特許第6180987号(P6180987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

<>
  • 特許6180987-重荷重用空気入りラジアルタイヤ 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180987
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りラジアルタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 3/06 20060101AFI20170807BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   B60C3/06
   B60C13/00 H
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-83875(P2014-83875)
(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公開番号】特開2015-202819(P2015-202819A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2016年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】千代田 明
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−193520(JP,A)
【文献】 特開2011−110998(JP,A)
【文献】 特開2013−112131(JP,A)
【文献】 特開2010−274740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 3/00−3/08,13/00−13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコアが埋設された一対のビード部と、
前記ビード部のタイヤ半径方向外側に夫々連なるサイド部と、
各々の前記サイド部のタイヤ半径方向外側端部同士をタイヤ幅方向に連結するトレッド部と、
前記ビード部間を跨り、前記ビードコア間に位置するカーカス本体部と、該ビードコアのタイヤ幅方向の内側から外側へ折り返された折返し部とを有するカーカスプライと、
を備え、
正規リムに組み付け正規内圧を充填した無負荷状態における前記カーカス本体部のタイヤ幅方向の最外側をD点とすると、前記D点を通る前記サイド部のタイヤ幅方向の厚さは、タイヤ装着外側がタイヤ装着内側の1.2倍〜3.0倍である、重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
前記D点をタイヤ幅方向外側に延長したタイヤ外面の位置をA点とすると、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面からタイヤ装着外側の前記A点までの距離である外側サイド幅は、タイヤ赤道面からタイヤ装着内側の前記A点までの距離である内側サイド幅の1.05倍〜1.15倍である、請求項1に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】
正規リムに組み付け正規内圧を充填した無負荷状態において、タイヤ最大幅位置が、前記D点よりもタイヤ半径方向外側に位置している、請求項1または請求項2に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項4】
タイヤ幅方向断面において、タイヤ最大幅位置をB点とし、前記トレッド部のトレッドセンターをC点とすると、
前記C点を基準とした前記B点までのタイヤ半径方向の距離h1は、タイヤ断面高さSHに対して0.20SH〜0.40SHである請求項3に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項5】
タイヤ幅方向断面において、前記トレッド部のトレッド端をT点とすると、
前記B点を通るタイヤ半径方向の線分に対する前記B点と前記T点との間のタイヤ外面の鋭角側の角度αは、0<α≦30°である、請求項4に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項6】
前記A点のタイヤ装着外側をA1点、タイヤ装着内側をA2点とし、前記B点のタイヤ装着外側をB1点、タイヤ装着内側をB2点とすると、
タイヤ幅方向断面において、前記A1点を通るタイヤ半径方向の線分に対する前記B1点と前記A1点の間のタイヤ外面の鋭角側の角度β1は、0<β1≦30°であり、
タイヤ幅方向断面において、前記A2点を通るタイヤ半径方向の線分に対する前記B2点と前記A2点の間のタイヤ外面の鋭角側の角度β2は、0≦β2≦30°であり、
