特許第6180956号(P6180956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180956
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】耐食性に優れる塗装鋼材
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20170807BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20170807BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20170807BHJP
   C23F 11/00 20060101ALI20170807BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20170807BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20170807BHJP
   C21D 8/02 20060101ALN20170807BHJP
【FI】
   C22C38/00 301F
   C22C38/38
   C22C38/60
   C23F11/00 F
   B32B15/01 C
   B32B15/08 G
   !C21D8/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-25525(P2014-25525)
(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公開番号】特開2015-151571(P2015-151571A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100146112
【弁理士】
【氏名又は名称】亀岡 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100167335
【弁理士】
【氏名又は名称】武仲 宏典
(74)【代理人】
【識別番号】100164998
【弁理士】
【氏名又は名称】坂谷 亨
(72)【発明者】
【氏名】阪下 真司
(72)【発明者】
【氏名】小澤 敬祐
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−138454(JP,A)
【文献】 特開2012−153933(JP,A)
【文献】 特開2012−246557(JP,A)
【文献】 特開2012−092403(JP,A)
【文献】 特開平10−137683(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/080658(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00 − 38/60
B32B 15/01
B32B 15/08
C23F 11/00
C21D 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.04〜0.30%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Al:0.005〜0.10%、Cu:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、N:0.001〜0.010%を含有すると共に、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.05%の何れか1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼材の表面側に、非水溶性塗膜が形成された塗装鋼材であって、
前記非水溶性塗膜の鋼材側から10μmの厚さ領域に、アルカリ金属の合計の平均濃度が0.1〜1.0質量%となるアルカリ金属濃縮領域が形成されていることを特徴とする耐食性に優れる塗装鋼材。
【請求項2】
更に、質量%で、Ni:0.01〜3.0%、Co:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、W:0.01〜1.0%の1種または2種以上を含有する請求項1記載の耐食性に優れる塗装鋼材。
【請求項3】
更に、質量%で、Mg:0.0005〜0.005%、Ca:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.005%の1種または2種以上を含有する請求項1または2に記載の耐食性に優れる塗装鋼材。
【請求項4】
