(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の基礎構造や施工方法は、現場での施工時間の短縮化、作業性を改善するものではあるが、特許文献1の方法では、枠型に組んだH形鋼をコーナに配置した4台のジャッキで持ち上げて高さ出しと水平出しを行わねばならず、また、調整工程の終了後にジャッキをコンクリートで埋設してしまうため、施工費をあまり低減することができない。
【0006】
さらに、特許文献2の方法では、特許文献1と同様にH形鋼の高さ出しと水平出しをジャッキで行うとともにH形鋼に多数の固定ボルト及びアンカーボルトを取り付ける必要があり、施工時間を短縮化することが難しい。また、特許文献3の方法では、特許文献2の場合と同様に固定ボルト及び連結材を取り付ける必要があるほか、捨コンクリートを流し、その上に更にコンクリートを流すという工程が必要になり、施工時間の短縮化は難しい。
【0007】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、基礎工事の品質の安定化、工期短縮化、省力化、作業改善、コストダウン等を図ることが可能な鉄骨土台を備えた建築物の基礎構造及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、鉄筋コンクリートからなる基礎と上部建屋の間に鉄骨土台を介在させることによって形成された鉄骨土台を備えた建築物の基礎構造において、前記鉄骨土台は、所定の断面形状を有する形鋼によって形成された鉄骨ユニットと、レベル調整機構を有し、内部に空間が形成された立ち上がりピースとを備えて構成され、前記鉄骨ユニットは、主として前記鉄筋コンクリートを構成する鉄筋の上部であってベース部分となる前記上部建屋の耐力壁線上に配置し、前記立ち上がりピースは、主として前記上部建屋の構造柱が設けられる位置に配置
され、前記鉄筋コンクリートを形成するために打設されるコンクリートの上面の高さ位置は、前記鉄骨ユニットの下端と同じ高さ位置から前記鉄骨ユニットの高さの略半分が埋設されるような高さ位置までの間で打設されていることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の鉄骨土台を備えた建築物の基礎構造において、前記鉄骨ユニットの所定箇所の上下のフランジの間に配置された補強金物を備え、前記補強金物に、前記鉄骨土台と前記鉄筋コンクリートとを連結固定する基礎用アンカーボルト及び/又は前記鉄骨土台と上部建屋とを連結固定する上部建屋用アンカーボルトをそれぞれ取り付けたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の鉄骨土台を備えた建築物の基礎構造において、前記立ち上がりピース内を貫通するようにして前記鉄筋コンクリートに埋設されたホールダウン金物を備え、上部建屋の構造柱と基礎を形成する前記鉄筋コンクリートとを前記ホールダウン金物を介して緊結したことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項
4に記載の本発明は、請求項1から
3のいずれか1項に記載の建築物の鉄骨土台を備えた基礎構造において、前記鉄骨ユニットは、軽量鉄骨によって形成したことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために請求項
5に記載の本発明は、請求項1から
4のいずれか1項に記載の建築物の鉄骨土台を備えた基礎構造において、前記基礎構造は、前記鉄筋コンクリートを形成するために前記鉄筋を囲繞するようにして配置された型枠を含んで構成されていることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために請求項
6に記載の本発明は、鉄筋コンクリートからなる基礎と上部建屋の間に鉄骨土台を介在させることによって形成された鉄骨土台を備えた建築物の基礎構造の施工方法において、予めユニットとして組み上げられた鉄筋を所定の形状に配置するステップと、レベル調整機構を有し、内部に空間が形成された立ち上がりピースであって、前記鉄骨土台を構成する立ち上がりピースを、主として上部建屋の構造柱が設けられる位置に配置するステップと、所定の断面形状を有する形鋼によって形成された鉄骨ユニットであって、前記鉄骨土台を構成する前記鉄骨ユニットを、主として前記鉄筋コンクリートを構成する鉄筋の上部であってベース部分となる前記上部建屋の耐力壁線上に配置するステップと、互いに隣接する前記鉄骨ユニット同士及び前記鉄骨ユニットと前記立ち上がりピースをそれぞれ連結するステップと、前記鉄筋を囲繞するようにして型枠を配置するステップと、前記型枠内、及び、前記立ち上がりピースの内部空間内にコンクリートを打設して前記型枠を含めた基礎を形成するステップ
