特許第6181063号(P6181063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181063HMG−CoAレダクターゼ阻害剤の中間体の新規な製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181063
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】HMG−CoAレダクターゼ阻害剤の中間体の新規な製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/62 20060101AFI20170807BHJP
   C12P 13/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C12P7/62
   C12P13/02
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-543000(P2014-543000)
(86)(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公表番号】特表2014-533519(P2014-533519A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】IN2012000770
(87)【国際公開番号】WO2013080219
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年10月1日
(31)【優先権主張番号】4102/CHE/2011
(32)【優先日】2011年11月28日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】503417626
【氏名又は名称】マイラン ラボラトリーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MYLAN LABORATORIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・クリスチャン・アレクサンダー・ファン・ヴリート
(72)【発明者】
【氏名】ウィレム・ロバート・クラース・スルューファールト
(72)【発明者】
【氏名】マドゥレシュ・クマール・セティ
(72)【発明者】
【氏名】サンジャイ・マハジャン
(72)【発明者】
【氏名】バイライアー・マラ
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/141934(WO,A1)
【文献】 国際公開第92/022560(WO,A1)
【文献】 特表2004−533479(JP,A)
【文献】 J. Med. Chem.,1987年,vol.30, no.10,pp.1858-1873
【文献】 Can. J. Chem.,1988年,vol.66, no.6,pp.1422-1424
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00−41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIの化合物の製造方法であって、以下の工程:
a)式IIIの化合物を、適切な酵素の存在下、エナンチオ選択的に酵素アミド化して、式IVのアミド化合物:
【化1】
(式中、Rは、C〜Cアルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基である)
を得る工程;
b)式IVの化合物を、式Vの化合物:
【化2】
(式中、Rは、C〜Cアルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、但し、Rが式IVのRとは異なることを条件とする)
に、エステル交換させる工程;
c)式Vの化合物のヒドロキシ基を適切なヒドロキシ保護基で保護して、式VIの化合物:
【化3】
(式中、Xは、適切な保護基である)
を得る工程;
d)式VIの化合物を、式VIIの化合物:
【化4】
に変換する工程;および
e)式VIIの化合物を、式IIの化合物:
【化5】
(式中、Rは、カルボキシル保護基であり、Xは、上で定義したとおりである)
に変換する工程
を含前記酵素が加水分解酵素であるリパーゼである、方法。
【請求項2】
リパーゼが、Candida antarcticaリパーゼである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
リパーゼが、Candida antarcticaリパーゼBである、請求項に記載の方法。
【請求項4】
式Vの化合物のRがアリールアルキル基である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
式IVの化合物のエステル交換を、触媒の存在下で行い、
場合により、前記触媒が、オルトチタン酸テトラメチル、オルトチタン酸テトラエチル、オルトチタン酸テトラプロピル、オルトチタン酸テトライソプロピル、オルトチタン酸テトラブチル、またはオルトチタン酸テトラベンジルから選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式VIの化合物を、触媒水素化によって式VIIの化合物に変換する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式IIの化合物のRがC〜Cアルキル基である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式IIの化合物を、さらにHMG−CoAレダクターゼ阻害剤に変換する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤が、ロスバスタチン(Rosuvastatin)またはピタバスタチン(Pitavastatin)である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年11月28日付けのインド特許出願第4102/CHE/2011号に基づく優先権を主張する。
