(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の縦フレーム材および上下端の横フレーム材により組まれた外周フレームと、この外周フレームの前記一対の縦フレーム材に渡り上下に並んで配置された中桟となる複数本の横フレーム材と、上下に隣合う前記横フレーム材に上下端が結合された耐力要素とを備え、前記中桟となる横フレーム材を境界として上下に並ぶ複数の区画層に区画され、各区画層に前記耐力要素が設けられた耐力壁において、
前記各横フレーム材と前記縦フレーム材との接合部がピン接合であり、
一部の区画層に設けられた前記耐力要素がこの区画層を覆う面材であり、他の一部の区画層に設けられた前記耐力要素がブレースであり、前記ブレースが設けられた区画層に、この区画層の変形を吸収する変形吸収手段が設けられ、前記ブレースが設けられた区画層は、前記変形吸収手段が存在することで、前記面材が設けられた区画層と同様の剛性であることを特徴とする耐力壁。
請求項1に記載の耐力壁において、前記各横フレーム材と前記縦フレーム材との前記ピン接合の接合部は、前記横フレーム材と前記縦フレーム材との間に作用する曲げモーメントを吸収する変形域を有する耐力壁。
請求項1または請求項2に記載の耐力壁において、前記横フレーム材と前記縦フレーム材との前記ピン接合の接合部は、下向きまたは上向きの断面L字形の変形許容接合金物の縦片を前記縦フレーム材の耐力壁幅方向の中央側を向く面に接合し、前記接合金物の横片を、変形を許容する変形域となる長さだけ角部から開けて残り部分を前記横フレーム材に接合した接合構造である耐力壁。
請求項1または請求項2に記載の耐力壁において、前記横フレーム材と前記縦フレーム材との前記ピン接合は、溝形またはリップ溝形である開放断面形状の変形許容接合金物を、開口側を前記縦フレーム材側に向けて前記縦フレーム材の耐力壁幅方向の中央側を向く面に溶接で接合し、前記変形許容接合金物の背面に前記横フレーム材の端部を溶接で接合した接合構造である耐力壁。
請求項1または請求項2に記載の耐力壁において、前記横フレーム材と前記縦フレーム材との前記ピン接合の接合部は、前記縦フレーム材の前記横フレーム材を接合する側面に平板からなる変形許容接合金物を重ねて溶接し、この変形許容接合金物に前記横フレーム材の端面を溶接し、前記変形許容接合金物は、前記横フレーム材の外周に張り出し、前記変形許容接合金物の前記縦フレーム材へ前記溶接を施す箇所を横幅方向両端のみまたは上下両端のみした接合構造である耐力壁。
請求項1または請求項2に記載の耐力壁において、前記横フレーム材と前記縦フレーム材との前記ピン接合の接合部は、前記横フレーム材の断面の高さ方向における上下端を除く箇所を、前記縦フレーム材に直接にまたは接合プレートを介して溶接し、前記横フレーム材の端面における上下端と前記縦フレーム材との間に、前記縦フレーム材に対する前記横フレーム材の上下方向の傾きを許容する隙間を有する接合構造である耐力壁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例の場合、縦フレーム材と横フレーム材との接合に剛接合を採用しているので、耐力壁全体の剛性が高くなり耐力も高くなるが、縦フレーム材については横フレーム材からの曲げモーメントを受けるため、負担できる軸力が低減されるという問題がある。このため、高い軸力負担が必要とされる3階建て以上の建物には不向きとなる。
【0005】
この発明の目的は、横フレーム材から縦フレーム材に伝わる曲げモーメントの影響を最小限に抑え、縦フレーム材に高い軸力を負担させることができる耐力壁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の耐力壁は、一対の縦フレーム材および上下端の横フレーム材により組まれた外周フレームと、この外周フレームの前記一対の縦フレーム材に渡り上下に並んで配置された中桟となる複数本の横フレーム材と、上下に隣合う前記横フレーム材に上下端が結合された耐力要素とを備え