更に、質量%で、Sn:0.001〜0.1%、Sb:0.001〜0.1%、Se:0.001〜0.1%のいずれか1種または2種以上を含有する請求項1乃至3のいずれかに記載の耐食性に優れる塗装鋼材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶、海洋構造物、橋梁などの構造物に用いられる塗装鋼材に関し、特に、海水腐食環境下、或いは飛来海塩粒子が主因となる腐食環境下における構造物の構造材として好適に用いることができる耐食性に優れる塗装鋼材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼材は各種構造物の構造用部材として多用されているが、船舶、海洋構造物、橋梁などの海水の影響を受ける構造物の構造用部材として使用した場合、鋼材が海水などの腐食作用を受けることになり、板厚減少や穴あきなどによって構造物が強度低下することがあるという問題があった。
【0003】
このような鋼材の海水による腐食は、鋼材を海水に完全に浸漬される部位だけに用いる場合、電気防食によって防止することが可能であるが、海面の近傍や海上部などの海水に完全には浸漬されない部位では電気防食が作用せず、海水の飛沫による激しい腐食環境に曝されることになる。また、鋼材を船舶のバラストタンクの構造用部材として用いた場合、バラストタンクは積載荷重に応じて海水を注入、排出するため、その内表面は常時海水に浸された状態とはならず、電気防食作用を十分に得ることができない。また、海岸に近い鉄橋梁などの構造物も飛来海塩粒子による大気腐食環境に曝されるため、このような構造物の構造用部材として鋼材を用いた場合も、電気防食の適用は必ずしも有効でない場合が多い。
【0004】
このように、海水の影響を受ける船舶、海洋構造物、橋梁などの構造物では、電気防食の適用は必ずしも有効とはいえないため、鋼材の表面に防食塗装により防食塗膜を形成して用いることが多い。防食塗装に用いられる塗料としては、エポキシ樹脂系、塩化ゴム系、アクリル樹膜、ウレタン樹脂、およびフッ素樹脂系などの様々な防食塗料を挙げることができ、環境に応じて最適な塗装系が使用されており、これらを複層化して使用される場合もある。
【0005】
しかしながら、防食塗膜は、紫外線による経時劣化や、何らかの外的な機械的作用により損傷することがある。このような防食塗膜の疵部では鋼材腐食が進展するため、定期的なメンテナンスが必要である。しかし、船舶、海洋構造物、橋梁などの構造物においては、防食塗装の状態の検査やメンテナンスのため、足場を組む必要がある高所、海中、或いは構造的に入り組んだ箇所などがあり、防食塗装の状態の検査やメンテナンスが容易でない箇所も多い。このように、安全性の確保とメンテナンス負荷低減の観点から、防食塗膜疵部を起点とした腐食の抑制が非常に重要な技術的課題となっている。
【0006】
特に、近年、地球環境の保全という観点から、温室効果ガスである二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーが注目されており、海洋上での風力発電、波浪発電、潮流・海流発電、温度差発電、太陽光発電などの発電技術開発が進められている。これらの実現に際しては、鋼材の塗装状態の検査や再塗装等のメンテナンス作業が困難であるため、ライフサイクルコストの観点から、塗装鋼材の耐久性向上ニーズが高揚している。
【0007】
このような課題への対応策として、鋼材の化学成分の調整や製造方法の改良により、鋼材自体の耐食性を向上させ、塗膜疵部の腐食抑制に寄与する技術が、特許文献1,2等により数多く提案されている。これらの技術を採用することにより塗装鋼材の耐食性は確かに向上しているものの、まだ耐食性が十分とはいえる状態ではなく、更なる耐食性の向上が要求されている。
【0008】
特に、船舶のバラストタンクでは、塗膜が剥離した箇所では1年間の腐食摩耗量が1mmにも及ぶこともあり、非常に腐食の厳しい環境となっており、防食塗膜疵部の腐食抑制が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−44020号公報
【特許文献2】特開2012−57236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の問題を解決せんとしてなされたもので、海水腐食環境下、或いは飛来海塩粒子が主因となる腐食環境下における構造物の構造用部材として用いても、海水等の腐食作用の影響を受けて腐食することを抑制できる耐食性に優れる塗装鋼材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、質量%で、C:0.04〜0.30%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Al:0.005〜0.10%、Cu:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、N:0.001〜0.010%を含有すると共に、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.05%の何れか1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼材の表面側に、非水溶性塗膜が形成された塗装鋼材であって、前記非水溶性塗膜の鋼材側から10μmの厚さ領域に、アルカリ金属の合計の平均濃度が0.1〜1.0質量%となるアルカリ金属濃縮領域が形成されていることを特徴とする耐食性に優れる塗装鋼材である。
