(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
配列の簡単な説明
配列番号1は、ヒトPSGL−1のアミノ酸配列である。
配列番号2は、ヒトPSGL−1内に見出されるP−セレクチンおよびL−セレクチンに対する主要な結合部位のアミノ酸配列である。
配列番号3は、本発明の例証となるTSGL融合タンパク質である、タンデム可溶性糖タンパク質リガンド融合タンパク質、TSGL[PSGL1−19:PSGL5−19]−Fcをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号4は、本発明の例証となるTSGL融合タンパク質である、タンデム可溶性糖タンパク質リガンド融合タンパク質、TSGL[PSGL1−19:PSGL5−19]−Fcをコードするタンパク質配列である。
【0011】
好ましい実施形態の詳細な説明
ヒトPSGL−1は、17個のアミノ酸N末端シグナルペプチド(アミノ酸1〜17)、24個のアミノ酸N末端プロペプチド(アミノ酸18〜41)、および371個のアミノ酸P−セレクチン糖タンパク質リガンド1鎖(アミノ酸42〜412)を含む412個のアミノ酸タンパク質(配列番号1)である。
配列番号1
【0012】
P−セレクチンおよびL−セレクチンに対する主要な結合部位は、アミノ酸42からアミノ酸60まで(配列番号2)の成熟型のPSGLのアミノ末端における19個のアミノ酸セグメント内に見出される。
配列番号2:QATEYEYLDY DFLPETEPP
【0013】
増強型TSGL配列を含む、融合タンパク質を含む可溶型TSGLは、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞などの哺乳類宿主細胞から発現し、精製することができる。適切な宿主細胞は、機能性TSGLタンパク質に特徴的な糖側鎖を付着させる能力がある。そのような能力は、天然で存在するか、化学的突然変異誘発により誘導されるか、またはグリコシル化酵素をコードするDNA配列を含有する適切な発現プラスミドでの宿主細胞のトランスフェクションを通してかに関わらず、宿主細胞内の適切なグリコシル化酵素の存在によって生じ得る。これらの宿主細胞は、翻訳後修飾を経て、増強型PSGLポリペプチドのN連結型およびO連結型グリカン上のシアリルルイス
xエピトープの生成を可能にする発現ベクターでトランスフェクションすることができる。CHO細胞の場合、これは、α−1,3/1,4フコシルトランスフェラーゼ(Kukowska-Latalloら、Genes Dev. 4:1288〜303、1990)およびコア2β−1,6−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ酵素(Kumarら、Blood 88:3872〜79、1996)の同時発現を必要とする。増強型PSGLのN連結型およびO連結型グリカン上のシアリルルイスXエピトープおよび/または免疫グロブリンポリペプチドの存在は、セレクチンへの結合を増強し得る。成熟N末端のプロセシングを最適化するために、これらの宿主細胞はまた、その完全な開示が参照により本明細書に組み込まれているvan den Ouwelandら、Nucl. Acids Res. 18、664(1990)に開示されているフーリンとしても知られた一種のPACEをコードするcDNAを有する発現ベクターでトランスフェクションされてもよい。
【0014】
主要な結合部位は、潜在的硫酸化として[配列番号2のアミノ酸5、7、および10における]3個のチロシン残基、およびシアリルルイスx(sLe
x)エピトープを有するO連結型グリカンについての[配列番号2のアミノ酸残基16における]1個のトレオニン残基を含有する。したがって、好ましい実施形態において、本発明のTSGLタンパク質内に含有される各単量体硫酸化PSGL−1糖ペプチドドメインは、配列番号2の少なくともアミノ酸残基10から16(YDFLPET)を含んでもよい。代替の実施形態において、単量体硫酸化PSGL−1糖ペプチドドメインは、配列番号2のN末端由来の1個もしくは複数の追加のアミノ酸[例えば、アミノ酸1〜16;2〜16;3〜16;4〜16;5〜16;6〜16;7〜16;8〜16;9〜16];C末端由来の1個もしくは複数の追加のアミノ酸[例えば、アミノ酸10〜17;10〜18;10〜19];またはN末端とC末端の両方由来の1個もしくは複数の追加のアミノ酸[例えば、アミノ酸:1〜17;2〜17;3〜17;4〜17;5〜17;6〜17;7〜17;8〜17;および9〜17;1〜18;2〜18;3〜18;4〜18;5〜18;6〜18;7〜18;8〜18;および9〜18;または1〜19;2〜19;3〜19;4〜19;5〜19;6〜19;7〜19;8〜19;および9〜19]を含んでもよい。特定の実施形態において、本発明のTSGLタンパク質は、少なくとも2個の硫酸化PSGL−1糖ペプチドドメインを含む。他の実施形態において、本発明のTSGLタンパク質は、少なくとも1個の追加の単量体硫酸化PSGL−1糖ペプチドドメインを含んでもよく、すなわち、そのTSGLタンパク質は、3個以上の硫酸化PSGL−1糖ペプチドドメインを含む。複数個の硫酸化残基を含有するTSGLタンパク質は、タンパク質上に負(陰イオン性)電荷の量を増加させる。複数個の硫酸化残基を含有するTSGLタンパク質は、米国特許第6,933,370号に記載されたものと類似した方法を用いて、より少ない硫酸化残基を有するタンパク質(低硫酸化TSGLタンパク質)から精製することができる。
【0015】
