【実施例】
【0010】
[実施例1]
材料および実験手順
表1は、0.22から0.28重量%の炭素含有量(鋼2、4および5)、1.5から2.0重量%のマンガン含有量(鋼1および3)ならびに0から0.02重量%のニオビウム含有量(合金2および3)の範囲を含む、本発明の範囲内にある一部の鋼の化学組成を示す。鋼組成の残りは、鉄および避けられない不純物である。
【0011】
【表1】
【0012】
5つの45Kgスラブを実験室で鋳造した。1230℃で3時間の再加熱およびオーステナイト化の後、スラブを実験室ミルにおいて63mmから20mmの厚さに熱間圧延した。仕上げ温度は約900℃であった。平板を熱間圧延の後に空冷した。
【0013】
20mmの厚さのプレ圧延平板を1230℃に2時間剪断および再加熱した後、平板を、20mmから3.5mmの厚さに熱間圧延した。仕上げ圧延温度は約900℃であった。約45℃/sの平均冷却速度にて制御された冷却の後、それぞれの組成のホットバンドを580℃の炉中に1時間保持し、続いて24時間炉冷却して、産業用巻取りプロセスを模倣した。
【0014】
3つのJIS−T標準試料を、室温引張テストのためにそれぞれのホットバンドから調製した。ホットバンドのマイクロ構造の特徴付けは、長手方向の断面において四分の一の厚さ位置で走査電子顕微鏡(SEM)によって行った。
【0015】
熱間圧延バンドの両面を摩耗し、脱炭層を除去した。次いでこれらを、75%の実験室冷間圧延に供し、さらなる焼鈍シミュレーションのために最終厚さ0.6mmを有する硬質鋼を得た。
【0016】
焼鈍シミュレーションを、2つのソルトポットおよび1つの油浴を用いて行った。均熱および急冷温度の効果を、すべての鋼について分析した。熱処理の概略図を
図1(a)および1(b)に示す。
図1(a)は、830℃から870℃の異なる均熱温度での焼鈍プロセスを示す。
図1(b)は、780℃から840℃の異なる急冷温度での焼鈍プロセスを示す。
【0017】
均熱温度の効果を試験するために、焼鈍プロセスは、冷間圧延ストリップ(0.6mmの厚さ)を870℃、850℃および830℃にそれぞれ再加熱し、続いて60秒間等温保持することを含んでいた。サンプルを、810℃の温度で維持された第2のソルトポットに直ちに移し、25秒間等温保持した。これには、水急冷が続いた。サンプルは、次いで油浴中で200℃まで60秒間再加熱し、続いて室温まで空冷して、過時効処理をシミュレーションした。均熱、急冷および過時効温度における保持時間は、このゲージに関してほぼ産業条件に近づくように選択した。
【0018】
急冷温度の効果を試験するために、分析は、870℃まで60秒間冷間圧延ストリップを再加熱し、続いて840℃、810℃および780℃に直ちに冷却した。急冷温度を25秒間等温で保持した後、試料を水中に急冷した。次いで鋼を200℃まで60秒間再加熱し、続いて空冷して、過時効処理をシミュレーションした。3つのASTM−T標準試料を、室温にて引張テストのためにそれぞれの焼鈍ブランクから調製した。
【0019】
870℃の均熱温度にて加工処理し、810℃から急冷したサンプルを、曲げテストのために選択した。圧延方向に曲げ軸を有する90°のフリーV曲げを、曲げ性特徴のために使用した。90°ダイブロックおよびパンチを備えた専用のInstron機械テストシステムを、このテストのために利用した。異なるダイ半径を有する一連の交換可能なパンチが、サンプルをマイクロクラックなしで曲げることができる最小ダイ半径を決定するように促した。テストは、サンプルが90°に曲がるまで15mm/秒の一定ストロークで行った。80KNの力および5秒の滞留時間を最大曲げ角度にて配備し、この後負荷を開放し、試料を跳ね返えらせた。本テストにおいて、ダイ半径の範囲を、0.25mm増分で1.75から2.75mmまで変動させた。曲げテストの後でサンプル表面を、10倍の倍率で観察した。0.5mmより小さいサンプル曲げ表面におけるクラック長さが、「マイクロクラック」と考えられ、0.5mmより大きいものはクラックとして認識され、テストは欠陥として標識された。視覚可能なクラックがないサンプルは、「テスト合格」と同定される。
【0020】
熱間圧延バンドのマイクロ構造および引張特性
熱間圧延鋼のマイクロ構造および引張特性における組成の効果
図2a、2bおよび2cは、580℃の熱間圧延およびシミュレーション巻取りの後の、2.0%Mn−0.2%Siおよび種々の炭素含有量(2aは0.22%Cを有し、2bは0.25%Cを有し、2cは0.28%Cを有する。)を有する実験鋼のSEM顕微鏡写真である。
【0021】
炭素含有量の増大は、体積フラクションおよびパーライトのコロニーサイズの増大をもたらした。実験鋼の室温での対応する引張特性を
図3にプロットし、ここでMPa単位の強度(グラフの上半分)およびパーセンテージ単位の展延性(グラフの下半分)を炭素含有量に対してプロットした。
図3および本明細書において、UTSは、最大引張強度を意味し、YSは降伏強度を意味し、TEは全伸びを意味し、UEは均一伸びを意味する。示されるように、炭素含有量の0.22から0.28%の増大は、最大引張強度を609から632MPaにわずかに増大させ、降伏強度を440から426MPaにわずかに低下させたが、展延性についてはほとんど変化しなかった(平均TEおよびUEは、それぞれ約16%および11%である。)。
【0022】
