特許第6181008号(P6181008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181008紙葉類有無検知装置及び紙葉類有無検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181008
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】紙葉類有無検知装置及び紙葉類有無検知方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/14 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   B65H7/14
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-155051(P2014-155051)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-30691(P2016-30691A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 義昌
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−215375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/00 〜 7/20
B65H 43/00 〜 43/08
G01B 11/00 〜 11/30
B41J 29/00
G03G 15/00
G03G 15/36
G03G 21/00 〜 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の搬送路を挟んで対向して設けられる発光素子及び受光素子と、
前記搬送路に紙葉類がある状態で、前記発光素子の動作電流を第1のサンプリング間隔で増大させていったときに、前記受光素子で受光して出力される出力電圧の第1の特性と、前記搬送路に紙葉類がない状態で、前記発光素子の動作電流を所定値から第1のサンプリング間隔で減少させていったときに前記受光素子で受光して出力される出力電圧の第2の特性とに基づき、紙葉類有無の閾値として前記受光素子の最適な出力電圧を求める制御部と、を有する紙葉類有無検知装置において、
前記制御部は、前記第1の特性において前記受光素子のオン/オフ状態の変化点が前記発光素子の所定の電流値より小さいとき、前記発光素子の動作電流を第1のサンプリング間隔よりも間隔の小さい第2のサンプリング間隔における前記受光素子の出力電圧特性である詳細特性に基づいて前記受光素子の最適な出力電圧を求める紙葉類有無検知装置。
【請求項2】
前記詳細特性は、前記第1の特性及び前記第2の特性から補完して求められる請求項1に記載の紙葉類有無検知装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記詳細特性から前記発光素子の最適な動作電流を求める請求項1又は請求項2に記載の紙葉類有無検知装置。
【請求項4】
前記第2のサンプリング間隔は前記第1のサンプリング間隔の1/2である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の紙葉類有無検知装置。
【請求項5】
発光素子と受光素子が対向して設けられる紙葉類の搬送路に紙葉類がある状態で、前記発光素子の動作電流を第1のサンプリング間隔で増大させていったときに、前記受光素子で受光して出力される出力電圧の第1の特性を得、
前記搬送路に紙葉類がない状態で、前記発光素子の動作電流を所定値から第1のサンプリング間隔で減少させていったときに前記受光素子で受光して出力される出力電圧の第2の特性を得て、紙葉類有無の閾値として前記受光素子の最適な出力電圧を求める紙葉類有無検知方法において、