本発明は、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤の中間体として用いられるペンタン酸誘導体の新規な製造方法、さらにはそのHMG-CoAレダクターゼ阻害剤への変換に関する。
【背景技術】
【0002】
HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン)は、LDLコレステロールの血中濃度を低減させるために使用されてきた。コレステロールは、メバロン酸経路を介して産生される。コレステロールの前駆体であるメバロン酸の形成の低減は、肝臓のコレステロール生合成に相当する減少をもたらすと共にコレステロールの細胞内プールの減少をもたらす。HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン)は、下記一般式I:
【化1】
(式中、Rは、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤の残基であり、Mは、水素または薬学的に許容される塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等を表す)
で表される。
【0003】
式Aのビス[(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5イル](3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸]カルシウム塩(ロスバスタチンカルシウム)は、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤であり、高脂血症の治療のためにシオノギによって開発された。
【化2】
【0004】
ロスバスタチンカルシウムは、ヒトなどの哺乳動物を治療用に、独自の名称CRESTORの下で市販され、5mg、10mgの、20mgおよび40mgの1日の投与形態として投与される。
【0005】
ロスバスタチン及びその薬学的に許容される塩は、最初に欧州特許出願公開第 0521471号に開示された。これには、ロスバスタチンカルシウムの製造方法も開示されている。
【0006】
式Bのビス{(3R,5S,6E)-7-[2 -シクロプロピル-4-(4 -フルオロフェニル)-3-キノリル]-3,5 -ジヒドロキシ-6-ヘプテン酸}モノカルシウム塩(ピタバスタチンカルシウム)は、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤であり、高脂血症の治療のため日産化学工業によって開発された。
【化3】
【0007】
ピタバスタチンおよびその薬学的に許容される塩は、最初に欧州特許出願公開第 0304063号に開示された。これには、ピタバスタチンナトリウムの製造方法も開示されている。
【0008】
米国特許第5,260,440号及び国際出願第03/097614号は、中間体3(R)-3(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5-オキソ-6-トリフェニルホスホラニリデン-ヘキサノエートからのロスバスタチンの合成を開示している。
【0009】
国際出願第03/087112号は、中間体(3R)-3(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-6-ジメトキシホスフィニル-5-オキソ-ヘキサノエートからのロスバスタチンの合成を開示している。
【0010】
米国特許第5,117,039号は、(3R)-3- [(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]ペンタン二酸の1- [(R)-マンデル酸]エステルを、D-マンデル酸ベンジルを使用して3-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]ペンタン二酸の無水物を開環することによって製造する方法を開示しているが、この方法は、少ない収率を与え、不純物が副生する。
【0011】
米国特許出願公開第20090076292号は、中間体(3R)-3(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5 -オキソ-6 -トリフェニル-ホスホラニリデンヘキサノエートおよび(3R)-3(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-6-ジメトキシホスフィニル-5-オキソ-ヘキサノエートを用いることによるロスバスタチンの製造方法を開示している。これらの中間体は、新規な中間体であるヒドロキシが保護されたジエチルグルタレートのキラル塩基塩によって調製されている。
【0012】
米国特許出願公開第2005/0070605号は、アミド結合を形成するフェニルエチルアミンによって3-ヒドロキシが保護されたグルタル酸無水物のエナンチオ選択的な開環反応、およびHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を得るためのさらなる変換を開示している。
【0013】
化合物(3R)-3(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5-オキソ-6-トリフェニル-ホスホラニリデンヘキサノエートは、下記式IIのペンタン酸誘導体から調製することができる。
【化4】
式中、Xは、水素またはヒドロキシ保護基であり、Rは、カルボキシル保護基である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願公開第 0521471号
【特許文献2】欧州特許出願公開第 0304063号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来技術では、式IIの化合物は、ラセミ体の光学分割または不斉合成によって調製されていた。これらのルートは、工業スケールの製造では不利点を有する。
