(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を示すテンター装置100について
図1〜
図11に基づいて説明する。
【0010】
(1)テンター装置100の構成
まず、テンター装置100の構成について
図7に基づいて説明する。本実施形態のテンター装置100は、クリップテンター装置である。
【0011】
テンター装置100は、左右一対の無端状のテンターチェーン106が、それぞれ搬入口側の他動ホイール102、搬出口側の駆動ホイール104に掛け渡されている。各テンターチェーン106には、所定間隔毎にクリップ10が取り付けられている。クリップ10が取り付けられた左右一対のテンターチェーン106は、左右一対のテンターレール108の上を走行し、左右一対の他動ホイール102は搬入口側にあるテンター台114に設けられ、左右一対の駆動ホイール104,104は搬出口側にあるテンター台115に設けられている。なお、テンターレール108は、ウエブWを熱処理するための熱処理室110内部を通過する。
【0012】
テンター装置100は、左右一対のテンターチェーン106に取り付けられた複数のクリップ10によってウエブW(例えば、フィルム、布帛、紙などである)を幅方向に対し一定の張力で把持し、熱処理室110内部を一定の搬送速度で通過させて、ウエブWを熱処理する。また、ウエブWの搬入口の左右両側には、クリップ10の操作レバー34を操作するための操作装置112,112がそれぞれ設けられている。
【0013】
(2)クリップ10の構造
次に、クリップ10の構造について
図1〜
図5に基づいて説明する。
【0014】
クリップ10は金属製であって、クリップ本体12、回転部14、上把持部16、左右一対のリンク部18,18、付勢部20とより構成されている。
【0015】
クリップ本体12は、板状の基台22、基台22の前部に沿って設けられた下把持部24、基台22の後端部から立設された左右一対の支持脚部26,26、左右一対の支持脚部26,26から前方にそれぞれ突設された左右一対の支持腕部28,28より構成されている。クリップ本体12は、
図2及び
図3に示すように、側部から見た場合に基台22、支持脚部26及び支持腕部28によってコの字状に構成されている。
【0016】
下把持部24の上面は平らであって、この上面がウエブWを把持する下把持面である。
【0017】
左右一対の支持腕部28,28の間には、回転部14が、水平な第1軸部30を介して回転自在に取り付けられている。回転部14の下面中央部からは、揺動部32が下方に突出している。回転部14の上面中央部からは、操作レバー34が上方に突出している。回転部14の後面からは左右一対の軸受部36,36が突出している。回転部14、揺動部32、操作レバー34及び軸受部36,36は一体に成形されている。
【0018】
回転部14の揺動部32の下端には、第2軸部38が水平に取り付けられ、この第2軸部38を介して回転自在に上把持部16が取り付けられている。
【0019】
上把持部16は、下把持部24と当接してウエブWを把持するための上把持本体40と、この上把持本体40の上面から上方に突出した左右一対の二軸受部42,42から構成されている。二軸受部42の前部には、前記した第2軸部38が回転自在に取り付けられている。上把持本体40の下面が上把持面である。
【0020】
支持腕部28における、前記第1軸部30よりも後方の位置に、第3軸部44が水平に設けられている。上把持部16の二軸受部42における、第2軸部38よりも後方の位置に、第4軸部46が水平に設けられている。第3軸部44と第4軸部46との間には、板状のリンク部18が取り付けられている。
【0021】
左右一対の支持腕部28,28の間であって、回転部14よりも後方の位置には、付勢部20が取り付けられている。この付勢部20は、円筒状の筒体50と、筒体50の内部に挿入されているコイル状の圧縮バネ52とを有し、筒体50の前端部には第5軸部54が、回転部14の軸受部36,36によって回転自在に水平に取り付けられている。筒体50の後部には、後端部が開口した左右一対の切欠き56,56が設けられ、これら切欠き56に沿って移動自在に第6軸部58が水平に配されている。この第6軸部58の左右両端部は、左右一対の支持腕部28,28に取り付けられている。コイル状の圧縮バネ52は、筒体50内部において、第5軸部54と第6軸部58との間に配され、第5軸部54と第6軸部58とが離れるように付勢している。
【0022】
