【実施例】
【0013】
図1は本発明の光干渉計の較正方法を用いた干渉計の一実施例に用いる波長掃引光源(光源)の説明図である。
その
図1において、1は半導体光増幅器(SOA)、2は光アイソレータ、3は掃引用変調部(EOM)、4はサーキュレータ、5は分散補償器である。
【0014】
その掃引用変調部3には、DC電圧がDC回路3Aから印加されると共に、発振器(RF SG)3Bからの発振信号RFがアンプリファイア(Amp)3Cを介して入力されている。その発振器3Bには周波数ジェネレータ(FG)3Dから周期的に所定の掃引周波数で変化するのこぎり状の電圧Vが印加されている。
発振信号RFは、その電圧Vにより変調される。その掃引用変調部3には、電圧Vにより変調された変調信号MOが入力される。掃引用変調部3は変調信号MOにより駆動され、変調信号MOの周波数変化に伴い、波長掃引光源の光の波長を掃引して後述するスペクトル干渉信号を発生させる電圧制御部として機能する。
【0015】
すなわち、その少なくとも周波数ジェネレータ3Dは、波長掃引光源に印加する電圧を一周期内で時間に対して変化させることにより波長掃引光源の光の波長を掃引して後述するスペクトル干渉信号を発生させる電圧制御部として機能する。
その半導体光増幅器1と光アイソレータ2と掃引用変調部3とサーキュレータ4と、分散補償器5とはリング共振器6を構成している。
【0016】
半導体光増幅器1は導波路構造体1aを有する。その導波路構造体1aの一端面は入射端面1bとされ、その導波路構造体1aの他端面は射出端面1cとされている。
【0017】
その導波路構造体1aに注入電流Iが注入されて、導波路構造体1aにキャリアが生成される。その導波路構造体1aの入射端面1bに入射する光パルスの誘導放出現象により、そのキャリアが消費される。その結果、レーザ光Pのパルスが増幅され、そのレーザ光Pのパルスが射出端面1cから射出される。
【0018】
その射出端面1cから射出されたレーザ光Pのパルスは、光を一方向にのみ通過させ、戻り光を遮断する光学素子としての光アイソレータ2を経由して掃引用変調部3に導かれる。
【0019】
掃引用変調部3には電気光学変調器(EOM)が用いられている。サーキュレータ4には、ここでは、3ポートを有するものが用いられている。このサーキュレータ4の第1ポート4aには掃引用変調部3から出力されるレーザ光Pのパルスをサーキュレータ4に導光する射出用導光ファイバ7が接続されている。
【0020】
そのサーキュレータ4の第2ポート4bには、分散補償器5が接続されている。この分散補償器5には、
図2に概念的に示すリニアチャープファイバーブラッググレーティング(LCFBG)が用いられている。
【0021】
このリニアチャープファイバブラッググレーティングは、パルス中の低周波成分と高周波成分の反射位置がリニアに異なるようにグレーティングの周期が変化しているファイバーブラッググレーティングであり、ファイバ内に回折格子を形成することによって構成されている。
【0022】
このリニアチャープファイバーグレーティングは、その向きによって正常分散、異常分散の両特性を有し、リニアチャープファイバーブラッググレーティングのサーキュレータ4の第2ポート4bの接続の仕方によって正常分散領域での使用と、異常分散領域での使用とが可能である。なお、その
図1において、5dは入射側端面、5eは透過側端面を示す。
【0023】
なお、正常分散領域での使用とは、長波長のパルス成分が先に反射されかつ短波長の成分が後から反射される使用であり、異常分散領域での使用とは短波長のパルス成分画先に反射されかつ長波長のパルス成分が後から反射される使用をいう。この実施例では、いずれの使用でも構わない。
【0024】
サーキュレータ4の第3ポート4cは、リニアチャープファイバーブラッググレーティングにより反射されたレーザ光のパルスを半導体光増幅器1に帰還する帰還用導光ファイバ8に接続されている。
【0025】
そのリニアチャープファイバーブラッググレーティングの透過側端面5eから出力されたレーザ光Pのパルスは、光アイソレータ9を介して光干渉断層撮影装置の干渉光学系(干渉計)10に導かれる。
【0026】
