(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る蓄電装置の製造方法は、
層状に重ねられた電極板から延出する金属箔を、第1の金属部材と第2の金属部材とによって挟み込む工程と、
第1の金属部材側から複数の作用位置に超音波振動を作用させることによっ
て金属箔と第1の金属部材及び第2の金属部材とを接合させる工程と、を備え、
第1の金属部材のビッカース硬さは、40Hv以上で、且つ、75Hv以下に設定されている。
【0018】
このように、上記第1の金属部材のビッカース硬さを適切に設定することによって、上記第1の金属部材で溶接対象の金属箔を保護しながら、複数箇所で超音波溶接する場合でも、上記第1の金属部材の損傷を可及的に防止できる。詳しくは、以下の通りである。
【0019】
上記第2の金属部材と、溶接対象の金属箔の保護のための金属部材であってビッカース硬さが40Hv以上で且つ75Hv以下の第1の金属部材とによって、束ねた金属箔を挟み込み、金属箔に対して上記第1の金属部材側から超音波振動を作用させて金属箔と第1の金属部材及び第2の金属部材とを接合する。
【0020】
ここで、上記第1の金属部材のビッカース硬さが40Hvよりも小さいときには、上記第1の金属部材が柔らかくなり過ぎて、超音波振動を作用させている位置とその位置の周辺部分との相対変位による応力が大きくなる。このため、亀裂等の損傷が、超音波振動を作用させている位置とその位置の周辺部分との境界において発生する場合がある。
【0021】
このため、上記第1の金属部材のビッカース硬さを40Hv以上に設定することで、超音波振動の作用位置の振動が周辺へも適度に伝播するため、超音波振動を作用させている位置とその位置の周辺部分との境界で損傷が発生するのを可及的に防止することができる。
【0022】
一方、上記第1の金属部材のビッカース硬さを75Hv以下に設定することで、隣り合う超音波振動の作用位置間において、両側の作用位置からの超音波溶接に伴う変形が重なりあって変形が大きくなっても、上記第1の金属部材が適度に柔らかいために、その変形位置で損傷が発生するのを防止することができる。
【0023】
ここで、本発明に係る蓄電装置の製造方法の一態様として、
接合させる工程では、第1の金属部材と接触可能な接触面を有し、第1の金属部材に対して超音波振動を作用させる振動工具が用いられ、
接触面は、1又は複数の凸部によって形成されていてもよい。
【0024】
かかる構成によれば、上記第1の金属部材のビッカース硬さが適切に設定されているため、接触面が凸部形状の振動工具を使用する場合において、上記第1の金属部材に過剰な超音波振動のエネルギーがかかるのを回避して、上記第1の金属部材の損傷を可及的に防止できる。詳しくは、以下の通りである。
【0025】
上記第1の金属部材との接触面を1又は複数の凸部形状とした振動工具(例えば、ホーンの先端部)を使用して超音波溶接を行う場合、上記第1の金属部材の硬度が高いと、振動工具の上記凸部形状が上記第1の金属部材に転写されづらくなる。このため、超音波溶接の初期段階において、金属箔側における第一の金属部材の表面は、ほぼフラットである。又、上記凸部形状が上記第1の金属部材に完全に転写されていない場合、更に内側に位置する金属箔にも転写が進行しづらいため、金属箔の表面も、ほぼフラットである。従って、超音波溶接の初期段階では、上記第1の金属部材と金属箔との接触面、金属箔同士の接触面、及び、金属箔と上記第2の金属部材との接触面の少なくともいずれか一つにおいて、滑りが生じてしまい、超音波振動の伝達度合いが小さい状態になる。
【0026】
その後、超音波溶接が継続されると、徐々に振動工具の上記凸部形状が上記第1の金属部材に転写される。これにより、上記第1の金属部材や金属箔への超音波振動のエネルギーの伝達度合いが大きくなり、接合のためのエネルギーとしての寄与が大きくなっていく。即ち、上記凸部形状が上記第1の金属部材に転写されることで、超音波振動のエネルギーの伝達度合いが小さい状態から大きい状態へ移行する。
【0027】
このように、振動工具からの超音波振動のエネルギーが接合に有効に寄与せず、上記第1の金属部材等が超音波溶接によって確実に接合した状態となるまでの所要時間が長くなる。これにより、上記第1の金属部材に対して過度の超音波振動のエネルギーを与えてしまうことになる。
【0028】
