特許第6180937号(P6180937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6180937フォトレジスト組成物及びレジストパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180937
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】フォトレジスト組成物及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20170807BHJP
   C08F 20/24 20060101ALI20170807BHJP
   C08F 124/00 20060101ALI20170807BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20170807BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G03F7/039 601
   C08F20/24
   C08F124/00
   G03F7/004 504
   H01L21/30 502R
【請求項の数】7
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2013-536309(P2013-536309)
(86)(22)【出願日】2012年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2012074598
(87)【国際公開番号】WO2013047536
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年1月9日
【審判番号】不服2016-7179(P2016-7179/J1)
【審判請求日】2016年5月17日
(31)【優先権主張番号】特願2011-218066(P2011-218066)
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】笠原 一樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 憲彦
【合議体】
【審判長】 中田 誠
【審判官】 樋口 信宏
【審判官】 清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−10748(JP,A)
【文献】 特開2006−317794(JP,A)
【文献】 特開2010−230894(JP,A)
【文献】 特開2010−128391(JP,A)
【文献】 特開2006−84837(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/029982(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/034176(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/039
C08F 20/24
C08F124/00
G03F 7/004
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]下記式(1)で表される構造単位(I)を有するベース重合体、
[B]撥水性重合体、及び
[C]酸発生体
を含有し、
[B]撥水性重合体が、フッ素原子を含む重合体であるフォトレジスト組成物(但し、下記式(I)で表される化合物を含有するものを除く)。
【化1】
(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシ基若しくは炭素数1〜20の1価の有機基であるか、又はR及びRが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の環構造を表す。但し、RとRが共にヒドロキシ基である場合はない。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜20の1価の有機基であるか、又はR及びRが互いに合わせられこれらが結合している炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の環構造を表す。mは、1〜4の整数である。mが2以上の場合、複数のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。但し、RからRの全てが水素原子である場合はない。)
【化2】
(式(I)中、Rは、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基又は2価の脂環基である。但し、2価の脂環基は脂環構造にヘテロ原子を含有してもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜14のアルキル基である。)
【請求項2】
[A]下記式(1)で表される構造単位(I)を有するベース重合体、
[B]撥水性重合体、及び
[C]酸発生体
を含有し、
[B]撥水性重合体が、フッ素原子を含む重合体であるフォトレジスト組成物。
【化3】
(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシ基若しくは炭素数1〜20の1価の有機基であるか、又はR及びRが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の環構造を表す。但し、RとRが共にヒドロキシ基である場合はない。R及びRは、互いに合わせられこれらが結合している炭素原子と共に構成される炭素数3〜10の環構造を表す。mは、1〜4の整数である。mが2以上の場合、複数のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
[B]撥水性重合体が、下記式(2−1)で表される構造単位(II−1)、式(2−2)で表される構造単位(II−2)及び式(2−3)で表される構造単位(II−3)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位を有する請求項1又は請求項2に記載のフォトレジスト組成物。
【化4】
(式(2−1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数1〜20のフッ素化アルキル基である。
式(2−2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Xは、単結合、酸素原子、−O−CO−*、−CO−O−*、又は−SO−O−*である。*は、Rに結合する部位を示す。Rは、単結合又は炭素数1〜20の(n+1)価の炭化水素基である。R10は、単結合又は炭素数4〜20の環状構造を有する2価の有機基である。R11は、単結合又は炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基である。但し、上記鎖状炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子で置換されていてもよい。Xは、酸素原子、−CO−O−**、又は−SO−O−**である。**は、R12に結合する部位を示す。R12は、水素原子又はアルカリ解離性基である。nは、1〜3の整数である。但し、nが2以上の場合、複数のR10、R11、X及びR12は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(2−3)中、R13は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R14は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。R15及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜20のフッ素化アルキル基である。但し、R15及びR16の両方が水素原子となる場合はない。R17は、水素原子又は酸解離性基である。)
【請求項4】
[B]撥水性重合体が構造単位(II−2)を有し、上記式(2−2)のXが酸素原子であり、かつR12が下記式(3)で表されるアルカリ解離性基である請求項に記載のフォトレジスト組成物。
【化5】
(式(3)中、R18は、炭素数1〜20のフッ素化アルキル基である。)
【請求項5】
[B]撥水性重合体が構造単位(II−2)を有し、上記式(2−2)のXが−CO−O−**であり、かつR12が下記式(4−1)、(4−2)又は(4−3)で表されるアルカリ解離性基である請求項に記載のフォトレジスト組成物。
【化6】
(式(4−1)中、R19及びR20は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。但し、上記アルキル基が有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。また、R19及びR20は、互いに合わせられそれらが結合する炭素原子と共に2価の脂環式基を形成していてもよい。
式(4−2)中、R21は、フッ素原子、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のアシロキシ基又は炭素数1〜10のアルキル基である。aは、0〜4の整数である。但し、aが2以上の場合、複数のR21は、同一でも異なっていてもよい。bは、0又は1である。
式(4−3)中、R22は、フッ素原子、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のアシロキシ基又は炭素数1〜10のアルキル基である。cは、0〜4の整数である。但し、cが2以上の場合、複数のR22は、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項6】
[B]撥水性重合体が構造単位(II−3)を有し、上記式(2−3)のR17が下記式(5)で表される酸解離性基である請求項に記載のフォトレジスト組成物。
【化7】
(式(5)中、R23は、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式基である。R24及びR25は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基若しくは炭素数4〜20の脂環式基であるか、又はR24及びR25が互いに合わせられこれらが結合している炭素原子と共に構成される炭素数4〜20の2価の脂環式基を表す。)
【請求項7】
(1)請求項1に記載のフォトレジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜に液浸露光する工程、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を含むレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるレジストパターンの微細化が要求されている。現在、例えばArFエキシマレーザー光を用い、線幅90nm程度の微細なレジストパターンを形成することができるが、今後はさらに微細なパターン形成が要求される。
【0003】
このようなパターン形成には、従来から化学増幅型レジスト組成物が広く用いられている。この化学増幅型レジスト組成物は、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、この酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分とを含有し(特開昭59−45439号公報参照)、露光部と未露光部との溶解速度の差を利用してパターンを形成することができる組成物である。
【0004】
