特許第6180958号(P6180958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180958
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】混練室内壁検査装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/22 20060101AFI20170807BHJP
   B01F 7/08 20060101ALI20170807BHJP
   B01F 15/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   B29B7/22
   B01F7/08 D
   B01F15/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-30252(P2014-30252)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2015-155148(P2015-155148A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 知多佳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英二
(72)【発明者】
【氏名】福井 利英
(72)【発明者】
【氏名】三浦 穂高
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−162692(JP,A)
【文献】 特開平11−023477(JP,A)
【文献】 特開平08−136464(JP,A)
【文献】 特開平05−053065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00−7/92
B01F 7/00−7/32
B01F 15/00
G01N 21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練室内に配置されたロータに取り外し可能に固定された撮影装置と、
前記ロータが回転した状態で、前記撮影装置に前記混練室の内壁を撮影させる撮影制御部と、
前記内壁のうち前記撮影装置が撮影できた領域の画像である部分画像を生成する部分画像生成部と、
前記撮影装置が前記ロータに固定される位置を、前記ロータの回転軸方向の座標を異ならせて、それぞれ得られた前記部分画像をつなげて、前記内壁の全体の画像である全体画像を生成する全体画像生成部と、
前記全体画像を出力する出力部と、を備え
前記ロータは、前記回転軸方向に捩れた形状を有する翼部と、前記翼部が形成されることにより生じる傾斜面を有する胴体部と、を備えており、
前記撮影装置は、前記傾斜面に取り外し可能に固定されており、
前記混練室内壁検査装置は、前記混練室内において、前記回転軸方向に沿った位置を示す目印を有する位置表示部材を備えており、
前記部分画像生成部は、前記位置表示部材の像を切断した切断像を含む前記部分画像を生成し、
前記部分画像生成部は、前記部分画像のそれぞれについて、前記切断像の長手方向が前記回転軸方向と一致し、かつ、前記目印の像の大きさが予め定められた値となるようにしており、
前記全体画像生成部は、前記回転軸方向の位置及び前記回転軸方向と直交する方向の位置を、前記部分画像のそれぞれについて、前記目印の像を基にして補正して前記全体画像を生成する、混練室内壁検査装置。
【請求項2】
前記混練室に設けられた混練物排出口を画定する辺部のうち、前記回転軸方向に沿った辺部に、前記位置表示部材が取り外し可能に取り付けられている請求項1に記載の混練室内壁検査装置。
【請求項3】
混練室内に配置されたロータに取り外し可能に固定された撮影装置と、
前記ロータが回転した状態で、前記撮影装置に前記混練室の内壁を撮影させる撮影制御部と、
前記内壁のうち前記撮影装置が撮影できた領域の画像である部分画像を生成する部分画像生成部と、
前記撮影装置が前記ロータに固定される位置を、前記ロータの回転軸方向の座標を異ならせて、それぞれ得られた前記部分画像をつなげて、前記内壁の全体の画像である全体画像を生成する全体画像生成部と、
前記全体画像を出力する出力部と、を備え、
前記撮影装置は、カメラ、前記内壁を照明する第1の光源、及び、スリット光を出射する第2の光源を備えており、
前記混練室内壁検査装置は、前記第1の光源を点灯させて前記内壁を照明した状態で前記カメラに前記内壁を撮影させる第1の撮影モードと、前記第2の光源からスリット光を出射させて、スリット光が前記内壁で反射した光である光切断線を前記カメラに撮影させる第2の撮影モードと、を選択する操作がされる操作部を備えており、
前記撮影制御部は、前記第1の撮影モードを選択する操作がされた場合、前記第1の撮影モードを実行し、前記第2の撮影モードを選択する操作がされた場合、前記第2の撮影モードを実行する、混練室内壁検査装置。
【請求項4】
前記ロータは、前記回転軸方向に捩れた形状を有する翼部と、前記翼部が形成されることにより生じる傾斜面を有する胴体部と、を備えており、
前記撮影装置は、前記傾斜面に取り外し可能に固定されており、
前記混練室内壁検査装置は、前記混練室内において、前記回転軸方向に沿った位置を示す目印を有する位置表示部材を備えており、
前記部分画像生成部は、前記位置表示部材の像を切断した切断像を含む前記部分画像を生成し、
前記部分画像生成部は、前記部分画像のそれぞれについて、前記切断像の長手方向が前記回転軸方向と一致し、かつ、前記目印の像の大きさが予め定められた値となるようにしており、
前記全体画像生成部は、前記回転軸方向の位置及び前記回転軸方向と直交する方向の位置を、前記部分画像のそれぞれについて、前記目印の像を基にして補正して前記全体画像を生成する請求項3に記載の混練室内壁検査装置。