であって、前記コンクリートは、前記鉄骨ユニットの下端と同じ高さ位置から前記鉄骨ユニットの高さの略半分が埋設されるような高さ位置までの間で打設するステップとを含み構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る鉄骨土台を備えた建築物の基礎構造及びその施工方法によれば、鉄骨土台を備えたことにより、立ち上がり部の鉄筋組みの手間を大幅に省くことができ、且つ、立ち上がり部にコンクリートを使用しないためコンクリートのひび割れなどの問題を発生させることがないという効果がある。また、立ち上がり部分を形成するために従来のような型枠を使用しないので型枠の持ち込み、持ち帰り、清掃作業が不要となるという効果がある。また、立ち上がり部分の型枠に剥離剤を塗布する必要がないので環境や健康に影響を与えることがないという効果がある。また、立ち上がりピースは工場で事前に加工することができるので現場作業を大幅に軽減できるという効果がある。
【0018】
さらに、本発明に係る鉄骨土台を備えた建築物の基礎構造及びその施工方法によれば、ベース部分の型枠を捨て型枠としたので型枠を外す手間が不要となるという効果がある。また、鉄骨ユニットを軽量鉄骨とした場合には重機の投入が不要となって鉄骨組を人力で行うことができるという効果がある。また、ベース部の鉄筋は予め工場で製造することにより現場での組み付け作業を大幅に短縮化することができるという効果がある。また、専用の治具を用いて位置決め、垂直出し、水平出しを行うことにより基礎工事にかかる時間の短縮化、簡略化、迅速化が可能になるという効果がある。また、鉄骨ユニットの下端面をコンクリートの上面と密接させるか或いは鉄骨ユニットの下端側をコンクリートに埋め込むように施工すれば基礎構造内への雨水等の侵入を阻止する止水効果を高めることができる。
【0019】
このように、本発明に係る鉄骨土台を備えた建築物の基礎構造及びその施工方法によれば、品質の安定化、基礎工事の工期短縮化、省力化、作業改善、コストダウン等を図れるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[鉄骨土台を備えた建築物の基礎構造の構成]
以下、本発明に係る鉄骨土台を備えた建築物の基礎構造及びその施工方法について、好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る鉄骨土台を備えた建築物の基礎構造の好ましい一実施形態を示す斜視図である。図示された鉄骨土台を備えた建築物の基礎構造(以下、単に「基礎構造」という。)1は、概略として、捨てコンクリート2の上に配置された鉄筋3と、この鉄筋3に打設されて鉄筋コンクリートの基礎を構成するコンクリート50と、図示しない上部建屋の間に配置されて基礎構造1を構成する鉄骨土台4を備えている。尚、捨てコンクリート2の下には図示しない割りぐり石が敷設されており、その上面は平面形状となるように施工されている。
【0022】
鉄筋3は、
図2及び
図3に示すように、丸鋼や異形鋼棒を一定間隔に立設させたU字形状のあばら筋30,30と、その各コーナの内側に平行に配設された4本の主筋31a〜31dを備えると共に、両端が鋭角状に折り曲げられて形成されると共にあばら筋30,30の上部に互いに平行となるようにして配置されて上部主筋31c,31d同士を連結するように保持するキャップタイ32とを備えて構成されている。そして、上部主筋31c,31dとあばら筋30,30との交差部は溶接を行うことなく、あばら筋30,30を面外方向に約225°に折り曲げたフックによって固定されている。さらに、主筋31a〜31dの間には図示しない腹筋が配置されており、この腹筋とあばら筋30,30とはスポット溶接によって接合されている。この鉄筋3は、工場などで予めユニットとして組み上げることができ、予め組み付けられたユニット鉄筋を用いることで現場施工の工期の短縮化を図ることが可能となる。