これに対して、上記第1の金属部材の硬度が適度に低い(柔らかい)と、振動工具の上記凸部形状が上記第1の金属部材に転写され易い。このため、超音波溶接の初期段階から、振動工具の上記凸部形状が上記第1の金属部材に転写され、これにより、超音波振動のエネルギーが上記第1の金属部材や金属箔へ有効に伝達され、接合のためのエネルギーとして有効に寄与する。
【0029】
従って、上記第1の金属部材等が超音波溶接によって確実に接合された状態となるまでの所要時間を短くすることができる。その結果、上記第1の金属部材に対して過度の超音波振動のエネルギーを与えてしまうことがない。
【0030】
上述のような現象は、振動工具における凸部が一つの場合であっても、複数の場合であっても生じる。
【0031】
上記の関係を具体的な実験例で説明する。
【0032】
図10は、薄板状の金属部材を屈曲形成した補助板によって束ねた金属箔を挟み、それを集電体と超音波溶接した場合の溶接時間と制御出力との関係を例示したものである。すなわち、
図10は、上記第1の金属部材と上記第2の金属部材とを単一の薄板状の金属部材によって構成し、金属箔を挟んで集電体の存在側と反対側に位置する上記第1の金属部材側から超音波振動を作用させた場合を例示している。
【0033】
図10における縦軸の「制御出力」は、超音波振動を上記第1の金属部材に作用させるホーンの先端部が所定の振幅を維持して振動するのに必要とした出力(電力)である。ホーンの先端部に上記第1の金属部材側からかかる負荷の大きさが大きいほど、上記制御出力が大きくなる関係にある。
【0034】
図10では、C1020(JIS H 3100に規定の材料記号)のO材(柔らかい方)によって形成された上記第1の金属部材についての実験結果を曲線Lで示す。ここで、C1020は、純度が99%よりも高い銅である。詳しくは、以下のように規定されている。C1020は、質量分率で示す場合、Cuが99.96%よりも大きい。
【0035】
また、
図10では、C1020の1/4H材(硬い方)によって形成された上記第1の金属部材についての実験結果を曲線Mで示している。ここで、C1020のO材のビッカース硬さは50Hvであり、C1020の1/4H材のビッカース硬さは85Hvであった。
【0036】
ビッカース硬さが高い上記第1の金属部材を使用した曲線Mの測定結果では、制御出力は、点「p」まで上昇した後、点「q」まではそれほど上昇していない。これは、滑りが上記第1の金属部材と金属箔との間で発生し、ホーンの先端部にかかる負荷が増大していないことを意味している。
【0037】
その後、上記第1の金属部材へのホーン先端部の凸部形状の転写が進み、ホーン先端部にかかる負荷が点「r」,点「s」と大きくなり(すなわち、超音波溶接が進行し)、溶接が点「t」で完了する。
【0038】
一方、ビッカース硬さの低い上記第1の金属部材を使用した曲線Lの測定結果では、ホーン先端部にかかる負荷が点「a」から点「b」へと急速に上昇している。これは、上記第1の金属部材へのホーン先端部の凸部形状の転写と、超音波溶接とが、超音波溶接の初期段階から急速に進行していることを示している。
【0039】
図10の曲線Lの特性と曲線Mの特性との対比から明らかなように、ビッカース硬さの高い第1の金属部材では、超音波溶接初期段階での凸部形状の転写の遅れや、その後の制御電力の上昇度合いの低さによって、点「t」の溶接完了に至るまでの溶接所要時間が長くなる。これにより、過度の超音波振動のエネルギーがビッカース硬さの高い第1の金属部材に印加されてしまう。その結果、ビッカース硬さの高い第1の金属部材には、
図10における矢印Nで示す位置(時間)で割れが発生した。
【0040】
これに対して、ビッカース硬さの低い第1の金属部材では、点「c」の溶接完了に至るまでの溶接所要時間が短く、印加した超音波振動のエネルギーが有効に接合に利用されている。これにより、割れ等の損傷は発生しない。
【0041】
また、本発明に係る蓄電装置の製造方法の他の態様として、
第1の金属部材と第2の金属部材との端縁同士が連結部にて連結され、
挟み込む工程では、金属箔の端縁が連結部に接するように、第1の金属部材と第2の金属部材とによって挟み込まれてもよい。
【0042】
かかる構成によれば、 溶接対象の金属箔の両側に位置する金属部材を一つの部材として取り扱うことができると共に、上記連結部を利用して、溶接対象の金属箔と第1の金属部材及び第2の金属部材との位置合わせを行うことができる。具体的には、以下の通りである。
