特許第6180969号(P6180969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180969
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】複合材軽量継手
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/00 20060101AFI20170807BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20170807BHJP
   B32B 3/02 20060101ALI20170807BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   F16B5/00 F
   B32B5/28
   B32B3/02
   F16B5/02 U
   F16B5/02 H
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-46127(P2014-46127)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2014-211231(P2014-211231A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-79902(P2013-79902)
(32)【優先日】2013年4月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000238234
【氏名又は名称】シキボウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】開米 俊
(72)【発明者】
【氏名】石橋 正康
(72)【発明者】
【氏名】広川 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】田那村 武司
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−075374(JP,A)
【文献】 特開2012−61672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00
B32B 3/02
B32B 5/28
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の強化繊維層を積層した積層体にマトリクスを含浸・硬化させた複合材からなり、前記強化繊維層の厚さ方向に貫通する貫通穴を有する複合材軽量継手であって、
前記複数の強化繊維層のうちの少なくとも一つの強化繊維層が、多数の強化繊維を帯状に引き揃えてなり、前記貫通穴の周囲に沿ったラウンド部を有する強化繊維束を備え、前記強化繊維束のラウンド部に撚りをかけた複合材軽量継手。
【請求項2】
前記ラウンド部の周方向両端において、内周側の強化繊維と外周側の強化繊維とを入れ替えた請求項1に記載の複合材軽量継手。
【請求項3】
前記強化繊維束が直線部をさらに有し、前記直線部にも撚りをかけた請求項1又は2に記載の複合材軽量継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の強化繊維層を積層した積層体にマトリクスを含浸・硬化させた複合材で形成された複合材軽量継手に関する。
【背景技術】
【0002】
継手は、複数の部材を連結するために用いられるものであり、例えば航空機、自動車等の輸送機器や、建物、橋梁等の建築物など、様々な箇所に使用される。例えば図6に示すように、部材Aと部材Bとを継手100を用いて連結する場合、継手100の両端に設けられた一対の貫通穴101及び部材A,Bの貫通穴にそれぞれボルト110を挿通し、このボルト110の先端にナット111をネジ固定する。この継手100に対し、引張方向の応力が加わると(図6(b)の矢印参照)、ボルト110を介して、継手100の長手方向両端102(貫通穴101よりも引張方向外側の領域。図6(b)に散点で示す。)に大きな応力が加わる。このため、継手100の貫通穴101の周囲、特に長手方向両端102の強度を高めることが重要となる。
【0003】
ところで、継手の一種として、所定方向に引き揃えた強化繊維(以下、単に「繊維」とも言う。)からなる複数の強化繊維層を積層し、この積層体に樹脂等のマトリクスを含浸・硬化させてなる複合材で形成された複合材軽量継手が知られている。複合材軽量継手は、単位重量当たりの強度(比強度)が高いため、軽量化が要求される航空機等の輸送機器用(特に、高速で移動あるいは回転するもの)の継手に特に適している。
【0004】