一方、レジストパターン形成において、水等の液浸露光液を介して露光を行う液浸露光技術が開発されている。この液浸露光によれば同じ露光波長の光源を用いても、より短波長の光源を用いた場合と同様の高解像性を達成できる。そのため液浸露光は、多額な設備投資を必要とする半導体素子の製造において、コストの増大を低減しつつ高解像度を達成する技術として注目されている。上記液浸露光に適したフォトレジスト組成物としては、レジスト膜から液浸露光液への酸発生剤等の溶出を抑制できること、レジスト膜の水切れを良くすること等を目的として、フッ素原子を含む撥水性重合体を含有するフォトレジスト組成物が提案されている(国際公開2007/116664号パンフレット参照)。
【0005】
しかし、フッ素原子を含む撥水性重合体を含有する従来のフォトレジスト組成物を用いた場合、現像時にレジスト表面の現像残渣の除去が不十分となり、ブロッブ欠陥等の現像欠陥が起こる場合がある。そこで、上記現像欠陥を抑制することができるフォトレジスト組成物の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−45439号公報
【特許文献2】国際公開2007/116664号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、感度等の基本特性を満足し、ブロッブ欠陥を抑制することができるフォトレジスト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]下記式(1)で表される構造単位(I)を有するベース重合体(以下、「[A]ベース重合体」ともいう)、
[B]撥水性重合体、及び
[C]酸発生体
を含有するフォトレジスト組成物である。
【化1】
(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシ基若しくは炭素数1〜20の1価の有機基であるか、又はR及びRが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の環構造を表す。但し、RとRが共にヒドロキシ基である場合はない。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜20の1価の有機基であるか、又はR及びRが互いに合わせられこれらが結合している炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の環構造を表す。mは、1〜4の整数である。mが2以上の場合、複数のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0009】
[A]ベース重合体は、重合体主鎖に直結した上記特定のラクトン構造を含む構造単位(I)を有するため、当該フォトレジスト組成物において、[B]撥水性重合体と分離し易い。その結果、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜においては、[B]撥水性重合体を含む撥水性の層をより表面付近に偏在化させることができる。この撥水性の層により、当該フォトレジスト組成物が含有する他の成分の液浸露光用液体への溶出を抑制することができると共に、液浸露光用液体に由来する水滴がレジスト膜上に残り難くなるため、液浸露光用液体に起因するブロッブ欠陥の発生を抑制することができる。なお、ここで、ベース重合体とは、フォトレジスト組成物が含有する全重合体中、50質量%以上を占める重合体をいう。なお、ここで、有機基とは、炭素原子を少なくとも1つ含む基をいう。
【0010】
上記式(1)におけるR及びRは、互いに合わせられこれらが結合している炭素原子と共に構成される炭素数3〜10の環構造を表すことが好ましい。[A]ベース重合体が有する構造単位(I)が上記特定のスピロ環を含む構造となることで、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜において、[B]撥水性重合体がより表面に偏在化し易くなる。その結果、当該フォトレジスト組成物は、ブロッブ欠陥の発生をより抑制することができる。
【0011】
[B]撥水性重合体は、フッ素原子を含む重合体であることが好ましい。[B]撥水性重合体がフッ素原子を含むことで、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜は、撥水性をより高めることができる。その結果、当該フォトレジスト組成物が含有する他の成分の液浸露光用液体への溶出を抑制することができると共に、液浸露光用液体に由来する水滴がレジスト膜上に残り難くなるため、液浸露光用液体に起因するブロッブ欠陥の発生をより抑制することができる。
【0012】
[B]撥水性重合体は、下記式(2−1)で表される構造単位(II−1)、式(2−2)で表される構造単位(II−2)及び式(2−3)で表される構造単位(II−3)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
【化2】
(式(2−1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数1〜20のフッ素化アルキル基である。
式(2−2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Xは、単結合、酸素原子、−O−CO−*、−CO−O−*、又は−SO−O−*である。*は、Rに結合する部位を示す。Rは、単結合又は炭素数1〜20の(n+1)価の炭化水素基である。R10は、単結合又は炭素数4〜20の環状構造を有する2価の有機基である。R11は、単結合又は炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基である。但し、上記鎖状炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子で置換されていてもよい。Xは、酸素原子、−CO−O−**、又は−SO−O−**である。**は、R12に結合する部位を示す。R12は、水素原子又はアルカリ解離性基である。nは、1〜3の整数である。但し、nが2以上の場合、複数のR10、R11、X及びR12は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(2−3)中、R13は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R14は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。R15及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜20のフッ素化アルキル基である。但し、R15及びR16の両方が水素原子となる場合はない。R17は、水素原子又は酸解離性基である。)
【0013】
[B]撥水性重合体が上記特定構造単位を有することで、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜は、撥水性にさらに優れると共に、感度を十分満足し、ブロッブ欠陥の発生をさらに抑制することができる。
【0014】
[B]撥水性重合体は構造単位(II−2)を有し、上記式(2−2)のXは酸素原子であり、かつR12は下記式(3)で表されるアルカリ解離性基であることが好ましい。
【化3】
(式(3)中、R18は、炭素数1〜20のフッ素化アルキル基である。)
【0015】
当該フォトレジスト組成物は、[B]撥水性重合体が上記式(2−2)で表される上記特定構造の基を含む構造単位を有することで、アルカリ現像の際の現像液に対する親和性をより向上させることができる。それにより、当該フォトレジスト組成物は、ブロッブ欠陥の発生をさらに抑制することができる。
【0016】
[B]撥水性重合体は構造単位(II−2)を有し、上記式(2−2)のXは−CO−O−**であり、かつR12は下記式(4−1)、(4−2)又は(4−3)で表されるアルカリ解離性基であることが好ましい。
【化4】
(式(4−1)中、R19及びR20は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。但し、上記アルキル基が有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。また、R19及びR20は、互いに合わせられそれらが結合する炭素原子と共に2価の脂環式基を形成していてもよい。
式(4−2)中、R21は、フッ素原子、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のアシロキシ基又は炭素数1〜10のアルキル基である。aは、0〜4の整数である。但し、aが2以上の場合、複数のR21は、同一でも異なっていてもよい。bは、0又は1である。
式(4−3)中、R22は、フッ素原子、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のアシロキシ基又は炭素数1〜10のアルキル基である。cは、0〜4の整数である。但し、cが2以上の場合、複数のR22は、同一でも異なっていてもよい。)
【0017】
当該フォトレジスト組成物は、[B]撥水性重合体が上記式(2−2)で表される上記特定構造の基を含む構造単位を有することで、アルカリ現像の際の現像液に対する親和性をより向上させることができる。それにより、当該フォトレジスト組成物は、ブロッブ欠陥の発生をさらに抑制することができる。
【0018】
[B]撥水性重合体は構造単位(II−3)を有し、上記式(2−3)のR17は、下記式(5)で表される酸解離性基であることが好ましい。
【化5】
(式(5)中、R23は、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式基である。R24及びR25は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基若しくは炭素数4〜20の脂環式基であるか、又はR24及びR25が互いに合わせられこれらが結合している炭素原子と共に構成される炭素数4〜20の2価の脂環式基を表す。)
【0019】
[B]撥水性重合体が、上記式(2−3)で表される特定構造の酸解離性基を含む構造単位を有することで、当該フォトレジスト組成物の感度を向上させることができる。
【0020】
本発明のレジストパターン形成方法は、
(1)本発明のフォトレジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜に液浸露光する工程、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を含む。
【0021】
当該レジストパターン形成方法によると、ブロッブ欠陥の発生が抑制され、良好なレジストパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のフォトレジスト組成物によれば、撥水性重合体を含む撥水性の層が表面付近に偏在化し易いため、現像欠陥の発生を抑制することができる。従って、当該フォトレジスト組成物は、半導体デバイス製造用の化学増幅型レジスト膜形成用、特に液浸露光用のレジスト膜形成用として好適に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<フォトレジスト組成物>
当該フォトレジスト組成物は、[A]ベース重合体、[B]撥水性重合体及び[C]酸発生体を含有する。また、当該フォトレジスト組成物は、[D]酸拡散制御剤、[E]添加剤、[F]溶媒を含有することが好ましい。なお、本発明の効果を損なわない限り、上記以外のその他の成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0024】
<[A]ベース重合体>
[A]ベース重合体は、上記式(1)で表される構造単位(I)を有する。[A]ベース重合体は、重合体主鎖に直結した上記特定のラクトン構造を含む構造単位(I)を有するため、当該フォトレジスト組成物において、[B]撥水性重合体と分離し易い。その結果、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜においては、[B]撥水性重合体を含む撥水性の層をより表面付近に偏在化させることができる。また、[A]ベース重合体は、構造単位(I)に加えて、酸解離性基を含む構造単位(III)及び/又はラクトン基、環状カーボネート基及びスルトン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む構造単位(IV)を有することが好ましい。さらに、本発明の効果を損なわない限り、他の構造単位を有してもよい。以下、それぞれの構造単位について説明する。なお、[A]ベース重合体は、各構造単位をそれぞれ1種単独で有していてもよいし、2種以上有していてもよい。
