【実施例】
【0020】
(第1実施例)
図1に示すように、本実施例のステータ60及びモータ部50は、燃料ポンプ10に用いられる。燃料ポンプ10は、燃料タンク(図示省略)内に配置され、自動車等の車両のエンジン(図示省略)に燃料(例えばガソリン等)を供給する。
図1に示すように、燃料ポンプ10は、モータ部50の他に、ポンプ部30を備える。モータ部50とポンプ部30は、ハウジング2内に配置されている。ハウジング2は、両端が開口された円筒形状を有する。
【0021】
ポンプ部30は、ケーシング32とインペラ34を備える。ケーシング32は、ハウジング2の下端の開口を閉塞する。ケーシング32の下端には、吸入口38が設けられている。ケーシング32の上端には、ケーシング32内とモータ部50とを連通する連通孔(図示省略)が設けられている。ケーシング32内には、インペラ34が収容されている。
【0022】
モータ部50は、ポンプ部30の上方に位置する。モータ部50は、ブラシレスモータであり、三相モータである。モータ部50は、ロータ54と、ステータ60と、ターミナル70と、を備える。ロータ54は、永久磁石を備える。ロータ54の中心には、シャフト52が貫通して固定されている。シャフト52の下端は、インペラ34の中心部に挿入され、貫通している。ロータ54は、シャフト52の両端部に配置された軸受けによって、シャフトを中心に回転可能に支持されている。なお実施例では、
図1の状態で上下を規定する。即ち、モータ部50から見てポンプ部30は「下」に位置し、ポンプ部30から見てモータ部50は「上」に位置する。
【0023】
ステータ60は、樹脂層66に覆われている。樹脂層66は、ハウジング2の上端の開口を閉塞する。樹脂層66の上端には、吐出口11が形成されている。吐出口11は、モータ部50と燃料ポンプ10外の燃料経路とを連通する。吐出口11は、ポンプ部30で昇圧された燃料を、燃料経路に吐出するための開口である。樹脂層66では、ステータ60を覆う部分と吐出口11とが、樹脂で一体成形されている。なお、ステータ60を覆う部分と吐出口11とは、別体で構成されていてもよい。
【0024】
ステータ60は、コア本体90と、コア本体90に配置される複数(本実施例では6個)のコイル96とを備える。ステータ60の上端には、ターミナル70が取付けられている。ターミナル70は、制御回路を介してバッテリ(ともに図示省略)に接続される。ターミナル70は、ステータ60のコイル96に電力を供給するための端子である。
【0025】
コア本体90は、コアプレート群(92,92,・)と、コアプレート群(92,92,・)の表面に設けられたインシュレータ94と、を備える。コアプレート群(92,92、・)は、複数枚のコアプレート92によって構成されている。なお、
図1では、見易さを優先して、複数枚のコアプレート92の断面を示すハッチングは省略されている。複数枚のコアプレート92は上下方向に積層されており、各コアプレート92は磁性体材料によって形成されている。インシュレータ94は、絶縁性の樹脂材料によって形成されている。インシュレータ94は、積層された複数枚のコアプレート92からなるコアプレート群(92,92・・)の表面を覆っている。
【0026】
図2に示すように、コア本体90は、6個の部分コアU1,V1,W1,U2,V2,W2を備える。6個の部分コアU1〜W2は、円筒形状に配置されている。6個の部分コアU1〜W2は、2個のU相の部分コアU1,U2と、2個のV相の部分コアV1,V2と、2個のW相の部分コアW1,W2で構成されている。なお、各部分コアU1〜W2は略同一構成であるため、部分コアW1について代表して説明する。
【0027】
部分コアW1は、外周部95とティース91(
図3参照)とボビン99(
図3参照)とを備える。外周部95は、部分コアW1の最も外周側に位置する。外周部95は、コアプレート92の外周部分と、コアプレート92の外周部分を覆うインシュレータ94とによって構成されている。外周部95の外周面は、部分円筒形状を有する。外周部95の内周面は、平板形状を有する。外周部95は、隣接する部分コアU2,V1のそれぞれの外周部95に連結されている。6個の部分コアU1〜W2が、それぞれの外周部95において連結されることにより、筒形状が形成されている。
【0028】
図3に示すように、外周部95の中央部には、ステータ60の中心に向かって伸びるティース91が配置されている。なお、