【請求項5】
前記混練室に設けられた混練物排出口を画定する辺部のうち、前記回転軸方向に沿った辺部に、前記位置表示部材が取り外し可能に取り付けられている請求項4に記載の混練室内壁検査装置。
【請求項6】
前記全体画像生成部は、前記全体画像として、前記内壁が展開された状態の画像を生成する請求項1〜5のいずれか一項に記載の混練室内壁検査装置。
【請求項7】
前記ロータの回転角を測定する回転角測定部を備え、
前記部分画像生成部は、前記回転角測定部によって測定された回転角が予め定められた値のときに、前記撮影装置が前記内壁を撮影して得られた画像である単位画像をつなげて前記部分画像を生成する請求項1〜6のいずれか一項に記載の混練室内壁検査装置。
【請求項8】
前記混練室でゴム製品又はプラスチック製品となる混練物が生成される請求項1〜7のいずれか一項に記載の混練室内壁検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製品やプラスチック製品等の製造に用いられる混練機に適用される検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品やプラスチック製品の製造工程には、ゴムやプラスチックとなる複数の材料を混練して混練物を生成する工程が含まれる。ゴムを例にして説明すると、ゴム混練機は、混練室と、混練室内に配置されたロータと、を備え、ゴム原料及び各種材料(補強剤、可塑材及び老化防止剤等)を混練室に投入し、ロータを回転させて混練室内でゴム原料と各種材料とを混ぜ合わせて混練物を生成する。
【0003】
ロータの回転により、ゴム原料を剪断して、ゴム原料と各種材料とを混ぜ合わせるので、ゴム原料及び各種材料には強い力が作用する。これにより、混練室の内壁に強い摩擦力が作用する。そこで、混練室の内壁の耐摩耗性を向上させるために、混練室の内壁にクロム等のメッキをしている。
【0004】
補強剤として、近年、シリカのような硬度が高い材料が用いられるので、混練室の内壁にメッキをしても、混練物の生成中にシリカによってメッキが摩耗する。このため、混練機を中長期使用すると、混練室の内壁のメッキが薄くなったり、剥がれたり、傷ついたりする。よって、混練室の内壁を点検する必要がある。
【0005】
混練機の清掃や点検のために、混練室を画定するケーシングを分割できる混練機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3756766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ケーシングを分割できる構造は、ケーシングを分割できない構造と比べて、混練室の強度上不利である。
【0008】
混練室の内壁を目視することにより、混練室の内壁を点検することができる。しかし、混練室内にはロータが配置され、死角が不可避的に生じるので、内壁のうち、目視できない領域が存在する。
【0009】
混練室の内壁を手触りすることにより、混練室の内壁を点検することができる。しかし、熟練した作業者でなければ、内壁の状態(メッキの摩耗の程度、メッキの剥がれ、メッキの傷)を判断することができない。
【0010】
本発明は、目視や手作業によることなく、混練室の内壁全体の点検が可能な混練室内壁検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る混練室内壁検査装置は、混練室内に配置されたロータに取り外し可能に固定された撮影装置と、前記ロータが回転した状態で、前記撮影装置に前記混練室の内壁を撮影させる撮影制御部と、前記内壁のうち前記撮影装置が撮影できた領域の画像である部分画像を生成する部分画像生成部と、前記撮影装置が前記ロータに固定される位置を、前記ロータの回転軸方向の座標を異ならせて、それぞれ得られた前記部分画像をつなげて、前記内壁の全体の画像である全体画像を生成する全体画像生成部と、前記全体画像を出力する出力部と、を備える。
【0012】
本発明に係る混練室内壁検査装置は、ロータに撮影装置を固定し、ロータが回転した状態で、撮影装置に混練室の内壁を撮影させて、混練室の内壁の画像を得ている。内壁とロータとの距離は、比較的短いので、ロータの一つの箇所に固定された撮影装置によっては、内壁のうち撮影装置が撮影できた領域の画像である部分画像を得られるだけであり、内壁全体の画像である全体画像を得ることができない。
【0013】
そこで、本発明に係る混練室内壁検査装置では、撮影装置がロータに固定される位置を、ロータの回転軸方向の座標を異ならせて、それぞれ得られた部分画像をつなげて、全体画像を生成している。全体画像を見ることにより、混練室の内壁全体を点検することができる。従って、本発明に係る混練室内壁検査装置によれば、目視や手作業によることなく、混練室の内壁全体を点検することができる。
【0014】
撮影装置が複数台でも1台でも本発明を実行できる。すなわち、複数台の撮影装置を用意し、撮影装置のそれぞれがロータに固定される位置を、回転軸方向の座標を異ならせて、内壁を撮影する。これによれば、ロータの回転を一回で撮影を終了することができる。
【0015】
撮影装置は、ロータに取り外し可能に固定されている。そこで、1台の撮影装置を用意し、撮影装置がロータに固定される位置を、回転軸方向の座標を異ならせて、内壁を撮影する。これによれば、ロータを複数回回転させなければならないが、撮影装置の数は一つで済む。
【0016】
撮影装置は、ロータに取り外し可能にされており、内壁の検査時に、ロータに取り付けられる。
【0017】
上記構成において、前記全体画像生成部は、前記全体画像として、前記内壁が展開された状態の画像を生成する。
【0018】
この構成によれば、内壁全体の画像を、内壁が展開された状態の画像(平面画像)で生成するので、内壁の全ての領域について見やすく表示できる。
【0019】