本発明は、式IIのペンタン酸誘導体の工業的にスケールアップ可能な製造方法、さらにはHMG-CoAレダクターゼ阻害剤への変換を提供する。
本発明の主要目的は、式IIのペンタン酸誘導体の製造のための新規な製造方法、さらにはHMG-CoAレダクターゼ阻害剤への変換を提供することである。
【化5】
式中、Xは、水素またはヒドロキシ保護基であり、Rは、カルボキシル保護基である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の1つの側面は、式IIの化合物の製造方法の提供であり、この方法は、以下の工程を含む:
a)式IIIの化合物を、適切な酵素の存在下、酵素的かつエナンチオ選択的にアミド化して、式IVのアミド化合物:
【化6】
(式中、Rは、C〜Cアルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基である)を得る工程;
b)式IVの化合物を、式Vの化合物:
【化7】
(式中、Rは、C〜Cアルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、Rが式IVのRとは異なることを条件とする)に、エステル交換させる工程;
c)式Vの化合物のヒドロキシ基を適切なヒドロキシ保護基で保護して、式VIの化合物:
【化8】
(式中、Xは、適切な保護基である)を得る工程;
d)式VIの化合物を、式VIIの化合物:
【化9】
に変換する工程;および
e)式VIIの化合物を、式IIの化合物:
【化10】
(式中、Rは、カルボキシル保護基であり、Xは、上で定義したとおりである)に変換する工程。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤の中間体として用いられるペンタン酸誘導体である式IIの化合物の新規な製造方法、およびHMG-CoAレダクターゼ阻害剤へのさらなる変換に関する。
【0018】
式IIの化合物は、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤のヘプタノエート側鎖中間体の調製に用いられる。
【0019】
本発明の1つの側面は、式IIの化合物の製造方法を提供することにあり、この方法は、以下の工程を含む:
a)式IIIの化合物を、適切な酵素の存在下、酵素的かつエナンチオ選択的にアミド化して、式IVのアミド化合物:
【化11】
(式中、Rは、C〜Cアルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基である)を得る工程;
b)式IVの化合物を、式Vの化合物:
【化12】
(式中、Rは、C〜Cアルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、但し、Rが式IVのRとは異なることを条件とする)に、エステル交換させる工程;
c)式Vの化合物のヒドロキシ基を適切なヒドロキシ保護基で保護して、式VIの化合物:
【化13】
(式中、Xは、適切な保護基である)を得る工程;
d)式VIの化合物を、式VIIの化合物:
【化14】
に変換する工程;および
e)式VIIの化合物を、式IIの化合物:
【化15】
(式中、Rは、カルボキシル保護基であり、Xは、上で定義したとおりである)に変換する工程。
【0020】
本発明のRは、カルボキシル保護基から選択され、Xは、ヒドロキシ保護基から選択される。適切な保護基は、文献に記載されており、当業者によく知られているものを利用することができる。適切な保護基の例は、通常の研究で用いられるものであってよく、例えば、J. F. W. McOmie, "Protective Groups in Organic Chemistry", Plenum Press, London and New York 1973、T. W. Greene and P. G. M. Wuts, "Protective Groups in Organic Synthesis", Third edition, Wiley, New York 1999、"The Peptides"; Volume 3 (editors: E. Gross and J. Meienhofer), Academic Press, London and New York 1981、"Methoden der organischen Chemie", Houben-Weyl, 4 edition, Vol. 15/1, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974、H.-D. Jakubke and H. Jescheit, "Aminosauren, Peptide, Proteine", Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield Beach, and Basel 1982、および/またはJochen Lehmann, "Chemie der Kohlenhydrate: Monosaccharide und Derivate", Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974などに記載されている。
【0021】
適切なヒドロキシ保護基は、アルキル、アリール、アリールアルキル、トリアルキルシリル、またはジアリールアルキルシリルである。保護基は、トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、またはジフェニル(tert-ブチル)シリル基である。
【0022】