図4aから4bは、580℃の熱間圧延およびシミュレーション巻取りの後の、0.22%C−0.2%Si−0.02%Nbおよび2つの異なるMn含有量(4aは1.48%を有し、4bは2.0%を有する。)を有する実験鋼のSEM顕微鏡写真である。Mn含有量の増大は、体積フラクションおよびパーライトコロニーのサイズの増大をもたらした。より高いMn鋼の大きなグレインサイズは、仕上げ圧延および後続の冷却中の粗粒化に起因し得る。熱間圧延仕上げ温度は約900℃であったが、これは実験鋼の両方についてオーステナイト領域にあるが、より高いMn鋼についてはAr
3温度よりも相当高い。故に、仕上げ圧延の間およびこの後、より高いMn鋼のオーステナイトは、粗化の機会が増大し、相変態後により粗いフェライト−パーライトマイクロ構造をもたらした。
【0023】
0.22%C−2.0%のMnを有する実験鋼の室温における対応する引張特性を
図5にプロットし、ここでMPa単位の強度(グラフの上半分)およびパーセンテージ単位の展延性(グラフの下半分)をマンガン含有量に対してプロットする。示されるように、1.48から2.0%のMn含有量の増大は、655から680MPaの最大引張強度の小さな増大、540から416MPaへの降伏強度の顕著な低下およびTEについては22から18%およびUEについては12から11%のわずかな展延性の低下をもたらした。対応する降伏比(YR)は0.8から0.6に降下し、降伏点伸び(YPE)は、3.1から0.3%に、Mn含有量が増大するにつれて低下した。Mnによる固溶体の強化にも拘わらず、YS、YRおよびYPEにおける非常に大きい低下は、より高いMn鋼のマルテンサイトの形成に起因し得る。少量のマルテンサイト(5%未満でさえある。)は、フェライトを囲む自由転移を創出し、DP鋼に関して周知であるように、初期の可塑変形を促進できる。加えて、より高いMn鋼のより高い焼入性はまた、オーステナイトのグレインサイズを粗粒化し得る。
【0024】
図6aから6bは、580℃での熱間圧延およびシミュレーション巻取りの後、0.22%C−2.0%Mn−0.2%Siおよび異なるNb含有量(6aが0%を有し、6bが0.018%を有する。)を有する実験鋼のSEM顕微鏡写真である。Nb含有量の増大は、体積フラクションおよびパーライトのコロニーサイズの増大をもたらしたが、これは、Nbを有する鋼の焼入性およびより低いパーライト形成温度によって説明できる。
【0025】
0.22%C−2.0%のMnを有する比較鋼の対応する引張特性を
図7に示し、ここでMPa単位の強度(グラフの上半分)およびパーセンテージ単位の展延性(グラフの下半分)をニオビウム含有量に対してプロットする。示されるように、0.018%Nbの添加は、609から680MPaへの最大引張強度(UTS)の増大、440から416MPaへの降伏強度(YS)の小さな低下および11.8から10.8%へのUEの低減に伴う16.8から18.0%への平均TEのわずかな増大を導いた。対応する降伏比(YR)は0.72から0.61へ降下し、降伏点伸び(YPE)はNb含有量の増大に伴って2.3から0.3%に低下した。
【0026】
冷間圧延および焼鈍シミュレーションの後の調査鋼の引張特性
図8aから8fは、鋼の引張特性における、均熱温度(830、850および870℃)および鋼組成物(
図8aおよび8bは変動Cを示し、8cおよび8dは変動Mnを示し、8eおよび8fは変動Nbを示す。)の効果を示す。870から850℃への均熱温度の低下は、28から76MPaへの降伏強度(YS)の増大および30から103MPaへの最大引張強度(UTS)の増大をもたらしたが、これはより低い均熱温度でのより小さいグレインサイズに起因し得る。850から830℃への均熱温度のさらなる低下は、UTSの顕著な変化を導かなった。均熱温度の展延性への効果はなく、すべての実験鋼において均一/全伸びは3から4.75%である。2000MPaを超えるUTSおよび約3.5から4.5%の均一/全伸びは、0.28%C−2.0%Mn−0.2%Siを有する鋼において達成されたことを重視すべきである(
図8aから8bを参照)。
【0027】
図9aから9fは、調査鋼の引張特性における、急冷温度(780、810および840℃)および鋼組成(
図9aおよび9bは変動Cを示し、9cおよび9dは変動Mnを示し、9eおよび9fは変動Nbを示す。)の効果を示す。100%マルテンサイトが得られる場合に、強度および展延性における急冷温度の顕著な効果はない。均一/全伸びは、すべての実験鋼において2.75から5.5%の範囲である。データは、広いプロセスウィンドウが焼鈍中に実行可能であることを示唆している。
【0028】
図8a、8b、9aおよび9bは、C含有量の増大が、引張強度の顕著な増大をもたらすが、展延性にはほとんど効果がないことを示す。例として、830℃(均熱温度)−810℃(急冷温度)の焼鈍サイクルを考えると、YSおよびUTSの増大は、C含有量が0.22から0.28重量%に増大する場合に、それぞれ163および233MPaである。1.5から2.0重量%のMn含有量の増大は、強度および展延性に効果をほとんど示さない(
図8c、8d、9cおよび9dを参照のこと)。Nbの添加(約0.02重量%)は、94MPaまでのYSの増大をもたらし、UTSにはほとんど効果がないが、2.4%の全伸びの低下をもたらす(
図8e、8f、9eおよび9fを参照のこと)。
【0029】
調査鋼の曲げ性
