(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の各実施例のシューズでは、一対のマグネットテープまたは一対のマグネットボタンにより緊締部がアッパー本体に固定されているため、一対のマグネットテープまたは一対のマグネットボタンには、シューズの使用状態においても緊締部がアッパー本体から離間しない程度の十分な吸着力を与える必要がある。その一方で、使用者がシューズを脱ぐ際に緊締部をアッパー本体から離間させる場合には、マグネットテープおよびマグネットボタンの吸着力が十分であるため、一対のマグネットテープおよび一対のマグネットボタンを引き剥がす力は大きくなる。このため、シューズを脱ぐ際に緊締部をアッパー本体から離間するのが困難となる場合があるという問題点がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、シューズ装着時にアッパー本体と緊締部とを十分な強度で固定するとともに、シューズを脱ぐ際に緊締部をアッパー本体から容易に離間させることが可能なシューズのアッパーおよびシューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一の局面によるシューズのアッパーは、足を挿入するための開口部を含むアッパー本体と、少なくともその一端がアッパー本体と着脱可能に構成され、 使用者の足をアッパー本体にフィットさせる柔軟性を有する素材からなる緊締部と、緊締部に設けられた複数の第1磁性部材と、緊締部をアッパー本体に装着する際におけるアッパー本体の第1磁性部材と対向する位置に設けられ、複数の第1磁性部材と吸着することにより、緊締部をアッパー本体に固定する第2磁性部材とを備え、複数の第1磁性部材は、規則性を持って配置されている。
【0008】
このシューズのアッパーでは、上記のように、柔軟性を有する素材からなる緊締部に設けられた複数の第1磁性部材を、規則性を持って配置することによって、1つ当たりの第1磁性部材の磁力が小さい場合にも、複数の第1磁性部材が配置されることにより、吸着面積を大きくすることができるので、使用者のシューズの装着時にアッパー本体と緊締部とを十分な強度で固定することができる。また、使用者がシューズを脱ぐ場合において、緊締部を第1磁性部材の配置の規則に従ってアッパー本体から引き剥がす場合に、まず、規則的に配置された所定の第1磁性部材が第2磁性部材から引き剥がされる。この場合に、当該第1磁性部材とそれに隣接する第1磁性部材との間の緊締部が屈曲するので、剥がれた第1磁性部材と第2磁性部材とは互いの引力が及ぼしにくくなる。これにより、規則的に配置された第1磁性部材を一つずつ順番に別個に第2磁性部材から離間させることができるので、緊締部をアッパー本体から離間させることが容易になる。その結果、装着時にアッパー本体と緊締部とを十分な強度で固定するとともに、脱ぐ際に緊締部をアッパー本体から容易に離間させることができる。
【0009】
また、上記シューズのアッパーにおいて、好ましくは、第2磁性部材は、複数の第1磁性部材と相補的に吸着しあうようにアッパー本体に複数配置されている。このように構成すれば、複数の第1磁性部材と第2磁性部材とを一対一の対応で互いに吸着させることができるので、緊締部をアッパー本体に装着させる際の位置決めが容易になる。
【0010】
また、上記シューズのアッパーにおいて、好ましくは、複数の第1磁性部材は、それぞれ、緊締部が延びる方向と交差する方向に沿って隣接するように配置されている。このように構成すれば、緊締部が延びる方向と交差する方向に沿う範囲で、緊締部をアッパー本体に対して強固に固定させることができる。
【0011】
また、上記シューズのアッパーにおいて、好ましくは、複数の第1磁性部材は、それぞれ、細長形状に形成されており、複数の第1磁性部材のうち一の第1磁性部材の長手方向の端部が、他の第1磁性部材の長手方向の端部と隣接するように配置されている。このように構成すれば、第1磁性部材を長手方向に沿って並べることができるので、緊締部の長い範囲に渡って第1磁性部材と第2磁性部材とを吸着させることができる。
【0012】
また、上記細長形状に形成された第1磁性部材を備えるシューズのアッパーにおいて、好ましくは、複数の第1磁性部材は、複数の第1磁性部材の長手方向に沿って略直線状に配置されている。このように構成すれば、緊締部のより長い範囲に渡って第1磁性部材と第2磁性部材とを吸着させることができる。