【0012】
更に、質量%で、Ni:0.01〜3.0%、Co:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、W:0.01〜1.0%の1種または2種以上を含有することが好ましい。
【0013】
また、更に、質量%で、Mg:0.0005〜0.005%、Ca:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.005%の1種または2種以上を含有することが好ましい。
【0014】
また、更に、質量%で、Sn:0.001〜0.1%、Sb:0.001〜0.1%、Se:0.001〜0.1%のいずれか1種または2種以上を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の耐食性に優れる塗装鋼材によると、海水腐食環境下、或いは飛来海塩粒子が主因となる腐食環境下における構造物の構造用部材として用いても、防食塗膜疵部を起点とする鋼材腐食の進展を抑制することができ、海水等の腐食作用の影響を確実に抑制することが可能で、防食塗膜疵部の耐食性を確実に向上させることができる。また、定期的なメンテナンスの回数も減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
塗装鋼材においては、表面に形成される塗膜が健全であれば鋼材の腐食抑制効果が大きく、更に、適切な塗装系を選定することにより高い防食効果が得られることが知られている。しかしながら、塗膜に何らかの欠陥が発生した場合や鋼材が露出する疵が発生した場合には、その塗膜疵部を起点として鋼材の腐食が発生し、進展してしまう。
【0017】
本発明者らは、このような塗膜疵部を起点とした鋼材の腐食の発生および進展を抑制する方法について研究を行った。その結果、塗膜疵部では、鋼材の露出部で腐食反応が発生することに加えて、塗膜疵部から塗膜と鋼材との界面に水や塩化物イオンなどの腐食因子が侵入することで塗膜の内部で塗膜下腐食が発生することが確認でき、鋼材の腐食進展および拡大に大きく関与していることを確認した。
【0018】
更に研究を進めた結果、CuおよびCrに加えて、TiかNbの何れか1種または2種を適量添加した鋼材において、塗膜のアルカリ金属濃度を適正化することで、塗膜の内部で発生する塗膜下腐食の発生を顕著に抑制することができ、塗膜疵部の耐食性を大きく向上させることができることを見出した。
【0019】
詳しく説明すると、塗膜中に適切な量のアルカリ金属を付与すれば、塗膜疵部から塗膜と鋼材との界面に水や塩化物イオンなどの腐食因子が侵入した場合に、鋼材表面のpHが上昇しアルカリ性となるため、鋼材が不働態となって腐食反応が抑制される。更に、鋼材の成分を調整することで発揮される塗膜疵部の鋼材露出部の腐食抑制効果との相乗作用により、塗膜疵部の耐食性が大きく向上する。
【0020】
<鋼材の成分組成>
以上説明したように、塗膜中への適切な量のアルカリ金属の付与と鋼材の成分調整により塗膜疵部の耐食性を得ることができるが、構造材料として必要な機械特性や溶接性を確保するためには、上述の元素に加えて、Si、Mn、Al、P、Sの添加量(含有量)を適切に調整することも必要である。以下に、これら必須添加元素の成分範囲の限定理由について説明する。尚、単位は全て%と記載するが、質量%のことを示す。次の必須添加元素以外の説明においても同様に%は質量%を示す。
【0021】
・C:0.04〜0.30%
Cは、鋼材の強度確保のために必要な基本的添加元素である。鋼材として通常要求される強度特性を得るためには、少なくとも0.04%以上は含有させる必要がある。しかし、Cを過剰に含有させると、酸溶液中でのカソードサイトとして作用するセメンタイトの生成量が多くなって、腐食反応を促進して耐食性が劣化する。また、靭性も併せて劣化する。このようなCの過剰添加による悪影響を発生させないためには、Cの含有量は多くても0.30%に抑える必要がある。よって、Cの含有量の範囲は0.04〜0.30%とした。尚、Cの含有量の好ましい下限は0.045%であり、より好ましくは0.05%以上とするのが良い。また、Cの含有量の好ましい上限は0.29%であり、より好ましくは0.28%以下とするのが良い。
【0022】
・Si:0.05〜1.0%
