特許第6181054号(P6181054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181054噴霧化された金属および合金から製品を形成するためのプロセス、システム、および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181054
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】噴霧化された金属および合金から製品を形成するためのプロセス、システム、および装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/115 20060101AFI20170807BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20170807BHJP
   C22C 1/04 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   B22F3/115
   B22F9/08 A
   C22C1/04 B
【請求項の数】37
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2014-525024(P2014-525024)
(86)(22)【出願日】2012年7月16日
(65)【公表番号】特表2014-529010(P2014-529010A)
(43)【公表日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】US2012046838
(87)【国際公開番号】WO2013022552
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年7月15日
(31)【優先権主張番号】13/207,629
(32)【優先日】2011年8月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501187033
【氏名又は名称】エイティーアイ・プロパティーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ,リチャード・エル
(72)【発明者】
【氏名】フォーブズ・ジョーンズ,ロビン・エム
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−509049(JP,A)
【文献】 特表2010−537058(JP,A)
【文献】 特開2008−248279(JP,A)
【文献】 特表2009−537334(JP,A)
【文献】 特開昭61−041706(JP,A)
【文献】 特開平05−161956(JP,A)
【文献】 特公昭56−012220(JP,B2)
【文献】 特開2003−080125(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0113151(US,A1)
【文献】 米国特許第04264641(US,A)
【文献】 特開2012−031443(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/040622(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0097504(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/027497(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00 − 9/30
C22C 1/04
C23C 24/00 − 24/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融合金の流れおよび一連の溶融合金滴のうちの少なくとも一方を生成することと、
前記溶融合金の流れおよび前記一連の溶融合金滴のうちの少なくとも一方に電子を衝突させて、前記溶融合金を噴霧化することによって、前記溶融合金の帯電粒子を生成させること、
静電界および電磁界の少なくとも1つによって前記溶融合金の帯電粒子を加速すること、
前記溶融合金粒子を前記合金の固相線温度以下である温度まで、前記溶融合金粒子が加速しながら凝固して固体合金粒子を形成するように、冷却すること、並びに
前記固体合金粒子を基板上へ衝突させること、ここで前記衝突する粒子は、変形し、前記基板に冶金的に結合して、固体合金プレフォームを生成する、
を含む、方法。
【請求項2】
前記溶融合金粒子は、前記合金の前記固相線温度以下で、かつ前記合金の前記固相線温度の0.50倍を超える温度まで冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶融合金粒子は、前記合金の前記固相線温度の0.95倍以下で、かつ前記合金の前記固相線温度の0.50倍を超える温度まで冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶融合金粒子を冷却することは、前記溶融合金粒子を非平衡プラズマと接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融合金粒子を冷却することは、冷却コイルを通して前記合金粒子を方向付けることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
溶融合金の流れおよび一連の溶融合金滴のうちの少なくとも一方を生成することは、真空誘導溶融、真空アーク再溶融、真空二重電極再溶融、エレクトロスラグ精錬/再溶融、電子ビーム溶融、電子ビーム低温炉床溶融のうちの少なくとも1つを使用して、合金材料を溶融することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基板は、前記溶融合金に電子を衝突させることによって生成される前記帯電合金粒子を引き付けるために、正電位に保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記衝突する電子は、3次元電子界を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記3次元電子界は、前記溶融合金の流れ経路がそれを通して方向付けられる、円筒状空間分布を構成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記電子の円筒状空間分布の長手方向軸は、前記溶融合金の前記流れ経路の前記方向に配向される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記3次元電子界は、前記溶融合金の前記流れ経路がそれを通して方向付けられる、長方形空間分布を構成する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
長方形断面を構成する電子ビームは、電子の長方形空間分布を提供するようにラスタ化される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電子は、拡散点を形成するように方向付けられ、前記拡散点は、制御された形状を有する電子の3次元空間分布を提供するようにラスタ化される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記衝突させる電子は、熱イオン電子ビームエミッタおよびワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタのうちの少なくとも1つによって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記衝突させる電子は、前記溶融合金の流れ経路の中に3次元電子界を生成するように、静電界および電磁界のうちの少なくとも1つによって方向付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記基板は、前記合金粒子を形成するものと同じ合金である合金を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記合金は、ニッケル基超合金である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記溶融合金に電子を衝突させる前に、負電荷が前記溶融合金に誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
溶融合金の流れおよび一連の溶融合金滴のうちの少なくとも一方を生成すること、
3次元電子界を生成すること、
前記3次元電子界から、前記溶融合金の流れおよび前記一連の溶融合金滴のうちの少なくとも一方に電子を衝突させて、前記溶融合金を噴霧化し、前記溶融合金の帯電粒子を生成すること、
静電界によって前記溶融合金の帯電粒子を加速すること、
前記溶融合金粒子を前記溶融合金の固相線温度以下である温度まで、前記溶融合金粒子が加速しながら凝固して固体合金粒子を形成するように、冷却すること、並びに
前記固体合金粒子を基板上へ衝突させること、ここで前記衝突する粒子は、変形し、前記基板に冶金的に結合して、固体合金プレフォームを生成する、
を含む、方法。
【請求項20】
システムであって、
溶融合金の流れおよび一連の溶融合金滴のうちの少なくとも一方を生成するように構成される、溶融アセンブリ、
前記溶融合金の流れおよび前記一連の溶融合金滴のうちの少なくとも一方に電子を衝突させて前記溶融合金を噴霧化することによって、前記溶融合金の帯電粒子を生成するように構成されている、噴霧化アセンブリ、
静電界及び電磁界のうちの少なくとも1つを生成して、前記溶融合金の帯電粒子を加速するように構成されている、界生成アセンブリ、
前記溶融合金粒子を前記溶融合金の固相線温度以下である温度まで、前記溶融合金粒子が加速しながら凝固して固体合金粒子を形成するように、冷却するように構成されている、熱制御ゾーン、並びに
収集器、ここで前記収集器は前記収集器に衝突する前記固体合金粒子が冶金的に結合するように構成されており、そして衝突し冶金的に結合する固体合金粒子が変形して固体合金プレフォームを生成する、
を含む、システム。
【請求項21】
前記溶融アセンブリが、真空アーク再溶融、エレクトロスラグ精錬装置、誘導溶融装置、プラズマアーク溶融装置、電子ビーム溶融装置、及び低温炉床溶融装置のうちの少なくとも1つを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記溶融アセンブリが、冷却誘導ガイドを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記溶融アセンブリがセラミック物質を実質的に含まない、請求項20に記載のシステム。
【請求項24】
前記溶融アセンブリが、前記溶融合金が前記噴霧化アセンブリに入る前に予め負に帯電させるように構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項25】
前記噴霧化アセンブリが、熱イオン電子ビームエミッタ及びワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタのうちの少なくとも1つを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項26】
前記噴霧化アセンブリが3次元電子界を生成するように構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項27】
前記噴霧化アセンブリが、電子ビームをラスタ化して電子の3次元空間分布を与えるように構成されている、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記噴霧化アセンブリが、前記噴霧化アセンブリを通過する前記溶融合金の流れ経路内に3次元電子界を生成するように電子を方向づける静電界及び電磁界のうちの少なくとも1つを生成するように構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項29】
前記熱制御ゾーンが、前記溶融合金粒子を前記合金の固相線温度以下の温度で、かつ前記合金の固相線温度の0.50倍を超える温度に冷却するように構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項30】
前記熱制御ゾーンが、前記溶融合金粒子を前記合金の固相線温度の0.95倍以下の温度で、かつ前記合金の固相線温度の0.50倍を超える温度に冷却するように構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項31】
前記熱制御ゾーンが、前記熱制御ゾーンを通過して運搬されている前記溶融合金粒子と接触する非平衡プラズマを生成するように構成されている非平衡プラズマ−生成アセンブリを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項32】
前記熱制御ゾーンが冷却コイルを含み、ここで前記冷却コイルを通って前記溶融合金粒子が方向づけられる、請求項20に記載のシステム。
【請求項33】
前記収集器が金型、プラテン、プレート、マンドレル及び基板のうちの少なくとも1つを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項34】
前記収集器が前記合金粒子を形成している合金と同じ合金を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項35】
前記噴霧化アセンブリ内で生成した前記合金の帯電粒子を引き付けるように、前記収集器が正電位に保持されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項36】
システムであって、
溶融合金の流れおよび一連の溶融合金滴のうちの少なくとも一方を生成するように構成されている、溶融アセンブリ、
前記溶融合金の流れおよび前記一連の溶融合金滴のうちの少なくとも一方に電子を衝突させて前記溶融合金を噴霧化することによって、前記溶融合金の帯電粒子を生成するように構成されている、噴霧化アセンブリ、
熱制御ゾーンであって、前記溶融合金粒子を前記溶融合金粒子の固相線温度以下の温度に冷却して、前記熱制御ゾーンを通って運搬される間に前記溶融合金粒子が固化して固体合金粒子を形成するように構成されている、前記熱制御ゾーン、並びに
収集器、ここで前記収集器は前記収集器に衝突する前記固体合金粒子を冶金的に結合するように構成されており、そして衝突し冶金的に結合する固体合金粒子が変形して固体合金プレフォームを生成する、
を含む、システム。
【請求項37】
溶融合金粒子を噴霧化すること、
前記溶融合金粒子を運搬すること、
前記溶融合金粒子を、前記合金の固相線温度以下である温度に冷却して、運搬中に前記溶融合金粒子を固化して固体合金粒子を形成すること、並びに
前記固体合金粒子を収集器上に衝突させること、ここで前記衝突する粒子が変形し、そして前記収集器に冶金的に結合して固体合金プレフォームを生成する、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属および合金を溶融し、噴霧化し、そして処理することに関し、また、噴霧化された金属および合金を使用して金属および合金製品を形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄、ニッケル、チタン、コバルト、およびこれらの金属に基づく合金等の、金属および合金は、しばしば、微粒状のミクロ構造、均一性、および/または実質的に欠陥のない組成物が好都合であるか、または必要である、重要な工学応用で使用される。金属および合金の鋳造物およびインゴットにおける望ましくない粒子の成長および偏析等の問題は、最終用途応用に悪影響をもたらし得、高品質合金の生成と関連付けられるコストを大幅に増加させる可能性がある。真空誘導溶融、エレクトロスラグ精錬、および真空アーク再溶融等の、従来の合金生成手法は、合金鋳造物の中の不純物および汚染物の量を低減させるために使用され得る。しかしながら、種々の事例において、従来の鋳鍛造合金の生成工程は、種々の重要な工学応用が所望されるか、または必要とされる、微粒状のミクロ構造、均一性、および/または実質的に欠陥のない組成物を有する合金を生成するために使用することができない。
【0003】
粉末冶金工程は、鋳鍛造合金生成工程では達成することができない、微粒状のミクロ構造を有する金属および合金の生成を可能にすることができる。しかしながら、粉末冶金工程は、鋳鍛造合金生成工程よりも複雑であり、比較的高レベルの空隙および細孔を有する金属および合金を生成し得る。粉末冶金工程はまた、製品を形成するために使用される粉末原料の生成中、取り扱い中、および加工中に、不純物および汚染物を金属および合金製品の中へ導入する可能性も有する。
【発明の概要】
【0004】
限定的でない実施形態において、本開示による工程は、溶融合金の流れおよび一連の溶融合金滴のうちの少なくとも1つを生成することを含む。溶融合金の帯電粒子は、溶融合金の流れおよび一連の溶融合金滴のうちの少なくとも1つに電子を衝突させて溶融合金を噴霧化することによって生成される。溶融合金の帯電粒子は、静電界および電磁界の少なくとも1つによって加速される。溶融合金粒子は、溶融合金粒子を加速しながら凝固させるように、溶融合金粒子の固相線温度よりも低い温度まで冷却される。固体合金粒子は、基板上へ衝突し、そこでは、衝突する粒子が、変形し、基板に冶金的に結合して、固体の合金プレフォームを生成する。
【0005】
本明細書で開示され、説明される本発明は、この発明の概要において要約される実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0006】
本明細書で開示され、説明される、限定的でなくかつ網羅的でない実施形態の種々の特徴および特性は、添付図面を参照することによってより良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】合金加工システムの概略的な説明を示す図である。
図2】噴霧化アセンブリの概略図であり、図中、略長方形状の電子界が、噴霧化アセンブリを通過する溶融合金の経路の中に生成される。
図3】噴霧化アセンブリの概略図であり、図中、ラスタ化装置は、噴霧化アセンブリを通過する溶融合金の経路の中に電子界を生成する。
図4】噴霧化アセンブリの概略図であり、図中、噴霧化アセンブリを通過する溶融合金の経路の中に電子界を生成するために使用される電子は、フィラメントの外面から生成される。
図5】電子ビーム噴霧化アセンブリにおける溶融合金滴の噴霧化の概略図である。
図6】固体溶射成形工程によって合金プレフォームを形成するように構成されるシステムおよび装置の概略図である。
図7】固体溶射成形工程によって合金プレフォームを形成するように構成されるシステムおよび装置の概略図である。
図7A】固体溶射成形工程によって合金プレフォームを形成するように構成されるシステムおよび装置の概略図である。