本発明のTSGLタンパク質は、1個または複数の他のタンパク質に由来するアミノ酸配列(例えば、所望の活性を示すタンパク質の断片)と融合して、TSGL融合タンパク質を形成してもよく、それによるTSGL融合タンパク質は、本発明の別の態様を構成する。TSGLタンパク質を組み込んだ任意の融合タンパク質において、P−セレクチンリガンド以外の1個または複数のタンパク質に由来するアミノ酸配列が、増強型TSGL配列のC末端もしくはN末端のいずれか、または両方に連結することができる。連結は、直接的(すなわち、いずれのタンパク質にも由来しない介在する連結配列を含まずに)でも連結配列を通してでもよい。本発明の特定の実施形態において、TSGLタンパク質および融合ポリペプチドは、直接的に、またはリンカー配列をコードするDNA配列を介してのいずれかで連結された、TSGLタンパク質と融合ポリペプチドの両方をコードする、組換えDNA配列から発現する。
【0016】
適切なリンカー配列は、当技術分野において知られており、グリシン−セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GSGGS)n、(GGGGS)n、および(GGGS)n(ただし、nは少なくとも1の整数、例えば、1、2、3、または4である)が挙げられる)、グリシン−アラニンポリマー、アラニン−セリンポリマー、および他の可動性リンカーが挙げられる。他の例には、その開示が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,073,627号に記載されたペプチドリンカーが挙げられる。
【0017】
セレクチン分子を発現する細胞、例えば、活性化内皮細胞または活性化血小板に標的にされることが望まれる任意のタンパク質またはペプチドは、本発明のTSGL融合タンパク質中のTSGLと融合することができる。TSGLタンパク質が連結され得るタンパク質またはポリペプチドには、SolCD39(Drosopoulosら、Thromb. Haemost.、103:426〜434(2010))、クニッツドメインポリペプチド(例えば、DennisおよびLazarus、J, Biol. Chem.、269:22137〜44(1994);NixonおよびWood、Current Opinion in Drug Discovery and Development、9:261〜68(2006)参照)、フィブロネクチンIII型ドメイン(例えば、Deanら、PNAS USA、84:1876〜80(1987);Skorstengaardら、Eur. J. Biochem.、161:441〜53(1986)参照)、MAP−1(Skjoedtら、J. Biol. Chem. 2010;285:8234〜8243、およびPavlovら、Circulation 2012;126:2227〜2235)、およびXTENポリペプチド(Schellenbergerら、Nat. Biotechnol.、27:1186〜90(2009))が挙げられるが、それらに限定されない。本発明のTSGL融合タンパク質を形成するためにTSGLに融合され得る他のタンパク質またはペプチドには、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra;Uniprot受託番号P18510)、骨形成タンパク質(BMP;例えば、BMP−2、Uniprot受託番号P12643;BMP−4、Uniprot受託番号P12644;BMP−7、Uniprot受託番号P18075)、およびインターロイキン−11(IL−11;Uniprot受託番号P20809)などのサイトカインが挙げられるが、それらに限定されない。他の実施形態において、本発明のTSGL融合タンパク質を形成するためにTSGLに融合され得るタンパク質またはペプチドは、例えば、酵素であってもよく、それには、SolCD39(Drosopoulosら、Thromb. Haemost.、103:426〜434(2010))が挙げられるが、それに限定されない。
【0018】
組成物および製剤:
特定の実施形態において、組成物はさらに、1つまたは複数の界面活性剤を含む。例示的な界面活性剤には、天然の乳化剤(例えば、アラビアゴム、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス、およびレシチン)、コロイド粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]およびVeegum[ケイ酸アルミニウムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリン酸トリアセチン、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、およびモノステアリン酸プロピレングリコール、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、およびカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[Tween 20]、ポリオキシエチレンソルビタン[Tween 60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート[Tween 80]、ソルビタンモノパルミテート[Span 40]、ソルビタンモノステアレート[Span 60]、ソルビタントリステアレート[Span 65]、グリセリルモノオレエート、ソルビタンモノオレエート[Span80]、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート[Myrj 45]、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油)、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、およびSolutol)、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、Cremophor)、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[Brij 30])、ポリ(ビニルピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、Pluronic F 68、Poloxamer 188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドキュセートナトリウムなど、および/またはそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態において、界面活性剤はTween界面活性剤(例えば、Tween 60、Tween 80など)である。