、前記中桟となる横フレーム材を境界として上下に並ぶ複数の区画層に区画され、各区画層に前記耐力要素が設けられた耐力壁において、
前記各横フレーム材と前記縦フレーム材との接合部
がピン接合
であり、
一部の区画層に設けられた前記耐力要素がこの区画層を覆う面材であり、他の一部の区画層に設けられた前記耐力要素がブレース
であり、前記ブレース
が設けられた区画層に、この区画層の変形を吸収する変形吸収手段が設けられ、前記ブレース
が設けられた区画層は、前記変形吸収手段が存在することで、前記面材が設けられた区画層と同様の剛性であること特徴とする。
なお、この明細書で言う「ピン接合」とは、節点を構造力学上で剛接合とピン接合に分類したうちの、ピン接合と見做せる接合を言うものとする。
【0007】
この構成の耐力壁によると、上下に隣合う横フレーム材に渡り耐力要素が結合されているため、前記耐力要素によって水平方向の剛性が高められ、耐力壁として機能する。この場合に、横フレーム材と縦フレーム材との接合部がピン接合とされているので、その接合部を例えば溶接による剛接合とした場合に比べて、横フレーム材から縦フレーム材に伝わる曲げモーメントの影響を最小限に抑えることができる。そのため、縦フレーム材に高い軸力を負担させることができる。
【0008】
この発明において、前記各横フレーム材と前記縦フレーム材との前記ピン接合の接合部は、前記横フレーム材と前記縦フレーム材との間に作用する曲げモーメントを吸収する変形域を有するようにしても良い。
この構成の場合、前記変形域で前記横フレーム材と前記縦フレーム材との間に作用する曲げモーメントを吸収することで、前記接合部がピン接合となる。このため、接合の形態は溶接であっても、また複数のボルトを用いた構成であってもピン接合となる。
【0009】
この発明において、前記横フレーム材と前記縦フレーム材との前記ピン接合の接合部は、下向きまたは上向きの断面L字形の変形許容接合金物の縦片を前記縦フレーム材の耐力壁幅方向の中央側を向く面に接合し、前記接合金物の横片を、変形を許容する変形域となる長さだけ角部から開けて残り部分を前記横フレーム材に接合した接合構造であっても良い。
【0010】
この構成によると、断面L字形の変形許容接合金物を用い、この接合金物の横片を、変形域となる長さだけ角部から開けて残り部分を前記横フレーム材に接合した接合構造であるため、前記接合部での曲げ剛性が小さく、大きな変形でも前記変形域の損傷が小さい。そのため、例えば、住宅等の建物で変形を許容することが望ましいとされる1/15radの大変形を経験した後でも、軽微な補修で元の形状に戻るように構成できる。
【0011】
この発明において、前記横フレーム材と前記縦フレーム材との前記ピン接合は、溝形またはリップ溝形である開放断面形状の変形許容接合金物を、開口側を前記縦フレーム材側に向けて前記縦フレーム材の耐力壁幅方向の中央側を向く面に溶接で接合し、前記変形許容接合金物の背面に前記横フレーム材の端部を溶接で接合した接合構造であっても良い。 この構成の場合、溝形またはリップ溝形の変形許容接合金物の変形許容性能のため、簡素な構成で接合が確実なピン接合とできる。
【0012】
この発明において、前記横フレーム材と前記縦フレーム材との前記ピン接合の接合部は、前記縦フレーム材の前記横フレーム材を接合する側面に平板からなる変形許容接合金物を重ねて溶接し、この変形許容接合金物に前記横フレーム材の端面を溶接し、前記変形許容接合金物は、前記横フレーム材の外周に張り出し、前記変形許容接合金物の前記縦フレーム材へ前記溶接を施す箇所を横幅方向両端のみまたは上下両端のみとした接合構造であっても良い。