【0013】
また、上記細長形状に形成された第1磁性部材を備えるシューズのアッパーにおいて、好ましくは、複数の第1磁性部材のうち所定の第1磁性部材と他の第1磁性部材とは、各々の長手方向の延びる方向が平行になるように配置されている。このように構成すれば、第1磁性部材が平行に配置される分、第1磁性部材を線上のみならず面状で配置することができるので、第1磁性部材を第2磁性部材に対してより強固に吸着させることができる。
【0014】
また、上記シューズのアッパーにおいて、好ましくは、複数の第1磁性部材は、それぞれ、磁極を有する複数の第1磁石部材であり、第1磁石部材と対向する第2磁性部材は、それぞれ、第1磁性部材の磁極と反対の磁極になるように配置された第2磁石部材である。このように構成すれば、複数の第1磁性部材のうち所定の第1磁性部材とそれに対向する第2磁性部材とを、位置ずれを抑制しながら互いに吸着させることができるので、緊締部のアッパー本体に対する位置決めが容易になる。
【0015】
また、上記本発明のシューズのアッパーにおいて、好ましくは、複数の第1磁性部材および複数の第2磁性部材は、それぞれ、ネオジム磁石を有する。このように構成すれば、第1磁性部材および第2磁性部材を、比較的磁力の大きいネオジム磁石により、コンパクト化しながら十分な吸着力を確保することができる。
【0016】
また、本発明の別の局面によるシューズは、本発明のシューズのアッパーと、シューズのアッパーが取り付けられたソールとを備える。このように構成すれば、装着時にアッパー本体と緊締部とを十分な強度で固定するとともに、脱ぐ際に緊締部をアッパー本体から容易に離間させることが可能なシューズを得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るシューズのアッパーによれば、柔軟性を有する素材からなる緊締部に設けられた複数の第1磁性部材を、規則性を持って配置することによって、1つ当たりの第1磁性部材の磁力が小さい場合にも、複数の第1磁性部材が配置されることにより、吸着面積を大きくすることができるので、使用者のシューズの装着時にアッパー本体と緊締部とを十分な強度で固定することができる。また、使用者がシューズを脱ぐ場合において、緊締部を第1磁性部材の配置の規則に従ってアッパー本体から引き剥がす場合に、まず、規則的に配置された所定の第1磁性部材が第2磁性部材から引き剥がされる。この場合に、当該第1磁性部材とそれに隣接する第1磁性部材との間の緊締部が屈曲するので、剥がれた第1磁性部材と第2磁性部材とは互いの引力が及ぼしにくくなる。これにより、規則的に配置された第1磁性部材を一つずつ順番に別個に第2磁性部材から離間させることができるので、緊締部をアッパー本体から離間させることが容易になる。その結果、装着時にアッパー本体と緊締部とを十分な強度で固定するとともに、脱ぐ際に緊締部をアッパー本体から容易に離間させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜
図5と
図11〜
図14を参照して、本発明の一実施形態によるシューズのアッパー1を備えるシューズ100の構造を説明する。
【0020】
図1に示すように、シューズ100は、シューズのアッパー1と、シューズのアッパー1が取り付けられたソール2とを備えている。ソール2は、軟質弾性部材から構成されている。たとえば、ソール2は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂やその発泡体、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂やその発泡体、または、ブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材やその発泡体により構成されている。
【0021】
シューズのアッパー1は、足を挿入するための開口部11を含むアッパー本体10と、アッパー本体10と一端が着脱可能に構成された緊締部20とを備えている。また、シューズのアッパー1は、