β1>β2である、請求項4または請求項5に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、石等の突起物による耐サイドカット性の低下のおそれを取り除くため、カーカスラインの変更をせずにタイヤ最大幅を増やし、かつその最大幅位置をサイド部のデコレーションラインからバットレス部に移設したものが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記した従来例では、踏面方向からサイド部に受ける深い垂直方向カットの低減を目的に、荷重時のサイド形状の路面に対する垂直化を狙ったものであり、その低減効果は確認できている。
【0004】
しかしながら、地下鉱山用車両LHD、地下鉱山用HAULAGE、及び重荷重用ローダー車両等においては、積込み時に過荷重となることが多い。過荷重により撓み量が大きくなることで、カーカスプライの折返し端の近傍(カーカス本体部の最大幅部分)がタイヤ幅方向外側にせり出し、最大幅となってしまうこともある。この領域に受けた傷は、浅いものであっても荷重入力が繰り返されることにより進展し、タイヤ内面へ貫通する可能性があるため更なる対策が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−111003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたものであり、重荷重用空気入りラジアルタイヤにおける耐サイドカット性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る重荷重用空気入りラジアルタイヤは、ビードコアが埋設された一対のビード部と、前記ビード部のタイヤ半径方向外側に夫々連なるサイド部と、各々の前記サイド部のタイヤ半径方向外側端部同士をタイヤ幅方向に連結するトレッド部と、前記ビード部間を跨り、前記ビードコア間に位置するカーカス本体部と、該ビードコアのタイヤ幅方向の内側から外側へ折り返された折返し部とを有するカーカスプライと、を備え、正規リムに組み付け正規内圧を充填した無負荷状態における前記カーカス本体部のタイヤ幅方向の最外側をD点とすると、前記D点を通る前記サイド部のタイヤ幅方向の厚さは、タイヤ装着外側がタイヤ装着内側の1.2倍〜3.0倍である。
【0008】
タイヤサイド部の厚みを厚くすることで耐サイドカット性を高めることができるが、単に厚くするだけでは、タイヤ質量、材料費が高くなり、更に、タイヤ幅が広くなるため狭い坑道を走行する際に坑道内壁へ接触して受傷する可能性が高くなる。一方、タイヤサイド部の受傷は、タイヤ装着外側が圧倒的に多いことが経験から明らかになった。
【0009】
そこで、請求項1に係る重荷重用空気入りラジアルタイヤでは、カーカス本体部のタイヤ幅方向の最外側のD点に対応するサイド部において、タイヤ装着外側の厚みをタイヤ装着内側の厚みの1.2倍〜3.0倍としている。一般的に、D点は、荷重入力の際にタイヤ幅方向の外側へ大きく撓む部分であるが、タイヤ装着外側の厚みをタイヤ装着内側の厚みよりも厚くすることにより、タイヤ装着外側においてタイヤ変形時の歪を内側よりも抑制することができる。これにより、効率的に重荷重用空気入りラジアルタイヤの耐サイドカット性を高めることができる。
【0010】
なお、タイヤ装着外側の厚みがタイヤ装着内側の厚みの1.2倍未満では、荷重入力の際のタイヤのたわみにより、受傷の進展の抑制効果が小さくなる。また、タイヤ装着外側の厚みがタイヤ装着内側の厚みの3.0倍を超えると、タイヤ装着内側のたわみ量が大きくなりすぎて、トレッド部が傾き、走行安定性を確保しにくくなる。
【0011】
請求項2に係る重荷重用空気入りラジアルタイヤは、前記D点をタイヤ幅方向外側に延長したタイヤ外面の位置をA点とすると、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面からタイヤ装着外側の前記A点までの距離である外側サイド幅は、タイヤ赤道面からタイヤ装着内側の前記A点までの距離である内側サイド幅の1.05倍〜1.15倍である。
【0012】
サイド部のタイヤ赤道面からの幅について、タイヤ装着外側(外側サイド幅)とタイヤ装着内側(内側サイド幅)の差が大きいと、走行安定性が低下する。そこで、外側サイド幅は内側サイド幅の1.05倍〜1.15倍であることが好ましい。
【0013】
請求項3に係る重荷重用空気入りラジアルタイヤは、正規リムに組み付け正規内圧を充填した無負荷状態において、タイヤ最大幅位置が、前記D点よりもタイヤ半径方向外側に位置している。
【0014】
請求項3に係る重荷重用空気入りラジアルタイヤでは、タイヤ最大幅位置が、カーカス本体部のD点よりタイヤ半径方向外側の所謂バットレス部に位置している。一般にバットレス部では、ゴムゲージが厚いため、タイヤ変形時の表面歪が小さい。路面の障害物に接触し易いタイヤ最大幅位置をバットレス部に配置することにより、サイドカットの進展を抑制することができる。