Siは、脱酸と強度確保のために必要な元素でもあり、少なくとも0.05%以上含有させないとこれらの作用は得られない。しかし、1.0%を超えて過剰に含有させると溶接性が劣化する。尚、Siの含有量の好ましい下限は0.08%であり、より好ましくは0.10%以上とするのが良い。また、Siの含有量の好ましい上限は0.95%であり、より好ましくは0.90%以下とするのが良い。
【0023】
・Mn:0.1〜2.0%
MnもSiと同様に、脱酸および強度確保のために必要な元素であり、0.1%に満たないと構造用部材として用いる鋼材しての最低強度を確保できない。しかし、2.0%を超えて過剰に含有させると靱性が劣化する。尚、Mnの含有量の好ましい下限は0.15%であり、より好ましくは0.2%以上とするのが良い。また、Mnの含有量の好ましい上限は1.9%であり、より好ましくは1.8%以下とするのが良い。
【0024】
・P:0.03%以下(0%を含まない)
Pは、過剰に含有させると靭性や溶接性を劣化させる元素であり、Pの許容される含有量の上限は0.03%である。Pの含有量はできる限り少ない方が好ましく、Pの含有量のより好ましい上限は0.028%であり、更に好ましくは0.025%以下とするのが良い。しかし、工業的に鋼材中のPを0%にすることは困難である。
【0025】
・S:0.03%以下(0%を含まない)
Sも含有量が多くなると靭性や溶接性を劣化させる元素であり、許容される含有量の上限は0.03%である。Sの含有量のより好ましい上限は0.028%であり、更に好ましくは0.025%以下とするのが良い。しかし、工業的に鋼材中のSを0%にすることは困難である。
【0026】
・Al:0.005〜0.10%
Alも前記したSi、Mnと同様に脱酸および強度確保のために必要な元素である。こうした作用を有効に発揮させるためには、0.005%以上含有させることが必要である。しかし、0.10%を超えて含有させると溶接性を害するため、Alの含有量の範囲は0.005〜0.10%とした。尚、Alの含有量の好ましい下限は0.008%であり、より好ましくは0.010%以上とするのが良い。また、Alの含有量の好ましい上限は0.09%であり、より好ましくは0.08%以下とするのが良い。
【0027】
・Cu:0.05〜0.5%
Cuは、フェライトに固溶して、塗膜疵部における鋼材露出部のアノードの活性度を低下させることに加えて、鋼材表面に緻密な錆皮膜を形成する作用も有しており、塗膜疵部の耐食性向上に必要な元素である。このような効果を発揮させるためには、少なくとも0.05%以上含有させることが必要である。しかし、過剰に含有させると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、Cuの含有量は0.5%以下とする必要がある。Cuの含有量の好ましい下限は0.06%であり、より好ましい下限は0.07%である。また、Cuの含有量の好ましい上限は0.45%であり、より好ましい上限は0.40%である。
【0028】
・Cr:0.05〜0.5%
Crは、Cuと同様にフェライトに固溶して、塗膜疵部における鋼材露出部のアノードの活性度を低下させることに加えて、鋼材表面に緻密な錆皮膜を形成する作用も有しており、塗膜疵部の耐食性向上に必要な元素である。このような効果を発揮させるためには、少なくとも0.05%以上含有させることが必要である。しかし、過剰に含有させると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、Crの含有量は0.5%以下とする必要がある。Crの含有量の好ましい下限は0.06%であり、より好ましい下限は0.07%である。また、Crの含有量の好ましい上限は0.45%であり、より好ましい上限は0.40%である。
【0029】
・Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.05%の何れか1種または2種
TiおよびNbは、CuとCrとの共存下において、鋼材表面に緻密な錆皮膜を形成する作用を有しており、耐食性向上に必要な元素である。このような効果を発揮させるには、少なくとも夫々0.005%以上含有させることが必要である。しかし、過剰に含有させると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、TiおよびNbの含有量は、夫々0.05%以下とする必要がある。TiおよびNbの含有量の好ましい下限は0.006%であり、より好ましい下限は0.007%である。また、TiおよびNbの含有量の好ましい上限は0.045%であり、より好ましい上限は0.04%である。
【0030】
以上が、本発明の鋼材の必須添加元素の成分範囲の限定理由であり、残部はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、O、H等を挙げることができ、これらの元素は鋼材の諸特性を害さない程度で含有していても構わない。但し、これら不可避的不純物の合計含有量は、0.1%以下、好ましくは0.09%以下に抑えることによって、本発明による耐食性発現効果を極大化することができる。