図2に示すように、緊締部20に設けられた複数の磁石部材30a〜30fと、緊締部20をアッパー本体10に装着する際におけるアッパー本体10の磁石部材30a〜30fと対向する位置に設けられ、複数の磁石部材30a〜30fと吸着する磁石部材40a〜40fとをさらに備えている。なお、磁石部材30a〜30fは、それぞれ、本発明の「第1磁性部材」および「第1磁石部材」の一例であり、磁石部材40a〜40fは、それぞれ、本発明の「第2磁性部材」および「第2磁石部材」の一例である。なお、本実施形態では、本発明の「第1磁性部材」および「第2磁性部材」の両方を磁石により構成した例について説明しているが、本発明では、「第1磁性部材」および「第2磁性部材」のいずれか一方が磁極を有する磁石で、いずれか他方が、たとえば、磁性を有する金属である鉄、クロム、ニッケルなどにより構成されていてもよい。
【0022】
アッパー本体10は、たとえば、繊維編み物および合成皮革などの素材を含んでおり、使用者の足に適度にフィットおよびホールドするように構成されている。また、アッパー本体10の開口部11は、
図1および
図2に示すように、アッパー本体の踵側から足先側に延びる長穴形状を有している。具体的には、開口部11の前端部は、使用者が装着した場合に、中足骨の前端に対応する部分に位置している。これにより、使用者は、緊締部20をアッパー本体10から離間させた際に、開口部11の前端部に障害物が存在しないので、開口部11に足を挿入または脱離することが容易となる。
【0023】
また、
図2に示すように、アッパー本体10の外甲側には、上述した複数の磁石部材40a〜40fが設けられている。複数の磁石部材40a〜40fは、それぞれ、細長の四角柱形状を有しており、ほぼ同一の寸法を有している。また、
図4および
図5に示すように、複数の磁石部材40a〜40fは、それぞれ、長手方向の一方端側がS極で、他方端側がN極の磁極を有する。また、複数の磁石部材40a〜40fは、それぞれ、ネオジム磁石からなる。
【0024】
緊締部20は、
図2および
図3に示すように、その一方端20a(
図3参照)がアッパー本体10の内甲側に取り付けられており、その他方端20bは自由端になっている。この緊締部20は、
図1に示すように、緊締部20の他方端20bがアッパー本体10の外甲側に配置された場合に、開口部11の爪先側の一部を覆うように構成されている。また、緊締部20は、緊締部20がアッパー本体10に固定された場合に、使用者の足をアッパー本体10にフィットさせる柔軟性を有する素材からなる。また、緊締部20は、緊締部20がアッパー本体10に固定された場合に、使用者の足甲をホールドするとともに足甲を覆う舌部の機能を有する。
【0025】
また、緊締部20には、緊締部20をアッパー本体10に対して装着または離間させる際に、使用者が緊締部20を把持するための把持部21が設けられている。把持部21は、緊締部20の他方端20bに取り付けられている。また、把持部21は、緊締部20の素材と比べて、柔軟な素材により構成されている。つまり、使用者がシューズ100を履いて歩行する場合などにおいて、把持部21がなんらかの障害物に当たった場合にも、把持部21がその柔軟性により容易に折れ曲がり、把持部21が障害物に当たった衝撃が緊締部20に伝達し難くなっている。また、磁石部材30eおよび30fは、それぞれ、緊締部20の他方端20bの近傍に配置されており、他方端20bがアッパー本体10に対して浮き難い。その結果、他方端20bはアッパー本体10に対して浮き上がらない分、障害物に当たり難くなっている。これらにより、緊締部20がアッパー本体10から剥がれにくくなっている。また、把持部21は、踵側方向に突出するように緊締部20に設けられている。つまり、把持部21は、使用者の歩行時の進行方向とは反対方向に向かって突出するように緊締部20に設けられている。
【0026】
また、
図2に示すように、緊締部20の他方端20b側には、磁性部材収納部31および32が取り付けられている。また、磁性部材収納部31は、緊締部材20が延びる方向、すなわち足幅方向、と交差する方向に延びるように配置されている。磁性部材収納部32は、緊締部20の磁性部材収納部31の他方端20b側に磁性部材収納部31とほぼ平行に配置されている。また、磁性部材収納部31および32は、それぞれ、厚みが約0.01mm〜約0.5mmの織物、編み物、不織布やフィルムなどから成り、その外周部が緊締部20に縫い付けられている。
【0027】
磁性部材収納部31および32には、それぞれ、複数の磁石部材30a〜30d、および、磁石部材30eおよび30fが収納されている。複数の磁石部材30a〜30fは、それぞれ、複数の磁石部材40a〜40fと同様、細長の四角柱形状を有しており、ほぼ同一の寸法を有している。また、