【0015】
請求項4に係る重荷重用空気入りラジアルタイヤは、タイヤ幅方向断面において、タイヤ最大幅位置をB点とし、前記トレッド部のトレッドセンターをC点とすると、前記C点を基準とした前記B点までのタイヤ半径方向の距離h1は、タイヤ断面高さSHに対して0.20SH〜0.40SHである。
【0016】
距離h1が0.20SH未満では、タイヤの所謂バットレス部(D点よりもタイヤ半径方向外側)におけるゴム量が多くなり発熱量が増加することになる。一方で、0.40SHを超えると、所望の耐サイドカット性が得られない。
【0017】
請求項5に係る重荷重用空気入りラジアルタイヤは、タイヤ幅方向断面において、前記トレッド部のトレッド端をT点とすると、タイヤ幅方向断面において、前記B点を通るタイヤ半径方向の線分に対する前記B点と前記T点との間のタイヤ外面の鋭角側の角度αは、0<α≦30°である。
【0018】
角度αが30°以上では、耐サイドカット性を向上できないおそれがあるため、上記の範囲内に設定することが好ましい。
【0019】
請求項6に係る重荷重用空気入りラジアルタイヤは、前記A点のタイヤ装着外側をA1点、タイヤ装着内側をA2点とし、前記B点のタイヤ装着外側をB1点、タイヤ装着内側をB2点とすると、タイヤ幅方向断面において、前記A1点を通るタイヤ半径方向の線分に対する前記B1点と前記A1点の間のタイヤ外面の鋭角側の角度β1は、0<β1≦30°であり、タイヤ幅方向断面において、前記A2点を通るタイヤ半径方向の線分に対する前記B2点と前記A2点の間のタイヤ外面の鋭角側の角度β2は、0≦β2≦30°であり、β1>β2である。
【0020】
角度β1、β2が30°を超えると、バットレス部のゴム量が増加することで、その領域の発熱量が増加するおそれがあるため、上記の範囲内に設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤによれば、重荷重用空気入りラジアルタイヤにおける耐サイドカット性を高めることができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る重荷重用空気入りラジアルタイヤを示し、タイヤ軸に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。図1に示すように、本実施形態に係る重荷重用空気入りラジアルタイヤ10は、一対のビード部12と、サイド部14と、トレッド部16と、カーカスプライ18と、を有している。図中において、タイヤ幅方向を矢印Wで示し、タイヤ半径方向を矢印Rで示している。タイヤ幅方向とは、タイヤ軸方向と平行でかつ該タイヤ軸方向を含む方向である。
【0024】
また、図中における矢印INは、タイヤを車両に装着した時の内側、(以下「タイヤ装着内側」という)を示し、矢印OUTは、タイヤ装着時の外側(以下「タイヤ装着外側」という)を示す。本実施形態に係る重荷重用空気入りラジアルタイヤ10は、車両への装着に時におけるタイヤの内側と外側が指定されている。また、一点鎖線CLは、タイヤ赤道面を示す。
【0025】
一対のビード部12は、リム(図示せず)に嵌め込まれる部位である。このビード部12には、ビードコア24が夫々埋設されている。
【0026】
カーカスプライ18は、ビード部12間を跨り、ビードコア24間に位置するカーカス本体部18Aと、該ビードコア24のタイヤ幅方向の内側から外側へ折り返された折返し部18Bとを有している。カーカスプライ18のコードには、スチールや有機繊維等が用いられる。正規リムに組み付け正規内圧を充填した無負荷状態におけるカーカス本体部の18Aのタイヤ幅方向の最外側位置をD点(タイヤ装着外側をD1点、タイヤ装着内側をD2点)とする。D点は、タイヤへ荷重が負荷された時に、最もタイヤ幅方向外側へ変形する部分となる。カーカスプライ18のクラウン域の外周側には、複数のベルト層21が配置されている。
【0027】
サイド部14は、ビード部12のタイヤ半径方向外側に夫々連なり、正規リムに組み付け正規内圧を充填した無負荷状態において、タイヤ最大幅位置B点、(タイヤ装着外側をB1点、タイヤ装着内側をB2点とする)が、カーカス本体部18Aの最大幅位置D点よりタイヤ半径方向外側に位置している。即ち、タイヤ最大幅位置B点は、カーカス本体部18Aの最大幅位置D点よりタイヤ半径方向外側の所謂バットレス部38に位置している。
【0028】
ここで、D1点及びD2点に対応するタイヤ幅方向のサイド部14位置をサイドライン部14Aとする。また、タイヤ装着外側のサイドライン部14Aの外面をA1点とし、内面をI1点とする。また、タイヤ装着内側のサイドライン部14Aの外面をA2とし、内面をI2点とする。サイドライン部14Aにおいて、タイヤ装着外側の厚みAW1(A1−I1間の距離)は、タイヤ装着内側の厚みAW2(A2−I2間の距離)の1.2倍〜3.0倍の範囲内に設定される。
【0029】