上記構成において、前記ロータの回転角を測定する回転角測定部を備え、前記部分画像生成部は、前記回転角測定部によって測定された回転角が予め定められた値のときに、前記撮影装置が前記内壁を撮影して得られた画像である単位画像をつなげて前記部分画像を生成する。
【0020】
単位画像を取得する方法としては、2つある。1つは、撮影装置で内壁を連続撮影して得られた画像群の中から、回転角が予め定められた値(例えば、0°、60°、120°、180°、240°)のときに撮影された画像を選択する。もう1つは、回転角が予め定められた値(例えば、0°、60°、120°、180°、240°)のときに、撮影装置で内壁を撮影する。
【0021】
上記構成において、前記ロータは、前記回転軸方向に捩れた形状を有する翼部と、前記翼部が形成されることにより生じる傾斜面を有する胴体部と、を備えており、前記撮影装置は、前記傾斜面に取り外し可能に固定されており、前記混練室内壁検査装置は、前記混練室内において、前記回転軸方向に沿った位置を示す目印を有する位置表示部材を備えており、前記部分画像生成部は、前記位置表示部材の像を切断した切断像を含む前記部分画像を生成し、前記部分画像生成部は、前記部分画像のそれぞれについて、前記切断像の長手方向が前記回転軸方向と一致し、かつ、前記目印の像の大きさが予め定められた値となるようにしており、前記全体画像生成部は、前記回転軸方向の位置及び前記回転軸方向と直交する方向の位置を、前記部分画像のそれぞれについて、前記目印の像を基にして補正して前記全体画像を生成する。
【0022】
ロータの胴体部には、ロータの回転軸方向に捩れた形状を有する翼部が形成されているので、胴体部の表面には、複雑な形状の傾斜面が生じている。ロータの設計データから目的の撮影条件(撮影装置の光軸の向き、撮影装置と内壁との距離等)を満たすように、撮影装置のベースを製作する。しかし、ロータの製作時の誤差及びロータの摩耗等が原因となるロータの実形状とロータの設計形状との差異、及び/又は、撮影装置が取り付けられるロータの実際の位置と想定の位置との差異によって、上記撮影条件を満たすことができない。
【0023】
そこで、画像補正する必要がある。内壁の表面には、画像補正をする際に、目印となる表示や部材がない。この構成では、位置表示部材の像を切断した切断像や位置表示部材に含まれる目印の像を用いて、部分画像のそれぞれについて、切断像の長手方向が回転軸方向と一致し、かつ、目印の像の大きさが予め定められた値となるようにしている。そして、回転軸方向の位置及び回転軸方向と直交する方向の位置を、部分画像のそれぞれについて、上記目印の像を基にして補正して全体画像を生成する。
【0024】
上記構成において、前記混練室に設けられた混練物排出口を画定する辺部のうち、前記回転軸方向に沿った辺部に、前記位置表示部材が取り外し可能に取り付けられている。
【0025】
この構成は、混練室の内壁に位置表示部材を取り付ける場合に比べて、位置表示部材を容易に取り付けることができる。
【0026】
上記構成において、前記撮影装置は、カメラ、前記内壁を照明する第1の光源、及び、スリット光を出射する第2の光源を備えており、前記混練室内壁検査装置は、前記第1の光源を点灯させて前記内壁を照明した状態で前記カメラに前記内壁を撮影させる第1の撮影モードと、前記第2の光源からスリット光を出射させて、スリット光が前記内壁で反射した光である光切断線を前記カメラに撮影させる第2の撮影モードと、を選択する操作がされる操作部を備えており、前記撮影制御部は、前記第1の撮影モードを選択する操作がされた場合、前記第1の撮影モードを実行し、前記第2の撮影モードを選択する操作がされた場合、前記第2の撮影モードを実行する。
【0027】
この構成によれば、第1の撮影モードを実行することにより、混練室の内壁全体の画像(全体画像)を得ることができ、第2の撮影モードを実行することにより、混練室の内壁の凹凸を測定することができる。
【0028】
本発明に係る混練室内壁検査装置によって検査の対象となる内壁を有する混練室では、ゴム製品又はプラスチック製品となる混練物が生成される。
本発明に係る混練室内壁検査装置の第1態様は、混練室内に配置されたロータに取り外し可能に固定された撮影装置と、前記ロータが回転した状態で、前記撮影装置に前記混練室の内壁を撮影させる撮影制御部と、前記内壁のうち前記撮影装置が撮影できた領域の画像である部分画像を生成する部分画像生成部と、前記撮影装置が前記ロータに固定される位置を、前記ロータの回転軸方向の座標を異ならせて、それぞれ得られた前記部分画像をつなげて、前記内壁の全体の画像である全体画像を生成する全体画像生成部と、前記全体画像を出力する出力部と、を備え、前記ロータは、前記回転軸方向に捩れた形状を有する翼部と、前記翼部が形成されることにより生じる傾斜面を有する胴体部と、を備えており、前記撮影装置は、前記傾斜面に取り外し可能に固定されており、前記混練室内壁検査装置は、前記混練室内において、前記回転軸方向に沿った位置を示す目印を有する位置表示部材を備えており、前記部分画像生成部は、前記位置表示部材の像を切断した切断像を含む前記部分画像を生成し、前記部分画像生成部は、前記部分画像のそれぞれについて、前記切断像の長手方向が前記回転軸方向と一致し、かつ、前記目印の像の大きさが予め定められた値となるようにしており、前記全体画像生成部は、前記回転軸方向の位置及び前記回転軸方向と直交する方向の位置を、前記部分画像のそれぞれについて、前記目印の像を基にして補正して前記全体画像を生成する。