この構成の場合、前記縦フレーム材と横フレーム材の端面との間に平板からなる変形許容接合金物が介在し、この変形許容接合金物は前記横フレーム材の外周に張り出し、かつ全周を溶接せずに横幅方向両端のみまたは上下両端のみで前記縦フレーム材と溶接したため、前記縦フレーム材と横フレーム材との間に曲げモーメントが作用した場合、前記変形許容接合金物が変形し、曲げモーメントを吸収する。これにより、溶接で接合しながら、ピン接合とすることができる。
【0013】
この発明において、前記横フレーム材と前記縦フレーム材との前記ピン接合の接合部は、前記横フレーム材の断面の高さ方向における上下端を除く箇所を、前記縦フレーム材に直接にまたは接合プレートを介して溶接し、前記横フレーム材の端面における上下端と前記縦フレーム材との間に、前記縦フレーム材に対する前記横フレーム材の上下方向の傾きを許容する隙間を有する接合構造であっても良い。
この構成の場合、横フレーム材の端面における上下端と縦フレーム材との間に隙間を設け、横フレーム材の上下端を除く箇所を縦フレーム材に溶接するため、横フレーム材の縦フレーム材に対する固定度が低くなり、ピン接合構造となる。
前記横フレーム材の端面上下端の隙間は、例えば、横フレーム材を縦フレーム材に直付けする場合は、横フレーム材の端面の上下端に斜めにカットしたカット部分を設けることで形成できる。また、横フレーム材を間接的に接隙に接合する場合は、横フレーム材の両側面に接合プレートを溶接し、この接合プレートを前記縦フレーム材に溶接する構造として、前記接合プレートの上下幅を前記横フレーム材の断面の高さよりも低くすることで実現できる。
【0014】
この発明において、前記耐力要素が波形鋼板であっても良く、またブレースであっても良い。これら波形鋼板およびブレースのいずれであっても、耐力要素として優れた機能を有するが、これら耐力要素の如何にかかわらず、各横フレーム材と縦フレーム材との接合部をピン接合としたことによる、曲げモーメントの影響の抑制で、縦フレーム材に高い軸力を負担させるという利点が得られる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の耐力壁は、一対の縦フレーム材および上下端の横フレーム材により組まれた外周フレームと、この外周フレームの前記一対の縦フレーム材に渡り上下に並んで配置された中桟となる複数本の横フレーム材と、上下に隣合う前記横フレーム材に上下端が結合された耐力要素とを備え、
前記中桟となる横フレーム材を境界として上下に並ぶ複数の区画層に区画され、各区画層に前記耐力要素が設けられた耐力壁において、前記各横フレーム材と前記縦フレーム材との接合部
がピン接合
であり、一部の区画層に設けられた前記耐力要素がこの区画層を覆う面材であり、他の一部の区画層に設けられた前記耐力要素がブレース
であり、前記ブレース
が設けられた区画層に、この区画層の変形を吸収する変形吸収手段が設けられ、前記ブレース
が設けられた区画層は、前記変形吸収手段が存在することで、前記面材が設けられた区画層と同様の剛性であるため、横フレーム材から縦フレーム材に伝わる曲げモーメントの影響を最小限に抑え、縦フレーム材に高い軸力を負担させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の一実施形態に係る耐力壁の正面図である。
【
図3】
図1のII部の接合部の耐力を剛接合の場合の耐力と比較して示すグラフである。
【
図4】
図1のII部の接合部の他の構成例を示す斜視図である。
【
図5】
図1のII部の接合部のさらに他の構成例を示す斜視図である。
【
図6】
図5の構成例における曲げモーメントの作用による変形状態を示す斜視図である。
【
図7】
図1のII部の接合部のさらに他の構成例を示す正面図である。
【
図9】
図1のII部の接合部のさらに他の構成例を示す正面図である。