前記第1の特性において前記受光素子のオン/オフ状態の変化点が前記発光素子の所定の電流値より小さいとき、前記発光素子の動作電流を第1のサンプリング間隔よりも間隔の小さい第2のサンプリング間隔における前記受光素子の出力電圧特性である詳細特性に基づいて前記受光素子の最適な出力電圧を求める紙葉類有無検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紙葉類の有無を光学的に検知する紙葉類有無検知装置及び紙葉類有無検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類へのプリントを行うプリント装置は、紙葉類がセットされたことを検知するために、紙葉類を光学的に検知する紙葉類センサを備えている。
【0003】
この種の紙葉類センサは紙葉類に搬送路を挟んで相対向する発光素子と受光素子から成り、発光素子から発した光が紙葉類を透過して受光素子に届いているか否かを受光素子の出力電圧の変化を見て紙葉類の有無を検知する。
【0004】
紙葉類が発光素子と受光素子の間にある状態で、発光素子の動作電流を増加させていき、受光素子の出力電圧を調べた特性と、紙葉類がない状態で発光素子の動作電流を減少させそのときの受光素子の出力電圧の変化を調べた特性から、紙葉類有無を検知する閾値を適切に設定する紙葉類センサの調整方法は知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−215375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発光素子と受光素子が近接して設けられた場合にも、紙葉類有無の適切な閾値を設定可能な紙葉類有無検知装置及び紙葉類有無検知方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一例は、紙葉類の搬送路を挟んで対向して設けられる発光素子及び受光素子と、前記搬送路に紙葉類がある状態で、前記発光素子の動作電流を第1のサンプリング間隔で増大させていったときに、前記受光素子で受光して出力される出力電圧の第1の特性と、前記搬送路に紙葉類がない状態で、前記発光素子の動作電流を所定値から第1のサンプリング間隔で減少させていったときに前記受光素子で受光して出力される出力電圧の第2の特性とに基づき、紙葉類有無の閾値として前記受光素子の最適な出力電圧を求める制御部と、を有する紙葉類有無検知装置において、前記制御部は、前記第1の特性において前記受光素子のオン/オフ状態の変化点が前記発光素子の所定の電流値より小さいとき、前記発光素子の動作電流を第1のサンプリング間隔よりも間隔の小さい第2のサンプリング間隔における前記受光素子の出力電圧特性である詳細特性に基づいて前記受光素子の最適な出力電圧を求める紙葉類有無検知装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態のプリンタ装置の構造を示す図である。
図2】一実施形態の全体の制御回路の構成例を示す図である。
図3】用紙センサの構成例を示す図である。
図4】用紙センサの紙葉類有無の閾値を設定する過程を説明するための特性曲線図である。
図5】発光素子と受光素子が近接した場合の特性曲線図である。
図6】一実施形態の紙葉類有無検知装置の構成例を示す図である。
図7図6に示す一実施形態の動作を説明するための一部特性曲線図である。
図8図6に示す一実施形態の動作を説明するためのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。本発明の実施形態についてその機械的構成を図1により説明し、全体の制御回路構成を図2により説明し、具体的なセンサ回路の例を図3により説明し、用紙センサの調整方法を図4により説明する。これらの説明の前に、本発明の実施形態の考え方を図4及び図5により簡単に説明する。
【0010】
図4は用紙センサの特性図であり、用紙の搬送路を挟んで対向する発光素子(例えば発光ダイオード)の動作(入力)電流(mA)と受光素子(例えばフォトトランジスタ)の出力電圧(V)を示す。そして、まず、用紙をセットしておく。この状態で、発光素子の動作電流がほぼゼロ状態のときの受光素子の出力電圧を測定する。この時受光素子(例えばフォトトランジスタ)はオフ状態にあり、発光素子の電流を徐々に増加させていくと、所定の状態のところで、受光素子の状態がオフからオンに変化する、図4に示す特性曲線51が得られる。この特性曲線を入力電流増加−出力電圧減少特性曲線51(又は第1の特性)と呼ぶ。
【0011】