【0023】
ここで、キャップタイ32を主筋31c,31dに取り付けるに際しては専用のキャップタイ取り付け治具110を用いることができる。
図15はキャプタイ取り付け治具を用いたキャップタイの取り付け手順を示す工程図である。初めに、キャップタイ取り付け治具110は、所定の長さを有する取付治具本体111と、長尺の取付治具本体111の先端側に設けられ、一方側の主筋31dに掛止される主筋掛止部113と、主筋掛止部113から主筋31c,31d同士の間にキャップタイ32を取り付けることができる長さの位置を基点として取付治具本体111から略垂直に伸びるあばら筋変形部114であって、一方側の主筋31dに掛止させた主筋掛止部113の掛止部分からあばら筋変形部114の先端までの長さが少なくとも主筋31c,31d同士の間隔よりも長くなるような長さに形成されたあばら筋変形部114とを備え、主筋掛止部113を一方側の主筋31dに掛止させ、他方の主筋31cがあばら筋変形部114の内側に入り込むように位置させ、この状態で主筋掛止部113を基点として取付治具本体111を下方に下げることによってあばら筋変形部114に沿って他方の主筋31cを案内しながらあばら筋30,30を弾性変形させて主筋31c,31d同士の間の距離をキャップタイ32の取り付け長さよりも狭くすることによりキャップタイ32の主筋31c,31d同士の間への取り付けを可能としたものである。
【0024】
上述したキャップタイ取り付け治具110は以下のようにして使用される。まず、作業者は、
図15(a)に示すように、取付治具本体111の先端側を略直角に折り曲げるようにして設けられた主筋掛止部113を一方側の主筋31dに外側から掛止する。そして、あばら筋変形部114を他方の主筋31cがあばら筋変形部114の内側に入り込むように位置させて主筋31cの外側から掛止する。そして、主筋掛止部113を基点として取付治具本体111の手前側を下方へ押し下げると、あばら筋変形部114が主筋31cの表面を摺動しながら移動し、あばら筋30,30を弾性変形させる。そして、取付治具本体111が水平状態になると主筋31cと主筋31dとの間の距離が、
図15(b)に示すように、キャップタイ32を取り付けることができる長さとなる。この状態を保持したまま、
図15(c)に示すように、両側が予め曲げ加工されたキャップタイ32を主筋31c,31dの上から取り付ける。そして、
図15(d)に示すように、キャップタイ32が主筋31c,31dの間に架け渡されたら上述の動作と逆の動作を行って主筋掛止部113を基点としてキャップタイ取り付け治具110の手前側を上方に持ち上げ、主筋31cからあばら筋変形部114を離脱させる。するとあばら筋30,30は元の状態に戻り、主筋31d及び主筋31cの先端側が外側に広がって元の位置に復帰することで
図15(e)に示す状態となり、キャップタイ32の両側が主筋31d,31cに掛着される。このように、専用のキャップタイ取り付け治具110を用いることにより、作業者はキャップタイ32を簡単且つ安全に主筋31c,31dに取り付けることが可能となる。
【0025】
次に、鉄骨土台4は、所定の断面形状を有する形鋼によって形成された鉄骨ユニット40と、レベル調整機構を有し、内部に空間が形成された角筒状の立ち上がりピース41とを備えて構成される。鉄骨ユニット40は、主として鉄筋コンクリートに基礎を構成する鉄筋3の上部であってベース部分となる上部建屋の耐力壁線上に配置される。一方、立ち上がりピース41は、
図7に示すように、長尺の寸切りボルトによって形成されたレベル調整機構を構成する4つのレベル調整ボルト42,42を備えて構成されている。そして、立ち上がりピース41,41は、主として上部建屋の構造柱60が配置される位置に配置される。尚、立ち上がりピース41は必ずしも上部建屋の構造柱60が配置される箇所にのみ配置されるとは限らず、例えば、鉄骨土台4の継ぎ目部分の繋ぎとして配置されることもある。
【0026】