【
図10】(A)は同構成例の平面図、(B)は同構成例の破断側面図である。
【
図11】
図1の実施形態に係る耐力壁につき、耐力要素として斜材および面材を用いた具体例を示す正面図、水平断面図および平面図である。
【
図12】同耐力壁の耐力要素である面材と横フレーム材との関係を示す部分斜視図である。
【
図13】同耐力壁が2枚隣合う部分の拡大水平断面図である。
【
図14】
図1の実施形態に係る耐力要素として斜材および面材を使用した耐力壁の各例を示す模式正面図である。
【
図15】
図1の実施形態に係る耐力壁につき、耐力要素として面材を使用した具体例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。この実施形態の耐力壁は、例えば鉄骨系の戸建住宅や集合住宅等の建物、特に3階の建物等に適用される。
図1に示すように、この耐力壁1は、一対の縦フレーム材3,3および上下端の横フレーム材4,5により組まれた外周フレーム2と、この外周フレーム2の前記一対の縦フレーム材3,3間に渡り上下に並んで配置された中桟となる複数本の横フレーム材6と、上下に隣合う前記横フレーム材4,5,6に上下端が結合された耐力要素10とを備える。ここでは、中桟となる横フレーム材6は、3本が等間隔に設けられている。各縦フレーム材3および横フレーム材4,5,6には、例えば角パイプや、H形、溝形等の形鋼が用いられている。
【0018】
各横フレーム材4,5,6と縦フレーム材3との接合部(例えば
図1に示すII部)は、ピン接合とされている。ここで言うピン接合は、上記のように、節点を構造力学上で剛接合とピン接合に分類したうちの、ピン接合と見做せる接合を言い、溶接であっても、また複数本のボルトを用いた接合であっても良い。具体的には、前記ピン接合となる接合部は、下向きまたは上向きの断面L字形の変形許容接合金物11の縦片11aを、縦フレーム材3の耐力壁幅方向の中央側を向く面に溶接またはボルト(図示せず)で接合し、この変形許容接合金物11の横片11bを、変形を許容する変形域となる長さmだけ角部から開けて残り部分を横フレーム材4,5,6に溶接またはボルト(図示せず)で接合した接合構造とされている。前記長さmは、試験やシミュレーション等で適宜設計すれば良い。前記変形許容接合金物11として、ここではL形鋼の切片であるアングル材が用いられている。
なお、前記変形許容接合金物11は、いわば緩衝材である。
【0019】
この構成の耐力壁1では、上下に隣合う横フレーム材4,5間、6,6間、5,6間に渡り耐力要素10が結合されているため、耐力要素10によって水平方向の剛性が高められ、耐力壁として機能する。
横フレーム材4,5,6と縦フレーム材3との接合部はピン接合とされているので、その接合部を例えば溶接による剛接合とした場合に比べて、
図3にグラフで示すように、横フレーム材4,5,6から縦フレーム材3に伝わる曲げモーメントの影響を最小限に抑えることができる。そのため、縦フレーム材3に高い軸力を負担させることができる。また、構造計算上での縦フレーム材3の負担可能な軸力は、前記曲げモーメントを考慮しなくて済むので、ブレース構造並みの簡易な手計算で算出することができる。さらに、前記接合部での曲げ剛性が小さいので、大きな変形でも前記変形域の損傷が小さく、例えば一般に許容可能とすることが望ましいとされている1/15radの大変形を経験した後でも略無償のままで元の形状に戻ることができる。また、万一損傷を受けた場合でも、完全剛接合の場合よりも交換作業を容易に行うことができる。
【0020】
図1および
図2には、前記変形許容接合金物11として、アングル材など断面L字形のものを用いる場合を示したが、
図4に示す構成例、
図5,
図6に示す構成例、
図7,
図8に示す構成例、
図9,