本発明において、工程a)では、式IIIの化合物を、酵素で選択的にアミド化する。この反応で用いる酵素は、加水分解酵素、例えば、リパーゼ、エステラーゼ、プロテアーゼから選択される。好ましい酵素は、有機媒体中でエステルをアンモニアまたはアミンでアミド化する活性を示す微生物リパーゼである。優れた性能は、カンジダ属、特にカンジダアンタルチカリパーゼからのリパーゼを用いて得られる。アイソザイムBが最も好ましい。有機媒体中の加水分解酵素の許容される活性を得るために、多孔性の固体支持体上に酵素を固定化することが有利である。使用に適した酵素は、カンジダアンタルチカリパーゼBの固定化タイプのものであり、有機溶媒中で無水アンモニアを使用する。この工程で用いる有機溶媒は、アルコール溶媒またはエーテル溶媒である。アルコール溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、または2-メチルブタン-2-オール(tert-ペンタノール)、2-メチル-2-ブタノール、好ましくはtert-ペンタノールから選択される。エーテル溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、好ましくは1,4-ジオキサンから選択される。得られる式IVのモノアミドエステル中間体化合物を再結晶させて、式IVの高度に鏡像異性体過剰な化合物を得る。
【0023】
本発明の工程b)は、式IVの化合物のエステル交換に関する。式IVの化合物のエステル交換は、触媒の存在下で行う。
適切な触媒は、本質的に中性の条件下で高いエステル交換活性を示す触媒から選択される。式IVおよび式Vの化合物は、通常の強塩基性エステル交換条件下では限られた光安定性しか示さないからである。本質的に中性条件下で活性な触媒は、ジアルキルスズジアルコキシド(例えば、ジブチルスズジメトキサイド)およびチタンのテトラアルキルエステル、例えば、テトラメチルオルトチタネート、テトラエチルオルトチタネート、テトラプロピルオルトチタネート、テトライソプロピルオルトチタネート、テトラブチルオルトチタネート、およびテトラベンジルオルトチタネート。最も好ましいのは、市販のテトライソプロピルオルトチタネートである。特別な実施形態では、テトライソプロピルオルトチタネートを、真空下で過剰のベンジルアルコールとまず混合して、ベンジルアルコール中のテトラベンジルオルトチタネート溶液を生成させることができる。この反応において、触媒の非常に少ない量が使用される。式IVの化合物を、それぞれのアルコール化合物と反応させて、所望のエステルを得ることができる。この反応では、好ましくはアリールアルキルエステル、より好ましくはベンジルエステルを、式IVの化合物とベンジルアルコールとを反応させることによって調製する。本反応に用いる好ましい触媒はチタン触媒であり、このチタン触媒は、生成物から除去する必要がある。ほとんどの手順では、このために不溶性の水和のTiO2を形成させるためのいくらかの水を添加するが、水の添加は不利な濾過特性を有する沈殿物を生成する。代替的な後処理方法として、反応混合物を(DL /メソ)酒石酸の水溶液に添加する方法が開発されている。この方法では、酒石酸は、水溶性かつ安定なチタン複合体を形成する一方、有機相にベンジルアミドエステルを放出する。
【0024】
本発明の工程c)は、式Vの化合物の保護に関する。式Vの化合物を、塩基および有機溶媒の存在下で、適切な保護基、例えば、アルキル、アリール、アリールアルキル、トリアルキルシリル、およびジアリールアルキルシリルなどで保護する。この反応で使用する適切な保護基は、tert-ブチルジメチルシリル基である。塩基は、好ましくは、第三級脂肪族アミン、第二級芳香族アミン、または第三級芳香族アミン、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、DBU、DBN、イミダゾール、およびN-メチルイミダゾールなどから選択され、好ましくはイミダゾールである。本反応に用いる有機溶媒は、極性非プロトン性溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、トリフルオロメチルベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどであり、好ましくはジメチルホルムアミドである。
【0025】
本発明の工程d)は、式VIの化合物の、式VIIの化合物への変換に関する。この変換は、式VIの化合物を水素化分解または接触水素化することによって実施することができる。式VIの化合物の接触水素化は、ベンジルエステルの水素化分解を示す遷移金属から選択される触媒、好ましくは、Pd / CまたはPd/Al2O3などの固体支持体上のパラジウム、好ましくはPd触媒の存在下、水素の存在下、エステル、アルコール、エーテル、または芳香族溶媒、好ましくはエステル系溶媒中で起こる。好ましいエステル溶媒は酢酸エチルである。
【0026】
本発明の工程e)は、アミドをエステルに変換することによる、式VIIの化合物から式IIの化合物への変換に関する。反応は、穏やかな塩基性条件下でのジメチルホルムアミドジメチルアセタールの使用を必要とする。温和な塩基性条件下で、この試薬は、アミドを反応性のアシル形態のアミジン(acylformamidine)に変換し、これがその後アルコールと反応して対応するエステルを形成する一方、遊離カルボン酸基のエステル化を抑制する。この反応に用いる塩基は、アルカリ金属アルコキシド、例えば、ナトリウムメトキシドまたはカリウムメトキシドから選択され、好ましくはナトリウムメトキシドである。この反応に使用する溶媒はメタノールである。
【0027】
[本発明の効果]
本発明の反応スキームは、キラル試薬、極低温の反応条件の使用を回避することができ、かつ、光学的に純粋な所望の式IIのモノエステルをより高い全収率で得ることができる。第1の工程で用いる少量の触媒は、リサイクルして何回も使用することができ、これにより所望の生成物の製造コストを改善することができる。中間体の多くは結晶性の固体であり、結晶化によって化学的および光学的な純度を高めることができる。
【0028】
式IIIの化合物は、Tetrahedron;43(l);45-58;1987、Canadian journal of chemistry;66(6);1422-4;1988、およびJournal of the American chemical society;68;721;1946に開示されているような従来技術の変換方法で調製することができる。
