(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明に係る建設機械の信号処理装置および過負荷防止装置の一実施の形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る過負荷防止装置を搭載した建設機械の一例であるタワークレーン(以下、クレーン100と記す)の外観を示す側面図である。以下では、
図1の作業姿勢を基準にして上下前後方向を定義する。クレーン100は、図示するように、ほぼ水平の地面に接地した状態で作業が行われる。
【0010】
クレーン100は、走行体101と、旋回輪を介して走行体101上に旋回可能に設けられた旋回体104と、基端部が旋回体104に回動可能に軸支されたタワーブーム(以下、単にタワー103と記す。)と、タワー103の先端部に回動可能に軸支されたジブブーム(以下、単にジブ108と記す。)とを有する。旋回体104の前部には運転室107が設けられ、旋回体104の後部にはカウンタウエイト109が取り付けられている。
【0011】
旋回体104にはフック巻き上げ用のウインチドラムであるフック巻上ドラム105と、タワー起伏用のウインチドラムであるタワー起伏ドラム106と、ジブ起伏用のウインチドラムであるジブ起伏ドラム102とが搭載されている。
【0012】
フック巻上ドラム105には巻上ロープ151が巻回され、巻上ロープ151はタワー103の頂部およびジブ108の先端部を経由してフック110に接続されている。フック巻上ドラム105が駆動すると、巻上ロープ151が巻き取られ、または繰り出されることによって、フック110が昇降する。フック110には、図示しない吊り荷が吊り下げられる。
【0013】
タワー103の先端には第1ペンダントロープ161の一端が接続され、第1ペンダントロープ161の他端はブライドル装置162に接続されている。タワー起伏ロープ163はAフレーム164の頂部を経由してブライドル装置162とハンガ165との間に複数回掛け回されてタワー起伏ドラム106に巻回されている。タワー起伏ドラム106を駆動すると、タワー起伏ロープ163が巻き取られ、または繰り出されることによって、ハンガ165とブライドル装置162との間隔が変化し、タワー103が起伏する。
【0014】
タワー103の先端部には、スイングレバー140が回動可能に軸支されている。スイングレバー140は、一対の支柱と、一対の支柱同士を連結する連結部材によって三角形状を呈している。スイングレバー140の一つの頂角部は、第2ペンダントロープ141によってジブ108の先端部と連結されている。スイングレバー140の他の頂角部は、第3ペンダントロープ142、ブライドル装置144を介してジブ起伏ロープ143に連結されている。ジブ起伏ロープ143はブライドル装置144とガイドローラ145との間に複数回掛け回されてジブ起伏ドラム102に巻回されている。ジブ起伏ドラム102を駆動すると、ジブ起伏ロープ143が巻き取られ、または繰り出されることによって、スイングレバー140が前後方向に回動されることにより、ジブ108が起伏する。
【0015】
タワー103には、タワー103の起伏角度を検出するタワー角度センサ131が取り付けられている。ジブ108には、ジブ108の起伏角度を検出するジブ角度センサ181が取り付けられている。タワー角度センサ131は、たとえば、水平面に対する角度である対地角をタワー103の起伏角度(以下、タワー角度θtと記す)として検出する。ジブ角度センサ181は、たとえば、水平面に対する角度である対地角をジブ108の起伏角度(以下、ジブ角度θjと記す)として検出する。
【0016】
第3ペンダントロープ142のスイングレバー140近傍には、フック110に吊り下げられた吊り荷(不図示)の実荷重に関連した物理量として、第3ペンダントロープ142の張力を検出する荷重センサ171が設けられている。
【0017】
旋回体104には、クレーン100の各部を制御するための制御装置12が搭載されている。制御装置12は、各種の演算を行うCPUや記憶装置であるメモリ、その他周辺機器等を有する。
図2は、クレーン100に搭載される制御装置12を示すブロック図である。制御装置12は、過負荷防止装置としてのモーメントリミッタ120を機能的に備えている。
【0018】
記憶装置には、
図3に示すように、作業半径rと定格総荷重Waとの関係である定格荷重曲線のデータテーブルが複数記憶されている。定格総荷重Waは、タワー角度θtと、ジブ角度θjとで決定される作業半径rに対応して記憶されている。定格総荷重Waとは、その作業半径rにおける吊り上げ可能な荷重の限界値であり、クレーン100の転倒や構成部材の破損を防止するために設定される。各データテーブルは、タワー103の長さおよびジブ108の長さに応じて設けられており、オペレータによって操作される選択スイッチ(不図示)からの信号に応じて、選択されたタワー103の長さおよびジブ108の長さに対応するデータテーブルが読み出される。