次に、対向する発光素子の受光素子の間に用紙がない状態にする。そして発光素子の動作電流を大きい値から徐々に下げていく。発光素子の動作電流が大きいと、受光素子に十分光が届き受光素子は最初にオン状態にある。ところが、発光素子の動作電流を下げていくと、受光素子に光が届かなくなってくる。したがって受光素子は途中からオフ状態に移行し、図4で特性曲線52に示すように出力電圧が高くなっていく。この特性を入力電流減少−出力電圧増大特性曲線52(又は第2の特性)と呼ぶ。
【0012】
したがって、この2つの特性曲線51,52で発光素子の中央の動作電流値Imに対して、受光素子の出力電圧が中央となる電圧値Vmとなる位置の閾値により、用紙の有無を検知すれば、最も適切な用紙検知が可能となる。
【0013】
これらの特性曲線は通常、比較的広い所定サンプリング間隔(一定電流変化毎)で出力電圧をプロットすることにより、デジタル的に求められる。用紙を置いて上記の入力電流増加−出力電圧減少曲線をデジタル的に求め、更に用紙を除いて同じ所定サンプリング間隔で、入力電流減少-出力電圧増大の特性曲線をデジタル的に求める。特性曲線51、52において、黒点53,54で示すように特性の途中でのサンプリング間隔を大きくして、効率よく特性を検知できる。これらの2つの特性曲線は、発光素子と受光素子を設置した後に測定し、上記閾値を設定することになる。
【0014】
ところが、発光素子と受光素子が近い状態の装置で、同様に上記所定サンプリング間隔で特性曲線を求めると、受光素子のオンオフ状態が発光素子への動作電流が小さい状態で生じてしまうため、図5の特性曲線55及び特性曲線56及び黒点57,58に示すように両方の特性曲線を十分に把握することができない。
【0015】
本発明の実施形態は、この問題を解決するものである。まず、本発明一実施形態を適用するプリント装置の構成を図1に基づいて説明する。図1に示すプリント装置1は、通帳Tの出入口とステートメント用紙の出口を兼ねるフェイシア部2を前面部に有し、用紙セット部3を後面部に有する。
【0016】
この用紙セット部3にロール状に巻かれたサーマル用紙がセットされる。セットされたサーマル用紙4は、先端部が第1搬送部5によって引き出され搬送路6aに導かれる。この搬送路6a上に、サーマルプリント部7及び切断部8が配設される。
【0017】
また、第1搬送部5に続いて第2搬送部10が設けられている。第2搬送部10は搬送路6aにつながる搬送路6b、この搬送路6bに沿って配設された搬送ローラ対11a〜11e、出入ローラ対12、及びフィードローラ対15を有し、フェイシア部2に挿入される通帳Tの搬送を行うと共に、搬送路6aから送られるサーマル用紙4をフェイシア部2に向けて搬送する。
【0018】
そして、搬送路6bにおける搬送ローラ対11a,11bの相互間に、24ピンのドットマトリクスヘッド9aを有するドットプリンタ部9が配設される。出入ローラ対12は、フェイシア部2に挿入される通帳Tの取り込みを行うと共に、プリントが済んだ通帳Tやステートメント用紙をフェイシア部2の外に送り出す。
【0019】
更に、第2搬送部10のサーマル用紙導入側に、紙葉類センサとして用紙センサ28が設けられている。用紙センサ28は、プリント対象の紙葉類であるサーマル用紙4を光学的に検知する。
【0020】
第2搬送部10における出入ローラ対12の近傍には、紙葉類センサとして通帳センサ29が設けられている。通帳センサ29はプリント対象の紙葉類である通帳Tを光学的に検知する。
【0021】
サーマルプリント部7は、サーマル用紙4の搬送方向に沿う所定間隔の位置に、裏面プリント用のサーマルヘッド17、及び表面プリント用のサーマルヘッド18を有する。これらサーマルヘッド17,18に対し、プラテンローラ20,21が回転可能に圧接されている。
【0022】
サーマル用紙4は、サーマルヘッド17,18とプラテンローラ20,21で挟持されながら、サーマルヘッド17,18によって両面に情報がプリントされる。切断部8は、ロータリーカッタ23を有し、そのロータリーカッタ23を回転によってサーマル用紙を切断する。この切断片がステートメント用紙となる。このステートメント用紙は、フィードローラ対14により第2搬送部10に送られる。
【0023】
プラテンローラ20,21、ロータリーカッタ23、フィードローラ対14の駆動用としてモータ25が設けられている。また、搬送ローラ対11a〜11e、出入ローラ対12、フィードローラ対15の駆動用として、モータ26が設けられている。