【0019】
特定の実施形態において、組成物はさらに、1つまたは複数の保存剤を含む。例示的な保存剤には、抗酸化剤、キレート化剤、抗微生物保存剤、抗真菌保存剤、アルコール保存剤、酸性保存剤、および他の保存剤が挙げられ得る。
【0020】
特定の実施形態において、1つまたは複数の保存剤は、抗酸化剤を含む。例示的な抗酸化剤には、亜リン酸塩、亜リン酸ジブチル、αトコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩酸システイン、チオグリセロール、メルカプト酢酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(SFS)、レシチン、およびα−トコフェロールが挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態において、抗酸化剤は、亜リン酸ジブチルまたは亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO
3)である。
【0021】
特定の実施形態において、1つまたは複数の保存剤は、キレート化剤を含む。例示的なキレート化剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、およびエデト酸三ナトリウムが挙げられるが、それらに限定されない。
【0022】
特定の実施形態において、1つまたは複数の保存剤は、抗微生物保存剤を含む。例示的な抗微生物保存剤には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、およびチメロサールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0023】
特定の実施形態において、1つまたは複数の保存剤は、抗真菌保存剤を含む。例示的な抗真菌保存剤には、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、およびソルビン酸が挙げられるが、それらに限定されない。
【0024】
特定の実施形態において、1つまたは複数の保存剤は、アルコール保存剤を含む。例示的なアルコール保存剤には、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール系化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシ安息香酸、およびフェニルエチルアルコールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0025】
特定の実施形態において、1つまたは複数の保存剤は、酸性保存剤を含む。例示的な酸性保存剤には、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、β−カロテン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、およびフィチン酸が挙げられるが、それらに限定されない。
【0026】
他の保存剤には、トコフェロール、酢酸トコフェロール、メシル酸デフェロキサミン(deteroxime mesylate)、セトリミド、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、Glydant Plus、Phenonip、メチルパラベン、Germall 115、Germaben II、Neolone、Kathon、およびEuxylが挙げられるが、それらに限定されない。
【0027】
特定の実施形態において、組成物はさらに、1つまたは複数の希釈剤を含む。例示的な希釈剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉砂糖など、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0028】
特定の実施形態において、組成物はさらに、1つまたは複数の顆粒化剤および/または分散剤を含む。例示的な顆粒化剤および/または分散剤には、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、柑橘類果肉、寒天、ベントナイト、セルロース製造物および木製造物、天然スポンジ、陽イオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニルピロリドン)(クロスポビドン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(デンプン1500)、微結晶デンプン、不水溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)、ラウリル硫酸ナトリウム、第四アンモニウム化合物など、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0029】