図10に示す構成例のいずれかとしても良い。なお、上記各構成例において、特に説明する事項の他は、
図1,
図2に示す構成例と同様である。
【0021】
図4の構成例は、前記変形許容接合金物11の代わりに、リップ溝形鋼または溝形鋼などの開放断面形状の変形許容接合金物11Aを用いる例を示す。この場合、その変形許容接合金物11Aの開口側を縦フレーム材3側に向けて、縦フレーム材3の耐力壁幅方向の中央側を向く面に溶接で接合し、変形許容接合金物11Aの背面に横フレーム材4,5,6の端部を溶接で接合した接合構造とする。
この接合構造の場合、アングル材を変形許容接合金物11として用いた場合に比べて曲げモーメントの影響を小さくする効果はやや劣るが、それでも剛接合に比べれば曲げモーメントの影響を小さく抑えることができ、縦フレーム材3に高い軸力を負担させることができる。
【0022】
図5,
図6は、前記横フレーム材6と縦フレーム材3との前記ピン接合の接合部を、縦フレーム材3の横フレーム材6を接合する側面に、矩形の平板からなる変形許容接合金物12を重ねて溶接部13で溶接し、この変形許容接合金物12に横フレーム材6の端面を溶接した構成としている。前記変形許容接合金物12は、横フレーム材6の外周に上下方向および横幅方向共に張り出し、前記変形許容接合金物12の縦フレーム材3へ前記溶接を施す溶接部13は、横幅方向両端のみとし、かつ横フレーム材6の高さ範囲より狭い高さ範囲のみとしている。前記変形許容接合金物12は、例えば角パイプからなる縦フレーム材3の管壁よりも薄い鋼板からなる。横フレーム材6の端面の変形許容接合金物12への溶接は、横フレーム材6の端面外周の全周としている。なお、上下端の横フレーム材4,5と縦フレーム材3との接合部にも、
図5,6と共に前述した接合構造としている。
【0023】
この構成の場合、例えば
図6のように、仮に横フレーム材6に下向きの外力Fが作用したとすると、変形許容接合金物12の上部および下部に面外変形が生じる。すなわち、縦フレーム材3と横フレーム材6の端面との間に平板からなる変形許容接合金物12が介在し、この変形許容接合金物12は横フレーム材3の外周に張り出し、かつ全周を溶接せずに横幅方向両端のみを溶接部13で溶接しており、また溶接範囲を横フレーム材6の高さ範囲より狭い高さ範囲のみとしているため、上記の面外変形が生じ、この接合部における曲げモーメントが小さい。そのため、横フレーム材6の端部固定度が低減し、ピン接合と見做せる接合構造となる。前記面外変形が生じる部分が変形域12aとなる。このように薄板からなる変形許容接合金物12の粘り強さを利用した接合構造としてピン接合を実現することができる。
【0024】
図7,
図8の例は、前記横フレーム材6を縦フレーム材3に溶接部16により直付けで接合した例である。この例では、横フレーム材6の端部における上下端に斜めカット部15を設けることで、横フレーム材6の端面の上下端と縦フレーム材3の側面との間に隙間14を形成している。溶接部16の高さ範囲は、横フレーム材6の端面における上下の斜めカット部15,15間の全体である。なお、上下端の横フレーム材4,5と縦フレーム材3との接合部にも、
図5,6と共に前述した接合構造としている。
【0025】
この構成の場合、横フレーム材6の溶接部16の高さ範囲が低く、かつ上下に前記隙間14が構成されることで、横フレーム材6の縦フレーム材3に対する固定度が低くなり、ピン接合構造となる。変形域は、横フレーム材6の上下面端部、および角パイプからなる縦フレーム材3の管壁の横フレーム材6との接合面部である。角パイプからなる縦フレーム材3の幅方向の中央に溶接されるので、縦フレーム材3側も変形し、全体としてピン接合と見做せる効果を出している。また、斜めカット部15が設けられることで、横フレーム材6の端部の上下に開口が生じ、この開口が電着液の水抜き穴として機能する。
この構成の場合、
図1,