【0024】
このようなプリント装置1において、用紙セット部3、第1搬送部5、及びその周辺部によりサーマル用紙4を搬送しながらそのサーマル用紙へのプリントを行うステートメントプリンタSTが構成される。
【0025】
フィードローラ対15、第2搬送部10及びその周辺部により通帳Tを搬送しながらその通帳Tへのプリントを行いつつ、ステートメントプリンタSTのプリント時にサーマル用紙の搬送も行うパスブックプリンタPBが構成される。
【0026】
このプリント装置1の制御回路の構成例を図2に示す。ステートメントプリンタSTの制御用及びパスブックプリンタPBの制御用として制御部30が設けられる。この制御部30にステートメントプリンタSTの構成部品及びパスブックプリンタPBの構成部品がそれぞれ接続される。更に制御部30に上位装置31が接続される。
【0027】
制御部30は、用紙センサ28の駆動制御用として、例えば図3に示すセンサ回路を有している。このセンサ回路では、CPU40に、制御プログラム記憶用のROM41、データ記憶用のRAM42、用紙センサ28に対する駆動信号出力用のD/A(デジタル/アナログ)コンバータ43、及び用紙センサ28に対する駆動信号を操作するための操作部44が接続される。
【0028】
D/Aコンバータ43は、用紙センサ28に対する動作電流設定用の直流電圧をCPU40からの指令に応じて出力すると共に、用紙判定用の基準電圧VsをCPU40からの指令に応じて出力する。動作電流設定用の直流電圧は、オペアンプ44で増幅され、かつ抵抗45を介して、NPN型トランジスタ46のベース・エミッタ間に印加される。
【0029】
用紙センサ28は、サーマル用紙4が搬送される搬送路6bを挟んで対向する発光素子、たとえば発光ダイオード28a及び受光素子たとえばフォトトランジスタ28bから成る。発光ダイオード28aのアノードは直流電圧5Vの正側端子に接続され、発光ダイオード28aのカソードは上記トランジスタ46のコレクタ・エミッタ間及び抵抗47を介してアースされる。
【0030】
フォトトランジスタ28bのコレクタは抵抗48を介して直流電圧5Vの正側端子に接続され、フォトトランジスタ28bのエミッタはアースされる。このフォトトランジスタ28bのコレクタに生じる電圧が、フォトトランジスタ28bの出力電圧Vとして、比較器49の負側入力端に入力されるとともに、CPU40に供給される。
【0031】
比較器49の正側入力端には、上記CPU40から出力される、予め定められた所定の基準電圧Vs(図示せず)が入力される。また、比較器49の出力端が抵抗50を介して直流電圧3.5Vの正側端子に接続され、その出力端と抵抗50との相互接続点がCPU40に接続される。比較器49は、フォトトランジスタ28bの出力電圧Vと基準電圧Vsとを比較し、出力電圧Vが基準電圧Vs以下に低下したとき、サーマル用紙4がある旨の低レベルの電圧信号を出力する。
【0032】
次に、用紙センサ28の調整方法について説明する。上記説明では、発光素子の入力電流と受光素子の出力電圧を所定間隔でサンプリングする例について説明したが、ここでは、図3に示す回路構成に基づいて具体的説明する。
【0033】
初めに、発光ダイオード28aとフォトトランジスタ28bとの間にサーマル用紙4をセットしておき、操作部44の操作により、調整モードを設定する。すると、CPU40からD/Aコンバータ43への指令により、D/Aコンバータ43から動作電流設定用の直流電圧が出力されてその電圧レベルが徐々に増大していく。この直流電圧は、オペアンプ44で増幅されてトランジスタ46のベース・エミッタ間に印加される。トランジスタ46は、印加されるベース・エミッタ間電圧の増大に伴い、導通度が増えていく。トランジスタ46の導通度が増えていくのに伴い、発光ダイオード28aに流れる動作電流Iが零から徐々に増大していく。このときの動作電流Iの増大に伴うフォトトランジスタ28bの出力電圧Vの変化を図4の特性曲線51に示す。これを、動作電流増大−出力電圧減少曲線又は第1の特性という。
【0034】
すなわち、発光ダイオード28aに流れる動作電流I(mA)が零から徐々に増大していくのに伴い、発光ダイオード28aの発光量が増えていく。発光量が増えていくと、やがて、光がサーマル用紙4を透過し、その透過光がフォトトランジスタ28bに届くようになる。
