体動物などからのトキシンなどのトキシン、および神経型NO合成酵素のタンパク質阻害剤(PIN)に由来する骨格も言及されるべきである。
【0079】
そのようなハイブリッド構造の限定されない例としては、PINのループの1つにおける抗CD4抗体、すなわち13B8.2のCDR‐H1(重鎖)の挿入であり、このようにして得られた新しい結合タンパク質は、元の抗体と同じ結合特性を保存する。(Bes et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 2006, 343(1), 334-344)。単なる説明として、抗リゾチームVHH抗体のCDR‐H3(重鎖)の、ネオカルチノスタチンのループの1つへのグラフト(Nicaise et al., Protein Science, 2004, 13(7):1882-1891)にも言及するができる。
【0080】
最後に、上述のように、このようなペプチド骨格は、元の抗体に由来する1から6個のCDRを含んでいてよい。必要条件ではないが、好ましくは、当業者であれば、少なくとも1つのCDRを重鎖から選択し、後者は、主として抗体の特異性を担っていることが公知である。1つ以上の該当するCDRの選択は、当業者にとって明らかであり、そして当業者は、適切な公知技術を選択するであろう(Bes et al., FEBS letters 508, 2001, 67-74)。
【0081】
本発明は、従って、抗体、またはその誘導化合物もしくは機能性断片に関し、これらは、そのペプチド骨格が、a)系統発生的に良好に保存されている、b)強固な構造である、c)公知の3D分子組織を有する、d)サイズが小さい、ならびに/またはe)安定性特性を改変することなく欠失および/もしくは挿入による修飾が可能である領域を含むタンパク質の中から選択されることを特徴とする。
【0082】
好ましい実施形態によると、本発明の抗体、またはその誘導化合物もしくは機能性断片は、前記ペプチド骨格が、i)フィブロネクチン、好ましくはフィブロネクチンIII型ドメイン10、リポカリン、アンチカリン、スタフィロコッカスアウレウスのプロテインAのドメインBに由来するプロテインZ、チオレドキシンA、もしくは「アンキリンリピート」(Kohl et al., PNAS, 2003, vol. 100, No.4, 1700-1705)、「アルマジロリピート」、「ロイシンリッチリピート」、および「テトラトリコペプチドリピート」などの反復モチーフを有するタンパク質に由来する骨格、またはiii)神経型NO合成酵素のタンパク質阻害剤(PIN)の中から選択されることを特徴とする。
【0083】
本発明の別の態様は、上述の抗体の機能性断片に関する。
【0084】
より詳細には、本発明は、抗体、またはその誘導化合物もしくは機能性断片を対象とし、それらは、前記機能性断片が、断片Fv、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv、scFv‐Fc、および二重特異性抗体、またはペグ化断片などのその半減期が延長されたいずれかの断片の中から選択されることを特徴とする。
【0085】
本発明に従う抗体のそのような機能性断片は、例えば、断片Fv、scFv(sc=単鎖)、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv‐Fc、もしくは二重特異性抗体、またはポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールの付加(ペグ化)(ペグ化断片は、Fv‐PEG、scFv‐PEG、Fab‐PEG、F(ab’)‐PEG、およびFab’‐PEGと称される)などの化学的修飾によって、またはリポソーム、ミクロスフィア、もしくはPLGA中への組み込みによってその半減期が延長されたいずれかの断片から成り、前記断片は、特に、それが由来する抗体の活性を、部分的であっても、一般的な形で作用させる能力を有する本発明の特徴的なCDRのうちの少なくとも1つを有する。
【0086】
好ましくは、前記機能性断片は、それらが由来する抗体の可変重鎖もしくは軽鎖の部分配列を含むか、または含有し、前記部分配列は、それが由来する抗体と同じ結合特異性、および、好ましくはそれが由来する抗体の少なくとも1/100に等しく、より好ましくは少なくとも1/10である十分な親和性を維持するのに十分である。
【0087】
そのような機能性断片は、それが由来する抗体の配列の少なくとも5個のアミノ酸、好ましくは6、7、8、10、15、25、50、または100個の連続するアミノ酸を含有する。
【0088】
好ましくは、これらの機能性断片は、Fv、scFv、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv‐Fc、または二重特異性抗体の種類であり、これらは、一般的に、それらが由来する抗体と同じ結合特異性を有している。本発明によると、本発明の抗体の断片は、上述の抗体から、ペプシンもしくはパパインを含む酵素消化などの方法により、および/または化学還元によるジスルフィド架橋の開裂により得ることができる。抗体断片はまた、これも当業者に公知である遺伝子組み換え技術によって、または、例えば、アプライドバイオシステムズ(Applied BioSystems)などが販売するものなどの自動ペプチド合成装置によるペプチド合成によっても得ることができる。
【0089】
より明確にするために、以下の表2aは、IMGTに従う本発明の抗体に対応する種々のアミノ酸配列をまとめたものであり、一方表2bは、Kabatに従う本発明の抗体に対応する種々のアミノ酸配列をまとめたものである。
【0090】
【表2a】
【0091】
【表2b】
【0092】
別の態様によると、本発明は、本発明に従うモノクローナル抗体を分泌する能力を有するマウスハイブリドーマ、特に、2009年11月18日に、フランス、パリのパスツール研究所、CNCMにI‐4247の番号で寄託されたマウス由来のハイブリドーマに関する。前記ハイブリドーマは、Balb/C免疫化マウス脾細胞および骨髄腫Sp 2/O‐Ag 14株の細胞を融合することによって得られた。
【0093】
本明細書にて227D3と称されるモノクローナル抗体、またはその誘導化合物もしくは機能性断片は、前記抗体が、2009年11月18日にCNCMにI‐4247の番号で寄託されたハイブリドーマによって分泌されることを特徴とするものであり、本発明の一部を形成することは明らかである。
【0094】
従って、本発明はまた、腫瘍上にてi)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの(1もしくは複数の)非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合しない、ハイブリドーマI‐4247、またはそのサブクローンから得られるモノクローナル抗体も包含する。
【0095】
別の態様によると、本発明は、本発明に従うモノクローナル抗体を分泌する能力を有するマウスハイブリドーマ、特に、2009年11月18日に、フランス、パリのパスツール研究所、CNCMにI‐4246の番号で寄託されたマウス由来のハイブリドーマに関する。前記ハイブリドーマは、Balb/C免疫化マウス脾細胞および骨髄腫Sp 2/O‐Ag 14株の細胞を融合することによって得られた。
【0096】
本明細書にて205A5と称されるモノクローナル抗体、またはその誘導化合物もしくは機能性断片は、前記抗体が、2009年11月18日にCNCMにI‐4246の番号で寄託されたハイブリドーマによって分泌されることを特徴とするものであり、本発明の一部を形成することは明らかである。
【0097】
従って、本発明はまた、腫瘍上にてi)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの(1もしくは複数の)非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合しない、ハイブリドーマI‐4246、またはそのサブクローンから得られるモノクローナル抗体も包含する。
【0098】
別の実施形態では、本発明は、以下の核酸:
a) 上述の結合タンパク質をコードする核酸、DNA、またはRNA;
b) 上述の抗体をコードする核酸、DNA、またはRNA;
c) 配列番号27から32、または35から40の配列を含むDNA配列を有する核酸;
d) 配列番号33、34、41、または42の配列を含むDNA配列を有する核酸;
e) c)またはd)に定める核酸の対応するRNA核酸;ならびに、
f) a)、b)、c)、およびd)に定める核酸の相補核酸、
から選択されることを特徴とする単離された核酸を取り扱う。
【0099】
以下の表3は、本発明の抗体に関する種々のヌクレオチド配列をまとめたものである。ここでは、CDRはすべてIMGTに従って定義される(Kabatに従うCDRの定義は、表3に示されていないが、当業者にとって、表2bの配列を考慮してのそれらの定義は明らかである)。
【0100】
【表3】
【0101】
本明細書で交換可能に用いられる「核酸」、「核配列(nucleic sequence)」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、および「ヌクレオチド配列」の用語は、修飾または未修飾であり、核酸の断片または領域を定め、非天然ヌクレオチド含有または非含有であり、二本鎖DNA、一本鎖DNA、または前記DNAの転写産物である、ヌクレオチドの正確な配列を意味する。
【0102】
また、本発明が、その天然の染色体環境中の、すなわち天然状態のヌクレオチド配列に関するものではないことも、本明細書に含まれるべきである。本発明の配列は、単離および/または精製されたものであり、すなわち、それらは、例えば複製によって直接または間接的にサンプリングされたものであり、その環境は、少なくとも部分的に改変されている。例えば宿主細胞により、遺伝子組換えによって得られた、または化学合成によって得られた単離された核酸も、本明細書にて言及されるべきである。
【0103】