複合材軽量継手は、例えば図7に示すように、繊維配向方向の異なる強化繊維層103a〜103dを積層して形成される。このような強化繊維層103a〜103dを積層した積層体にマトリクスを含浸固化させて複合材を形成した後、この複合材にドリル等で穴開け加工を施すことにより、貫通穴101を形成することができる。しかし、この場合、穴開け加工により全ての強化繊維層103a〜103dの強化繊維が切断されるため、継手100の貫通穴101の周囲の強度、特に長手方向両端102の引張強度が低下してしまう。具体的に、上記のような継手に引張方向の応力が加わった場合、引張方向に繊維を配向させた強化繊維層103b(図7(b)参照)がこの応力を伝達すべきであるが、繊維が貫通穴101で分断されているため、この強化繊維層103bだけでは応力を伝達することができない。従って、他の強化繊維層と協働して応力を伝達せざるを得ず、引張応力により強化繊維層同士が剥離して継手の強度が低下する恐れがある。
【0005】
例えば特許文献1には、貫通穴の周囲に沿って繊維を円弧状に配した継手が示されている。この円弧状に湾曲した繊維は、貫通穴の形成により切断されない。そして、この円弧状に湾曲した繊維を有する強化繊維層単独で、他の強化繊維層と協働することなく、継手に加わる引張応力を伝達することができるため、引張応力による強化繊維層同士の剥離が防止される。以上より、継手の強度、特に貫通穴の周囲の強度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−81225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1のように、貫通穴の周囲に沿って強化繊維を円弧状に配した複合材軽量継手は、必要とされる性能が得られず、現在のところ実用化には至っていない。その原因は、以下のようなことにあると考えられる。
【0008】
強化繊維層を形成する場合には、通常、多数の強化繊維(フィラメント)を帯状に引き揃えた強化繊維束(トウ)が用いられる。図8は、帯状の強化繊維束201を貫通穴210の周囲に沿って配した強化繊維層200を示す。この場合、各強化繊維束201のうち、貫通穴210の周囲に沿って円弧状に湾曲したラウンド部201aでは、繊維束201の内周と外周とで周方向長さが異なる。すなわち、図9に示すように、各強化繊維束201のラウンド部201aの内周長L1に対する外周長L2の比(L2/L1)が大きくなり、特に、貫通穴210の径が小さくなるとこの比L2/L1が大きくなる。このため、内周側の強化繊維201bが波打って繊維層の積層方向(図9の紙面直交方向)に浮き上がってしまう。このように波打った強化繊維は継手の強度にほとんど寄与しないため、継手の強度低下を招く。
【0009】
また、上記のような強化繊維層を含む積層体に樹脂等のマトリクスを含浸させると、内周側の強化繊維201bが波打って浮き上がった部分に樹脂202(散点で示す)が入り込んで硬化する。樹脂等のマトリクスは強化繊維と比べてはるかに強度が低いため、複合材の内部において、ほぼ樹脂のみで形成された部分(樹脂リッチ部)が多く形成されると、継手の強度が低下してしまう。特に、図9に示すように、貫通穴210に樹脂202が多く露出していると、貫通穴210に挿通されたピン(ボルト等、図示省略)が樹脂202と直接接触するため、ピンから受ける負荷によって樹脂202が破壊されやすい。このように、樹脂リッチ部が破壊されると、ピンと貫通穴210との軸心位置がずれて、継手の強度が低下してしまう。
【0010】
また、上記のような内周側の強化繊維201bの波打ち具合は製品ごとに異なるため、波打った強化繊維201bの引張強度や、強化繊維201bが波打った部分に入り込む樹脂部202の量は製品ごとにばらつく。このため、継手の強度は製品ごとに大きくばらつくことになる。
【0011】
以上のように、継手の強度の低下やばらつきが生じると、強化繊維の使用量を増やして強度を確保する必要があるため、コスト高を招く上、軽量化を達成することができない。
【0012】
例えば、各強化繊維束の幅を小さくすれば、ラウンド部における内周長と外周長との差が小さくなり、内周の繊維の波打ちを抑えることができる。しかし、各繊維束の幅を小さくすると、各繊維束を構成する繊維本数が減じられるため、繊維の総数を確保するために繊維束の数を増やす必要が生じ、繊維束を供給する工数が増えて生産性が低下する。
【0013】
本発明が解決すべき課題は、生産性を低下させることなく、複合材軽量継手の強度の低下やばらつきを抑え、低コスト化及び軽量化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するためになされた本発明に係る複合材軽量継手は、複数の強化繊維層を積層した積層体にマトリクスを含浸・硬化させた複合材からなり、前記強化繊維層の厚さ方向に貫通する貫通穴を有する複合材軽量継手であって、前記複数の強化繊維層のうちの少なくとも一つの強化繊維層が、多数の強化繊維を帯状に引き揃えてなり、前記貫通穴の周囲に沿ったラウンド部を有する強化繊維束を備え、前記強化繊維束のラウンド部に撚りをかけたものである。
【0015】