【0025】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、上記式(1)で表される。上記式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシ基若しくは炭素数1〜20の1価の有機基であるか、又はR及びRが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の環構造を表す。但し、RとRが共にヒドロキシ基である場合はない。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜20の1価の有機基であるか、又はR及びRが互いに合わせられこれらが結合している炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の環構造を表す。mは、1〜4の整数である。mが2以上の場合、複数のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0026】
上記R〜Rで表される炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば炭素数1〜20の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、環員数3〜10の複素環基、エポキシ基、シアノ基、カルボキシ基、及び−R’−Q−R”で表される基等が挙げられる。但し、R’は単結合又は炭素数1〜20の炭化水素基である。R”は置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。Qは−O−、−CO−、−NH−、−SO−、−SO−又はこれらを組み合わせてなる基である。上記鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子等のハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基等で置換されていてもよい。なお、ここで、有機基とは、少なくとも1つの炭素原子を含む基をいう。
【0027】
上記炭素数1〜20の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びペンチル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましい。
【0028】
上記炭素数3〜20の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等の単環の脂環式炭化水素基;ノルボルニル基、アダマンチル基等の多環の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0029】
上記炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0030】
上記環員数3〜10の複素環基としては、例えばラクトン基、環状カーボネート基、スルトン基、フラン基、チオフェン基、ベンゾフラン基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾフラン基、ジベンゾチオフェン基、ピリジン基等が挙げられる。これらのうち、ラクトン基、環状カーボネート基及びスルトン基が好ましく、ラクトン基がより好ましい。
【0031】
上記−R’−Q−R”におけるR’及びR”で表される炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜20の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
これらのうち、R及びRで表される有機基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0032】
及びR、又はR及びRが互いに合わせられこれらが結合している炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の環構造としては、例えばシクロプロパンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の脂環式基、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む複素環基等が挙げられる。これらのうち、脂環式基としては、単環の脂環式基が好ましく、シクロペンタンジイル基及びシクロヘキサンジイル基がより好ましい。複素環基としては、環状エーテル基、ラクトン基及びスルトン基が好ましい。
上記R及びRとしては、これらR及びRが互いに合わせられこれらが結合している炭素原子と共に構成される炭素数3〜10の環構造であることが好ましい。
【0033】
構造単位(I)としては、例えば下記式(1−1)〜(1−71)で表される構造単位等が挙げられる。
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
これらのうち、R及びRの少なくとも1つの基が酸素原子を含む構造単位、R及びRの少なくとも1つの基が環状の有機基である構造単位、R及びRが結合してそれらが結合する炭素原子と共に環構造を形成している構造単位等が好ましい。中でも、上記式(1−1)〜(1−9)、(1−12)〜(1−21)、(1−25)〜(1−47)、(1−55)〜(1−67)、(1−69)〜(1−71)等で表される構造単位がより好ましく、(1−1)、(1−17)及び(1−71)で表される構造単位がさらに好ましい。
【0039】
[A]ベース重合体において、構造単位(I)の含有率は、5モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましい。当該フォトレジスト組成物は、構造単位(I)の含有量を上記範囲とすることで、溶媒に対する溶解性に優れるため、当該フォトレジスト組成物による本発明の効果を十分に奏することができる。
【0040】
構造単位(I)を与える単量体としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
【化12】
【0044】
【化13】
【0045】
構造単位(I)を与える単量体は、例えば下記方法により製造することができる。
【0046】
触媒として亜鉛粉末が添加されたテトラヒドロフラン(THF)溶媒中に、それぞれTHFに溶解させた2−メチルテトラヒドロフラン−3−オン(化合物a)と、エチル(2−ブロモメチル)アクリレート(化合物b)とを滴下し、室温で撹拌させることで、化合物aと化合物bとが反応し、6−メチル−3−メチレン−1,7−ジオキサスピロ[4,4]ノナン−2−オン(上記式(1−1)で表される構造単位を与える単量体化合物)が合成される。なお、亜鉛粉末が添加されたTHF溶媒中に、化合物a及びbの添加前にクロロトリメチルシラン等の活性化剤を入れるとよい。また、式(1−1)で表される構造単位を与える単量体化合物以外の化合物においては、適宜化合物aを替えること等によって同様に合成することができる。
【0047】
[構造単位(III)]
[A]ベース重合体は、酸解離性基を含む構造単位(III)をさらに有することが好ましい。[A]ベース重合体が、構造単位(III)を有することで、当該フォトレジスト組成物は、感度等の基本特性を十分満足することができる。
【0048】
構造単位(III)としては、下記式(6)で表される構造単位が好ましい。
【0049】
【化14】
【0050】
上記式(6)中、R26は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R27は、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式基である。R28及びR29は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基若しくは炭素数4〜20の脂環式基であるか、又はR28及びR29が互いに合わせられこれらが結合している炭素原子と共に構成される炭素数4〜20の2価の脂環式基を表す。また、上記アルキル基及び脂環式基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0051】
上記R27〜R29が表す炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基等が挙げられる。
【0052】
上記R27〜R29が表す炭素数4〜20の脂環式基、並びにR28及びR29が互いに合わせられこれらが結合している炭素原子と共に構成される炭素数4〜20の2価の脂環式基としては、例えばアダマンタン骨格、ノルボルナン骨格等の有橋式骨格を有する多環の脂環式基;シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルカン骨格を有する単環の脂環式基が挙げられる。また、これらの基は、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上で置換されていてもよい。
【0053】
構造単位(III)としては、下記式で表される構造単位が好ましい。
【0054】
【化15】
【0055】
上記式中、R26は、上記式(6)と同義である。R27は、炭素数1〜4のアルキル基である。pは、1〜6の整数である。
【0056】
これらのうち、より好ましい構造単位として、下記式(3−1)〜(3−22)で表される構造単位が挙げられる。
【0057】
【化16】
【0058】
上記式中、R26は上記式(6)と同義である。
【0059】
これらのうち、上記式(3−2)〜(3−4)、(3−6)、(3−7)、(3−9)、(3−11)〜(3−14)、(3−18)、(3−19)、(3−21)及び(3−22)で表される構造単位がさらに好ましい。
【0060】
構造単位(III)を与える単量体としては、1−アルキル−シクロアルキルエステル等の単環の脂環式基を有する酸解離性基を含む単量体、2−アルキル−2−ジシクロアルキルエステル等の多環の脂環式基を有する酸解離性基を含む単量体等が挙げられる。
【0061】
[A]ベース重合体において、構造単位(III)の含有率としては、10モル%以上80モル%以下が好ましく、15モル%以上70モル%以下がより好ましく、20モル%以上60モル%以下がさらに好ましい。構造単位(III)の含有率を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物は感度を十分満足する。
【0062】
[構造単位(IV)]
[A]ベース重合体は、ラクトン基、環状カーボネート基又はスルトン基を含む構造単位(IV)を有することが好ましい。[A]ベース重合体が構造単位(IV)をさらに有することで、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜は、基板への密着性を向上することができる。ここで、ラクトン基とは、−O−C(O)−で表される構造を含むひとつの環(ラクトン環)を含有する基をいう。また、環状カーボネート基とは、−O−C(O)−O−で表される構造を含むひとつの環(環状カーボネート環)を含有する基をいう。スルトン基とは、−O−SO−で表される構造を含むひとつの環(スルトン環)を含有する基をいう。なお、ラクトン環、環状カーボネート環又はスルトン環を1つめの環として数え、ラクトン環、環状カーボネート環又はスルトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基という。
【0063】
構造単位(IV)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0064】
【化17】
【0065】
【化18】
【0066】