【0043】
連結部の存在により第1の金属部材と第2の金属部材とが繋がっているため、溶接対象の金属箔の両側に位置する金属部材を一つの部材として取り扱うことができる。これに加えて、上記連結部を利用して、溶接対象の金属箔と第1の金属部材及び第2の金属部材との位置合わせを行うことができる。
【0044】
一つの部材となっている第1の金属部材及び第2の金属部材を溶接対象の金属箔に取り付ける際に、その金属箔の先端を上記連結部の内側に当て付けるように配置することで、両者の位置決めを行うことができる。その結果、上記金属箔と第1の金属部材および第2の金属部材との相対的な位置合わせ、並びに、超音波振動を作用させる位置の設定を簡単に行える。
【0045】
また、本発明に係る蓄電装置は、
一端側に金属箔が延出した電極板が層状に重ねられることによって構成される電極
体と、超音波振動によって金属箔と接合された接合部を複数有し、束ねられた金属箔に当て付けられる超音波溶接用の補助板と、を有する蓄電要素を備え、
補助板のビッカース硬さは、40Hv以上で、且つ、75Hv以下である。
【0046】
かかる構成によれば、電極体の金属箔を超音波溶接にて溶接するに際して上記金属箔の保護のために使用する超音波溶接用の補助板の損傷を、防ぐことができる。これにより、蓄電装置の品質を向上させることができる。
【0047】
以下、本発明を適用した蓄電装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0048】
本実施の形態では、蓄電装置として電池、特に、二次電池の1例である非水電解液二次電池(より具体的にはリチウムイオン電池)を例示して説明する。
【0049】
〔二次電池の構成〕
図1の斜視図に示すように、本実施の形態の非水電解液二次電池RBは、電池筐体BC(以下において、単に「筐体BC」と称する)を有する。筐体BCは、有底筒状(より具体的には有底矩形筒状)の缶体1と、缶体1の開放面に被せる蓋部2とを有する。筐体BCは、缶体1の開放面に蓋部2を被せて溶接することにより構成されている。蓋部2は、短冊状の長方形の板材にて形成されている。正極の電極端子である端子ボルト5と負極の電極端子である端子ボルト7とが、蓋部2の筐体BC外方側となる面に取り付けられている。
【0050】
缶体1は、蓋部2の形状に合わせて扁平形状の直方体である。従って、筐体BCは、全体として扁平な略直方体形状を有している。
【0051】
図2において2点鎖線で概略的に示す蓄電要素3と板状の集電体4,6とが、筐体BCの内方側に収納されている。
図2は、缶体1を除いた状態で、下方側から見上げた筐体BCの内方側の斜視図である。
【0052】
集電体4,6は、蓄電要素3と端子ボルト5,7とを電気的に接続するための部材である。
【0053】
尚、本実施の形態では、蓄電装置として二次電池RBを例示している関係で、以下において、蓄電要素3を「発電要素3」と称する。
【0054】
集電体4と集電体6とは何れも導電体であり、略同一形状を有する。これら集電体4と集電体6とは、対称に配置される。集電体4の材質と集電体6の材質とは異なる。正極側の集電体4はアルミニウムにて形成され、負極側の集電体6は銅にて形成されている。
【0055】
集電体4,6は、上記金属材料の板状部材を所定の形状に屈曲することにより形成されている。集電体4,6は、横姿勢部分と、縦姿勢部分とを有し、これら横姿勢部分及び縦姿勢部分とが連なる略L字状の屈曲形状を有している。横姿勢部分は、端子ボルト5,7の配置面である蓋部2の表面に沿って延びる。縦姿勢部分は、蓋部2の長手方向の端部付近において下方側(端子ボルト5,7の存在側と反対側)へ90度屈曲して、蓋部2の筐体BC内方側の面の法線方向に延びる。発電要素3と接続するための接続部4a,6aは、縦姿勢部分の一部を発電要素3側に屈曲させることによって形成されている。接続部4a,6aは、以下のように形成されている。集電体4,6夫々の縦姿勢部分において、平板の状態で上下一対の貫通孔4c,4d及び貫通孔6c,6dが形成されると共に、貫通孔4c,4d間、及び、貫通孔6c,6d間に切り込みが形成される。そして、プレス加工等によって、上記切り込み部分が押し出されることによって接続部4a,6aが形成されている。