【0019】
図2に示すように、モーメントリミッタ120には、タワー角度センサ131、ジブ角度センサ181、および、荷重センサ171が接続されている。モーメントリミッタ120はウインチ制御部121を有し、ウインチ制御部121は、タワー角度センサ131で検出したタワー角度θt、および、ジブ角度センサ181で検出したジブ角度θjに基づいて作業半径rを演算し、荷重センサ171で検出したロープ張力に基づいて吊り荷の実荷重(以下、実吊荷重Wと記す)を演算する。ウインチ制御部121は、演算された実吊荷重Wが演算された作業半径rにおける定格総荷重Waより小さいか否かを判定する。ウインチ制御部121は、実吊荷重Wが定格総荷重Wa以上である場合、停止装置191に停止信号を出力し、停止装置191によってタワー起伏ドラム106およびジブ起伏ドラム102に連結された油圧モータ(不図示)の駆動を停止させる。
【0020】
たとえば、クレーン作業において、ジブ108の倒伏動作中にウインチ制御部121から停止装置191に停止信号が出力されると、ジブ起伏ドラム102に連結された油圧モータ(不図示)の駆動が停止され、ジブ108の倒伏動作が自動的に停止する。
【0021】
ところで、タワークレーンやラッフィングクレーンなどでは、ジブ角度センサ181とモーメントリミッタ120との距離や、荷重センサ171とモーメントリミッタ120との距離が、それぞれたとえば30〜80m程度になる。作業時には各センサ181,171が高所に配置され、電波塔や電線からの電波の影響などにより、各センサ181,171のセンサグランドにノイズが重畳し、検出信号がノイズの影響を受けてしまうことがあった。
【0022】
たとえば、
図4(a)に示すように、センサグランドの電位Vgに周期的に振動するノイズ(以下、振動ノイズと記す)が重畳すると、
図4(b)に示すように、センサグランドの電位Vgを基準電位として出力される検出信号に振動ノイズの影響が表れ、振動ノイズの周期に合わせて、検出信号の電位Vdが振動する。
また、たとえば、
図4(c)に示すように、センサグランドの電位Vgに所定量だけ電位をドリフトするノイズ(以下、ドリフトノイズと記す)が重畳すると、
図4(d)に示すように、検出信号にドリフトノイズの影響が表れ、ドリフトノイズの分だけ加算された検出信号の電位Vdが出力される。なお、振動ノイズとドリフトノイズの両者がセンサグランドの電位Vgに重畳して検出信号の電位Vdに影響を及ぼすこともある。
【0023】
本実施の形態では、検出信号の電位Vdからセンサグランドの電位Vgを差し引いて、振動ノイズやドリフトノイズの影響を低減する。以下、具体的に説明する。なお、タワー角度センサ131、ジブ角度センサ181および荷重センサ171のそれぞれと、モーメントリミッタ120との接続の構成は、いずれも同様であるため、以下、タワー角度センサ131、ジブ角度センサ181および荷重センサ171をセンサSと総称して説明する。
【0024】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係るモーメントリミッタ120の構成を示すブロック図である。モーメントリミッタ120は、上記したウインチ制御部121に加え、AD変換器122と、電源回路124と、減算部123とを有している。ウインチ制御部121および減算部123は、不図示のCPUおよびその周辺回路等で構成されている。
【0025】
電源回路124は、電源ラインPLによってセンサSと接続されている。電源回路124は、バッテリ(不図示)などの電源からの電力を所定の定電圧に変換し、センサSに供給する。AD変換器122はセンサSの出力端子部SOと出力ラインOLによって接続され、センサSの出力端子部SOからのアナログ検出信号は出力ラインOLを介してAD変換器122に入力される。AD変換器122はセンサSのセンサグランドSGと第1グランドラインGL1によって接続され、センサSのセンサグランドSGからのアナロググランド信号は第1グランドラインGL1を介してAD変換器122に入力される。AD変換器122は、センサSの出力端子部SOから入力されるアナログ検出信号をデジタル検出信号に変換し、センサSのセンサグランドSGから入力されるアナロググランド信号をデジタルグランド信号に変換する。AD変換器122は、入力される正負の電位をデジタル信号に変換できる回路構成とされている。
【0026】