上記式中、R30は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0067】
これらのうち、レジスト膜の密着性を向上させる観点から、上記式(iv−1)で表される構造単位が好ましい。
【0068】
構造単位(IV)を与える単量体化合物としては、例えば下記式で表される化合物が挙げられる。
【0069】
【化19】
【0070】
【化20】
【0071】
[A]ベース重合体における構造単位(IV)の含有率は、10モル%以上80モル%以下が好ましく、20モル%以上70モル%以下がより好ましい。構造単位(IV)の含有率を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物から得られるレジスト膜は基板等への密着性を向上させることができる。
【0072】
[その他の構造単位]
[A]ベース重合体は、本発明の効果を損なわない限り、上記構造単位(I)、(III)及び(IV)以外のその他の構造単位を有してもよい。その他の構造単位としては、例えば極性基を含む構造単位(V)等が挙げられる。[A]ベース重合体が構造単位(V)をさらに有することで、[A]ベース重合体と他の成分との相溶性が向上するため、当該フォトレジスト組成物は、リソグラフィー性能をより優れたものとすることができる。
【0073】
<[A]ベース重合体の合成方法>
[A]ベース重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。例えば、単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。
【0074】
これらの方法における反応温度は開始剤種によって適宜決定すればよい。通常30℃〜180℃であり、40℃〜160℃が好ましく、50℃〜140℃がより好ましい。滴下時間は、反応温度、開始剤の種類、反応させる単量体等の条件によって異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜6時間が好ましく、1時間〜5時間がより好ましい。また、滴下時間を含む全反応時間も、滴下時間と同様に条件により異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜7時間が好ましく、1時間〜6時間がより好ましい。
【0075】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等が挙げられる。これらの開始剤は2種以上を混合して使用してもよい。
【0076】
重合溶媒としては、重合禁止効果を有するニトロベンゼン、連鎖移動効果を有するメルカプト化合物等重合を阻害する溶媒以外の溶媒であって、その単量体を溶解可能な溶媒であれば特に限定されない。重合溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル・ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独又は2種以上を併用できる。
【0077】
重合反応により得られた樹脂は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の樹脂を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、樹脂を回収することもできる。
【0078】
[A]ベース重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1,000以上500,000以下が好ましく、2,000以上400,000以下がより好ましい。なお、[A]ベース重合体のMwが1,000未満であると、レジストとしたときの耐熱性が低下する傾向がある。一方、[A]ベース重合体のMwが500,000を超えると、レジストとしたときの現像性が低下する傾向がある。
【0079】
また、[A]ベース重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がより好ましい。Mw/Mnをこのような範囲とすることで、レジスト膜が解像性能に優れたものとなる。
【0080】
なお、本明細書のMw及びMnは、GPCカラム(東ソー製、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値をいう。
【0081】
<[B]撥水性重合体>
当該フォトレジスト組成物は、[A]ベース重合体と共に[B]撥水性重合体を必須成分として含有する。当該フォトレジスト組成物が[B]撥水性重合体を含有することで、形成されるレジスト膜は撥水性を有することができる。ここで、レジスト膜における撥水性とは、水に対する後退接触角が70°以上となる性質をいう。また、[B]撥水性重合体は、フッ素原子を含む重合体であることが好ましく、その重合体の主鎖、側鎖、又は主鎖及び側鎖にフッ素原子を有する重合体であるとよい。[B]撥水性重合体により、レジスト膜の表面付近に撥水性の層が形成されため、[C]酸発生剤や[D]酸拡散制御剤等の液浸露光用液体への溶出を抑制し、またレジスト膜と液浸露光用液体との後退接触角の向上により、液浸露光用液体に由来する水滴が、レジスト膜上に残り難く液浸露光用液体に起因する欠陥の発生を抑制することができる。
【0082】
[B]撥水性重合体は、後述の構造単位(II)を有することが好ましい。また、構造単位(II)以外に、酸解離性基を含む構造単位(III)を有してもよい。さらに、本発明の効果を損なわない限り、構造単位(II)及び構造単位(III)以外のその他の構造単位を有していてもよい。なお、[B]撥水性重合体は、各構造単位を1種単独で有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。以下、各構造単位について詳述する。
【0083】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、上記式(2−1)で表される構造単位(II−1)、式(2−2)で表される構造単位(II−2)及び式(2−3)で表される構造単位(II−3)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位であり、好ましくはフッ素原子を含む。
【0084】
(構造単位(II−1))
構造単位(II−1)は、上記式(2−1)で表される。[B]撥水性重合体が上記特定構造の構造単位(II−1)を有することで、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜は、撥水性を十分満足することができる。
【0085】
上記式(2−1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数1〜20のフッ素化アルキル基である。
【0086】
上記Rで表される炭素数1〜20のフッ素化アルキル基としては、例えば少なくとも1つ以上のフッ素原子で置換された炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、少なくとも1つ以上のフッ素原子で置換された炭素数4〜20の1価の脂環式基若しくはそれから誘導される基等が挙げられる。
【0087】
上記炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−(2−メチルプロピル)基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−(2−メチルブチル)基、1−(3−メチルブチル)基、2−(2−メチルブチル)基、2−(3−メチルブチル)基、ネオペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−(2−メチルペンチル)基、1−(3−メチルペンチル)基、1−(4−メチルペンチル)基、2−(2−メチルペンチル)基、2−(3−メチルペンチル)基、2−(4−メチルペンチル)基、3−(2−メチルペンチル)基、3−(3−メチルペンチル)基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、1−プロピル基及び2−プロピル基が好ましい。
【0088】
上記炭素数4〜20の1価の脂環式基若しくはそれから誘導される基としては、例えばシクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、1−(1−シクロペンチルエチル)基、1−(2−シクロペンチルエチル)基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−(1−シクロヘキシルエチル)基、1−(2−シクロヘキシルエチル基)、シクロヘプチル基、シクロヘプチルメチル基、1−(1−シクロヘプチルエチル)基、1−(2−シクロヘプチルエチル)基等が挙げられる。
【0089】
上記Rとしては、少なくとも1つ以上のフッ素原子で置換された炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、少なくとも1つ以上のフッ素原子で置換されたメチル基、エチル基、1−プロピル基及び2−プロピル基がより好ましく、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、1−パーフルオロプロピル基及び2−パーフルオロプロピル基がさらに好ましい。
【0090】
上記構造単位(II−1)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0091】
【化21】
【0092】
上記構造単位(II−1)を与える単量体としては、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)(メタ)アクリル酸エステル、及び1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロヘキシル)(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0093】
[B]撥水性重合体における上記構造単位(II−1)の含有率は、5モル%以上60モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましい。構造単位(II−1)の含有率を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物から得られるレジスト膜は撥水性を十分満足することができる。
【0094】
(構造単位(II−2))
構造単位(II−2)は、上記式(2−2)で表される。[B]撥水性重合体が、上記式(2−2)で表されるようなアルカリ解離性基を含む構造単位又はフッ素化アルコールの構造を含む構造単位を有することで、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜は、アルカリ現像液に対する親和性を向上させることができる。その結果、ブロッブ欠陥等の現像欠陥の発生を抑制することができる。
【0095】
上記式(2−2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Xは、単結合、酸素原子、−O−CO−*、−CO−O−*、又は−SO−O−*である。*は、Rに結合する部位を示す。Rは、単結合又は炭素数1〜20の(n+1)価の炭化水素基である。R10は、単結合又は炭素数4〜20の環状構造を有する2価の有機基である。R11は、単結合又は炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基である。但し、上記鎖状炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子で置換されていてもよい。Xは、酸素原子、−CO−O−**、又は−SO−O−**である。**は、R12に結合する部位を示す。R12は、水素原子又はアルカリ解離性基である。nは、1〜3の整数である。但し、nが2以上の場合、複数のR10、R11、X及びR12は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R11及びR12の少なくともいずれかは、フッ素原子を含んでいることが好ましい。