【0056】
集電体4,6は、筐体BCが扁平形状を有しているのと対応して、幅狭の長方形形状である。集電体4,6は、全体として、筐体BCの短辺側の側面に沿う姿勢で屈曲形成されている。
【0057】
発電要素3は、いわゆる巻回型の発電要素である。発電要素3は、電極体を主たる構成要素としている。電極体は、正極の箔状電極板と、負極の箔状電極板と、長尺帯状のセパレータと、を有している。正極の箔状電極板は、アルミニウムにて形成される長尺帯状の下地金属箔に正極活物質を塗布したものである。負極の箔状電極板は、銅にて形成される長尺帯状の下地金属箔に負極活物質を塗布したものである。そして、電極体は、正極の箔状電極板と負極の箔状電極板との間にセパレータを挟み、それらを長手方向に扁平形状に巻回して正極の箔状電極板及び負極の箔状電極板の対を層状に重ねた構造である。
【0058】
この巻回型の発電要素3を構成する電極体は、上記集電体4,6との電気的な接続のために、正極及び負極の箔状電極板の夫々において、幅方向の一方側端部に上記下地金属箔を露出させた未塗工部3a,3bを備えている。正極側の未塗工部3aと負極側の未塗工部3bとは、幅方向において反対側に位置している。そして、上記のように巻回した状態では、正極側の未塗工部3aが発電要素3の巻回軸芯方向(箔状電極板の幅方向)の一端側から延出し、負極側の未塗工部3bも発電要素3の巻回軸芯方向(箔状電極板の幅方向)の他端側(未塗工部3aとは反対側)から延出している。
【0059】
発電要素3と集電体4,6とは、以下のようにして接合されている。発電要素3における正極の箔状電極板から延出した金属箔である未塗工部3aが束ねられて集電体4と超音波溶接にて接合されると共に、発電要素3における負極の箔状電極板から延出した金属箔である未塗工部3bが束ねられて集電体6と超音波溶接にて接合されている。
【0060】
但し、上記の束ねた金属箔と集電体4,6とだけが超音波溶接されているのではない。上記の束ねた金属箔と集電体4,6とは、
図4及び
図5に示す超音波溶接用の補助板21を用いて超音波溶接されている。
【0061】
この超音波溶接用の補助板21については、後述の二次電池RBの製造工程の説明において詳述する。
【0062】
上述のように金属製(具体的には、例えば、アルミニウム製)の蓋部2に取り付けられている正極側の端子ボルト5は、正極側の集電体4に電気的に接続されている。また、前記金属製の蓋部2に取り付けられている負極側の端子ボルト7は、負極側の集電体6に電気的に接続されている。
【0063】
端子ボルト5の蓋部2への取り付け構造及び端子ボルト5と集電体4との接続構造と、端子ボルト7の蓋部2への取り付け構造及び端子ボルト7と集電体6との接続構造とは、略同一であり、対称に配置されている。以下において、正極側の構成を主体に説明する。
【0064】
端子ボルト5は、
図3の断面図に示すように、リベット8と金属プレート9とを介して集電体4と電気的に接続されている。リベット8は金属材料によって構成されている。より具体的に、正極側のリベット8は、正極側の他の金属部材と同様にアルミニウムにて構成されている。金属プレート9は、銅にニッケルメッキを施したもの等である。
【0065】
リベット8の頭部側は、金属プレート9を挟み込むことにより当該金属プレート9を固定している。
【0066】
保持枠10が蓋部2に設けられている。保持枠10は、上面側が開放すると共に端子ボルト5の頭部5bの形状(本実施形態の例では矩形形状)に適合した皿状の凹部を有する。端子ボルト5の頭部5bがその凹部に嵌合することで、端子ボルト5が回り止めされている。
【0067】
保持枠10は、電気的な絶縁材料である樹脂にて形成されており、端子ボルト5と蓋部2との間の電気的な絶縁を確保している。
【0068】
集電体4から端子ボルト5へ至る電流経路は、上部ガスケット11及び下部ガスケット12によって蓋部2との電気的絶縁を確保している。また、集電体4から端子ボルト5へ至る電流経路は、蓋部2におけるリベット8の貫通箇所において上部ガスケット11及び下部ガスケット12によって気密封止されている。上部ガスケット11及び下部ガスケット12は、いずれも電気的な絶縁材料(より具体的には、樹脂)にて形成されると共にシール用部材である。
【0069】