図8】固体溶射成形工程によって合金プレフォームを形成するように構成されるシステムおよび装置の概略図である。
図8A】固体溶射成形工程によって合金プレフォームを形成するように構成されるシステムおよび装置の概略図である。
図9】固体溶射成形工程によって合金プレフォームを形成するように構成されるシステムおよび装置の概略図である。
図9A】固体溶射成形工程によって合金プレフォームを形成するように構成されるシステムおよび装置の概略図である。
図10】溶融合金を生成する溶融アセンブリの概略図である。
図11】溶融合金を生成する溶融アセンブリの概略図である。
図12】溶融合金を生成する溶融アセンブリの概略図である。
図13】溶融合金を生成する溶融アセンブリの概略図である。
図14】固体溶射成形工程によって合金プレフォームを形成するように構成されるシステムおよび装置の概略図である。
図15】固体溶射成形工程によって合金プレフォームを形成するように構成されるシステムおよび装置の概略図である。
図16】固体溶射成形工程によって合金プレフォームを形成するように構成されるシステムおよび装置の概略図である。
図17】固体溶射成形工程によって合金プレフォームを形成するように構成されるシステムおよび装置の概略図である。
図17A】固体溶射成形工程によって合金プレフォームを形成するように構成されるシステムおよび装置の概略図である。
図18】固体溶射成形工程のフロー図である。
図19A】固体溶射成形工程を実現する固体溶射成形システムを集合的に示す概略図である。
図19B】固体溶射成形工程を実現する固体溶射成形システムを集合的に示す概略図である。
図19C】固体溶射成形工程を実現する固体溶射成形システムを集合的に示す概略図である。
図19D】固体溶射成形工程を実現する固体溶射成形システムを集合的に示す概略図である。
図19E】固体溶射成形工程を実現する固体溶射成形システムを集合的に示す概略図である。
図19F】固体溶射成形工程を実現する固体溶射成形システムを集合的に示す概略図である。
図20】ワイヤ放電イオンプラズマエミッタの種々の構成要素の概略図である。
図21】複数のワイヤ放電イオンプラズマエミッタを含む、電子ビーム低温炉床溶融アセンブリの概略図である。
図22】ワイヤ放電イオンプラズマエミッタの種々の構成要素の概略図である。
図23】ワイヤ放電イオンプラズマエミッタを含む、電子ビーム溶融装置の概略図である。
図24】ワイヤ放電イオンプラズマエミッタの斜視図である。
図25図24で示されるワイヤ放電イオンプラズマエミッタの動作を図示する概略図である。
図26】複数のワイヤ放電イオンプラズマエミッタを含む、電子ビーム低温炉床溶融アセンブリの概略図である。
【0008】
読み手は、本開示による種々の限定的でなくかつ網羅的でない実施形態の以下の発明を実施するための形態を検討したときに、前述の詳細、ならびにその他を認識するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
種々の実施形態は、開示される工程および製品の構造、機能、動作、製造、および使用の全体的な理解を提供するために、本明細書で説明され、図示される。本明細書で説明され、図示される種々の実施形態は、限定的でなくかつ網羅的でないことを理解されたい。したがって、本発明は、本明細書で開示される種々の限定的でなくかつ網羅的でない実施形態の説明によって限定されない。むしろ、本発明は、特許請求の範囲によってのみ定義される。種々の実施形態と関連して図示される、および/または説明される特徴および特性は、他の実施形態の特徴および特性と組み合わせられ得る。そのような修正例および変形例は、本明細書の範囲内に含まれることが意図される。このように、特許請求の範囲は、本明細書で明示的または本来的に説明される、または別様には本明細書によって明示的または本来的に支持される任意の特徴または特性を記載するために訂正され得る。さらに、出願人は、特許請求の範囲を訂正して、従来技術に存在し得る特徴または特性を肯定的に放棄する権利を留保する。したがって、任意のそのような訂正は、合衆国法典第35巻第112条第1項および合衆国法典第35巻第132条(a)項の要件を満たす。本明細書で開示され、説明される種々の実施形態は、本明細書で様々に説明される特徴および特性を備える、それらから成る、またはそれらから本質的に成ることができる。
【0010】
本明細書で確認される任意の特許、刊行物、または他の開示資料は、別途指示されない限り、組み込まれる資料が、本明細書に明示的に記載される既存の定義、記述、または他の開示資料と矛盾しない範囲で、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。そのようなものとして、かつ必要な範囲で、本明細書に記載されている明示的な開示は、参照により本明細書に組み込まれるいかなる矛盾する資料にも優先する。参照により本明細書に組み込まれると言われているが、本明細書に記載される既存の定義、記述、または他の開示資料と矛盾する任意の資料またはその一部分が、その組み込まれる資料と既存の開示資料との間でいかなる矛盾も起こらない範囲で組み込まれる。出願人は、参照により本明細書に組み込まれる任意の主題またはその一部分を明示的に記載するように、本開示を訂正する権利を留保する。
【0011】
本明細書の全体を通して「種々の限定的でない実施形態」等への言及は、特定の特徴または特性が、一実施形態に含まれ得ることを意味する。したがって、本明細書での「種々の限定的でない実施形態において」等の言い回しの使用は、必ずしも共通の実施形態を指すわけではなく、異なる実施形態を指し得る。さらに、特定の特徴または特性は、1つ以上の実施形態において、1つ以上の任意の好適な様式で組み合わされ得る。したがって、種々の実施形態と関連して図示される、または説明される特定の特徴または特性は、全体的または部分的に、これに限定されないが1つ以上の他の実施形態の特徴または特性と組み合わされ得る。そのような修正例および変形例は、本明細書の範囲内に含まれることが意図される。
【0012】
本明細書において、別途指示されない限り、全ての数値パラメータは、全ての事例において「約(about)」という用語が前置され、それによって修飾されるものと理解されるべきであり、数値パラメータは、パラメータの数値を決定するために使用される基本的な測定手法の固有の変動特性を保有する。最低でも、かつ均等の原則を特許請求の範囲に適用することを限定しようとするものとしてではなく、本説明で説明される各数値パラメータは、少なくとも、報告される有効数字の数に照らして、かつ通常の丸め技法を適用することによって解釈すべきである。
【0013】
また、この明細書に記載される任意の数値範囲は、記載される範囲内に包含される同じ数値精度の全てのサブ範囲を含むことが意図される。例えば、「1.0から10.0」という範囲は、記載される最小値1.0と記載される最大値10.0との間(かつそれらを含む)の、すなわち、例えば2.4から7.6等の、1.0以上の最小値および10.0以下の最大値を有する、全てのサブ範囲を含むことが意図される。本明細書に記載される任意の最大数値限定は、その中に包含される全てのより小さい数値限定を含むことが意図され、また、本明細書に記載される任意の最小数値限定は、その中に包含される全てのより大きい数値限定を含むことが意図される。故に、出願人は、本明細書で明示的に列挙される範囲内に包含される任意のサブ範囲を明示的に列挙するために、特許請求の範囲を含む、本開示を修正する権利を留保する。全てのそのような範囲は、任意のそのようなサブ範囲を明示的に記載するために修正することが、合衆国法典第35巻§112条第1項および合衆国法典第35巻§132条(a)項の要件を満たすように、本明細書で本来的に説明されることが意図される。
【0014】
本明細書で使用される文法的な冠詞「1つの(one)」、(1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、別途指示されない限り、「少なくとも1つの(at least one)」または「1つ以上の(one or more)」を含むことが意図される。したがって、冠詞は、その冠詞の文法的な対象のうちの1つまたは1つを超えるもの(すなわち、少なくとも1つ(at least one))を指すように本明細書で使用される。一例として、「1つの構成要素(a component)」は、1つ以上の構成要素を意味し、したがって、場合によっては1つを超える構成要素が企図され、説明される実施形態の実現例で利用または使用され得る。さらに、使い方の状況が別途要求しない限り、単数名詞の使用は、複数を含み、複数名詞の使用は、単数を含む。
【0015】
種々の重要な応用例において、構成要素は、顕著な偏析が存在しない大径のインゴットの形態で、例えばニッケル基超合金等の合金から製作しなければならない。そのようなインゴットは、正偏析および負偏析を実質的に含むべきではない。「フレッケル」は、正偏析によく見られる現象であり、溶質要素に富む暗色のエッチング領域として金属組織学的に観察できる。フレッケルは、凝固中の、鋳造インゴットの固液共存相の溶質に富む樹枝状晶間液体の流れに起因する。合金718のフレッケルは、例えば、合金母材全体に比べてニオブが富化され、高密度の炭化物を有し、また通常、ラーベス相を含む。このように、重要な応用例で使用される合金において、フレッケルは、特に不都合である。
【0016】
「白点」は、よく見られるタイプの負偏析である。白点は、明色のエッチング領域として金属組織学的に観察でき、ニオブ等の硬化剤溶質要素が枯渇している。白点は、一般的に、樹枝状白点、分散白点、および凝固白点に分類される。樹枝状白点および凝固白点についてはいくらかの許容限度があり得るが、分散白点は、しばしば鋳造合金部品のクラック誘導部位として作用する可能性がある一群の酸化物および窒化物と関連付けられるので、大きな懸案事項である。
【0017】
正偏析および負偏析が実質的に存在せず、またフレッケルも含まないインゴットおよびプレフォームは、「高級品質」のインゴットおよびプレフォームと称され得る。高級品質のニッケル基超合金インゴットおよびプレフォームは、例えば、航空用または地上発電用タービンの回転構成要素、および偏析に関連する冶金学的欠陥が動作中の構成要素の壊滅的故障をもたらし得る他の応用例を含む、種々の重要な応用例で必要とされる。本明細書で使用される場合、正偏析および負偏析が、全く存在しないとき、またはインゴットまたはプレフォームを航空用および地上用タービン応用のための回転構成要素への製作に使用すること等の、重要な応用例で使用するのを不適当にしない範囲で存在するときに、インゴットまたはプレフォームには、そのような偏析が「実質的に存在しない」。
【0018】
鋳造中に顕著な正偏析および負偏析の影響を受け易いニッケル基超合金としては、例えば、合金718(UNS N07718)および合金706(UNS N09706)が挙げられる。重要な応用例で使用するためにこれらの合金を鋳造するときの偏析を最小化するために、また、鋳造合金が有害な非金属含有物を含まないために、溶融金属材料は、最終的に鋳造する前に適切に精錬される。合金718、ならびに合金706等の種々の他の偏析を起こし易いニッケル基超合金を精錬するための手法は、「トリプルメルト」手法であり、これは、真空誘導溶融(VIM)、エレクトロスラグ精錬/再溶融(ESR)、および真空アーク再溶融(VAR)を順番に組み合わせたものである。しかしながら、これらの偏析を起こし易い材料の高級品質インゴットは、トリプルメルトシーケンスの最終ステップであるVAR溶融による大径での生成が困難である。一部の場合では、大径のインゴットが単一の構成要素に製作されるが、その場合、VARで鋳造したインゴットの中の許容できない偏析の領域を、構成要素の製作前に選択的に除去することができない。結果的に、インゴット全体またはインゴットの一部分を廃棄する必要があり得る。
【0019】
合金718、合金706、ならびに合金600(UNS N06600)、合金625(UNS N06625)、合金720、およびWaspaloy(登録商標)(UNS N07001)等の他のニッケル基超合金のインゴットは、種々の新しい応用のために、より大きい重量、およびそれに応じたより大きい直径がますます必要とされている。そのような応用としては、例えば、より大きい地上用および航空用タービンのための回転要素が挙げられる。最終的な構成要素の重量を経済的に達成するためだけでなく、インゴット組織を適切に分割し、全ての最終的な機械的および構造的要件を達成するための十分な熱機械作業も容易にするために、より大きいインゴットが必要とされる。
【0020】
大径の超合金インゴットの溶融および鋳造は、いくつかの基本的な冶金および加工に関連する課題を強調する。例えば、溶融凝固中の熱除去は、インゴットの直径の増加とともにより困難になり、より長い凝固時間およびより深い溶融プールをもたらす。これは、正偏析および負偏析に向かう傾向を増加させる。また、より大きいインゴットおよびESR/VAR電極は、加熱および冷却中に、より高い熱応力を発生させる可能性がある。合金718は、特にこれらの問題を起こし易い。合金718および種々の他の偏析を起こし易いニッケル基超合金からの、許容可能な冶金学的品質の大径VARインゴットの生成を可能にするために、特殊な溶融および熱処理シーケンスが開発された。1つのそのような特殊な溶融および熱処理シーケンスは、米国特許第6,416,564号で説明されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
それにもかかわらず、大径のニッケル基超合金インゴット等の、高級品質の合金製品を生成するために、粉末冶金手法が使用され得る。溶射成形は、大径の超合金インゴットを生成するための1つの粉末冶金手法である。溶射成形中に、微細な溶融合金滴または粒子の溶射物を形成するために、溶融合金の流れが噴霧化される。次いで、溶融粒子が収集器に方向付けられ、そこでは、該粒子が、密着したほぼ完全に緻密なプレフォームに合体し、凝固する。種々の応用例において、収集器および噴霧化器の制御された運動は、溶融金属運搬工程の制御とともに、高品質の大型プレフォームを生成することを可能にする。溶射成形工程は、広範囲の合金にわたって、等軸粒子および98パーセントを超える論理密度を伴う、微粒状の均質なミクロ構造を生成することができる。しかしながら、従来の溶射成形は、一般に、いくつかの欠点を提示する、流体衝突噴霧化手法を利用する。
【0022】
流体衝突噴霧化手法では、溶融金属材料の流れにガスまたは液体を衝突させる。液体またはガスを使用する衝突は、汚染物を噴霧化された材料の中へ導入し得る。真空環境の中では流体衝突が起こらないと想定すれば、不活性ガスを使用する衝突手法であっても、かなりのレベルの不純物を噴霧化された材料の中へ導入する可能性がある。真空環境の中で実行され得る種々の非流体衝突噴霧化手法が開発された。こうした手法としては、例えば、米国特許第6,772,961号(本明細書では、「米特第6,722,961号」と称する)で説明される噴霧化手法が挙げられ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
米特第6,722,961号は、制御された分配デバイスに連結される溶融デバイスによって生成される溶融合金滴または溶融合金流が、高い立ち上がり速度で滴に高電圧を印加することによって急速に静電的に帯電される手法を説明している。帯電した滴内で生じる静電力は、滴を分割させるか、またはより小さい二次粒子に噴霧化させる。米特第6,722,961号で説明される1つの手法において、分配デバイスのノズルによって生成される一次溶融滴は、ノズルに隣接し、その下流側の環状の電極からの電界によって処理される。一次滴内で生じる静電力は、粒子の表層張力を超え、より小さい二次粒子の形成をもたらす。同様に二次粒子を処理し、さらに小さい溶融粒子を生成するために、追加的な環状の界生成電極が下流側に提供され得る。
【0024】
電子ビーム噴霧化は、真空中で行われる、溶融材料を噴霧化するための別の非流体衝突手法である。一般に、この手法は、溶融合金流および/または一連の溶融合金滴の領域の中へ電荷を注入するために、電子ビームを使用することを含む。領域または滴がレイリー限界を超える十分な電荷を蓄積すると、領域または滴は、不安定になり、微粒子に分裂する(すなわち、噴霧化する)。電子ビーム噴霧化手法は、米国特許第6,772,961号、第7,578,960号、第7,803,212号、および第7,803,211号で説明されており、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
米特第6,722,961号はまた、溶射成形したプレフォームまたは粉末を生成する工程で噴霧化によって形成される溶融合金粒子の加速度、速度、および/または方向を制御するために、静電界および/または電磁界を使用する手法も開示している。米特第6,722,961号で説明されるように、そのような手法は、噴霧化された溶融材料の実質的な下流側制御を提供し、また、過剰溶射および他の材料の浪費を低減させること、品質を向上させること、ならびに溶射成形手法によって作製される固体プレフォームの密度を高めることができる。
【0026】
噴霧化された溶融材料を一体的プレフォームとして収集する方法としては、溶射成形および核形成鋳造が挙げられる。核形成鋳造に関して、具体的な参考資料は、米国特許第5,381,847号、第6,264,717号、および第6,496,529号に記載されており、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。一般に、核形成鋳造は、溶融合金流を噴霧化し、次いで、結果として生じる溶融合金粒子を、所望の形状を有する鋳造金型に方向付けることを含む。滴は合体し、金型によって成形される一体的物品として凝固し、そして、鋳造物は、所望の構成要素にさらに加工され得る。一般に、溶射成形は、噴霧化された溶融材料を、例えばプラテンまたは円筒の表面へ方向付けて、合体させ、凝固させ、そして所望の構成要素にさらに加工され得る自立型のプレフォームを形成することを含む。
【0027】
述ベられるように、固体のプレフォームを生成するために金属および合金を溶融し、噴霧化し、加工するための手法の多くは、1つ以上の事項に欠陥がある。そのような欠陥としては、例えば、工程の複雑さおよび費用、プレフォームにおける高い残留応力、空洞、細孔、酸化物、および他の汚染物の存在、過剰溶射による歩留まり損失、適用可能な金属および合金に対する制限、および固有のサイズ制限が挙げられる。こうした欠陥は、ニッケル基超合金等の種々の合金の生成において特に問題点を残す。本明細書で開示され、説明される種々の限定的でない実施形態は、部分的には、数ある中でもこれらの欠陥のうちの少なくともいくつかを克服し、例えば大径のインゴットおよび他の高級品質のプレフォーム等の、金属製品および合金製品を生成するための改善された手法を提供する、工程、システム、および装置に部分的を対象とする。
【0028】