【0031】
また、本発明の鋼材に、以下に示す元素を含有すれば更に有効である。これら元素を含有させる場合の成分範囲の限定理由について次に説明する。
【0032】
・Ni:0.01〜3.0%、Co:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、W:0.01〜1.0%の1種または2種以上
Ni、Co、Mo、Wは、フェライトに固溶して、溶解反応の活性度を低下させる作用を有しており、耐食性の向上に有効な元素である。また、適量のNi、Co、Mo、Wは、鋼材の強度特性を向上させるにも有効であり、必要に応じて添加させる元素である。こうした効果を発揮させるためには、夫々0.01%以上含有させることが好ましい。しかしながら、これら元素の添加量が過剰になると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、含有させる場合は、Niで3.0%以下、Coで2.0%以下、MoとWで1.0%以下とする。Ni、Co、Mo、Wを含有させるときのより好ましい下限は0.02%であり、0.03%以上とすることが更に好ましい。Niを含有させるときのより好ましい上限は2.9%であり、2.8%以下とすることが更に好ましい。Coを含有させるときのより好ましい上限は1.9%であり、1.8%以下とすることが更に好ましい。MoとWを含有させるときのより好ましい上限は0.9%であり、0.8%以下とすることが更に好ましい。
【0033】
・Mg:0.0005〜0.005%、Ca:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.005%の1種または2種以上
Mg、Ca、REMは、使用環境において、鋼材の表面近傍のpH低下を抑制する作用を有しており、耐食性を更に向上させるのに有効な元素である。この作用はこれら元素が腐食溶解して水素イオンと反応することで発揮される。こうした作用を有効に発揮させるためには、夫々0.0005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、これら元素の含有量が過剰になると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、これら元素を含有させる場合は、0.0005〜0.005%とする。Mg、Ca、REMを含有させるときのより好ましい下限は夫々0.0006%であり、更に好ましい下限は夫々0.0007%である。一方、Mg、Ca、REMを含有させるときのより好ましい上限は夫々0.0045%であり、更に好ましい上限は夫々0.004%である。
【0034】
・Sn:0.001〜0.1%、Sb:0.001〜0.1%、Se:0.001〜0.1%のいずれか1種または2種以上
Sn、Sb、Seは、耐食性の向上に有効な添加元素である。耐食性向上作用は、これらの元素を夫々0.001%以上含有させることによって有効に発揮される。しかしながら、これら元素の含有量が過剰になると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、これら元素を含有させる場合は、0.001〜0.1%とする。Sn、Sb、Seを含有させるときのより好ましい下限は夫々0.002%であり、更に好ましい下限は夫々0.003%である。一方、Sn、Sb、Seを含有させるときのより好ましい上限は夫々0.095%であり、更に好ましい上限は夫々0.09%である。
【0035】
尚、BおよびVなどの強度向上に有効な元素も必要に応じて添加することができる。例えば、Bは0.0001%以上、Vは0.001%以上含有させることにより強度向上効果が発現される。しかし、これら元素を過剰に含有させると母材靭性が劣化するため、Bを含有させるときは0.005%以下、Vを含有させるときは0.1%以下とする。Bを含有させるときのより好ましい下限は0.0002%であり、更に好ましい下限は0.0003%である。一方、Bを含有させるときのより好ましい上限は0.0045%であり、更に好ましい上限は0.004%である。また、Vを含有させるときのより好ましい下限は0.002%であり、更に好ましい下限は0.003%である。一方、Vを含有させるときのより好ましい上限は0.095%であり、更に好ましい上限は0.09%である。
【0036】
<組織>
本発明の鋼材の組織については特に限定する必要がないが、十分な機械特性を得るために、フェライトとパーライトからなる組織、或いは、フェライトとベーナイトからなる組織とすることが推奨される。
【0037】
<製造方法>
本発明の鋼材を確実に製造するには、例えば、以下に説明する方法により製造することが好ましい。
【0038】