表2は、75%の冷間圧延および焼鈍後の実験鋼の引張特性および曲げ特性におけるC、MnおよびNbの効果を要約する。焼鈍サイクルは:870℃まで冷間圧延バンド(約0.6mmの厚さ)を加熱し、均熱温度で60秒間等温保持し、810℃まで直ちに冷却し、この温度で25秒間等温保持し、続いて迅速な水急冷を含む。次いでパネルを油浴に200℃まで再加熱し、60秒間保持し、続いて空冷により、過時効処理をシミュレーションした。データは、炭素が強度に対して最も強い効果を有し、曲げ性に対してはわずかな効果を有することを示す。Nbの添加は、降伏強度を増大させ、曲げ性を改善する。曲げ性の改善は、伸びがほんの少し劣るにもかかわらず達成される。Nb保持鋼におけるMn含有量の1.5から2.0%への増大は、引張特性に顕著な効果を与えないが、曲げ性には大きな改善をもたらす。
【0030】
【表2】
【0031】
[実施例2]
炭素当量を低減するために、ひいては実施例1の鋼の溶接性を改善するために、0.28重量%の炭素および低減したマンガン含有量(実施例1の2.0重量%に対して約1.0重量%)を共に含有する鋼を製造した。合金は、スラブに鋳造し、熱間圧延し、冷間圧延し、焼鈍(シミュレーション)、過時効処理した。加えて、熱間圧延バンドおよび焼鈍製品の特性におけるMn含有量(1.0および2.0%のMn)の効果を詳細に記載する。
【0032】
熱調製
表3は、調査鋼の化学組成を示す。合金設計は、組み込まれたTi(鋼1および2)、B(鋼2および3)およびNb(合金3および4)の効果を分析した。
【0033】
【表3】
【0034】
4つの45Kgのスラブ(それぞれの合金のうち1つ)を実験室で鋳造した。1230℃において3時間再加熱し、オーステナイト化した後、スラブを実験室ミルにおいて63mmから20mmの厚さに熱間圧延した。仕上げ温度は、約900℃であった。平板は、熱間圧延の後空冷した。
【0035】
熱間圧延およびマイクロ構造/引張特性の調査
20mmの厚さのプレ圧延平板を1230℃まで2時間剪断および再加熱の後、平板を厚さ20mmから3.5mmに熱間圧延した。仕上げ圧延温度は、約900℃であった。約45℃/sの平均冷却速度にて制御冷却の後、各組成のホットバンドをそれぞれ580℃および660℃の炉中に1時間保持し、続いて24時間炉を冷却し、産業巻取りプロセスをシミュレーションした。2つの異なる巻取り温度を、この製品の製造のための熱間圧延中の利用可能なプロセスウィンドウを理解するために設計した。
【0036】
ホットバンド組成の再チェックは、誘導結合プラズマ(ICP)によって行われた。インゴット誘導データと比較して、炭素損失は、一般にホットバンドにおいて観察される。3つのJIS−T標準試料を、室温引張テストのためにそれぞれのホットバンドから調製した。ホットバンドのマイクロ構造の特徴付けは、長手方向の断面において四分の一の厚さで走査電子顕微鏡(SEM)によって行った。
【0037】
冷間圧延
熱間圧延バンドの両面を摩耗し、脱炭層を除去した後、鋼を実験室にて50%の冷間圧延し、さらなる焼鈍シミュレーションのために最終厚さ1.0mmを有する硬質鋼を得た。
【0038】
焼鈍シミュレーション
鋼の機械的特性における焼鈍中の均熱および急冷温度の効果を、実験鋼のすべてについて調査した。焼鈍サイクルの概略を
図10aおよび10bに示す。
図10aは、830℃から870℃の異なる均熱温度を有する焼鈍プロセスを示す。
図10bは、780℃から840℃の異なる急冷温度を有する焼鈍プロセスを示す。
【0039】
焼鈍プロセスは、それぞれ870℃、850℃および830℃への100秒間の冷間バンド(約1.0mmの厚さ)の再加熱を含み、最終特性への均熱温度の効果を調べる。810℃に直ちに冷却し、40秒間等温保持した後、水急冷を適用した。次いで鋼を200℃に100秒間再加熱し、続いて空冷して過時効処理をシミュレーションした。
【0040】
焼鈍プロセスは、870℃に冷間バンドを100秒間再加熱すること、およびそれぞれ840℃、810℃および780℃に直ちに冷却することを含み、鋼の機械的特性における急冷温度の効果を調査する。水急冷は、急冷温度で40秒間等温保持された後に使用した。次いで鋼を200℃まで100秒間再加熱し、続いて空冷を行い、過時効処理をシミュレーションした。
【0041】
焼鈍鋼の引張特性および曲げ性
3つのASTM−T標準引張試料を、室温引張テストのために各焼鈍バンドから調製した。1つの焼鈍サイクルにより加工処理されたサンプルを曲げテストのために選択した。この焼鈍サイクルは、冷間バンド(約1.0mmの厚さ)を850℃へ100秒間再加熱すること、810℃に直ちに冷却すること、急冷温度で40秒間の等温保持すること、続いて水急冷することを含んでいた。次いで鋼は、200℃まで100秒間再加熱し、続いて空冷を行って、過時効処理をシミュレーションした。圧延方向に沿った90°のフリーV曲げを、曲げ性特徴のために使用した。本試験において、ダイの半径の範囲は、2.75から4.00mmで0.25mmの増分で変動した。曲げテストの後のサンプル表面を、10倍の倍率で観察した。外側曲げ表面におけるサンプル上のクラック長さが0.5mmより小さい場合、クラックは、「マイクロクラック」と見なされる。0.5mmより長いクラックは、欠陥として認識される。視覚可能なクラックのないサンプルは、「テストに合格」と同定される。
【0042】
ホットバンドの化学的分析
表4は、熱間圧延の後の、異なるTi、BおよびNb含有量を有する鋼の化学組成を示す。インゴットの組成と比較して(表3)、熱間圧延の後に約0.03%の炭素および0.001%のBの損失があった。
【0043】
【表4】
【0044】
ホットバンドのマイクロ構造および引張特性
図11aおよび11bは、580℃の熱間圧延およびシミュレーション巻取りの後、室温での実験鋼(表4)の引張特性(JIS−T標準)を示す。ベース組成は、0.28%C−1.0%Mn−0.2%Siからなる。
図11aは、4つの合金の強度をグラフに図示する一方で、