「最適アライメント後に、好ましい配列との少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性パーセントを示す核配列」とは、レファレンス核配列に対して、特に、欠失、切断、伸長、キメラ融合、および/または置換など、特には点状(punctual)である、いくつかの修飾を示す核配列を意味する。好ましくは、これらは、レファレンス配列と同じアミノ酸配列をコードする配列であり、これは、遺伝子コードの変性に関連し、または、レファレンス配列と、好ましくは、特には下記で定めるような、高ストリンジェント条件下にて、恐らくは特異的にハイブリダイズすると思われる相補配列である。
【0104】
高ストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションとは、温度およびイオン強度に関連する条件が、2つの相補DNA断片間のハイブリダイゼーションの維持を可能とするように選択されることを意味する。単なる説明として、上述のポリヌクレオチド断片を定める目的のハイブリダイゼーション工程の高ストリンジェント条件は、以下のように有利である。
【0105】
DNA‐DNAまたはDNA‐RNAハイブリダイゼーションは、2つの工程で実施される:(1)5X SSC(1X SSCは、0.15M NaCl+0.015M クエン酸ナトリウムの溶液に対応する)、50% ホルムアルデヒド、7% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10X デンハルト液、5% 硫酸デキストラン、および1% サケ精子DNAを含有するリン酸バッファー(20mM、pH7.5)中、3時間、42℃でのプレハイブリダイゼーション;(2)プローブ長に応じた温度(すなわち、>100ヌクレオチドの長さのプローブの場合は42℃)での20時間の一次ハイブリダイゼーション、およびそれに続く、2X SSC+2% SDS中での20℃、20分間の洗浄を2回、0.1X SSC+0.1% SDS中での20℃、20分間の洗浄を1回。最後の洗浄は、>100ヌクレオチドの長さのプローブの場合、0.1X SSC+0.1% SDS中、60℃にて30分間行われる。当業者であれば、定められたサイズのポリヌクレオチドのための上述の高ストリンジェント条件を、Sambrook, et al.(Molecular cloning: a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory; 3rd edition, 2001)に記載の手順に従って、より長い、または短いオリゴヌクレオチドに適合させることができる。
【0106】
本発明はまた、本発明で述べる核酸を含むベクターにも関する。
【0107】
本発明は、特に、そのようなヌクレオチド配列を含むクローニングおよび/または発現ベクターを対象とする。
【0108】
本発明のベクターは、好ましくは、任意の宿主細胞中にて、ヌクレオチド配列の発現および/または分泌を可能とする要素を含む。従って、ベクターは、プロモーター、翻訳開始および停止シグナル、さらには適切な転写調節領域を含んでいる必要がある。それは、宿主細胞中にて安定な形での維持が可能である必要があり、所望により、翻訳されたタンパク質の分泌を指定する特定のシグナルを有していてよい。このような様々な要素は、当業者により、用いられる宿主細胞に応じて選択および最適化が行われる。この目的のために、ヌクレオチド配列は、選択されたホスト内の自己複製ベクター中に挿入してよく、または選択されたホストの一体化されたベクターであってもよい。
【0109】
そのようなベクターは、当業者によって通常用いられる方法によって作製され、得られたクローンは、リポフェクション、エレクトロポレーション、ヒートショック、または化学的方法などの標準的な方法によって適切なホストへ導入することができる。
【0110】
ベクターは、例えば、プラスミドまたはウィルス由来のベクターである。これらは、本発明のヌクレオチド配列をクローン化または発現する目的で、宿主細胞を形質転換するために用いられる。
【0111】
本発明はまた、本発明で述べるベクターによって形質転換されたか、またはこれを有する宿主細胞も含む。
【0112】
宿主細胞は、例えば細菌細胞などの原核または真核系の中から選択してよいが、酵母細胞または動物細胞、特に哺乳類細胞であってもよい。昆虫または植物細胞を用いてもよい。
【0113】
本発明はまた、本発明に従う形質転換された細胞を有する、ヒト以外の動物にも関する。
【0114】
本発明の別の態様は、本発明に従う、cMetタンパク質のリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合する能力を有する抗体、またはその機能性断片の1つを作製するための方法に関し、それは、前記方法が、以下の工程:
a) 本発明に従う宿主細胞の、培地中における、宿主細胞に適する培養条件での培養;および、
b) このようにして産生された前記抗体またはその機能性断片の1つの、培地からの、または前記培養された細胞からの回収、
を含むことを特徴とする。
【0115】
本発明に従う形質転換された細胞は、本発明に従う組換えポリペプチドを作製するための方法において有用である。組換え形態の本発明に従うポリペプチドを作製するための方法は、前記方法が、本発明に従うベクターおよび/またはベクターによって形質転換された細胞を用いることを特徴とし、これも本発明に含まれる。好ましくは、本発明に従うベクターによって形質転換された細胞は、前述のポリペプチドの発現、および前記組換えペプチドの回収を可能とする条件下にて培養される。
【0116】
既に述べたように、宿主細胞は、原核または真核系の中から選択してよい。特に、そのような原核または真核系における分泌を促進する本発明のヌクレオチド配列を識別することが可能である。そのような配列を持つ本発明に従うベクターは、従って、有利には、分泌される組換えタンパク質の作製のために用いることができる。実際、対象となるこれらの組換えタンパク質の精製は、これらが、宿主細胞の内部ではなく、細胞培地の上清中に存在するという事実によって促進される。
【0117】
本発明のポリペプチドはまた、化学合成によっても作製することができる。1つのそのような作製方法もまた、本発明の目的である。当業者であれば、固相技術(特に、Steward et al., 1984, Solid phase peptides synthesis, Pierce Chem. Company, Rockford, 111, 2nd ed.、を参照)もしくは部分固相技術、断片の縮合による、または溶液中での従来の合成による、などの化学合成のための方法が公知である。化学合成によって得られ、対応する非天然アミノ酸を含有することができるポリペプチドもまた、本発明に含まれる。本発明の方法によって恐らくは得られると思われる抗体、またはその誘導化合物もしくは機能性断片もまた、本発明に含まれる。
【0118】
本発明はまた、cMetのリガンド非依存性活性化形態の識別のための、本発明に従う結合タンパク質もしくはモノクローナル抗体、またはそれらの機能性断片もしくは誘導体の使用も含む。
【0119】
別の実施形態では、本発明は、サンプル中において、cMetのリガンド非依存性活性化形態と、cMetの非活性化もしくはリガンド依存性活性化形態を含むcMetのその他の形態とを区別するための方法にも関し、その方法は:
a) 前記サンプルを、本発明に従う結合もしくは抗体、またはそれらの機能性断片もしくは誘導体と接触させる工程、ならびに、
b) 前記結合タンパク質もしくは抗体のサンプルとの結合を検出する工程、
を含む。
【0120】
本発明の結合タンパク質の、およびより詳細には抗体の、バイオマーカーとしての使用も開示される。この方法は、骨肉腫、肺癌、乳癌、子宮内膜癌、神経膠芽腫、結腸癌、胃癌、腎癌、肝細胞癌、またはcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現と関連するその他のいずれかの癌によって例示されるがこれらに限定されないcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現と関連する種々の過剰増殖性発癌性障害の検出または診断のために用いることができる。当業者であれば認識されるように、特定の障害と関連する結合タンパク質および/または抗体発現のレベルは、基礎病状の性質および/または重篤度に応じて様々となる。
【0121】
別の態様では、本発明は、患者において、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現と関連する過剰増殖性発癌性障害の、特に上記で挙げたような前記過剰増殖性発癌性障害の検出、または診断、またはステージングを行うための生体内法に関し、前記方法は:
a) 好ましくは標識された、本発明の結合タンパク質および/または抗体を、それを必要とする患者へ投与する工程;ならびに、
b) 前記結合タンパク質または抗体の、患者体内にて、好ましくは腫瘍細胞または腫瘍の存在が疑われるかまたは既知である患者の器官によって発現されたcMetのリガンド非依存性活性化形態との結合を、好ましくはイメージングによって検出する工程(特に、ステージングのために)、
を含む。
【0122】
本発明の結合タンパク質および/または抗体の、当業者に公知の従来法のいずれによる投与によっても(例:局所、非経口、筋肉内など)、サンプル中の異形成細胞を検出する、ならびにcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現と関連するかまたはそれによって媒介される過剰増殖性障害の治療を受けている患者の治療レジメンの医師によるモニタリングを可能とする、極めて有用な方法が提供される。
【0123】
別の実施形態では、本発明は、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現と関連する発癌性障害の生体イメージングのための医薬組成物に関し、その組成物は、標識され、生体内にてcMetのリガンド非依存性活性化形態と結合する上記の結合タンパク質および/もしくは抗体、またはその断片;ならびに薬理学的に許容されるキャリア、を含む。
【0124】
本発明の結合タンパク質および抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体は、様々な医療または研究目的で用いられ、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現と関連する様々な病態の検出、診断、およびステージングを含む。