この波長掃引光源によれば、電圧Vを一周期内で変化させることにより強度変調周波数を変化させ、レーザ光Pの発振波長を変化させることができる。
【0027】
干渉光学系には、公知のものを用いることができる。この干渉光学系10は、例えば、
図3に示すように光路分割部としてのカップラ10aにより、レーザ光Pのパルスを参照光P1の光路と計測光P2の光路とに光路分割する。
【0028】
その参照光P1は、サーキュレータ10bを経由して、コリメータレンズ10cに導かれ、平行光束として参照光路に配置の固定参照ミラー10dに導かれ、固定参照ミラー10dにより反射されて再びコリメータレンズ10cに戻る。
【0029】
その計測光P2は、サーキュレータ10b’を経由してコリメータレンズ10c’に導かれて平行光束とされた後、計測光路に配置の計測対象11に導かれる。
ここでは、計測対象11として便宜的に全反射ミラーを設置したものとして説明するが、眼底等の生体組織でも良い。
【0030】
その計測光P2は、その計測対象11により反射されて再びコリメータレンズ10c’に戻る。
参照光P1はコリメータレンズ10cにより集光され、サーキュレータ10bを経由して光路合成部としてのカップラ10a’に導かれ、計測光P2はコリメータレンズ10b’を経由してカップラ10a’に導かれる。
その参照光P1と計測光P2との光の干渉により後述するスペクトル干渉信号(干渉信号)が生成される。
【0031】
計測対象11を基準位置0(例えば、固定参照ミラー10dとの光路差1mm)において、波長掃引光源の電圧Vを一周期内で時間的に変化させて、スペクトル干渉信号S(t)を等時間間隔でサンプリングすると、
図4に示すスペクトル干渉信号S(t)が得られる。このスペクトル干渉信号S(t)は処理部12に入力される。
【0032】
この処理部12は、フーリエ変換処理部12a、ヒルベルト変換処理部12b、逆フーリエ変換処理部12c、アンラッピング処理部12d、置換処理部12e、断層画像構築部(断層画像取得部)12fを備えている
【0033】
フーリエ変換処理部12aには公知のものを用いることができる。フーリエ変換処理部12aは、スペクトル干渉信号S(t)に
図4に示す第1の窓関数W(t)を掛けることにより、点像分布関数(分布関数)PSF(ω)を求める処理を行う。なお、ω=2πfであるので、周波数fにより点像分布関数を求めると、点像分布関数PSF(f)は、
PSF(f)=C∫S(t)W(t)exp(i2πft)dt
の式によって求められる。ただし、Cは係数である。
また、窓関数W(t)は、なめらかな点像分布関数PSF(f)を求めるために用いられる。
【0034】
周波数fと光路差cΔtと深さzとの間には、以下に説明する関係式がある。なお、cは光速度、Δtは固定参照ミラー10dから戻って来る光と計測対象11から戻って来る光との時間的ずれである。
【0035】
図5に示すように、一周期Tの掃引時間をtとする。固定参照ミラー10dから参照光P1が戻って来るのに要する時間と、計測対象11から計測光P2が戻って来るのに要する時間とには、光路差に対応して遅延時間Δtが発生する。このため、参照光の周波数f
Lに対して計測光の周波数はf
L+Δfだけ変化する。ここで、Δfは干渉スペクトル信号S(t)のビート周波数である。
【0036】
ビート周波数Δfは点像分布関数PSF(f)の変数fに対応しており、f=ΔF・Δt/Tの関係式がある。ここで、ΔFは掃引周波数幅である。
この式の両辺の項に、光速度cを掛けると、
cf=cΔF・Δt/T
従って、cf・T/ΔF=cΔt
【0037】
深さzは、光路差cΔt/2であるので、掃引周波数幅ΔF、変数fを求めることにより、深さzを求めることができる。
そのスペクトル干渉信号S(t)をフーリエ変換処理部12aにおいてそのままフーリエ変換して点像分布関数PSF(f)を求めると、
図6に符号I
0で示す波形が得られる。
【0038】
計測対象11を
図3に示すように、基準位置0から光軸方向(深さ方向Z)に移動させると、その計測対象11と固定参照ミラー10dとの光路差cΔtが大きくなるに伴って、
図6に示すように、求められた点像分布関数PSF(f)の波形I
0、I