図4および
図5に示すように、複数の磁石部材30a〜30fは、それぞれ、長手方向の一方端側がS極で、他方端側がN極の磁極を有する。また、複数の磁石部材30a〜30fは、それぞれ、ネオジム磁石からなる。なお、本実施形態に用いるネオジム磁石については、後に詳述する。
【0028】
磁石部材30a〜30dは、
図4に示すように、磁性部材収納部31に収納されており、緊締部20の踵側から爪先側に向かって順番に直線的に配置されている。また、磁石部材30eおよび30fは、
図5に示すように、磁性部材収納部32に収納されており、緊締部20の踵側から爪先側に向かって順番に直線的に配置されている。このように、磁石部材30a〜30fは、それぞれ、緊締部20が延びる方向と交差する方向に沿って隣接するように配置されている。また、
図4に示すように、磁石部材30a〜30dは、それぞれ、複数の磁石部材30a〜30dのうち一の磁石部材30a〜30d(たとえば磁石部材30a)の長手方向の端部が、他の磁石部材30a〜30d(たとえば磁石部材30b)の長手方向の端部と隣接するように配置されている。そして、磁石部材30a〜30dは、それぞれ、向かい合う磁極が異なる磁極になるように磁性部材収納部31に収納されている。また、隣り合う磁石部材30a〜30dは、互いに吸着された状態で磁性部材収納部31の内部に収納されている。また、
図5に示すように、磁石部材30eおよび30fは、磁石部材30eおよび30fのうち一の磁石部材30eの長手方向の端部が、他の磁石部材30fの長手方向の端部と隣接するように配置されている。そして、磁石部材30eおよび30fは、それぞれ、向かい合う磁極が異なる磁極になるように磁性部材収納部32に収納されている。また、隣り合う磁石部材30eおよび30fは、互いに吸着された状態で磁性部材収納部32の内部に収納されている。
【0029】
上記のように、本実施形態では、本発明の第1磁性部材および第1磁石部材の一例である磁石部材30a〜30fを、磁石部材30a〜30fの長手方向に沿って略直線的に配置したが、本発明ではこれに限られない。たとえば、
図11に示す第1変形例のように、細長形状の磁石部材130a〜130dをジグザグ状に緊締部120に規則性を持って配置し、磁石部材130a〜130dと相補的に吸着しあう図示しない磁性部材をアッパー本体に設けるようにしてもよい。また、
図12に示す第2変形例のように、細長状の磁石部材230a〜230fを長手方向に沿って延びる曲線状に緊締部220に規則性を持って配置し、磁石部材230a〜230fと相補的に吸着しあう図示しない磁性部材をアッパー本体に設けるようにしてもよい。また、
図13に示す第3変形例のように、細長状の磁石部材330a〜330dを短手方向に沿ってほぼ直線状に緊締部320に規則性を持って配置し、磁石部材330a〜330dと相補的に吸着しあう図示しない磁性部材をアッパー本体に設けるようにしてもよい。
図14に示す第4変形例のように、正方形状の磁石部材430a〜430dを略直線状に緊締部420に規則性を持って配置し、磁石部材430a〜430dと相補的に吸着しあう図示しない磁性部材をアッパー本体に設けるようにしてもよい。また、正方形状などの矩形形状に限らず、三角形状の磁石部材(図示せず)や、円形形状の磁石部材(図示せず)であってもよい。
【0030】
図2に示すように、複数の磁石部材40a〜40fは、緊締部20をアッパー本体10に装着する際におけるアッパー本体10の複数の磁石部材30a〜30fと対向する位置に設けられている。つまり、複数の磁石部材40a〜40fは、複数の磁石部材30a〜30fと相補的に吸着しあうようにアッパー本体10に配置されており、緊締部20をアッパー本体10に固定する機能を有する。これら複数の磁石部材40a〜40d、および、磁石部材40eおよび40fは、それぞれ、磁性部材収納部41および42に収納されている。また、磁性部材収納部41および42は、それぞれ、厚みが約0.01mm〜約0.5mmの織物、編み物、不織布やフィルムなどから成り、その外周部がアッパー本体10に縫い付けられている。
【0031】
また、
図4および