図2の実施形態におけるアングル材の変形許容接合金物11を用いた仕様よりも変形許容の機能は低いが、別部材が不要でコスト的には有利である。
【0026】
図9,
図10の例は、横フレーム材6の両側面に平板状の鋼板からなる接合板17を溶接部19で溶接して取付け、この接合板17を横フレーム材6の端面よりも突出させて、その突出端を縦フレーム材3の側面に溶接部18で溶接している。横フレーム材6は縦フレーム材3よりも幅の狭い角パイプであり、前記接合板17は、縦フレーム材3の幅方向の中間部分に接合されることになる。接合板17の上下幅は、横フレーム材6の上下幅よりも狭い。
この構成の場合、横フレーム材6の縦フレーム材3への固定度が低くなることで、ピン接合と見做せる接合構造となる。変形域は、横フレーム材6の上下面端部、および角パイプからなる縦フレーム材3の管壁の接合面となる。角パイプからなる縦フレーム材3の幅方向の中央付近に溶接されるので、縦フレーム材3側も変形することで、全体としてピン接合となる効果を出している。この構成例の場合、電着液の水抜きが容易となる利点も得られる。
【0027】
図11は、
図1の耐力壁1において、耐力要素10として面材7およびブレース8を用いた例を示す。ここでは、矩形に組まれた外周フレーム2を、中桟となる複数本の横フレーム材6をそれぞれ境界として、上下に並ぶ複数の区画層a,bに区画し、一部の区画層aに耐力要素10として面材7を設け、他の区画層bに耐力要素10としてブレース8を設けている。ブレース8を設けた区画層bには、この区画層bの変形を吸収する耐震用の変形吸収デバイス9を設けている。同図の例では、4つの区画層に等分割し、上下端の区画層bにブレース8を設け、中間の区画層aに面材7を設けている。
【0028】
なお、この耐力壁1は、外壁パネル等の壁パネルとして構成されているが、軸組み工法建物の一部となる壁として構成されたものであっても良い。また、縦フレーム材3は、建築物の柱となる部材であっても、またパネル併用軸組み工法建物等において、柱とは別に設けられて柱に沿って設けられる部材であっても良い。前記柱は、壁に内蔵される柱であっても良い。
【0029】
左右の縦フレーム材3,3には形鋼が用いられ、図示の例では角パイプ(角形鋼管とも言う)が用いられている。上下端の横フレーム材4,5は、縦フレーム材3よりも断面が細い形鋼、例えば角パイプが用いられ、縦フレーム材3の室内側面に揃うように配置される。
図11において、中桟となる横フレーム材6は、上下端の横フレーム材4,5と同様な形鋼、例えば角パイプが用いられる。中桟となる横フレーム材6は、この他に、2本の溝形鋼を背合わせに接合した形鋼を用いても良い。なお、この明細書の実施形態で用いる形鋼は、いずれも軽量形鋼である。
【0030】
区画層aの耐力要素10となる面材7には、波形鋼板からなる波板を用いている。この波板からなる面材7は、一方向に延びる山部7aと谷部7b(
図12)とが交互に並ぶ断面波形の鋼板であり、ここでは波山稜線方向が上下方向に延びるように、すなわち波の山部7aおよび谷部7bの延びる方向が上下方向となるように前記区画層aに張られている。この波板からなる面材7は、この例ではデッキプレートが用いられており、波山となる山部7aの頂部および波谷となる谷部7bの底部が平坦部分となる断面矩形または台形である。前記波板からなる面材7の上下端は、
図12に示すように、その谷部7bが、各横フレーム材4,5,6に、ビス等の固着具または溶接等で固定されている。なお、各区画層aの前記波板からなる面材7は、それぞれ個別に製造されたものであっても良いし、1枚の波板が切断されたものであっても良い。
【0031】
前記耐力要素10となる面材7が波板であると、面内せん断力が負荷された場合に、その波形の山部が稜線方向と交差する方向に歪むことにより、前記面内せん断力に対してスリップ性状のない安定したエネルギー吸収が行える。そのため、紡錘型により一層近い履歴を示す。