上部ガスケット11は、上部が開放した皿状の直方体容器の底部に、蓋部2の開口に嵌入する筒部11aが取り付けられた構造を有している。上部ガスケット11は、上記皿状の直方体容器によってリベット8の頭部付近を保持する。また、リベット8が筒部11aの内部空間に嵌入される。
【0070】
端子ボルト5等が蓋部2に取り付けられた状態では、上部ガスケット11の底部が、リベット8の頭部と蓋部2との間に挟み込まれる。
【0071】
集電体4等が蓋部2に取り付けられた状態では、下部ガスケット12は、集電体4の上記横姿勢部分と蓋部2との間に挟み込まれる。
【0072】
リベット8は、上部ガスケット11の筒部11a,蓋部2,下部ガスケット12及び集電体4の上記横姿勢部分を貫通した状態でかしめられている。これにより、リベット8は、集電体4の上記横姿勢部分を蓋部2に固定すると共に、集電体4と金属プレート9とを電気的に接続する。その結果、集電体4と端子ボルト5とが電気的に接続される。
【0073】
図2の斜視図に示すように、負極側の構成は、正極側の構成を、蓋部2の中心に対して対称に配置したものである。筐体BC外方側では、蓋部2に設けられた保持枠14が端子ボルト7の頭部を保持すると共に、リベット15に固定された金属プレート16がリベット15と端子ボルト7とを電気的に接続する。
【0074】
リベット15は、頭部を上部ガスケット17に保持された状態で、上部ガスケット17,蓋部2,下部ガスケット18及び集電体6を挟み込んだ状態で、かしめられている。
【0075】
リベット15は、集電体6と同様に銅にて構成され、金属プレート16を介して集電体6と端子ボルト7とを電気的に接続する。
【0076】
〔二次電池RBの製造工程〕
次に、二次電池RBの製造工程について、発電要素3の組み立てを中心に説明する。
【0077】
正極の箔状電極板は、例えばリン酸鉄リチウム等の正極活物質層が長尺帯状のアルミニウム(具体的には、A1085(JIS H4000に規定の材料記号)製)の下地金属箔の表裏両面に塗布され、更にプレス加工処理等が行われることによって作製される。尚、A1085は、純度が99%以上のアルミニウムである。詳しくは、以下のように規定されている。A1085は、質量分率で示す場合、Siが0.10%以下、Feが0.12%以下、Cuが0.03%以下、Mnが0.02%以下、Mgが0.02%以下、Znが0.03%以下、Gaが0.03%以下、Vが0.05%以下、Tiが0.02%以下であり、Alが99.85%以上である。
【0078】
上述のように、幅方向の一端側には、正極活物質を塗布せずに帯状の下地金属層を露出させた露出部が形成される。この露出部を上記未塗工部3aとする。
【0079】
負極の箔状電極板は、例えばグラファイト等の負極活物質層が長尺帯状の銅(具体的には、C1020(JIS H 3100に規定の材料記号)の1/4H製)の下地金属箔の表裏両面に塗布され、更にプレス加工処理等が行われることによって作製される。
【0080】
負極の箔状電極板についても、幅方向の一端側には、負極活物質を塗布せずに帯状の下地金属層を露出させた露出部が形成される。この露出部を上記未塗工部3bとする。
【0081】
所定の長さ分の上述の正極の箔状電極板と所定の長さ分の負極の箔状電極板とを、セパレータを挟んだ状態で、扁平な板状の巻回軸周りに巻回する。この際に、巻回軸芯方向の一方側へ未塗工部3aがはみ出す一方、巻回軸芯方向の他方側へ未塗工部3bがはみ出した状態となるように、正極の箔状電極板,負極の箔状電極板及びセパレータを位置合わせする。
【0082】
発電要素3では、セパレータが最外周に巻回されている。
【0083】
次に、未塗工部3a,3bと集電体4,6の接続部4a,6aとを超音波溶接するための下準備として、未塗工部3a,3bに、
図4及び
図5に示す超音波溶接用の補助板21を取り付ける。
【0084】
補助板21は、
図5に示すように、対向配置される一対の金属部材21a,21bと、これら一対の金属部材21a,21bの端縁同士を連結する連結部21cと、を有している。
【0085】
補助板21は、束ねた未塗工部3a,3bを一対の金属部材21a,21bにて挟み込むことにより当該未塗工部3a,3bへ取り付けられる。
【0086】
未塗工部3a,3b等の超音波溶接では、このように取り付けられた一対の金属部材21a,21bのうちの一方の金属部材21aに対して超音波振動を作用させる。
【0087】
