特許第6180957号(P6180957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6180957-射出装置、および射出成形方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180957
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】射出装置、および射出成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/54 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   B29C45/54
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-27864(P2014-27864)
(22)【出願日】2014年2月17日
(65)【公開番号】特開2015-150809(P2015-150809A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】天野 光昭
(72)【発明者】
【氏名】竹内 滋
(72)【発明者】
【氏名】野阪 洋通
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−126217(JP,A)
【文献】 特開2001−162650(JP,A)
【文献】 特開昭59−120429(JP,A)
【文献】 特開昭50−135175(JP,A)
【文献】 特開2004−243704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シリンダと、
該第1シリンダ内の成形材料を移動させる第1可動部と、
該第1可動部を作動させる第1駆動部と、
前記第1シリンダから成形材料が供給される第2シリンダと、
該第2シリンダ内の成形材料を移動させる第2可動部と、
該第2可動部を作動させる第2駆動部と、
金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記第1シリンダ、前記第2シリンダ、および前記ノズルの間の成形材料の流れ方向を切り替える切替部と、
前記第1駆動部、前記第2駆動部、および前記切替部を制御する制御装置とを備え、
該制御装置は、所定時に、前記第1シリンダ、前記第2シリンダ、および前記ノズルに対して前記切替部を開放すると共に前記第1駆動部および前記第2駆動部を同時に駆動することによって、前記成形材料を前記切替部を介して前記ノズルから前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの両方に同時に流れ込ませる、射出装置。
【請求項2】
第1シリンダ、該第1シリンダから成形材料が供給される第2シリンダ、および金型装置に成形材料を射出するノズルの間の成形材料の流れ方向を切り替える切替部を、所定時に、前記第1シリンダ、前記第2シリンダ、および前記ノズルに対して開放すると共に
前記第1シリンダ内の成形材料を移動させる第1可動部を作動させる第1駆動部と、前記第2シリンダ内の成形材料を移動させる第2可動部を作動させる第2駆動部とを、前記所定時に、同時に駆動することによって、
前記所定時に、前記成形材料を、前記切替部を介して前記ノズルから前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの両方に同時に流れ込ませる、射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出装置、および射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリプラ式の射出装置は、第1シリンダと、第1シリンダから成形材料が供給される第2シリンダと、第2シリンダから供給される成形材料を金型装置内に射出するノズルとを備える(例えば、特許文献1参照)。金型装置内に充填された液状の成形材料は固化され、成形品が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−238742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、金型装置とノズルとの間を流れる成形材料の量(体積、質量、流量など)が不足することがあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、金型装置とノズルとの間を流れる成形材料の量を増加できる、射出装置の提供を主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
第1シリンダと、
該第1シリンダ内の成形材料を移動させる第1可動部と、