図11bには、これらの展延性をプロットする。Ti、BおよびNbの添加が、571から688MPaへの最大引張強度の顕著な増大、375から544MPaの降伏強度の増大および全伸びおよび均一伸びの低下(TE:32から13%;UE:17から11%)を導いたことがわかる。NbのTi−B鋼への添加は、28から13%の全伸びの顕著な降下をもたらした。
【0045】
図12aから12dに示されるように、660℃での熱間圧延およびシミュレーション巻取りの後の鋼のマイクロ構造は、それぞれの実験室での加工処理された実験鋼についてフェライトおよびパーライトからなる。
図12aから12dは、それぞれベース合金、ベース合金+Ti、ベース合金+Ti、Bならびにベース合金+Ti、BおよびNbの1000倍でのSEM顕微鏡写真である。Bの添加は、わずかに大きなサイズのパーライトの島をもたすようである(
図12c)。フェライト−パーライトマイクロ構造は、Nb添加鋼において圧延方向に沿って伸ばされるが(
図12d)、これは、熱間圧延中のNb添加によるオーステナイト再結晶化の遅延に起因し得る。故に、仕上げ圧延をオーステナイトの非再結晶領域に行い、伸ばされたフェライト−パーライトマイクロ構造を、変形オーステナイトから直接変態させた。
【0046】
室温での実験鋼の対応する引張特性を、
図13aから13bに示す。
図13aは、4つの合金の強度をグラフに示すが、
図13bに、これらの展延性をプロットする。Nb(0.03%)の添加が、最大引張強度の535から588MPaへの顕著な増大および降伏強度の383から452MPaへの顕著な増大および全伸びの31.3から29.0%のわずかな低下および均一伸びの17.8から16.4%のわずかな低下を導いたことがわかる。
【0047】
引張特性における巻取り温度の効果
図11および13における引張特性を比較して、巻取り温度の580℃から660℃への増大は、強度の低下および展延性の増大、冷間低下の可能性および向上したゲージ−幅能力に好ましい属性の増大を導いた。Ti、BおよびNbのベース鋼への添加は、580℃と比較して660℃のより高い巻取り温度での鋼の引張特性における効果がほとんどなかった。実験室において660℃での巻取り効果を試験する目的は、ホットバンド強度ならびに冷間圧延および焼鈍マルテンサイト鋼の強度の両方における、巻取り温度の効果を理解することであった。
【0048】
焼鈍シミュレーションの後の鋼の引張特性
図14aから14dは、焼鈍シミュレーションの後の鋼の引張特性における均熱温度(830℃、850℃および870℃)、巻取り温度(580℃および660℃)および合金組成(Ti、BおよびNbのベース鋼への添加)の効果を示す。
図14aおよび14bは、異なる均熱温度およびそれぞれ580℃および660℃の巻取り温度における4つの合金の強度をプロットする。
図14cおよび14dは、異なる均熱温度およびそれぞれ580℃および660℃の巻取り温度での4つの合金の展延性をプロットする。870℃から830℃への均熱温度の低下が、41MPaの降伏強度の増大および580℃の熱間圧延およびシミュレーション巻取りの後のTi−B鋼については56MPaの最大引張強度をもたらしたことがわかる(
図14a)。Ti−B−Nb鋼について、同じ温度でのシミュレーション巻取りの後(
図14a)、最も高い強度は、850℃の均熱温度におけるものが示された(YS:1702MPaおよびUTS:1981MPa)。均熱温度のさらなる増大または低下は、Ti−B−Nb鋼の強度を改善しない。均熱温度は、660℃のシミュレーション巻取りの後のTi−B−Nb鋼におけるTi−Bについての強度に対して明らかな効果はなかった。両方の巻取り温度においてベースおよびTi鋼についての強度に対して顕著な効果はなく、実験鋼のすべてについて展延性に対する効果はなかった。
【0049】
図15aから15dは、焼鈍シミュレーション後の鋼の引張特性における、急冷温度(780℃、810℃および840℃)、巻取り温度(580℃および660℃)および合金組成(ベース鋼へのTi、BおよびNbの添加)の効果を示す。
図15aおよび15bは、異なる急冷温度およびそれぞれ580℃および660℃の巻取り温度における4つの合金の強度をプロットする。さらに
図15cおよび15dは、異なる急冷温度、ならびにそれぞれ580℃および660℃の巻取り温度における4つの合金の展延性をプロットする。840℃から780℃の急冷温度の低下は、580℃での熱間圧延およびシミュレーション巻取りの後のベースおよびTi鋼における降伏強度および約50から60MPaの最大引張強度の両方の増大をもたらした(
図15a)。急冷温度は、660℃でのシミュレーション巻取りの後のベースおよびTi鋼の強度に対する明らかな効果はなかった。また、両方の巻取り温度においてTi−BおよびTi−B−Nb鋼の強度に対する顕著な効果はなく、実験鋼のすべてについて展延性には顕著な効果はなかった。
【0050】
巻取り温度(580℃および660℃)の効果
図14aおよび15aと
図14bおよび15bとを比較して、580℃から660℃への巻取り温度の増大は、引張強度の顕著な変化を導かなかったが、結果として種々の焼鈍条件において実験鋼のすべてについて平均で約50MPaの降伏強度のわずかな低下をもたらした。巻取り温度を増大させることでは、TiおよびTi−B鋼における展延性への測定可能な効果はなかったが、ベースおよびTi−B−Nb鋼の展延性は約0.5%わずかに低下した。しかし、これらの小さい変化は、テスト変動の範囲内であるため、あまり顕著ではない。
【0051】
組成(Ti、BおよびNb)の効果