本発明に係る混練室内壁検査装置の第2態様は、混練室内に配置されたロータに取り外し可能に固定された撮影装置と、前記ロータが回転した状態で、前記撮影装置に前記混練室の内壁を撮影させる撮影制御部と、前記内壁のうち前記撮影装置が撮影できた領域の画像である部分画像を生成する部分画像生成部と、前記撮影装置が前記ロータに固定される位置を、前記ロータの回転軸方向の座標を異ならせて、それぞれ得られた前記部分画像をつなげて、前記内壁の全体の画像である全体画像を生成する全体画像生成部と、前記全体画像を出力する出力部と、を備え、前記撮影装置は、カメラ、前記内壁を照明する第1の光源、及び、スリット光を出射する第2の光源を備えており、前記混練室内壁検査装置は、前記第1の光源を点灯させて前記内壁を照明した状態で前記カメラに前記内壁を撮影させる第1の撮影モードと、前記第2の光源からスリット光を出射させて、スリット光が前記内壁で反射した光である光切断線を前記カメラに撮影させる第2の撮影モードと、を選択する操作がされる操作部を備えており、前記撮影制御部は、前記第1の撮影モードを選択する操作がされた場合、前記第1の撮影モードを実行し、前記第2の撮影モードを選択する操作がされた場合、前記第2の撮影モードを実行する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、目視や手作業によることなく、混練室の内壁全体の点検が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】混練機の一例の断面概略図である。
図2図1に示す2つの混練室及び2つのロータの拡大図である。
図3】ロータ及び混練室において、ロータに固定された撮影装置を用いて、内壁を撮影している状態を示す模式図である。
図4】混練室の上方からロータを見た状態を示す平面図である。
図5】位置表示部材の一例の平面図である。
図6】本実施形態に係る混練室内壁検査装置の構成を示すブロック図である。
図7】ロータの回転角を測定する態様の一例を説明する模式図である。
図8】撮影装置で撮影された画像を用いて、部分画像を生成する工程を示す工程図である。
図9】各撮影装置で撮影された画像を用いて生成された部分画像の模式図である。
図10】全体画像の模式図である。
図11】本実施形態の変形例に係る混練機内壁検査装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて、本発明の一実施形態を詳細に説明する。図1は、混練機100の一例の断面概略図である。混練機100は、二軸のバッチ式ミキサであり、例えば、ゴム原料及び各種材料(補強剤、可塑材及び老化防止剤等)を混練した混練物の生成に用いられる。本実施形態では、ゴム製品となる混練物を生成する混練機100を例にして説明するが、本発明は、これに限定されず、プラスチック製品となる混練物を生成する混練機に適用することもできる。
【0032】
混練機100は、材料供給筒11、フローティングウェイト13、空気圧シリンダ15、ケーシング17、2つの混練室19a,19b、2つのロータ21a,21b、及び、ドロップドア23を備える。
【0033】
材料供給筒11は、ケーシング17の上方において、上下方向に延びている。材料供給筒11の上端には、空気圧シリンダ15が設けられている。空気圧シリンダ15の内部から材料供給筒11の内部に亘ってピストンロッド29が配置されている。空気圧シリンダ15の内部には、ピストンロッド29の上端に固定されたピストン31が配置されている。
【0034】
材料供給筒11の内部には、フローティングウェイト13が配置されている。フローティングウェイト13は、ピストンロッド29の下端に固定されており、ピストンロッド29と共に、上下に移動できる。
【0035】
材料供給筒11の下端は、ケーシング17に形成された材料供給口25を通して、2つの混練室19a,19bと連通している。
【0036】
材料供給筒11の側面には、ホッパー27が設けられている。ホッパー27から材料(ゴム原料及び各種材料)が、材料供給筒11に投入される。
【0037】
空気圧シリンダ15の作用でフローティングウェイト13が下降すると、材料供給筒11に投入された上記材料が、2つの混練室19a,19bに供給される。
【0038】
2つの混練室19a,19bは、ケーシング17の内部に形成されている。2つの混練室19a,19bは、それぞれ、図1の紙面に対して垂直方向に延びる略円筒形状を有する。
【0039】
混練室19a内には、ロータ21aが配置され、混練室19b内には、ロータ21bが配置されている。ロータ21a,21bは、図1の紙面に対して垂直方向に延びており、図示しないモータから動力を与えられて、ロータ21aが矢印A方向に回転し、ロータ21bが矢印A方向と逆の矢印B方向に回転する。
【0040】
ケーシング17の下部には、混練物を排出するための混練物排出口33が設けられている。
【0041】
ドロップドア23は、混練物排出口33を塞ぐ蓋として機能する。ドロップドア23は、上下に移動できるように配置されている。ドロップドア23が下降することにより、混練物排出口33が開放される。ドロップドア23が上昇することにより、混練物排出口33が塞がれる。
【0042】
図2は、図1に示す混練室19a,19b及びロータ21a,21bの拡大図である。ロータ21aは、胴体部41aと、胴体部41aに設けられた翼部43aと、を含む。ロータ21bは、ロータ21aと同様に、胴体部41bと、胴体部41bに設けられた翼部43bと、を含む。
【0043】
胴体部41a,41bの径は、比較的大きい。これは、ロータ21a,21bの回転により、混練時、すなわち、ゴム原料を剪断して、ゴム原料と各種材料とを混ぜ合わせる時に、ロータ21a,21bに大きな力が作用し、この力によりロータ21a,21bが破壊するのを防止するためである。また、混練により発生する熱を吸収するために、胴体部41a,41bに冷却管が通されているからである。
【0044】
翼部43aの先端と混練室19aの内壁45aとの隙間、及び、翼部43bの先端と混練室19bの内壁45bとの隙間は、ゴム原料のせん断やゴム原料中への各種材料の分散の効率を高めるために、小さくされている。
【0045】
このように、上記隙間が小さく、かつ、胴体部41a,41bの径が比較的大きくされている。よって、混練物排出口33から混練室19a,19b、例えば、混練室19aの内壁45aを見た場合、死角θ1が不可避的に生じるので、内壁45aのうち、目視できない領域が存在する。