該第1可動部を作動させる第1駆動部と、
前記第1シリンダから成形材料が供給される第2シリンダと、
該第2シリンダ内の成形材料を移動させる第2可動部と、
該第2可動部を作動させる第2駆動部と、
金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記第1シリンダ、前記第2シリンダ、および前記ノズルの間の成形材料の流れ方向を切り替える切替部と、
前記第1駆動部、前記第2駆動部、および前記切替部を制御する制御装置とを備え、
該制御装置は、所定時に、前記第1シリンダ、前記第2シリンダ、および前記ノズルに対して前記切替部を開放すると共に前記第1駆動部および前記第2駆動部を同時に駆動することによって、前記成形材料を前記切替部を介して前記ノズルから前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの両方に同時に流れ込ませる、射出装置が提供される。

【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、金型装置とノズルとの間を流れる成形材料の量を増加できる、射出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態による射出装置を示す図であって、スクリュシリンダおよびプランジャシリンダの2者に対して切替部を開放し、ノズルに対して切替部を閉塞した状態を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による射出装置を示す図であって、スクリュシリンダ、プランジャシリンダおよびノズルの3者に対して切替部を開放した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。以下、スクリュシリンダおよびプランジャシリンダから切替部に成形材料が送り出される方向を前方、その反対方向を後方として説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態による射出装置を示す図であって、スクリュシリンダおよびプランジャシリンダの2者に対して切替部を開放し、ノズルに対して切替部を閉塞した状態を示す図である。図2は、本発明の一実施形態による射出装置を示す図であって、スクリュシリンダ、プランジャシリンダおよびノズルの3者に対して切替部を開放した状態を示す図である。
【0011】
射出装置10は、スクリュシリンダ20、スクリュ22、スクリュ駆動部24、プランジャシリンダ30、プランジャ32、プランジャ駆動部34、ノズル40、切替部50、および制御装置70を備える。
【0012】
スクリュシリンダ20は、外部から成形材料が供給される第1シリンダである。成形材料は、固体、液体のいずれの状態で第1シリンダに供給されてもよいが、本実施形態では固体の状態で第1シリンダに供給される。スクリュシリンダ20は、成形材料を加熱し、溶融させる。スクリュシリンダ20の外周には、ヒータなどの加熱源が設けられる。
【0013】
スクリュ22は、スクリュシリンダ20内に配設され、スクリュシリンダ20内の成形材料を移動させる第1可動部である。スクリュ22は、スクリュシリンダ20内に進退自在に且つ回転自在に配設されてよい。尚、スクリュ22は、スクリュシリンダ20内に進退不能に且つ回転自在に配設されてもよい。
【0014】
スクリュ駆動部24は、スクリュ22を作動させる第1駆動部である。スクリュ駆動部24は、一般的な構成であってよく、例えばスクリュ22を回転させるスクリュ回転モータ25、およびスクリュ22を進退させるスクリュ移動モータ26を有する。スクリュ移動モータ26とスクリュ22との間には、スクリュ移動モータ26の回転運動をスクリュ22の直線運動に変換する運動変換部が配設されてよい。運動変換部はボールねじなどで構成される。
【0015】
プランジャシリンダ30は、スクリュシリンダ20から成形材料が供給される第2シリンダである。プランジャシリンダ30の外周には、ヒータなどの加熱源が設けられる。
【0016】
プランジャ32は、プランジャシリンダ30内に配設され、プランジャシリンダ30内の成形材料を移動させる第2可動部である。プランジャ32は、プランジャシリンダ30内に進退自在に配設される。
【0017】
プランジャ駆動部34は、プランジャ32を作動させる第2駆動部である。プランジャ駆動部34は、一般的な構成であってよく、例えばプランジャ32を進退させるプランジャ移動モータ36を有する。プランジャ移動モータ36とプランジャ32との間には、プランジャ移動モータ36の回転運動をプランジャ32の直線運動に変換する運動変換部が配設されてよい。運動変換部はボールねじなどで構成される。
【0018】