図14aから14dおよび15aから15dに示されるように、0.28%C−1.0%Mn−0.2%Si鋼におけるTiおよびBの添加は、580℃および660℃の両方の巻取り温度において強度に顕著な効果はなかった。Nbの添加は、580℃の巻取り温度において降伏強度の45から103MPaの増大および引張強度の26から85MPaの増大をもたらした(
図14a)が、660℃ではなかった(
図14b)。660℃の巻取り温度においてわずかに良好な展延性を示したTi添加鋼を除いて(
図14dおよび15d)、合金の添加は、一般に展延性のわずかな低下をもたす(<1%)。
【0052】
焼鈍シミュレーションの後の鋼の曲げ性
表5は、580℃でのシミュレーション巻取り後の50%冷間圧延および焼鈍の後の鋼の引張特性および曲げ性におけるTi、BおよびNbの効果を要約する。焼鈍プロセスは、冷間バンド(約1.0mmの厚さ)を850℃に100秒間再加熱すること、810℃に直ちに冷却すること、「急冷」温度にて40秒間等温保持し、続いて水急冷を行うことからなっていた。次いで鋼は、200℃に100秒間再加熱され、続いて空冷されて、過時効処理(OA)をシミュレーションした。示されるように、合金組成を変動させることによって1850から2000MPaの最大引張強度を有する鋼を製造できた。C、MnおよびSiのみを有する鋼は、最良の曲げ性を示した。Nbの添加により、曲げ性のわずかな劣化を伴って強度が増大した。曲げ性の合格は、10倍倍率において0.5mmより小さい「マイクロクラックの長さとして定義された。
【0053】
【表5】
【0054】
実施例1との比較−マンガンの効果
0.28%C−2.0%Mn−0.2%Siを有する鋼は、上記実施例1に示された。本発明者らは、0.28%C−1.0%Mn−0.2%Siを含有する実施例2の鋼とこの挙動を比較し、引張特性におけるMn(1.0および2.0%)の効果を調査した。両方の鋼の詳細な化学組成を表6に示す。
【0055】
【表6】
【0056】
1.0および2.0%Mnを有する熱間圧延バンドの引張特性
表7は、580℃で熱間圧延およびシミュレーション巻取りの後のそれぞれ1.0%および2.0%のMnを有する鋼の引張特性を示す。熱間圧延バンドの引張特性に関して、より低いMn含有量を有する鋼は、より高いMn含有量を有する鋼よりも低い強度を示した(YSにおいて51MPa低く、UTSにおいて61MPa低い。)。これは、低いMn鋼について冷間圧延のより高い程度を促進し得る。
【0057】
【表7】
【0058】
表8は、冷間圧延(1.0%Mnを有する鋼について50%冷間圧延低下および2.0%Mnを有する鋼について75%冷間圧延低下)および種々の焼鈍サイクルの後、それぞれ1.0%および2.0%Mnを有する鋼の引張特性を示す。870℃(均熱)、840℃(急冷)および200℃(過時効)の同じ焼鈍処理において、Mn含有量は、強度に顕著な効果を示さないことがわかる。810℃の同じ急冷温度において、870から830℃への均熱温度の低下は、1.0%のMnを有する鋼の強度に影響しなかったが、2.0%Mnを有する鋼の強度は約90MPa大きく増大した。これは、1.0%Mnを有する鋼が、均熱温度(870から830℃)にも拘わらず強度が想到安定であることを示しており、2.0%Mnを有する鋼は、おそらくより高い焼鈍温度での粗粒化のために、均熱温度により感受性である。1.0%Mnを有する鋼は、より広いプロセスウィンドウにより製造中に、比較的加工処理し易い。
【0059】
【表8】
【0060】
1.0および2.0%Mnの焼鈍鋼の曲げ性
表9は、焼鈍シミュレーションの後、1.0%および2.0%Mnを有する鋼の引張特性および曲げ性を列挙する。1.0%Mnを有する鋼は、かなりの強度レベルにおいて良好な曲げ性(4.0tに対して3.5t)を示した。曲げ性の合格とは、10倍の倍率において0.5mmより小さいマイクロクラック長さとして定義される。
【0061】
【表9】
【0062】
[実施例3]
鋼の良好な溶接性を確実にするために、炭素当量(C
eq)は、0.44未満であるべきである。本鋼の炭素当量は以下のように定義される:
C
eq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15
【0063】
故に、0.28重量%のC含有量および1または2重量%のMn含有量においては、溶接一体性が許容可能ではないと決定される。本発明の実施例は、Ceqを低減するように設計され、さらに強度および展延性の必要性を満たす。高い炭素含有量は、強度を増大させるために有益であるが、溶接性を劣化させる。炭素当量の式によれば、Mnは、溶接性を劣化させる別の元素である。故に、十分な超高強度を達成するためおよびUTSのMn含有量の効果を試験するために特定量の炭素含有量(少なくとも0.28%)を維持することが動機付けられる。本発明者らは、溶接性を改善するためにMn含有量を低減するが、超高強度レベルを維持する。
【0064】
熱調製
表10は、実施例3において調査された鋼の化学組成を示す。合金設計は、最終焼鈍製品における引張特性のC含有量およびB添加の効果の理解を組み込んだ。
【0065】
【表10】
【0066】
5つの45Kgスラブ(各合金の1つ)を実験室で鋳造した。1230℃で3時間の再加熱およびオーステナイト化の後、スラブを実験室ミルにおいて63mmから20mmの厚さに熱間圧延した。仕上げ温度は約900℃であった。平板を熱間圧延の後に空冷した。
【0067】
熱間圧延およびマイクロ構造/引張特性の調査