センサSのセンサグランドSGは、第2グランドラインGL2によってシャーシグランドGNDに接続され、AD変換器122は、第3グランドラインGL3によってシャーシグランドGNDに接続されている。なお、センサS(たとえば、ジブ角度センサ181)とモーメントリミッタ120との距離が長いため、センサSのセンサグランドSGと、シャーシグランドGNDとを接続する第2グランドラインGL2を構成するケーブルも長くなる。たとえば、第2グランドラインGL2を構成するケーブルは、30〜80m程度となり、数m〜10m程度の第3グランドラインGL3を構成するケーブルに比べて長い。このため、センサグランドSGでの電位Vgは、シャーシグランドGNDの電位(0V)と同電位とならない。つまり、シャーシグランドGNDに接続されるAD変換器122のグランド電位(基準電位)はほぼ0Vとなるのに対し、センサグランドSGでの電位Vgはノイズの影響により変化する(
図4(a),
図4(c)参照)。
【0027】
本実施の形態では、ノイズの影響を受けたセンサグランドSGの電位VgをAD変換器122に入力して、検出信号の補正に用いるようにした。AD変換器122で変換されたデジタルグランド信号の電位Vgおよびデジタル検出信号の電位Vdは、それぞれ減算部123に入力される。減算部123は、デジタル検出信号の電位Vdと、デジタルグランド信号の電位Vgとの差分(Vd−Vg)を演算して、演算結果をセンサSからの検出結果としてウインチ制御部121に出力する。
【0028】
以上説明した第1の実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
デジタル検出信号と、デジタルグランド信号との差分を演算して、演算結果をセンサSからの検出結果として出力するようにしたので、センサグランドSGに重畳したノイズの影響を検出信号から取り除くことができる。これにより、ノイズの影響を低減して、適正な検出結果を得ることができる。その結果、センサSの検出結果を利用する装置、たとえば、タワー角度センサ131、ジブ角度センサ181および荷重センサ171の検出結果を利用するモーメントリミッタ120のウインチ制御部121の動作を精密に行えるようになり、作業範囲の拡大を図ることができる。
【0029】
ところで、ノイズを低減するために、フェライトコアなどのノイズ吸収体により特定の周波数帯のノイズを吸収する技術がある。しかしながら、フェライトコアにより吸収できる周波数帯は、たとえば0.1MHz〜数十MHz以上の高周波数帯である。これに対して、センサグランドSGに重畳する振動ノイズの周波数帯は、たとえば0.1Hz〜数kHz程度の低周波数帯であり、フェライトコアによるノイズの低減が難しい。また、フェライトコアのようなノイズ吸収体は、特定の周波数帯のノイズを吸収するものであるため、周囲の環境が変化し、センサグランドSGに重畳する振動ノイズの周波数帯がノイズ吸収体で吸収できる周波数帯から外れてしまうおそれがある。これに対して、本実施の形態では、センサグランドSGの電位VgをAD変換器122に入力して、検出信号の補正に用いているため、周囲の環境が変化した場合であっても、ノイズの影響を低減することができる。
【0030】
アイソレーションアンプを用いて、ノイズを低減する技術があるが、たとえばアイソレーションアンプが故障するなどの不具合が発生した場合、モーメントリミッタ120に入力される検出信号が遮断されてしまうという問題がある。さらに、アイソレーションアンプを用いる場合、アイソレーションアンプの経年劣化による検出結果のずれを定期的に調整する必要が生じ、メンテナンスに手間がかかるという問題もある。これに対して、本実施の形態では、アイソレーションアンプを備えずに、従来の構成に対して第1グランドラインGL1を追設した簡素な構成でノイズ対策を実現しているため、定期的な調整が不要であり、アイソレーションアンプの不具合に起因して検出信号が遮断されることもない。
【0031】
−第2の実施の形態−
図6を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、第1の実施の形態との相違点について主に説明する。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るモーメントリミッタ220の構成を示すブロック図である。第2の実施の形態に係るモーメントリミッタ220は、第1の実施の形態に係るモーメントリミッタ120と同様の構成を備え、さらに、グランド信号演算部225と、プルアップ回路PCとを備えている。グランド信号演算部225は、不図示のCPUおよびその周辺回路等で構成されている。
【0032】
プルアップ回路PCは、センサSとAD変換器122との間に設けられ、センサSからAD変換器122に入力されるアナロググランド信号の電位の最小値が正の電位となるようにアナロググランド信号をプルアップする。
【0033】