(3)クリップ10の動作状態
次に、クリップ10の動作状態について
図2、
図3及び
図6に基づいて説明する。
【0023】
図2は上把持部16と下把持部24がウエブWを把持した状態を示し、
図3は上把持部16と下把持部24がウエブWを開放した状態を示し、
図6は、クリップ10が上把持部16と下把持部24とがウエブWを把持した状態の簡略化した状態を示している。
【0024】
なお、以下の説明で、第1軸部30の中心を第1支点S1、第2軸部38の中心を第2支点S2、第3軸部44の中心を第3支点S3、第4軸部46の中心を第4支点S4と記載する。また、図中の「PE」は上把持部16の後端部に位置する把持力点を示し、「PS」は上把持部16の前端部である係止点を示している。さらに、
図3において、回転部14の回転に伴う上把持部16の把持力点PEの移動の軌跡も併せて記載している。
【0025】
支持腕部28、回転部14、上把持部16、リンク部18は、4節のリンクを構成しているので、操作レバー34が操作され回転部14が回転すると、リンク部18が、上把持部16を第2支点S2の回りに回転させる。上把持部16は、把持力点PEの軌跡が示すように、ほぼ垂直に下把持部24に対し把持又は離間する。
【0026】
図6に示すように、ウエブWの把持状態においては、第2支点S2は、第1支点S1と把持力点PEを結ぶ直線よりも僅かに前方に位置している。また、第4支点S4は、第3支点S3と係止点PSとを結ぶ直線より僅かに後方に位置している。この状態において、ウエブWに水平方向の張力Fが作用して、上把持部16を第4支点S4の当接面を水平方向の内側に引っ張り、上把持部16が回転して、回転部14を水平方向の外側に回転させるように作用したとする。支持腕部28、回転部14、上把持部16及びリンク部18は、前記したように4節のリンクを構成しているので、回転部14を水平方向の外側に回転するには、上把持部16を第2支点S2を中心に水平方向の外側に回転させる必要がある。しかし、第2支点S2が、第1支点S1と把持力点PEとを結ぶ直線よりも水平方向の前方に位置しているため、上把持部16を水平方向の外側に回転させるためには、一旦、角度θ1を大きくして、把持力点PEを第1支点S1から遠ざけることになる。すなわち、ウエブWの張力Fによって把持力点PEが下把持部24に押圧され、上把持部16の回転を防止しながら、上把持部16と下把持部24とのウエブWに対する摩擦力を増大させ、ウエブWより強く把持できる。
【0027】
また、把持力点PEが下把持部24から受ける反力は、回転部14の揺動部32を水平方向外側に回転させる力を生じさせる。しかし、第4支点S4が、第3支点S3と係止点PSとを結ぶ直線より後方に位置しているため、揺動部32を水平方向の外側に回転しようとすると、一旦、角度θ2を大きくして、係止点PSを下把持部24に押圧することになる。すなわち、係止点PSは、揺動部32の回転範囲の水平方向の前端を定めるストッパーとして機能する。これによって、クリップ10は、把持力点PEが下把持部24に対する十分な把持力を発揮する状態で、ウエブWを把持できる。
【0028】
このように、ウエブWは、その張力Fによって揺動部32を水平方向の外側に回転させることはできない。しかし、操作レバー34は、回転部14を回転させる方向に直接力を作用させるので、第1支点S1、第2支点S2及び把持力点PEが直線上に並ぶように、角度θ2を一旦大きくして、上把持部16及び下把持部24から離間させることができる。
【0029】
また、上把持部16と下把持部24が把持状態にあるときには、筒体50が
図2に示すように、第4軸部46が第5軸部54よりも下方に位置しているため、圧縮バネ52の付勢力によって、その把持状態を維持できる。
【0030】
一方、上把持部16と下把持部24の離間状態にあるときは、
図3に示すように、筒体50の第4軸部46が第5軸部54よりも上方に位置しているため、圧縮バネ52の付勢力によって、その離間状態を維持できる。
【0031】
上記したようにクリップ10の上把持部16が、ウエブWを把持する場合には、把持力点PEがほぼ垂直に下方に移動してウエブWを把持する。そのため、ウエブWの両耳部が
図3のように内側にカールしていても、このカールした部分に、上把持部16が接触すること無く、確実にウエブWを把持できる。
【0032】
(4)クリップ10の取り付け構造
次に、クリップ10の取り付け構造について
図8と
図9に基づいて説明する。
【0033】