まず、転炉または電気炉から取鍋に出鋼した溶鋼に対して、RH真空脱ガス装置を用いて、本発明で規定する成分組成に調整すると共に、温度調整をすることで二次精錬を行う。その後、連続鋳造法、造塊法等の通常の鋳造方法で鋼塊とすれば良い。尚、構造用部材として鋼材に必要な基本特性(機械的特性や溶接性)を確保するために、脱酸形式としてはキルド鋼を用いることが好ましく、より好ましくはAlキルド鋼を用いることが推奨される。
【0039】
<塗膜>
本発明の塗装鋼材において、鋼材の表面側に非水溶性塗膜(本明細書では単に塗膜と説明することもある。)を形成するにあたり、用いる塗料は、防食性の観点から油性または溶剤型の非水溶性塗料とする必要がある。非水溶性塗料としては、エポキシ樹脂系、塩化ゴム系、アクリル樹脂系、フッ素樹脂系およびウレタン樹脂系などの塗料が適用可能であり、これら複数の塗料を用いて塗膜を多層化することも可能である。
【0040】
例えば、エポキシ樹脂系塗膜を形成するための塗料としては、防食塗料として用いられる塗料であって、ビヒクルとしてエポキシ樹脂を含むものであればどのような塗料を用いても良く、特に限定されない。具体的な塗料としては、エポキシ樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、タールエポキシ樹脂塗料などを例示することができる。
【0041】
塩化ゴム系塗膜を形成するための塗料としては、塩素化樹脂を主原料としてなる塗料であればどのような塗料を用いても良く、特に限定されない。具体的な塗料としては、塩化ゴムや塩素化ポロオレフィンなどの塩素化樹脂を主原料としてなる塗料を例示することができる。
【0042】
また、アクリル樹脂塗膜を形成するための塗料としては、通常のアクリル樹脂塗料、アクリルエマルジョン樹脂塗料、アクリルウレタン系エマルジョン塗料、アクリルシリコン系エマルジョン塗料、アクリルラッカーなどの塗料を例示することができる。
【0043】
また、フッ素樹脂塗膜を形成するための塗料としては、テトラフルオロエチレン樹脂塗料、パールフオロアルコキシ樹脂塗料、フッ化エチレンプロピレン樹脂塗料などの塗料を例示することができる。
【0044】
また、ウレタン樹脂塗膜を形成するための塗料としては、ポリウレタン樹脂塗料、ポリエステルウレタン樹脂塗料、湿気硬化ポリウレタン樹脂塗料、エポキシウレタン塗料、変性エポキシウレタン樹脂塗料などの塗料を例示することができる。
【0045】
非水溶性塗膜の膜厚は、薄過ぎる場合は防食効果が不十分となるが、逆に厚過ぎると塗膜剥離を生じやすくなるため、実用に応じて最適な厚さとすることが推奨される。このような観点から、非水溶性塗膜の膜厚は、乾燥膜厚で、例えば100〜1000μmの厚さとすることが推奨される。
【0046】
また、非水溶性塗膜を形成するための塗装工程は特に制約されるものではなく、スプレー塗布やはけ塗りなど通常の塗装方法を適用することが可能である。但し、塗装前には被塗装材となる鋼材表面を適度に洗浄する必要があり、例えば、洗浄することで鋼材表面の付着塩分濃度を、NaCl換算で50mg/m以下、好ましくは10mg/m以下とすることが推奨される。
【0047】
また、塗膜と鋼材との付着強度を確保するため鋼材表面の粗さを、ある程度の粗さ以上とすることが好ましいが、表面粗さが粗過ぎると、凹部に気泡が入って塗膜と鋼材とが密着しない部分が生じてしまい、逆に付着強度が低下することが懸念される。このような観点から、鋼材の表面は適度な表面粗さにしておくことが推奨される。鋼材の表面粗さとしては、例えば、JIS B 0601:2001に規定される十点平均粗さRzjisが、10μmから80μmとなるようにすることが推奨される。尚、鋼材の表面粗さの調整は、例えば、通常のショットブラスト処理やグリッドブラスト処理などを採用すれば実施することができる。
【0048】
また、必要に応じて鋼材表面と非水溶性塗膜との間にプライマを形成させることも可能である。例えば、非水溶性塗膜形成前の鋼材表面に、亜鉛粉末および必要に応じて適切な顔料をアルキルシリケートなどの溶剤を用いて塗布すれば、鋼材表面と非水溶性塗膜との間にプライマを形成することができる。プライマとしては、JISK 5552:2002に規定されている無機ジンクリッチプライマ、有機ジンクリッチプライマなどを例示することができる。これらのプライマの膜厚が厚過ぎると塗膜と鋼材との密着性を阻害して、塗装耐久性を劣化させることが懸念されるため、適切な厚さとすべきである。鋼材と塗膜との間にプライマを形成する場合の膜厚は、乾燥膜厚で5μm〜30μmが好ましく、より好ましくは10μm〜25μmである。
【0049】
<塗膜中のアルカリ金属濃度>
塗膜に何らかの欠陥が発生した場合や鋼材が露出する疵が形成された場合、その塗膜疵部から水や塩化物イオンなどの腐食因子が浸入することがあるが、塗膜中にアルカリ金属が含有されていると鋼材表面のpHが上がり、鋼材が不働態となって腐食反応を抑制するため、塗膜中にはアルカリ金属が含有させておく必要がある。