【0096】
上記Xとしては、酸素原子、−O−CO−*及び−CO−O−*が好ましく、−CO−O−*がより好ましい。
【0097】
上記Rで表される炭素数1〜20の(n+1)価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状の(n+1)価の炭化水素基、炭素数4〜20の(n+1)価の脂環式基等が挙げられる。
【0098】
上記炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状の(n+1)価の炭化水素基としては、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン等のアルカンから(n+1)個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0099】
上記炭素数4〜20の(n+1)価の脂環式基としては、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロデカン、シクロドデカン、ノルボルナン、アダマンタン等のシクロアルカンから、(n+1)個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0100】
上記Rとしては、単結合及び直鎖状又は分岐状の(n+1)価の炭化水素基が好ましく、直鎖状又は分岐状の(n+1)価の炭化水素基としては、エタン、プロパン及びブタンから(n+1)個の水素原子を除いた基がより好ましい。
【0101】
上記R10で表される炭素数4〜20の環状構造を有する2価の有機基としては、例えば炭素数4〜20の2価の脂環式基、炭素数4〜20の2価の複素環基等が挙げられる。
【0102】
上記炭素数4〜20の2価の脂環式基としては、例えばシクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等が挙げられる。これらのうち、ノルボルナンジイル基及びアダマンタンジイル基のような多環の脂環式基が好ましい。
【0103】
上記環員数4〜20の複素環基としては、例えばラクトン基、環状カーボネート基、スルトン基、フラン基、チオフェン基、ベンゾフラン基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾフラン基、ジベンゾチオフェン基、ピリジン基等が挙げられる。これらのうち、ラクトン基、環状カーボネート基及びスルトン基が好ましく、ラクトン基がより好ましい。
【0104】
上記R10としては、単結合又は炭素数4〜20の2価の脂環式基が好ましく、炭素数4〜20の2価の脂環式基としては、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の多環の脂環式基がより好ましく、アダマンタンジイル基がさらに好ましい。
【0105】
上記R11で表される炭素数1〜20のフッ素原子で置換されていてもよい鎖状炭化水素基としては、例えばメタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、n−ブタンジイル基、i−ブタンジイル基、n−ペンタンジイル基、i−ペンタンジイル基、n−ヘキサンジイル基、i−ヘキサンジイル基等の2価の鎖状炭化水素基等が挙げられる。また、これらの鎖状炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている基等も挙げられる。これらのうち、これらの鎖状炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている基が好ましく、ジフルオロメチレン基がより好ましい。
【0106】
上記Xとしては、酸素原子及び−CO−O−**が好ましい。
【0107】
上記R12で表されるアルカリ解離性基としては、現像工程に用いられるアルカリ現像液によって解離する基であれば特に限定されないが、上記式(3)で表される基及び上記式(4−1)、(4−2)及び(4−3)で表される基が好ましい。特に、アルカリ解離性に優れるという観点から、上記Xが酸素原子であり、かつ上記R12が上記式(3)で表される基であることが好ましい。また、上記Xが−CO−O−**であり、かつ上記R12が上記式(4−1)、(4−2)又は(4−3)で表される基であることも好ましい。
【0108】
上記式(3)中、R18は、炭素数1〜20のフッ素化アルキル基である。
【0109】
上記R18で表される炭素数1〜20のフッ素化アルキル基としては、上記Rで表される炭素数1〜20のフッ素化アルキル基と同様の基が挙げられる。これらのうち、パーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0110】
上記式(4−1)中、R19及びR20は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。但し、上記アルキル基が有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。また、R19及びR20は、互いに合わせられそれらが結合する炭素原子と共に2価の脂環式基を形成していてもよい。
【0111】
上記R19及びR20で表される炭素数1〜10のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基等が挙げられる。
【0112】
上記R19及びR20が、互いに合わせられそれらが結合する炭素原子と共に形成してもよい2価の脂環式基としては、例えばシクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等が挙げられる。
【0113】
上記式(4−1)で表される基としては、例えばメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−(2−メチルブチル)基、1−(3−メチルブチル)基、2−(3−メチルブチル)基、ネオペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−(2−メチルペンチル)基、1−(3−メチルペンチル)基、1−(4−メチルペンチル)基、2−(3−メチルペンチル)基、2−(4−メチルペンチル)基、3−(2−メチルペンチル)基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基が好ましい。
【0114】
上記式(4−2)中、R21は、フッ素原子、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のアシロキシ基又は炭素数1〜10のアルキル基である。aは、0〜4の整数である。但し、aが2以上の場合、複数のR21は、同一でも異なっていてもよい。bは、0又は1である。
【0115】
上記R21で表される炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基等が挙げられる。
【0116】
上記R21で表される炭素数1〜10のアシル基としては、例えばアセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基等が挙げられる。
【0117】
上記R21で表される炭素数1〜10のアシロキシ基としては、例えばアセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0118】
上記R21で表される炭素数1〜10のアルキル基としては、上記R19及びR20で表される炭素数1〜10のアルキル基として例示した基と同様の基が挙げられる。
【0119】
上記式(4−3)中、R22は、フッ素原子、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のアシロキシ基又は炭素数1〜10のアルキル基である。cは、0〜4の整数である。但し、cが2以上の場合、複数のR22は、同一でも異なっていてもよい。
【0120】
上記R22で表される炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のアシロキシ基及び炭素数1〜10のアルキル基としては、上記R21で表されるそれぞれの基として例示した基と同様の基が挙げられる。
【0121】
上記構造単位(II−2)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0122】
【化22】
【0123】
上記式中、Rは、上記式(2−2)と同義である。
【0124】
構造単位(II−2)を与える単量体としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0125】
【化23】
【0126】
[B]撥水性重合体における上記構造単位(II−2)の含有率は、5モル%以上90モル%以下が好ましく、10モル%以上80モル%以下がより好ましい。構造単位(II−2)の含有率を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物から得られるレジスト膜は撥水性を十分満足することができる。
【0127】
(構造単位(II−3))
構造単位(II−3)は、上記式(2−3)で表される。[B]撥水性重合体は、酸解離性基を含む上記特定構造の構造単位(II−3)を有することで、レジスト膜の露光部で発生した酸の作用により極性基を生じ、現像液への溶解性を向上させることができる。その結果、当該フォトレジスト組成物は、ブロッブ欠陥等の現像欠陥の発生を抑制することができる。
【0128】
上記式(2−3)中、R13は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R14は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。R15及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜20のフッ素化アルキル基である。但し、R15及びR16の両方が水素原子となる場合はない。R17は、水素原子又は酸解離性基である。
【0129】
上記R14で表される炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状の2価の炭化水素基、炭素数4〜20の2価の脂環式基等が挙げられる。
【0130】
上記炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状の2価の炭化水素基としては、例えばメチレン基、エタンジイル基、プロパンジイル基、n−ブタンジイル基、i−ブタンジイル基、n−ペンタンジイル基、i−ペンタンジイル基、n−ヘキサンジイル基、i−ヘキサンジイル基等が挙げられる。これらのうち、エタンジイル基及びプロパンジイル基が好ましく、プロパンジイル基がより好ましい。
【0131】
上記炭素数4〜20の2価の脂環式基としては、例えばシクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等が挙げられる。
【0132】
上記R14としては炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状の2価の炭化水素基が好ましく、エタンジイル基及びプロパンジイル基が好ましく、プロパンジイル基がより好ましい。
【0133】
上記R15及びR16で表される炭素数1〜20のフッ素化アルキル基としては、上記Rで表される炭素数1〜20のフッ素化アルキル基と同様の基が挙げられる。これらのうち、パーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0134】
上記R15及びR16としては、フッ素原子及びパーフルオロアルキル基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0135】
上記R17で表される酸解離性基としては、[C]酸発生体から発生する酸の作用により解離する基であれば特に限定されないが、アルコキシ置換メチル基、及び上記式(5)で表される基であることが好ましい。上記R17で表される酸解離性基が上記特定構造であると酸により解離し易いため、露光部における[B]撥水性重合体の現像液への溶解性を向上させることができる。