図3では、部分コアW1と、部分コアW1に隣接する部分コアV1,U2が記載されているが、
図3に示すコア本体90の展開状態では、6個の部分コアU1〜W2が、部分コアW1,V1,U2に示されるように、直線状に配置されている。
【0029】
ティース91は、コアプレート92のうち、外周部95を構成するコアプレート92の外周部分から、外周部95の内周側に伸びる部分によって構成されている。なお、
図3では、コアプレート92のうち、部分コアW1に対応する部分のみが記載されているが、実際には、コアプレート92は、6個の部分コアU1〜W2に対応する部分が連結されている。
【0030】
図2に示すように、6個の部分コアU1〜W2に配置されている6個のティース91は、外周部95の周方向に等間隔に配置されている。
図3に示すように、ティース91の中間部分91aは、外周部95から外周部95の内周側(
図3の下側)に伸びている。ティース91の内周端は、外周部95の周方向に広がっており、ロータ54の外周面に倣う形状を有する。ティース91は、インシュレータ94によって覆われている。ティース91の内周側の端には、インシュレータ94に覆われている内周部91bが配置されている。
【0031】
ボビン99は、ティース91を覆うインシュレータ94のうち、中間部分91aを覆う部分によって構成されている。ボビン99は、中間部分91aの側面を一巡している。より詳細には、ボビン99は、中間部分91aのうち、外周部95とティース91の内周端との間に位置する4個の面を覆っている。ボビン99の外周面には、導線97を支持するためのガイド99aが配置されている。ガイド99aは、ボビン99の外周面に、凹状に形成されている。ガイド99aは、少なくともボビン99の4個の角部のそれぞれに形成されている。なお、ガイド99aは、ボビン99外周面の全周に亘って形成されていてもよい。ガイド99aは、導線97の外形に倣った形状を有する。
【0032】
ボビン99の外周部95側の端には、溝100が形成されている。溝100では、ボビン99の外周面が、他の部分のボビン99の外周面よりも凹んでいる。言い換えると、溝100では、ボビン99の外周面が、他の部分のボビン99の外周面よりも、ティース91の近くに位置している。溝100は、ボビン99の外周面の全周に亘って形成されている。このため、溝100が形成されているボビン99の周長は、他の部分のボビン99の周長よりも短い。溝100の幅(即ちステータ60の径方向における溝100の長さ)は、導線97の線径にほぼ等しい。溝100の深さ(即ち溝100の断面において、溝100の幅に垂直方向の長さ)は、導線97の線径にほぼ等しい。
【0033】
図2に示すように、ボビン99には、コイル96が配置されている。コイル96は、導線97がボビン99に巻回されることによって作製されている。コイル96は、端子70に電気的に接続されている。部分コアW1のコイル96は、部分コアW2のコイル96と接続されており、部分コアW1のコイル96及び部分コアW2のコイル96には、同位相の電位が供給される。同様に、部分コアU1のコイル96は、部分コアU2のコイル96と接続されており、部分コアU1のコイル96及び部分コアU2のコイル96には、同位相の電位が供給される。さらに、同様に、部分コアV1のコイル96は、部分コアV2のコイル96と接続されており、部分コアV1のコイル96及び部分コアV2のコイル96には、同位相の電位が供給される。
【0034】
(導線の巻回方法)
次に、
図4〜10を参照して、導線97を巻回して、コイル96を作製する方法を説明する。導線97は、
図3に示すように、部分コアU1〜W2が、直線状に並んだ状態で巻回される。なお、
図4以降の図面では、図面の見易さを優先して、ボビン99に形成されているガイド99aを省略する等、簡略化して記載する。導線97は、
図4から
図9の順に巻回される。なお、
図7は、
図6に示される状態と同じタイミングにおける導線97の巻回状態を示す図であり、
図6が部分コアW1の上方から見ているのに対して、部分コアW1の下方から見た図である。
図10は、コイル96が作製された後の状態を示しており、導線97は、ボビン99の上面の位置における断面で示されている。
【0035】
図4に示すように、最初に、導線97の一端を、外周部95の上端に位置する係止部95aに係止する。なお、導線97は、巻回装置8から供給される。そして、係止部95aに係止された導線97を、ボビン99の左側からボビン99の上面を超えて、ボビン99の右側まで引く。次いで、