【0050】
アルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、Cs、Frを挙げることができるが、中でもNaとKが処理性の観点で推奨される。
【0051】
このような、塗膜中のアルカリ金属の濃縮領域は、塗膜中の全ての領域において形成する必要はなく、鋼材表面に適切なpHを付与する観点から、少なくとも塗膜の鋼材側の領域に形成すれば十分である。本発明の検討の結果では、塗膜の鋼材側から10μmの厚さの領域のアルカリ金属濃度が耐食性に大きく作用することを見出したため、塗膜中のアルカリ金属の濃度は、塗膜の鋼材側から10μmの厚さの領域の濃度で規定することとした。尚、鋼材表面と塗膜との間にプライマを形成する場合も、塗膜中のアルカリ金属の濃度は、塗膜のプライマ側、即ち鋼材側から10μmの厚さの領域の濃度で規定する。
【0052】
このような塗膜中のアルカリ金属の濃度が低過ぎると、鋼材表面のpHの上昇が不十分となるため、鋼材が不働態とならず所望の効果が得られないため好ましくない。一方、塗膜中のアルカリ金属の濃度が高過ぎると、鋼材表面のpHが高くなり過ぎて、塗膜自体の劣化が促進されるため好ましくない。このような観点から、塗膜中のアルカリ金属の濃度は0.1%〜1.0%とする必要がある。塗膜中のアルカリ金属の濃度のより好ましい下限は、0.15%であり、0.2%が更に好ましい。また、塗膜中のアルカリ金属の濃度のより好ましい上限は0.95%であり、0.9%が更に好ましい。
【0053】
このような塗膜中のアルカリ金属の濃度を制御する方法は特に限定するものではないが、塗料中にアルカリ金属またはその塩を含有する顔料などを混合させ、その塗料を塗布する方法が可能である。また、アルカリ金属イオンの電気泳動を利用して、電解によって濃縮領域を形成することも可能である。例えば、NaCl水溶液やKCl水溶液などのアルカリ金属イオンを含む水溶液中で塗装鋼材を陰極として、陽極に白金や炭素などの不溶性電極を用いて電解することでもアルカリ金属の濃縮領域を形成することができる。この場合、電解の電流密度が小さ過ぎると、アルカリ金属の濃縮が不十分となるか若しくは処理時間が長くなってしまい工業的には好ましくはない。また、電流密度が大き過ぎると、塗膜が陰極剥離するため好ましくない。このような観点から、電解によって塗膜中にアルカリ金属の濃縮領域を形成する場合には、電流密度は0.1〜10mA/mとすることが推奨される。
【0054】
<その他>
本発明の塗装鋼材の形態は、例えば、鋼板、鋼管、棒鋼、線材、形鋼等を挙げることができる。また、用途としては、例えば、タンカー、コンテナ船、バルカーなどの貨物船、貨客船、客船、軍艦等の船舶におけるバラストタンクの構造部材を挙げることでき、その他、上甲板、船橋、ハッチカバー、クレーン、各種配管、階段、手すりなど様々な上部鋼構造物に用いることもできる。また、海洋構造物では、海洋上で石油や天然ガスを掘削する構造物、海洋で石油・ガスの生産・貯蔵・積出などを行う浮体式設備などを初めとして、海洋での風力発電、波浪発電、潮流・海流発電、温度差発電、太陽光発電などの発電関連設備などに用いることができる。また、橋梁分野では、飛来塩分量が概ね0.1mddを超える高飛来塩分環境における橋梁用鋼材として用いることが有効である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に包含されるものである。
【0056】
[供試材の作製]
表1に示す種々の成分組成の鋼材を真空溶解炉により溶製し、50kgの鋼塊とした。得られた鋼塊を1150℃に加熱した後、熱間圧延を行って、板厚10mmの鋼素材とした。
【0057】
それら鋼素材より150×70×5(mm)の大きさのテストピースを切り出し、全てのテストピースの試験面(150×70の面、1面)が、JIS B 0601:2001に規定される十点平均粗さRzjisが、30±10μmとなるようにショットブラスト処理を施し、水洗およびアセトン洗浄をした後に塗装を行った。
【0058】
この塗装は、全てのテストピースの試験面(150×70mmの面、1面)に変性エポキシ樹脂系塗料を用いて施した。塗装の膜厚は乾燥膜厚で200±20μmとした。
【0059】
塗装後に乾燥させて乾燥塗膜とした後、塗膜中のアルカリ金属の濃縮処理として、5%LiCl水溶液、5%NaCl水溶液、5%KCl水溶液、或いはこれらの混合溶液中で、テストピースに陰極電解処理を行った。このとき、テストピースの塗装面以外はフッ素樹脂でなるテープで被覆した。処理溶液の温度は室温であり、電解電流は50μAとして、塗膜中のアルカリ金属濃度は処理時間を適宜変更して調整した。尚、アルカリ金属の濃縮処理には、表2に示すNo.1〜No.37のサンプルを各4枚ずつ供試し、そのうちの1枚のサンプルを用いて中央部の断面のEPMA分析を行って塗膜中のアルカリ金属濃度を測定した。この測定値を夫々のサンプルのアルカリ金属濃度とした。このようにして求めた各サンプルの塗膜中のアルカリ金属濃度は表2に示す通りである。