【0035】
光がサーマル用紙4を透過しないうちは、フォトトランジスタ28bまで光が届かないため、フォトトランジスタ28bはオフの状態であり、出力電圧Vは高レベルを維持する。この出力電圧Vは基準電圧Vmよりも高く、よって比較器49の出力は低レベルとなる。
【0036】
サーマル用紙4を透過した光がフォトトランジスタ28bに届くと、フォトトランジスタ28bがオンの状態となり、フォトトランジスタ28bの出力電圧Vが下降していく。この出力電圧Vが基準電圧Vm以下になると、比較器49の出力が高レベルとなる。
【0037】
CPU40は、比較器49の出力電圧Vを監視しており、出力電圧Vが下降を始めて予め定められている受光レベルVx以下になると、そのときの動作電流Iを動作電流設定用の直流電圧の出力制御から把握し、把握した動作電流IをI1(図示せず)としてRAM42に記憶する(第1手順)。また、CPU40は、出力電圧Vが受光レベルVx以下となる直前の出力電圧Vを、V1としてRAM42に記憶する(第2手順)。
【0038】
続いて、発光ダイオード28aとフォトトランジスタ28bとの間からサーマル用紙4を取り除き、その状態で、操作部44の操作により、調整モードの継続を設定する。すると、CPU40からD/Aコンバータ43に送られる指令により、D/Aコンバータ43から出力されている動作電流設定用の直流電圧が徐々に減少していく。これに伴い、トランジスタ46の導通度が減っていき、発光ダイオード28aに流れる動作電流Iが徐々に減少していく。このときの動作電流Iの減少に伴うフォトトランジスタ28bの出力電圧Vの変化(入力電流減少出力電圧増大曲線又は第2の特性)を図4の特性曲線52に示す。
【0039】
すなわち、発光ダイオード28aに流れる動作電流Iが徐々に減少していくのに伴い、発光ダイオード28aの発光量が減っていく。発光量が減っていくと、やがて、光がフォトトランジスタ28bに届かなくなる。
【0040】
光がフォトトランジスタ28bに届いているうちは、フォトトランジスタ28bがオンの状態であり、フォトトランジスタ28bの出力電圧が低レベルを維持する。
【0041】
光がフォトトランジスタ28bに届かなくなると、フォトトランジスタ28bがオフの状態となり、フォトトランジスタ28bの出力電圧が高レベルとなる。
【0042】
CPU40は、出力電圧Vを監視しており、発光ダイオードの動作電流Iとその時の出力電圧Vの関係をRAM42に記憶する。
【0043】
また、出力電圧Vが予め定められている非受光レベルVy以上になると、そのときの動作電流Iを動作電流設定用の直流電圧の出力制御から把握し、把握した動作電流IをI2(図示せず)としてRAM42に記憶する。また、CPU40は、出力電圧Vが非受光レベルVy以上となる直前の出力電圧Vを、V2としてRAM42に記憶する。
【0044】
こうして、I1,V1,I2,V2を記憶すると、CPU40は、発光ダイオード28aの通常動作時の動作電流IをI1,I2の範囲内に設定し、かつフォトトランジスタ28bの出力電圧Vに対する用紙判定用の基準電圧VsをV1,V2の範囲内に設定する。具体的には、発光ダイオード28aの通常動作時の動作電流IをI1とI2の中間値である(I1+I2)/2に設定し、かつフォトトランジスタ28bの出力電圧Vに対する用紙判定用の基準電圧VsをV1,V2の中間値である(V1+V2)/2に設定する。
【0045】
この設定により、発光ダイオード28aとフォトトランジスタ28bとの間にサーマル用紙4が有るか無いかを、サーマル用紙4の厚さに合わせて適正に検知することができる。
【0046】
CPU40は、設定した通常動作時の動作電流I及び用紙判定用の基準電圧Vsのデータを、調整モードの設定に際してセットされたサーマル用紙4の種類・名称・型番等に対応付けて、RAM42内の用紙データベースに登録する。この登録をもって調整モードの終了となる。
【0047】
用紙データベースには、種々のサーマル用紙4を含む複数の紙葉類に合わせた動作電流I及び基準電圧Vsのセットを登録しておくことができる。
【0048】