鉄骨ユニット40は、上述したように所定の断面形状に形成された形鋼であるが、本実施形態では、断面形状が略「コ」の字形をした溝形鋼が用いられている。尚、鉄骨ユニット40は、溝形鋼に限らず、H形鋼やI形鋼など適宜の断面形状を有する形鋼を使用することも可能である。また、本実施形態の鉄骨ユニット40は軽量鉄骨によって形成されている。鉄骨ユニット40は軽量鉄骨に特に限定されるものではないが、鉄骨ユニット40を軽量鉄骨で形成した場合には作業者が人力で容易に運搬移動して所定の場所に配置することが可能となり作業が容易になるというメリットがある。尚、鉄骨ユニット40の所定箇所には内部に自由に出入りできるように人が通行できる程度の大きさの開口によって形成された点検口(図示せず)が1つまたは複数設けられている。そして、コンクリート50と鉄骨土台4を構成する鉄骨ユニット40とが直接接触しないようにその間に板状のゴム材などを介在させたり、コンクリート50と接触する部分の鉄骨ユニット40の表面に塗料を塗布すること等により両者が直接接触しないように絶縁することが好ましい。コンクリート50のひび割れ、鉄骨ユニット40の腐食を防止するためである。
【0027】
また、鉄骨ユニット40の上下のフランジ48a,48bの間には、
図13(b)に示すような補強金物70,70が適宜の位置に配置される。補強金物70は、鉄骨ユニット40の上,下のフランジ48a,48bの間に収容可能な高さに形成されて正面が開口したボックス型の部材であり、上面には上部建物用アンカーボルト49aが挿通されるネジ孔72aが設けられ、下面には基礎用アンカーボルト49bが挿通されるネジ孔72bが設けられ、開口面の奥側の側面には補強金物70を鉄骨ユニット40に固定する際のボルト取り付け孔73が設けられている。補強金物70は、鉄骨ユニット40の上,下のフランジ48a,48b間に配置された後、ネジ孔72aには上部建物用アンカーボルト49aが取り付けられ、ネジ孔72bには基礎用アンカーボルト49bが取り付けられる。そして、上側のフランジ48aの上に設置された上部構造土台80を上部建物用アンカーボルト49aによって固定し、基礎用アンカーボルト49bによってコンクリート50に一体的に固定する。この補強金物70,70は、上部建物用アンカーボルト49aと基礎用アンカーボルト49b、及び柱が配置される位置に設けられる。
【0028】
ここで、本実施形態の鉄骨ユニット40は軽量鉄骨によって形成されているので、鉄筋3の上部への配置は人力で行うことができるが、人力で行うことができない場合や位置ズレ防止のために、例えば
図9に示すような鉄骨ユニット支持具100を用いることができる。図示された鉄骨ユニット支持具100は、鉄筋3を跨ぐようにして配置される略門型形状の本体103と、本体103に設けられ、鉄骨ユニット40の上側のフランジ48aを掛止して鉄骨ユニット40を支持する支持部105を備えて構成されている。本体103は、水平部101と、水平部101の両端から吊下された脚部102,102を備えて構成され、脚部102,102には縦に貫通するようにしてボルト104,104が取り付けられており、ボルト104,104を回転させることにより高さ調整を行うことができるようになっている。一方、支持部105は、水平部101に設けられており、例えば「しゃこ万力」を利用することができる。そして、脚部102,102で鉄筋3を跨ぐようにして鉄骨ユニット支持具100を配置し、ボルト104,104のねじ込み具合を調節することによって高さ調整を行い、支持部105によって鉄骨ユニット40のフランジを掛止することにより鉄骨ユニット40を支持する。これにより、鉄骨ユニット40を容易に鉄筋3の所定位置に配置することができる。尚、鉄骨ユニット支持具100は後述するようなレベル調整具としても用いることが可能である。
【0029】
ところで、鉄筋3の上部に配設された鉄骨ユニット40は、隣接する立ち上がりピース41に対して接合金物47,47によって連結し、他の鉄骨ユニット40に対しては図示しないボルト等の連結具で互いに連結するために鉄骨ユニット40の高さ位置や水平位置を所定の位置に位置合わせを行う必要がある。そのため、鉄筋3の上部に配設された鉄骨ユニット40を一時的に支持しつつレベルを調整するためのレベル調整具が用いられる。レベル調整具5として、
図2(a)に示すものは、金属製の平板を側面視略台形状に形成したものであり、頂面部5aと、頂面部5aから左右に拡開するようにして形成された傾斜部5b,5bと、傾斜部5b,5bの下端側に設けられて鉄筋3上に載置される裾部5c,5cが形成された本体5Aを備えると共に、さらに、左右の傾斜部5b,5bを貫通するようにして配置された間隔調整ボルト5Bと、間隔調整ボルト5Bの両側に取り付けられたナット6a,6bを備えて構成されている。また、一方側の裾部5bの先端にはキャップタイ32に係止される係止部5dが設けられている。そして、ナット6a,6bを緩締することにより傾斜部5b,5bを弾性変形させて裾部5c、5cの距離L(