本明細書で開示され、説明される種々の限定的でない実施形態は、部分的には、一体的でモノリシックな合金プレフォームおよび他の物品を生成するために使用される合金粒子に少なくとも部分的に凝固させられ得る、噴霧化された溶融材料を生成するために、金属および金属的(すなわち、金属含有)合金を溶融し、噴霧化するための工程、システム、および装置を対象とする。本明細書で使用される「合金」という用語は、例えば鉄、ニッケル、チタン、コバルト、およびこれらの金属に基づく合金等の、金属および金属合金の双方を指す。
【0029】
本明細書で開示される種々の限定的でない実施形態は、合金を溶融するために、および/または溶融合金を噴霧化するために電子を利用して、一体的でモノリシックなプレフォームおよび他の合金物品を生成するために凝固させられ、固体溶射成形される溶融合金粒子を生成する、装置および手法を利用し得る。種々の限定的でない実施形態において、本明細書で開示される工程、システムおよび装置は、ニッケル基超合金のプレフォームおよび物品の生成において有用であり得るが、上で論じたように、鋳鍛造冶金、トリプルメルト、および粉末冶金手法は、付随する不利な点を有する。
【0030】
種々の限定的でない実施形態において、固体溶射成形工程は、溶融合金の流れおよび一連の溶融合金滴のうちの少なくとも1つを生成することを含む。溶融合金の帯電粒子は、溶融合金の流れおよび一連の溶融合金滴のうちの少なくとも1つに電子を衝突させて溶融合金を噴霧化することによって生成される。溶融合金の帯電粒子は、静電界および電磁界の少なくとも1つによって加速される。溶融合金粒子は、溶融合金粒子を加速しながら凝固させるように、溶融合金粒子の固相線温度よりも低い温度まで冷却される。凝固した合金粒子は、基板上へ衝突し、そこでは、衝突する粒子が、変形し、基板に、および互いに冶金的に結合して、固体の合金プレフォームを生成する。
【0031】
図1を参照すると、本明細書で説明される固体溶射成形工程を行うように構成される、システム100の種々の限定的でない実施形態は、溶融合金の流れおよび一連の滴のうちの少なくとも1つを生成する、溶融アセンブリ110(本明細書では「溶融装置」または「溶融デバイス」とも称される)と、溶融アセンブリ110から受け取る溶融合金を噴霧化し、比較的小さい溶融合金粒子を生成する、電子ビーム噴霧化アセンブリ112(本明細書では「噴霧化装置」または「噴霧化デバイス」とも称される)と、噴霧化アセンブリ112によって生成される合金粒子の1つ以上の加速度、速度、および方向のうちの少なくとも1つに影響を及ぼす静電界および電磁界のうちの少なくとも1つを生成する、界生成アセンブリ114(本明細書では「界生成装置」または「界生成デバイス」とも称される)と、凝固した合金粒子がその上に衝突し、変形し、そして冶金的に結合して、プレフォームを形成する、収集器116と、を含む。
【0032】
種々の限定的でない実施形態において、固体溶射成形工程は、溶融アセンブリにおいて、溶融合金と接触する溶融アセンブリの領域にセラミックを実質的に含み得ない、溶融合金の流れおよび/または一連の溶融合金滴を生成することと、溶融アセンブリから受け取る溶融合金に電子を衝突させることによって、噴霧化アセンブリで溶融合金粒子を生成することと、静電界および電磁界のうちの少なくとも1つを生成することであって、噴霧化アセンブリからの溶融合金粒子は、界と相互作用し、界は、溶融合金粒子の加速度、速度、および方向のうちの少なくとも1つに影響を及ぼす、生成することと、噴霧化アセンブリからの粒子の運搬中に溶融合金粒子を冷却して、固体合金粒子を形成することと、固体プレフォームとして、固体合金粒子を収集器に収集することと、を含む。
【0033】
本明細書で使用される「溶融アセンブリ」等の用語は、溶融合金の流れおよび/または一連の滴の供給源を指し、それらは、出発材料、スクラップ、インゴット、消耗電極、および/または別の合金の供給源の充填物から生成され得る。溶融アセンブリは、噴霧化アセンブリと流体連通し、そこに溶融合金を送給する。溶融アセンブリは、溶融材料が接触するアセンブリの領域にセラミック材料が実質的に存在し得ない。本明細書で使用される「セラミックが実質的に存在しない」等の言い回しは、セラミックが、アセンブリの動作中に、溶融材料と接触する溶融アセンブリの領域の中に存在しないこと、または通常動作中に溶融合金と接触する溶融アセンブリの領域の中に存在するが、結果として問題となる量もしくはサイズのセラミック粒子もしくは含有物を溶融合金の中に含有しないこと、のいずれかを意味する。
【0034】
種々の限定的でない実施形態において、溶融アセンブリ並びに本明細書で説明されるシステムおよび装置の他の構成要素の中での、溶融合金材料とセラミック材料との間の接触を防止するか、または大幅に制限することが重要であり得る。これは、セラミック粒子が、セラミックライニングを「洗い流し」、溶融合金と混合する可能性があるからであり得る。セラミック粒子は、一般に、溶融合金材料よりも高い融点温度を有し、その後に形成されるプレフォームに組み込まれ得る。例えば、固体製品に組み込まれると、セラミック粒子は、低サイクル疲労中に製品の中で砕けてクラックが起こる可能性がある。クラックが起こると、それが成長して、製品の不具合をもたらす可能性がある。したがって、プレフォーム材料の意図される応用に応じて、例えば、材料の中のセラミック粒子の存在を殆どまたは全く許容し得ない。
【0035】
鋳鍛造冶金において、真空誘導溶融(VIM)ステップからのセラミック粒子は、その後の真空アーク再溶融(VAR)ステップ中に、またはエレクトロスラグ精錬/再溶融(ESR)ステップに加えてVARステップ中に、トリプルメルト実行法を使用するときに、除去することができる。したがって、種々の限定的でない実施形態において、溶融アセンブリは、VARまたはESR装置を備え得る。種々の実行法を使用して達成される酸化物セラミックの清浄度は、「EBボタン」試験として知られる半定量的試験を使用して評価され得、そこでは、評価する材料の試料電極を坩堝の中で電子ビームで溶融し、結果として生じる酸化物の浮遊体を、存在する最大酸化物について測定する。
【0036】
粉末冶金において、合金粉末は、最終的な凝固の後に製品へと固結するが、該製品をさらに精錬して酸化物を除去するいかなる手段もない。その代わりに、粉末を篩いにかけ、製品にされる粉末の最大画分は、設計者の設計基準で使用する部品の最小欠陥に等しい。固結した金属粉末からの最も重要な航空機のエンジン部品の設計において、例えば、最も小さいモデル化した欠陥は、約44ミクロンであり、したがって、それ以下の篩サイズを有する粉末が使用される。あまり重要でない航空機のエンジン部品の場合、最も小さいモデル化した欠陥は、約149ミクロンの大きさになり得、したがって、それ以下の篩サイズを有する粉末が使用される。
【0037】
セラミック含有物を導入させない、また、本明細書で説明される固体溶射成形工程を行うように構成される装置またはシステムに含まれ得る、溶融手法の例としては、真空二重電極再溶融デバイスを備える溶融デバイス、冷却誘導ガイドと、エレクトロスラグ精錬/再溶融デバイスまたは真空アーク再溶融デバイスのいずれかとの組み合わせを備える溶融デバイス、プラズマアーク溶融デバイス、電子ビーム溶融デバイス、および電子ビーム低温炉床溶融デバイスが挙げられるが、それらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される「噴霧化アセンブリ」等の用語は、溶融アセンブリから受け取る溶融合金に、少なくとも1つの電子の流れ(すなわち、電子ビーム)または電子界が衝突する装置を指す。本明細書で使用される「衝突する」という用語は、接触することを意味する。このようにして、電子は、衝突した流れの領域に、および/または衝突した個々の溶融合金滴に正味負電荷を与える。米特第6,772,961号および下で論じられるように、滴の中のまたは流れの特定の領域の中の電荷が十分な大きさに到達すると、領域または滴は、不安定になり、より小さい溶融合金粒子に分裂する(すなわち、噴霧化される)。本明細書で使用される「溶融合金粒子」は、ある量の溶融材料を含むが、必ずしも完全に溶融しているとは限らない粒子を指す。本明細書で使用される「固体合金粒子」は、材料の固相線温度未満であり、したがって、完全に固体である粒子を指す。
【0039】
種々の実施形態において、噴霧化アセンブリは、電子ビーム噴霧化アセンブリ、装置、デバイス等を備え得る。米特第6,772,961号で論じられるように、電子ビーム噴霧化装置は、溶融合金の流れまたは滴に静電荷を急速に印加し得る。電子ビーム噴霧化装置は、溶融合金に与えられる静電荷が、流れまたは滴を物理的に分裂させ、溶融合金から1つ以上のより小さい溶融合金粒子を生成し、それによって、材料を噴霧化するように構成され得る。電子による衝突を通して急速な静電帯電を使用する溶融合金材料の噴霧化は、材料内に与えられる静電反発力による、比較的小さい粒子への合金の急速な分割をもたらし得る。より具体的には、溶融合金の領域または滴を、「レイリー限界」を超えて急速に静電帯電させ、よって、領域または滴内の静電力が溶融合金の表面張力を超え、材料がより小さい粒子に分割する。
【0040】
レイリー限界は、材料内の静電反発力が材料をともに保持する表面張力を超える前の、材料が維持できる最大電荷を指す。材料との静電荷反発を生じさせるために材料への電子の衝突を利用する噴霧化手法の利点としては、真空環境内で該手法を実行する能力が挙げられる。このようにして、溶融合金材料と雰囲気または噴霧化流体との間の化学反応を制限または排除することができる。この能力は、噴霧化される材料が必ず噴霧化ガスまたは液体に接触し、一般的に、周囲空気中または不活性ガス雰囲気中で実行される、従来の流体噴霧化とは対照的である。
【0041】
噴霧化アセンブリによって噴霧化される溶融合金の流れまたは滴は、上流側の溶融アセンブリによって生成される。溶融アセンブリは、例えば、溶融合金の好適な流れまたは滴を形成する、分配器を含み得る。種々の限定的でない実施形態において、分配器は、オリフィスを有する溶融チャンバを含むことができる。そのような分配器の例は、米特第6,772,961号で示され、参照により本明細書に組み込まれる。溶融合金の流れおよび/または滴は、オリフィスから押し上げられるか、または別様には現れ、噴霧化アセンブリまで下流側に移動する。種々の限定的でない実施形態において、溶融合金流または滴は、機械的作用または圧力の影響下で溶融チャンバのオリフィスから現れる。種々の限定的でない実施形態において、分配器の中のオリフィスにおいて溶融合金滴を生成するために、分配器オリフィスの外側の圧力よりも大きい大きさで、圧力が溶融アセンブリの分配器の中の溶融合金に印加され得る。圧力は、溶融合金流および/または滴の流れを選択的に遮断するように、循環させ得るか、または別様には変動させ得る。
【0042】
溶融アセンブリの種々の限定的でない実施形態は、正味負電荷を伴って噴霧化アセンブリに進行する溶融合金流または滴を「予め帯電させる」ように設計され得る。流れまたは滴を予め帯電させることは、レイリー限界を超え、流れまたは滴をより小さい粒子に噴霧化するために、電子ビーム噴霧化アセンブリによって必要とされる負電荷の量を低減させ得る。溶融合金流または滴を予め帯電させるための限定的でない手法は、装置全体の他の要素に対して、溶融アセンブリを高い負電位に維持することである。これは、例えば、装置の他の要素から溶融アセンブリを電気的に絶縁し、次いで、溶融アセンブリに電気的に連結される電源を使用して、溶融アセンブリの負電位を高レベルに上昇させることによって達成され得る。別の限定的でない予め帯電させる手法は、誘導リングまたはプレートを、溶融アセンブリの出口オリフィスに近い位置で、噴霧化アセンブリの上流側に位置付けることである。リングまたはプレートは、噴霧化アセンブリまで下流側に移動する滴または流れに負電荷を誘導するように構成され得る。噴霧化アセンブリは、次いで、材料をさらに負に帯電させ、噴霧化するために、予め帯電した材料に電子を衝突させ得る。
【0043】
種々の限定的でない実施形態において、噴霧化アセンブリは、熱イオン電子ビームエミッタまたは類似のデバイスを備える。「エジソン効果」としても知られる熱イオン放出現象は、熱振動エネルギーが、表面に電子を保持する静電力に打ち勝つときの、金属表面からの電子の流れ(「熱イオン」と称される)を指す。この効果は、温度の増加とともに急激に増加するが、絶対零度を超える温度で、ある程度常時存在する。熱イオン電子ビームエミッタは、熱イオン放出現象を利用して、規定の運動エネルギーを伴う電子の流れを生成する。
【0044】
熱イオン電子ビームエミッタは、一般に、(i)加熱電子生成フィラメントと、(ii)陰極および陽極によって境界を成す、電子加速領域と、を備える。フィラメントは、一般的に、ある長さの耐火材料ワイヤから成り、電流がフィラメントを通過することによって加熱される。好適な熱イオン電子ビームエミッタのフィラメント材料は、一般に、次の特性を有する。低い電位障壁(仕事関数)、高い融点、高温での安定性、低い蒸気圧、および化学的安定性。熱イオン電子ビームエミッタの種々の限定的でない実施形態としては、タングステン、六ホウ化ランタン(LaB6)、または六ホウ化セリウム(CeB6)フィラメントが挙げられる。
【0045】
熱イオン電子ビームエミッタにおいて、印加電流によって生じる十分な熱エネルギーを印加すると、フィラメントの表面から電子が「沸き出す」。フィラメントで生成される電子は、陰極の穴を通ってドリフトし、そして、正に帯電した陽極と負に帯電した陰極との間の領域の中の電界が、陽極への空隙を横断して電子を加速し、電子は、電極間の印加電圧に対応する最終的なエネルギーで、陽極の穴を通過する。
【0046】
表面張力に打ち勝ち、材料を噴霧化するために必要なレベルまで、溶融合金流または滴を負に帯電させるために、滴または流れには、有限期間にわたって、十分なエネルギーおよび強度の電子の流れまたは電子界を受けさせなければならない。噴霧化アセンブリは、3次元電子界を生成し得るが、これは、噴霧化アセンブリを通して滴または流れが進行する経路に沿って、好適な距離延在する。電子を空間的に分布させる3次元電子界は、電子が狭い本質的に2次元のビームに合焦する点源電子ビームエミッタとは対照的であり得る。例えば、衝突する電子の3次元空間分布は、重力の影響下で、噴霧化アセンブリを通って進行する溶融合金の衝突および帯電の効率および有効性を高める。
【0047】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、電子ビーム噴霧化合金粒子は、以下の機構の一方または双方によって溶融滴または流れから形成され得ると考えられる。第1の限定的でない機構において、噴霧化された粒子は、負電荷が滴または流れに加えられるにつれて、滴または流れの表面から逐次的に剥離する。第2の限定的でない機構において、噴霧化された粒子は、初期溶融流または滴が小さい粒子に分割するカスケード効果によって形成され、該粒子は、負電位に再帯電され、より小さい粒子に分割され、そして、電子が連続的により小さい噴霧化された粒子に加えられる時間中、この工程を繰り返す。物理的な噴霧化機構に関わらず、溶融合金は、十分な負電荷が材料に蓄積し、材料が分裂するように、十分な時間にわたって電子界に曝露されなければならない。
【0048】
噴霧化アセンブリで生成される電子界内の電子の限定的でない空間分布は、電子の円筒の形態である。円筒の長手方向軸は、噴霧化アセンブリを通る溶融合金材料の一般的な進行方向に配向され得る。完全な噴霧化のために必要とされる円筒の(長手方向軸に沿った)最小長さは、噴霧化アセンブリを通って進行する溶融合金材料の速度、ならびにアセンブリ内の電子界のエネルギーおよび強度に依存する。例えば、長方形、三角形、もしくは他の何らかの多角形、または別様には境界のある形状である(噴霧化アセンブリを通る溶融合金材料の一般的な進行方向に直角な)横断面を有する界等の、非円筒状の電子界形状も使用され得る。より一般的には、溶融合金材料を好適に噴霧化することができるエネルギー、強度、および3次元形状の任意の組み合わせの界が使用され得る。本開示に従って構築される装置のための電子ビーム噴霧化アセンブリの種々の限定的でない実施形態は、下で論じられる。
【0049】
種々の限定的でない実施形態において、噴霧化アセンブリは、加熱タングステンフィラメント電子源を備える。加熱タングステンフィラメントから熱イオン的に放出される電子は、長方形状の電子ビームを形成するために、静電界および/または電磁界を使用して操作され得る。長方形状のビームは、噴霧化アセンブリを通る溶融合金材料の進行経路を横断する略ブロック形状の3次元界として、噴霧化チャンバの中へ投射され得る。図2は、電源214からの電流によって加熱されるタングステンフィラメント212を含む、噴霧化アセンブリ210を概略的に図示する。加熱フィラメント212は、自由電子216を生成する。電子216は、例えば、熱イオン電子ビームエミッタによって生成され得る。
【0050】
電子216は、略長方形状の断面を有する3次元電子ビーム222を形成するために、プレート220によって生成される静電界によって成形される。電子ビーム222は、略ブロック形状の3次元電子界226を生成するために、噴霧化アセンブリ210の内部空間の中へ投射される。上流側の溶融アセンブリ232で分配される溶融合金滴230は、電子界226を通って進行し、負電荷の蓄積による分裂を通してより小さい粒子238に噴霧化される。噴霧化された粒子238は、収集器(図示せず)に向かって矢印Aの方向に通過する。
【0051】
種々の実施形態において、噴霧化アセンブリは、熱イオン電子ビームエミッタ以外の、またはそれに加えて、電子生成デバイスを備え得る。例えば、種々の実施形態において、噴霧化アセンブリは、冷陰極ワイヤイオン発生器および/またはプラズマイオンエミッタとしても知られる、ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタを備え得る。ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタは、略長方形の断面を有する電子界を生成する。ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタの1つの利点は、それが、熱イオン電子エミッタよりよりも低い温度での電子放出を生成することである。噴霧化アセンブリ内の1つまたは複数の特定の電子生成デバイスによって生成される電子は、好適な断面を有する電子のビームを形成するために、例えば電磁界および/または静電界を使用して、好適に操作され得る。次いで、電子ビームは、噴霧化される溶融合金材料の進行経路を横断して、噴霧化チャンバの中へ投射され得る。
【0052】
図3は、噴霧化アセンブリ310の別の限定的でない実施形態を図示する。1つ以上のタングステンフィラメント312は、電源314によって加熱され、溶融合金に衝突するときに溶融合金を噴霧化するのに十分なエネルギーを有する電子316を生成する。電子は、例えば、熱イオン電子ビームエミッタによって生成され得る。電子316は、拡散点322を形成するために、例えばプレート320等の構造体によって操作され得る。ラスタ化装置324は、例えば重力の影響下で、溶融合金材料がそこを通って進行する噴霧化アセンブリの領域内で、高ラスタ化率で電子スポット322をラスタ化する。高ラスタ化率の効果は、溶融アセンブリ332から受け取る溶融合金滴330をより小さい噴霧化された粒子338に噴霧化するように構成される噴霧化アセンブリ310の噴霧化チャンバの中で制御された形状を有する、3次元電子界326を提供することである。噴霧化された粒子338は、収集器(図示せず)に向かって矢印Aの方向に通過する。