ノズル40は、切替部50から供給される成形材料を金型装置内に射出する。金型装置内に充填された液状の成形材料は固化され、成形品が得られる。
【0019】
切替部50は、スクリュシリンダ20と、プランジャシリンダ30と、ノズル40との間の成形材料の流れ方向を切り替える。切替部50は、例えばロータリーバルブで構成される。尚、切替部50はスプールバルブで構成されてもよく、切替部50の構成は特に限定されない。
【0020】
切替部50は、スクリュシリンダ20およびプランジャシリンダ30の2者に対して開放されノズル40に対して閉塞された状態(図1参照)と、スクリュシリンダ20、プランジャシリンダ30およびノズル40の3者に対して開放された状態(図2参照)とに切り替えられる。
【0021】
尚、切替部50の状態は、図1に示す状態、図2に示す状態に限定されない。例えば、切替部50は、プランジャシリンダ30およびノズル40の2者に対して開放されスクリュシリンダ20に対して閉塞された状態をとりうる。また、切替部50は、スクリュシリンダ20およびノズル40の2者に対して開放されプランジャシリンダ30に対して閉塞された状態をとりうる。
【0022】
制御装置70は、スクリュ駆動部24、プランジャ駆動部34、および切替部50を制御する。制御装置70は、例えばメモリなどの記憶部およびCPUを有し、記憶部に記憶された制御プログラムをCPUに実行させることにより、各種制御を行う。
【0023】
例えば、制御装置70は、図1に示すようにスクリュシリンダ20およびプランジャシリンダ30の2者に対して切替部50を開放すると共に、スクリュ回転モータ25を駆動してスクリュ22を所定方向に回転させる。成形材料がスクリュ22の螺旋状の溝22aに沿って前方に送られながら、徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ22の前方に溜まり、スクリュ22が後退させられる。スクリュ22が所定位置まで後退し、スクリュ22の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、制御装置70はスクリュ回転モータ25を停止させる。
【0024】
制御装置70は、スクリュ22の急激な後退を抑制するため、スクリュ移動モータ26を駆動してスクリュ22に圧力をかけてよい。スクリュの圧力が設定値になるように、制御装置70がスクリュ移動モータ26を駆動する。
【0025】
制御装置70は、スクリュ22の前方に所定量の成形材料を蓄積した後、スクリュ移動モータ26を駆動してスクリュ22を前進させる。これにより、切替部50を介してスクリュシリンダ20からプランジャシリンダ30に成形材料が流れ込む。その結果、プランジャ32の前方に成形材料が蓄積され、プランジャ32が後退させられる。
【0026】
制御装置70は、プランジャ32の急激な後退を制限するため、プランジャ移動モータ36を駆動してプランジャ32に圧力をかけてよい。プランジャ32の圧力が設定値になるように、制御装置70がプランジャ移動モータ36を駆動する。
【0027】
プランジャ32が所定位置まで後退させられ、プランジャ32の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、制御装置70は、再度、スクリュ22の前方に成形材料を溜めるため、スクリュ回転モータ25を駆動してスクリュ22を所定方向に回転させる。スクリュ22の前方に成形材料が溜まり、スクリュ22が後退させられる。
【0028】
スクリュ22の前方、およびプランジャ32の前方にそれぞれ所定量の成形材料が蓄積される。尚、成形材料を蓄積する工程は、上記工程に限定されない。例えば、制御装置70は、スクリュ22の位置を固定してスクリュ22を回転させることで、成形材料をスクリュ22の螺旋状に溝に沿って前方に送り、切替部50を介してスクリュシリンダ20からプランジャシリンダ30に成形材料を流し込んでもよい。
【0029】
成形材料の蓄積後、蓄積した成形材料を金型装置内に充填する充填工程が行われる。金型装置内に充填された成形材料は固化される。成形材料の固化によるヒケ、ショートなどの充填不足を抑制するため金型装置内の成形材料に圧力をかける保圧工程が行われる。また、金型装置内の成形材料を除圧する除圧工程が行われることもある。
【0030】
制御装置70は、充填工程の少なくとも一部において、図2に示すようにスクリュシリンダ20、プランジャシリンダ30およびノズル40の3者に対して切替部50を開放すると共に、スクリュ移動モータ26およびプランジャ移動モータ36を同時に駆動してよい。スクリュ22およびプランジャ32が同時に前進され、成形材料が切替部50を介してスクリュシリンダ20およびプランジャシリンダ30の両方から同時にノズル40に流れ込む。そうして、ノズル40から金型装置内に成形材料が充填される。従来のようにプランジャシリンダ30からのみノズル40に成形材料を供給する場合に比べて、ノズル40から金型装置内に流れ込む成形材料の量を増加でき、大型の成形品を成形できる。また、成形品の大きさが同じ場合、従来に比べて充填速度を向上できる。