クリップ10のクリップ本体12は、断面コ字状の支持台60に固定されている。断面コ字状の支持台60内部には、テンターチェーン106が取り付けられている。支持台60の下部からは、垂直な回転軸を有する車輪62が回転自在に設けられている。支持台60の上部からは、内側水平方向に向かってL字状の延設部64が延設されている。この延設部64の端部には、回転軸が水平の車輪66が設けられている。延設部64の下部には、回転軸が垂直の車輪68が設けられている。
【0034】
クリップ10を支持する支持台60に取り付けられているテンターチェーン106は、他動ホイール102の外周面に係合しながら駆動する。また、支持台60の下部にある車輪62は、他動ホイール102の外周面下部に当接しつつ回転し、支持台60を支持する。また、延設部64の端部に設けられた車輪66は、他動ホイール102の上面縁部に当接して回転する。この車輪62、車輪66によって支持台60が他動ホイール102の周りを安定して回転できる。車輪68は、不図示のガイド片に沿って移動する。
【0035】
搬出口近傍にある駆動ホイール104についても、他動ホイール102と同様に支持台60の車輪62、車輪66及びテンターチェーン106が係合して移動する。
【0036】
(5)操作装置112
次に、クリップ10の操作レバー34を操作する操作装置112について
図7〜
図11に基づいて説明する。
【0037】
図7と
図8に示すように、操作装置112は、搬入口側にある左右一対の他動ホイール102よりやや後方に取り付けられている。
【0038】
操作装置112は、他動ホイール102を他動で回転させるための固定軸に固定された支持板116の下方に設けられた内側案内板118と外側案内板120とより構成されている。内側案内板118と外側案内板120は、ウエブWの搬送方向である前後方向に沿って水平に取り付けられ、内側案内板118と外側案内板120との間には案内路122が形成されている。外側案内板120は、内側案内板118よりもやや高い位置に固定されている。案内路122の左右方向の幅は、操作レバー34の幅方向のサイズよりも若干大きく形成されている。
【0039】
図11に示す符号A、B、Cは、
図10の操作レバー34の傾斜角A,B,Cと対応して同じ符号を用いている。すなわち、区間Aでは操作レバー34は最も傾斜した角度Aで傾斜した状態であり、外側案内板120の前部の区間Bではその傾斜状態から直立状態に回転している角度であり、後部の区間Cにおいては操作レバー34は
図10の実線で示した直立状態の角度Cとなる。
【0040】
図9〜
図10に示すように、案内路12の内側壁(内側案内板118の外側面)は、操作レバー34が走行しながら傾斜状態から直立状態に回転する軌跡に合わせて傾斜し、案内路122の外側壁(外側案内板120の内側壁)も、操作レバー34が走行しながら傾斜状態から直立状態に回転する軌跡に合わせて傾斜している。すなわち、内側案内板118の外側面の前部の区間Bはγ°傾斜し、後部の区間Cは垂直に形成されている。また、外側案内板120の前部の区間aと中央部の区間bの内側面はφ°傾斜し、後部cの内側面は垂直に形成されている。このγ°は、操作レバー34が外方への傾斜角度と一致し、φ°は、γ°<φ°<90°に設定されている。
【0041】
図11に示すように、案内路122の平面形状は、操作レバー34が前後方向に走行しながら傾斜状態から直立状態に移動する軌跡に合わせて形成されている。すなわち、内側案内板118の平面形状は、前部外側の区間Bが前後方向に対しα°傾斜し、後部外側の区間Cは前後方向と平行に形成されている。また、外側案内板120の前部内側の区間aは前後方向と平行に形成され、中央部内側の区間bは前後方向に対しβ°傾斜し、後部内側の区間cは前後方向と平行に形成されている。案内路122の平面形状をさらに詳しく説明すると、
図11に示すように外側案内板120は内側案内板118よりも短く形成されている。これは、操作レバー34が最初に接触する部分は、内側案内板118の内側壁124だからである。そして、外側案内板120の前部の区間aは、内側案内板118の前部の区間Bの途中まで形成され、内側案内板118の内側壁124の前部の区間Bの途中から傾斜している。この傾斜区間bが中央部となる。そして、この外側案内板120の中央部の区間bは、内側案内板118の後部の区間Cの手前で前後方向と平行になり後部の区間cが形成されている。これにより案内路122は、内側案内板118の前部の区間Bと外側案内板120の前部の区間aにおいては、案内路122の内側のみが傾斜し、その後に内側案内板118の前部の区間Bと外側案内板120の中央部の区間bとの間の案内路122は、内外両側とも次第に傾斜して狭くなり、最後に内側案内板118の後部の区間Cと外側案内板120の後部の区間cとの間で平行に案内路122が形成される。