特定の実施形態において、組成物はさらに、1つまたは複数の結合剤を含む。例示的な結合剤には、デンプン(例えば、コーンスターチおよびデンプン糊)、ゼラチン、糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトールなど)、天然および合成ゴム(例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アイルランドゴケの抽出物、パンワールゴム(panwar gum)、ガッチゴム、イサポール皮の粘質物(mucilage of isapol husks)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)、およびカラマツアラボカラクタン(larch arabogalactan)、アルギン酸塩、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、無機カルシウム塩、ケイ酸、ポリメタクリレート、ワックス、水、アルコールなど、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0030】
特定の実施形態において、組成物はさらに、1つまたは複数の緩衝剤を含む。例示的な緩衝剤には、クエン酸緩衝溶液、酢酸緩衝溶液、リン酸緩衝溶液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D−グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、第二リン酸カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、リン酸水酸化カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコールなど、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0031】
特定の実施形態において、組成物はさらに、1つまたは複数の潤滑剤を含む。例示的な潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、グリセリルベハネート(glyceryl behanate)、水素化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0032】
特定の実施形態において、組成物はさらに、1つまたは複数の可溶化剤または懸濁剤を含む。例示的な可溶化剤または懸濁剤には、水、有機溶媒、油、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。例示的な油には、アーモンド、アプリコットの仁、アボカド、ババス、ベルガモット、クロスグリ種子、ルリジサ、カデ、カモミール、キャノーラ、キャラウェイ、カルナウバ、キャスター、シナモン、カカオバター、ココナッツ、タラ肝、コーヒー、コーン、綿実、エミュー、ユーカリ、マツヨイグサ、魚、亜麻仁、ゲラニオール、ウリ、ブドウ種子、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイの実、ラバンジン、ラベンダー、レモン、アオモジ、マカダミア(macademia)ナッツ、ゼニアオイ、マンゴー種子、メドウフォーム種子、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジラフィー、パーム、パーム核、桃仁、落花生、ケシ種子、カボチャ種子、ナタネ、米糠、ローズマリー、サフラワー、ビャクダン、サスクアナ(sasquana)、セイボリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、ダイズ、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ、およびコムギ胚芽の油、ステアリン酸ブチル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコーン360、ミリスチン酸イソプロピル、ミネラルオイル、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーンオイル、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態において、油はミネラルオイルである。
【0033】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%純粋である。いくつかの実施形態において、賦形剤は、ヒトにおける使用について、および獣医学的使用について認可されている。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国食品医薬品局によって認可されている。いくつかの実施形態において、賦形剤は、医薬品グレードである。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、および/または国際薬局方の基準を満たす。
【0034】
本明細書に記載された薬学的組成物の製剤は、薬理学の分野において知られた、または今後開発される任意の方法によって調製されてもよい。一般的に、そのような準備方法は、活性成分(すなわち、グリコシル化デルトルフィン変異体)を、担体および/または1つもしくは複数の他の補助的成分と会合させるステップ、ならびにその後、必要および/または望ましいならば、製造物を所望の単回または複数回用量の単位へ成形し、および/または包装するステップを含む。
【0035】
本発明の薬学的組成物は、単一単位用量として、および/または複数の単一単位用量として、バルクで調製され、包装され、および/または販売されてもよい。本明細書で用いられる場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む薬学的組成物の個別の量である。活性成分の量は、一般的に、対象に投与される活性成分の投薬量に、および/または例えば、そのような投薬量の2分の1もしくは3分の1などのそのような投薬量の便利な分割量に等しい。
【0036】
本発明の薬学的組成物における活性成分、薬学的に許容される担体、および/または任意の追加の成分の相対量は、処置される対象のアイデンティティ、サイズ、および/または状態に依存して、ならびにさらに、その組成物が投与されることになっている経路に依存して、変動する。例として、組成物は、0.1%から100%(w/w)の間の活性成分を含んでもよい。