【0053】
図4を参照すると、噴霧化アセンブリ410は、略長方形の断面を有する電子界を生成する。電子は、電源414によって加熱されるタングステンフィラメント412の略直線の範囲の表面から生成される。この電子を生成する方法は、一般的に電子ビーム銃で行われるように、点源から電子を生成する手法と対照的である。フィラメント412の表面から放射される電子416は、略長方形の断面を有するビーム422を形成するために、例えばプレート420によって生成される界等の、静電界および/または電磁界を使用して操作され得る。長方形の電子ビーム422は、溶融アセンブリ432から受け取るときに溶融合金材料430がそれを通って進行する電子界を形成するために、噴霧化アセンブリ410の中へ、ラスタ化装置によって高ラスタ化率でラスタ化され得る。
【0054】
代 替として、図4で示されるように、長方形の電子ビーム422は、溶融アセンブリ432から受け取るときに溶融合金材料430がそれを通って進行する、略長方形の断面を有する電子界426を形成するために、投射デバイス424によって噴霧化アセンブリ410の中へ投射され得る。合金材料430は、負電荷の蓄積によって、噴霧化された粒子438に分裂し、収集器(図示せず)に向かって矢印Aの方向に通過する。
【0055】
種々の実施形態において、噴霧化アセンブリは、複数の電子源を備える。噴霧化アセンブリはまた、好適な電子界を生成し、制御するために、複数の電子操作、投射/ラスタ化デバイスも備え得る。例えば、いくつかの熱イオンもしくは非熱イオン電子ビームエミッタ、または他の電子源は、噴霧化チャンバの中の溶融合金材料の経路の周囲に特定の角度位置で配向され得(例えば、互いに120度で3つのエミッタ/供給源)、複数の供給源からの電子を経路の中へ投射することによって、3次元電子界を生成し得る。
【0056】
種々の実施形態において、上で説明される複数の噴霧化アセンブリ実施形態の構成要素および機能は、組み合わせられ得る。例えば、図2および図3を参照すると、噴霧化アセンブリ210の長方形のビーム222は、電子界を生成して溶融合金材料を噴霧化するために、噴霧化アセンブリ310の中でラスタ化装置324を使用してラスタ化され得る。電子スポット322と比較して、比較的高アスペクト比の長方形の電子ビーム222をラスタ化することは、噴霧化チャンバの中の溶融合金材料の経路に沿って配置される、より大きい3次元界を提供し得る。
【0057】
電子ビーム噴霧化アセンブリの種々の限定的でない実施形態では、溶融アセンブリから現れる溶融合金材料に、第1の電子の流れまたは第1の一連の電子を衝突させ、それによって、第1の平均サイズを有する一次溶融合金粒子に合金材料を噴霧化し得る。電子の第2の流れを一次粒子に衝突させることはさらに、粒子をより小さい平均粒子サイズに噴霧化し得る。平均サイズのさらなる低減は、連続的に噴霧化された粒子に追加的な電子の流れまたは一連の電子を衝突させることによって達成され得る。このようにして、電子の衝突による急速な静電帯電を使用して、数回の微細化が可能である。
【0058】
種々の限定的でない実施形態において、電子ビームによる急速な静電帯電は、最終的な所望の溶融合金粒子の平均サイズを達成するために、経路に沿って2回、3回、またはそれ以上印加される。このようにして、溶融アセンブリによって生成される溶融合金滴の元々のサイズは、噴霧化アセンブリの中で生成される最終的な噴霧化された粒子のサイズを必ずしも限定しない。そのような配設の複数の電子源は、例えば、個々の熱イオン電子ビームエミッタ、冷陰極ワイヤイオン発生器、および/またはプラズマイオンエミッタであり得る。
【0059】
噴霧化アセンブリの種々の限定的でない実施形態において、溶融合金の滴またはその流れの一部分は、結果として生じる噴霧化された粒子の平均サイズを連続的に低減させるために、2つ以上の噴霧化段階を受ける。これは、例えば、噴霧化アセンブリと収集器との間の領域の中の経路に沿って、2つ以上の電子銃または他の電子の流れもしくは一連の電子の供給源を適切に位置付けることによって達成され得る。この一般構造を有する噴霧化アセンブリは、図5のアセンブリ500として概略的に図示される。溶融アセンブリ512は、溶融合金滴523aを生成する、分配器514を含む。分配器514は、例えば、溶融アセンブリ512の中のインゴット、充填物、スクラップ、および/または他の供給源から生成される溶融材料から、溶融合金滴523aを生成するために、機械的デバイス、圧力、または重力を使用し得る。
【0060】
一次電子ビーム銃524aは、滴523aに衝突して、該滴に負電荷を与える、一連の電子525aを生成する。滴523a内で生じる静電力は、最終的に滴の表面張力を超え、滴を分裂させ、そして一次溶融合金粒子523bを形成する。二次電子ビーム銃524bは、一次溶融合金粒子523bに一連の電子525bを集束させ、同様に該粒子に負電荷を与え、そしてより小さい二次溶融合金粒子523cに該粒子を分裂させる。三次電子ビーム銃524cは、二次溶融合金粒子523cに一連の電子525cを集束させ、同じく該粒子に負電荷を与え、そしてさらに小さい三次溶融合金粒子523dに該粒子を分裂させる。この配設の限定的でない実施形態において、複数の電子ビーム銃は、熱イオン電子ビーム銃であるが、例えば冷陰極ワイヤイオン発生器および/またはプラズマイオンエミッタ等の、好適な一連の電子を生成するための任意の他の好適なデバイスが使用され得る。
【0061】
参照により本明細書に組み込まれる米特第6,772,961号で論じられるように、「急速な」静電帯電は、1〜1000マイクロ秒の範囲内の、または例えば1〜500マイクロ秒、1〜100マイクロ秒、もしくは1〜50マイクロ秒等のその中に包含される任意のサブ範囲内の、所望の大きさに帯電させることを指す。溶融アセンブリによって生成される溶融合金の急速な静電帯電は、材料のレイリー限界を超える電荷を生成し、それによって、複数のより小さい溶融合金粒子を生成する。粒子は、例えば、5〜5000ミクロンの、または例えば5〜2500ミクロンもしくは5〜250ミクロン等のその中に包含される任意のサブ範囲の、略均一の直径を有し得る。
【0062】
噴霧化アセンブリは、溶融合金粒子を生成し、該溶融合金粒子は、一体的でモノリシックな(すなわち、一体形の)プレフォームを形成するために、さらに処理される。本明細書で使用される「プレフォーム」という用語は、噴霧化された溶融合金粒子から生成される、ともに冶金的に結合した固体合金粒子を収集することによって形成される、製作品、インゴット、または他の物品を指す。本明細書で説明される工程、システム、および装置において、噴霧化アセンブリによって生成される溶融合金粒子の全部または一部分は、噴霧化アセンブリの下流側で制御および凝固され、プレフォームとして収集器に収集される。例えば、種々の限定的でない実施形態において、システムまたは装置は、噴霧化アセンブリの下流側の領域の中に少なくとも部分的に存在する静電界および/または電磁界を生成する、少なくとも1つの界生成アセンブリを含み得る。界生成アセンブリによって生成される静電界および/または電磁界は、界と相互作用する溶融合金粒子の加速度、速度、および方向のうちの少なくとも1つに影響を及ぼすように構造化および/または操作され得る。
【0063】
本明細書で使用される「界生成アセンブリ」という用語は、噴霧化アセンブリの下流側の領域で溶融し、凝固した合金粒子の加速度、速度、および方向のうちの少なくとも1つを制御するために使用され得る1つ以上の静電界および/または電磁界を生成し、また随意に操作する、システムまたは装置を指す。本明細書で説明される工程、システム、および装置での使用に好適な界生成アセンブリの例は、米特第6,772,961号で説明され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
本明細書で使用される「静電界」という用語は、単一の静電界または複数の(2つ以上の)静電界を指し得る。静電界は、例えば、先端部、プレート、または他の供給源を高電位に帯電させることによって生成され得る。同じく、本明細書で使用される「電磁界」という用語は、単一の電磁界または複数の電磁界を指し得る。電磁界は、例えば、電流に、例えば導体コイル等の導体を通過させることによって作成され得る。
【0065】
種々の限定的でない実施形態において、界生成アセンブリは、形成工程中の様々な時点で、固体合金粒子と相互作用して、成長中のプレフォームの種々の領域に該固体合金粒子を方向付ける、1つ以上の静電界および/または電磁界を生成する。また、熱を加えるまたは除去することが所望される成長中のプレフォームの領域に固体合金粒子を方向付け、それによって、プレフォームのマクロ構造に影響を及ぼすために、静電界および/または電磁界も使用され得る。導電性固体溶射成形において、1つ以上の静電界および/または電磁界の形状はまた、形成工程中の様々な時点で、生成中のプレフォームの所定の領域に粒子を方向付けることによって、ニアネットシェイプのプレフォームを生成するために操作することもできる。界生成アセンブリを使用した1つ以上の静電界および/または電磁界を利用することによって、形成工程の歩留まりを高めること、ならびに結果として生じるプレフォームの密度を向上させる(および制御する)ことが可能である。
【0066】
種々の限定的でない実施形態において、界生成アセンブリは、高電圧DC電源に収集器を電気的に連結し、噴霧化アセンブリを接地することによって、噴霧化アセンブリと収集器との間の領域に静電界を生成する。本明細書で説明される工程、システム、および装置で電子ビーム噴霧化が使用され得ると想定し、また、噴霧化された粒子が負に帯電すると想定すると、負に帯電し、噴霧化され、凝固した粒子が噴霧化アセンブリから跳ね返され、そして収集器に引き付けられるように、負極性が使用される。静電界は、噴霧化アセンブリによって生成される負に帯電した合金粒子と相互作用し得、該粒子は、界の影響下で、静電界線の一般的な方向に移動するように方向付けられ得る。この相互作用は、収集器に向かう、溶融し、凝固した合金粒子の加速度、速度、および方向のうちの1つ以上を制御するために使用され得る。
【0067】
高電圧DC電源に加えて、界生成アセンブリは、噴霧化アセンブリと収集器との間に好適な界(複数可)を生成するように、好適な位置に位置し、好適な配向の1つ以上の電極を備え得る。電極は、所望の様式で噴霧化アセンブリと収集器との間に静電界を成形するように位置付けられ、構成され得る。1つ以上の電極の影響下で提供される静電界は、所望の様式で溶融し、凝固した合金粒子を収集器に方向付ける形状を有することができる。
【0068】
界生成アセンブリはまた、複数の高電圧DC電源も備え得、それぞれ、噴霧化アセンブリと収集器との間で好適な位置に好適な配向で配置される1つ以上の電極に動作可能に接続され、また、時間依存的様式で噴霧化アセンブリと収集器との間に界生成アセンブリによって生成される静電界の形状に影響を及ぼす。このようにして、界は、収集器上または成長中のプレフォーム上の特定の領域または場所に、経時的に、噴霧化アセンブリによって生成される合金粒子を好適に方向付けるように操作され得る。
【0069】
例えば、複数の電極および関連する電源を含む界生成アセンブリは、従来の溶射成形工程および核形成鋳造工程によって生成されるプレフォームと比較して高い密度を有する、ニアネットシェイプの固体物品を固体溶射成形するように構成される、システムまたは装置に組み込まれ得る。そのような実施形態において、静電界は、収集器に凝固した合金粒子を好適に方向付けるために、強度および/または形状に関して変動し得る。
【0070】
種々の限定的でない実施形態において、電磁界は、噴霧化アセンブリと収集器との中間に位置付けられる1つ以上の磁気コイルによって、噴霧化アセンブリと収集器との間で生成され得る。磁気コイルは、コイルを励磁する電源に電気的に接続され得る。噴霧化アセンブリによって生成される合金粒子は、電磁界の界線に沿って、収集器に方向付けられ得る。1つ以上の磁気コイルの位置および/または配向は、収集器または成長中のプレフォーム上の特定の領域または場所に粒子を方向付けるように構成され得る。このようにして、合金粒子は、プレフォームの密度を高めるように、さらには、固体溶射成形中にニアネットシェイプのプレフォームを生成するように方向付けられ得る。
【0071】
種々の限定的でない実施形態では、噴霧化アセンブリと収集器との間に複数の磁気コイルが位置付けられ得る。異なる磁界強度に単数倍または複数倍に励磁される、複数の磁気コイルによって生成される電磁界は、噴霧化アセンブリによって生成される合金粒子の運動の方向に影響を及ぼし、収集器上または成長中のプレフォーム上の特定の所定の領域または場所に粒子を方向付ける。このようにして、合金粒子は、例えば、ニアネットシェイプおよび/または比較的高密度を有する固体プレフォームを生成するために、所定のパターンで方向付けることができる。
【0072】
種々の限定的でない実施形態において、界生成アセンブリによって生成される界は、噴霧化アセンブリの中で平行移動可能な噴霧化ノズルを使用することを通して既に利用可能な方向制御を向上させる、または精密化するために使用され得る。種々の限定的でない実施形態において、界の形状、方向、および/または強度を適切に操作することによってのみ達成可能な実質的な方向制御は、噴霧化アセンブリの中の噴霧化ノズルの運動を完全に置き換えることができる。
【0073】
種々の限定的でない実施形態において、噴霧化アセンブリによって生成され、界生成アセンブリによって生成される界(複数可)内を通る、またはそれを通過する溶融合金粒子の全部または一部分は、固体プレフォームとして収集器に収集される。本明細書で使用される「収集器」という用語は、噴霧化アセンブリによって生成される溶融合金粒子の冷却によって生成される凝固した合金粒子の全部または一部分を受け取るように構成される、基板、装置、要素、または基板、装置、もしくは要素の一部分もしくは領域、または要素のアセンブリッジを指す。固体溶射成形工程を行うように構成されるシステムまたは装置の実施形態に組み込まれ得る収集器の限定的でない例としては、チャンバ、金型、プラテン、マンドレル、または他の表面の全体または一部分もしくは領域が挙げられる。
【0074】
収集器は、接地電位に保持され得るか、または種々の限定的でない実施形態では、噴霧化アセンブリによって生成される負に帯電した噴霧化された粒子を引き付けるように、高い正電位に保持され得る。図1で図示されるシステム、すなわち、溶融アセンブリと、噴霧化アセンブリと、界生成アセンブリと、収集器とを備えるシステムは、収集器の表面に、インゴットまたは他の固体プレフォームを固体溶射成形するように構成され、動作し得、そのような場合、該収集器は、例えば、プラテンまたはマンドレルであり得る。種々の限定的でない実施形態において、インゴットまたは他のプレフォームを固体溶射成形するように構成されるシステムまたは装置は、回転または別様には平行移動して所望の幾何学形状の固体物品を好適に形成するように適合され得るプラテンまたはマンドレルを備える、収集器を備え得る。
【0075】
種々の限定的でない実施形態では、収集器を好適に帯電させることによって、固体合金粒子の過剰溶射が低減または排除される。電子ビームを使用して溶融流および/または溶融粒子を噴霧化することは、噴霧化された粒子内の過剰な電子により負に帯電した粒子を生成する。収集器を正極性に好適に帯電させることによって、収集器は、粒子を引き付け、それによって、過剰溶射を低減または排除する。過剰溶射は、結果的に工程の歩留まりを大幅に損なう可能性のある、従来の溶射成形の問題となる欠点である。
【0076】
図6は、固体プレフォームを固体溶射成形するように構成される、装置600の限定的でない実施形態の種々の要素を概略的に図示する。電子ビーム噴霧化アセンブリ610は、負に帯電した溶融合金粒子612を生成する。静電界614は、噴霧化アセンブリ610と収集器616との間に生成される。噴霧化アセンブリ610は、溶融アセンブリ(図示せず)から溶融合金の流れおよび一連の滴のうちの少なくとも1つを受け取る。帯電した溶融合金粒子は、静電界614と相互作用し、収集器616に向かって合金粒子612を加速する。溶融合金粒子612は、噴霧化アセンブリ610から収集器616に進行しながら凝固して、固体合金粒子を形成する。固体合金粒子は、収集器616に衝突し、収集器616の表面に固体プレフォーム618を形成する。溶融合金粒子612の、およびその結果、凝固した合金粒子の速度および/または方向に対する界の影響は、プレフォーム618から過剰溶射を低減または排除するために使用され得、それによって、固体溶射成形工程の歩留まりが高まり、また場合により、界生成アセンブリを使用せずに可能な密度と比較して、プレフォーム618の密度も増加する。
【0077】
図7は、固体溶射成形工程を行うように構成される、装置700の限定的でない実施形態の種々の要素を概略的に図示する。溶融アセンブリ710は、電子ビーム噴霧化アセンブリ712に、溶融合金の流れおよび一連の滴のうちの少なくとも1つを供給し、該電子ビーム噴霧化アセンブリは、負に帯電した溶融合金粒子714の溶射を生成する。静電界および/または電磁界716は、界生成アセンブリによって、噴霧化アセンブリ712と好適に成形された収集器718との間に生成される。界716は、帯電した溶融合金粒子714と相互作用して、収集器718に向かって粒子714を加速する。溶融合金粒子714は、噴霧化アセンブリ712から収集器718に進行しながら凝固して、固体合金粒子715を形成する。合金粒子714/715は、収集器718が高い正電位に保持されれば、より大きく加速され得る。界716によって帯電粒子714/715に及ぼされる加速力および方向制御は、固体プレフォーム720の密度を高めるために使用され得、また、ニアネットシェイプのプレフォーム720を生成するために利用され得る。収集器718は、固定式であり得、または回転もしくは別様には好適に平行移動するように適合され得る。固体合金粒子715は、収集器718および成長中のプレフォーム720に衝突し、衝突時に変形し、ともに冶金的に結合して、固体プレフォーム720を形成する。
【0078】
図7Aで示されるように、装置700の代替の限定的でない実施形態は、2つのヒートシンク電極724間の溶融粒子714の経路の中に非平衡プラズマ722を生成するように構成される、非平衡プラズマ生成アセンブリを含む。ポンプ730の影響下で導管728を通って循環する誘電液体により、電極724は、外部の熱質量726と熱的に連通している。誘電流体によるヒートシンク電極724と外部の熱質量726との間の熱連結は、熱を、溶融粒子714から除去し、熱質量726に伝えることを可能にする。ヒートシンク724間の非平衡プラズマ722は、例えば、ACグロー放電またはコロナ放電によって生成され得る。非平衡プラズマ722は、溶融粒子714から2つのヒートシンク電極724に熱を伝達し、該ヒートシンク電極は、外部の熱質量726に熱を伝達する。溶融合金粒子714からの熱の除去は、粒子が、凝固し、固体合金粒子715を形成することを可能にする。