【0031】
尚、スクリュ移動モータ26およびプランジャ移動モータ36は、充填工程の少なくとも一部において同時に駆動されればよく、同時に駆動開始されてもされなくてもよいし、同時に駆動終了されてもされなくてもよい。また、充填工程の少なくとも一部において、プランジャ移動モータ36と、スクリュ回転モータ25とを同時に駆動してもよい。上述の如く、スクリュ22を所定方向に回転させることにより、スクリュ22の前方に成形材料を送ることができる。また、充填工程の少なくとも一部において、スクリュ回転モータ25、スクリュ移動モータ26、およびプランジャ移動モータを同時に駆動してもよい。
【0032】
また、制御装置70は、保圧工程の少なくとも一部において、図2に示すようにスクリュシリンダ20、プランジャシリンダ30およびノズル40の3者に対して切替部50を開放すると共に、スクリュ移動モータ26およびプランジャ移動モータ36を同時に駆動してよい。スクリュ22の圧力およびプランジャ32の圧力によって、金型装置内の成形材料に圧力をかけることができる。ヒケやショートなどによる不足分の成形材料が切替部50を介してスクリュシリンダ20およびプランジャシリンダ30の両方から同時にノズル40に流れ込む。ノズル40から金型装置内に流れ込む成形材料の量を増加でき、ヒケやショートなどの充填不足を解消できる。
【0033】
尚、スクリュ移動モータ26およびプランジャ移動モータ36は、保圧工程の少なくとも一部において同時に駆動されればよく、同時に駆動開始されてもされなくてもよいし、同時に駆動終了されてもされなくてもよい。また、保圧工程の少なくとも一部において、プランジャ移動モータ36と、スクリュ回転モータ25とを同時に駆動してもよい。スクリュ22を所定方向に回転させることにより、スクリュ22の前方に成形材料を送ることができる。また、保圧工程の少なくとも一部において、スクリュ回転モータ25、スクリュ移動モータ26、およびプランジャ移動モータを同時に駆動してもよい。
【0034】
また、制御装置70は、除圧工程の少なくとも一部において、図2に示すようにスクリュシリンダ20、プランジャシリンダ30およびノズル40の3者に対して切替部50を開放すると共に、スクリュ移動モータ26およびプランジャ移動モータ36を同時に駆動してよい。スクリュ22のおよびプランジャ32が同時に後退され、成形材料が切替部50を介してノズル40からスクリュシリンダ20およびプランジャシリンダ30の両方に同時に流れ込む。金型装置内からノズル40に流れ込む成形材料の量を増加でき、金型装置内の成形材料を除圧しやすい。
【0035】
尚、スクリュ移動モータ26およびプランジャ移動モータ36は、除圧工程の少なくとも一部において同時に駆動されればよく、同時に駆動開始されてもされなくてもよいし、同時に駆動終了されてもされなくてもよい。また、除圧工程の少なくとも一部において、プランジャ移動モータ36と、スクリュ回転モータ25とを同時に駆動してもよい。スクリュ22を所定方向とは逆方向に回転させることにより、成形材料を逆流させることができる。また、除圧工程の少なくとも一部において、スクリュ回転モータ25、スクリュ移動モータ26、およびプランジャ移動モータを同時に駆動してもよい。
【0036】
尚、スクリュ駆動部24およびプランジャ駆動部34を同時に駆動する工程は、充填工程、保圧工程、および除圧工程のうちの、全てでなくてもよく、少なくとも1つであってよい。また、充填工程、保圧工程、および除圧工程以外の工程でもよい。
【0037】
以上、射出装置などの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0038】
例えば、上記実施形態の射出装置10は、型開閉方向が水平な横型の射出成形機に備えられるが、型開閉方向が鉛直な竪型の射出成形機に備えられてもよい。
【0039】
また、上記実施形態のスクリュシリンダ20は、プランジャシリンダ30に対して平行とされるが、垂直とされてもよいし、傾斜してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では第1可動部としてスクリュ22が用いられるが、プランジャが用いられてもよい。第1可動部としてのプランジャは、第1シリンダ内に進退自在に配設されてよい。
【符号の説明】
【0041】
10 射出装置
20 スクリュシリンダ
22 スクリュ
24 スクリュ駆動部
25 スクリュ回転モータ
26 スクリュ移動モータ
30 プランジャシリンダ
32 プランジャ
34 プランジャ駆動部
36 プランジャ移動モータ
40 ノズル
50 切替部
70 制御装置
図1
図2