一方、CPU40は、通常時、上位装置31から特定の紙葉類が指定されると、その指定された紙葉類に対応する動作電流I及び基準電圧Vsを用紙データベースから読み出し、それを用紙センサ28に対し設定する。
【0049】
次に、先に説明した図5の特性となる場合、すなわち受光素子と発光素子が近接しているために図5に示すような特性(詳細特性)となる場合について説明する。
【0050】
この場合のプリント装置のブロック構成例を図6に示す。サーマル用紙4の搬送路を挟んで発光素子61aと受光素子61pが対向して設けられる。発光素子61aに供給される電流は動作電流変更部62から制御される。サーマル用紙4をセットした状態で、発光素子61aの動作電流を徐々に増大させる。実際には、0〜255のデジタル値を発光素子61aに送って対応する電流を流すことになる。そして、8レベル毎にこのデジタル値を加えていき、動作電流を増加させる。
【0051】
出力電圧検知部63は受光素子61pで受光した光に対応する電圧を検知し、特性記憶部64に送る。発光素子61aの動作電流も特性記憶部64に入力されており、発光素子61aの動作電流Iと受光素子61pの出力電圧Vが特性記憶部64に記憶される。
【0052】
サーマル用紙4を介在させた状態で、動作電流変更部62の動作電流は、CPU65から制御され、発光素子61aの動作電流を所定サンプリング間隔で順次、増大する方向に発光素子61aに送られると、図4の入力電流増加−出力電圧減少の特性曲線51が得られる。
【0053】
次に、発光素子61aと受光素子61pの間のサーマル用紙4を取り除いた状態にする。CPU65は操作部60により制御される。そして、CPU65の制御のもとに、動作電流変更部62において所定のサンプリング間隔で発光素子61aの動作電流を減少させていき、受光素子61pの出力電圧を出力電圧検知部63で検知する。この時の発光素子61aと受光素子61pの出力電圧の特性は特性記憶部64に記憶される。この特性は図4に示す入力電流減少−出力電圧増大特性曲線52のサンプリングデータとして特性記憶部64に記憶されることになる。これらの入力電流増加−出力電圧減少曲線(第1の特性曲線又は第1の特性)51、入力電流減少−出力電圧増大曲線(第2の特性曲線又は第2の特性)52を基本特性曲線という。
【0054】
プリント装置の発光素子61aと受光素子61pが近接して設けられているときには、図5に示すような特性(詳細特性)のサンプリングデータが得られる。このときのサンプリング動作を図7及び図8により詳しく説明する。
【0055】
図8のA801において、隣接出力電圧値の差が大きい区間を調べて、その区間における発光素子61aの動作電流を求める。隣接出力電圧値の差が大きい区間とは、例えば図7に示すサンプル点71とサンプル点72の間である。この区間SPGでは、出力電圧値差OVDは比較的大きい。
【0056】
その区間の発光素子の動作電流を調べる。これは、図4図5を比較すれば理解されるように、受光素子のオフとオンの変化点が、発光素子の動作電流が小さい位置にくるか否かを調べることになる。直観的には発光素子と受光素子が近いために発光素子の動作電流を上げるとすぐに、受光素子がオン状態になってしまうことを意味する。
【0057】
実際には所定の動作電流閾値Ishと比較してこの閾値より低いかどうかを調べる。動作電流値が低いということは図5に示すような特性となっていることを意味する。動作電流値Ishは、受光素子のオフからオンあるいはオンからオフへの変化開始点でも変化終了点でもよい。
【0058】
この場合には、サンプリング間隔を狭くして、発光素子の動作電流と受光素子の出力電圧の特性を調べないと、用紙の有無を検知するために適切で十分な特性が得られない。
【0059】
出力電圧比較部66は、隣接する出力電圧の値の変化の大きさ(OVD)を検知する。この値は特性検知部67に入力され、そのときの発光素子の動作電流値を調べる。動作電流値が所定電流閾値Ishより小さければ図5に示すような特性となっていることが検知される。
【0060】
このときには、特性検知部67により、図5に示すような特性が得られたことが検知される。この場合にはCPU65は、サンプリング間隔方向決定部68で、サンプリングの間隔と方向を決めて、CPU65から再び動作電流変更部62に電流値の指示を与える。出力電圧比較部66、特性検知部67及びサンプリング間隔方向決定部68は、特性補完部を構成する。詳細特性は、前記第1の特性及び前記第2の特性から補完して求められている。