図5に示すように、巻回装置8を、ボビン99の周方向に移動させて、導線97を溝100内に巻回する。
【0036】
この結果、
図5に示すように、導線97は、係止部95aから溝100までの導入部97aを経て、溝100内に配置される。より詳細には、導線97は、導入部97aから、外周部95に形成された拡張部95bを介して、溝100内に導入される。拡張部95bは、溝100の幅を、外周部95側に拡張している。拡張部95bは、溝100の幅が下方に向かって徐々に小さくなるように形成されている。言い換えると、ロータ60の径方向の拡張部95bの長さは、下方の向かうに従って徐々に短くなっている。そして、拡張部95bは、溝100の上下方向の中央位置において消滅する。拡張部95bは、導線97をボビン99に巻回する際に、導入部97aの導線97が干渉することを抑制するために設けられている。従って、拡張部95b内の導線97は、導線97をボビン99に巻回している間に、導線97に押されて、Y軸方向に移動する場合がある。
【0037】
図5の状態から、さらに、巻回装置8をボビン99の周方向に移動させるとともに、Y軸に沿った導線97の進行に合わせて、Y軸に平行に内周部91bに向かって移動させる。これにより、
図6,7に示すように、調整部97bと1層目の導線層CL1とが形成される。調整部97bは、溝100内において、導線97が1回だけ巻回されることによって形成される。導線層CL1では、ボビン99の外周部95側の端から反対側の端に向かって、導線97が密に、即ち、隣接して巻回されている。即ち、コイル96のピッチは、導線97の線径に等しい。詳細には、導線層CL1のボビン99の外周部95側の端の導線97は、調整部97bの導線97と溝100の側面とよって形成される凹部(
図10の凹部X1参照)に沿って巻回されている。この構成によれば、導線層CL1の導線97のうち、最初に巻回される導線97を適切に位置決めすることができる。この結果、以降に巻回される導線層CL1の導線97が乱れることを抑制することができる。導線層CL1のボビン99の外周部95側の端の導線97(即ち、
図10の導線C3,C4)は、外周部95の内周面から、略半ピッチ(即ち、導線97の線径の1/2の長さ)だけ離間している。一方、導線層CL1のボビン99内周部91b側の端の導線97(即ち、
図10の導線C11,C12)は、内周部91bに当接している。
【0038】
図6,7を比較して明らかなように、第1層目の導線層CL1では、ボビン99の上端面上に配置される導線97は、X軸に対して傾斜している一方、ボビン99の下端面上に配置される導線97は、導線97の進行方向(即ちY軸方向)に対して垂直(即ちX軸方向に平行)に巻回されている。
【0039】
続いて、巻回装置8を、ボビン99の周方向に移動させるとともに、Y軸に沿った導線97の進行に合わせて、内周部91bから外周部95に向かって移動させる。この結果、
図8に示すように、2層目の導線層CL2が形成される。導線層CL2では、ボビン99の内周部91b側の端から外周部95側の端に向かって、導線97が密に巻回されている。詳細には、導線層CL2では、内周部91b側の端の導線97(即ち
図10の導線C11,C12)は、内周部91bに当接しており、外周部95側の端の導線97(即ち
図10の導線C19,C20)は、外周部95に当接している。また、導線層CL2のうちの両端の導線97(即ち
図10の導線C13〜C18)は、導線層CL1の導線97の間に形成される凹部に沿って巻回されている。
【0040】
図8に示すように、外周部95側の端の導線97(即ち
図10の導線C19,C20)を巻回する際には、導線97を、外周部95側の端の導線97の1巻前の導線97(即ち
図10の導線C17,C18)に接触させながら巻回する。より詳細には、
図10の導線C21に示される位置に導線97を配置して巻回すると、導線97は、導線C17に沿って滑り落ちて、導線C19の位置に収まる。このため、巻回装置8を、外周部95に当接する程度に、外周部95に近づけなくても巻回することができる。
【0041】
また、導線層CL2では、ボビン99の上端面上に配置される導線97は、X軸に対して導線97のY軸に沿った進行方向に傾斜している一方、ボビン99の下端面上に配置される導線97は、X軸に平行に巻回されている。ボビン99の上端面上に配置される導線97は、導線層CL1の導線97と交差するように傾斜している。