図2参照)を接近・離反させることにより頂面部5aの高さ位置を変化させる。これにより、頂面部5aに配置された鉄骨ユニット40の高さ位置を適宜に調整することが可能となる。尚、鉄骨ユニット40の隣接する鉄骨ユニット40や立ち上がりピース41への固定が終了した際にはレベル調整具5は取り外される。
【0030】
一方、レベル調整具5の他の実施形態として、
図2(b)に示すものは、
図2(a)に示すものと略同様に、金属製の平板を側面視略台形状に形成したものであり、頂面部5aと、頂面部5aから左右に拡開するようにして形成された傾斜部5b,5bと、傾斜部5b、5bの下端側に設けられて鉄筋上に載置される裾部5c、5cが形成された本体5Aを備えると共に、頂部5aを貫通するようにして取り付けられ、頭部に鉄骨ユニット40を支持する支持部を備えた高さ調整用ボルト7a,7bを備えて構成されている。また、一方側の裾部5bの先端にはキャップタイ32に係止される係止部5dが設けられている。そして、高さ調整用ボルト7a,7bを回転させることによって鉄骨ユニット40の高さ位置を適宜に調整することが可能となる。
【0031】
さらに、
図2(a)(b)に示したレベル調整具5に代えて、
図4(a),(b)に示すようなレベル調整具8を用いることもできる。
図4(a)はレベル調整具の他の構成の正面図、(b)はその側面図である。図示されたレベル調整具8は、隣接する2つのキャップタイ32,32の上に設置される基台部81と、基台部81にねじ止めされた昇降部82とを備えて構成されている。基台部81は、長方形の金属板等を用いて形成され、水平移動を抑えるため、少なくとも一端側がキャップタイ32に係止可能に曲げ加工されている。
【0032】
昇降部82は、基台部81に対して直角にねじ込まれるボルト83と、ボルト83を固定するナット84と、ボルト83の上端に形成された軸部85と、この軸部85に回転可能に外嵌され、L字形状の開口86が形成されると共に頂面に支持板87が設けられた回転体88と、開口86から挿通されて軸部85を貫通するボルト89と、ボルト89の両端に取り付けられて回転体88を軸部85に固定する一対のナット90,90とを備えて構成されている。
【0033】
このレベル調整具8は、基台部81に対するボルト83のねじ込み量を適宜に調整することにより、回転体88、軸部85及び支持板87が連動して昇降するように構成されている。その結果、支持板87に載置された鉄骨ユニット40を昇降させることが可能となる。そして、ナット90,90を緩めてボルト89の固定をフリーの状態とすることにより、回転体88が自由に回転できる状態となり、回転体88を
図4(a)の状態から回転させてボルト89をL字形状の開口86の縦の開口部分に位置させることで回転体88を下方側に案内することができる。これにより、ボルト83の回転により支持板87に載置された鉄骨ユニット40を所定の高さ位置に保持して隣接する立ち上がりピース41等と連結させた後、回転体88を回転させて支持板87を下方に下げればレベル調整具8を簡単に取り外すことができる。
【0034】
次に、立ち上がりピース41は、内部が中空状の角柱形状とされ、4本のレベル調整ボルト42,42によって捨てコンクリート2上に立設配置される。立ち上がりピース41の上面には内部にコンクリート50を流し込むための開口部を備えた図示しない天板が配置される。また、
図12に示すように、立ち上がりピース41には、図示しない天板から突出するようにして棒状のホールダウン金物61が配設されており、ホールダウン金物61の下部側はコンクリート50によって立ち上がりピース41内の構造体に固定される。そして、ホールダウン金物61の上部側は例えば上部建屋の構造柱60の下部にナット等の締着具によってしっかりと固定される(
図12参照)。上部建屋の構造柱60と立ち上がりピース41との間には必要に応じて基礎パッキン71を配設することができる。立ち上がりピース41の高さ調整及び水平出しは、レベル調整ボルト42,42に取り付けられた図示しないナットを適宜にねじ込むことによって行われる。
【0035】