面材7としては、前記波板の他に、平坦な板材、例えばスキンパネルや耐力合板を用いても良い。
【0032】
図11において、区画層bの耐力要素10となるブレース8は、角パイプまたはその他の形鋼からなり、個々の区画層bに互いに逆方向に傾斜しかつ互いに一端が近づくように2本設けられている。
図11の例では、上端の区画層bの2本のブレース8は、上端が互いの近づき端側とされて、上端の横フレーム材4に前記変形吸収デバイス9を介して接合されている。2本のブレース8の下端は互いに広がり側端とされ、中桟となる横フレーム材6に接合されている。下端の区画層bの2本のブレース8は、下端が互いの近づき側端とされて、下端の横フレーム材5に前記変形吸収デバイス9を介して接合されている。これら2本のブレース8の上端は互いの広がり側端とされ、中桟となる横フレーム材6に接合されている。
【0033】
変形吸収デバイス9について具体的に説明する。上端の区画層bの変形吸収デバイス9も下端の区画層bの変形吸収デバイス9も、上下に反転させれば互いに同じ構成であるので、ここでは上端の区画層bの変形吸収デバイス9を例にとる。
【0034】
変形吸収デバイス9は、互いに壁幅方向に離れて平行に配置される一対の縦姿勢の平行板部22,22と、これら平行板部22,22を連結するエネルギー吸収用の板状のウェブ部23と、前記一対の平行板部22,22の上端間および下端間にそれぞれ接続した上下一対の水平板部24,24とでなる。
【0035】
図13は、2枚の耐力壁1,1の隣接部付近の拡大水平断面を、外装材等を施した外壁パネルとして構成した状態で示す。外周フレーム2の屋外側には合板からなる下地材41および空気層42を介して外装面材43が張られ、外周フレーム2内の前記波板からなる面材7を張った箇所にはこの面材7の両面にグラスウール等の断熱材44,45が充填されている。外周フレーム2の屋内側には内装面材46が張られる。2枚の耐力壁1,1の隣合う縦フレーム材3の屋外側および屋内側には、グラスウールボード等からなる柱部断熱面材47が張られている。
【0036】
このように、上下に並ぶ複数の区画層a,bに分け、一部の区画層aの耐力要素10を面材7とし、他方の区画層bの耐力要素10をブレース8とした構成の耐力壁1では、耐力要素10がブレース8である区画層bに、耐力の低下や施工上の不利を伴うことなく、設備用や採光用等の開口部(図示せず)を設けることができる。
【0037】
耐力要素10として面材7を用いた区画層aは、紡錘型に近い履歴を示しエネルギー吸収性能に優れた構成となる。耐力要素10としてブレース8を用いた区画層bは、そのままでは面材7を用いた区画層aに比べて剛性が高くなるが、この区画層bの変形を吸収する変形吸収デバイス9を設けたため、面材7を用いた区画層aと同様の剛性となるように容易に調整できる。
【0038】
図14(A)〜(C)は、耐力要素10として面材7を設けた区画層aと、ブレース8を設けた区画層bとの配置、および変形吸収デバイス9の配置の各例を示している。
図14(B)の例は、ブレース8を設けた区画層bを中央側の2箇所とし、これらの区画層bでは、いずれも2本のブレース8は上端側が交点側となり、交点の付近にデバイス9を配置している。
図14(C)の例は、同図(B)の例と同じく、ブレース8を設けた区画層bを中央側の2箇所としているが、中央側2箇所の区画層bにおいて、ブレース8の傾斜方向が互いに逆であり、上側の区画層bのブレース8と下側の区画層bのブレース8とが一直線上に位置してX形を成すように配置されている。
図14(D)は、全ての区画層bに耐力要素10としてブレース8を設けた例を示す。
【0039】
図15は、
図1の耐力壁1において、耐力要素10として面材7を全ての区画層に用いた例を示す。