1、I
2、…、I
mが歪む。
【0039】
そこで、この実施例では、まず、波長掃引光源に印加する電圧Vを一周期T内で時間に対して変化させることにより波長掃引光源の光の波長を掃引してスペクトル干渉信号S(t)を発生させる第1ステップを実行した後、フーリエ変換処理部12aにおいて、スペクトル干渉信号S(t)を時間軸上で等時間間隔にサンプリングしてフーリエ変換することにより点像分布関数PSF(f)を演算により求める第2ステップを実行する。
【0040】
ついで、ヒルベルト変換処理部12bにおいて、この点像分布関数PSF(f)から
図7に示す第2の窓関数R(f)を決め、この窓関数R(f)と点像分布関数PSF(f)との積を逆フーリエ変換処理部12cにおいて、逆フーリエ変換することにより、ヒルベルト変換を行い波長掃引光源の光の周波数情報を含む解析信号S
H(t)(SH(t))を得る第3ステップを実行する。
なお、ヒルベルト変換処理では、負の部分を0として、正の部分を2倍に置換する処理を行うが、更に、複素解析信号S
H(t)のノイズ低減のため点像分布関数PSF(f)のピーク周辺のみを計算に用いるように窓関数R(f)で制限している。
【0041】
複素解析信号S
Hは、窓関数R(f)とPSF(f)とを用いて以下の関係式により求められる。
S
H(t)=C∫PSF(f)R(f)exp(i2πft)df
【0042】
ついで、この複素解析信号S
Hの位相情報に基づき、この位相情報をアンラッピング処理部12dにおいて公知のアンラッピング処理することにより一周期T内での時間に対する光の周波数の変化を等時間間隔で求める第4ステップを実行する。
【0043】
これにより、
図8に示すように、時間tに対する光の周波数fの周波数曲線Q1=t(f)が求められる。
その
図8では、時間tを横軸にとり、縦軸を光の周波数fの変化として示しており、便宜上、周波数fの変化に対する時間tの変化を三次の多項式で表している。
t(f)=a
0+a
1f+a
2f
2+a
3f
3
この
図8に示す時間軸に対する光の周波数曲線Q1は、予め定めた
図9に示す電圧Vを一周期T内の時間で変化する掃引周波数曲線Q2を変化させたときに得られる曲線である。
便宜上、この電圧V(f)は掃引周波数fの関数として三次の多項式で表している。
V(f)=C
0+C
1f+C
2f
2+C
3f
3
なお、符号a、Cは係数を意味する。
【0044】
ついで、置換処理部12eにおいて、曲線Q1と曲線Q2とから
図10に示す等時間間隔でサンプリングされた一周期T内での光の周波数fの変化と等時間間隔でサンプリングされた一周期T内での電圧Vの変化との対応関係を有する曲線Q3を求める第5ステップを実行した後、一周期T内で光の周波数fの変化を等間隔に細分したときの対応電圧CVに変換する第6ステップを実行する。
【0045】
ついで、第1ステップにおいて与えた波長掃引光源に印加する電圧Vを第6ステップにより求めた対応電圧CVに置換する第7ステップを処理部12は実行して、これにより制御電圧Vのキャリブレーションを行う。そして、再度、この対応電圧CVにより波長掃引光源を掃引してスペクトル干渉信号S(t)を取得する。
【0046】
このようにして取得されたスペクトル干渉信号S(t)をフーリエ変換して点像分布関数PSF(f)をフーリエ変換処理部2aにより求めると、
図11に示すように、深さzに対応する波形I
0、I
1、…、I
mの歪みが改善された点像分布関数PSF(f)が得られる。
【0047】
図12は、横軸を深さzに対応させて、その
図8に示す点像分布関数PSF(f)の振幅強度Iを正規化して重ね合わせたグラフであり、ピーク部分の強度の重なり具合が改善されていることが一目で理解できる。
【0048】
なお、特開2010−3246号公報に開示のリサンプリング技術をこの実施例に係る技術と併用すれば、
図13に示すように、更に深さzに対する波形の歪みがより一層改善された点像分布関数PSF(f)を得ることができる。
【0049】
断層画像構築部12fによりこの波形歪が改善された点像分布関数PSF(f)を解析処理して断層画像(図示を略す)を構築すると、分解能が高い高品質の断層画像を得ることができる。