【0046】
そこで、本実施形態では、ロータ21aに撮影装置を固定して、ロータ21aを回転させた状態で、撮影装置により内壁45aを撮影し、また、ロータ21bに撮影装置を固定して、ロータ21bを回転させた状態で、撮影装置により内壁45bを撮影する。以下、ロータ21aに固定された撮影装置を用いて、内壁45aを撮影する場合を例にして説明するが、この例と同様にして、ロータ21bに固定された撮影装置を用いて、内壁45bを撮影する。
【0047】
図3は、図2に示すロータ21a及び混練室19aにおいて、ロータ21aに固定された撮影装置3を用いて、内壁45aを撮影している状態を示す模式図である。撮影装置3は、ロータ21aの胴体部41aに取り外し可能に固定されている。
【0048】
内壁45aの撮影は、図1に示す混練機100で混練物を生成していないときに実行される。胴体部41aは、磁石が吸着する材料で構成されているので、撮影装置3に取り付けた磁石により、撮影装置3を胴体部41aに固定する。胴体部41aが磁石を吸着しない場合、撮影装置3に取り付けた吸盤により、撮影装置3を胴体部41aに固定する。このように、撮影装置3は、ロータ21aの胴体部41aに取り外し可能にされており、内壁45aの検査時に、ロータ21aの胴体部41aに取り付けられる。
【0049】
撮影装置3は、ベース51、カメラ53、光源55及び通信部57を備える。ベース51の裏面に磁石(不図示)が取り付けられている。ベース51の表面には、カメラ53、光源55及び通信部57が取り付けられている。
【0050】
カメラ53は、内壁45aのうち、視野角θ2の範囲にある領域を撮影する。光源55は、カメラ53による内壁45aの撮影時に、カメラ53の視野角θ2の範囲を照明する。混練機100の外部において、ロータ21aの回転軸47を人が回すことにより、ロータ21aを矢印A方向に回転させた状態で、カメラ53により内壁45aを撮影する。
【0051】
通信部57は、混練機100の外部にあるパソコン5と通信する。通信部57を通して、パソコン5により、カメラ53及び光源55が遠隔制御される。
【0052】
パソコン5と撮影装置3との通信は、有線でもよいし、無線でもよい。カメラ53により撮影された画像を、パソコン5に送る方法として2つある。1つは、カメラ53により撮影された画像を、通信部57を経由して、パソコン5に送信する。もう1つは、カメラ53により撮影された画像を、カメラ53内のメモリに蓄積させる。撮影終了後に、撮影装置3をロータ21aの胴体部41aから取り外し、パソコン5とカメラ53とを接続し、カメラ53内のメモリに蓄積された画像をパソコン5に取り込む。
【0053】
カメラ53の電源、光源55の電源、及び、通信部57の電源は、それぞれ電池である。
【0054】
図4は、混練室19aの上方からロータ21aを見た状態を示す平面図である。4台の撮影装置3が、ロータ21aの胴体部41aに取り外し可能に固定されている。以下、4台の撮影装置を区別する必要がなければ、撮影装置3と記載し、4台の撮影装置を区別する場合、撮影装置3−1,3−2,3−3,3−4と記載する。
【0055】
上述したように、胴体部41aの径が比較的大きいので、胴体部41aと内壁45aとの距離が短い。このため、1台の撮影装置3では、内壁45aの全体を撮影できないので、複数台の撮影装置3に、撮影する領域を分担させている。すなわち、撮影装置3−1,3−2,3−3,3−4が胴体部41aに固定される位置を、ロータ21aの回転軸47の方向である回転軸方向D1の座標を異ならせて、内壁45aを撮影する。本実施形態では、撮影装置3が4台であるが、胴体部41aと内壁45aとの距離や、回転軸方向D1の内壁45aの寸法に応じて、撮影に用いる撮影装置3の台数が決まる。
【0056】
このように、複数台の撮影装置3を用意して、内壁45aを撮影すれば、ロータ21aの回転を一回で撮影を終了することができる。
【0057】
なお、撮影装置3は、胴体部41aに取り外し可能に固定されている。そこで、1台の撮影装置3を用意し、撮影装置3が胴体部41aに固定される位置を、回転軸方向D1の座標を異ならせて、内壁45aを撮影することもできる。すなわち、最初、撮影装置3を、撮影装置3−1の位置に固定して内壁45aを撮影し、次に、撮影装置3を、撮影装置3−2の位置に固定して内壁45aを撮影し、次に、撮影装置3を、撮影装置3−3の位置に固定して内壁45aを撮影し、最後に、撮影装置3を、撮影装置3−4の位置に固定して内壁45aを撮影する。これによれば、ロータ21aを複数回回転させなければならないが、撮影装置3の数は一つで済む。
【0058】
胴体部41aには、回転軸方向D1に捩れた形状を有する複数の翼部43aが形成されているので、胴体部41aの表面には、複雑な形状の傾斜面49が生じている。このため、回転軸方向D1に沿って、胴体部41aに4台の撮影装置3を配置できない。本実施形態では、4台の撮影装置3が、回転軸方向D1に対して斜め方向に、胴体部41aの傾斜面49に固定されている。
【0059】
位置表示部材61は、混練室19a内において、回転軸方向D1に沿った位置を示す目印を有する部材である。本実施形態では、図5に示すように、スケールを位置表示部材61として用いている。位置表示部材61に含まれる目盛り63や数字65が、上記目印となる。
【0060】
図3及び図4を参照して、混練物排出口33を画定する辺部のうち、混練室19a側であって回転軸方向D1に沿った辺部に、位置表示部材61が取り外し可能に取り付けられている。混練機100で混練物を生成するとき、位置表示部材61は取り外される。
【0061】
図6は、本実施形態に係る混練室内壁検査装置1の構成を示すブロック図である。混練室内壁検査装置1は、4台の撮影装置3、パソコン5及び回転角測定部7を備える。
【0062】