【0136】
上記式(5)中、R23は、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式基である。R24及びR25は、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基若しくは炭素数4〜20の脂環式基であるか、又はR24及びR25が互いに合わせられこれらが結合している炭素原子と共に構成される炭素数4〜20の2価の脂環式基を表す。
【0137】
上記R23〜R25で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基等が挙げられる。
【0138】
上記R23〜R25で表される炭素数4〜20の脂環式基、並びにR24及びR25が互いに合わせられこれらが結合している炭素原子と共に構成される脂環式基としては、例えばアダマンタン骨格、ノルボルナン骨格等の有橋式骨格を有する多環の脂環式基;シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルカン骨格を有する単環の脂環式基が挙げられる。また、これらの基は、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上で置換されていてもよい。
【0139】
上記R17としては、水素原子も好ましい。上記R17が水素原子である場合には、上記構造単位(II−3)が極性の高いカルボキシ基を有することとなり、[B]撥水性重合体は、後述するパターン形成方法の現像工程において、現像液に対する親和性を向上させることができる。
【0140】
上記構造単位(II−3)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0141】
【化24】
【0142】
上記式中、R13は、上記式(2−3)と同義である。
【0143】
上記構造単位(II−3)を与える単量体としては、例えば下記式で表される単量体等が挙げられる。
【0144】
【化25】
【0145】
[B]撥水性重合体における上記構造単位(II−3)の含有率は、5モル%以上50モル%以下が好ましく、10モル%以上30モル%以下がより好ましい。構造単位(II−3)の含有率を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物から得られるレジスト膜は撥水性を十分満足することができる。
【0146】
[B]撥水性重合体は、構造単位(II−1)、構造単位(II−2)及び構造単位(II−3)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。[B]撥水性重合体は、構造単位(II−1)、構造単位(II−2)及び構造単位(II−3)からなる群より選択される構造単位を2種以上有することがより好ましく、3種有することがさらに好ましい。
【0147】
[構造単位(III)]
[B]撥水性重合体は、構造単位(III)をさらに有することで、当該フォトレジスト組成物の感度により優れる。なお、構造単位(III)については、[A]ベース重合体が有する構造単位(III)についての説明を適用できる。
【0148】
[B]撥水性重合体における上記構造単位(III)の含有率は、10モル%以上90モル%以下が好ましく、20モル%以上80モル%以下がより好ましい。構造単位(III)の含有率を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物から得られるレジスト膜は感度を十分満足することができる。
【0149】
当該フォトレジスト組成物における[B]撥水性重合体の含有量としては、[A]ベース重合体100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、0.5質量部以上10質量部以下がより好ましい。[B]撥水性重合体の含有量を上記特定範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜は、疎水性を十分満足すると共に、ブロッブ欠陥等の現像欠陥の発生を抑制することができる。
【0150】
<[C]酸発生体>
[C]酸発生体は、レジストパターン形成の一工程である露光工程において、マスクを通過した光によって酸を発生する化合物である。当該フォトレジスト組成物における[C]酸発生体の含有形態としては、後述するような化合物の態様(以下、この態様を「[C]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた態様でも、これらの両方の態様でもよい。
【0151】
[C]酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。これらの[C]酸発生剤のうち、オニウム塩化合物が好ましい。
【0152】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む)、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。これらのうち、スルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む)及びヨードニウム塩がより好ましい。
【0153】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウム6−(1−アダマンチルカルボニロキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロヘキサンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(1−アダマンチル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート等が挙げられる。これらのうち、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム6−(1−アダマンチルカルボニロキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロヘキサンスルホネート及びトリフェニルスルホニウム2−(1−アダマンチル)1,1−ジフルオロエタンスルホネートが好ましい。
【0154】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−(1−ノルボルニル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。これらのうち、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート及び1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−(1−ノルボルニル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートが好ましい。
【0155】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。これらのうち、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0156】
これらの[C]酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[C]酸発生体が「酸発生剤」である場合の使用量としては、当該フォトレジスト組成物により形成されるレジスト膜の感度及びリソグラフィー性能を確保する観点から、[A]ベース重合体100質量部に対して、0.01質量部以上25質量部以下が好ましく、0.1質量部以上20質量部以下がより好ましい。
【0157】
<[D]酸拡散制御体>
[D]酸拡散制御体は、露光により[C]酸発生体から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、未露光部における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する成分である。フォトレジスト組成物が[D]酸拡散制御体を含有することで、得られるフォトレジスト組成物の貯蔵安定性がさらに向上し、またレジストとしての解像性がさらに向上する。また、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。なお、[D]酸拡散制御体の本発明におけるフォトレジスト組成物における含有形態としては、遊離の化合物の形態(以下、適宜「[D]酸拡散制御剤」ともいうこともある)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0158】
[D]酸拡散制御剤としては、例えばアミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0159】
アミン化合物としては、例えばモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ(シクロ)アルキルアミン類;トリ(シクロ)アルキルアミン類;置換アルキルアニリン又はその誘導体;エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0160】
アミド基含有化合物としては、例えばN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。
【0161】
ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0162】
含窒素複素環化合物としては、例えばイミダゾール類;ピリジン類;ピペラジン類;ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、2−フェニルベンゾイミダゾール等が挙げられる。これらのうち、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン及び2−フェニルベンゾイミダゾールが好ましい。
【0163】
また、[D]酸拡散制御剤として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基は、露光部においては酸を発生して[A]ベース重合体の現像液に対する溶解性を高め、結果として現像後の露光部表面のラフネスを抑制する。一方、未露光部ではアニオンによる高い酸捕捉機能が発揮されクエンチャーとして機能し、露光部から拡散する酸を捕捉する。すなわち、未露光部のみにおいてクエンチャーとして機能するため、脱保護反応のコントラストが向上し、結果として解像性をより向上させることができる。光崩壊性塩基の一例として、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物がある。オニウム塩化合物としては、例えば下記式(D1)で示されるスルホニウム塩化合物、下記式(D2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0164】
【化26】
【0165】
上記式(D1)及び式(D2)中、R31〜R35はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子又は−SO−Rである。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基である。Zは、OH、R36−COO、R−SO−N―R36、R36−SO又は下記式(D3)で示されるアニオンである。R36は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアルカリール基である。上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルカリール基の水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもいてもよい炭素数3〜20のシクロアルキル基である。上記アルキル基及びシクロアルキル基の水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。但し、ZがR36−SOの場合、SOが結合する炭素原子にフッ素原子が結合する場合はない。