【0042】
(6)操作装置112の動作状態
次に、操作装置112を用いて操作レバー34が操作される状態について
図9〜
図11に基づいて説明する。
【0043】
まず、クリップ10がウエブWを把持していない離間状態では、上把持部16が下把持部24から離れて操作レバー34は第1軸部30を中心に、搬送路の内側に向かって傾斜している。この操作レバー34が傾斜した状態で、他動ホイール102に沿って回転し、前後方向に移動する。
【0044】
次に、傾斜した操作レバー34は、クリップ10の前後方向への移動と共に、内側案内板118と外側案内板120との間に形成された案内路122に進入する。このとき、内側案内板118の外側面はγ°傾斜し、この傾斜角は
図9に示すように操作レバー34の傾斜角に一致している。そのため、操作レバー34はこの内側案内板118の外側面に沿ってクリップ10と共に移動する。このとき、内側案内板118の前部は傾斜角α°で外側に向かって傾斜しているため、案内路122の内側壁(内側案内板118の外側面)によって操作レバー34が次第に外側に押圧され、第1軸部30を中心に回転して上把持部16が次第に把持状態になる。しかし、操作レバー34が、コイル状の圧縮バネ52の付勢力によって完全な把持状態になろうとしても、案内路122の外側壁(外側案内板120の内側面)によって操作レバー34の回転が阻止され、ゆっくりとしか操作レバー34は回転しない。このような状態が
図11において案内路122の傾斜した内側壁の区間Aから区間Bまで行われる。そして、操作レバー34が区間Bを通過すると
図10に示すように、操作レバー34が案内路122の外側壁(外側案内板120の内側面)に沿って直立し、上把持部16と下把持部24によってウエブWが把持される。しかし、この上把持部16と下把持部24によってウエブWが把持されるまでは操作レバー34がゆっくりと回転するため、従来のように圧縮バネ52の付勢力によってウエブWがいきなり把持されることがないため、ウエブWに傷が付いたり破れたりしない。
【0045】
(7)効果
本実施形態によれば、内側案内板118と外側案内板120の間に形成された案内路122に沿って操作レバー34がクリップ10の走行と共に回転するため、上把持部16と下把持部24によってウエブWがいきなり把持されることがなく、ウエブWに傷が付いたり破れたりしない。
【0046】
操作レバー34が回転する時間、すなわち把持しようとする力は内側案内板118の傾斜した前部の区間Bの距離によって調整でき、この区間Bの距離が長いほど操作レバー34がゆっくり回転し、距離が短ければ素早く回転する。
【0047】
また、内側案内板118の前部の内側面と、外側案内板120の前部と中央部の外側面の傾斜角が、操作レバー34の傾斜角に一致しているため、操作レバー34がスムーズに回転できる。
【0048】
また、案内路122の左右方向の幅が、操作レバー34の左右方向の幅よりも若干大きいだけであるため、操作レバー34が必要以上に回転せず、ウエブWをいきなり把持したりしない。
【0049】
また、外側案内板120が内側案内板118よりも高い位置に固定されているため、回転する操作レバー34の上端部を外側案内板120の側面で確実に保持できる。
【0050】
(8)変更例
上記実施形態では、内側案内板118において、前部、すなわち搬入口側にのみ傾斜部分である前部の区間Bを設けたが、これに加えて搬出口側にも
図12に示すように傾斜の区間Dを設けてもよい。この場合には、テンター装置100のテンターチェーン106を逆回転させ、搬出口側から搬入口側へクリップ10が移動するときに、把持しない状態から把持状態に一旦移動させ、その後再び把持しない状態に変化させることができる。このようにテンターチェーン106を逆回転させる場合としては、例えば何らかの事情によりクリップ10からウエブWが外れたりする場合である。
【0051】
また、クリップ10の構造については、操作レバー34によって開閉する構造を有するものであれば、上記実施形態の構造に限らず、特許文献1,2に記載されたクリップのような他の構造であってもよい。
【0052】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。