図4で説明したように、4台の撮影装置3が胴体部41aの傾斜面49に固定されている。
【0063】
パソコン5は、混練機100の外部にあり、撮影制御部71、部分画像生成部73、全体画像生成部75、通信部81、表示部77、及び、操作部79を備える。
【0064】
撮影制御部71は、ロータ21aが回転した状態で、4台の撮影装置3に混練室19aの内壁45aを同時に撮影させる制御をする。
【0065】
部分画像生成部73は、内壁45aのうち撮影装置3が撮影できた領域の画像である部分画像101(図9)を生成する。本実施形態では、撮影装置3−1,3−2,3−3,3−4のそれぞれが撮影できた領域の画像である部分画像101が生成される。
【0066】
全体画像生成部75は、撮影装置3がロータ21aに固定される位置を、ロータ21aの回転軸方向D1の座標を異ならせて、それぞれ得られた部分画像101を回転軸方向D1に沿ってつなげて、内壁45aの全体の画像である全体画像109(図10)を生成する。従って、全体画像109は、内壁45aが展開された状態を示す画像となる。本実施形態では、4台の撮影装置3のそれぞれにより撮影された部分画像101を、回転軸方向D1に沿ってつなげて、全体画像109を生成する。
【0067】
全体画像生成部75は、生成した全体画像109を表示部77に表示させる。点検者は、表示部77に表示された内壁45aの全体画像109を見て、内壁45aを点検する。表示部77は、全体画像109を出力する出力部の一例である。画像データで示される画像を用紙に印刷する画像形成部を出力部にすることもできる。この場合、画像形成部は、全体画像109を用紙に印刷する。
【0068】
操作部79は、4台の撮影装置3により内壁45aを撮影する命令や全体画像109を表示部77に表示させる命令等の入力をする。
【0069】
通信部81は、4台の撮影装置3の通信部57のそれぞれと、通信する。これにより、操作部79を用いて、パソコン5から4台の撮影装置3を遠隔操作することができる。
【0070】
回転角測定部7は、ロータ21aの回転角を測定する。回転角測定部7が測定した回転角のデータは、通信部81を介して部分画像生成部73に送られる。部分画像生成部73は、回転角測定部7によって測定された回転角が予め定められた値のときに、撮影装置3が内壁45aを撮影して得られた画像である単位画像103(図8)をつなげて部分画像101を生成する。本実施形態では、撮影装置3−1,3−2,3−3,3−4のそれぞれが、内壁45aを撮影して得られた単位画像103をつなげて部分画像101を生成する。
【0071】
回転角測定部7としては、いくつかの態様が考えられる。第1の態様は、ロータ21aを回転させるモータが、ロータ21aの回転角を制御できる信号により回転制御されていれば、その信号を用いてロータ21aの回転角を測定する。第2の態様は、回転軸47に取り付けたエンコーダにより、ロータ21aの回転角を測定する。第3の態様は、回転軸47に付けられた白黒模様と、白黒模様を検出する光センサーとでエンコーダを構成し、ロータ21aの回転時に光センサーでその白黒模様を検知して、ロータ21aの回転角を測定する。
【0072】
第4の態様は、ロータ21aに傾斜計を取り付け、ロータ21aが回転することにより傾斜計で測定される傾斜の変化を利用して、ロータ21aの回転角を測定する。第5の態様は、ロータ21aを一定速度で回転させることができる場合、回転速度と経過時間とを利用して、ロータ21aの回転角を測定する。第6の態様は、図7に示すように、内壁45aと接触するタイヤ部材91と、タイヤ部材91を回転可能に保持し、ロータ21aの胴体部41aに固定された支持部材93と、を設ける。ロータ21aが回転すると、タイヤ部材91が内壁45a上で回転することを利用して、ロータ21aの回転角を測定する。
【0073】
部分画像101及び全体画像109の生成について詳しく説明する。図3及び図4を参照して、点検者がロータ21aの回転軸47を回して、4台の撮影装置3のそれぞれのカメラ53の視野に、位置表示部材61が入る状態にする。この位置をロータ21aの回転角が0°とする。
【0074】
点検者がロータ21aの回転軸47を回して、ロータ21aの回転角が0°の位置からロータ21aを1回転させながら、別の点検者がパソコン5を操作して、4台の撮影装置3に内壁45aを同時に撮影させる。
【0075】
図6を参照して、4台の撮影装置3のそれぞれの通信部57は、パソコン5の通信部81と通信し、4台の撮影装置3のそれぞれが撮影した画像を、部分画像生成部73に送る。
【0076】
部分画像生成部73は、以下のようにして、部分画像101を生成する。図8は、撮影装置3−2で撮影された画像を用いて、部分画像101を生成する工程を示す工程図である。
【0077】
ステップ1を参照して、単位画像103を用意する。単位画像103とは、ロータ21aの回転角が予め定められた値のときに、撮影された画像である。隣り合う単位画像103が一部重複するように、予め定められた値が選択される。図8では、ロータ21aの回転角が、0°、60°、120°、180°、240°のときに それぞれ撮影された画像を単位画像103としている。図3に示すように、ロータ21aの回転角が0°〜240°の範囲が内壁45aの画像となる。
【0078】
ロータ21aの回転角が0°のときの単位画像103を単位画像103−1とし、ロータ21aの回転角が60°のときの単位画像103を単位画像103−2とし、ロータ21aの回転角が120°のときの単位画像103を単位画像103−3とし、ロータ21aの回転角が180°のときの単位画像103を単位画像103−4とし、ロータ21aの回転角が240°のときの単位画像103を単位画像103−5とする。
【0079】
これらの5枚の単位画像を区別する必要がなければ、単位画像103と記載し、区別する必要があれば、単位画像103−1,103−2,103−3,103−4,103−5と記載する。