このように、貫通穴の周囲に沿って配される強化繊維束のラウンド部に撚りをかけることにより、ラウンド部の内周側の繊維と外周側の繊維とが入れ替わるため、ラウンド部の繊維を平行に引き揃えた場合と比べて、ラウンド部の内外周長差に起因した繊維長の差を小さくことができる。これにより、ラウンド部の内周側の繊維が波打って浮き上がる事態が抑えられ、貫通穴の周囲(特に、貫通孔よりも引張方向外側の領域)における継手の強度が向上する。また、内周側の繊維の波打ちによる浮き上がりが抑えられることで、浮き上がった部分に入り込むマトリクスが低減されるため、複合材中におけるマトリクスリッチ部、特に、継手の貫通孔の周囲におけるマトリクスリッチ部の形成を抑え、マトリクスの破壊に伴う継手の固定精度の低下を防止できる。さらに、繊維の波打ちを抑えることで、製品ごとの繊維の状態を安定させることができるため、製品ごとの強度のばらつきを抑えることができる。
【0016】
上記のラウンド部を有する強化繊維束が、さらに直線部を有する場合、ラウンド部のみに撚りをかけることは難しい。そこで、強化繊維束全体に撚りをかけることで、すなわち、ラウンド部だけでなく直線部にも撚りをかけることで、継手の製造を容易化できる。このように強化繊維束に撚りをかけると、図5に示すように、強化繊維束に引張応力が加わる方向Pに対して、繊維の配向方向Qが傾斜するため、継手の引張強度が低下する。このため、従来、強化繊維束に撚りをかけることはタブー視されていた。しかし、ラウンド部を有する強化繊維束については、強化繊維束に撚りをかけることによる強度の低下よりも、ラウンド部に撚りをかけて内周側の繊維の波打ちを抑えることによる強度の向上やばらつき抑制の効果が大きいため、継手全体の強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係る複合材軽量継手によれば、ラウンド部の内周における強化繊維の波打ちが抑えられるため、これに起因した継手強度の低下やばらつきが抑えられ、強化繊維の使用量を低減して低コスト化及び軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る複合材軽量継手の(a)平面図及び(b)断面図である。
図2】(a)〜(e)は、上記複合材軽量継手を構成する各強化繊維層の平面図である。
図3図2(a)に示す強化繊維層の拡大平面図である。
図4図3の貫通穴周辺の拡大平面図である。
図5】強化繊維束に撚りをかけた状態を示す平面図である。
図6】従来の継手の(a)断面図及び(b)平面図である。
図7】(a)〜(d)は、従来の複合材軽量継手を構成する各強化繊維層の平面図である。
図8】ラウンド部を有する強化繊維束を含む強化繊維層の平面図である。
図9図8の貫通穴周辺の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
本実施形態に係る複合材軽量継手1(以下、単に継手1とも言う)は、図1に示すように、ピン(例えばボルト)を挿通するための円筒面状の貫通穴2を有する。継手1は、強化繊維を引き揃えてなる複数の強化繊維層3と、複数の強化繊維層3を積層した積層体に含浸・硬化されたマトリクス(図示省略)とからなる。強化繊維としては、例えば炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維等が使用される。マトリクスとしては、例えば樹脂(有機物)や無機物等が使用される。
【0021】
強化繊維層3は、多数の繊維を帯状に引き揃えてなる複数の強化繊維束を、一枚のシート状に並べて形成される。継手1は、繊維の配向方向の異なる複数種の強化繊維層3を有し、隣り合う強化繊維層3の繊維配向方向は交差している。本実施形態では、継手1に引張荷重が加わる方向(図2の左右方向)を0°方向とし、貫通穴2の周囲に沿った方向をラウンド方向としたとき、0°方向及びラウンド方向に繊維を配向させた強化繊維層3a(図2(a)参照)、45°方向に繊維を配向させた強化繊維層3b(図2(b)参照)、0°方向に繊維を配向させた強化繊維層3c(図2(c)参照)、135°方向に繊維を配向させた強化繊維層3d(図2(d)参照)、90°方向に繊維を配向させた強化繊維層3e(図2(e)参照)の順に積層される。
【0022】
各強化繊維層3のうち、図2(a)に示す0°方向+ラウンド方向に繊維を配向させた強化繊維層3aは、図3に拡大して示すように、貫通穴2の周囲に沿って配されたラウンド部4a及び直線部4bを有する強化繊維束4と、直線部のみからなる強化繊維束5とを備える。強化繊維束4のうち、少なくともラウンド部4aには撚りがかかっている。図示例では、帯状の強化繊維束4がラウンド部4aにおいて約180°捩られており、平面視で最も細くなる部分(幅狭部6と言う)がラウンド部4aの範囲内(図示例ではラウンド部4aの中央部付近)に配されている。
【0023】