以下では、説明の便宜上、一対の金属部材21a,21bのうち、超音波振動を作用させる側の金属部材21aを「第1の金属部材」と称し、他方の金属部材21bを「第2の金属部材」と称する。
【0088】
正極側の未塗工部3aに取り付ける補助板21と、負極側の未塗工部3bに取り付ける補助板21とは、ほぼ同一形状に形成されている。正極側の未塗工部3aに取り付ける補助板21は、未塗工部3aと同一材料のアルミニウムにて形成されている。
【0089】
負極側の未塗工部3bに取り付ける超音波溶接用の補助板21は、未塗工部3bと同じく銅にて形成されている。この負極側の未塗工部3bは、加工硬化されていない銅板(具体的には、C1020(JIS H 3100に規定の材料記号)のO材製)によって形成されている。これにより、負極側の未塗工部3bのビッカース硬さは、40Hv以上で、且つ、75Hv以下となる。これは、超音波溶接時に補助板21が損傷してしまうのを防止するためであり、詳しくは後述する。尚、ここで「ビッカース硬さ」とは、部材の表面硬さを示す指標である。このビッカース硬さは、対象となる部材表面のうちの超音波溶接箇所の中心箇所において、JIS Z 2244のビッカース硬さ試験−試験方法によって測定できる。具体的には、ビッカース硬さは、ダイヤモンド製の四角錐の圧子を試験片の表面に押しつけて圧痕をつくり、この圧痕の対角線を測定して圧痕の表面積を求め、押しつけた力を前記表面積で割ることによって求められる。
【0090】
補助板21の構成要素である第1の金属部材21a,第2の金属部材21b及び連結部21cは、1枚の薄板状の金属部材によって形成されている。薄板状の金属部材(正極用はアルミニウム板、負極用は銅板)を
図4に示す形状に加工し、この加工されたものを
図4に示す中心線Aで二つ折りにして
図5に示す形状とする。この薄板状の金属部材を二つ折りにした補助板21は、束ねられた未塗工部3a,3bをその内側に挟み込む。
【0091】
未塗工部3a,3bへの補助板21の取り付け態様を例えば負極側で説明する。扁平形状に巻回した発電要素3において、
図7に示すように、未塗工部3bを、幅方向中央から左右に押し分けるように二つに束ねる。そして、
図8に示すように、二つに束ねた夫々を補助板21によって挟み込む。この際、未塗工部3bの端縁を連結部21cの内面側に当て付けて補助板21の位置合わせを行い、未塗工部3bの端縁が連結部21cに接するように補助板21を取り付ける。
【0092】
更に、二つの補助板21を夫々かしめて、しっかりと未塗工部3bに固定する。これによって、箔状の溶接対象物である未塗工部3bの溶接面に補助板21が強固に当て付けられる。第1の金属部材21aにおいて、未塗工部3bとの接触面と反対側の面が、超音波振動の作用面となる。
【0093】
正極側においても上記と同様に、未塗工部3aに二つの補助板21を取り付ける。
【0094】
一方、蓋部2側の組品の正極側では、リベット8に取り付けられた金属プレート9が、保持枠10に保持させた端子ボルト5のねじ部5aを貫通させた状態で配置される。また、リベット8は、上部ガスケット11,蓋部2,下部ガスケット12及び集電体4を貫通した状態で蓋部2に組み付けられ、リベット8の筐体BC内方側の端部をかしめることによって固定される。
【0095】
負極側でも、リベット15に取り付けられた金属プレート16が、保持枠14に保持させた端子ボルト7のねじ部7aを貫通させた状態で配置される。また、リベット15は、上部ガスケット17,蓋部2,下部ガスケット18及び集電体6を貫通した状態で蓋部2に組み付けられ、リベット15の筐体BC内方側の端部をかしめることによって固定される。
【0096】
尚、この状態では、集電体4,6は、接続部4a,6aが既に形成されているものの、L字状の屈曲姿勢とはなっていない。即ち、集電体4,6は、接続部4a,6aが形成されている部分(上記縦姿勢部分となる部分)も、蓋部2の長手方向に沿って延びる略直線形状となっている。
【0097】
上述のようにして補助板21を取り付けた発電要素3を、蓋部2側の組品における下部ガスケット12,18の取り付け面の直下に配置する。このとき、発電要素3は、箔状電極板の巻回軸芯が蓋部2の長手方向と平行で、且つ、発電要素3の扁平面が蓋部2と直交する姿勢となるように配置される。次に、正負の集電体4,6を、
図2で示すL字状に屈曲させて、
図9に示すように、接続部4a,6aの夫々を、一対の補助板21の間の空間に嵌入させる。尚、