【0037】
好ましい剤形には、経口および非経口の剤形が挙げられる。経口および非経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容される乳濁液、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが挙げられるが、それらに限定されない。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実、落花生、コーン、胚芽、オリーブ、キャスター、およびゴマの油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などの水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤などの当技術分野において一般的に用いられる不活性希釈剤を含んでもよい。不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤、および香料などの補助剤を含み得る。非経口投与についての特定の実施形態において、本発明のコンジュゲートは、Cremophor、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、およびそれらの組み合わせなどの可溶化剤と混合される。
【0038】
注射用調製物、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、公知の技術に従い、製剤化されてもよい。滅菌注射用調製物は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液など、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液、または乳濁液であってもよい。用いられ得る許容される媒体および溶媒の中には、水、リンゲル液、U.S.P.、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌固定油は、通常、溶媒または懸濁媒体として用いられる。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油を用いることができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸は、注射可能物質の調製に用いられる。
【0039】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通しての濾過により、または滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体中に溶解し、または分散することができる滅菌固体組成物の形をとる滅菌剤を使用前に組み込むことにより、滅菌することができる。
【0040】
薬物の効果を延ばすために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることが望ましい場合が多い。これは、難水溶性である結晶性または非結晶性材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。その場合、薬物の吸収速度は、それの溶解速度に依存し、その溶解速度は、結晶サイズおよび結晶の形に依存し得る。あるいは、非経口投与される薬物型の吸収の遅延は、薬物を油性媒体中に溶解または懸濁することにより達成される。
【0041】
直腸内または腟内投与のための組成物は、典型的には、カカオバター、ポリエチレングリコールなどの適切な非刺激性賦形剤もしくは担体、または外界温度では固体であるが、体温では液体であり、それゆえに、直腸もしくは膣腔において融解し、活性成分を放出する座剤ワックスと、本発明のコンジュゲートを混合することにより調製することができる座剤である。
【0042】
経口投与のための組成物は、典型的には、液体であり、または固体剤形である。経口投与のための組成物は、膵臓プロテアーゼおよび刷子縁プロテアーゼを阻害するために、クエン酸などの有機酸を含むプロテアーゼ阻害剤を含んでもよい。経口投与のための組成物は、傍細胞輸送機構による腸の内腔を通って体循環へのペプチドの取り込みを促すために、アシルカルニチンおよびラウロイルカルニチンなどの吸収促進剤を追加として含んでもよい。経口投与のための組成物は、ペプチドと賦形剤の溶解性を向上させるために、および腸粘液との相互作用を減少させるために界面活性剤を追加として含んでもよい。錠剤またはカプセルなどの経口投与のための固形組成物は、典型的には、さらにペプチドを胃プロテアーゼから保護して、錠剤またはカプセルの小腸への通過を可能にする腸溶コーティングを含んでもよい。固形組成物は、非イオン性ポリマーなどのサブコートを追加として含んでもよい。そのような経口的に利用可能な製剤の調製の例は、米国特許第5,912,014号、米国特許第6,086,918号、および米国特許第6,673,574号に開示されている。これらの文書のそれぞれの開示は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0043】
経口投与のための固体剤形には、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、および顆粒が挙げられる。そのような固体剤形において、活性成分は、クエン酸ナトリウムもしくは第二リン酸カルシウムなどの少なくとも1つの不活性の薬学的に許容される賦形剤もしくは担体、ならびに/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤もしくは増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアラビアゴムなどの結合剤、c)グリセロールなどの湿潤剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶液遅延剤、f)第四アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、ならびにi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの潤滑剤と混合される。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、剤形は緩衝剤を含んでもよい。