図5に示すように、磁石部材30a〜30fと対向する磁石部材40a〜40fは、それぞれ、磁石部材30a〜30fの磁極と反対の磁極になるように配置されている。すなわち、磁石部材30a〜30fの一方側の磁極がS極である場合に、それに対向する磁石部材40a〜40fの一方側の磁極はN極になるように配置されている。このように、磁石部材30a〜30fとそれに対向する磁石部材40a〜40fとは、互いに異なる磁極になるよう配置されることにより、位置ずれすることなく互いに吸着するので、緊締部20をアッパー本体10に対して所定の正しい位置で固定することが可能である。また、磁石部材30a〜30fおよび40a〜40fは、吸引力により互いに引き合って互いに吸着するため、たとえば、面ファスナーにより緊締部をアッパー本体に固定する場合のように面ファスナーを張り合わせる動作が必要ない分、緊締部20をアッパー本体10に固定させることが容易になる。
【0032】
次に、
図2および
図4〜
図9を参照して、本実施形態におけるシューズ1の緊締部20がアッパー本体10に固定する際の動作と、緊締部20をアッパー本体10から離間させる際の動作とについて説明する。
【0033】
まず、緊締部20をアッパー本体10に装着する際の動作について説明する。
図2に示すように、緊締部20の他方端20bがアッパー本体10から離間している際に、使用者などにより把持部21が把持された状態で、他方端20bがアッパー本体10の外甲側に近づけられる。他方端20bがアッパー本体10の外甲側と所定の距離まで近づいた場合に、緊締部20に設けられた磁石部材30a〜30fとアッパー本体10に設けられた磁石部材40a〜40fとが、その引力により互いに引き合う。
図4および
図5に示すように、磁石部材30a〜30fおよび40a〜40fは、互いに反対の磁極になるように配置されているので、磁石部材30a〜30fの一方側とそれに対向する磁石部材40a〜40fの一方側とが一致するように吸着するとともに、磁石部材30a〜30fの他方側とそれに対向する磁石部材40a〜40fの他方側とが一致するように吸着する。このように、6つの磁石部材30a〜30fとそれらに対向する6つの磁石部材40a〜40fとが互いに吸着することにより、緊締部20はアッパー本体10に装着され、固定される。
【0034】
次に、緊締部20をアッパー本体10から離間させる際の動作について説明する。
図6に示すように、緊締部20の他方端20bがアッパー本体10に装着されている際に、使用者などにより把持部21が把持された状態で、把持部21はアッパー本体10から離間する方向に引っ張られる。すると、
図7に示すように、磁性部材収納部32に収納されている把持部21に最も近い磁石部材30eが、それと吸着している磁石部材40eから引き剥がされる。この場合において、緊締部20は磁石部材30eと30fとの間で屈曲し、磁石部材30eと磁石部材40eとは、互いに引き剥がされた状態のままとなる。その後、把持部21がアッパー本体10から離間する方向にさらに引っ張られると、
図5に示すように、磁石部材30eに隣接する磁石部材30fは、それと吸着している磁石部材40fから引き剥がされる。このように、緊締部20が磁石部材30eおよび30fの間で屈曲することにより、磁石部材30eおよび30fを別個に磁石部材40eおよび40fから引き剥がすことが可能となる。これにより、緊締部20をアッパー本体10から離間させる力を少なくすることが可能となる。
【0035】
磁石部材30eおよび30fが磁石部材40eおよび40fから引き剥がされた後、さらに把持部21がアッパー本体10から離間する方向に引っ張られると、
図8に示すように、磁性部材収納部31に収納されている把持部21に最も近い磁石部材30aが、それと吸着している磁石部材40aから引き剥がされる。そして、磁石部材30eおよび30fが磁石部材40eおよび40fから引き剥がされた場合と同様に、
図9に示すように、磁石部材30b、30cおよび30dが、それぞれ別個に、磁石部材40b、40cおよび40dから順番に引き剥がされる。
【0036】
次に、
図10を参照して、本実施形態によるシューズ100の緊締部20のアッパー本体10に対する固定力について説明する。
【0037】
本実施形態によるシューズ100の磁石部材30a〜30fおよび磁石部材40a〜40fは、それぞれ、上述したように、ネオジム磁石からなる。また、磁石部材30a〜30fおよび磁石部材40a〜40fは、それぞれ、厚み1.5mm、幅3.0mm、長さ10.0mmであり、1本当たりの磁力は11900ガウスを有する。また、磁石部材30a〜30fおよび40a〜40fの一対の吸着力は、垂直方向で13.78Nである。すなわち、本実施形態による磁石部材30a〜30fおよび40a〜40fの全体の吸着力は、6対分の吸着力である82.68Nである。