【0079】
噴霧化された溶融合金粒子に、またはそこから熱を伝達するために非平衡プラズマを生成する、熱伝達システムおよびデバイスは、米特第6,772,961号で説明され、参照により本明細書に組み込まれる。また、合金材料に、またはそこから熱を伝達するために非平衡プラズマを生成する、熱伝達システムおよびデバイスは、米国特許第7,114,548号で説明され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
図8は、固体溶射成形工程を行うように構成される、装置800の限定的でない実施形態の種々の要素を概略的に図示する。溶融アセンブリ810は、電子ビーム噴霧化アセンブリ812に、溶融合金の流れおよび一連の滴のうちの少なくとも1つを提供する。溶融アセンブリ810は、随意に、溶融材料が噴霧化アセンブリ812に移動する前に該溶融材料を負に「予め帯電させる」ように、随意の電源822等によって、高い負電位に保持され得、それによって、噴霧化アセンブリ812が材料を噴霧化するために溶融材料に運搬しなければならない負電荷の量が低減される。この「予め帯電させる」という特徴はまた、噴霧化アセンブリの中で材料を噴霧化するために溶融材料に加えなければならない負電荷の量を低減させるために、本明細書で説明される他の実施形態でも使用され得る。
【0081】
電子ビーム噴霧化アセンブリ812は、帯電した溶融合金粒子814の溶射を生成する。電磁界816は、磁気コイル818(断面で示される)によって生成される。帯電した溶融合金粒子814は、界816と相互作用し、それによって、収集器820に向かって方向付けられる。溶融合金粒子814は、噴霧化アセンブリ812から収集器820に進行しながら凝固して、固体合金粒子815を形成する。界816によって及ぼされる合金粒子814/815の方向制御は、過剰投射を低減させることができ、それによって、固体溶射成形工程の歩留まりが高まり、また、固体プレフォーム822の密度も高めることができる。固体合金粒子815は、収集器820および成長中のプレフォーム822に衝突し、衝突時に変形し、ともに冶金的に結合して、固体プレフォーム822を形成する。
【0082】
図8Aで示されるように、非平衡プラズマ842は、随意に、2つのヒートシンク電極844間の合金粒子814/815の経路の中に生成され得、該ヒートシンク電極は、ポンプ850によって導管848を通って循環する誘電液体によって、外部の熱質量846に熱的に接続される。ヒートシンク電極844と外部の熱質量846との間で維持される熱連通は、熱を、合金粒子814/815から除去すること、またはそれに加えることを可能にする。ヒートシンクシンク電極844間の非平衡プラズマ842は、例えば、ACグロー放電またはコロナ放電によって生成され得る。
【0083】
非平衡プラズマ842はまた、ヒートシンク電極844から固体プレフォーム822および収集器820にも延在し、プレフォーム822および収集器820からの熱の除去またはそれらへの熱の付加を提供する。故に、装置800において、熱は、非平衡プラズマ842によって、溶融合金粒子814、固体合金粒子815、固体プレフォーム822、および収集器820からヒートシンク844に伝達され、次いで、外部の熱質量846に伝達される。溶融合金粒子814からの熱の除去は、粒子が、凝固し、固体合金粒子815を形成することを可能にする。
【0084】
図9は、固体溶射成形工程を行うように構成される、装置900の限定的でない実施形態の種々の要素を概略的に図示する。溶融アセンブリ910は、電子ビーム噴霧化アセンブリ912に、溶融合金の流れおよび一連の滴のうちの少なくとも1つを提供する。噴霧化アセンブリ912は、帯電した溶融合金粒子914を生成する。磁気コイル918(断面で示される)によって生成される電磁界916は、帯電した溶融合金粒子914と相互作用して粒子914を分散させ、それらの衝突の可能性を低減させ、それによって、より大きい溶融粒子、および結果的に、より大きい固体合金粒子942の形成を抑制する。磁気コイル943(断面で示される)によって生成される第2の電磁界940は、凝固した粒子942と相互作用し、収集器944に向かって方向付ける。固体プレフォーム946は、収集器944の上へ、およびプレフォーム946の中へ固体合金粒子942を衝突させることによって、収集器944上に形成され、固体合金粒子942は、衝突時に変形し、ともに冶金的に結合して、固体プレフォーム946を形成する。
【0085】
図9Aで示されるように、装置900の限定的でない実施形態は、ポンプ930により導管928を通って循環する誘電流体によって外部の熱質量926と熱的に連通している2つのヒートシンク電極924間の溶融粒子914の経路の中に、非平衡プラズマ922が作成されるように構成され得る。外部の熱質量926と熱的に連通しているヒートシンク電極924の配設は、熱を、溶融合金粒子914から除去して、溶融合金粒子を凝固させ、固体合金粒子942を形成することを可能にする。
【0086】
種々の限定的でない実施形態において、固体溶射成形工程を行うように構成される装置またはシステムは、溶融アセンブリ、噴霧化アセンブリ、界生成アセンブリ、プラズマ生成アセンブリ、収集器、および/または製作品(例えば、プレフォーム)の全部または一部分を取り囲む、または収容する、チャンバ等を含み得る。例えば、非平衡プラズマを利用する熱伝達デバイスが装置またはシステムに組み込まれる場合、熱伝達デバイスおよびその関連する電極の全部または一部分、ならびに非平衡プラズマも、チャンバ内に包含され得る。そのようなチャンバは、チャンバ内に存在するガスの種類および分圧、ならびに/または全ガス圧力を含む、チャンバ内の雰囲気を調節することを可能にするように提供することができる。
【0087】
例えば、チャンバは、真空(本明細書で使用される「真空」は、完全なまたは部分的真空を指す)を提供するために排気され得、および/または処理される材料の酸化を制限するために、および/または窒化物形成等の他の望ましくない化学反応を抑制するために、完全にまたは部分的に不活性ガス(例えば、アルゴンおよび/または窒素)が充填され得る。チャンバを組み込んだ装置の限定的でない実施形態において、チャンバ内の圧力は、0.1〜0.0001トール等の、または例えば、0.01〜0.001トール等のその中に包含される大気圧未満に維持され得る。
【0088】
本明細書で説明されるように、溶融材料に電子を衝突させることによって生成される溶融合金粒子は、高く負に帯電する。本明細書で説明される種々の限定的でない実施形態はまた、電子を衝突させ、溶融材料を噴霧化する前に、溶融材料を負電荷で予め帯電させるデバイスも含む。負に帯電した粒子/材料には、接地電位に保持される近くの構造体に向かって加速する傾向が存在し得る。そのような構造体は、溶融アセンブリの下流側の溶融材料の進行経路に隣接する、チャンバ壁および他の装置構成要素を含み得る。種々の限定的でない実施形態において、装置の噴霧化アセンブリは、プレートまたは他の好適に成形された構造体を含み、それらは、負に帯電した粒子/材料を偏向させ、接地電位に保持されるチャンバ壁および/または他の構造体に向かう粒子/材料の不要な加速を抑制するように、負電位に保持され、配置される。
【0089】
固体溶射成形工程を行うように構成される装置またはシステムの種々の限定的でない実施形態は、装置の動作中に溶融アセンブリによって生成される溶融合金と接触し得、したがって、該溶融合金を汚染し得る、該溶融アセンブリの領域にセラミックを実質的に含まない、溶融アセンブリを含み得る。そのような装置のそれぞれはまた、溶融材料を噴霧化し、溶融合金粒子を生成する電子ビーム噴霧化アセンブリも含み得る。そのような装置のそれぞれはまた、界生成アセンブリも含み得、該界生成アセンブリは、噴霧化アセンブリと収集器との間に1つ以上の電磁界および/または静電界を生成し、粒子が噴霧化アセンブリと収集器との間の距離の全部または一部分を横断するときに、粒子の加速度、速度、および方向のうちの少なくとも1つに影響を及ぼす。
【0090】
固体溶射成形工程を行うように構成される装置またはシステムの種々の限定的でない実施形態は、1つ以上の非平衡プラズマ生成アセンブリを含み得、それは、溶融合金粒子および/または固体合金粒子が噴霧化アセンブリによって生成された後であるが、固体粒子が収集器/成長中の製作品に衝突して固体プレフォームを形成する前に、該合金粒子に、またはそこから熱を伝達するための非平衡プラズマを生成する。代替として、または加えて、固体溶射成形工程を行うように構成される装置の種々の限定的でない実施形態は、固体合金材料が収集器に衝突した後に、該固体合金材料に、またはそこから熱を伝達する1つ以上の非平衡プラズマを生成し得、また、収集器上に、またはその中で成長中のプレフォームに適用され得る。
【0091】
図10図13は、固体溶射成形工程を行うように構成される装置またはシステムの構成要素として含まれ得る、溶融アセンブリの種々の限定的でない実施形態を概略的に図示する。そのような溶融アセンブリの実施形態のそれぞれは、消耗電極または他の合金原料から、溶融合金の流れおよび一連の滴のうちの少なくとも1つを生成するために使用され得る。下のそのような各溶融アセンブリの実施形態は、アセンブリで生成される溶融合金と接触し得るアセンブリの領域にセラミックを含まないように構成され得る。
【0092】
図10は、電子ビーム噴霧化アセンブリに送給される溶融合金を生成する溶融アセンブリの構成要素としての、真空二重電極再溶融デバイスの使用を図示する。真空二重電極再溶融、またはVADER手法は、例えば、米国特許第4,261,412号で説明され、参照により本明細書に組み込まれる。VADER装置において、溶融材料は、溶融する2つの消耗電極間で、真空中でアークを衝突させることによって生成される。従来の真空アーク再溶融(VAR)に勝るVADER手法の利点は、VADER手法が、温度および溶融速度のより厳しい制御を可能にすることである。
【0093】
図10を参照すると、真空チャンバ壁1010は、対向する消耗電極1014および噴霧化アセンブリ1016を取り囲む。電流は、対向する電極1014の間を通過し、電極を溶融して、溶融合金の滴1018(あるいは、流れ)を生成する。溶融合金滴1018は、電極1014から噴霧化アセンブリ1016に落下する。あるいは、冷却誘導ガイドまたは類似の分配デバイス(図示せず)と流体連通している溶融物プールが、電極1014と噴霧化アセンブリ1016との間に位置付けられ得る。噴霧化アセンブリ1016によって生成される噴霧化された溶融合金粒子は、界生成アセンブリ(図示せず)によって生成される1つ以上の電磁界および/または静電界を通過し、それらによって影響を及ぼされ、凝固し、収集器または成長中の製作品(図示せず)上へ衝突し、ともに冶金的に結合し、そして固体プレフォームを形成する。
【0094】
図11は、電子ビーム噴霧化アセンブリに送給される溶融合金を生成する溶融アセンブリの構成要素としての、電子ビーム溶融デバイスの使用を図示する。電子ビーム溶融において、原料は、原料に高エネルギー電子を衝突させることによって溶融される。溶融製品の汚染物は、制御された真空中での溶融によって低減または排除され得る。電子ビーム溶融のエネルギー効率は、電子ビームスポットの滞留時間および溶融すべき領域の分布のため、相当する工程のエネルギー効率を超え得る。また、銃内部、および銃ノズルとターゲット材料との間の電子ビームの電力損失は、比較的小さい。
【0095】
上で論じられるように、例えば図11で示される溶融デバイスを含む、本明細書で説明される溶融デバイスは、高い負電位に維持し、それによって、負電荷が装置の噴霧化アセンブリまで下流側に移動する前に、溶融材料に衝突するように構成され得る。一例として、図11で示される溶融デバイスは、導電性で、かつ高い負電位に維持され、溶融材料が噴霧化アセンブリに移動する前に該溶融材料に接触する、溶融チャンバを含むように構成され得る。
【0096】
図11を参照すると、真空チャンバ1110は、溶融デバイスの電子ビーム源1112、溶融されている消耗電極1114、電子ビーム噴霧化アセンブリ1116、および収集器(図示せず)を取り囲む。電子ビームは、電極1114に衝突し、電極を加熱し、溶融して、溶融合金の滴1118(あるいは、流れ)を生成する。滴1118は、電極1114から噴霧化アセンブリ1116に落下する。噴霧化アセンブリ1116によって生成される噴霧化された溶融合金粒子は、界生成アセンブリ(図示せず)によって生成される1つ以上の電磁界および/または静電界を通過し、それらによって影響を及ぼされ、凝固し、収集器または成長中の製作品(図示せず)上へ衝突し、ともに冶金的に結合し、そして固体プレフォームを形成する。
【0097】
図12は、電子ビーム噴霧化アセンブリに送給される溶融合金を生成する溶融アセンブリの構成要素としての、電子ビーム低温炉床溶融デバイスの使用を図示する。標準的な電子ビーム低温炉床溶融手法では、第1の電子ビーム銃が、種々の形態(例えば、インゴット、スポンジ、またはスクラップ)を有することができる、充填物を溶融する。溶融材料は、浅い水冷坩堝(低温炉床)の中へ流れ込み、そこでは、1つ以上の電子銃が溶融材料の温度を維持する。低温炉床の主な機能は、液体材料よりも軽い、または重い含有物を分離する一方で、同時に、より低い密度の粒子の完全な溶解を確実にするために、より高い融点を有する該粒子の滞留時間を増加させることである。動作の全ては、電子銃の適切な動作を確実にし、かつ周囲環境による合金の汚染を回避するために、真空環境の中で行われ得る。電子ビーム低温炉床溶融手法の利点は、(随意の真空に一部起因する)塩化物および水素等の揮発性元素、および溶融物の中の含有物を効果的に排除することができることである。本手法はまた、供給材料の形態に関しても柔軟性がある。
【0098】
図12を参照すると、真空チャンバ1210は、溶融アセンブリの電子ビーム源1212および水冷銅製低温炉床1216、溶融されている消耗電極1214、電子ビーム噴霧化アセンブリ1218、ならびに収集器(図示せず)を取り囲む。溶融材料1220は、流れおよび/または一連の滴の形態で、水冷銅製低温炉床1216から噴霧化アセンブリ1218に落下する。噴霧化アセンブリ1218によって生成される噴霧化された溶融合金粒子は、界生成アセンブリ(図示せず)によって生成される1つ以上の電磁界および/または静電界を通過し、それらによって影響を及ぼされ、凝固し、収集器または成長中の製作品(図示せず)上へ衝突し、ともに冶金的に結合し、そして固体プレフォームを形成する。
【0099】
図13は、電子ビーム噴霧化アセンブリに送給される溶融合金を生成するために、エレクトロスラグ精錬/再溶融(ESR)デバイスおよび冷却誘導ガイド(CIG)の組み合わせを備える溶融アセンブリの使用を図示する。あるいは、ESRおよびCIGの組み合わせの代わりに、真空アーク再溶融(VAR)およびCIGを組み合わせた溶融デバイスが使用され得る。ESRまたはVARデバイスおよびCIGを組み合わせたデバイスは、例えば、米国特許第5,325,906号で説明され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
標準的なESR手法において、電流は、消耗電極、および精錬容器内で電極と接触して配置される導電性スラグを通過する。電極から溶融した滴は、導電性スラグを通過し、それによって精錬され、次いで、下流側の装置に移動し得る。ESR装置の基本構成要素としては、電源、電極送給機構、水冷銅製精錬容器、およびスラグが挙げられる。使用される特定のスラグタイプは、精錬されている特定の材料に依存する。VAR工程は、真空中で電極にアークを衝突させることによって、合金から成る消耗電極を溶融することを含む。溶解する窒素および水素を低減させることに加えて、VAR工程は、アークプラズマの中の多くの酸化物含有物を除去する。
【0101】
ESR/CIGおよびVAR/CIGの組み合わせにおいて、「コールドフィンガー」または「冷却壁誘導ガイド」と様々に称されるCIGは、材料がVARまたはESR装置から噴霧化アセンブリまで下流側に移動するときに、溶融材料を溶融形態に維持することができる。CIGはまた、溶融材料が雰囲気と接触することも防ぐ。CIGは、ESRまたはVAR装置の上流側、かつ噴霧化アセンブリの下流側に直接連結され得、精錬された溶融材料を雰囲気から保護し、酸化物が溶融物の中に形成され、該溶融物を汚染することを防止する。CIGはまた、ESRまたはVAR装置から下流側の噴霧化アセンブリへの溶融材料の流れを制御するためにも使用され得る。
【0102】
CIGデバイスの構造および動作様式は、例えば、米国特許第5,272,718号、第5,310,165号、第5,348,566号、および第5,769,151号で説明され、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。CIGは、一般に、溶融材料を受け取るための溶融物コンテナを含む。溶融物コンテナは、開口を備える底部壁を含む。CIGの伝達領域は、溶融物コンテナの中の開口から溶融材料を受け取るように構成される通路(例えば、一般に、漏斗形状であり得る)を含むように構成される。CIGの1つの従来の設計において、漏斗形状の通路の壁は、いくつかの液冷金属セグメントによって画定され、該液冷セグメントは、一般に、領域の入口端から出口端まで断面積が減少し得る通路の内輪郭を画定する。1つ以上の導電コイルが漏斗形状の通路の壁と関連付けられ、電流の供給源は、該導電コイルと選択的に電気的接続する。溶融材料がCIGの通路を通ってCIGの溶融物コンテナから流れている時間中に、電流は、溶融材料を誘導的に加熱し、溶融形態に維持するのに十分な強度で導電コイルを通過する。
【0103】
溶融材料の一部分は、CIGの漏斗形状の通路の冷却壁に接触し、凝固して、スカルを形成し得、該スカルは、CIGを通って流れる溶融材料の残部を隔離して該冷却壁に接触しないようにする。壁の冷却およびスカルの形成は、CIGの内壁を形成する金属または他の構成要素によって、CIGを通過する溶融材料が汚染されないことを確実にする。例えば米国特許第5,649,992号で開示されるように、CIGの漏斗形状部分のある領域のスカルの厚さは、冷却剤の温度、冷却剤の流量、および/または誘導コイルの電流の強度を適切に調整することによって、CIGを通る溶融物の流れを制御もしくは完全に遮断するように制御され得る。スカルの厚さが増加するにつれて、移送領域を通る流れが相応して減少する。CIG装置は、様々な形態で提供され得るが、それぞれ、一般的に、(1)溶融物を誘導するために重力を利用する通路と、(2)壁上でのスカルの形成を促進するための、壁の少なくとも1つの領域の中の冷却手段と、(3)通路内の溶融材料を誘導的に加熱するための、通路の少なくとも一部分と関連付けられる導電コイルと、を含む。
【0104】