プルアップ回路PCは、電源ラインPLと第1グランドラインGL1との間に介装された第1抵抗素子226と、第1グランドラインGL1上に設けられた第2抵抗素子227とを備えている。換言すれば、電源ラインPLと第1グランドラインGL1との間に、電源回路124の電位Vpを分圧する第1抵抗素子226および第2抵抗素子227が設けられている。本実施の形態では、第1抵抗素子226の電気抵抗R1と、第2抵抗素子227の電気抵抗R2は、同じ値である(R1=R2)。
【0034】
なお、プルアップ回路PCは、図示するように、モーメントリミッタ220に内蔵させてもよいし、モーメントリミッタ220に外付けで取付けるようにしてもよい。
【0035】
グランド信号演算部225は、AD変換器122で変換されたデジタルグランド信号の電位Vhと、センサSに電力を供給する電源回路124の電位Vpとからプルアップされる前のアナロググランド信号の電位Vgを演算する。
【0036】
プルアップ回路PCでプルアップされてAD変換器122に入力されるアナロググランド信号の電位(以下、プルアップ電位と記す)Vhは、式(1)によって表される。式(1)において、VgはセンサグランドSGの電位、Vpは電源回路124の電位、すなわち電源ラインPLの電位(以下、電源電位と記す)である。
Vh=(Vg+Vp)/2 ・・・(1)
式(1)を変形すると、式(2)のようになる。
Vg=2・Vh−Vp ・・・(2)
【0037】
プルアップ回路PCからAD変換器122に入力されたアナログ信号の電位であるプルアップ電位Vh、および、電源回路124からAD変換器122に入力されたアナログ信号の電位である電源電位Vpは、それぞれAD変換器122でデジタル信号に変換され、グランド信号演算部225に入力される。グランド信号演算部225は、式(2)に基づいて、センサグランドSGの電位Vgを演算して、電位Vgを表すデジタルグランド信号を減算部123に出力する。
【0038】
減算部123には、AD変換器122で変換されたデジタル検出信号の電位Vd、および、グランド信号演算部225で演算されたセンサグランドSGの電位Vgが入力される。減算部123は、デジタル検出信号の電位Vdと、デジタルグランド信号の電位Vgとの差分(Vd−Vg)を演算して、演算結果をセンサSからの検出結果としてウインチ制御部121に出力する。
【0039】
このような第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
AD変換器122に入力されるアナロググランド信号の電位の最小値が正の電位となるようにアナロググランド信号をプルアップし、プルアップ電位Vhと電源電位Vpとからプルアップされる前のアナロググランド信号の電位Vgを演算するようにした。これにより、AD変換器122に正の電位のみをデジタル信号に変換できるAD変換器を採用することができる。正の電位のみをデジタル信号に変換できるAD変換器の構成は、正負の電位をデジタル信号に変換できるAD変換器の構成に比べて簡素であり、コストを抑えることができる。その結果、モーメントリミッタ220のコストの低減を図ることができる。
【0040】
−第3の実施の形態−
図7を参照して本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、第2の実施の形態との相違点について主に説明する。
図7は、本発明の第3の実施の形態に係るモーメントリミッタ320の構成を示すブロック図である。第3の実施の形態に係るモーメントリミッタ320は、第2の実施の形態に係るモーメントリミッタ220と同様の構成を備え、さらに、断線判定部328と、切換部329と、表示部330とを備えている。断線判定部328は、不図示のCPUおよびその周辺回路等で構成されている。
【0041】
断線判定部328には、AD変換器122で変換されたプルアップ電位Vhを表すデジタルグランド信号と、AD変換器122で変換された電源電位Vpを表すデジタル信号とが入力される。
【0042】
プルアップ回路PCとセンサSとの間の第1グランドラインGL1が断線した場合、AD変換器122のプルアップ電位Vhの入力部には電源電位Vpが入力される。プルアップ回路PCとAD変換器122との間の第1グランドラインGL1が断線した場合、プルアップ電位Vhの入力が遮断され、AD変換器122のプルアップ電位Vhの入力部には0Vが入力される。そこで、本実施の形態では、断線判定部328は、入力されたプルアップ電位Vhが電源電位Vpの90%以上のとき(Vh≧0.9×Vp)、あるいは、プルアップ電位Vhが0Vであるとき(Vh=0)には第1グランドラインGL1は断線していると判定する。断線判定部328は、それ以外の電位が入力されているとき、つまり、入力されるプルアップ電位Vhが電源電位Vpの90%未満であり(Vh<0.9Vp)、かつ、0Vでないとき(Vh≠0)には第1グランドラインGL1は断線していないと判定する。