【0125】
ステージの判定は、予後における価値を有する可能性があり、最適な治療法を設計するための基準を提供する。Simpson et al., J. Clin. Oncology 18:2059 (2000)。一般的に、例えば乳癌の病理学的ステージングは、臨床ステージングよりも好ましく、それは、前者がより正確な予後を与えるからである。しかし、臨床ステージングは、病理学的評価のための組織を得る侵襲的手順にそれが依存しないことから、病理学的ステージングと同等に正確である場合は、こちらが好ましい。
【0126】
適切な標識、またはその他の適切な検出可能生体分子もしくは化学物質と共に用いられる場合、本発明の結合タンパク質および/または抗体は、生体外および生体内診断ならびに予後の用途に特に有用である。
【0127】
免疫アッセイに用いるための標識は、一般的に当業者に公知であり、酵素、放射性同位体、ならびに蛍光、発光、および発色性物質が挙げられ、コロイド状金またはラテックスビーズなどの着色粒子が含まれる。適切な免疫アッセイとしては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が挙げられる。様々な種類の標識、ならびに標識を本発明の結合タンパク質および/または抗体に結合させる方法は、以下に示すものなど、当業者に公知である。
【0128】
本明細書で用いられる場合、「cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現と関連する発癌性障害」の用語は、その障害に罹患している対象におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態の高いレベルまたは異常に低いレベルでの存在(異常)が、その障害の病態生理を担っていることか、もしくはその障害の悪化に寄与する因子であることが示されているか、またはそうであることが疑われる疾患およびその他の障害を含むことを意図している。別の選択肢として、そのような障害は、その障害に罹患している対象における影響を受けている細胞または組織内でのcMetのチロシン自己リン酸化の増加をもたらす細胞表面上でのcMetのリガンド非依存性活性化形態のレベルの上昇を、例えばその証拠とすることができる。cMetのリガンド非依存性活性化形態のレベルの上昇は、例えば、本発明の抗体205A5または227D3を用いて検出することができる。さらに、それは、比較的自律的な成長を示し、それによって、細胞増殖の制御が大きく喪失されたことを特徴とする異常な成長表現型を示す細胞を意味する。別の選択肢として、細胞は、cMetのリガンド非依存性活性化形態を正常なレベルで発現し得るが、異常増殖によって特徴付けられる。
【0129】
特定の実施形態では、cMetのリガンド非依存性活性化形態と関連する「増加した発現」とは、コントロールと比較して発現の統計的に有意である増加(RNA発現またはタンパク質発現によって測定される)を示すタンパク質または遺伝子発現レベルを意味する。
【0130】
より詳細には、既述のように本発明に従う結合タンパク質もしくは抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現と関連する発癌性障害の生体外での診断、またはcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現と関連する発癌性障害の発症についての予後の生体外での判定での使用が考慮される。
【0131】
本発明に従う別の広い態様は、対象において、病理学的過剰増殖性発癌性障害、またはcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現と関連する病理学的状態に対する感受性を診断する方法に関し、その方法は、サンプル中におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態を有する細胞の存在または非存在の判定、および前記cMetのリガンド非依存性活性化形態を有する細胞の存在または非存在に基づく病理学的状態または病理学的状態に対する感受性を診断することを含む。本発明の結合タンパク質または抗体の診断での用途は、一次腫瘍、癌、および転移を含む。結合タンパク質または抗体は、免疫複合体または標識結合タンパク質/抗体の形態で存在してよく、それによって、検出可能および/または定量可能なシグナルが得られる。
【0132】
より詳細には、本発明に従う好ましい主題は、対象中におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する腫瘍の存在および/または位置を生体外で検出する方法であり、ここで、前記方法は、a)対象からのサンプルを、本発明に従う結合タンパク質もしくは抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体と接触させる工程、およびb)前記結合タンパク質または抗体のサンプルとの結合を検出する工程を含む。本主題の別の態様は、臨床試験中におけるcMet標的治療法に対する応答としての、より詳細には、cMetのリガンド非依存性活性化形態の下方調節および または分解が、試験された化合物の作用機構の成分の1つである場合の、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現の追跡である。
【0133】
当業者には明らかであるように、本発明の結合タンパク質または抗体の結合の検出は、種々のアッセイによって明らかにすることができる。アッセイを実施するためのいずれの手段も本発明との適合性を有するが、例として、FACS、ELISA、またはIHCに言及することができる。
【0134】
本明細書で用いられる場合、「サンプル」の用語は、新生物細胞を含有するかまたは含有することが疑われる結腸、胃、直腸、胸部、卵巣、前立腺、腎臓、肺、血液、脳、またはその他の器官もしくは組織からの細胞などの新生物細胞を含有するか、または含有する可能性があるいずれの生体液、細胞、組織、器官、またはその一部をも意味することを意図している。この用語は、個体中に存在するサンプル、ならびに個体から得られたか、またはそれに由来するサンプルを含む。例えば、サンプルは、生検によって得られた検体の組織学的セクション、または組織培養に配置されたか、もしくはそれに適合された細胞であってよい。サンプルはさらに、細胞内画分もしくは抽出物、または未精製もしくは実質的に純粋である核酸分子もしくはタンパク質製剤であってよい。
【0135】
臨床サンプルは、対象から得られ、例えば、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルを測定または検出する診断またはモニタリング試験などの本発明の手順に有用である、様々な種類のサンプルを包含することを意図している。この定義は、外科的除去によって得られた固体組織サンプル、病理学的検体、保存サンプル、または生検検体、それに由来する組織培養物もしくは細胞、およびその後代、ならびにこれらのサンプル源のいずれかから作製されたセクションもしくはスメアを包含する。限定されない例は、胸部組織、リンパ節、結腸、膵臓、前立腺などから得られたサンプルである。この定義はまた、生物由来の液体サンプルも包含し、そこに懸濁された細胞もしくは細胞断片、または液体媒体およびその溶質を意味し得る。
【0136】
本発明に従う別の態様は、対象からのcMet発現腫瘍における、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルを生体外で測定する方法に関し、ここで、前記方法は、a)対象からのサンプルを、本発明に従う結合タンパク質もしくは抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体と接触させる工程、およびb)前記サンプル中のcMetのリガンド非依存性活性化形態へ結合する結合タンパク質または抗体のレベルを定量する工程を含む。
【0137】
当業者であれば明らかなように、cMetのリガンド非依存性活性化形態へ結合する結合タンパク質または抗体のレベルは、様々なアッセイによるなど、数多くの方法で定量することができる。アッセイを実施するためのいずれの手段も本発明との適合性を有するが、好ましい方法は、ELISA法に従う免疫酵素方法、免疫蛍光、免疫組織化学分析、もしくは放射免疫アッセイ(RIA)法、または同等の方法が利用される。
【0138】
本発明の方法の好ましい実施形態では、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルは、免疫組織化学分析(IHC)によって測定される。
【0139】
好ましくは、生体サンプルは、血清などの生体液、全血、細胞、組織サンプル、またはヒト器官の生検などによって形成される。サンプルは、例えば、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現に関連する病理学的過剰増殖性発癌性障害の存在についての分析を都合良く行うことができる生検組織を含んでよい。
【0140】
試験サンプル中に存在するcMetのリガンド非依存性活性化形態の量が測定されると、その結果は、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現に関連する過剰増殖性発癌性障害を持たないか、またはそれを呈さない個体から得られた以外は試験サンプルと類似の方法で得られたコントロールサンプルの結果と比較することができる。試験サンプル中のcMetのリガンド非依存性活性化形態のレベルが著しく上昇している場合、それが由来する対象が前記障害を有するか、または発症するであろう可能性が高まっていると結論付けることができる。
【0141】
本発明は、より詳細には、cMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する腫瘍の生体外での診断、またはcMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する腫瘍の対象内での発症に関する予後の生体外での判定を行う方法に関し、ここで、前記方法は、a)上述のように、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルを測定する工程、およびb)正常組織またはcMetのリガンド非依存性活性化形態を発現しない組織からの、cMetのリガンド非依存性活性化形態のレファレンス発現レベルと、工程a)の発現レベルを比較する工程、を含む。