プレ圧延された20mmの厚さの平板を1230℃で2時間剪断および再加熱した後、平板は、20mmから3.5mmの厚さに熱間圧延を行った。仕上げ圧延温度は約900℃であった。約45℃/sの平均冷却速度にて制御された冷却後、各組成のホットバンドは、それぞれ580℃および660℃での炉に1時間保持し、続いて24時間炉冷却し、産業巻取りプロセスをシミュレーションした。2つの異なる巻取り温度の使用は、この製品の製造のために熱間圧延の間に利用可能なプロセスウィンドウを理解するために設計した。
【0068】
3つのJIS−T標準試料は、室温引張テストのためにそれぞれ熱間圧延鋼(「ホットバンド」として知られる。)から調製した。ホットバンドのマイクロ構造特徴付けは、長手方向の断面において四分の一の厚さで走査電子顕微鏡(SEM)によって行った。
【0069】
冷間圧延および焼鈍シミュレーション
熱間圧延バンドの両面を摩耗し、脱炭層を除去した後、鋼を、50%の実験室で冷間圧延し、さらなる焼鈍シミュレーションのために最終厚さ1.0mmを有する硬質鋼を得た。
【0070】
均熱の効果、急冷温度の効果ならびに鋼の機械的特性における焼鈍の間に熱および急冷温度の異なる組み合わせの比較を、実験鋼のすべてについて調査した。焼鈍サイクルの概略を
図16aから16cに示す。
図16aは、830℃から870℃の種々の均熱温度を有する焼鈍サイクルを示す。
図16bは、780℃から840℃の種々の急冷温度で焼鈍サイクルを示す。
図16cは、均熱および急冷温度の種々の組み合わせを有する焼鈍サイクルを示す。
【0071】
均熱温度の効果
焼鈍プロセスは、それぞれ870℃、850℃および830℃への100秒間の冷間バンド(約1.0mmの厚さ)の再加熱を含み、最終特性への均熱温度の効果を調べる。810℃に直ちに冷却し、40秒間等温保持した後、水急冷を適用した。次いで鋼を200℃に100秒間再加熱し、続いて空冷して過時効処理をシミュレーションした。
【0072】
急冷温度の効果
焼鈍プロセスは、870℃へ100秒間冷間バンドを再加熱すること、およびそれぞれ840℃、810℃および780℃に直ちに冷却することを含み、鋼の機械的特性の急冷温度の効果を調べる。水急冷は、急冷温度にて保持された40秒間の等温保持の後に使用した。次いで鋼は、100秒間200℃に再加熱し、続いて空冷して、過時効処理をシミュレーションした。
【0073】
焼鈍サイクルの異なる組み合わせの効果
焼鈍サイクルは、それぞれ790℃、810℃および830℃へ冷間圧延鋼を100秒間再加熱すること、種々の急冷温度(それぞれ770℃、790℃および810℃)に直ちに冷却すること、40秒間等温保持すること、続いて水急冷を含む。次いで鋼は、200℃に100秒間再加熱され、続いて空冷されて、過時効処理をシミュレーションした。
【0074】
焼鈍鋼の引張特性および曲げ性
ASTM−T標準引張試料を、室温引張テストのために各焼鈍バンドから調製した。1つの焼鈍サイクルによって加工処理されたサンプルは、曲げテストのために選択された。この焼鈍サイクルは、100秒間850℃に冷間バンド(約1.0mmの厚さ)を再加熱すること、810℃に直ちに冷却すること、急冷温度で40秒間等温保持すること、続いて水急冷を含んでいた。次いで鋼は100秒間200℃に再加熱され、続いて空冷されて、過時効処理をシミュレーションした。圧延方向に沿った90°のフリーV曲げを、曲げ性特徴のために使用した。本試験において、ダイの半径の範囲は、2.75から4.00mmで0.25mmの増分で変動した。曲げテストの後のサンプル表面を、10倍の倍率で観察した。0.5mmより小さい、外側曲げ表面におけるサンプル上のクラック長さは、「マイクロクラック」と見なされ、0.5mmより長いクラックは、欠陥として認識される。いずれかの長さの視覚可能なクラックのないサンプルは、「テストに合格」と同定される。
【0075】
ホットバンドのマイクロ構造および引張特性
図17aから17eは、580℃での熱間圧延およびシミュレーション巻取りの後の熱間圧延鋼(0.28から0.36%のC)の1000倍でのSEM顕微鏡写真である。炭素含有量の増大およびホウ素の添加は、マルテンサイト体積フラクションの増大を導いたが、これは焼入性を増大させる際のCおよびBの役割に起因し得る。
図17aは、0.28Cを有する鋼のSEMである。
図17bは、0.28C−0.002Bを有する鋼のSEMである。
図17cは、0.32Cを有する鋼のSEMである。
図17dは、0.32C−0.002Bを有する鋼のSEMである。
図17eは、0.36Cを有する鋼のSEMである。
【0076】
(580℃の熱間圧延およびシミュレーション巻取り後の)室温での実験鋼の対応する引張特性を
図18aおよび18bに示す。
図18aは、ホウ素を含むおよび含まない、炭素含有量に対する合金の強度をプロットする。
図18bは、ホウ素を含むおよび含まない炭素含有量に対する合金の展延性をプロットする。0.28%から0.36%の炭素含有量の増大は、529から615MPaの最大引張強度での増大および374から417MPaへの降伏強度の増大を導いた。全体の均一伸びは、それぞれ29%および15%にて同様に留まった。0.28および0.32%C鋼への0.002%ホウ素の添加により、結果としてUTSが約40MPa増大した。
【0077】
図19aから19eは、660℃での熱間圧延およびシミュレーション巻取り後の熱間圧延鋼(0.28から0.36%C)の1,000倍でのSEM顕微鏡写真である。
図19aは、0.28Cを有する鋼のSEMである。
図19bは、0.28C−0.002Bを有する鋼のSEMである。
図19cは、0.32Cを有する鋼のSEMである。