【0042】
次いで、
図8の状態から、3層目の導線層CL3(
図10参照)を形成するために、巻回装置8をボビン99の周方向に移動させる。この結果、導線層CL3の外周部95側の端に巻回される導線97(即ち
図10の導線C21,C22)は、導線層CL2の外周部95側の端から2巻巻回されている導線97(
図10の導線C17〜C20)によって形成される凹部X2に沿って巻回される。
【0043】
この結果、導線層CL3のボビン99の外周部95側の端の導線97(即ち
図10の導線C21,C22)は、外周部95の内周面から、略半ピッチだけ離間している。この構成によれば、巻回装置8を、外周部95に当接する程度に、外周部95に近づけなくても巻回することができる。
【0044】
図9の状態から、巻回装置8を、ボビン99の周方向及び外周部95と内周部91bとの間で移動させて、導線層CL3、CL4を形成することによって、コイル96が作製される。なお、コイル96の導線97の端は、部分コアW2に配置されているコイル96の導線97に接続される。同様に、部分コアU1のコイル96の導線97の端は、部分コアU2に配置されているコイル96の導線97に接続され、部分コアV1のコイル96の導線97の端は、部分コアV2に配置されているコイル96の導線97に接続される。
【0045】
図10に示すように、コイル96では、奇数層の導線層CL1、CL3では、導線C3,C4,C21,C22は、外周部95の内周面から導線97の線径の1/2だけ離間している。一方、偶数層の導線層CL2、CL4では、導線C19,C20,C37は、外周部95の内周面に当接している。なお、変形例では、コイル96は、5層以上の導線層が巻回されていてもよい。本変形例でも、奇数層の導線層CL1、CL3・・・では、導線は、外周部95の内周面から導線97の線径の1/2だけ離間し、偶数層の導線層CL2、CL4・・・では、導線は、外周部95の内周面に当接していてもよい。
【0046】
(本実施例の効果)
図11,12に記載されている比較例と比較して、本実施例の効果を説明する。比較例では、ボビン199に溝100は形成されておらず、外周部95側の端から内周部91b側の端まで同一の周長を有する。この比較例では、
図12に示すように、1層目の導線層の導線97は、外周部95の内周面に当接する一方、2層目の導線層CL2の導線97は、外周部95の内周面から略半ピッチだけ離間している。この構成では、できる限りコイル96の導線97に密に巻回しようとすると、3層目の導線層CL3では、外周部95側の端の導線97は、外周部95の内周面に当接するように配置する必要がある。
【0047】
しかしながら、外周部95側の端の導線97は、3層目の導線層CL3の導線97のうち、最初に巻回される導線である。このため、3層目の導線層には、外周部95側の端の導線97を案内するような導線は巻回されていない。外周部95側の端の導線97は、2層目の導線層の外周部95側の端の導線97と、外周部95の内周面と、の間の凹部に沿って巻回される。このため、巻回装置8を、外周部95に近づけた状態で、導線97を巻回しなければならない。また、この状態では、巻回装置8から伸びる導線97を強く引っ張ると、導線97が、2層目の導線層の外周部95側の端の導線97と、外周部95の内周面と、の間の凹部から脱落してしまい、適切に巻回することができない場合がある。
【0048】
一方、
図10に示すように、本実施例のステータ60では、調整部97bが配置されているために、奇数層の導線層CL1,CL3(即ち、導線C3,C4,C21,C22)は、外周部95の内周面から略半ピッチだけ離間している。このため、比較例のような状況を回避することができる。また、偶数層の導線層CL2,CL4(即ち、導線C19,C20,C37)は、外周部95の内周面に当接しているが、偶数層の導線層CL2,CL4では、導線97は、内周部91bから外周部95に向かって巻回されている。このため、導線C19,C20,C37を巻回する状況では、既に、偶数層の導線層CL2,CL4において、外周部95の内周面に当接する導線97に隣接する導線97(即ち、導線C17,C18,C35)が巻回されている。このため、導線C19,C20,C37は、導線C17,C18,C35に案内されて適切に巻回される。本実施例の構成によれば、導線97を、外周部95に強く接触させることなく、高密度に適切に巻回することができる。
【0049】
また、