【0142】
本出願で用いられる場合、疾患の「診断」とは、例えば、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現に関連するかもしくはそれによって媒介される病理学的過剰増殖性発癌性障害の存在を診断または検出すること、疾患の進行をモニタリングすること、およびcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現に関連する障害を示す細胞もしくはサンプルを識別または検出すること、を含むことを意図している。
【0143】
本出願で用いられる場合、「予後」とは、疾患からの回復の可能性、または疾患の考え得る発症もしくは結果の予測を意味する。例えば、対象からのサンプルが、本発明の結合タンパク質または抗体による染色に対して陽性である場合、その対象についての「予後」は、サンプルがcMetのリガンド非依存性活性化形態の染色に対して陰性であった場合よりも良好である。以降でより詳細に述べるように、サンプルは、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルについて、適切なスケールでスコア付けしてよい。
【0144】
しかし、本発明の別の態様は、cMetの分解を誘発する治療化合物について、その作用機構の1つとして、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現をモニタリングすることにも関する。この場合、細胞膜上でのcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現を追跡することは、臨床試験および「個別化」治療の過程での治療の効果を評価するための非常に重要なツールであり得る。
【0145】
cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルは、有利には、「レファレンスレベル」または「レファレンス発現レベル」とも称されるコントロール細胞またはサンプル中のレベルに対して、比較または測定される。「レファレンスレベル」、「レファレンス発現レベル」、「コントロールレベル」、および「コントロール」は、本明細書にて交換可能に用いられる。概略的に述べると、「コントロールレベル」とは、通常は疾患や癌が存在しない同等のコントロール細胞において測定された別個のベースラインレベルを意味する。それは、同じ個体からであってよく、または、正常であるか、または疾患もしくは試験サンプルが採取されたものと同じ疾患を呈さない別の個体からであってもよい。本発明の文脈において、「レファレンスレベル」の用語は、患者の癌細胞含有サンプルにおけるcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現の試験レベルの評価に用いられる、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現の「コントロールレベル」を意味する。例えば、患者の生体サンプル中におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態のレベルが、cMetのリガンド非依存性活性化形態のレファレンスレベルよりも高い場合、細胞は、cMetのリガンド非依存性活性化形態の高レベルの発現または過剰発現を有すると考えられる。レファレンスレベルは、いくつかの方法によって決定することができる。従って、発現レベルは、cMetのリガンド非依存性活性化形態を有する細胞を定めるか、または別の選択肢として、cMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する細胞の数に依存しないcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルを定めることができる。従って、各患者に対するレファレンスレベルは、cMetのリガンド非依存性活性化形態のレファレンス比によって規定することができ、ここで、レファレンス比は、本明細書で述べるレファレンスレベルを決定するための方法のいずれによって決定してもよい。
【0146】
例えば、コントロールは、所定の値であってよく、これは、様々な形を取り得る。それは、メジアンまたは平均などの単一のカットオフ値であってよい。「レファレンスレベル」は、全ての患者の個々に同等に適用可能である単一の数値であってよく、またはレファレンスレベルは、患者の特定のサブ集団に応じて様々であってもよい。従って、例えば、同じ癌に対して、年齢のより高い男性は、若い男性とは異なるレファレンスレベルを有する可能性があり、また同じ癌に対して、女性は、男性とは異なるレファレンスレベルを有する可能性がある。別の選択肢として、「レファレンスレベル」は、試験されるべき新生物細胞の組織と同じ組織からの非発癌性癌細胞中におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルを測定することによって決定してもよい。また、「レファレンスレベル」は、患者の新生物細胞中におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態の、同じ患者内の非腫瘍細胞中におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態のレベルに対する特定の比であってもよい。「レファレンスレベル」はまた、腫瘍細胞を模擬するように操作してよく、またはレファレンスレベルを正確に決定する発現レベルが得られるその他のいずれの方法によって操作してもよい生体外培養細胞のcMetのリガンド非依存性活性化形態のレベルであってもよい。他方、「レファレンスレベル」は、cMetのリガンド非依存性活性化形態のレベルが上昇していない群およびcMetのリガンド非依存性活性化形態のレベルが上昇している群におけるなど、比較される群に基づいて確立してもよい。比較される群の別の例は、特定の疾患、病状、または症状を有する群および疾患を有さない群である。所定の値は、例えば、試験される集団が、低リスク群、中リスク群、および高リスク群などの群に等分(または非等分)されるか、または四分位もしくは五分位に分割されて、最も低い四分位もしくは五分位が、最もリスクが低いもしくはcMetのリガンド非依存性活性化形態の量が最も高い個体となり、最も高い四分位もしくは五分位が、最もリスクが高いもしくはcMetのリガンド非依存性活性化形態の量が最も低い個体となるように、決められていてよい。
【0147】
レファレンスレベルはまた、同じ癌を有する患者の集団におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態のレベルの比較によって決定してもよい。これは、例えば、患者の全コホートがグラフ表示されるヒストグラム分析によって達成することができ、ここで、第一の軸は、cMetのリガンド非依存性活性化形態のレベルを表し、第二の軸は、その腫瘍細胞があるレベルにてcMetのリガンド非依存性活性化形態を発現するコホートの患者数を表す。患者の2つ以上の別々の群を、同一または類似レベルのcMetのリガンド非依存性活性化形態を有するコホートのサブセット集団の識別によって決定することができる。次に、これらの別々の群を最もよく区別するレベルに基づいて、レファレンスレベルを決定することができる。レファレンスレベルはまた、2つ以上のマーカーのレベルを表してもよく、そのうちの1つは、cMetのリガンド非依存性活性化形態である。2つ以上のマーカーは、例えば、各マーカーのレベルに対する値の比によって表されてよい。
【0148】
同様に、明らかに健康である集団は、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現に関連する病状を有することが既知である集団が有するものとは異なる「正常」範囲を有する。従って、選択される所定の値は、個体が属する分類を考慮に入れてよい。適切な範囲および分類は、当業者であれば、通常の範囲を超えない実験によって選択することができる。「高められた」、「増加した」とは、選択されたコントロールと比較して高いことを意味する。通常、コントロールは、適切な年齢階層における明らかに健康である正常個体に基づいている。
【0149】
本発明に従うコントロールは、所定の値に加えて、実験物質と並行して試験された物質のサンプルであってよいことも理解されるであろう。例としては、同じ対象から同時に得られた組織または細胞が挙げられ、例えば、単一の生検の一部、または対象からの単一の細胞サンプルの一部である。
【0150】
cMetのリガンド非依存性活性化形態が媒介する疾患を有する患者の臨床診断またはモニタリングにおいて、cMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する細胞の検出、または正常対象もしくは非癌性組織からの対応する生体サンプル中のレベルと比較したcMetのリガンド非依存性活性化形態のレベルの増加は、一般的に、患者が、cMetのリガンド非依存性活性化形態が媒介する障害を有するか、またはそれを呈することが疑われることを示唆するものである。
【0151】
上記に従って、本発明は、癌への罹患しやすさを予測するための方法を提供し、その方法は、組織サンプル中におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルの検出を含み、その存在は、癌へ罹患しやすさを示唆するものであり、ここで、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現度合いは、罹患しやすさの度合いと相関している。従って、具体的な実施形態では、例えば前立腺組織、骨肉腫組織、肺組織、膵臓組織、結腸組織、胸部組織、神経膠芽腫組織、卵巣組織、またはcMetのリガンド非依存性活性化形態を細胞が発現することが疑われるその他のいずれかの組織におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現が検査され、サンプル中におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態の存在が、癌への罹患しやすさ、または組織特異的腫瘍の発生もしくは存在を示唆する。