【0029】
式IIの化合物は、US RE 37,314、US 5,260,440、WO 2003087112、US 2007037979、およびCN 100506796に開示されているような従来技術の方法で、さらに式IのHMG-CoAレダクターゼ阻害剤に変換される。
【0030】
例えば、式IIの化合物は、下記スキームに示したとおりの以下の手順にしたがって、ロスバスタチンカルシウムにさらに変換することができる。
【0031】
【化16】
【0032】
例えば、式IIの化合物は、下記スキームに示したとおりの以下の手順にしたがって、ピタバスタチンカルシウムにさらに変換することができる。
【0033】
【化17】
【0034】
本明細書において参照により引用した全ての特許、特許出願、および非特許刊行物の全内容が考慮されるべきである。本発明を、例示として提供する以下の実施例によって説明するが、本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【実施例】
【0035】
[実施例1]:式IVの化合物(R=Me)の調製方法
tert-ペンタノール(1.1 L)に気体アンモニアを、アンモニアシリンダーから約1 mol(17 g)が蒸発されるまで飽和させた。これに、式IIIの化合物(R=Me)(125 g; 0.71mol)を添加し、続いて固定化したCAL-B (CAL-B-T1-350; 12.5 g)を添加した。反応器を閉じ、周囲温度で機械的に撹拌した。反応が完結した後、酵素を100μmのフィルターで除去し、メタノールで洗浄した。ろ液を、減圧下、50℃未満の温度で蒸発させて、オイル状の残渣を得た。この残渣を酢酸イソプロピルからの結晶化によって精製して、(S)-メチル3-ヒドロキシグルタラメートを得た。
【0036】
[実施例2]:式Vの化合物(R=ベンジル)の調製方法
実施例1で得られた(S)-メチル3-ヒドロキシグルタラメート(16.1 g; 0.lmol)を、ベンジルアルコール(25 g)と混合した。この混合物を、減圧(< 15 mbar)下、55℃に加熱して、痕跡量の湿気を除去した。ニートのテトライソプロピルオルトチタネート(3 ml; l0mol %)を添加し、混合物を、十分な減圧下、55〜57℃に3時間加熱した。この混合物を冷却し、1体積量のテトラヒドロフランで希釈した。この有機混合物を、10分間かけてゆっくりと、激しく撹拌させた酒石酸水溶液(1 M, 100 ml)と酢酸エチルとの混合物に添加した。有機相を分離し、水性相を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出液を希重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。有機相を減圧下で蒸発させ、MTBEを添加し、混合物を撹拌しながら冷却した。得られた粘稠な懸濁液を濾過し、冷MTBE、ペンタンで洗浄して、(S)-ベンジル3-ヒドロキシグルタラメートを得た。
【0037】
[実施例3]:式VIの化合物(R=ベンジルおよびX=tert-ブチルジメチルシリル)の調製方法
(S)-ベンジル3-ヒドロキシグルタラメート(66 g; 0.28 mol; 97 % e.e.)およびイミダゾール(23 g; 0.34 mol; 1.2 eq.)の混合物を、ジメチルホルムアミド(70 ml)と混合した。この混合物に、tert-ブチルジメチルシリルクロライド(45 g; 0.3 mol)のジメチルホルムアミド(150 ml)中の溶液を、冷却下(+5 °C)で添加した。混合物を25℃に加温し、1時間撹拌した。混合物を水でクエンチした。この混合物を水でさらに希釈し、酢酸イソプロピルで抽出した。有機抽出液を、水、希重炭酸ナトリウム、および塩水で洗浄した。蒸発後、(S)-ベンジル3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ]グルタラメートがオイルとして得られた。
【0038】
[実施例4]:式VIIの化合物(X=tert-ブチルジメチルシリル)の調製方法
実施例3からの(S)-ベンジル3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ]グルタラメート(48.5 g)を、酢酸エチル(350 ml)に溶解させ、マグネチックスターラーで撹拌しながら500 mlのガラス耐圧反応器に入れた。炭素上のパラジウム触媒(5 %, 0.48 g)をこれに添加し、混合物を2.7気圧の水素下で4時間水素化した。圧力を開放し、混合物を濾過した。触媒を、25 mlの酢酸エチルで洗浄し、再利用のために保存した。ろ液を水と混合した。この混合物のpHを、撹拌下、2.5 Mのアンモニア水を用いて8.5に調整した。水性相をMTBEで1回抽出した。透明な水性相を+5℃に冷却し、濃HClを用いてゆっくりとpH4.4に酸性化した。pH4.8〜5で粘稠な沈殿が形成された。混合物を濾過し、固体を水で1回洗浄し、減圧下で乾燥させて、(S)-3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ]グルタル酸モノアミドを得た。
【0039】
[実施例5]:式IIの化合物(X=tert-ブチルジメチルシリルおよびR=Me)の調製方法
(S)-3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ]グルタル酸モノアミド(4.6 g)を、アルゴン雰囲気下で、無水メタノール(30 ml)中に溶解させた。この反応混合物のpHを、ナトリウムメトキシド溶液(3.6 ml 30 %)の添加によって、11.4に調整した。この溶液を、アルゴン下、5.0 gのジメチルホルムアミドジメチルアセタール(42 mmol)と混合した。この混合物を、不活性雰囲気下、30℃にて20時間撹拌した。得られた混合物を、ジクロロメタンおよび希リン酸の撹拌した混合物に、ゆっくりと添加した。有機相を水で洗浄し、蒸発させて、(R)-メチル3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ]グルタレートを得た。