図12に示す比較例では、3層目の導線層のうち、最初に巻回される導線97を巻回する際に、当該導線97は、導入部97aの導線97と干渉する。このため、導線97を外周部95の内周面に当接するように巻回することが難しい。一方、本実施例では、2層目の導線層CL2のうち、外周部95側の端に巻回される導線97、及び、3層目の導線層CL3のうち、外周部95側の端に巻回される導線97は、
図9に示すように、導線層CL2の外周部95側の2本の導線97(
図10の導線C17とC19,C18とC20)の間に沿って巻回されるため、巻回時に、導入部97aの導線97によって影響を受けない。本実施例のステータ60によれば、導線97の巻回時に、導線97が導入部97aに当接し、巻き崩れることを回避することができる。
【0050】
(第2実施例)
図13,14を参照して、第1実施例と異なる点を説明する。本実施例は、第1実施例と比較して、溝200の形状が、第1実施例の溝100の形状と異なる。また、本実施例は、第1実施例と比較して、コイル96を構成する導線97の巻回方法が異なる。
【0051】
図14に示すように、溝200は、溝100と同様に、ボビン99の外周部95側の端に配置されており、溝200では、ボビン99の外周面が、他の部分のボビン99の外周面よりも凹んでいる。溝200の幅は、導線97の線径の2倍にほぼ等しい。その他の溝200の構成は、溝100の構成と同様である。
【0052】
(導線の巻回方法)
図13に示すように、導線97は、第1実施例と同様に、導入部97aを経て、溝200内に配置される。そして、導線97は、溝200内において、2回だけ巻回される。この結果、溝200内には、Y軸方向に隣接する2本の導線97が配置される。
図14に示すように、溝200内の導線97は、外周部95aから内周部91bに向かう方向、即ち、導線C1,C2,C3,C4の順に巻回される。これにより、溝200内に、調整部297bが形成される。
【0053】
調整部297bが形成されると、続いて、
図13の矢印に示されるように、導線97は、調整部297b上に巻回される。この結果、導線層CL1の最初の導線C5,C6が巻回される。導線層C5,C6は、調整部297bの導線C1,C2,C3,C4によって形成される凹部X201に沿って巻回される。この構成によれば、導線層CL1の導線97のうち、最初に巻回される導線97を適切に位置決めすることができる。この結果、以降に巻回される導線層CL1の導線97が乱れることを抑制することができる。なお、この巻回方法では、導線層CL1の導線97のうち、最初に巻回される導線97は、調整部297bを形成する導線97と、ボビン99の上端側で交差する。
【0054】
続いて、
図14に示すように、第1実施例と同様に、導線97が導線層CL1〜CL4まで巻回され、コイル96が作製される。なお、コイル96は、5層以上の導線層によって作製されていてもよい。
【0055】
本実施例においても、第1実施例と同様の効果を奏することができる。
【0056】
(第3実施例)
図15〜17を参照して、第2実施例と異なる点を説明する。本実施例は、第2実施例と比較して、コイル96を構成する導線97の巻回方法が異なる。
【0057】
(導線の巻回方法)
図15に示すように、導線97は、第2実施例と同様に、導入部97aを経て、溝200内に配置される。そして、導線97は、溝200内において、2回だけ巻回される。この結果、溝200内には、外周部95aと内周部91bとの方向に隣接する2本の導線97が配置される。
図17に示すように、溝200内の導線97は、外周部95aから内周部91bに向かう方向、即ち、導線C1,C2,C3,C4の順に巻回される。これにより、溝200内に、調整部397bが形成される。
【0058】
調整部397bが形成されると、続いて、導線97は、導線層CL1のうち、最初に巻回される導線97を、調整部397bの内周部91b側の端の導線97と溝200の側面とよって形成される凹部X301(
図17参照)に沿って巻回されている。この構成によれば、導線層CL1の導線97のうち、最初に巻回される導線97を適切に位置決めすることができる。この結果、以降に巻回される導線層CL1の導線97が乱れることを抑制することができる。
【0059】
続いて、導線97は、内周部91bに向かって巻回される。
図16に示すように、導線層CL1の導線97が内周部91bに当接するまで巻回されると(