【0061】
発光素子の動作電流が小さいことが判明した(A802でY)ら、A803では動作電流の中間の値を発光素子の動作電流とする。図7に示す場合、サンプル点71とサンプル点72の間の動作電流差をSPGとすれば、サンプル点71の動作電流値にSPG/2の値を加算した値を発光素子の動作電流として動作電流変更部62から発光素子61aに送る。実際には、0〜255までのデジタル値で発光素子の動作電流を制御する、とすると、デジタル値を+8の半分の+4を加えることを意味する。
【0062】
A804で、このときの受光素子61pの出力電圧は出力電圧検知部63に得られ、特性記憶部64に記憶される。これは特性記憶部に先に記憶された特性曲線の中間のポイント(図7におけるサンプル点73)の動作電流と出力電圧がプロットされることを意味する。
【0063】
次のA805において、サンプル点73を中心として両側の出力電圧値の差を比較する。サンプル点73とサンプル点71及びサンプル点73とサンプル点72との出力電圧値の差を見ると、後者の方が大きい、すなわち右側の電圧値差のほうが大きい(A805でY)。そこで、次のA806で更にSPG/4の電流値を加算して、次のA807で、出力電圧検知部63においてその時の受光素子の出力電圧値を求める。
【0064】
なお、もしサンプル点73とサンプル点71の間、サンプル点73とサンプル点72の間の出力電圧差を比較して前者の方すなわち左側の出力電圧差が大きい場合には、サンプル点73より左側に発光素子のオフからオンへの変化開始が起きていることを意味する。この場合にはA808で、サンプル点73の発光素子の動作電流値からSPG/4の値を減算してその動作電流値に対応する出力電圧値を求める(A807)。
【0065】
次のA809では、特性曲線のプロットが、特に発光素子のオフからオンへの必要な精度にまでなされたら、上記特性曲線を求める作業は終了する。その精度まで達していない場合には、A803に戻って同様の処理を進める。
【0066】
このように、いわゆる二分木法により、発光素子の特性がオフからオンへ変化するあたりの特性を詳しくプロットすることにより、効率的にしかも必要な部分では詳細な特性曲線が得られる。
【0067】
上記実施形態では、図5の入力電流増加−出力電圧減少曲線55の場合について説明した。しかし、同様に入力電流減少−出力電圧増大曲線56の場合にも同様に適用できる。この場合にも出力電圧値の差が大きい側について調べていくことにより、詳細な特性曲線が得られる。これを詳細特性曲線という。
【0068】
したがって、用紙センサ28の検知対象として、通帳、サーマル用紙、普通紙など、厚さの異なる種々の紙葉類が用いられる状況であっても、常に誤検知のない適正な紙葉類有無検知が可能である。
【0069】
実施形態によれば、発光素子と受光素子が近接して設けられた場合にも、紙葉類有無の適切な閾値を設定可能な紙葉類有無検知装置及び紙葉類有無検知方法が得られる。
【0070】
なお、上記実施形態では、用紙センサの調整についてのみ説明したが、通帳センサの調整についても同様に実施可能である。また、ステートメントプリンタST及びパスブックプリンタPBからなるプリント装置でサーマル用紙に印字する例について説明した。
【0071】
しかし、サーマル用紙に限られず、複写機やファクシミリ装置など、一般的には紙葉類を光学的に検知する紙葉類センサを有するものであれば、他の装置や機器にも同様に適用可能である。
【0072】
上記実施形態では、第2のサンプリング間隔が第1のサンプリング間隔の1/2である場合について述べた。しかし、これに限られず、一般的には、第2のサンプリング間隔が第1のサンプリング間隔より間隔が小さければよい。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
61a・・・・発光素子
61p・・・・受光素子
63・・・・・出力電圧検知部
62・・・・・動作電流変更部
64・・・・・特性記憶部
65・・・・・CPU
66・・・・・出力電圧比較部
67・・・・・特性検知部
68・・・・・サンプリング間隔方向決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8