【0060】
上記のアルカリ金属の濃縮処理の後、No.1〜No.37の夫々各3枚のサンプルの試験面に長さ80mm、幅3mmの傷を形成して下記の腐食試験に用いた。
【0061】
[腐食試験方法]
海水による腐食環境下を模擬する腐食試験として、人工海水を用いた複合サイクル試験(CCT)を実施した。サイクル条件は、(1)35℃の人工海水噴霧、1.5時間→(2)温度60℃、相対湿度20%RH、3.5時間→(3)温度50℃、相対湿度95%RH、1.5時間→(1)・・・の繰り返しとした。尚、各過程間の温度および湿度を変化させて安定するまでの移行時間は0.5時間とし、試験期間は2ヶ月間とした。サンプルは表2に示したNo.1〜No.37を各3枚ずつ供試した。
【0062】
塗膜疵部からの塗膜劣化および腐食の進展度合いの評価として、CCT終了後にテストピースの塗膜疵部からの腐食面積および腐食深さを求めた。腐食面積については、塗膜疵部から塗膜下腐食により塗膜が膨れている部位の面積および塗膜疵部の面積の合計の面積とし、各3枚のテストピースの平均値とした。腐食深さについては、塗膜疵部およびその周辺の腐食深さを測定し、各3枚のテストピースの最大値を求めた。尚、腐食深さの測定は、CCT終了後にテストピースの塗膜を剥がして、10%クエン酸水素二アンモニウム水溶液中での陰極電解による脱錆処理を行った後、デプスゲージにて測定を実施した。
【0063】
[試験結果]
複合サイクル試験(CCT)の後に求めた腐食面積および腐食深さは表2に示す通りである。尚、各サンプルの腐食面積および腐食深さは、塗膜にアルカリ金属濃縮領域が形成されていない通常の塗装鋼材から採取したNo.1のサンプルの腐食面積および腐食深さをそれぞれ100としたときの相対値で示している。腐食面積、腐食深さ共に、相対値が100以上のものを「×」、相対値が90以上、100未満のものを「△」、相対値が80以上、90未満のものを「○」、相対値が70以上、80未満のものを「◎」、相対値が70未満のものを「◎◎」で示し、腐食面積、腐食深さ共に、「○」〜「◎◎」のものを合格とし、両項目共に「○」〜「◎◎」のものを耐食性に優れる塗装鋼材であると評価した。
【0064】
No.1〜No.10の比較例は腐食面積および腐食深さの相対値が共に90〜100であって、塗膜疵部の耐食性が十分ではない。No.2はCu、Cr、Ti、Nbを含有しないNo.1と同一の成分組成の通常の塗装鋼材の塗膜に本発明で規定するアルカリ金属濃縮領域を形成したものであるが、腐食面積は若干抑制されているものの、腐食深さは全く抑制されていなかった。No.3、No.7およびNo.8は、本発明で規定するアルカリ金属濃縮領域を形成したものであるが、何れも鋼材のCu添加量が少な過ぎるため、塗膜疵部の耐食性向上効果が十分に得られていない。No.4およびNo.9は、本発明で規定するアルカリ金属濃縮領域を形成したものであるが、何れも鋼材のCr添加量が少な過ぎるため、塗膜疵部の耐食性向上効果が十分に得られていない。No.5およびNo.6は、本発明で規定するアルカリ金属濃縮領域を形成したものであるが、夫々鋼材のTi添加量おびNb添加量が少な過ぎるため、塗膜疵部の耐食性向上効果が十分に得られていない。また、No.10は鋼材の化学成分は本発明の規定を満たすが、塗膜中のアルカリ濃縮量が0.04質量%と少ないため、塗膜疵部の耐食性向上効果が十分に得られていない。
【0065】
これらの比較例に対して、本発明で規定する要件を満足する発明例であるNo.11〜No.37の各サンプルは、何れも腐食面積および腐食深さの相対値の双方が90未満に抑制されており、優れた塗膜疵部の耐食性を発揮している。
【0066】
これら発明例のサンプルに用いた鋼材は、C、Si、Mn、P、S、Al、Cu、Cr、N、Ti、Nbの含有量が本発明で規定した要件を満たすが、これら必須添加元素に加えて、更に、Ni、Co、Mo、Wの少なくとも1種以上を適量含有させたS12〜S18の鋼材を用いたサンプルのNo.14〜No.20は、腐食深さの抑制効果が顕著である。
【0067】
また、Ni、Co、Mo、Wに加えて、更にSn、Sb、Seの少なくとも1種以上を適量含有させたS28〜S29の鋼材を用いたサンプルのNo.30〜No.31は、腐食深さの抑制効果が更に顕著である。また、Ni、Co、Mo、Wに加えて、更にMg、Ca、REMの少なくとも1種以上を適量含有させたS19〜S21の鋼材を用いたサンプルのNo.21〜No.23は、腐食面積の抑制効果が顕著である。
【0068】
以上のように、本発明の塗装鋼材は何れも、海水環境下において優れた塗膜疵部の耐食性を発揮するものであり、海水や飛来海塩粒子に曝される構造部材として好適に用いることができる。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】