図19dは、0.32C−0.002Bを有する鋼のSEMである。
図19eは、0.36Cを有する鋼のSEMである。ホウ素の添加により、わずかな粗粒化を導いたが、これは冷却中のB遅延相変態に起因し得る。故に、仕上げ圧延は、B添加鋼について相対的なオーステナイト粗粒径を有するオーステナイト領域に行われ、粗オーステナイトは、粗フェライト−パーライトマイクロ構造に直接変態された。
【0078】
(660℃での熱間圧延およびシミュレーション巻取りの後の)室温での対応する引張特性は、
図20aおよび20bに示す。
図20aは、ホウ素を含むおよび含まない、炭素含有量に対する合金の強度をプロットする。
図20bは、ホウ素を含むおよび含まない、炭素含有量に対する合金の展延性をプロットする。0.28%から0.36%の炭素含有量の増大は、引張特性に顕著な影響を及ぼさなかった。0.28および0.32%C鋼の0.002%ホウ素の添加により、強度にわずかな低下をもたらしたが、これは粗粒化によるものであり得る。観察された強度レベルに基づいて、鋼は、困難なく、軽ゲージに容易に冷間圧延されるはずである。
【0079】
引張特性における巻取り温度の効果
図18aから18bおよび
図20aから20bにおいて引張特性を比較して、580℃から660℃の巻取り温度の増大が、強度の低下および展延性の増大を導いたが、これらの属性は増大する冷間低下の可能性、向上したゲージ−幅能力に好適である。0.28%から0.36%へのC含有量の増大およびベース鋼へのBの添加は、580℃と比較して660℃のより高い巻取り温度にて鋼の引張特性に対して効果が少なかった。実験室での660℃での巻取り効果を試験する目的は、ホットバンド強度ならびに冷間圧延および焼鈍マルテンサイト鋼の強度の両方における、巻取り温度の効果を理解することであった。
【0080】
焼鈍シミュレーションの後の鋼の引張特性
均熱温度(830℃、850℃および870℃)の効果
図21aから21dは、焼鈍シミュレーションの後の鋼の引張特性における、均熱温度(830℃、850℃および870℃)、巻取り温度(580℃および660℃)および合金組成(C含有量およびベース鋼へのB添加)の効果を示す。
図21aおよび21bは、異なる均熱温度ならびにそれぞれ580℃および660℃の巻取り温度での5つの合金の強度をプロットする。
図21cおよび21dは、異なる均熱温度ならびにそれぞれ580℃および660℃の巻取り温度での5つの合金の展延性をプロットする。2000から2100MPaを超えるまでのUTSレベルおよび3.5から5.0%のTEを有するマルテンサイト鋼は、0.32および0.36%C鋼組成を用いて、830および850℃の均熱温度にて実験室にて得ることができることがわかる。870℃から850℃への均熱温度の低下は、鋼の大部分についての強度のわずかな増大をもたらした。巻取り温度の増大は、ほとんどの場合で、強度に顕著な効果はなかったが、わずかに展延性を改善した。0.28から0.36%へのC含有量の増大は、約200MPaのUTSの増大をもたらした。0.002%Bのベース鋼への添加は、580℃の低い巻取り温度では強度が低下し、660℃の巻取り温度では低下しなかった。巻取り温度に拘わらず、展延性に対するB添加の顕著な効果はなかった。
【0081】
急冷温度(780℃、810℃および840℃)の効果
図22aから22dは、焼鈍シミュレーションの後の鋼の引張特性における、急冷温度(780℃、810℃および840℃)、巻取り温度(580℃および660℃)および合金組成(C含有量およびベース鋼のB添加)の効果を示す。
図22aおよび22bは、異なる急冷温度ならびにそれぞれ580℃および660℃の巻取り温度での5つの合金の強度をプロットする。
図22cおよび22dは、異なる急冷温度ならびにそれぞれ580℃および660℃の巻取り温度での5つの合金の展延性をプロットする。2100MPaに近いまたはこれを超えるUTSおよび3.5から5.0%のTEを有するマルテンサイト鋼は、870℃の均熱温度および種々の急冷温度における0.36%Cを有する鋼を用いて実験室にて得ることができることがわかる。
図21aおよび21bの結果を比較して、0.36%Cだけでなく、0.32%Cを有する鋼は、熱処理されて、830および850℃での均熱温度での2000から2100MPaのUTSレベルおよび3.5から5.0%のTEを得ることができる。故に、約850℃の均熱温度は、最適な機械的特性を得るのを役立つ。840℃から780℃への急冷温度の低下は、Bの添加および巻取り温度にかかわらず、0.32および0.36%を有する鋼について引張特性における主要な効果はなかった。しかし、0.28%Cを有する鋼について840℃から780℃の急冷温度の低下(580℃の巻取り温度)は、B添加がない場合、100MPaの強度低下を導き、この効果はB添加がある場合明らかではなかった、即ち40MPaの増大に過ぎなかった。B添加は、特に相対的に低いC含有量を有する鋼について、引張特性の安定化に有益であることを示す。0.28から0.36%へのC含有量の増大は、特に660℃の高い巻取り温度に関して、約200から300MPaにUTSの増大をもたらし、展延性には明らかな変化はなかった。全体として、580℃での巻取りの後の鋼に比較して、660℃でコイルされた鋼の引張特性は、急冷温度に対して感受性が少なかった。
【0082】
図23aから23dは、(23a−23b)引張強度および(23c−23d)展延性に対する組成および焼鈍サイクルの効果を例示する。
図22aおよび22bは、3つの異なる均熱/急冷温度対(790℃/770℃、810℃/790℃および830℃/810℃)ならびにそれぞれ580℃および660℃の巻取り温度での5つの合金の強度をプロットする。