図13を参照すると、真空チャンバ1310は、ESR/CIG溶融アセンブリ、電子ビーム噴霧化アセンブリ1312、および収集器(図示せず)を取り囲む。ESR/CIG溶融物供給源は、所望の合金の消耗電極1314および水冷銅製坩堝1316を含む。加熱された溶融スラグ1318は、電極1314を溶融して、溶融合金プール1320を形成するように作用する。溶融プール1320からの溶融合金は、溶融流および/または一連の滴1322の形態で、CIGノズル1324を通って流れ、噴霧化アセンブリ1312に移動する。噴霧化アセンブリ1312によって生成される噴霧化された溶融合金粒子は、界生成アセンブリ(図示せず)によって生成される1つ以上の電磁界および/または静電界を通過し、それらによって影響を及ぼされ、凝固し、収集器または成長中の製作品(図示せず)上へ衝突し、ともに冶金的に結合し、そして固体プレフォームを形成する。
【0105】
固体溶射成形工程を行うように構成される装置またはシステムの溶融アセンブリで原料を溶融するための代替の手法としては、誘導溶融、プラズマアーク溶融等が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、誘導溶融では、コイル状の一次電気導体が、棒状の金属製送給材料を取り囲み得る。一次導体に電流を通過させることによって、電磁誘導を通して二次電流が棒材内に誘導される。二次電流は、該棒材をその溶融温度よりも高い温度に加熱する。
【0106】
図14図17は、固体溶射成形工程を行うように構成されるシステムおよび装置の種々の限定的でない実施形態を図示する。
【0107】
図14は、成長中の製作品の上へ衝突し、冶金的に結合して、固体プレフォームを形成する、噴霧化され、凝固した合金粒子を概略的に図示する。真空チャンバ1410は、電子ビーム噴霧化アセンブリ1412を取り囲む。例えば上で論じられる種々の溶融アセンブリのうちの1つであり得る、溶融アセンブリ(図示せず)によって生成される溶融合金の一連の滴1414は、噴霧化アセンブリ1412の中へ移動する。噴霧化アセンブリ1412は、噴霧化された合金粒子1416を生成し、該噴霧化された合金粒子は、界生成アセンブリの電磁コイル1417(断面で示される)によって生成される電磁界および/または静電界(複数可)1413を通過し、該界と相互作用し、そして該界によって影響を及ぼされる。コイル1417は、噴霧化アセンブリ1412の下流側の領域1418に界(複数可)を生成するように位置付けられる。噴霧化された合金粒子1416は、噴霧化アセンブリ1412から進行しながら凝固し、成長中の製作品に衝突し、冶金的に結合して、固体プレフォームを形成する。
【0108】
図15は、電子ビーム噴霧化によって生成される、噴霧化し、溶融し、凝固した合金から、固体溶射成形するインゴットの生成を概略的に図示する。真空チャンバ1510は、溶融アセンブリ(図示せず)および電子ビーム噴霧化アセンブリ1512を取り囲む。溶融アセンブリは、例えば、上で論じられる種々の溶融アセンブリのうちの1つであり得る。溶融アセンブリ(図示せず)によって生成される溶融合金の滴1514は、噴霧化アセンブリ1512の中へ移動する。溶融合金の滴1514は、噴霧化アセンブリ1512内で噴霧化されて、噴霧化された合金粒子1516の溶射を形成する。
【0109】
噴霧化された合金粒子1516は、界生成アセンブリのプレート1518によって生成される1つ以上の電磁界および/または静電界(図示せず)を通過し、該界と相互作用し、そして該界によって影響を及ぼされる。プレート1518は、チャンバ1510の壁を通過するワイヤ1520によって電源(図示せず)に接続される。噴霧化された合金粒子1516は、凝固し、界生成アセンブリによって生成される界(複数可)の影響下で、回転収集器プレート1524の上へ衝突して、固体プレフォーム1525を形成する。回転収集器プレート1524は、噴霧化アセンブリからほぼ一定の距離に堆積界面を維持する速度で、下方に引き出すことができる。歩留まりを高め、かつ堆積密度を向上させるために、チャンバ1510の壁を通過するワイヤ1526によって電源(図示せず)にプレート1524を接続することによって、収集器プレート1524を高い正電位に帯電させ得る。
【0110】
図16は、噴霧化された溶融合金粒子が凝固し、装置の第1のチャンバの中の収集器/製作品に衝突する、固体溶射成形工程を行うように構成される装置またはシステムの実施形態を概略的に図示する。真空チャンバ1610は、溶融アセンブリ(図示せず)および電子ビーム噴霧化アセンブリ1612を取り囲む。溶融アセンブリは、例えば、上で論じられる種々の溶融アセンブリのうちの1つであり得る。溶融アセンブリ(図示せず)によって生成される溶融合金の一連の滴1614は、噴霧化アセンブリ1612の中へ移動する。溶融合金の滴1614は、噴霧化アセンブリ1612内で噴霧化されて、合金粒子1616を形成する。合金粒子1616は、界生成アセンブリの電磁コイル1620(断面で示される)によって生成される1つ以上の電磁界および/または静電界1618を通過し、該界と相互作用し、そして該界によって影響を及ぼされる。噴霧化された粒子1616は、凝固し、界1618の影響下で、コンテナの形態の収集器1621に中へ方向付けられる。
【0111】
固体合金粒子は、コンテナ1621の中で形成する製作品1625に衝突し、変形し、製作品1625に冶金的に結合して、固体プレフォームを形成する。固体プレフォームは、形成されると、真空ロック1628によって密閉され得るチャンバ1626の中へ移送される。コンテナ1621およびプレフォームは、既知の手法に従って熱機械的に処理するために、第2の真空ロック1630を介して、雰囲気に放出され得る。随意に、図16の装置は、一般に、上で説明されるように、噴霧化された溶融合金粒子から熱を除去して固体合金粒子を形成するように構成されるような、熱伝達デバイスを含み得る。また、随意に、コンテナ1621は、ワイヤ1622によって電源1624に電気的に接続され得、また、負に帯電した固体粒子1616がコンテナ1621の中に衝突している間、正電位に保持される。ワイヤ1622は、コンテナをチャンバ1626に移動させる前に、コンテナ1621から遠隔で接続解除され得る。
【0112】
図17は、固体溶射成形工程を行うように構成される装置またはシステム1700の限定的でない実施形態を概略的に図示する。図17において、固体溶射成形される物品は、電子ビーム噴霧化によって提供される溶融合金粒子を凝固させることによって生成される固体合金粒子を溶射することによって、金型で生成される。真空チャンバ1710は、溶融アセンブリ(図示せず)と、電子ビーム噴霧化アセンブリ1712とを含む要素を取り囲む。溶融アセンブリは、例えば、上で論じられる種々の溶融アセンブリのうちの1つであり得る。溶融アセンブリによって生成される溶融合金の一連の滴1714は、噴霧化アセンブリ1712の中へ移動する。溶融合金の滴1714は、噴霧化アセンブリ1712内で噴霧化されて、噴霧化された合金粒子1716の溶射を形成する。噴霧化された合金粒子1716は、界生成アセンブリの電気的に励磁されるコイル1720(断面で示される)によって生成される1つ以上の電磁界および/または静電界1718を通過し、該界と相互作用し、そして該界によって影響を及ぼされる。噴霧化された材料1716は、凝固し、界生成アセンブリによって生成される界1718の影響下で、金型1724の中へ方向付けられ、結果として生じる固体溶射成形物品1730は、金型ベース(図示せず)の下方への運動によって金型1724から引き出される。随意に、金型ベースは、回転するように、または別様には平行移動するように構成され得る。
【0113】
図17Aで示される装置1700の代替の限定的でない実施形態では、電源1732が提供され、該電源は、電極1734間に非平衡プラズマを形成するように電位差を生じさせる。熱は、プラズマによって、凝固している合金粒子および/または固体物品1730の表面から電極1734に伝えられ、該電極は、熱交換器1736および電極1734を通って循環する誘電液体によって冷却される。
【0114】
図18は、本明細書で説明されるシステムおよび装置を使用して行われ得る、固体溶射成形工程の限定的でない実施形態を図示する。合金原料1801は、溶融ステップ1805で溶融されて、溶融合金の流れおよび一連の溶融合金滴のうちの少なくとも1つを生成する。溶融ステップ1805は、複数の連続する、溶融、精錬、および再溶融のサブステップを含み得る。例えば、合金原料は、適用可能なものとして、母材のスクラップ、スポンジ、再生物、ならびに/または母材および合金化元素の未使用の供給源を含み得、これらは、溶融して初期溶融物を形成する。初期溶融物は、VAR、プラズマアーク溶融、電子ビーム溶融、または任意の他の好適な溶融手法を使用して生成され得る。
【0115】
初期溶融物の化学的性質は、所定の化学的性質を達成するために、必要に応じて、分析され、改良され得る。許容される溶融物の化学的性質が達成されると、溶融物は、さらなる精錬および/もしくは再溶融作業のために消耗電極に鋳造され得るか、または溶融合金の流れおよび一連の溶融合金滴のうちの少なくとも1つを生成するために使用され得る。種々の実施形態において、合金原料は、溶融合金の流れおよび一連の溶融合金滴のうちの少なくとも1つを生成するために溶融される、許容される合金の化学的性質の消耗電極または他の消耗物品を含み得る。
【0116】
上で述ベられるように、本明細書で使用される「合金」という用語は、純金属および合金の双方を指し、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、チタン、ニオブ、ジルコニウム、およびこれらの金属のうちのいずれかに基づく、ステンレス鋼、ニッケル基超合金、コバルト基超合金、チタンアルミナイド、ニッケル−チタン合金等の合金が挙げられる。本明細書で説明される実施形態に従って処理され得るニッケル基超合金の限定的でない例としては、IN100合金(UNS 13100)、Rene88(商標)合金、合金720、合金718(UNS N07718)、および718Plus(商標)合金(UNS N07818)(ATI Allvac、Monroe、North Carolina、USAから入手可能)が挙げられるが、それらに限定されない。本明細書で説明される実施形態に従って処理され得るチタン合金の限定的でない例としては、Ti−6Al−4V合金、T−17合金、Ti−5−5−5−3合金、Ti−Ni合金、およびTi−Al合金が挙げられるが、それらに限定されない。
【0117】
ステップ1810で、溶融合金の流れおよび一連の溶融合金滴のうちの少なくとも1つが、電子ビーム噴霧化を使用して噴霧化される。ステップ1810中に、熱イオン電子ビームエミッタおよび/またはワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタ等の電子源から生成される電子を、溶融合金の流れおよび一連の溶融合金滴のうちの少なくとも1つに衝突させる。衝突する電子は、静電反発力が溶融合金の表面張力を超え、流れおよび/または滴をより小さい溶融合金粒子に物理的に分割するまで、溶融合金の流れおよび/または一連の溶融合金滴を急速に静電帯電させ、それによって、溶融合金を噴霧化する。衝突する電子はまた、溶融合金の帯電した噴霧化された粒子も生成する。噴霧化された溶融合金粒子のサイズおよび電荷は、例えば、溶融合金に衝突させる電子界のサイズ、形状、および密度を制御することによって、制御され得る。
【0118】
ステップ1815で、溶融合金の噴霧化され、帯電した粒子は、静電界および電磁界のうちの少なくとも1つとの相互作用を通して加速される。種々の実施形態において、噴霧化アセンブリと収集器との間に確立される静電界は、噴霧化され、帯電した合金粒子と相互作用して、該粒子を噴霧化アセンブリから離れた収集器に向かって加速する。加速度の大きさは、例えば、静電界強度に直接影響を及ぼす、噴霧化アセンブリと収集器との間の電圧差の大きさを制御することによって制御され得る。
【0119】
ステップ1820で、溶融合金粒子を合金の固相線温度以下の温度まで冷却することによって、加速した溶融合金粒子を凝固させる。本明細書で使用される「固相線温度」という用語は、合金が完全に固体状態である、合金の最高温度を指す。対照的に、合金の「液相線温度」は、熱力学的平衡において合金の固体結晶が液体合金と共存する最高温度である。液相線温度を超える温度で、合金は完全に液体であり、固相線温度以下の温度で、合金は完全に固体である。固体温度を超え、かつ液相線温度以下の温度で、合金は、2相状態で存在する。
【0120】
加速した合金粒子を合金の固相線温度以下の温度まで冷却することは、合金が収集器と接触する前に溶融状態から固体状態に変化することを確実にする。例えば、合金718、ニッケル基超合金は、約1358℃の液相線温度、および約1214℃の固相線温度を有する。Wei−DiCao,「Solidification and solid state phase transformation of Allvac(登録商標)718Plus(商標)alloy」,Journal of the Minerals,Metals&Materials Society,2005を参照されたく、参照により本明細書に組み込まれる。したがって、合金718が固体溶射成形される限定的でない実施形態において加速した溶融合金718粒子は、該粒子が収集器と接触する前に凝固させるために、1214℃以下の温度まで冷却され得る。
【0121】
種々の実施形態において、加速した溶融合金粒子は、合金の固相線温度(TS)以下で、かつ固相線温度の0.50倍を超える温度(0.50×TS)まで冷却される。溶融合金粒子を、0.50×TS〜TSの範囲の温度まで冷却することは、粒子が実質的に凝固するが、基板との衝突時に変形するのに十分軟らかいこと、および固体状態で冶金的に結合(すなわち、固体状態で溶着)して、一体的でモノリシックな固体プレフォームを形成することを確実にし得る。例えば、合金718の極限強度、2%降伏強度、および硬度は、合金の固相線温度の約0.50倍である約600℃を超える温度で、より高い割合で低下(すなわち、合金が軟化)する。
【0122】
種々の実施形態において、加速した溶融合金粒子は、0.50×TS〜TSの範囲、または例えば0.50×TS〜0.99×TS、0.50×TS〜0.95×TS、0.60×TS〜0.95×TS、0.70×TS〜0.95×TS、0.80×TS〜0.95×TS、もしくは0.90×TS〜0.99×TS等のその中に包含される任意のサブ範囲の温度まで冷却される。
【0123】
種々の実施形態において、溶融合金粒子が加速される、噴霧化アセンブリと収集器との間の距離は、溶融合金粒子が、伝導、慣例、および/または放射を通して十分な熱エネルギーを失って、収集器と接触する前に該溶融合金粒子を凝固させるように予め決定される。種々の実施形態において、非平衡プラズマは、溶融粒子から熱エネルギーを能動的に伝達して、収集器と接触する前に加速した溶融合金粒子を凝固させるように、該加速した溶融合金粒子の経路の中で生成される。
【0124】
種々の実施形態において、加速した溶融合金粒子は、固体溶射成形工程を行うように構成される装置またはシステムの中の熱制御ゾーンを通って進行する。熱制御ゾーンは、合金粒子から能動的に熱を除去するために、または伝導、慣例、および/または放射による熱制御ゾーンの中の包囲環境への放熱速度を増加させるために、熱伝達デバイスを備え得る。例えば、熱制御ゾーンは、熱制御ゾーンの中の温度を周囲温度以下に維持するために、冷却コイル等のデバイスを備え得、溶融合金粒子と包囲環境との間により大きい温度差を確立する。より大きい温度差は、溶融合金粒子からのより高い放熱速度と相関し、収集器に接触する前のより効果的および/または効率的な凝固を可能にする。
【0125】
ステップ1825で、固体合金粒子を基板上へ衝突させ、合金プレフォーム1830を固体溶射成形する。種々の実施形態において、基板は、プラテン、円筒、マンドレル、コンテナ、チャンバ、金型、または他の表面等の、収集器を備え得る。種々の実施形態において、基板は、初期収集器の表面に衝突した固体合金粒子から形成された、成長中の製作品またはプレフォームを備える。このようにして、衝突する固体合金粒子は、さらに製作品を成長させ、プレフォームを形成する。
【0126】
種々の実施形態において、固体合金粒子は、例えば0.50×TS〜TSの範囲またはその中に包含される任意のサブ範囲内の温度等の、合金の固相線温度以下の温度まで冷却された後に、基板に衝突する。合金の固相線温度以下の温度、例えば0.50×TS〜TSの範囲の温度を有する、衝突する固体合金粒子は、粒子が実質的に凝固するが、基板との衝突時に変形するのに十分軟らかいこと、および固体状態で冶金的に結合(すなわち、固体状態で溶着)して、一体的でモノリシックな固体プレフォームを形成することを確実にし得る。
【0127】
種々の実施形態において、初期収集器は、噴霧化され、凝固した粒子を形成する合金と同じ、または類似する合金から形成される固体物品で構成され得る。これは、固体合金粒子が基板におよび互いに冶金的に結合(すなわち、固体状態で溶着)して、一体的でモノリシックなプレフォームを形成するように、衝突する固体合金粒子が、初期収集器と冶金的に適合することを確実にし得る。種々の実施形態において、初期収集器を形成する材料は、切削、研削等によって、固体溶射成形した合金プレフォームから除去され得る。
【0128】
図19A〜19Fは、固体溶射成形工程およびシステム1900の限定的でない実施形態を集合的に図示する。図19Aを参照すると、合金溶融装置1910は、一連の溶融合金滴1915を生成するが、合金溶融装置1910は、溶融合金の流れおよび/または一連の溶融合金滴を生成し得ると理解されたい。噴霧化装置1920は、固体溶射成形システム1900を通して溶融装置1910から基板1930に向かって進行する溶融合金滴1915の経路と交差する、電子界1925を生成する。
【0129】
図19Bを参照すると、電子界1925を構成する電子は、溶融合金滴1915に衝突し、レイリー限界を超えて滴1915を急速に静電的に帯電させ、より小さい溶融合金粒子1935に滴を噴霧化する。噴霧化された溶融合金粒子1935は、衝突する電子により正味負電荷を有する。噴霧化された溶融合金粒子1935は、溶融合金滴1915がより小さい粒子に分割されるカスケード効果によって形成され得、該より小さい粒子は、電子を衝突させることによって負電位に再帯電され、さらに小さい粒子に分割され、この工程は、電子が連続的により小さい噴霧化された粒子に加えられる時間中繰り返す。代替として、または加えて、噴霧化された溶融合金粒子1935は、溶融合金滴1915の表面から逐次的に剥離し得る。物理的噴霧化機構に関わらず、溶融合金滴1915は、十分な負電荷が合金に蓄積し、該合金が噴霧化された溶融合金粒子1935に分裂するように、十分な時間にわたって、衝突する電子界1925に曝露される。
【0130】