【0040】
[実施例6]:(S)-メチル-3-ヒドロキシグルタラメートの調製方法
tert-ペンタノール(800 ml) に気体アンモニアを、約1.0〜1.5 mol飽和させた。これに、ジメチル-3-ヒドロキシグルタレート(100 g)を添加し、続いて固定化したCAL-B (CAL B-T1-AMD2)を3 g添加した。反応器を閉じ、20〜25℃で撹拌した。反応が完結した後、酵素を濾過によって除去し、その酵素をtert-ペンタノール(100 ml)で洗浄した。ろ液を、減圧下、50℃未満の温度で蒸発させて、オイル状の残渣を得た。この残渣をtert-ペンタノール/tert-ブチルメチルエーテル混合液からの結晶化によって精製して、(S)-メチル3-ヒドロキシグルタラメートを得た。
【0041】
[実施例7]:(S)-ベンジル-3-ヒドロキシグルタラメートの調製方法
ベンジルアルコール(131.0 g)、(S)-メチル3-ヒドロキシグルタラメート(100 g)、およびテトライソプロピルオルトチタネート(17.5 g)を、フラスコ内で混合した。この混合物を、減圧下、50〜60℃にて5時間加熱した。反応混合物を、冷却し、ジクロロメタン(500 ml)で希釈した。反応混合物を、撹拌した酒石酸水溶液(370 mlのDM水中37 g)と500 mlの酢酸イソプロピルとの混合物に添加した。この反応混合物を撹拌し、アンモニア水溶液によってpHを7.0〜8.0に調整した。相を分離した。有機相を取り除き、水性相を酢酸イソプロピルで抽出した。合わせた有機相を、アンモニア水、酒石酸水溶液、続いて塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで無水にし、減圧下で蒸発させてオイルを得た。このオイルに、tert-ブチルメチルエーテル(800 ml)を添加し、撹拌し、冷却し、濾過し、乾燥させて、(S)-ベンジル3-ヒドロキシグルタラメートを得た。
【0042】
[実施例8]:(S)-ベンジル-3-ヒドロキシグルタラメートの調製方法
ベンジルアルコール(131.0 g)、(S)-メチル3-ヒドロキシグルタラメート(100 g)、およびテトライソプロピルオルトチタネート(17.5 g)を、フラスコ内で混合した。この混合物を、減圧下、50〜60℃にて5時間加熱した。反応混合物を、冷却し、ジクロロメタン(500 ml)で希釈した。反応混合物を、撹拌した酒石酸水溶液(370 mlのDM水中37 g)と500 mlの酢酸イソプロピルとの混合物に添加した。この反応混合物を撹拌し、アンモニア水溶液によってpHを7.0〜8.0に調整した。相を分離した。有機相を取り除き、水性相をジクロロメタンで抽出した。合わせた有機相を、アンモニア水、酒石酸水溶液、続いて塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで無水にし、減圧下で蒸発させてオイルを得た。このオイルに、tert-ブチルメチルエーテル(800 ml)を添加し、撹拌し、冷却し、濾過し、乾燥させて、(S)-ベンジル3-ヒドロキシグルタラメートを得た。
【0043】
[実施例9]:(S)-ベンジル-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)グルタラメートの調製方法
(S)-ベンジル3-ヒドロキシグルタラメート(100 g)を、ジメチルホルムアミドに溶解させた。これに、イミダゾール(35 g)を添加し、溶液を5℃に冷却した。これに、冷却下、tert-ブチルジメチルシリルクロライド(68.5 g)をジメチルホルムアミド(250 ml)に溶解させた溶液を添加した。混合物を20〜25℃に加温し、撹拌した。反応混合物を冷却し、水でクエンチした。この反応混合物に、酢酸エチルおよび水の混合液を添加し、撹拌した。相を分離し、有機相を水で3回洗浄した。有機相を減圧下で蒸発させて、(S)-ベンジル3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ] グルタラメートをオイルとして得た。
【0044】
[実施例10]:(S)-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)グルタル酸モノアミドの調製方法
(S)-ベンジル3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ]グルタラメート(100 g)を、酢酸エチルに溶解させ、耐圧フラスコに入れた。これに、炭素上のパラジウム(5 %, 1 g)を添加し、水素雰囲気(約2.8 Kg)下で4時間水素化した。パラジウムを、濾過によって除去した。ろ液を水と混合し、アンモニア水を用いてpHを約9.0に調整した。この反応物を撹拌し、相を分離させた。水性相を、ジクロロメタンで洗浄し、ジクロロメタンを水性相に加えた。反応物を5℃に冷却し、リン酸水溶液でpHを4.0に調整した。反応物を撹拌し、相を分離させた。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで無水にした。有機相を減圧下で蒸発させて残渣を得た。残渣をジクロロメタンに溶解させ、この溶液にヘプタンを添加し、乾燥させて、(S)-3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ]グルタル酸モノアミドを得た。
【0045】
[実施例11]:(S)-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)グルタル酸モノアミドの調製方法