【0152】
腫瘍の悪性度を評価するための方法も提供される。1つの実施形態では、個体における悪性腫瘍の進行を経時で観察するための方法は、腫瘍サンプル中の細胞によって発現されるcMetのリガンド非依存性活性化形態のレベルを測定すること、そのようにして測定されたレベルを、異なる時点にて同じ個体から採取された同等の組織サンプル中にて発現されたcMetのリガンド非依存性活性化形態のレベルと比較することを含み、ここで、腫瘍サンプル中の経時でのcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現度合いは、癌の進行に関する情報を提供する。
【0153】
さらに別の実施形態では、本出願は、対象のための適切な治療プロトコルを決定するための方法を提供する。具体的には、本発明の結合タンパク質または抗体は、個体における悪性腫瘍の寛解過程のモニタリングに非常に有用であり、特に、対象が、cMetのリガンド非依存性活性化形態への結合について本発明の結合タンパク質または抗体と競合しないcMet結合タンパク質または抗体による治療を受けている状況において有用である。本発明に従うcMetのリガンド非依存性活性化形態の存在、または非存在、またはそのレベルの変化は、対象が、cMetのリガンド非依存性活性化形態に関連する癌の再発、または進行、または持続を有する可能性が高いことを示唆するものであり得る。従って、cMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する細胞数の増加、または種々の組織もしくは細胞中に存在するcMetのリガンド非依存性活性化形態の濃度の変化を測定することにより、cMetのリガンド非依存性活性化形態に関連する悪性腫瘍の寛解を目的とする特定の治療レジメンが効果的かどうかを判定することが可能である。
【0154】
本発明の別の主題は、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現に関連する発癌性障害の生体イメージング法である。例えば、そのような方法は、発癌性障害の症状を呈している患者に用いることができる。患者が、例えば、cMetのリガンド非依存性活性化形態の増加した発現レベルを有する場合、その患者は、癌性障害に罹患している可能性が高い。また、この方法は、cMetのリガンド非依存性活性化形態が媒介する癌を有すると既に診断されている患者における、進行および/または治療に対する応答のモニタリングにも有用であり得る。上記の目的に従って、本発明は、好ましくは標識された、特には放射標識された、本発明に従う結合タンパク質もしくは抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体を含む生体イメージング試薬、およびその医療イメージングでの使用を提供する。従って、本発明に従う一般的な方法は、標識されている上述の結合タンパク質または抗体などのイメージング試薬のイメージング効果量、および薬理学的に効果的であるキャリアを患者へ投与し、次に、その剤を、それがサンプル中に存在するcMetのリガンド非依存性活性化形態へ結合した後に検出することによって作用する。特定の実施形態では、この方法は、標的化部分および活性部分を含むイメージング剤のイメージング効果量を投与することによって作用する。イメージング剤は、ヒトなどの哺乳類における診断用途に効果的な量で投与され、そのイメージング剤の位置および蓄積が次に検出される。イメージング剤の位置および蓄積は、放射性核種イメージング、放射線シンチグラフィー、核磁気共鳴イメージング、コンピュータ断層撮影、ポジトロン放出断層撮影、コンピュータ体軸断層撮影、X線もしくは磁気共鳴イメージング法、蛍光検出、および化学発光検出によって検出してよい。
【0155】
標的化抗腫瘍治療法の開発に関して、免疫組織学的技術による診断は、受容体発現レベルに関する情報をin situで提供し、従って、そのような治療に必要である受容体の発現レベルに従う治療に感受性を有する患者の選択が可能となる。
【0156】
モノクローナル抗体を用いた免疫治療法の場合、その治療に対する応答は、ヒト化抗Her2モノクローナル抗体トラスツズマブの出現によって乳癌におけるHer2の過剰発現の判定が現在の主たる臨床上の重要事項となっているトラスツズマブによる治療のように、標的とされる受容体の発現レベルに依存する。Her2の過剰発現の判定は、トラスツズマブによる治療にとって不可欠であり、それは、その作用が、Her2を過剰発現する癌細胞を特異的に標的とすることによるものであるからである。Her2の精密な試験は、非過剰発現腫瘍を有する患者へ、高価であり潜在的に毒性であるトラスツズマブ治療を行わないこと、およびトラスツズマブからの恩恵を受ける可能性のあるすべての患者が適切な治療を受けること、を確実にすることを目的として行われる。
【0157】
Her2を過剰発現した患者の選択に関してトラスツズマブによって教示された事項により、モノクローナル抗体による治療法を用いた場合に受容体の発現レベルを測定すること、および、治療モノクローナル抗体と同時に、患者選択のために用いることができるモノクローナル抗体を開発することの有益性が示された。
【0158】
従って、本発明は、対象の腫瘍のcMetのリガンド非依存性活性化形態の状態を生体外で判定する方法に関し、ここで、前記方法は、a)上述のように、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルを測定する工程、b)cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルについて、前記腫瘍のスコア付けを行う工程、およびc)前記スコアをコントロールサンプルから得られたものと比較する工程、を含む。
【0159】
本発明の意味の範囲内において、「cMetのリガンド非依存性活性化形態の状態」は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、発色in situハイブリダイゼーション(CISH)、遺伝子チップ、または当業者に公知のその他の方法などのいずれの方法によっても測定されるcMetのリガンド非依存性活性化形態遺伝子の発現レベルの測定に基づいて、腫瘍を、cMetのリガンド非依存性活性化形態陽性[cMetのリガンド非依存性活性化形態(+)]またはcMetのリガンド非依存性活性化形態陰性[cMetのリガンド非依存性活性化形態(−)]のクラスへ分類することに関する。
【0160】
好ましい実施形態では、診断用の抗体は、組織サンプルが、ホルマリン固定およびパラフィン封入された状態で、標的とする受容体と結合可能である必要がある。
【0161】
より詳細には、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルは、免疫組織化学分析(IHC)によって測定される。
【0162】
例として、サンプルは、cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルについて、結合タンパク質または抗体の染色レベルに応じた0〜3のスケールでスコア付けされてよく、ここで、0は陰性であり、1〜3は、強度が増加していく4つの半定量的段階にて陽性染色を表す。スコア1〜3は、各陽性スコアが、スコア0(陰性)と比較した場合に、再発および致死的疾患に対するリスクの著しい低減と関連し得ることから、良好として記録することができるが、陽性スコアの中でも、強度が増加する従って、さらなるリスクの低減が提供され得る。cMetのリガンド非依存性活性化形態の予後値の推定には、従来のいずれのハザード解析法を用いてもよい。代表的な解析法としては、コックス回帰解析が挙げられ、これは、打ち切り例の存在する生存または時間事象データをモデル化するためのセミパラメトリック法である(Hosmer and Lemeshow, 1999; Cox, 1972)。生命表またはカプラン‐マイヤーを例とするその他の生存解析とは対照的に、コックスでは、予測変数(共変量)をモデルに組み込むことが可能である。コックスを例とする従来の解析法を用いることにより、一次腫瘍中のcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現状態と、再発疾患の発症までの期間(無病生存期間もしくは転移疾患までの期間)または疾患による死亡までの期間(全生存期間)との相関に関する仮定の検定が可能であり得る。コックス回帰解析は、コックス比例ハザード解析とも称される。この方法は、患者生存期間についての腫瘍マーカーの予後値を検定するための標準的なものである。多変量解析モードに用いられる場合、独立した予後値を有する個々の共変量、すなわち最も有用であるマーカーの識別が可能となるように、いくつかの共変量の影響が並行して検定される。腫瘍の「cMetのリガンド非依存性活性化形態の状態」陽性または陰性の用語[cMetのリガンド非依存性活性化形態(+)またはcMetのリガンド非依存性活性化形態(−)とも称される]は、それぞれ、スコア0またはスコア1〜3を意味する。
【0163】
サンプルは、癌の診断またはモニタリングの過程で「スコア付け」されてよい。その最も簡単な形態として、スコア付けは、免疫組織化学分析によるサンプルの目視検査によって判定される、分類的な陰性または陽性であってよい。より定量的なスコア付けは、染色の強度およびサンプリングされた染色(「陽性」)細胞の割合という2つのパラメータの判定を含む。これらの2つのパラメータに基づいて、陽性染色のレベルの増加を反映する数値が付与されてよい。Allred et al.(Allred, Harvey et al. 1998)は、これを達成する1つの方法について記載しており、それは、両パラメータに0(陰性)から3までのスケールでスコア付けを行い、個々のパラメータのこのスコアをまとめて全体スコアとすることを含んでいた。この結果、0、2、3、4、5、6、7、または8のスコアが可能であるスケールが得られる(Payne et al. Predictive markers in breast cancer - the present. Histopathology 2008, 52, 82-90)(Allredのスケールでは、1というスコアがあり得ないことに留意されたい)。もう少し単純なスコア付けの方法では、核染色の強度と染色された核を示す細胞の割合とが合わせられて、1つにまとめた0から3までのスケールとされる。いずれのスコア付け法も、細胞核中における活性化Stat5の染色の強度および割合のスコア付けに適用することができる。本明細書で用いられる腫瘍の「cMetのリガンド非依存性活性化形態の状態」陽性または陰性の用語は、それぞれ、単純化されたスケール上のスコア0または1〜3に対応するcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルを意味する。