【0044】
類似した型の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量のポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、軟質および硬質の充填型ゼラチンカプセル内の充填剤として用いられてもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、および顆粒の固体剤形は、腸溶コーティングおよび製剤分野においてよく知られた他のコーティングなどのコーティングおよびシェルで調製することができる。それらは、任意で、不透明化剤を含んでもよく、活性成分(複数可)のみを、または優先的に、腸管の特定部分において、任意で遅延様式で、放出する組成物であり得る。用いることができる包埋組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。類似した型の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量のポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、軟質および硬質の充填型ゼラチンカプセル内の充填剤として用いられてもよい。
【0045】
活性成分は、上記のような1つまたは複数の賦形剤と共にマイクロカプセル化された形をとり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、および顆粒の固体剤形は、腸溶コーティング、放出制御コーティング、および製剤分野においてよく知られた他のコーティングなどのコーティングおよびシェルで調製することができる。そのような固体剤形において、活性成分は、スクロース、ラクトース、またはデンプンなどの少なくとも1つの不活性希釈剤と混合されてもよい。そのような剤形は、通常の慣行のように、不活性希釈剤以外に、追加の物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロースなどの錠剤化潤滑剤および他の錠剤化補助物質を含んでもよい。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含んでもよい。それらは、任意で、不透明化剤を含んでよく、活性成分(複数可)のみを、または優先的に、腸管の特定部分において、任意で遅延様式で、放出する組成物であり得る。用いることができる包埋組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0046】
本発明の薬学的組成物は、頬側口腔を介しての肺投与に適した製剤において、調製され、包装され、および/または販売されてもよい。そのような製剤は、活性成分を含み、かつ約0.5ナノメートルから約7ナノメートルまで、または約1ナノメートルから約6ナノメートルまでの範囲での直径を有する乾燥粒子を含んでもよい。そのような組成物は、便利には、粉末を分散させるように噴射剤の流れをそれに方向づけることができる乾燥粉末リザーバを含む装置を用いる投与、ならびに/または密封された容器内において低沸点噴射剤中に溶解および/もしくは懸濁した活性成分を含む装置などの自己発射溶媒/粉末分配容器を用いる投与のための乾燥粉末の形をとる。そのような粉末は、粒子を含み、重量でその粒子の少なくとも98%は、0.5ナノメートルより長い直径を有し、かつ数では粒子の少なくとも95%が、7ナノメートル未満の直径を有する。あるいは、重量で粒子の少なくとも95%が、1ナノメートルより長い直径を有し、数で粒子の少なくとも90%が、6ナノメートル未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は、糖などの固体微粉末希釈剤を含んでもよく、便利には、単位剤形で提供される。
【0047】
低沸点噴射剤には、一般的に、大気圧下で65°Fより下の沸点を有する液体噴射剤が挙げられる。一般的に、噴射剤は、組成物の50から99.9%(w/w)を構成してもよく、活性成分は、組成物の0.1から20%(w/w)を構成してもよい。噴射剤はさらに、液体非イオン性および/または固体陰イオン性界面活性剤および/または(活性成分を含む粒子と同じ桁の粒子サイズを有し得る)固体希釈剤などの追加の成分を含んでもよい。
【0048】
肺送達のために製剤化された本発明の薬学的組成物は、溶液および/または懸濁液の液滴の形で活性成分を提供してもよい。そのような製剤は、活性成分を含む、任意で滅菌された、水性および/または希釈したアルコール性溶液および/または懸濁液として調製され、包装され、および/または販売されてもよく、便利には、任意の噴霧および/または微粒化装置を用いて投与されてもよい。そのような製剤はさらに、1つまたは複数の追加の成分を含んでもよく、その成分には、サッカリンナトリウム、揮発性油などの香味剤、緩衝剤、表面活性剤、および/またはメチルヒドロキシベンゾエートなどの保存剤が挙げられるが、それらに限定されない。この投与経路によって提供される液滴は、約0.1ナノメートルから約200ナノメートルまでの範囲の平均直径を有してもよい。
【0049】
肺送達に有用であるとして本明細書に記載された製剤は、本発明の薬学的組成物の鼻腔内送達に有用である。鼻腔内投与に適した別の製剤は、活性成分を含み、かつ約0.2マイクロメートルから500マイクロメートルまでの平均粒子を有する粗い粉末である。そのような製剤は、鼻から吸引される様式で、すなわち、鼻孔に接近して保持された粉末の容器から鼻道を通っての迅速な吸入により、投与される。