図17の導線C9,C10)、第1,2実施例と同様に、導線層CL2の内周部91b側の端の導線97(
図17の導線C11,C12)から順に、導線層CL2が形成される。
【0060】
図17に示すように、導線層CL2の導線C15,C16が巻回されると、次いで、導線97は、調整部397bの導線C1〜C4上に、巻回される。即ち、導線C15,C16が巻回されると、導線層CL1を形成する導線97が巻回される。次いで、導線C5,C6,C17,C18上に、導線層CL2を形成する導線C19,C20が巻回され、次いで、導線C21,C22が巻回される。これにより、導線層CL2が形成される。以降、第1,2実施例と同様に、導線97が巻回されて、導線層CL1〜CL4を有するコイル96が作製される。
【0061】
本実施例においても、第1,2実施例と同様の効果を奏することができる。
【0062】
(第4実施例)
上述した各実施例では、溝100は、ボビン99の外周面の全周に亘って形成されている。しかしながら、本実施例では、溝100は、ボビン99の外周面のうち、ティース91の中間部分91aを挟んで対向する一対の面(即ち、上下方向に伸びる一対の面)に形成されていている。この場合、導入部97aの下端は、溝100に配置される導線97に連続している。
図21、
図22には、ボビン99のうち、上下方向に伸びる一対の面に溝100が形成されている場合の導線97の巻回状態を示す図である。
図21は、導線97が、ボビン99の上面の位置における断面で示されており、
図22は、導線97が、ボビン99の上面の中央位置において、ボビン99の上面の垂直な断面で示されている。なお、図中の導線97内の数字は、導線97の巻き数を示す。
【0063】
図21に示すように、1巻き目(即ち導線97内の数字が「1」)の導線97は、溝100内に配置されている。一方、
図22に示すように、溝100が形成されていない面では、1巻き目の導線97は、1層目の最初に巻回される導線に相当する。溝100が設けられている面では、1層目の導線層CL1〜4層目の導線層CL4のそれぞれにおいて、導線97は、4回、5回、4回、5回巻回されている。これに対して、溝100が設けられていない面では、導線層CL1〜導線層CL4のそれぞれにおいて、導線97は、5回、4回、5回、4回巻回されている。
【0064】
2層目の導線層CL2の外周部95側の端に位置する導線(
図21の即ち導線97内の数字が「10」)は、上記した第1〜第3実施例と同様に、隣接する導線(
図21の即ち導線97内の数字が「9」)に沿って滑り落ちて、2層目の導線層の外周部95側の端に収まる。
図22に示すように、上下方向に伸びる面において、2層目の導線層の外周部95側の端に位置する導線97は、ボビン99の上下端面では、3層目の導線層の外周部95側の端に位置する。この場合であっても、導線97は、上下方向に伸びる面の2層目の導線(
図21の即ち導線97内の数字が「9」)によって案内されているため、巻回装置8を、外周部95に当接する程度に、外周部95に近づけなくても巻回することができる。
【0065】
本実施例においても、第1〜3実施例と同様の効果を奏することができる。
【0066】
なお、変形例では、溝100は、ボビン99の外周面のうち、少なくともティース91の中間部分91aを挟んで対向する一対の面のうち、ボビン99の上下端面に形成されていてもよい。この場合、導入部97aの下端は、溝100に配置される導線97に連続していてもよい。
【0067】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0068】
(1)上述した各実施例では、ブラシレスモータを燃料ポンプ10に用いた例であったが、本明細書に開示するブラシレスモータは、冷却水ポンプ等の電動ポンプや、他の装置に用いられてもよい。
【0069】
(2)上記した第2実施例では、溝200内の導線97は、外周部95aから内周部91bに向かう方向に順に巻回されている。しかしながら、
図18〜20に示すように、調整部297bでは、導入部97aから導線97が溝200に導入されると、溝200を一回巻回する間に、溝200の内周部91b側の端(
図18のPで示される位置)に進行していてもよい。続いて、導線97は、ボビン99の上端を、Y軸に平行に配置される。次いで、
図19に示すように、導線97が、ボビン99の一方の側面(
図18における右側の側面)において交差され、
図20に示すように、ボビン99の他方の側面(