【0043】
断線判定部328は、第1グランドラインGL1が断線していないと判定されている場合にはオフ信号を切換部329に出力し、第1グランドラインGL1が断線していると判定されている場合にはオン信号を切換部329に出力する。
【0044】
切換部329は、減算部123から出力された検出結果、および、AD変換器122から出力されたデジタル検出信号の電位Vdのいずれか一方をウインチ制御部121に出力する。断線判定部328からオフ信号が切換部329に入力されている場合、減算部123からの検出結果が切換部329を介してウインチ制御部121に入力される。断線判定部328からオン信号が切換部329に入力されている場合、AD変換器122から出力されたデジタル検出信号の電位Vdが切換部329を介してウインチ制御部121に入力される。つまり、断線が検出されていない場合には、グランド信号演算部225および減算部123で補正された検出信号がウインチ制御部121に入力され、断線が検出されている場合には、AD変換器122から出力された検出信号、すなわち補正されていない検出信号がウインチ制御部121に入力される。
【0045】
断線判定部328は、第1グランドラインGL1が断線していると判定されている場合には表示制御信号を表示部330に出力する。表示部330は、断線判定部328からの表示制御信号が入力されると、表示画面に断線が検出されたことを表す警告画像を表示する。
【0046】
このような第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
断線検出を行わない場合、第1グランドラインGL1が断線すると、グランド信号演算部225で演算される電位に大きな誤差が生じ、モーメントリミッタの動作が不安定になるおそれがある。これに対して、本実施の形態では、第1グランドラインGL1の断線を検出し、第1グランドラインGL1の断線が検出された場合に、AD変換器122で変換されたデジタル検出信号の電位Vdを、センサSからの検出結果として出力するようにした。このため、第1グランドラインGL1が断線した場合に、モーメントリミッタの動作が不安定になることを防止できる。なお、第1グランドラインGL1が断線した場合に、表示部330の表示画面に警告画像が表示されるため、オペレータへの注意喚起を行うことができる。
【0047】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(1)上述した実施の形態では、吊り荷の荷重を検出するための荷重センサ171、タワー103の起伏角度を検出するタワー角度センサ131、および、ジブ108の起伏角度を検出するジブ角度センサ181のそれぞれから出力される検出信号の全てを補正する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。補正の対象となるセンサは、荷重センサ171、タワー角度センサ131、および、ジブ角度センサ181のうちの少なくともいずれかであればよい。
【0048】
(2)第2および第3の実施の形態では、第1抵抗素子226の電気抵抗R1と、第2抵抗素子227の電気抵抗R2とを同じ値としたが、本発明はこれに限定されない。第1抵抗素子226の電気抵抗R1と、第2抵抗素子227の電気抵抗R2とを異なる値としてもよい。
【0049】
(3)上述した実施の形態では、タワークレーンを例に説明したが、本発明はこれに限定されない。ラッフィングクレーンやトラッククレーン、固定式クレーンなどのクレーンや、油圧ショベルなど他の建設機械に本発明を適用することができる。
【0050】
(4)上述した実施の形態では、過負荷防止装置に適用される信号処理装置について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、クレーン100の姿勢を判定する姿勢判定装置や、作業状態を判定する作業状態判定装置に、検出信号を補正する処理を行う信号処理装置を適用してもよい。
【0051】
(5)センサの種類は上述したものに限定されない。
【0052】
(6)上述した実施の形態では、第1グランドラインGL1をセンサグランドSGに接続した例について説明したが本発明はこれに限定されない。第1グランドラインGL1を介して、センサグランドSGに重畳したノイズを検出できればよく、たとえば、第1グランドラインGL1をセンサグランドSGに接続することに代えて、第2グランドラインGL2におけるセンサSの近傍に第1グランドラインGL1を接続してもよい。
【0053】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。