【0080】
単位画像103を取得する方法としては、2つある。1つは、撮影装置3で内壁45aを連続撮影して得られた画像群の中から、回転角が予め定められた値(例えば、0°、60°、120°、180°、240°)のときに撮影された画像を選択する。もう1つは、回転角が予め定められた値(例えば、0°、60°、120°、180°、240°)のときに、撮影装置3で内壁45aを撮影する。
【0081】
回転角0°に対応する単位画像103−1に、図5に示す位置表示部材61の像を切断した切断像105が含まれる。切断像105の長手方向が回転軸方向D1に対して傾いている。この原因は、以下の通りである。上述したように、胴体部41aの表面は、複雑な形状を有する傾斜面49(図4)である。胴体部41aに取り付けられた撮影装置3の姿勢が 所望の姿勢となるように、ロータ21aの設計データを基にして撮影装置3のベース51(図3)を製作する。しかし、ロータ21aの製作時の誤差及びロータ21aの摩耗等が原因となるロータ21aの実形状とロータ21aの設計形状との差異、及び/又は、撮影装置3が取り付けられる胴体部41aの実際の位置と想定の位置との差異によって、胴体部41aに取り付けられた撮影装置3の姿勢を所望の姿勢にすることができないのである。
【0082】
ステップ2を参照して、部分画像生成部73は、単位画像103の傾きを演算する。ロータ21aの傾斜面49のうち、撮影装置3が固定される箇所の角度に応じて、単位画像103の縦横比が異なるので、撮影装置3が固定される箇所が傾いていないと仮定したときの単位画像103の縦横比と比較して、単位画像103の傾きを求めることができる。また、切断像105の長手方向の傾きが単位画像103の傾きとなるので、切断像105の長手方向の傾きを演算することにより、単位画像103の傾きを求めてもよい。部分画像生成部73は、演算した傾きの値に単位画像103−1〜103−5の傾ける補正をする。
【0083】
次に、部分画像生成部73は、切断像105に含まれる目盛りの間隔107が予め定められた値か否かを判定し、予め定められた値でなければ、その間隔が予め定められた値となるように、単位画像103−1の倍率を補正する。部分画像生成部73は、残りの単位画像103−2〜103−5についても、単位画像103−1と同じ倍率に補正する。目盛りの間隔107は、図5に示す位置表示部材61の目印(目盛り63)の像の大きさの一例である。
【0084】
ステップ3を参照して、部分画像生成部73は、隣り合う単位画像103において、画像の中心Cの距離dが、単位画像103の撮影角度の差(ここでは、60°)と対応する値にする。
【0085】
隣り合う単位画像103において、重複部分の一方は不要である。そこで、部分画像生成部73は、隣り合う単位の重複部分の一方を除去する。
【0086】
このようにして、撮影装置3−2で撮影された単位画像103を用いた部分画像101−2が生成される。
【0087】
部分画像生成部73は、同様にして、図9に示すように、撮影装置3−1で撮影された単位画像103を用いた部分画像101−1、撮影装置3−3で撮影された単位画像103を用いた部分画像101−3、及び、撮影装置3−4で撮影された単位画像103を用いた部分画像101−4を生成する。すなわち、部分画像生成部73は、位置表示部材61の像を切断した切断像105を有する単位画像103−1を含む部分画像101−1〜101−4を生成する。
【0088】
なお、部分画像を区別する必要がなければ、部分画像101と記載し、区別する必要があれば、部分画像101−1,101−2,101−3,101−4と記載する。
【0089】
以上説明したように、部分画像生成部73は、部分画像101のそれぞれについて、切断像105の長手方向が回転軸方向D1と一致し、かつ、目印の像の大きさ(目盛りの間隔107)が予め定められた値となるようにしている。目印の像の大きさを予め定められた値にすることにより、部分画像101のそれぞれの目印の像の大きさが互いに同じとなる。
【0090】
全体画像生成部75は、図9及び図10に示すように、回転軸方向D1の位置及び回転軸方向D1と直交する方向D2の位置を、部分画像101のそれぞれについて、目印(図5の目盛り63や数字65)の像を基にして補正して全体画像109を生成する。
【0091】
詳しく説明すると、部分画像101−1の切断像105(図9)に含まれる3の数字と、部分画像101−2の切断像105(図8)に含まれる3の数字とを重ならせ、部分画像101−2の切断像105(図8)に含まれる6の数字と、部分画像101−3の切断像105(図9)に含まれる6の数字とを重ならせ、部分画像101−3の切断像105(図9)に含まれる9の数字と、部分画像101−4の切断像105(図9)に含まれる9の数字とを重ならせて、そして、重複部分の一方を除去することにより、図10に示す全体画像109を生成する。
【0092】
このように、全体画像生成部75は、同じ位置を示す目印の像を重ならせて、部分画像101のそれぞれをつなげて全体画像109を生成する。
【0093】
そして、全体画像生成部75は、内壁45aを規定する範囲を示す線111を、全体画像109に合成する。回転軸方向D1の内壁45aの範囲は、位置表示部材61により特定できる。回転軸方向D1と直交する方向D2の内壁45aの範囲は、ロータ21aの回転範囲0°〜240°と対応するので、回転軸方向D1と直交する方向D2の内壁45aの範囲は、位置表示部材61を基準とした、ロータ21aの回転範囲0°〜240°により特定できる。
【0094】
全体画像生成部75は、図10に示す全体画像109を表示部77に表示させる。符号113は、内壁45aの傷や剥がれ等を示している。
【0095】