なお、サイドライン部14Aにおいて、カーカス本体部18Aよりもタイヤ幅方向内側の厚みは、タイヤ装着外側の厚みDW1(D1−I1間の距離)が、タイヤ装着内側の厚みDW2(D2−I2間の距離)の1.2倍〜4.0倍の範囲内に設定されることが好ましい。
【0030】
タイヤ幅方向断面において、ビード部12のリムベースラインBLを基準としたリム離反点Fのタイヤ半径方向高さh2は、タイヤ断面高さSHに対して0.20SH〜0.40SHの範囲内に設定される。
【0031】
タイヤ幅方向断面において、ビード部12のリムベースラインBLを基準としたA1点A2点のタイヤ半径方向高さh3は、タイヤ断面高さSHに対して0.40SH〜0.45SHの範囲内に設定される。
【0032】
また、タイヤ幅方向における、タイヤ赤道面CLからサイドライン部14Aのタイヤ装着外側外面A1点までの距離(外側サイド幅SW1)は、タイヤ赤道面CLからサイドライン部14Aのタイヤ装着内側外面A2点までの距離(内側サイド幅SW2)の1.05倍〜1.15倍の範囲内に設定される。
【0033】
タイヤ装着外側のサイド部14の外面には、段部15が形成されている。段部15は、タイヤ半径方向外側のタイヤ幅が広くなるように設けられた段差であり、カーカス本体部18Aの最大幅位置D1点よりもタイヤ半径方向内側に位置している。タイヤ幅方向における段部15のタイヤ半径方向外側端部G点の位置は、タイヤ赤道面CLを基準として、外側サイド幅SW1×(0.9〜1.0)の範囲内にある。またタイヤ半径方向におけるG点の位置は、リムベースラインBLを基準として、h2×(0.9〜1.0)の範囲内にある。サイド部14は、タイヤ幅方向外側に凸に湾曲している。
【0034】
トレッド部16は、各々のサイド部14のタイヤ半径方向外側端部同士をタイヤ幅方向に連結する部位である。タイヤ幅方向断面において、トレッド部16のトレッドセンターをC点とすると、C点を基準としたB点までのタイヤ半径方向の距離h1は、例えば、タイヤ断面高さSHに対して0.20SH〜0.40SHの範囲内に設定されることが好ましい。距離h1が0.20SH未満では、耐サイドカット性は向上するが、バットレス部38のゴム量が過多となることでゴム体積が増加して発熱量が増加することになる。一方で、0.40SHを超えると、所望の耐サイドカット性が得られないため、上記の範囲内とすることが好ましい。
【0035】
トレッド部16の端部をトレッド端T点(タイヤ装着外側をT1点、タイヤ装着内側をT2点)とすると、タイヤ幅方向断面において、タイヤ半径方向の線分に対するB1点とT1点との間のタイヤ外面38B1の鋭角側の角度α1は、例えば、0<α1≦30°の範囲内に設定されることが好ましい。タイヤ幅方向断面において、タイヤ半径方向の線分に対するB2点とT2点との間のタイヤ外面38B2の鋭角側の角度α2は、例えば、0<α2≦30°の範囲内に設定されることが好ましい。角度α1、α2が30°を超えると、カット受傷頻度やカット深さが増大し、耐サイドカット性を向上できないおそれがある。この角度α1、α2は対地角度であり、できるだけ小さいことが望ましい。
【0036】
タイヤ幅方向断面において、A1点を通るタイヤ半径方向の線分に対するB1点とA1点の間のタイヤ外面の鋭角側の角度β1は、例えば、0<β1≦30°の範囲内に設定されることが好ましい。また、タイヤ幅方向断面において、A2点を通るタイヤ半径方向の線分に対するB2点とA2点の間のタイヤ外面の鋭角側の角度β2は、例えば、0<β2≦30°の範囲内に設定されることが好ましい。角度β1、β2が30°を超えると、バットレス部38のゴム量が増加することで、その領域の発熱量が増加するおそれがある。なお、重荷重用空気入りラジアルタイヤ10に対し、正規荷重(規格上の最大荷重)が作用した際に、路面と、B点とA点(A1点、A2点)の間のタイヤ外面とのなす角度が90°以上となることが望ましい。また重荷重用空気入りラジアルタイヤ10に対し、正規荷重の例えば120〜130%の過荷重が作用した際にも、A点付近が最大幅とならないように、路面と、B点とA点の間のタイヤ外面とのなす角度が90°以上となることが望ましい。
【0037】
本実施形態において、「正規リム」とは、例えばJATMAが発行する2014年版のYEAR BOOKに定められた適用サイズにおける標準リムを指し、「正規内圧」とは、同様に、JATMAが発行する2014年版のYEAR BOOKに定められた適用サイズ・プライレーティングにおける最大荷重に対する空気圧を指す。
【0038】
「接地端」とは、重荷重用空気入りラジアルタイヤ10を正規リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧を充填し、最大負荷能力を負荷したときの接地領域におけるタイヤ幅方向最外側の端部である。
【0039】
「トレッド幅」とは、JATMA YEAR BOOKに定められた「トレッド幅」のことである。
【0040】
使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は、各々の規格に従う。