図22cおよび22dは、3つの異なる均熱/急冷温度対ならびにそれぞれ580℃および660℃の巻取り温度での5つの合金の展延性をプロットする。790℃の均熱温度および770℃の急冷温度にて加工処理された鋼は、790℃の均熱温度にて不完全なオーステナイト化に起因し得る最低の強度を示した。
図24aから24dは、660℃でコイルされ、冷間圧延され、790℃/770℃の均熱/急冷温度対を用いて焼鈍された5つの合金の4つの顕微鏡写真である。わかるように、フェライトは、鋼組成の4つすべてについて焼鈍サイクルの後に形成された。同様に、
図24eから24hは、810℃/790℃の均熱/急冷温度を用いて焼鈍された5つの合金の4つの顕微鏡写真である。フェライトの形成は、0.28%Cおよび0.32%Cを有する鋼について観察されることができる。C含有量の増大は、焼入性の増大をもたらし、結果としてフェライトは同じ焼鈍サイクルにおいてあまり形成されない。最後に、
図24iから24lは、830℃/810℃の均熱/急冷温度を用いて焼鈍された5つの合金の4つの顕微鏡写真である。鋼の大部分は、これらの温度において焼鈍の後に最も高い強度を示し、これは得られたほぼ完全なマルテンサイトマイクロ構造に起因し得る。
【0083】
焼鈍シミュレーションの後の鋼の曲げ性
表11は、50%の冷間圧延および580℃でのシミュレーション巻取り後の焼鈍の後の鋼の引張特性および曲げ特性におけるCおよびBの効果を要約する。焼鈍プロセスは、850℃に冷間バンド(約1.0mmの厚さ)を100秒間再加熱すること、810℃に直ちに冷却すること、「急冷」温度で40秒間の等温保持すること、続いて水急冷からなっていた。次いで鋼は、200℃で100秒間に再加熱し、続いて空冷によって、過時効処理(OA)をシミュレーションした。表11に示されるように、合金組成を変動させることによって1830から2080MPaの最大引張強度を有する鋼を製造することができた。
【0084】
【表11】
【0085】
実施例1および2の比較−0.28%Cを有する鋼のマンガンの効果
0.28%Cおよび1.0%/2.0%Mnを有する鋼は、実施例1および2に上記で示された。ここで本発明者らは、引張特性におけるMnの効果(0.5%から2.0%)を調査するために、0.28%Cおよび0.5%Mnを含有する鋼とこうした鋼とを比較する。鋼の詳細な化学組成を表12に示す。
【0086】
【表12】
【0087】
表13は、0.5%から2.0%Mnおよび580℃での熱間圧延およびシミュレーション巻取りの後のTiおよびBの添加を有する鋼の引張特性を示す。Ti添加を伴う鋼に関して、0.5%から1.0%へのMn含有量の増大は、降伏強度および引張強度の両方の増大、ならびに降伏比の増大を導いたが、展延性への顕著な効果はなかった。0.5%から1.0%Mnを有するTi添加された鋼へのBの添加により、結果として強度の増大をもたらした。鋼「28C−1.0Mn」と比較して、Tiの添加は、強度および降伏比の両方を増大させるのに有益であったが、これはTiの析出硬化の効果に起因し得る。より低いMn含有量を有する鋼は、より高いMn含有量を有する鋼よりも低い強度を示した。これは、低Mn鋼について冷間圧延のより高い程度を促進し得る。
【0088】
【表13】
【0089】
図25aから25dは、580℃での巻取り、冷間圧延(0.5および1.0%Mnを有する鋼について50%の冷間圧延低下および2.0%Mnを有する鋼についての75%の冷間圧延低下)ならびに種々の焼鈍サイクルの後の0.5%から2.0%Mnを有する鋼の引張特性を示す。
図25aから25dのX軸は、均熱および急冷温度を示し、即ち870/840は、870℃での均熱および840℃での急冷を意味する。850℃−810℃(均熱−急冷温度)および200℃(過時効)の同じ焼鈍処理にて、Mn含有量の0.5%から1.0%への増大は、Tiを有する鋼については強度に顕著な効果はなかったが、TiおよびBの両方の添加を伴う鋼については強度に増大があり、展延性の増大があったことがわかる。Mn含有量の2.0%へのさらなる増大は、100MPaを超えるUTSの顕著な増大、50MPaを超えるYSおよび展延性の低下を導いた。この効果は、870℃の高い均熱温度について適用可能でなかったが、この温度で2.0%Mnを有する鋼は、強度の増大を示さなかった。これは、2.0%のMnを有する鋼は均熱温度に対してより感受性であることを示し、これはより高い焼鈍温度での粗粒化に起因し得る。870℃の均熱温度において、Mnの0.5%から1.0%への増大は、結果として、810℃および780℃の急冷温度における強度および展延性の両方における増大をもたらした。0.5から1.0%Mnを有する鋼は、より広いプロセスウィンドウのために、製造中に比較的容易に加工処理できる。
【0090】
0.5から2.0%Mn(0.28%C)を有する焼鈍鋼の曲げ性
表14は、580℃で予めコイルされた焼鈍シミュレーション後の0.5%から2.0%Mnを有する鋼の引張特性および曲げ性を列挙する。鋼「28C−0.5Mn−Ti」は、1900MPaの匹敵するUTSレベルにおいて、鋼「28C−1.0Mn−Ti」(4.0tに比べて3.5t)より良好な曲げ性を示した。
【0091】
【表14】
【0092】
本明細書に記載された開示は、本発明をすべて完全に開示するために記載された詳細な実施形態の形態で示されており、こうした詳細は、添付の特許請求の範囲に示され、規定される本発明の真の範囲を制限するものとして解釈されるべきではないことを理解する。