(S)-ベンジル3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ]グルタラメート(100 g)を、酢酸エチルに溶解させ、耐圧フラスコに入れた。これに、炭素上のパラジウム(5 %, 1 g)を添加し、水素雰囲気(約2.8 Kg)下で水素化した。パラジウムを、濾過によって除去した。ろ液を水と混合し、アンモニア水を用いてpHを約9.0に調整した。この反応物を撹拌し、相を分離させた。水性相を、ジクロロメタンで洗浄し、ジクロロメタンを水性相に加えた。反応物を5℃に冷却し、リン酸水溶液でpHを4.0に調整した。反応物を撹拌し、相を分離させた。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで無水にした。有機相を減圧下で蒸発させて残渣を得た。残渣をジクロロメタンに溶解させ、この溶液にペンタンを添加し、乾燥させて、(S)-3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ]グルタル酸モノアミドを得た。
【0046】
[実施例12]:(S)-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)グルタル酸モノアミドの調製方法
(S)-ベンジル3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ]グルタラメート(100 g)を、酢酸エチルに溶解させ、耐圧フラスコに入れた。これに、炭素上のパラジウム(5 %, 1 g)を添加し、水素雰囲気(約2.8 Kg)下で水素化した。パラジウムを、濾過によって除去した。ろ液を水と混合し、アンモニア水を用いてpHを約9.0に調整した。この反応物を撹拌し、相を分離させた。水性相を、ジクロロメタンで洗浄し、ジクロロメタンを水性相に加えた。反応物を5℃に冷却し、リン酸水溶液でpHを4.0に調整した。反応物を撹拌し、相を分離させた。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで無水にした。有機相を減圧下で蒸発させて残渣を得た。残渣をジクロロメタンに溶解させ、この溶液にヘキサンを添加し、乾燥させて、(S)-3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ]グルタル酸モノアミドを得た。
【0047】
[実施例13]:(R)-メチル-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)グルタレートの調製方法
(S)-3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ]グルタル酸モノアミド(100 g)を、窒素雰囲気下で、メタノール(650 ml)に溶解させた。この反応物に、冷却下、ナトリウムメトキシド溶液(82.9 g)を添加した。次いで、反応物を、約25℃に加熱し、これに、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(100 g)をゆっくり添加した。この混合物を、25℃にて約20時間撹拌した。この反応物を、ジクロロメタンおよび希リン酸溶液の撹拌した混合物に、ゆっくり添加した。有機相を水で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで無水にし、減圧下で蒸発させて、(R)-メチル3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ]グルタレートを得た。
【0048】
[実施例14]:(S)-ベンジル-3-ヒドロキシグルタラメートの調製方法
tert-ペンタノール(800 ml) に気体アンモニアを、約1.0〜1.5 mol飽和させた。これに、ジメチル-3-ヒドロキシグルタラメート(100 g)を添加し、続いて固定化したCAL-B (CAL-B-T1-AMD2)を3 g添加した。反応フラスコを閉じ、20〜25℃で撹拌した。反応が完結した後、酵素を濾過によって除去し、その酵素をtert-ペンタノール(100 ml)で洗浄した。ろ液を、減圧下、50℃未満の温度で蒸発させて、残渣を得た。ベンジルアルコール(131.0 g)、(S)-ベンジル-3-ヒドロキシグルタラメート(100 g)、およびテトライソプロピルオルトチタネート(17.5 g)のこの残渣混合物を、フラスコ内で混合した。この混合物を、減圧下、50〜60℃にて約5時間撹拌した。反応混合物を冷却し、酢酸イソプロピル(500 ml)で希釈した。反応混合物を、撹拌した酒石酸水溶液(370 mlのDM水中37 g)と500 mlの酢酸イソプロピルとの混合物に添加した。反応混合物を撹拌し、pHをアンモニア水溶液によって7.0〜8.0に調整した。相を分離させた。有機相を取出し、水性相を、酢酸イソプロピルで抽出した。合わせた有機相を、アンモニア水、酒石酸水溶液、次いで塩水で洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウムで無水にし、減圧下で蒸発させてオイルを得た。このオイルに、tert-ブチルメチルエーテル(800 ml)を添加し、撹拌し、冷却し、濾過し、乾燥させて、(S)-ベンジル3-ヒドロキシグルタラメートを得た。
【0049】
[実施例15]:(S)-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)グルタル酸モノアミドの調製方法
(S)-ベンジル3-ヒドロキシグルタラメート(100 g)を、ジメチルホルムアミドに溶解さた。これに、イミダゾール(35 g)を添加し、溶液を5℃に冷却した。この溶液に、tert-ブチルジメチルシリルクロライド(68.5 g)をジメチルホルムアミド(250 ml)中に溶解させた溶液を、冷却下で添加した。混合物を20〜25℃に加温し、撹拌した。反応混合物を冷却し、水でクエンチした。この反応混合物に、酢酸エチルおよび水を添加し、撹拌した。相を分離させ、有機相を水で3回洗浄した。この有機相に、炭素上のパラジウム(5 %, 1 g)を添加し、水素雰囲気(約2.8 Kg)下で撹拌した。パラジウムを、濾過によって除去した。ろ液を水と混合し、アンモニア水を用いてpHを約9.0に調整した。この反応物を撹拌し、相を分離した。水性相を、ジクロロメタンで洗浄し、ジクロロメタンを水性相に加えた。反応物を5℃に冷却し、リン酸水溶液でpHを4.0に調整した。反応物を撹拌し、相を分離させた。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで無水にした。有機相を減圧下で蒸発させて残渣を得た。残渣をジクロロメタンに溶解させ、この溶液にヘプタンを添加し、撹拌し、濾過し、乾燥させて、(S)-3-[tert-ブチルジメチルシリルオキシ]グルタル酸モノアミドを得た。