立ち上がりピース41の配置に際しては、
図7に示すような座金43を用いることができる。図示された座金43は、中央に凸状部45を備えた全体が四角形をした金属板によって形成されており(
図8参照)、角部近傍にはレベル調整ボルト42の径よりもやや大径の4つの穴44,44が設けられている。そして、穴44,44にレベル調整ボルト42,42が挿通される。また、捨てコンクリート2に接触する凸状部45には座金43を固定するための図示しない釘を打設するための複数の釘穴46,46が穿設されている。このようにして形成された座金43を予め適正な位置に配置することで上部建屋の構造柱60を計画通りの場所に配置することができる。尚、レベル調整ボルト42,42の下端は捨てコンクリート2に固定してもよいが、後工程で鉄筋3と共にコンクリートで埋設されるので必ずしも固定しなくともよい。
【0036】
鉄筋3と鉄骨土台4が所定位置に配置されると、
図14に示すように、鉄筋3の周囲には鉄筋3を挟み込むようにして型枠20が配置される。尚、
図13は鉄筋3と型枠20の配置関係を示すものであるが、実際には型枠20の上端は鉄骨ユニット40の下端と同じかそれよりもやや高い位置に位置するような高さに配置される。この型枠20は、コンクリート50を流し込んで基礎構造を形成するために配置される。尚、型枠20は金属製材料で形成することが好ましいが、これに限定されるものではない。基礎構造1では型枠20はコンクリート50が固まった後でも取り外さずに「捨て型」としている。ここで、鉄筋3と型枠20を所定の間隔を保持して配置するために、
図5,6に示すような、型枠保持具9が用いられる。図示された型枠保持具9は、型枠20に掛止される掛止部94と、所定の長さを有して伸びる腕部93と、腕部93の先端に設けられ、鉄筋3を把持する把持部91を備えて構成されている。型枠保持具9は、その側面視が略直角三角形形状をしており、斜辺の頂部に掛止部94が設けられ、所定の長さを有して伸びる隣辺(底辺)に相当する部分が腕部93となっている。また、対辺相当する部分は型枠20に支持されるようになっている。掛止部94は
図5では約180°に折り曲げられて型枠20の上部に掛止されるようになっているが、
図6に示すように、型枠20の上部形状が逆L字形状の場合には掛止部94は、その形状に即した形状に、例えば略コの字状に形成することにより型枠20の上部に掛止できるようにされている。また、把持部91は下部側に開口部を備えた断面略半円形状に形成されて上部主筋31c,31dに嵌合するようにして固定される。型枠20の所定箇所に型枠保持具9を配置した後、コンクリート50が打設される。
【0037】
コンクリート50は、鉄筋3の全体を覆い尽くすと共に、鉄骨ユニット40の下端と同じ高さ位置から鉄骨ユニット40の高さの略半分が埋設されるような高さ位置までの間で打設される。鉄骨ユニット40とコンクリート50との間に隙間があると雨水が基礎構造1内に浸入するおそれがある。そのため、
図10に示すように、鉄骨ユニット40の下端側をコンクリート50内に埋め込むように施工するか、或いは、
図11に示すように鉄骨ユニット40の下端面をコンクリート50の上面と密接させるように施工する。これにより基礎構造1内への雨水等の侵入を阻止するができる。尚、型枠保持具9は合成樹脂製であり、コンクリート50によって鉄筋3と共に埋められる。
【0038】
コンクリート50が打設されると、
図13(a)に示すように、ホールダウン金物61の下部はコンクリート50に埋設固定されるのでホールダウン金物61に固定される上部建屋の構造柱60は強固に固定されてぐらつくことがない。また、鉄骨ユニット40の所定箇所に配置される補強金物70に取り付けられた基礎用アンカーボルト49bはコンクリート50にしっかり埋設固定され、上部建屋の上部構造土台80を上部建物用アンカーボルト49aによってコンクリート50に一体的に固定する。
【0039】
[建築物の基礎構造の施工方法]
次に、上述した建築物の施工方法について説明する。
図16は本発明に係る鉄骨土台を備えた建築物の基礎構造の施工方法の好ましい一実施形態を示すフローチャートである。まず、住宅等の建築物の建設予定地に予め施工された捨てコンクリート2の土台部分に鉄筋3を
図1〜
図3に示すように所定の形状に配置する(ステップS1)。鉄筋3は、工場で予めユニットとして組み上げられたものを使用することにより現場施工の工期の短縮化を図る。