図9では、
図7等と対応させて負極側のみを示しているが、正極側も同様の配置である。
【0098】
このように、蓋部2側の組品と発電要素3とが組み付けられた状態で、発電要素3の未塗工部3a,3bと集電体4,6の接続部4a,6aとが超音波溶接にて接合される。
【0099】
この超音波溶接に際しては、未塗工部3a,3bを挟み込んだ各補助板21と、集電体4,6の接続部4a,6aとを当て付けた状態で、補助板21側から超音波振動を作用させて溶接する。
【0100】
具体的には、超音波溶接時の概略配置を図示する
図6に示すように、集電体4,6側にアンビル31を当て付けると共に、補助板21における集電体4,6との接触面と反対側の面(上記第1の金属部材21aの表面)に、超音波振動を作用させる振動工具であるホーンの先端部32を当て付ける。そして、補助板21と集電体4,6とによって未塗工部3a,3bを挟み込んだ状態で、
図6において矢印Bで示す方向(未塗工部3a,3bの長手方向)に沿って超音波振動を作用させる。
【0101】
すなわち、補助板21と集電体4,6とを接触させた状態で、屈曲形成された補助板21の一対の側面のうち、集電体4,6の存在側と反対側に位置する側面(上記第1の金属部材21aの表面)側から超音波振動を作用させて接合する。
【0102】
ホーンの先端部32における補助板21との接触面は、
図6の矢印Bで示す方向に細長い長方形形状である。ホーンの先端部32は、ホーンの先端部32の長手方向が発電要素3の扁平面における未塗工部3a,3bの長手方向となる姿勢で、補助板21に当て付けられる。補助板21に対する超音波振動の作用位置を、
図4、
図5及び
図9において2点鎖線Cで示す。超音波溶接後には、溶接痕が2点鎖線Cで示す位置に残る。
【0103】
ホーンの先端部32における補助板21との接触面、及び、アンビル31における集電体4,6との接触面は、
図6に概略的に示すように、複数の正四角錐形状の凸部が配列された、いわゆるローレット(knurling)形状になっている。ホーンの先端部32の突起は、アンビル31側の突起よりも大きい。
【0104】
図4及び
図5等において2点鎖線Cで示す超音波振動の作用位置は、補助板21毎に複数箇所(本実施の形態では、3箇所)設定されている。そして、集電体4,6と未塗工部3a,3bとは、
図6に示す形態で、各補助板21において超音波溶接の各作用位置を順次に超音波溶接することによって接合される。
【0105】
この際、負極側の未塗工部3bに取り付けた補助板21の隣り合う超音波溶接の作用位置間では、両側の作用位置からの超音波溶接に伴う補助板21の変形が重なり合い、変形の度合いが大きくなる。
【0106】
負極側の未塗工部3bに取り付けた補助板21は、上述のように、ビッカース硬さが40Hv以上で、且つ、75Hv以下である。このため、超音波溶接に伴って大きく変形しても、割れ等の損傷の発生を防止することができる。
【0107】
この補助板21における損傷の防止について、具体的な実験例によって説明する。
【0108】
負極側の未塗工部3bに取り付ける銅製の補助板21を準備する。具体的には、銅板のビッカース硬さを種々に変化させた補助板21を、硬さ毎に100枚ずつ準備する。そして、上述の組み立て方法と同様にして補助板21,未塗工部3b及び集電体6を超音波溶接する。このときの補助板21の割れ等の損傷の発生結果を
図11に示す。
図11では、横軸にビッカース硬さをとり、縦軸に割れ等の損傷の発生率をとっている。ここで、割れ等の損傷の発生率は、100枚の補助板21のうちの割れ等の損傷が生じた枚数を示す。
【0109】
図11から明らかなように、ビッカース硬さが40Hv以上且つ75Hv以下のときに、割れ発生率が「0%」となっている。これは、補助板21に上述のような変形が発生しても、割れ等の損傷の発生を防止できることを示している。
【0110】
一方、ビッカース硬さが40Hvよりも小さいときは、補助板21が柔らかくなり過ぎて、超音波振動の作用位置の周囲で割れ等の損傷が発生する。これは、溶接時に伴う加圧により、必要以上に補助板21が変形したためと考えられる。
【0111】
上述のようにして、正極側及び負極側の夫々で2個の補助板21について超音波溶接が完了した発電要素3が組み付けられる。続いて、この蓋部2側の組品を缶体1に挿入して、蓋部2の端縁と缶体1の開口端とをレーザ溶接する。