【0038】
図10に示すように、使用者の走行時または方向転換のステップ時に、使用者の足甲が浮くことに起因して、アッパー本体10から離間する方向に緊締部20に力が付与される。ここで、発明者らは、このような状態であっても緊締部20がアッパー本体10から離間しない磁石部材の数(固定力)を鋭意検討した結果、以下の結論に達した。
【0039】
(使用者が成人である場合)
4対の磁石部材により緊締部20とアッパー本体10とを固定した場合には、方向転換のステップ時に、まれに緊締部20がアッパー本体10から離間した。この場合において、歩行時および走行時には、緊締部20がアッパー本体10から離間することがなかった。5対の磁石部材により緊締部20とアッパー本体10とを固定した場合には、歩行時、方向転換のステップ時および走行時のいずれの場合でも、緊締部20がアッパー本体10から離間することがなかった。これにより、使用者が成人である場合には、日常の使用であれば、緊締部20をアッパー本体10に固定するのに4対の磁石部材(吸着力が55.12N)があれば十分であることがわかった。より好ましくは、緊締部20をアッパー本体10に固定するのに、5対の磁石部材(吸着力が68.90N)またはそれ以上の磁石部材を緊締部20およびアッパー本体10に設ければ十分であることがわかった。
【0040】
(使用者が幼児である場合)
1対の磁石部材により緊締部20とアッパー本体10とを固定した場合には、歩行時および走行時のいずれの場合で、まれに、緊締部20がアッパー本体10から離間することがあった。2対の磁石部材により緊締部20とアッパー本体10とを固定した場合には、緊締部20がアッパー本体10から離間することがなかった。これにより、使用者が幼児である場合には、緊締部20をアッパー本体10に固定するのに2対の磁石部材(吸着力が27.56N)を緊締部20およびアッパー本体10に設ければ十分であることがわかった。なお、本実施形態で用いた磁石部材よりも吸着力の小さい磁石部材であっても、2対の磁石部材の吸着力が約15N以上であれば、緊締部20がアッパー本体10から離間しないと考えられる。
【0041】
本実施形態では、上記のように、柔軟性を有する素材からなる緊締部20に設けられた磁石部材30a〜30fを、規則性を持って配置することによって、1つ当たりの磁石部材の磁力が小さい場合にも、複数の磁石部材30a〜30fが配置されることにより、吸着面積を大きくすることができるので、使用者のシューズ100の装着時にアッパー本体10と緊締部20とを十分な強度で固定することができる。また、使用者がシューズ100を脱ぐ場合において、緊締部20を磁石部材30a〜30fの配置の規則に従ってアッパー本体10から引き剥がす場合に、まず、緊締部20に規則的に配置された先頭の磁石部材(たとえば磁石部材30a)がアッパー本体10の磁石部材(たとえば磁石部材40a)から引き剥がされる。この場合に、磁石部材30aとそれに隣接する磁石部材30bとの間の緊締部20が屈曲するので、剥がれた磁石部材30aと磁石部材40aとは互いの引力が及ぼしにくくなる。これにより、規則的に配置された磁石部材30a〜30fを一つずつ順番に別個に磁石部材40a〜40fから離間させることができるので、緊締部20をアッパー本体10から離間させることが容易になる。その結果、装着時にアッパー本体10と緊締部20とを十分な強度で固定するとともに、脱ぐ際に緊締部20をアッパー本体10から容易に離間させることができる。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように、磁石部材40a〜40fを、磁石部材30a〜30fと相補的に吸着しあうようにアッパー本体10に配置することによって、磁石部材30a〜30fと磁石部材40a〜40fとを一対一の対応で互いに吸着させることができるので、緊締部20をアッパー本体10に装着させる際の位置決めが容易になる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、磁石部材30a〜30fを、それぞれ、緊締部20が延びる方向と交差する方向に沿って隣接するように配置することによって