図18における左側の側面)において平行に配置されるように、巻回されていてもよい。
【0070】
(3)上述した実施例では、6スロットの3相モータであるモータ部50が記載されているが、モータは、3×N(Nは、正の整数)個のスロットを有する3相の交流モータであってもよい。この場合、3×N個の部分コアが、ステータに含まれていてもよい。そして、3×N個の部分コアは、N個のコアグループに分類されていてもよい。そして、各コアグループに属する3個の部分コアは、ステータの周方向に並んで配置されてよい。1個のコアグループに属する3個の部分コアでは、対向面は、当接していてもよい。一方、コアグループ間に位置する対向面のうちの少なくとも1組の対向面は、間隔を空けて配置されていてもよい。なお、同一のコアグループの隣接する部分コアに含まれる1組の対向面が、間隔を空けて配置されていてもよい。
【0071】
(第5実施例)
図23,24を参照して、第1実施例と異なる点を説明する。本実施例は、第1実施例と比較して、溝100の一部において、溝100の幅、即ち、溝100のステータ60の径方向(即ちY軸方向)の長さが、第1実施例の溝100の幅よりkだけ長い。kは、0より大きく、導線97の線径よりも細い。これにより、溝100の幅は、W(Wは、溝100に巻回される回数に、導線97の線径Dを乗算した値)+k(0<k<D)となる。例えば、kは、導線97の線径の1/4以上3/4以下であってもよい。
【0072】
具体的には、ボビン99の外周面の全周に亘って形成されている溝100のうち、外周部95の軸方向(即ち
図23の紙面垂直方向)に伸びる部分であって、拡張部95bが形成されていない側の部分に、拡幅部100aが配置されている。拡幅部100aは、溝100の外周部95側の端に配置されている。拡幅部100aは、外周部95の内周面に形成されている。拡幅部100aの深さ、即ち、溝100のステータ60の径方向の長さは、上記したkである。また、拡幅部100aの高さ、即ち、外周部95の内周面に平行な方向(即ちX軸方向)の長さは、導線97の線径と略同一である。拡幅部100aは、XY平面に垂直な方向に、ボビン99と同一の長さを有する。なお、変形例では、拡幅部100aは、XY平面に垂直な方向に、ボビン99よりも短くてもよい。
【0073】
図24に示すように、第1実施例と同様の巻回方法を用いて、導線97を巻回させると、導線C2が巻回される段階では、導線C2は、Y軸方向において、導線C1と同じ位置に巻回されている。そして、導線C4が巻回される段階では、導線C4は、導線C2と溝100の側面との間に配置される。このとき、導線C2は、導線C4によって、拡幅部100a側に押圧され、外周部95に当接するまで移動される。これにより、導線C2と溝100の側面との間に、凹部X5が形成される。凹部X5のY軸方向の長さは、上記したkと同一である。導線C4は、凹部X5に嵌った状態で、凹部X5に沿って巻回される。この構成よれば、凹部X5によって、導線C4を、適切に位置決めすることができる。この結果、導線C5以降が巻回される段階で、導線C4が凹部X5から内周部91a側に移動して、導線層CL1の導線97が乱れることを抑制することができる。
【0074】
(第6実施例)
図25,26を参照して、第2実施例と異なる点を説明する。本実施例は、第2実施例と比較して、溝200の一部において、溝200の幅、即ち、溝200のステータ60の径方向(即ちY軸方向)の長さが、第2実施例の溝200の幅よりkだけ長い。kは、0より大きく、導線97の線径よりも細い。例えば、kは、導線97の線径の1/4以上3/4以下であってもよい。
【0075】
具体的には、溝200の外周部95側の端には、拡幅部100aと同様の拡幅部200aが配置されている。
図26に示すように、第2実施例と同様の巻回方法を用いて、導線97を巻回させると、導線C1〜C4が巻回される段階では、導線C2,C4のそれぞれは、Y軸方向において、導線C1,C3のそれぞれと同じ位置に巻回されている。そして、導線C6が巻回される段階では、導線C6は、導線C2と導線C4との間に配置される。このとき、導線C2は、導線C6によって、拡幅部100a側に押圧され、外周部95に当接するまで移動される。これにより、導線C2と導線C4との間に、凹部X6が形成される。凹部X6のY軸方向の長さは、上記したkと同一である。導線C6は、凹部X5に嵌った状態で、凹部X5に沿って巻回される。この構成よれば、凹部X5によって、導線C6を、適切に位置決めすることができる。この結果、導線C6以降が巻回される段階で、導線C6が凹部X5から内周部91bに移動して、導線層CL1の導線97が乱れることを抑制することができる。