【0050】
[実施例16]:(S)-メチル-3-ヒドロキシグルタラメートの調製方法
tert-ペンタノール(200 ml) に気体アンモニアを周囲圧力にて飽和させた。これを周囲温度に冷却し、これに、CaLB-T1-AMD酵素(1.25 g)およびジメチル-3-ヒドロキシグルタレート(25.3 g)を添加した。得られた混合物を、マグネチックスターラーで18時間周囲温度(20〜21℃)にて穏やかに撹拌した。酵素を濾過によって除去し、tert-ペンタノール(25 ml)で洗浄した。この透明なろ液(200 g)を、減圧下、最高で50℃までの温度で濃縮して、淡褐色オイルを得た。このオイルを再びtert-ペンタノール(90 ml)に溶解させ、500 mlの容器に入れて機械的に撹拌した。これに、メチル(S)-3-ヒドロキシグルタラメート(10 mg)の種晶を添加しながら、MTBE(メチルtert-ブチルエーテル)をゆっくり添加した。この結晶懸濁液を氷浴で+5℃に冷却した。反応物を濾過し、MTBEで洗浄し、乾燥させて、(S)-メチル3-ヒドロキシグルタラメートを得た。
【0051】
[実施例17]:(S)-ベンジル-3-ヒドロキシグルタラメートの調製方法
(S)-メチル3-ヒドロキシグルタラメート(41.2 g)およびベンジルアルコール(54 g)を、250 mlフラスコに入れた。この混合物を減圧下で55℃に加熱して、透明な溶液を得た。これに、ニートのテトライソプロピルオルトチタネート(7.5 ml)を添加した。この混合物を、十分な減圧下、55〜58℃で撹拌した。この混合物を酢酸イソプロピルで希釈して、酒石酸水溶液(50 mlの水中7.5 g)および酢酸イソプロピル(200 ml)の混合物に添加した。有機相を取出し、水、NaHCO3溶液、および塩水で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで無水にし、蒸発させて、青色オイルを得た。加えて、水性相を酢酸エチルで抽出して無色オイルを得た。合わせた油状物質をMTBEと共に機械的に撹拌し、(S)-ベンジル3-ヒドロキシグルタラメートの種晶を添加した。この粘稠な懸濁液を、氷浴中で5℃に冷却し、15分間置いた後、濾過した。固体をMTBEおよびペンタン(50 ml)で洗浄した。得られたものを乾燥させて、(S)-ベンジル3-ヒドロキシグルタラメートを得た。
【0052】
[実施例18]:(S)-ベンジル-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)グルタラメートの調製方法
(S)-ベンジル3-ヒドロキシグルタラメート(49.5 g)を、無水ジメチルホルムアミド(50 ml)に溶解させ、固体イミダゾール(17.1 g)が入った500 mlのフラスコに添加した。これに、tert-ブチルジメチルシリルクロライド(34 g)をジメチルホルムアミド(120 ml)中に溶解させた溶液を添加し、反応フラスコを氷浴で冷却した。反応を、水を飽和させた酢酸エチルを添加することによってクエンチした(停止させた)。この混合物を周囲温度で撹拌した。これに、水を添加し、この2相の混合物を1時間撹拌した。次いで、混合物を水で洗浄した。有機相を混合し、水で洗浄して、痕跡量のジメチルホルムアミドを除去した。有機相を減圧下で蒸発させて、(S)-ベンジル-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)グルタラメートを得た。
【0053】
[実施例19]:(S)-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)グルタル酸モノアミドの調製方法
(S)-ベンジル-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)グルタラメート(70 g)を、酢酸エチル(350 ml)に溶解させ、500 mlの耐圧ガラス容器に入れた。これに、無水の5% Pd/C (1.4 g)を、減圧下で添加し、水素ガスで2.7 bar圧力に加圧した。この混合物を機械的に撹拌しながら、水素源への連結を維持した。触媒を濾過により除去し、小容量の酢酸エチル(25 ml)で洗浄した。透明なろ液を水および希アンモニアと混合した。水性相を分離し、有機相を水で抽出した。合わせた水性相をMTBEで洗浄し、減圧下で脱気して痕跡量の有機溶媒を除去した。混合物を氷浴中に置いた。冷却された水性溶液を、希リン酸を用いて酸性にして、粘稠な懸濁液を得た。これを濾過し、冷水で洗浄し、乾燥させて、(S)-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)グルタル酸モノアミドを得た。
【0054】
[実施例20]:(R)-メチル-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)グルタレートの調製方法
(S)-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)グルタル酸モノアミド(10 g)を、無水メタノール(90 ml)に溶解させ、アルゴン下に置いた。この混合物に、ナトリウムメトキシド溶液(8.6 g)を加えた。これに、ニートのジメチルホルムアミドジメチルアセタール(10 g)を加え、得られた混合物をアルゴン下、30℃にて16時間混合した。この混合物を冷却し、予め冷却しておいた酢酸エチル(150 ml)およびクエン酸水溶液(100 mlの水中の19 g)混合物に添加した。得られたこの均一な混合物に、円錐を添加した。有機相を水で2回洗浄し、塩水による洗浄および硫酸ナトリウムによって無水にした。この無水の溶液を注意深く蒸発させて、(R)-メチル-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)グルタレートを得た。