本実施形態の主な効果を説明する。図3を参照して、本実施形態に係る混練室内壁検査装置1は、ロータ21aに撮影装置3を固定し、ロータ21aが回転した状態で、撮影装置3に混練室19aの内壁45aを撮影させて、混練室19aの内壁45aの画像を得ている。内壁45aとロータ21aとの距離は、比較的短いので、ロータ21aの一つの箇所に固定された撮影装置3によっては、内壁45aのうち撮影装置3が撮影できた領域の画像である部分画像101を得られるだけであり、内壁全体の画像である全体画像109を得ることができない。
【0096】
そこで、本実施形態に係る混練室内壁検査装置1では、図4に示すように、撮影装置3がロータ21aに固定される位置を、ロータ21aの回転軸方向D1の座標を異ならせて、それぞれ得られた部分画像101をつなげて、図10に示す全体画像109を生成している。全体画像109を見ることにより、混練室19aの内壁全体を点検することができる。従って、本実施形態に係る混練室内壁検査装置1によれば、目視や手作業によることなく、混練室19aの内壁全体を点検することができる。
【0097】
撮影装置3は、ロータ21aに取り外し可能にされており、内壁45aの検査時に、ロータ21aに取り付けられる。
【0098】
内壁45aの全体の立体画像を表示する場合、内壁45aの全ての領域について見やすく表示できない。本実施形態に係る混練室内壁検査装置1によれば、図10に示すように、全体画像109として、内壁45aが展開された状態の画像(平面画像)を表示する。このため、内壁45aの全ての領域について見やすく表示できる。
【0099】
図4を参照して、ロータ21aの胴体部41aには、ロータ21aの回転軸方向D1に捩れた形状を有する翼部43aが形成されているので、胴体部41aの表面には、複雑な形状の傾斜面49が生じている。ロータ21aの設計データから目的の撮影条件(撮影装置3の光軸の向き、撮影装置3と内壁45aとの距離等)を満たすように、撮影装置3のベース51(図3)を製作する。しかし、ロータ21aの製作時の誤差及びロータ21aの摩耗等が原因となるロータ21aの実形状とロータ21aの設計形状との差異、及び/又は、撮影装置3が取り付けられる胴体部41aの実際の位置と想定の位置との差異によって、上記撮影条件を満たすことができない。
【0100】
そこで、画像補正する必要があるが、内壁45aの表面には、画像補正をする際に、目印となる表示や部材がない。本実施形態に係る混練室内壁検査装置1では、図8図10に示すように、位置表示部材61の像を切断した切断像105や位置表示部材61に含まれる目印の像(目盛りの間隔107)を用いて、部分画像101のそれぞれについて、切断像105の長手方向が回転軸方向D1と一致し、かつ、目印の像の大きさが予め定められた値となるようにしている。そして、回転軸方向D1の位置及び回転軸方向と直交する方向D2の位置を、部分画像101のそれぞれについて、上記目印の像を基にして補正して全体画像109を生成する。
【0101】
図3及び図4を参照して、本実施形態に係る混練室内壁検査装置1では、混練物排出口33を画定する辺部のうち、回転軸方向D1に沿った辺部に、位置表示部材61が取り外し可能に取り付けられている。このため、内壁45aに位置表示部材61を取り付ける場合に比べて、位置表示部材61を容易に取り付けることができる。
【0102】
本実施形態の変形例を説明する。変形例では、光切断線を用いて、図3に示す内壁45aの凹凸を検査する機能をさらに備える。図11は、本実施形態の変形例に係る混練室内壁検査装置2の構成を示すブロック図である。混練室内壁検査装置2において、図6に示す混練室内壁検査装置1の構成要素と同じ構成要素については、同一符号を付している。混練室内壁検査装置2について、混練室内壁検査装置1との相違を中心に説明する。
【0103】
撮影装置3のそれぞれが、光源55に加えて光源59を備える。
【0104】
光源55(第1の光源の一例)は、混練室内壁検査装置1の光源55と同じ機能を有し、カメラ53による内壁45aの撮影時に内壁45aを照明する。これに対して、光源59(第2の光源の一例)は、スリット光(言い換えれば、シート光)を出射する。
【0105】
操作部79を操作することにより、第1の撮影モードと第2の撮影モードとを選択できる。第1の撮影モードとは、光源55を点灯させて内壁45aを照明した状態でカメラ53に内壁45aを撮影させるモードである。このモードにより、本実施形態に係る混練室内壁検査装置1で説明したように、図10に示す全体画像109を生成し、表示部77に表示させることができる。
【0106】
第2の撮影モードとは、光源59からスリット光を出射させて、スリット光が内壁45aで反射した光である光切断線をカメラ53に撮影させるモードである。撮影制御部71は、光切断線の画像を表示部77に表示させる。
【0107】
撮影制御部71は、操作部79が操作されて、第1の撮影モードを選択する操作がされた場合、第1の撮影モードを実行し、第2の撮影モードを選択する操作がされた場合、第2の撮影モードを実行する。
【0108】
変形例によれば、第1の撮影モードを実行することにより、図10に示す内壁45aの全体画像109を得ることができ、第2の撮影モードを実行することにより、内壁45aの凹凸を測定することができる。
【符号の説明】
【0109】
1,2 混練室内壁検査装置
3(3−1〜3−4) 撮影装置
19a 混練室
21a ロータ
33 混練物排出口
41a 胴体部
43a 翼部
49 傾斜面
55 光源(第1の光源の一例)
59 光源(第2の光源の一例)
61 位置表示部材
63 目盛り(目印の一例)
65 数字(目印の一例)
77 表示部(出力部の一例)
101(101−1〜101−4) 部分画像
103(103−1〜103−5) 単位画像
105 切断像
107 目盛りの間隔(位置表示部材61の目印(目盛り63)の像の大きさの一例)
109 全体画像
D1 ロータの回転軸方向
D2 回転軸方向と直交する方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11