【0164】
一般的に、本発明に従う試験またはアッセイの結果は、様々なフォーマットのいずれによって示されてもよい。結果は、定性的な形で示されてよい。例えば、試験レポートは、特定のポリペプチドが検出されたかどうかのみを、恐らくは検出限界の表示と共に示してよい。結果は、半定量的な形で示されてもよい。例えば、様々な範囲が定められてよく、それらの範囲に、ある度合いの定量的な情報を提供するスコア(例:1から3)が付与されてよい。そのようなスコアは、例えば、cMetのリガンド非依存性活性化形態が検出される細胞数、シグナル強度(cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現またはcMetのリガンド非依存性活性化形態を有する細胞のレベルを示し得る)などの様々な因子を反映するものであってよい。結果は、定量的な形で示されてもよく、例えば、ポリペプチド(cMetのリガンド非依存性活性化形態)が検出される細胞のパーセントとして、タンパク質濃度として、などである。当業者であれば理解されるように、試験によって提供される結果の種類は、試験の技術的限界、およびポリペプチドの検出に関連する生物学的重要性に応じて様々である。例えば、特定のポリペプチドの場合、単に定性的である結果(例:ポリペプチドが特定の検出レベルにて検出されるかどうか)が、重要な情報を提供する。他の場合では、より定量的な結果(例:試験されるサンプル中のポリペプチドの発現のレベル対正常レベルの比)が必要である。
【0165】
より好ましい実施形態では、cMetのリガンド非依存性活性化形態発現レベルのスコア付けは、反応生成物の強度および陽性細胞のパーセントの評価に基づいて、0から3までに段階付けされる。より明確にするために、以下の表4にこれらのパラメータをまとめる。浸潤腫瘍の完全な周囲膜反応性(complete circumferential membranous reactivity)のみが考慮されるべきであり、多くの場合、「金網(chicken wire)」に似た外観を示す。現行のガイドライン下では、cMetのリガンド非依存性活性化形態についてボーダーライン(2以上のスコア)としてスコア付けされたサンプルは、cMetのリガンド非依存性活性化形態(+)としてIHCが考慮される必要があり、さらなる評価を受けることが必要とされる。限定されない例として、コントロールが期待される通りでない場合、サンプルのほとんどにアーチファクトが含まれる場合、およびサンプルが正常な乳管(内部コントロール)の強い膜陽性を有して抗原性の過剰な賦活化が示唆される場合、IHC分析は却下されるべきであり、FISHまたはその他のいずれかの方法によって反復または試験されるべきである。
【0166】
【表4】
【0167】
本発明に従う方法のより好ましい実施形態では、前記スコア付けは、染色の強度および陽性細胞のパーセントである2つのパラメータに基づく適切なスケールを用いることを含む。
【0168】
好ましい実施形態では、本発明に従う方法は、適切なスケールが0から3のスケールであることを示し、ここで、腫瘍細胞に膜反応性がないものがスコア0であり、腫瘍細胞の10%超で強い完全な反応性があるものがスコア3である。
【0169】
より詳細には、上述のように、前記適切なスケールは、0から3のスケールであり、ここで、腫瘍細胞に膜反応性がないものがスコア0であり;腫瘍細胞の10%超で、僅かに感知される膜反応性があるものがスコア1であり;腫瘍細胞の10%超で、弱から中程度の完全な膜反応性があるものがスコア2であり;腫瘍細胞の10%超で、強い完全な反応性があるものがスコア3である。
【0170】
本発明の特定の態様では、腫瘍は、スコア2のcMetのリガンド非依存性活性化形態(+)である。
【0171】
本発明の特定の態様では、腫瘍は、スコア3のcMetのリガンド非依存性活性化形態(+)である。
【0172】
本発明の別の特定の態様では、腫瘍は、スコア2または3のcMetのリガンド非依存性活性化形態(+)である。
【0173】
本発明によると、抗‐cMetのリガンド非依存性活性化形態結合タンパク質もしくは抗体、またはその断片もしくは誘導体による治療に対して、発癌性障害が感受性を有するかどうかを判定する方法も記述され、ここで、前記方法は、(a)上述のように、対象の腫瘍のcMetのリガンド非依存性活性化形態の状態を生体外で判定する工程、および(b)その状態が、cMetのリガンド非依存性活性化形態(+)の場合、その発癌性障害は、抗‐cMetのリガンド非依存性活性化形態結合タンパク質もしくは抗体、またはその断片もしくは誘導体による治療に対して感受性を有すると判定する工程を含む。
【0174】
本発明の別の態様では、そのような診断または予後方法に有用であるキットが考慮され、前記キットは、本発明の結合タンパク質および/または抗体を含む。
【0175】
便宜上、所定量の試薬の組み合わせが、診断アッセイを実施するための説明書と共にパッケージされたもの、例えばキットも、本発明の範囲内である。キットは、例えばELISAまたはウェスタンブロットによる生体外でのcMetのリガンド非依存性活性化形態の検出および定量のための結合タンパク質または抗体を含む。本発明の結合タンパク質または抗体は、例えばELISAまたはウェスタンブロットによる生体外でのcMetのリガンド非依存性活性化形態の検出および定量のためのキットとして提供してよい。結合タンパク質または抗体が酵素で標識される場合、キットは、酵素に必要である基質および補助因子を含む(例:検出可能な発色団またはフルオロフォアを提供する基質前駆体)。加えて、安定剤、バッファー(例:ブロックバッファーまたは溶解バッファー)などのその他の添加剤を含んでいてもよい。そのようなキットは、バイアル、チューブなどの1つ以上の容器を受けるように区分けされた受け器(receptacle)を含んでよく、そのような容器は、本発明の別々の要素を保持する。例えば、1つの容器は、不溶性または部分的に可溶性であるキャリアへ結合した第一の結合タンパク質または抗体を含んでよい。第二の容器は、可溶性の、検出可能標識された第二の結合タンパク質または抗体を、凍結乾燥された形態または溶解した状態で含んでよい。受け器はまた、検出可能標識された第三の結合タンパク質または抗体を、凍結乾燥された形態または溶解した状態で保持する第三の容器も含んでよい。この種のキットは、本発明のサンドウィッチアッセイに用いることができる。ラベルまたはパッケージインサートにより、組成物に関する記述、ならびに意図される生体外または診断用途のための取り扱い説明が提供されてよい。
【0176】
種々の試薬の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液濃度を提供するために、広く様々であってよい。特に、試薬は、溶解によって適切な濃度を有する試薬溶液を提供する、賦形剤を含有する、通常は凍結乾燥されたものであるドライパウダーとして提供されてよい。
【0177】
本発明のなおさらなる態様では、本明細書で述べる結合タンパク質、抗体、またはその結合断片は、前述の抗原を有する細胞の診断または識別のための例えばキットにパッケージされ、用いられ得るように、検出可能部分によって標識された状態で提供される。そのような標識の限定されない例としては、フルオレセインイソチオシアネートなどのフルオロフォア;発色団、放射性核種、または酵素が挙げられる。そのような標識された抗体または結合断片は、抗原の組織学的位置特定、ELISA、細胞選別、ならびに例えばcMetのリガンド非依存性活性化形態およびこの抗原を有する細胞を検出または定量するためのその他の免疫学的技術に用いることができる。
【0178】
また、アポトーシスアッセイ、細胞からのcMetのリガンド非依存性活性化形態の精製または免疫沈降のためのポジティブコントロールとして有用であるキットも提供される。cMetのリガンド非依存性活性化形態の単離および精製のためには、キットは、本明細書で述べる抗体またはその抗原結合断片を、ビーズ(例:セファロースビーズ)へカップリングした状態で含有していてよい。キットは、例えばELISAまたはウェスタンブロットにより、生体外でcMetのリガンド非依存性活性化形態を検出および定量するための結合タンパク質または抗体を含有して提供してよい。製品がそうであるように、キットは、容器、およびその容器上に、または容器に付随して、ラベルまたはパッケージインサートを含む。容器は、本発明の抗‐cMetのリガンド非依存性活性化形態結合タンパク質もしくは抗体、またはその結合断片を少なくとも1つ含む組成物を保持する。例えば、希釈剤およびバッファー、コントロール抗体を含有する追加の容器が含まれていてよい。ラベルまたはパッケージインサートにより、組成物に関する記述、ならびに意図される生体外または診断用途のための取り扱い説明が提供されてよい。
【0179】
より詳細には、本発明は、当業者に公知のいずれかの方法による、腫瘍におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態の状態を判定するためのキットに関する。好ましい実施形態では、実施例にて記載されるように、本発明は、腫瘍におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態の状態をIHC法によって判定するためのキットに関する。
【0180】
特定の実施形態では、本発明は、上述のような結合タンパク質もしくは抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体を少なくとも含み、前記結合タンパク質または抗体は標識されているキットからなる。