【0040】
鉄筋3が施工されたら、立ち上がりピース41,41を割付図に従って所定の位置に配置する(ステップS2)。立ち上がりピース41の配置は、予め座金43を所定の位置に配置して釘穴46,46を介して図示しない釘によって固定しておき、立ち上がりピース41のレベル調整ボルト42,42を座金43の穴44,44に挿通することにより立ち上がりピース41が所定位置に配置することができる。そして、レベル調整ボルト42によって立ち上がりピース41の高さ位置を合わせる。
【0041】
次いで、鉄筋3の上部の所定箇所に鉄骨ユニット40を配置する(ステップS3)。鉄筋の上部の所定箇所には予めレベル調整具5,8を配置しておく。また、鉄骨ユニット40の配置に際しては鉄骨ユニット支持具100を用いることができる。すなわち、鉄筋3を跨ぐようにして鉄骨ユニット支持具100を配置し、ボルト104,104のねじ込み具合を調節することによって高さ調整を行い、支持部105によって鉄骨ユニット40のフランジを掛止することにより鉄骨ユニット40を支持する。これにより、鉄骨ユニット40を容易に鉄筋3の所定位置に配置することができる。
【0042】
鉄骨ユニット40の配置が完了したら、鉄骨ユニット40と立ち上がりピース41を接合金物47によって連結固定する(ステップS4)。また、必要に応じて鉄骨ユニット40,40同士の連結も行って鉄骨土台4を一体化する。鉄骨ユニット40と立ち上がりピース41との連結及び鉄骨ユニット40,40同士の連結を行うに際しては予め鉄筋3の上に配置されているレベル調整具5,8を用いて鉄骨ユニット40の高さを調整し、接合金物47のボルト孔が鉄骨ユニット40に予め設けられた図示しないボルト孔及び立ち上がりピース41に予め設けられた図示しないボルト孔とを一致させる。このように、このレベル調整具5,8を用いることにより鉄骨ユニット40の位置合わせを簡単に行うことができる。鉄骨ユニット40と立ち上がりピース41の連結は、一旦仮止めを行い、割付図通りであるかを確認し、鉄骨ユニット40の上面及び立ち上がりピース41の上面のレベル調整を行った後で本締めを行う。尚、鉄骨ユニット40と立ち上がりピース41の連結等が完了したらレベル調整具5,8は取り外される。
【0043】
次に、鉄骨ユニット40の所定箇所に補強金物70を配置する(ステップS5)。補強金物70が鉄骨ユニット40の上,下のフランジ48a,48b間に配置され、補強金物70下端側に基礎用アンカーボルト49bが取り付けられる。基礎用アンカーボルト49bは、鉄筋3の中央部を経由してその下端を鉄筋3のあばら筋30に係着し、ネジ切りされている上端をナット等によって鉄骨ユニット40に取り付けた補強金物70の下面に固定する。一方、補強金物70の上部に取り付けられた上部建物用アンカーボルト48aは上部建屋の上部構造土台80に固定する。尚、上部構造土台80の下面には必要に応じて基礎パッキン71を配設することができる。
【0044】
次に、鉄筋3を囲繞するようにして鉄筋3の周囲に型枠20を配置する(ステップS6)。
型枠20の上端は、鉄骨ユニット40の下端よりも高く位置するような高さに形成され、そして、型枠保持具9を型枠20と上部主筋31c,31dとの間の所定箇所に取り付ける。これによって型枠20は直立し、転倒することがない。
【0045】
次に、コンクリートミキサー車等を用いて型枠20内、及び、立ち上がりピース41の内部空間内にコンクリート50を打設して一体となった基礎を形成する(ステップS7)。コンクリート50は、鉄骨ユニット40の下端と同じ高さ位置から鉄骨ユニット40の高さの略半分が埋設されるような高さ位置までの間の適宜の高さで打設される。尚、型枠20は捨て型枠であるので型枠20を外す手間は不要である。そして、ホールダウン金物61及び補強金物70のアンカーボルト49bがしっかりとコンクリート50によって固定され、上部建屋の構造柱60及び上部構造土台80がそれぞれ固定される。以後、上述のようにして形成された基礎構造1に上部建屋を形成し、さらに内外装等を施すことにより住宅等の建築物が完成する。
【0046】
以上のように、本発明に係る鉄骨土台を備えた建築物の基礎構造及びその施工方法についての好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。