【0166】
【化27】
【0167】
上記式(D3)中、R37は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基である。uは0〜2の整数である。
【0168】
上記光崩壊性塩基としては、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート及びトリフェニルスルホニウムサリチレートが好ましい。
【0169】
当該フォトレジスト組成物における[D]酸拡散制御剤の含有量としては、[A]ベース重合体100質量部に対して、10質量部未満が好ましく、5質量部未満がより好ましい。[D]酸拡散制御剤の含有量を上記特定範囲とすることで、レジストとしての感度が維持され易い。これらの[D]酸拡散抑制剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0170】
<[E]添加剤>
当該フォトレジスト組成物は、液浸露光法を使用しレジストパターンを形成する場合等に、[E]添加剤を配合することができる。当該フォトレジスト組成物が含有してもよい[E]添加剤としては、[B]撥水性重合体の偏在化を促進させる成分が好ましい。[E]添加剤としては、例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート等が挙げられる。これらのうち、ラクトンが好ましく、γ−ブチロラクトンがより好ましい。
【0171】
<[F]溶媒>
当該フォトレジスト組成物は通常[F]溶媒を含有する。[F]溶媒は少なくとも[A]ベース重合体及び[B]撥水性重合体、好適成分である[C]酸発生体及び[D]酸拡散制御体、並びにその他の任意成分を溶解できれば特に限定されない。[F]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。
【0172】
アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0173】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0174】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0175】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0176】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0177】
炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0178】
これらのうち、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンがより好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0179】
<その他の任意成分>
当該フォトレジスト組成物は、その他の任意成分として、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等を含有できる。なお、上記フォトレジスト組成物は、上記その他の任意成分をそれぞれ1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0180】
[界面活性剤]
界面活性剤は、当該レジストパターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物の塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。
【0181】
[脂環式骨格含有化合物]
脂環式骨格含有化合物は、当該レジストパターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物のドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0182】
[増感剤]
増感剤は、[C]酸発生体からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該レジストパターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0183】
<フォトレジスト組成物の調製方法>
当該フォトレジスト組成物は、例えば[F]溶媒中で[A]ベース重合体、[B]撥水性重合体、[C]酸発生剤、[D]酸拡散制御剤及びその他の任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。また、当該フォトレジスト組成物は、適当な[F]溶媒に溶解又は分散させた状態に調製され使用され得る。
【0184】
<レジストパターンの形成方法>
本発明のフォトレジスト組成物を用いたレジストパターンの形成方法について、以下に説明する。
【0185】
当該レジストパターンの形成方法は、
(1)本発明のフォトレジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程(以下、「工程(1)」ともいう)、
(2)上記レジスト膜に液浸露光する工程(以下、「工程(2)」ともいう)、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「工程(3)」ともいう)
を有する。
【0186】
当該レジストパターン形成方法によると、当該フォトレジスト組成物を用いるため、感度等の基本性能を満足し、液浸露光の際には撥水性を十分確保できつつ、現像工程においては、アルカリ現像液に対する親和性を向上させることができるため、現像欠陥の発生を抑制することができる。以下、各工程を詳述する。
【0187】
[工程(1)]
本工程では、当該フォトレジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって、シリコンウエハー、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウエハー等の基板上に所定の膜厚となるよう塗布し、場合によっては通常70℃〜160℃程度の温度でプレベーク(PB)することにより塗膜中の溶媒を揮発させレジスト膜を形成する。
【0188】
[工程(2)]
本工程では、工程(1)で形成されたレジスト膜に水等の液浸媒体を介して、放射線を照射し露光させる。なお、この際所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射する。放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線、EUV等から適宜選択して照射する。これらのうち、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、EUV(極紫外線、波長13.5nm)等のより微細なパターンを形成可能な光源であっても好適に使用できる。次いで、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うことが好ましい。このPEBにより、[A]ベース重合体等が有する酸解離性基の脱離を円滑に進行させることが可能となる。PEBの加熱条件は、フォトレジスト組成物の配合組成によって適宜選定することができるが、通常50℃〜180℃程度である。
【0189】
[工程(3)]
本工程は、露光されたレジスト膜を、現像液で現像することによりレジストパターンを形成する工程である。現像後は、水で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が好ましい。
【実施例】
【0190】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されない。なお、各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0191】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
東ソー社製GPCカラム(G2000HXL2本、G3000HXL1本、G4000HXL1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度(Mw/Mn)はMw及びMnの測定結果より算出した。
【0192】
13C−NMR分析]
13C−NMR分析は、JNM−EX270(日本電子社製)を用いて測定した。
【0193】
<[A]ベース重合体の合成>
[A]ベース重合体、及び後述する[B]撥水性重合体の合成に用いた単量体化合物を以下に示す。
【0194】
【化28】
【0195】
上記式(Ss−1)で表される化合物及び(Ss−2)で表される化合物は、以下の方法により合成した。
【0196】
[合成例1]化合物(Ss−1)の合成
滴下漏斗及びコンデンサーを備え乾燥させた1Lの三口反応器に、亜鉛粉末(Aldrich社製 粒子径150μm以下)13.1g(200mmol)を添加し、アルゴン雰囲気にした後、テトラヒドロフラン(THF)240mLを加えマグネチックスターラーで攪拌しながら、クロロトリメチルシラン1.9mL(15mmol)を加え、20〜25℃で30分間撹拌した。そこへ、2−メチルテトラヒドロフラン−3−オン20.0g(200mmol)をTHF40mLに溶解させた溶液を添加した。次に、エチル(2−ブロモメチル)アクリレート34.8g(180mmol)のTHF50mL溶液を滴下した。滴下後、室温で2時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーにより反応終了を確認した後、塩化アンモニウム水溶液及び酢酸エチルを加え分液した。得られた有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。その後、有機層を乾燥後減圧濃縮した。その後減圧蒸留を行い、透明油状物として6−メチル−3−メチレン−1,7−ジオキサスピロ[4.4]ノナン−2−オン(上記式(Ss−1)で表される化合物(Ss−1))20.4g(収率67%、純度99%)を得た。
【0197】
[合成例2]化合物(Ss−2)の合成
(Ss−2−A)の合成
20Lの反応器に、1,4−シクロヘキサンジオール1,004g(8.64mol)を添加し、そこへTHFを4,320mLを加え、メカニカルスターラーで攪拌した。反応器にp−トルエンスルホン酸ピリジニウム21.71g(86.39mmol)、続いて3,4−ジヒドロ−2H−ピラン726.73g(8.64mol)を加え室温にて12時間反応させた。その後、トリエチルアミン17.28g(170.77mmol)を加えて反応を停止させ、濃縮した。濃縮液をヘキサンと水で分液し、得られた水層にNaClを飽和するまで加えた後、塩化メチレンにて抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、下記式(Ss−2−A)で表される化合物(Ss−2−A)を737g(3.68mol、収率43%)得た。
【0198】
得られた(Ss−2−A)のH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ:1.24−1.91(m、13H)、1.94−2.05(m、2H)、3.45−3.53(m、1H)、3.59−3.70(m、1H)、3.71−3.78(m、1H)、3.87−3.95(m、1H)、4.67−4.71(m、1H)
【0199】
【化29】
【0200】
(Ss−2−B)の合成