【0076】
(第7実施例)
図27,28を参照して、第5実施例と異なる点を説明する。本実施例では、拡幅部300aは、溝100の内周部91b側に配置されている。言い換えると、溝100の幅は、拡幅部300aが形成されている部分において、内周部91b側に、kだけ拡幅されている。拡幅部300aは、XY平面に垂直な方向に、ボビン99と同一の長さを有する。なお、変形例では、拡幅部300aは、XY平面に垂直な方向に、ボビン99よりも短くてもよい。
【0077】
図28に示すように、第1実施例と同様の巻回方法を用いて、導線97を巻回させると、導線C2が巻回される段階では、導線C2は、Y軸方向において、導線C1と同じ位置に巻回されている。そして、導線C4が巻回される段階では、導線C4は、導線C2と溝100の側面との間に形成されている凹部X7に嵌った状態で、凹部X7に沿って巻回される。この構成よれば、凹部X7によって、導線C4を、適切に位置決めすることができる。この結果、導線C7以降が巻回される段階で、導線C4が凹部X7から内周部91bに移動して、導線層CL1の導線97が乱れることを抑制することができる。
【0078】
(第8実施例)
図29,30を参照して、第6実施例と異なる点を説明する。本実施例では、拡幅部400aは、第7実施例との拡幅部300aと同様に、溝200の内周部91a側に配置されている。この構成では、
図30に示すように、導線C1〜C4が巻回される段階では、導線C2,C4のそれぞれは、Y軸方向において、導線C1,C3のそれぞれと同じ位置に巻回されている。そして、導線C6が巻回される段階では、導線C6は、導線C2と導線C4との間に配置される。このとき、導線C4は、導線C6によって、内周部91a側に押圧され、拡幅部400aの側面に当接するまで移動される。これにより、導線C2と導線C4との間に、凹部X8が形成される。導線C6は、凹部X8に嵌った状態で、凹部X8に沿って巻回される。この構成よれば、凹部X8によって、導線C6を、適切に位置決めすることができる。この結果、導線C6以降が巻回される段階で、導線C6が凹部X5から内周部91bに移動して、導線層CL1の導線97が乱れることを抑制することができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0080】
例えば、第7実施例の拡幅部300aは、溝100の深さ(即ちX軸方向の長さ)と同一の深さを有しているが、拡幅部300aの形状は、これに限定されない。例えば、
図31に示すように、拡幅部500aの深さは、溝100よりも浅くてもよい。その他の拡幅部500aの形状は、拡幅部300aの形状と同様であってもよい。
【0081】
また、例えば、第7実施例の拡幅部300aの幅(即ち、Y軸方向の長さ)は、X軸方向に一定であるが、拡幅部300aの形状は、これに限定されない。例えば、
図32に示すように、拡幅部600aの幅は、X軸方向に沿って変化してもよい。例えば、拡幅部600aは、溝100の内周部91b側の側壁を面取りすることによって作製してもよい。
【0082】
さらに、例えば、
図33に示すように、ボビン99の溝100を形成する面を、湾曲面700aに形成することによって、拡幅部を形成してもよい。あるいは、
図34に示すように、ボビン99の溝100側の端部が、X軸に沿って、拡張部95aが形成されている側から徐々に低くなる傾斜面800aを形成することによって、溝100を拡幅させてもよい。
【0083】
上記の拡幅部500a〜800aは、一般的に言うと、「拡幅部は、溝のうち、少なくともボビンの外周側の端部(あるいは、ティースの側面から離間している側の端部)の幅を拡幅する」ということができる。また、上記の拡幅部500a〜800aも、「溝のうち、一対の面の他方に位置する部分では、溝の幅が、W(Wは、前記調整部に巻回される回数に、導線の線径Dを乗算した値)+k(0<k<D)である」構成、及び「溝のうち、一対の面の一方に位置する部分において、溝の幅を拡幅する」構成に該当する。なお、拡幅部500a〜800aは、溝200を拡幅するための拡幅部としても適用することが可能である。
【0084】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。