【0181】
例えば上述した標識の使用など、当業者によっていずれの標識法が用いられてもよいことは理解される必要がある。
【0182】
好ましい実施形態では、対象中におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する腫瘍の存在および/または位置を生体外で検出するのに有用である本発明に従うキットは、さらに、前記標識結合タンパク質または抗体とcMetのリガンド非依存性活性化形態との間の結合度合いの検出に有用である試薬を含む。
【0183】
別の好ましい実施形態では、cMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する腫瘍中におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルを生体外で測定するのに有用である本発明のキットは、さらに、前記標識結合タンパク質または抗体とcMetのリガンド非依存性活性化形態との間の結合レベルを定量するのに有用である試薬を含む。
【0184】
さらに別の実施形態では、腫瘍におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態の状態を生体外で判定するのに有用である本発明に従うキットは、さらに:
a)前記標識結合タンパク質または抗体とcMetのリガンド非依存性活性化形態との間の結合度合いを検出するのに有用である試薬;ならびに、
b)cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルのスコア付けに有用であるポジティブおよびネガティブコントロールサンプル、
を含む。
【0185】
腫瘍におけるcMetのリガンド非依存性活性化形態の状態を生体外で判定するための前記キットは、さらに:
i) マウス抗体に特異的である第二の標識ポリクローナル抗体:
ii) 前記第二の標識抗体と、cMetのリガンド非依存性活性化形態に対するマウス抗体との間の結合度合いを検出するのに有用である試薬;ならびに、
iii) cMetのリガンド非依存性活性化形態の発現レベルのスコア付けに有用であるポジティブおよびネガティブコントロールサンプル、
を含んでよい。
【0186】
本発明はまた、cMetのリガンド非依存性活性化形態への結合について、本発明に従う結合タンパク質と交差競合する(cross-compete)、抗体を含む結合タンパク質、またはその機能性断片もしくは誘導体も含む。
【0187】
本発明はまた、cMetのリガンド非依存性活性化形態への結合について、本発明に従う抗体と交差競合する(cross-compete)、抗体を含む結合タンパク質、またはその機能性断片もしくは誘導体も含む。
【0188】
別の実施形態では、本発明はまた、cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合することができる、抗体を含む結合タンパク質を識別するための、本発明に従う結合タンパク質もしくは抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の使用にも関する。
【0189】
より詳細には、好ましい実施形態では、cMetのリガンド非依存性活性化形態に対する結合パートナーを識別する方法が記載され、これは:
a) cMetのリガンド非依存性活性化形態を、本発明に従う結合タンパク質もしくは抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体と接触させる工程;
b) a)の複合体を、化合物ライブラリと接触させる工程、
c) a)の複合体を分解する化合物を識別する工程、
を含む。
【0190】
本発明はまた、cMetのリガンド非依存性活性化形態を精製するための方法も含み、ここで、前記方法は、以下の工程:
a) 本発明に従う結合タンパク質もしくは抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体を、サンプルと共に、前記結合タンパク質または抗体とcMetのリガンド非依存性活性化形態との特異的結合を可能とする条件下にてインキュベートする工程;ならびに、
b) サンプルから結合タンパク質または抗体を分離し、精製されたcMetのリガンド非依存性活性化形態を得る工程、
を含む。
【0191】
別の特定の態様では、本発明は、本発明に従う結合タンパク質、またはその機能性断片もしくは誘導体とcMetのリガンド非依存性活性化形態との結合によって形成される複合体を含む。
【0192】
同様に、本発明はまた、本発明に従う抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体とcMetのリガンド非依存性活性化形態との結合によって形成される複合体も含む。
【0193】
別の実施形態では、本発明は、cMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する細胞へ生物活性化合物を特異的に標的化することを意図する媒体としての、本発明に従う結合タンパク質もしくは抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体の使用を取り扱う。より詳細には、前記生物活性化合物は、化学療法薬、放射性同位体、またはトキシンからなる群より選択される。
【0194】
さらに別の実施形態では、本発明は、i)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの(1もしくは複数の)非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合しない抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体を作製するための方法から成り、前記方法は、それが:
a) cMetタンパク質またはその断片を発現するトランスフェクトされた、または腫瘍細胞株により、動物を免疫化する工程;
b) 抗体産生細胞を動物から取り出す工程;
c) 前記抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を得る工程;
d) スクリーニングアッセイを行って、i)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの(1もしくは複数の)非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合しない抗体を産生するハイブリドーマ細胞を選別する工程;
e) 選別されたハイブリドーマを、抗体を産生する細胞培養液中にて培養する工程;ならびに、
f) 細胞培養液から抗体を取り出す工程、
を含むことを特徴とする。
【0195】
より好ましい実施形態では、上述の工程d)のスクリーニングアッセイは、IHCスクリーニングアッセイからなる。
【0196】
別のより好ましい実施形態では、前記IHCスクリーニングアッセイは:
a) 異なる形態のcMetを発現する腫瘍から組織セクションを採取する工程、
b) 上述のi)cMetのリガンド非依存性活性化形態へ特異的に結合するが、ii)cMetの(1もしくは複数の)非活性化および/またはリガンド依存性活性化形態へは結合しない抗体、またはその機能性断片もしくは誘導体を作製するための方法の工程c)のハイブリドーマ細胞を用いて、工程a)の異なる組織セクションを同時にIHC染色する工程、
c) cMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する組織セクション上では特異的な反応性を有するが、その他の組織セクション上では反応性を有さないハイブリドーマ細胞を選別する工程、
を含む。
【0197】
本発明のその他の特徴および利点は、実施例およびその説明を以下に示す図による続けての記載にて明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0198】
図1A-B】m205A5(A)またはm227D3(b) MabによるcMet認識のFACS。
図2】固定化二量体cMetタンパク質に対するm205A5およびm227D3 Mabの滴定曲線。
図3A-3C】パラフィン封入腫瘍(MCF7、U87MG、およびHs746T)におけるm227D3およびm205A5の認識のIHCパターン。
図4A-4C】パラフィン封入腫瘍(MCF7、U87MG、Hs746T、MKN45、およびEBC‐1)におけるm227D3および市販の抗cMet抗体3D4の認識のIHCパネル。
図5】ELISAによる、m205A5またはm227D3 MabのHGF競合アッセイ。
図6】Hs746T異種移植モデルにおけるm224G11の抗腫瘍活性。
図7】ウェスタンブロット分析による、コントロールマウスおよびm224G11処理マウスのHs746T腫瘍に対するcMet発現のエキソビボ分析。
図8A-8B】m205A5を用いたIHCによる、コントロールマウスおよびm224G11処理マウスのHs746T腫瘍に対するcMet発現のエキソビボ分析。
図9】様々なレベルのcMetを発現する肝臓腫瘍組織からのパラフィン封入セクションのIHC染色。
【実施例】
【0199】
実施例1:診断目的で使用され得るcMetのリガンド非依存性活性化形態に対する抗体の作製
抗cMet抗体の作製のために、8週齢のBALB/cマウスに対して、その細胞膜上でcMetを発現するCHOトランスフェクション細胞株によって3から5回皮下に免疫化を施すか(20×10細胞/投与/マウス)、またはcMet細胞外ドメイン融合タンパク質(10〜15μg/投与/マウス)(R&Dシステムズ、カタログ#358MT)、もしくはこの組換えタンパク質の断片を、最初の免疫化では完全フロイントアジュバントと、以降については不完全フロイントアジュバントと混合して2から3回免疫化を施した。細胞融合の3日前に、組換えタンパク質または断片により、i.p.またはi.v.にてマウスに追加免疫を施した。次に、マウスの脾臓を回収し、SP2/0‐Ag14骨髄腫細胞(ATCC)へ融合し、HAT選別に掛けた。一般的に、モノクローナル抗体またはその機能性断片を作製する場合、特にマウス由来のものについては、マニュアル"Antibody"(Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor NY, pp. 726, 1988)に特に記載されている技術、またはKohler and Milstein(Nature, 256:495-497, 1975)によって記載されるハイブリドーマの作製技術を参照することが可能である。