図19Cを参照すると、噴霧化され、帯電した溶融合金粒子1935は、静電界および電磁界のうちの少なくとも1つ1940によって加速される。界1940は、粒子が、制御された手法で、固体溶射成形システム1900を通して、噴霧化装置1920から基板1930に向かって進行するように、噴霧化され、帯電した溶融合金粒子1935の加速度、速度、および/または方向を制御するように構成される。
【0131】
図19Dを参照すると、噴霧化され、帯電した溶融合金粒子1935は、溶融合金粒子1935を加速しながら凝固させ、固体合金粒子1945を形成するように、合金の固相線温度以下の温度まで冷却される。合金粒子1935/1945は、基板1930に接触する前に、冷却され、凝固する。図19Dは、冷却コイル1950を備える、熱制御ゾーンを示す。冷却剤流体は、冷却コイルの中を流れて、熱制御ゾーンの中をより低い温度に維持し、溶融合金粒子1935と包囲環境との間により大きい温度差を確立する。より大きい温度差は、溶融合金粒子1935からのより高い放熱速度と相関し、基板1930に接触する前の固体合金粒子1945へのより効果的および/または効率的な凝固を可能にする。
【0132】
しかしながら、固体溶射成形システム1900の熱制御ゾーンでは、異なる冷却手段が利用され得ることを理解されたい。例えば、溶融合金粒子1935を冷却し、凝固させるために、本明細書で説明される非平衡プラズマ生成アセンブリ(図示せず)が使用され得る。代替として、または加えて、噴霧化装置1920と基板1930との間の距離(d)は、熱制御ゾーンの可変的な加熱または冷却を伴わずに凝固を生じさせるために、制御された噴霧化された粒子のサイズおよび制御された粒子加速度によって構成され得る。
【0133】
図19Eを参照すると、固体合金粒子1945は、本明細書で説明される正の電気極性を有する収集器を備える、基板1930の上へ衝突する。衝突する固体合金粒子1945は、変形し、基板1930に冶金的に結合し、成長中の製作品1955を生成する。図19Fを参照すると、固体合金粒子1945は、成長中の製作品1955を備える基板1930の上へ衝突し、変形し、基板1930におよび互いに冶金的に結合し続け、一体的でモノリシックな固体合金プレフォームを形成する。
【0134】
図19A〜19Fで示される固体溶射成形システム1900の種々の構成要素の1つ以上は、真空容器または複数の動作可能に接続される真空容器で取り囲まれ得る。種々の限定的でない実施形態では、大きい電圧差が、正にバイアスされた基板と負にバイアスされた噴霧化装置との間に確立され得、噴霧化された溶融合金粒子および冷却された固体合金粒子の加速を促進し得る。電圧差の大きさは、結果として生じる加速度および合金粒子の衝突速度と相関し得る。
【0135】
種々の実施形態において、衝突時の固体合金粒子の温度および固体合金粒子の衝突速度は、成長中の製作品/プレフォームに影響を及ぼす、重要な動作パラメータである。これらの動作パラメータの制御は、噴霧化された粒子のサイズ、静電加速電圧、噴霧化装置と基板との距離、および/または噴霧化装置と基板との間の熱制御ゾーンの可変的な加熱もしくは冷却を制御することによって達成され得る。
【0136】
加えて、初期合金溶融動作の態様は、固体溶射成形工程全体に対して、種々の不利な点を提示し得る。初期合金溶融動作は、好適な材料の電荷を準備し、次いで、充填物を溶融することを含む。溶融充填物または「溶融物」は、次いで、溶融物の化学的性質を改良するために、および/もしくは溶融物から不要な成分を除去するために、精錬および/もしくは処理され得る。溶融炉は、電気および化石燃料の燃焼を含む手段によって給電され得、好適な装置の選択は、主に、相対的コストおよび適用可能な環境規制によって、ならびに準備される材料のアイデンティティによって影響を及ぼされる。溶融手法の一般的クラスとしては、例えば、誘導溶融(真空誘導溶融を含む)、アーク溶融(真空アークスカル溶融を含む)、坩堝溶融、および電子ビーム溶融が挙げられる。
【0137】
セラミックライニングした炉で生成される溶融物は、酸化物で汚染され得る。真空環境を利用し、セラミックライニングした炉を使用しない、種々の溶融手法が開発された。これらの手法は、従来のセラミックライニングした炉で溶融物を形成することと比較して、酸化物汚染が大幅に少なくなる。そのような手法の例としては、例えば、電子ビーム(EB)溶融、真空アーク再溶融(VAR)、真空二重電極再溶融(VADER)、およびエレクトロスラグ精錬/再溶融(ESR)が挙げられる。VAR、VADER、およびESR手法は、例えば、米国特許第4,261,412号、第5,325,906号、および第5,348,566号で説明され、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0138】
電子ビーム溶融は、ターゲット材料を加熱するために使用される、高エネルギーでほぼ直線状の電子の流れを生成するために、熱イオン電子ビーム銃を利用することを含む。熱イオン電子ビーム銃は、フィラメントに電流を通し、それによって、フィラメントを高温に加熱し、フィラメントから離れて電子を「沸き出させる」ことによって動作する。フィラメントから生成される電子は、次いで、非常に狭い(ほぼ2次元で)ほぼ直線状の電子ビームの形態で、ターゲットに向かって合焦され、加速される。合金溶融物を準備するために、あるタイプのイオンプラズマ電子ビーム銃も使用された。具体的には、V.A.Chernov,「Powerful High−Voltage Glow Discharge Electron Gun and Power Unit on Its Base」,1994 Intern.Conf.on Electron Beam Melting(Reno,Nevada),pp.259−267で説明される、「グロー放電」電子ビーム銃が、Antares,Kiev,Ukraineから入手可能なある種の溶融炉に組み込まれた。そのようなデバイスは、陰極に衝突する陽イオンを含む低温プラズマを生成することによって動作し、ほぼ2次元で直線状の電子ビームを形成するように合焦される、電子を生成する。
【0139】
上述のタイプの電子ビーム銃によって生成されるほぼ直線状の電子ビームは、電子ビーム溶融炉の真空溶融チャンバの中へ方向付けられ、溶融するおよび/または溶融状態に維持する材料に衝突させる。導電性材料を通しての電子の伝導は、該材料を、特定の溶融温度を超える温度まで迅速に加熱する。例えば約100kW/cm2とすることができる、ほぼ直線状の電子ビームの高いエネルギーを想定すると、直線状電子ビーム銃は、超高温熱源であり、容易に、溶融温度を超えることができ、また一部の場合では、ほぼ直線状のビームが衝突する材料の気化温度を超えることができる。磁気偏向または類似の方向付け手段を使用することで、ほぼ直線状の電子ビームは、溶融チャンバ内のターゲット材料全体にわたって高周波でラスタ化され得、広い範囲全体にわたって、および複数の複雑な形状を有するターゲット全体にわたってビームを方向付けることを可能にする。
【0140】
本明細書で説明される固体溶射成形工程、システム、および装置では、電子ビーム低温炉床溶融手法が使用され得る。原料は、原料棒材の端部上にほぼ直線状の電子ビームを衝突させることによって、滴下溶融され得る。溶融した原料は、水冷銅製炉床の端部領域に滴下され、保護スカルを形成する。溶融材料が炉床に収集されると、該溶融材料があふれ出て、重力によって噴霧化アセンブリの中へ落下する。炉床内での溶融合金材料の滞留時間中に、ほぼ直線状の電子ビームが、材料の表面全体にわたって迅速にラスタ化され得、該溶融合金材料を溶融形態に保持する。これはまた、高蒸気圧構成要素の蒸気化を通して、溶融合金材料を脱ガスおよび精錬する効果も有する。炉床はまた、高密度および低密度の固体含有物の重力分離を促進するようにサイズ決定され得、その場合、酸化物および他の比較的低密度の含有物は、溶解を可能にするのに十分な時間にわたって溶融金属のままであり、その一方で、高密度の粒子は、底部に沈み、スカルの中に閉じ込められる。
【0141】
本明細書で説明される固体溶射成形工程、システム、および装置での使用に好適である溶融手法としては、ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタを組み込む、電子ビーム低温炉床溶融手法も挙げられる。これらの手法は、例えば、米国特許第7,803,211号、ならびに米国特許出願公開第2008/0237200号および第2010/0012629号で説明され、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0142】
本明細書で使用される「ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタ」という用語は、正に帯電したイオンを陰極の上へ衝突させ、それによって、陰極から電子を放出させることによって、比較的広い3次元電子界を生成する装置を指す。ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタによって生成される電子ビームは、2次元ビームではなく、その代わりに、3次元の電子界または電子「フラッド(flood)」であり、これは、ターゲット上に衝突するときに、ほぼ直線状の電子ビームをターゲットの上へ衝突させることによってカバーされる小さい点と比較して、非常に大きいターゲット上の2次元表面領域をカバーする。このように、ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタによって生成される電子界は、本明細書では、電子ビーム溶融炉で使用される従来の電子銃によって生成される比較的非常に小さい接点に対して、「広域」電子界と称される。ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタは、無関係な応用に使用されてきたが、例えば、「ワイヤイオンプラズマ(WIP)電子」銃もしくはエミッタ、「WIP電子」銃もしくはエミッタ、および少々紛らわしいが、「直線状電子ビームエミッタ」(デバイスの種々の実施形態で、プラズマ生成ワイヤ電極(複数可)の直線的な性質を指す)のように、様々に称される。
【0143】
ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタは、様々な設計で利用可能であるが、全てのそのようなエミッタは、ある種の基本的な設計属性を共有する。そのようなエミッタのそれぞれは、陽イオンを含むプラズマを生成する細長いワイヤ陽極の形態の正イオン源を含む、プラズマまたはイオン化領域と、ワイヤによって発生する正イオンをインターセプトするように離間され、位置付けられる陰極とを含む。大きい負電圧が陰極に印加されると、ワイヤ正イオン源によって発生するプラズマの中の僅かな正イオンを陰極表面に向かって加速させて衝突させ、よって、陰極から二次電子が放出される(「一次」電子は、正イオンとともにプラズマ内に存在する)。陰極表面から生成される二次電子は、一般的に陰極に衝突する正イオンプラズマの3次元形状を有する、電子界を形成する。二次電子は、次いで、陰極付近から陽極に戻る方向に加速され、エミッタ内の低圧ガスを通過する工程では、殆ど衝突しない。
【0144】
ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタの種々の構成要素を適切に構成することによって、幅の広いエネルギー二次電子界を陰極に形成し、エミッタからターゲットに向かって加速することができる。図20は、ワイヤ放電プラズマイオン電子エミッタの構成要素の簡略図であり、電流が細いワイヤ陽極12に印加されて、プラズマ14を生成する。プラズマ14内の正イオン16は、負に帯電した陰極18に向かって加速して衝突し、広域二次電子雲20を遊離させ、該広域二次電子雲は、電極間およびターゲットに向かう電界の作用によって陽極12の方向に加速される。
【0145】
種々の限定的でない実施形態において、固体溶射成形工程を行うように構成されるシステムまたは装置は、合金を溶融するための溶融アセンブリを備え得、該溶融アセンブリは、圧力調節チャンバ(溶融チャンバ)と、溶融チャンバの中に配置され、溶融合金を保持するように構成される、炉床とを含む。少なくとも1つのワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタは、溶融チャンバの中にまたはそれに隣接して配置され得、エミッタによって発生する3次元広域電子界をチャンバの中へ方向付けるように位置付けられ得る。ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタは、導電性合金をその溶融温度まで加熱するのに十分なエネルギーを有する、3次元電子界を生成する。
【0146】
種々の限定的でない実施形態において、噴霧化アセンブリは、炉床から、溶融合金の流れおよび一連の滴のうちの少なくとも1つを受け取るように構成される。溶融アセンブリは、従来の電子ビーム溶融炉を使用して溶融され得る、例えばアルミニウム、タンタル、チタン、タングステン、ニオブ、ジルコニウム、ニッケル、鉄、およびコバルトに基づく合金等の、任意の合金を溶融するために使用され得る。種々の限定的でない実施形態において、溶融アセンブリは、コバルト基超合金またはニッケル基超合金の化学的性質を構成する材料を含む充填物を溶融するように構成される。種々の他の限定的でない実施形態において、例えば、溶融アセンブリは、VIM、VAR、およびESRのうちの1つ以上によって予め生成され、処理され得る、予備成形された合金インゴットまたは他の構造体を溶融するように構成される。
【0147】
溶融アセンブリは、導電性金属または他の合金化添加物を溶融チャンバの中へ導入するように適合される、1つ以上の材料送給機を含み得る。送給機のタイプとしては、例えば、棒材送給機およびワイヤ送給機が挙げられ、選択される送給機のタイプは、炉に対する特定の設計要件に依存する。溶融アセンブリの材料送給機および少なくとも1つのワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタは、ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタによって放出される電子界が、送給機によってチャンバの中へ導入される材料に少なくとも部分的に衝突するように構成され得る。送給機によって溶融チャンバの中へ導入される材料が導電性であれば、電子界は、材料を加熱し、溶融し得る。
【0148】
溶融アセンブリに組み込まれる炉床は、当技術分野で知られている種々の炉床のタイプから選択され得る。例えば、溶融アセンブリは、低温炉床を組み込むことによって電子ビーム低温炉床溶融炉、より具体的には、例えば、溶融チャンバの中の水冷銅製低温炉床の性質を有し得る。当業者に知られているように、低温炉床は、炉床内の溶融材料を炉床面に凍結させ、保護層またはスカルを形成させる冷却手段を含む。別の限定的でない例として、炉床は、「自生」炉床を備え得るが、これは、炉の中で溶融している合金がめっきされる、または該合金から製作される炉床であり、その場合、溶け落ちを防止するために、炉床の底部面も水冷され得る。
【0149】
溶融チャンバに含まれる特定の炉床は、溶融材料の保持領域を含み得、該保持領域には、溶融材料が、溶融チャンバと流体連通している下流側の噴霧化デバイスに移動する前に、ある滞留時間にわたって存在する。炉床および少なくとも1つのワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタは、ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタによって放出される電子界が、溶融材料の保持領域に少なくとも部分的に衝突するように、溶融アセンブリの中に位置付けられ得る。このようにして、電子界は、溶融材料の保持領域内に合金材料を溶融状態で維持するために印加され得る。
【0150】
種々の実施形態において、溶融アセンブリは、圧力調節式溶融チャンバと、該圧力調節式溶融チャンバの中に配置される炉床とを含み、該炉床は、溶融材料の保持領域を含む。溶融アセンブリはさらに、圧力調節式溶融チャンバの中にまたはそれに隣接して配置される1つ以上のワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタを含み得る。炉床および少なくとも1つのワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタは、エミッタによって生成される電子界が溶融材料の保持領域に少なくとも部分的に衝突するように位置付けられる。圧力調節式溶融チャンバと流体連通している噴霧化アセンブリは、炉床から溶融材料を受け取るように位置付けられ得る。少なくとも1つの送給機は、炉の中に含まれ得、炉床の少なくともある領域を覆う位置で、材料を圧力調節式溶融チャンバの中へ導入するように構成され得る。
【0151】
任意の好適なワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタは、固体溶射成形工程を行うように構成されるシステムおよび装置で使用され得る。ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタの好適な実施形態は、例えば、米国特許第4,025,818号、第4,642,522号、第4,694,222号、第4,755,722号、および第4,786,844号で説明され、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。好適なエミッタとしては、炉の溶融チャンバの中へ方向付けられ得、溶融チャンバの中へ置かれる導電性の送給材料を所望の温度まで加熱する、3次元の広域電子界を生成できるものが挙げられる。好適なエミッタとしてはまた、上で論じられるように噴霧化チャンバの中へ方向付けられ得、溶融合金材料を噴霧化する、3次元の広域電子界を生成できるものも挙げられる。
【0152】
ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタの種々の限定的でない実施形態において、エミッタは、プラズマ領域と、陰極領域とを含む。プラズマ領域は、正イオンを含むプラズマを生成するように適合される、少なくとも1つの細長いワイヤ陽極を含む。陰極領域は、陰極を負に帯電させるように適合される高電圧電源に電気的に接続される、陰極を含む。ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタにおいて、プラズマを生成するために使用される電極は、プラズマ領域の長さに沿って位置付けられる1つのワイヤまたは複数のワイヤであり得る。正イオンが衝突する陰極の少なくとも一部分は、電子を発生させるのに好適な材料から成る。エミッタの陰極領域の中に配置される陰極の種々の限定的でない実施形態はまた、電子の発生を促進するように高い溶融温度および低い仕事関数を有する、例えばモリブデンインサート等の、インサートも含み得る。陰極および陽極は、ワイヤ陽極によって発生するプラズマの中の正イオンを、電極間の電界の影響下で、陰極に向かって加速して衝突させ、陰極から二次電子の広域界を作用させるように互いに対して位置付けられる。
【0153】
ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタの種々の限定的でない実施形態は、溶融チャンバおよび/または噴霧化チャンバの壁を通って開口する、薄い電子透過チタン箔またはアルミ箔等の、少なくとも1つの好適な電子透過窓を含む。好適な電子透過窓としては、例えば、窒化ホウ素または炭素(例えば、ダイヤモンド)材料を含む窓も挙げられ得る。電子透過窓はさらに、電子に対して透過性であることが当技術分野で一般に知られている低原子番号の元素を含む、材料を含み得る。ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタの種々の限定的でない実施形態は、電子透過窓を含まず、その場合、エミッタのプラズマ領域は、溶融チャンバおよび/または噴霧化チャンバと流体連通している。いずれの場合も、広域電子界が、溶融チャンバおよび/または噴霧化チャンバに進入し、チャンバ(複数可)内の材料に衝突し得る。種々の限定的でない実施形態において、ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタは、エミッタによって生成される広域電子界の量を増加させるためにラスタ化され得る。
【0154】
電子透過窓が溶融チャンバまたは噴霧化チャンバから電子エミッタの内部空間を分離する場合、電子界は、それが電子エミッタからチャンバの中へ投射されるように、窓を通過する。ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタの種々の非ライミング実施形態において、陰極に電気的に連結される高電圧電源は、陰極に20,000ボルトよりも大きい負電圧を給電する。負電圧は、プラズマの中の正イオンを陰極に向かって加速し、また、二次電子界を陰極から陽極に向かって跳ね返す機能を果たす。
【0155】
電子透過窓は、ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタ内の圧力が、溶融チャンバおよび/または噴霧化チャンバ内の圧力と大幅に異なる場合に必要になり得、その場合、箔窓が、異なる圧力の2つの隣接領域を隔離する役割を果たす。熱イオン電子ビーム銃等のガスを含まない電子エミッタと比較して、ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタの利点は、ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタが、プラズマ源としての役割を果たすように、プラズマ領域内に必ずガスを含むことである。ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタは、非常に低いガス圧力で動作することができるが、そのようなデバイスは、比較的高いガス圧力で効果的に動作することもできる。
【0156】
図21は、電子ビーム溶融アセンブリの限定的でない実施形態を概略的に図示する。溶融アセンブリ2210は、チャンバ壁2215によって少なくとも部分的に画定される、溶融チャンバ2214を含む。ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタ2216は、チャンバ2214の外側に隣接して位置付けられる。ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタ2216は、広域電子界2218をチャンバ2214の内部空間の中へ投射する。合金棒材2220は、棒材送給機2219によってチャンバ2214の中へ導入される。溶融合金2226は、合金棒材2220の上へ少なくとも1つのワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタ2216の広域電子界2218を衝突させることによって生成される。合金棒材2220から溶融した溶融合金2226は、水冷銅製炉床2224の中へ滴下し、ある滞留時間にわたって炉床2224の中に存在し、そこで、エミッタ2216によって生成される広域電子界2218の1つ以上によって加熱され、脱ガスされ、そして精錬される。溶融合金2226は、最終的に、炉床2224から噴霧化アセンブリ2231の中へ滴下し、そこで、溶融合金は、界発生アセンブリ2230によって影響を及ぼされ、合金粒子2232に噴霧化され、凝固し、そして収集器2233の上へ衝突する。
【0157】
上で論じられるように、溶融アセンブリ2210のワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタ2216は、熱イオン電子ビーム銃によって生成されるほぼ直線状のビームのスポットのカバー範囲と比較して、広域をカバーするエネルギー電子の界または「フラッド」を生成するように構成される。電子界エミッタ2216は、電子を広域にわたって分散させ、溶融アセンブリ2210内で溶融する、および/または溶融状態に維持する材料に衝突させる。同様に、ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタ(図示せず)は、溶融アセンブリ2210から受け取る溶融合金に衝突し、溶融合金を噴霧化する、噴霧化アセンブリ2231の中に広域電子界を確立することができる。
【0158】
上で述べられるように、ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタの種々の限定的でない実施形態は、一般に、正イオンプラズマを生成する1つ以上の細長いワイヤ陽極を含み、プラズマは、陰極に衝突して、加熱すべきターゲットに衝突するように加速され得る二次電子界を発生させる。ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタの1つの設計の概略図は、図22で示される。エミッタ2310は、正イオンプラズマが生成されるイオン化領域またはプラズマ領域2314と、陰極2318を含む陰極領域2316とを含む。プラズマ領域2314は、低圧のイオン化ガスが充填され、該ガスは、プラズマ領域の中でイオン化されて、陽イオン含有プラズマを生成する。例えば、イオン化領域2314は、例えば約20mトールのヘリウムガスが充填され得る。
【0159】
小径の細長いワイヤ陽極2319は、プラズマチャンバ2314の長さを通過する。正電圧は、電源2322によってワイヤ陽極2319に印加され、これは、ヘリウム陽イオンおよび自由電子(「一次」電子)を含むプラズマへのヘリウムガスのイオン化を開始する。ヘリウムガスのイオン化が開始されると、プラズマは、細いワイヤ陽極2319に電圧を印加することによって維持される。プラズマ内の正に帯電したヘリウムイオンは、高い負電位に維持される抽出グリッド2326を通してイオン化チャンバ2314から抽出され、高い電圧ギャップを通して陰極領域2316の中へ加速され、そこで、プラズマの中の陽イオンが、高い負電圧の陰極2318に衝突する。
【0160】
陰極2318は、例えば、被覆した、または被覆していない金属または合金であり得る。陰極2318へのヘリウムイオンの衝突は、陰極2318から二次電子を放出する。高い電圧ギャップ2328は、ヘリウム陽イオンの運動方向とは反対方向に二次電子を加速し、抽出グリッド2326を通ってプラズマ領域チャンバ2314の中へ入り、次いで、比較的電子を透過する材料で作製される薄い金属の箔窓2329を通る。上で述ベられるように、電子エミッタならびに溶融チャンバおよび/または噴霧化チャンバ内の相対ガス圧力に応じて、箔窓2329を省略することが可能であり得、その場合、エミッタによって生成される電子は、チャンバに直接進入する。エミッタ2310を出るエネルギー電子の広域3次元界は、箔窓2329の反対側の、溶融チャンバまたは噴霧化チャンバ内に位置付けられるターゲットに衝突するように方向付けられ得る。
【0161】
電子ビーム溶融炉の溶融チャンバの中へおよび/または電子ビーム噴霧化アセンブリの噴霧化チャンバの中へ電子界を供給するために、例えばエミッタ2310のような、1つ以上のワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタが提供され得る。図6で示されるように、電子ビーム溶融装置の限定的でない実施形態は、溶融チャンバ2330に隣接して位置付けられる、1つ以上のワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタ2310を含む。広域電子界2332は、フィルム窓2329を通ってエミッタ2310を出て、炉床2336の溶融合金2334の少なくとも表面のある領域をフラッドさせ、それによって、合金を加熱して溶融状態を維持する。
【0162】
フィルム窓2329は、エミッタ2310と溶融チャンバ2330との間の動作圧力の差が顕著でなければ、省略され得る。溶融チャンバ2330は、不要な元素の蒸発をさらに低減させる、または排除するために、従来よりも高い圧力で動作し得、そのような場合、溶融チャンバから電子エミッタを区切るフィルム窓に対する必要性は、同じく、構成で使用される特定の圧力差に依存する。随意に、溶融チャンバ2330内の溶融工程のさらに向上した制御を可能にするために、広域電子界を静電的および/または電磁的に制御するための構成要素2340が提供される。
【0163】
図6は、単一の電子エミッタを含むワイヤ放電イオンプラズマ電子溶融炉の実施形態の簡略図を提供するが、種々の限定的でない実施形態では、複数のワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタが利用され得る。そのような装置には、(1)例えば合金インゴット、厚板、棒材、ワイヤ、または他の充填物の形態で、溶融チャンバの中へ導入される原材料を溶融するために、および(2)炉の炉床に存在する溶融合金を合金の溶融温度を超える温度に維持する(ならびに、場合により、溶融合金を脱ガスおよび/または精錬する)ために、1つ以上のワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタが組み込まれ得る。また、種々の限定的でない実施形態において、ほぼ2次元の直線状の電子ビームを生成する1つ以上の電子ビーム銃とともに、1つ以上のワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタが使用され得る。
【0164】
図24および図25は、本開示による電子ビーム溶融装置の実施形態においてエネルギー電子の供給源として使用するように構成され得る、ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタの限定的でない実施形態のさらなる詳細を提供する。図24は、一部を断面にした、ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタ実施形態の斜視図である。図25は、図24のエミッタ2510の動作を図示する概略図である。エミッタ2510は、電気的に接地したエンクロージャ2513を含み、該エンクロージャは、陰極領域2511と、イオン化領域またはプラズマ領域2514と、電子透過箔窓2515とを含む。細長いワイヤ電極2516は、イオン化領域2514の長さを通って延在する。箔窓2515は、チャンバ2513に電気的に連結され、チャンバ2513内の電子を加速するように動作する陽極を形成し、該電子は、矢印「A」の一般的方向にチャンバ2513を出る。チャンバ2513は、1-10mトール等の低圧のヘリウムガスが充填され、該ガスは、ガス供給源2517によって供給される。ガス供給源2517は、弁2521を通過する導管2519によってエンクロージャ2513に接続される。チャンバ2513の圧力調節は、ポンプ2523によって制御され、該ポンプは、導管2519によってチャンバ2513に接続される。
【0165】
陰極領域2511は、陰極2518を含み、次に該陰極は、その下表面に載置されるインサート2520を含む。インサート2520は、例えばモリブデンを含み得るが、好適に高い二次電子放出係数を伴う任意の材料を含み得る。陰極2518は、パッシェン破壊を防止するために、エンクロージャ2513の壁から好適に均一に離間される。陰極2518は、ケーブル2525によって高電圧電源2522に連結され、該ケーブルは、絶縁体2526を通過して抵抗2528に入る。電源2522は、陰極2518に、例えば200〜300kVの高い負電位を供給する。陰極2518およびインサート2520は、例えば導管2524を通して冷却液を循環させること等によって、好適に冷却され得る。
【0166】
イオン化領域2514は、複数の細い金属リブ2530を含み、該金属リブは、電気的にも機械的にも連結される。各リブ2530は、ワイヤ電極2516がイオン化チャンバ2514を通過するのを可能にするために、中央の切欠領域を含む。陰極2518に対面するリブ2530の側部は、抽出グリッド2534を形成する。リブ2530の全部または一部分の対向側部は、電子透過箔窓2515のための支持グリッド2536を提供する。冷却チャネル2540は、リブ2530を通してその近傍で冷却液を循環させて、イオン化領域2514からの熱の除去を可能にするために提供され得る。
【0167】
例えばアルミニウム箔またはチタン箔で構成され得る電子透過箔窓2515は、グリッド2534上で支持され、エンクロージャ2513内で高真空ヘリウムガス環境を維持するのに十分なOリングまたは他の構造体によって、エンクロージャ2513に密閉される。電気制御デバイス2548は、コネクタ2549を通してワイヤ電極2516に接続される。制御デバイス2548の起動時点で、ワイヤ電極2516が高い正電位に励磁され、イオン化領域2514内のヘリウムがイオン化されて、ヘリウム陽イオンを含むプラズマを生成する。イオン化領域2514の中でプラズマが開始されると、電源2522によって陰極2518が励磁される。イオン化領域2514の中のヘリウム陽イオンは、陰極2518からプラズマ領域2514の中へ延在する電界によって、陰極2518に電気的に引き付けられる。ヘリウム陽イオンは、界線に沿って、抽出グリッド2534を通って、陰極領域2511の中へ進行する。
【0168】
陰極領域2511の中では、ヘリウム陽イオンを、励磁された陰極2518によって発生する電界の全電位にわたって加速し、陽イオンの平行ビームとして、陰極2518に強制的に衝突させる。衝突する陽イオンは、二次電子をインサート2520から解放する。インサート2520によって生成される二次電子界は、ヘリウム陽イオンの進行方向と反対方向に、ワイヤ電極2516に向かって、箔窓2515を通して加速される。
【0169】
圧力の変化は、ヘリウムイオンプラズマの密度、よって、陰極2518で発生する二次電子界の密度に影響を及ぼし得るので、チャンバ2513内のガス圧力を監視するための手段が提供され得る。初期圧力は、弁2521を適切に調整することによって、エンクロージャ2513内に設定され得る。陽イオン含有プラズマがプラズマ領域2514で開始されると、チャンバ2513内の瞬間的な静止圧力を間接的に監視するために、電圧モニタ2550が提供され得る。電圧の上昇は、より低いチャンバ圧を示す。電圧モニタ2550の出力信号は、弁制御器2552を通して弁2521を制御するために使用される。制御デバイス2548によってワイヤ電極2516に供給される電流も、電圧モニタ2550の信号によって制御される。ガス供給弁2521を制御するために、およびデバイス2548を制御するために、電圧モニタ2550が発生する信号を利用することは、エミッタ2510からの安定した電子界の出力を可能にする。
【0170】
エミッタ2510によって発生する電流は、陰極2518に衝突する陽イオンの密度によって決定され得る。陰極2518に衝突する陽イオンの密度は、制御デバイス2548を通してワイヤ電極2516上の電圧を調整することによって制御され得る。陰極2518から放出される電子のエネルギーは、電源2522を通して陰極2518上の電圧を調整することによって制御され得る。電流および放出された電子のエネルギーは、どちらも独立に制御することができ、これらのパラメータと印加される電圧との関係は直線的であり、エミッタ2510の制御を効率的かつ効果的にする。
【0171】
図26は、図24および図25で示されるような設計を有する2つのワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタ2614および2616を組み込む、電子ビーム溶融アセンブリ2610の概略図である。溶融アセンブリ2610は、溶融チャンバ2620と、材料送給機2622とを含み、噴霧化アセンブリ2624に動作可能に接続される。エミッタ2614および2616の動作に必要とされる電流は、電力線2626によってエミッタに送給され、エミッタ2614および2616と溶融チャンバ2620との間のインターフェースは、電子透過箔窓2634および2636を含み、これらは、エミッタ2614および2616によって生成される電子界2638が溶融チャンバ2620に進入することを可能にする。電子界2638を磁気的に操縦するための電磁制御デバイス2639は、さらなる工程制御を提供するために、溶融チャンバ2620内に含まれ得る。
【0172】
例えば低温炉床であり得る炉床2640は、溶融チャンバ2620内に位置付けられる。動作中には、ワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタ2614および2616が励磁され、電子界2618を生成する。合金供給材料2644は、送給機2622によって溶融チャンバ2620の中へ導入され、エミッタ2614から放出される電子界2638によって溶融され、そして炉床2640に滴下する。エミッタ2616によって放出される広域電子界2638は、炉床2640の中に存在する間、溶融合金材料2642を加熱し、脱ガスし、そして精錬する。溶融材料2642は、炉床2640に沿って進行し、噴霧化アセンブリ2624の中へ滴下し、そして固体プレフォームに固体溶射成形される。噴霧化アセンブリ2624は、1つ以上の熱イオン電子ビームエミッタおよび/または1つ以上のワイヤ放電イオンプラズマ電子エミッタを備え得る。
【0173】
本明細書は、種々の限定的でなくかつ網羅的でない実施形態を参照して記述されている。しかしながら、開示される実施形態(またはその一部分)のいずれかの種々の置換、修正、または組み合わせが、本明細書の範囲内で行われ得ることが、当業者によって認識されるであろう。したがって、本明細書が、本明細書に明示的に記載されていない、さらなる実施形態を支持することが企図され、理解される。そのような実施形態は、例えば、本明細書で説明される種々の限定的でない実施形態の開示されるステップ、構成要素、成分、機能、態様、特徴、制限等のうちのいずれかを組み合わせる、修正する、または再編成することによって取得され得る。このようにして、出願人は、本明細書で様々に説明される特徴を加えるために、手続き処理中に特許請求の範囲を訂正する権利を留保し、そのような訂正は、合衆国法典第35巻§112の第1項、および合衆国法典第35巻§132(a)項の要件に適合する。
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