【0112】
その後、電解液の注液及び初期充電等の工程を経て二次電池RBが完成する。
【0113】
〔別実施形態〕
以下、本発明のその他の実施形態を列記する。尚、上記実施形態の各構成と対応する構成については、同じ符号を用いる。
【0114】
(1)上記実施の形態では、第1の金属部材21aと第2の金属部材21bとの端縁同士を連結部21cにて連結した超音波溶接の補助板21によって未塗工部3a,3bを挟み込み、その挟み込んだものを集電体4,6の接続部4a,6aと重ね合わせ、重ね合わせたものをまとめて超音波溶接する場合を例示している。しかし、未塗工部3a,3b等の超音波溶接と集電体4,6との接合とが別個のタイミングで行われても良い。
【0115】
例えば、以下の通りである。上記実施の形態の
図6と対応する断面表示の
図12のように、上記実施の形態で示す超音波溶接用の補助板21にて未塗工部3a,3bを挟み込んでかしめたもの、すなわち、補助板21を構成する第1の金属部材21aと第2の金属部材21bとで挟み込んだだけのものを、ホーンの先端部32とアンビル31との間に配置する。この状態で、
図4等において2点鎖線Cによって示す位置に超音波振動を作用させて超音波溶接を行ってもよい。
【0116】
この場合、補助板21は、第1の金属部材21aと第2の金属部材21bとを連結部21cにて連結した構成に限定されない。超音波振動を作用させる第1の金属部材21aと、未塗工部3a,3bを挟んで反対側に位置する第2の金属部材21bとが別体であっても良い。
【0117】
このように溶接したものと集電体4,6の接続部4a,6aとは、例えば、補助板21と集電体4,6の接続部4a,6aとを抵抗溶接等することによって接合されても良い。
【0118】
(2)上記実施の形態では、薄板状の金属部材で形成する補助板21を二つ折りに屈曲させて、第1の金属部材21aと第2の金属部材21bとの端縁同士が連結部21cによって連結された構成とし、その補助板21によって未塗工部3a,3bを挟み込む例を示している。しかし、上記実施の形態の
図6と対応する断面表示の
図13に示すように、束ねた未塗工部3a,3bを、略平担な板材として形成された補助板21と、集電体4,6とによって挟み込んだものに、補助板21側から超音波振動を作用させて超音波溶接する構成でも良い。
【0119】
この場合、補助板21は、上記第1の金属部材21aのみによって構成される。そして、集電体4,6が、上記第1の金属部材21aと共に未塗工部3a,3bを挟み込む上記第2の金属部材となる。
【0120】
(3)上記実施の形態では、超音波振動の作用位置は、1つの超音波溶接用の補助板21に対して3箇所設定されているが、2箇所設定されても良いし、4箇所以上設定されても良い。
【0121】
(4)上記実施の形態では、本発明が適用される蓄電装置として非水電解液二次電池RBを例示しているが、キャパシタ等の各種の蓄電装置にも本発明を適用できる。
【0122】
(5)上記実施の形態の補助板21では、加工硬化されていない銅板(C1020のO材)が用いられたが、補助板21の材料はこれに限られない。例えば、C1020の1/2H材や1/4H材などを焼き鈍しして低硬度化した材料が使用されても良い。また、C1020に限られず、C1100などの銅が使用されても良い。また、銅合金のO材が使用されても良い。又、ビッカース硬さが40Hv以上で、且つ、75Hv以下であれば、銅材料に限らず、A5000番代などの比較的硬度を高めたアルミニウム合金が使用されても良い。
【0123】
(6)上記実施の形態では、負極側に本発明を適用したものを例示しているが、正極側でも同様に本発明を適用できる。
【0124】
(7)上記実施の形態では、長尺帯状の正極側の電極板と長尺帯状の負極側の電極板とを、セパレータを挟んで巻回した巻回型の蓄電要素3を例示している。しかし、正極側の電極板と負極側の電極板とが層状に重ねられている蓄電要素を備えた蓄電装置であれば本発明を適用できる。即ち、巻回型の蓄電要素に限定されない。例えば、複数の正極側の電極板と複数の負極側の電極板とを、セパレータを挟んで交互に積層した積層型の蓄電要素を備えた蓄電装置にも本発明を適用できる。その他の例として、蓄電要素は、正極側の電極板、負極側の電極板、及びセパレータのうち少なくとも一つを蛇腹状に折りたたんで層状に重ねた構成であっても良い。