、緊締部20が延びる方向と交差する方向に沿う範囲で、緊締部20をアッパー本体10に対して強固に固定させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、磁石部材30a〜30dのうち一の磁石部材(たとえば磁石部材30a)の長手方向の端部を、他の磁石部材(たとえば磁石部材30b)の長手方向の端部と隣接するように配置することによって、磁石部材30a〜30dを長手方向に沿って並べることができるので、緊締部20の長い範囲に渡って磁石部材30a〜30dと磁石部材40a〜40dとを吸着させることができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、磁石部材30a〜30fのうち磁石部材30a〜30dと磁石部材30eおよび30fとを、各々の長手方向の延びる方向が平行になるように配置することによって、磁石部材30a〜30fを線上のみならず面状で配置することができるので、磁石部材30a〜30fを磁石部材40a〜40fに対してより強固に吸着させることができる。
【0046】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0047】
たとえば、上記実施形態では、本発明のシューズに設けられる第1磁性部材および第2磁性部材の一例として、ネオジム磁石からなる磁石部材を用いた例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1磁性部材および第2磁性部材の一例として、サマコバ磁石やフェライト磁石を用いても良い。
【0048】
また、上記実施形態では、磁石部材30a〜30fを、緊締部20が延びる方向と交差する方向に沿って隣接するように配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁石部材30a〜30fを、緊締部20が延びる方向に沿って隣接するように配置してもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、緊締部20の固定端20aをアッパー本体10の内甲側に設けるとともに、磁石部材40a〜40fをアッパー本体10の外甲側に配置した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、緊締部の固定端をアッパー本体の外甲側に設けるとともに、磁石部材をアッパー本体の内甲側に配置するようにしてもよい。また、緊締部に固定端を設けずに、緊締部の内甲側および外甲側の両方に磁性部材を設けて、緊締部の両端を磁性部材によりアッパー本体に固定するようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、磁石部材30a〜30fおよび磁石部材40a〜40fを、それぞれ、6対設けた例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、使用者の使用に耐える固定力であれば、2対以上の磁石部材を設ければよい。
【0051】
また、上記実施形態では、隣り合う磁石部材30a〜30fを、互いに吸着させた状態で隣接するように緊締部に配置した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、隣り合う磁石部材を吸着させない状態で緊締部に配置するようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、本発明のシューズに設けられる第2磁性部材の一例として、磁石部材30a〜30fと相補的に吸着しあう磁石部材40a〜40fを用いた例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2磁性部材として、鉄やクロムなどからなる1枚の金属プレートを用いてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、磁石部材30a〜30fおよび磁石部材40a〜40fの長手方向の両端で磁極が異なる磁石を用いた例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁石部材の吸着面全面をS極またはN極のいずれか一方の磁極を有するようにし、対向する磁石部材の吸着面全面をS極またはN極のいずれか他方の磁極を有するようにしてもよい。