【0041】
図1の二点鎖線は、従来タイヤ(特許文献1)の形状を示している。従来タイヤと比較すると、本実施形態では、タイヤ装着外側のサイド部14において、タイヤ幅方向の外側及び内側のゴムボリュームが増加している(斜線部分が増加した部分)。また、タイヤ装着内側のサイド部14において、タイヤ幅方向の外側及び内側のゴムボリュームが減少している(斜線部分が減少した部分)。
【0042】
(作用)
【0043】
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。本実施形態に係る重荷重用空気入りラジアルタイヤ10は、サイドライン部14Aにおいて、タイヤ装着外側の厚みをタイヤ装着内側の厚みの1.2倍〜3.0倍としている。このように、サイドライン部14Aのタイヤ装着外側の厚みをタイヤ装着内側の厚みよりも厚くすることにより、荷重入力によるタイヤ装着外側の当該部分の歪みを抑制することができる。したがって、受傷の多いタイヤ装着外側において受傷の進展を抑制することができ、耐サイドカット性を高めることができる。
【0044】
また、タイヤ内側の厚みは、タイヤ装着外側よりも薄くなっているので、不要なゴムボリュームの増加を伴うことなく、効率的に耐サイドカット性を高めることができる。
【0045】
また、本実施形態では、外側サイド幅SW1は、内側サイド幅SW2の1.05倍〜1.15倍に設定されているので、サイド部のタイヤ赤道面からの幅の差が、タイヤ装着外側とタイヤ装着内側とで大きくなり過ぎず、走行安定性を維持することができる。
【0046】
また、本実施形態では、路面の障害物に接触し易いタイヤ最大幅位置(B点)が、カーカス本体部のD点よりタイヤ半径方向外側のバットレス部38に位置しているので、サイドカットの進展を効果的に抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、トレッド部16のトレッドセンター(C点)からタイヤ最大幅位置(B点)までのタイヤ半径方向の距離h1を適切に設定しているので、タイヤの耐サイドカット性と発熱量の抑制とを両立させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、角度α1、α2を適切に設定しているので、タイヤ最大幅位置(B点)よりビード部12側に対するサイドカットを受け難くなる。このため、タイヤの耐サイドカット性を向上させることができる。
【0049】
更に、本実施形態では、B点(B1点、B2点)とA点(A1点、A2点)の間のタイヤ外面の鋭角側の角度β(β1、β2)を適切に設定しているので、バットレス部38のゴム量の増加を抑制して、タイヤの発熱量を抑制することができる。
【実施例】
【0050】
本発明の効果を確認するために、表1に示される仕様の比較例1〜比較例4、実施例1〜3(図1)に示す地下坑内ローダに好適な重荷重用空気入りラジアルタイヤを各20本ずつ用いて、サイドカットによる廃品率について試験を行った。タイヤサイズは、26.5R25である。外側サイド幅SW1と内側サイド幅SW2の関係、サイドライン部14Aにおける、タイヤ装着外側の厚みAW1とタイヤ装着内側の厚みAW2の比、(AW1/AW2)、サイドライン部14Aの内面側における、タイヤ装着外側の厚みDW1とタイヤ装着内側の厚みDW2の比(DW1/DW2)、角度α1、α2、角度β1、β2を、表1に示されるように設定し、各々のサイドカットによる廃品率を求めた。廃品率は指数で示しており、比較例1の指数を100として、指数が低い程サイドカットによる廃品率が低いことを示している。また、各重荷重用空気入りラジアルタイヤについての走行安定性を求めた。走行安定性についても指数で示しており、比較例1の指数を100として、指数が高い程走行安定性が高いことを示している。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示されるように、実施例1〜3の廃品率は比較例1〜3よりも小さく、良好な結果となった。サイドゲージの比AW1/AW2が1.2未満では、比較例3で示されているようにサイドカットは廃品率の低減効果が小さく、サイドゲージの比AW1/AW2が3.0超では、比較例4で示されているように、走行安定性が大幅に低下していることがわかる。実施例1〜3では、走行安定性を比較例対比で維持しながら、廃品率を顕著に低減することができていることがわかる。
【符号の説明】
【0053】
10 重荷重用空気入りラジアルタイヤ
12 ビード部
14 サイド部
14A サイドライン部
16 トレッド部
18 カーカスプライ
18A カーカス本体部
18B 折返し部
B1、B2 タイヤ最大幅位置
CL タイヤ赤道面
D カーカス本体部のタイヤ幅方向の最外側
AW1 タイヤ装着外側の厚み
AW2 タイヤ装着内側の厚み
SW1 外側サイド幅
SW2 内側サイド幅
α1 角度
α2 角度
β1 角度
β2 角度
図1