5Lの三口反応器に、上記で得られた(Ss−2−A)300g(1.5mol)を添加し、そこへ塩化メチレン1,200mL、2−アザアダマンタン−N−オキシル0.228g(1.5mmol)、臭化カリウム17.85g(150mmol)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液450mLを順次添加し、メカニカルスターラーで攪拌した。反応器を0℃に冷却し、7%次亜塩素酸ナトリウム水溶液1913gと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液450mLを混合した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後0℃にて30分攪拌後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液100mL加えて反応を停止させ分液した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮することにより、下記式(Ss−2−B)で表される化合物(Ss−2−B)を214g(1.07mol、収率71%)得た。
【0201】
得られた(Ss−2−B)のH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ:1.51−2.16(m、10H)、2.22−2.35(m、2H)、2.50−2.69(m、2H)、3.49−3.56(m、1H)、3.88−3.95(m、1H)、4.05−4.11(m、1H)、4.74−4.78(m、1H)
【0202】
【化30】
【0203】
次に、滴下漏斗及びコンデンサーを備え乾燥させた3Lの三口反応器に、亜鉛粉末(和光純薬製 和光特級)94.1g(1.44mol)を添加し、窒素雰囲気にした後、テトラヒドロフラン(THF)1.3Lを加えマグネチックスターラーで攪拌しながら、クロロトリメチルシラン6.3mL(50mmol)を加え、20〜25℃で10分間撹拌した。そこへ、上記で得られたSs−2−B199.3g(1.0mol)をTHF100mLに溶解させた溶液を添加した。次に、エチル(2−ブロモメチル)アクリレート231.7g(1.2mol)のTHF100mL溶液を25℃で滴下漏斗に加え滴下を開始した。3分滴下後、反応液の温度が、40℃まで上昇した為、水浴により反応器を冷却した。続いて反応温度が、30〜40℃の範囲を保つように滴下を行った。滴下終了まで2時間を要した。その後30分攪拌した。ガスクロマトグラフィーにより反応終了を確認した後、25℃まで反応液を冷却した。続いて飽和塩化アンモニウム水溶液1Lを加えて混合し、そのまま1時間攪拌し反応を停止した。生じた塩と反応に使われなかった過剰の亜鉛をセライト濾過にて除去し、得られた溶液をエバポレーターを用いて、有機溶剤を濃縮した。濃縮液に酢酸エチル、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を攪拌しながら加えたところ、白色沈殿が生じた。そこで、白色沈殿をろ過により除去した後、分液漏斗にて、有機層を分取した。得られた有機層を乾燥後減圧濃縮した。この固体を酢酸エチルを溶媒として再結晶し、透明液体として式(Ss−2−C)で表される化合物(Ss−2−C)254g(収率95.4%、純度98%)を得た。
【0204】
【化31】
【0205】
得られた(Ss−2−C)のH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ:1.51−2.17(m、14H)、2.72(dt、J=8.8、2.8Hz、2H)、3.52−3.47(m、1H)、3.67−3.75(m、1H)、3.85−3.95(m、1H)、4.65(t、J=3.6Hz、0.5H)、4.73(t、J=3.6Hz、0.5H)、5.60−5.64(m、1H)、6.22−6.26(m、1H)
【0206】
次に、1Lの反応器に、上記で得られた化合物(Ss−2−C)200g(751mol)を添加し、マグネチックスターラーで攪拌しながら、濃塩酸1.0gをメタノール200mlで希釈した塩酸−メタノール溶液を加え、20〜25℃で30分間撹拌した。ガスクロマトグラフィーで原料消失を確認後、炭酸水素ナトリウム粉末を徐々に加え、溶液のpHが7になるまで中和した。中和に伴って析出してきた塩をろ過した後、酢酸エチル500mlを加え、エバポレーターで有機溶剤を除去、生成物を濃縮した。この濃縮操作を2回繰り返した後、カラムクロマトグラフィーで精製し、上記式(Ss−2)で表される化合物(Ss−2)を117g(収率85.5%、純度99%)得た。
【0207】
得られた(Ss−2)のH−NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ:1.51−2.09(m、8H)、2.72(t、J=2.8Hz、1H)、2.76(t、J=2.8Hz、1H)、3.67−3.77(m、0.5H)、3.96−4.04(m、0.5H)、5.62−5.68(m、1H)、6.22−6.28(m、1H)
【0208】
以下に[A]ベース重合体の合成例を示す。
【0209】
[合成例3]
構造単位(I)を与える化合物(Ss−1)20g(20モル%)、構造単位(III)を与える化合物(M−1)20g(50モル%)、及び構造単位(IV)を与える化合物(M−5)13.93g(30モル%)を80gの2−ブタノンに溶解し、AIBN3.4g(10モル%)を添加して単量体溶液を調製した。40gの2−ブタノンを入れた200mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、撹拌しながら80℃に加熱し、調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。800gのメタノール中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を160gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体成分(A−1)を得た(30g、収率75%)。得られた重合体(A−1)のMwは4,250であり、Mw/Mnは1.4であった。また、13C−NMR分析の結果、重合体中の化合物(Ss−1)、化合物(M−1)及び化合物(M−5)に由来する構造単位の含有率は、18:49:33(モル%)であった。
【0210】
[合成例4〜9]
表1に記載の単量体と開始剤を所定量配合した以外は、合成例3と同様に操作して重合体成分(A−2)〜(A−4)及び(a−1)〜(a−3)を得た。また、得られた各重合体のMw、Mw/Mn及び各重合体における各単量体に由来する構造単位の含有率を合わせて表1に示す。なお、表1中の「MAIB」は、ジメチル−2,2’−アゾビス(イソブチレート)を示す。
【0211】
【表1】
【0212】
<[B]撥水性重合体の合成>
[合成例10]
構造単位(III)を与える化合物(M−1)7.17g(70モル%)及び構造単位(II)を与える化合物(M−6)2.83g(30モル%)を、2−ブタノン10gに溶解し、更に2,2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)0.08gを100mLの三口フラスコに投入した。30分窒素パージした後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、過熱開始を重合開始時間として、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液を水冷することにより30℃以下に冷却し、エバポレーターにて重合溶液の質量が12.5gになるまで減圧濃縮した。重合液を0℃に冷却したn−ヘキサン75gへゆっくり投入し、固形分を析出させた。混合液を濾過し、固形分をn−ヘキサンで洗浄し、得られた粉体を40℃で15時間真空乾燥し、白色の粉体(重合体(B−1))を8g(収率80%)得た。得られた重合体(B−1)のMwは4,800であり、Mw/Mnは1.4であり、重合体中の化合物(M−1)及び化合物(M−6)に由来する構造単位の含有率は、69:32(モル%)であった。
【0213】
[合成例11及び12]
表2に記載の単量体を所定量配合した以外は、合成例10と同様に操作して重合体(B−2)及び(B−3)を得た。また、得られた各重合体のMw、Mw/Mn及び各重合体における各単量体に由来する構造単位の含有率を合わせて表2に示す。
【0214】
【表2】
【0215】
<フォトレジスト組成物の調製>
以下、実施例及び比較例の調製に用いた各成分の詳細を示す。
【0216】
([C]酸発生剤)
C−1〜C−4:下記式で表される化合物
【0217】
【化32】
【0218】
([D]拡散制御剤)
D−1〜D−4:下記式で表される化合物
【0219】
【化33】
【0220】
(添加剤)
E−1:γ−ブチロラクトン
【0221】
(溶媒)
F−1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
F−2:シクロヘキサノン
【0222】
[実施例1]
[A]ベース重合体としての重合体(A−1)100質量部、[B]撥水性重合体としての重合体(B−1)3質量部、[C]酸発生剤としての化合物(C−1)11質量部、[D]酸拡散制御剤としての化合物(D−3)5質量部、[E]添加剤としての化合物(E−1)30質量部、並びに溶媒(F−1)2,600質量部及び(F−2)1,100質量部を混合し、得られた混合溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、フォトレジスト組成物を調製した。
【0223】
[実施例2〜4及び比較例1〜7]
表3に示す種類、配合量の各成分を使用したこと以外は、実施例1と同様に操作して各フォトレジスト組成物を調製した。
【0224】
<評価>
各フォトレジスト組成物を用いて、下記の特性を評価した。評価結果を表3に合わせて示す。
【0225】
[ブロッブ欠陥(個)]
下層反射防止膜(ARC66、日産化学社)を形成した12インチシリコンウェハ上に、各フォトレジスト組成物によって膜厚750nmのレジスト膜を形成し、表3に示す温度で60秒間PBを行った。次に、このレジスト膜についてArFエキシマレーザー液浸露光装置(NIKON社、NSR S610C)を用い、NA=1.3、ratio=0.800、Dipoleの条件により、ターゲットサイズが幅45nmのラインアンドスペース(1L/1S)のマスクパターンを介して露光した。露光後、表3に示す温度で60秒間PEBを行った。その後、クリーントラックLithius Pro(東京エレクトロン社製)現像装置のGPノズルによって2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により10秒間現像し、15秒間純水によりリンスし、2,000rpmで液振り切り乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、幅45nmの1L/1Sを形成する露光量を最適露光量とした。この最適露光量にてウェハ全面に線幅45nmの1L/1Sを形成し、欠陥検査用ウェハとした。なお、測長には走査型電子顕微鏡(CG−4000、日立ハイテクノロジーズ社)を用いた。その後、欠陥検査用ウェハ上の欠陥数を、KLA2810(KLA−Tencor社)を用いて測定した。更に、KLA2810(KLA−Tencor社)にて測定された欠陥を、レジスト膜由来と判断されるものと外部由来の異物とに分類した。分類後、レジスト膜由来と判断される欠陥数の合計が35個/wafer未満であった場合を「良好」、35個/wafer以上50個/wafer未満であった場合を「やや良好」、50個/wafer以上の場合を「不良」と評価した。
【0226】
【表3】
【0227】
表3の結果から、実施例1〜4は比較例1〜7と比べて、ブロッブ欠陥の発生が抑制されていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0228】
本発明のフォトレジスト組成物によれば、液浸露光の際には撥水性を確保しつつ、現像の際には現像液親和性の高いレジスト膜を形成することができるため、現像欠陥(ブロッブ欠陥)の発生をより抑制することができる。従って、当該フォトレジスト組成物は、半導体デバイス製造用の化学増幅型レジスト膜形成用、特に液浸露光用のレジスト膜形成用として好適に利用できる。