このように、強化繊維束4のラウンド部4aに撚りをかけることで、ラウンド部4aの内周の繊維と外周の繊維とが入れ替わる。具体的には、図4に示すように、各強化繊維束4のラウンド部4aの周方向一方の端部C(図4の左側端部)において外周側に配された強化繊維4a1は、ラウンド部4aの周方向他方側の端部D(図4の右側端部)において内周側に配される。一方、各強化繊維束4のラウンド部4aの周方向一方側の端部Cにおいて内周側に配された強化繊維4a2(太線で示す)は、ラウンド部4aの周方向他方側の端部Dにおいて外周側に配される。このように、強化繊維束4のラウンド部4aの幅方向中央より内周側の繊維と外周側の繊維とが入れ替わることで、両強化繊維4a1,4a2の繊維長差が小さくなる。特に、ラウンド部4aの周方向両端において、強化繊維束4の幅方向中央より内周側の繊維と外周側の繊維とが入れ替わることで、両強化繊維4a1,4a2の繊維長差がほぼ相殺される。
【0024】
これにより、ラウンド部4aを構成する全ての繊維の繊維長がおおよそ等しくなり、内周側の繊維の波打ちが抑えられる。従って、内周側の繊維が継手1全体の強度に有効に寄与することができるため、継手1の強度が向上する。また、繊維の波打ちが抑えられることで、繊維が波打って浮き上がった部分に入り込むマトリクスが抑えられるため、複合材の内部におけるマトリクスリッチ部の形成が抑えられ、継手1の強度がさらに向上する。特に、図4に示すように、貫通穴2に面する部分、すなわち貫通穴2に挿入されるピンと直接接触する部分におけるマトリクスリッチ部の形成が抑えられるため、マトリクスの破壊による継手の強度低下を防止できる。さらに、ラウンド部4aの内周側の繊維の波打ちを抑えることで、製品ごとの繊維の状態を安定させることができ、製品ごとの強度のばらつきが抑えられる。
【0025】
また、ラウンド部4aの内周の繊維の波打ちは、継手1の貫通穴2の半径rが小さいほど、また、強化繊維束4の幅wが大きいほど生じやすい。従って、貫通穴2の半径rに対する強化繊維束4の幅wの比(w/r)が大きいほど、上記のようにラウンド部4aに撚りをかけることが有効となる。具体的には、例えばw/rが0.1以上、特に0.3以上の場合、ラウンド部に撚りをかけることが極めて有効となる。例えば、強化繊維束の幅wを3〜5mm程度であり、貫通穴2の半径rが30mm以下、特に20mm以下、さらには10mm以下である場合に、ラウンド部に撚りをかけることが特に有効となる。
【0026】
ラウンド部4aに撚りをかけるためには、例えば、強化繊維束4に予め所定ピッチで撚りをかけておき、この強化繊維束4を貫通穴2の周囲に沿って配すればよい。このとき、強化繊維束4の撚りのピッチ(すなわち幅狭部6のピッチ)を、ラウンド部4aの周長Lと等しくしておけば、ラウンド部4aに一つの幅狭部6を配することができる。
【0027】
このように、強化繊維束4に所定ピッチで撚りをかけると、ラウンド部4aだけでなく、直線部4bにも撚りが生じる。この場合、図5に示すように、強化繊維束4に引張荷重が加わる方向P(0°方向)に対して各繊維の配向方向Qが傾斜するため、継手1の引張強度が低下する。しかし、強化繊維束4に撚りをかけることによる強度の低下よりも、ラウンド部4aに撚りをかけて内周側の繊維の波打ちを抑えることによる強度の向上やばらつき抑制の効果が大きいため、継手1全体の強度を高めることができる。
【0028】
ラウンド部4aに撚りをかける方法は上記に限られない。例えば、強化繊維束4を貫通穴2の周囲に沿って配しながら捩ることにより、ラウンド部4aに撚りをかけてもよい。
【0029】
上記の複合材軽量継手1は、例えば、図6に示すような別個に形成された複数の部材A,Bを接続する継手100として使用できる。このとき、図示のように、ピン(ボルト110)の外周面のうち、少なくとも貫通穴101と半径方向で対向する領域は、貫通穴101との接触面積を大きくするために円筒面とすることが好ましい。この他、図示は省略するが、上記の複合材軽量継手1を、一方の部材Aに一体に設け、他方の部材Bとピンを介して接続する継手として使用することもできる。また、貫通穴2に挿入されるピンは、継手1と他部材とを固定するもの(固定継手)であってもよいし、継手1と他部材とのピンを中心とした相対回転を許容するもの(回転継手)であってもよい。
【0030】
上記の実施形態では、強化繊維束4のラウンド部4aを一回(180°)捩った場合を示したが、これに限らず、ラウンド部4aにおいて強化繊維束4aに撚りがかかってさえいれば、繊維長の差を小さくする効果を得ることができる。例えば、強化繊維束4のラウンド部4aを複数回(180°より大きく)捩ることにより、ラウンド部4aを構成する各強化繊維の長さの差を縮小するようにしてもよい。
【0031】
以上のような複合材軽量継手1は、航空機や自動車等の輸送機器や、建物や橋梁等の建築物などに使用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 複合材軽量継手
2 貫通穴
3(3a〜3e) 強化繊維層
4 強化繊維束
4a ラウンド部
4a1,4a2強化繊維
4b 直線部
5 強化繊維束
6 幅狭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9