【0200】
得られたハイブリドーマはまず、二量体cMet‐Fc組換えタンパク質について、ELISAによりスクリーニングした。簡単に述べると、組換えヒトcMetタンパク質を、Immulon II 96ウェルプレートへ4℃にて一晩コーティングし、0.5% ゼラチン溶液による1時間のブロッキング工程の後、純粋ハイブリドーマ上清を、37℃にてさらに1時間添加した。次に、このプレートを洗浄し、ヤギ抗マウス(ジャクソン(Jackson))特異的IgG HRPを37℃にて1時間添加した。TMB基質溶液を用いて反応を進めた。次に、中から高レベルのcMetを発現するA459細胞株についてのFACS分析による第二のスクリーニングを行い、産生された抗体が、腫瘍細胞上にて天然の受容体も認識することができることを確実にした。その目的のために、2×10の細胞を、m205A5、m227D3、またはm10D9(IgG1アイソタイプコントロールMab)のいずれかの10μg/mLと共に、4℃にて20分間インキュベートした。1% BSAおよび0.01% NaNを添加したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)による3回の洗浄後、細胞を、二次抗体ヤギ抗マウスAlexa488(1/500で希釈)と共に、4℃にて20分間インキュベートした。1% BSAおよび0.1% NaNを添加したPBSによるさらなる3回の洗浄後、細胞をFACS(Facscalibur、ベクトン‐ディキンソン(Becton-Dickinson))で分析した。少なくとも5000の細胞を評価して、蛍光強度の平均値を算出した。
【0201】
【表5】
【0202】
本アッセイでの陽性ハイブリドーマを増幅し、クローン化し、アイソタイプを決定し、増殖させた。次に、新しいハイブリドーマ上清を回収し、そのIgG含有量を測定した。相補性サイトメトリー分析(complementary cytometry analysis)を5種類のヒト腫瘍細胞株(A459、BXPC3、MCF7、U87MG、およびHepG2)の1群に対して実施した。これらの細胞株はすべてATCCから提供された。得られたデータを図1に示し、MFI値を表5に示す。
【0203】
相補性実験を、精製した205A5または227D3の抗体に対して行った。第一の抗体滴定を、二量体cMet‐Fcタンパク質に対して行った。滴定曲線を図2に示す。
【0204】
205A5および227D3の抗体は、上述の2つの基準、(i)ELISA試験でのcMetの認識、(ii)ヒト腫瘍細胞株の表面で発現された天然cMetでの結合、を満足しており、これらをさらなるアッセイのために選択した。
【0205】
Mabを、cMetを発現する腫瘍異種移植からのパラフィン封入セクションでの最終cMet認識試験のために選別した。その評価のために、MCF7、U87‐MG、およびHs746T(種々のレベルのcMetを発現することが公知である腫瘍)異種移植からの腫瘍セクションを脱パラフィンし、再水和し、98℃に予備加熱した沸騰浴中のTarget Retrieval Buffer 1X(Dako S1699)に投入して、98℃にて30分間の熱誘発エピトープ賦活化を行い、次にさらに30分間Target Retrieval Buffer中に保持した。トリス緩衝生理食塩水‐0.05% tween 20(TBS‐T)(Dako S3006)による3回の洗浄後、ペルオキシダーゼブロッキング試薬(Dako K4007)を用いて、内在性ペルオキシダーゼ活性のブロッキングを5分間行った。セクションをTBS‐Tで洗浄し、ブロッキング試薬(UltraV block‐TA‐125UB‐Lab Vision)と共に5分間インキュベートし、その後、試験すべきcMetマウスモノクローナル抗体(5μg/mL)を添加した。マウスIgG1/カッパ(5μg/mL、X0931、Dako)をネガティブコントロールとして用いた。次に、セクションを室温にて2時間インキュベートし、TBS‐Tで洗浄し、Envision Dual Link Peroxydase System(Dako K4061)と共にインキュベートした。ジアミノベンジジン(DAB)ペルオキシダーゼ基質を用いて、褐色の反応生成物を生成させた。
【0206】
図3に示す結果から、予想された通り、IgG1アイソタイプコントロールでは染色は観察されなかったこと(図3 パネルA)、ならびに227D3(図3 パネルB)および205A(図3 パネルC)はいずれも、Hs746T異種移植腫瘍上でのみcMetを認識することができ、一方、3種類の腫瘍はすべて異なるレベルのcMetを発現したこと、が示された。これらの最初の結果から、205A5および227D3の抗体はいずれも、増幅された腫瘍細胞上でのみ発現されるcMetの特定の形態を認識することが示唆される。
【0207】
これらのMabの認識パターンを確認するために、異種移植を受けたマウスからの1群の腫瘍を、205A5、227D3、またはcMetを認識すると記載されているインビトロジェン(Invitrogen)から市販されている抗体である3D4を用いて、cMetの発現についてIHCで試験した。図4のパネルCに示すように、3D4は、すべて種類の腫瘍においてcMetを認識した。227D3(パネルA)または205A5(データ示さず)を用いると、強い膜染色は、cMetの構成的に活性化された形態を有する(cMetの増幅の結果としてのcMetの過剰発現に起因する)3種類の腫瘍:Hs746T、MKN45、およびEBC‐1、でのみ観察された。予想された通り、mIgG1アイソタイプコントロールでは染色は観察されなかった(図4 パネルB)。
【0208】
実施例2:205A5または227D3抗体の存在下で実施したHGF競合実験
診断用Mabのさらなる特性決定のために、HGF競合アッセイを実施した。試験すべきMabが存在するか、または存在しない、cMetタンパク質を含む第一の反応混合物を、別々の飽和(PBS 1X中0.5%のゼラチン)プレート上にて調製した。マウス抗体(レファレンスおよび調べるべきMab)の1:2の段階希釈を行った(40μg/mLから開始し、12のカラムにわたる)。次に、ELISA希釈剤(PBS 1X中の0.1% ゼラチン、0.05% Tween20)のみを含むネガティブコントロールライン以外に、0.8μg/mLのrh cMet‐Fcタンパク質を添加した(RDシステムズ、ref. 358‐MT/CF)。ホモジナイズ後、競合サンプルを、PBS中の0.3μg/mL rh HGF溶液(RDシステムズ、ref. 294‐HGN/CF)でコーティングしたHGF‐コーティングプレート上にローディングした。インキュベーションおよび数回の洗浄の後、ヤギ抗ヒトIgG‐HRP(ジャクソン、ref. 109‐035‐098)を用いて、結合したタンパク質を検出する。結合後、TMB基質をプレートに添加した。HSOの酸溶液を添加して反応を停止し、得られた光学濃度を、マイクロプレートリーダー装置を用いて、450nmにて読み取った。
【0209】
実験は、205A5および227D3により、cMet‐Fc組換えタンパク質の存在下、または非存在下にて行った(図5参照)。この実験から、205A5および227D3 Mabが、その固定化リガンド受容体上で結合するcMetと競合しないことが示された。
【0210】
実施例3:抗体の特異性
Hs746T腫瘍を有するマウスのm224G11処理により、腫瘍成長の著しい低下が誘発された(図6)。この実験からの腫瘍を分析すると、抗腫瘍活性の結果として、コントロールマウス(データ示さず)に対してm224G11処理マウスでのKi67発現の低下、およびウェスタンブロット分析によって示されるcMet発現の劇的な下方調節が見られた(図7)。WB分析を実施するために、腫瘍を取り出し、窒素中にて素早く瞬間冷凍した。次に、それを溶解し、同じ量のタンパク質を免疫ブロットした。最後に、セルシグナリング(Cell Signalling)から市販されている抗Met‐ベータサブユニット25H2 Mabを用いてcMetを出現させた。
【0211】
同じ実験からの腫瘍を、205A5を用いたIHCによって分析すると、予想されたcMet発現の下方調節が処理マウスで観察され、一方、コントロール群の腫瘍細胞はすべてMet陽性であった(図8)。
【0212】
実際、図8Aに示されるように、コントロールマウスからの腫瘍を、205A5 Mabを用いて染色した場合、3種類すべてのマウスの腫瘍細胞において、強い均質な膜染色が観察された。m224G11処理マウスからの腫瘍を205A5で染色した場合、膜染色の劇的な低下が観察された(図8B)。ウェスタンブロット分析(図7)によるこれまでに観察されたデータと一致するこれらのデータから、205A5がcMetを特異的に認識することが示される。
【0213】
実施例4:m224G11 MabによるcMetのリガンド非依存性活性化形態の発現についての組織のスコア付け
上述の、および図9にまとめたプロトコルを用いて、種々のレベルのcMetのリガンド非依存性活性化形態を発現する一式のパラフィン封入ヒト腫瘍組織を、m205A5 Mabで染色した。
【0214】
図9に示す結果から、肝細胞癌において、m205A5は、様々なレベルのcMetのリガンド非依存性活性化形態を有するヒト腫瘍を区別することが可能であることが示された。この抗体を用いることで、腫瘍は:
− 0:膜染色がないか、または観察された膜陽性細胞が10%未満である陰性腫瘍、
− 1:10%超の腫瘍細胞にてほとんど感知されない染色、
− 2:10%超の腫瘍細胞にて中程度の完全膜染色、
− 3:10%超の腫瘍細胞にて強い完全膜染色、
としてのスコア付けが可能である。
図1A
図1B
図2
図3A-3C】
図4A-4C】
図5
図6
図7
図8A-8B】
図9
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]