【0050】
鼻腔内投与に適した製剤は、例えば、少なくとも約0.1%(w/w)から、多くても100%(w/w)の活性成分を含んでもよく、本明細書に記載された追加の成分の1つまたは複数を含んでもよい。本発明の薬学的組成物は、頬側投与に適した製剤において調製され、包装され、および/または販売されてもよい。そのような製剤は、例えば、通常の方法を用いて作製される錠剤および/またはトローチ剤の形をとってもよく、例えば、0.1から20%(w/w)の活性成分を含み、バランスは、口腔内で溶解可能な、および/または分解可能な組成物、および任意で、本明細書に記載された追加の成分の1つまたは複数を含む。あるいは、頬側投与に適した製剤は、活性成分を含む、粉末ならびに/またはエアロゾル化および/もしくは微粒化溶液および/もしくは懸濁液を含んでもよい。そのような粉末化製剤、エアロゾル化製剤、および/または分散したときにエアロゾル化する製剤は、約0.1ナノメートルから約200ナノメートルまでの範囲の平均粒子および/または液滴サイズを有してもよく、本明細書に記載された追加の成分の1つまたは複数をさらに含んでもよい。
【0051】
本発明の薬学的組成物は、眼科用投与に適した製剤において、調製され、包装され、および/または販売されてもよい。そのような製剤は、例えば、点眼剤の形をとってもよく、それには、例えば、水性または油性の液体担体中の、活性成分の0.1/1.0%(w/w)溶液および/または懸濁液が挙げられる。そのような滴剤はさらに、緩衝剤、塩、および/または本明細書に記載された追加の成分の1つもしくは複数の他のものを含んでもよい。有用である他の眼科的に投与可能な製剤には、活性成分を微結晶の形で、および/またはリポソーム調製物中に含む製剤が挙げられる。点耳剤および/または点眼剤は、本発明の範囲内にあるものとして企図される。
【0052】
医薬品の製剤および/または製造における概論は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippincott Williams & Wilkins、2005に見出され得る。
【0053】
熟練した臨床医は、対象に投与される作用物質の適切な投薬量および投与回数を、対象の年齢と体重の両方、基礎症状、および個々の患者のその処置に対する応答に応じて決定することができるであろう。加えて、臨床医は、対象を処置するのに効果的な様式における作用物質の送達についての適切なタイミングを決定することができるであろう。
【0054】
好ましくは、作用物質は、血栓症または血小板減少症を誘導するのに有効な量の血栓症または血小板減少症誘発性刺激への対象の曝露前の48時間以内に、より好ましくは、血栓症または血小板減少症を誘導するのに有効な量の血栓症または血小板減少症誘発性刺激への対象の曝露前の36時間以内に、より好ましくは24時間以内に、より好ましくは12時間以内に、より好ましくは、6時間以内に、5時間以内に、4時間以内に、3時間以内に、2時間以内に、または1時間以内に、送達される。一実施形態において、作用物質は、対象が、血栓症または血小板減少症誘発性刺激、特に、対象が感作される血栓症または血小板減少症誘発性刺激に曝露されており、または曝露されようとしていることが対象または臨床医によって認識されるとすぐに(すなわち、即座に)投与される。別の実施形態において、作用物質は、血栓症または血小板減少症の発生の最初の徴候時点で、好ましくは血栓症または血小板減少症の症状の発生から少なくとも2時間以内に、より好ましくは、血栓症または血小板減少症の症状の発生から少なくとも1時間以内に、より好ましくは少なくとも30分以内に、より好ましくは少なくとも10分以内に、より好ましくは少なくとも5分以内に、投与される。血栓症または血小板減少症の症状およびそのような症状を測定または検出するための方法は、記載されており、当技術分野においてよく知られている。好ましくは、そのような投与は、血栓症または血小板減少症の低下の徴候が現れるまで、およびその後、必要に応じて、血栓症または血小板減少症の症状がなくなるまで、与えられる。
【0055】
本明細書に提供される薬学的組成物の記載は主に、ヒトへの投与に適している薬学的組成物を対象としているが、そのような組成物は、一般的に、あらゆる種類の動物への投与に適していることは、当業者によって理解されるであろう。ヒトへの投与に適した薬学的組成物を、様々な動物への投与に適した組成物にするために改変することは、よく理解されており、通常の熟練した獣医学的薬理学者は、そのような改変を、もしあれば単なる通常の実験だけで、設計および/または実施することができる。
【0056】
本発明によりなおさらに含まれるのは、1つまたは複数の発明の複合体および/または組成物を含むキットである。キットは、典型的には、適切な容器(例えば、ガラス、ホイル、プラスチック、または厚紙のパッケージ)で提供される。特定の実施形態において、発明のキットは、本明細書に記載されているように、1つまたは複数の薬学的賦形剤、薬学的添加物、治療的活性物質などを含んでもよい。特定の実施形態において、発明のキットは、適切な投与のための手段、例えば、計量カップ、注射器、針、クリーニング補助器具などを含んでもよい。特定の実施形態において、発明のキットは、適切な投与および/または適切な投与のための準備についての使用説明書を含んでもよい。
【0057】
処置方法:
本発明の組成物およびキットは、P−セレクチン、E−セレクチン、またはL−セレクチン媒介性細胞内接着によって特徴づけられる状態を処置することにおいて有用であり得る。そのような状態には、非限定的に、心筋梗塞、細菌またはウイルスの感染、転移性状態、関節炎、痛風、ブドウ膜炎、急性呼吸窮迫症候群、喘息、肺気腫、遅延型過敏反応、全身性エリテマトーデス、火傷などの熱的傷害または凍傷、自己免疫性甲状腺炎、実験的アレルギー性脳脊髄炎、多発性硬化症、外傷に続発する多臓器傷害症候群、糖尿病、レイノー症候群、好中球性皮膚症(スウィート症候群)、炎症性腸疾患、グレーブス病、糸球体腎炎、歯肉炎、歯周炎、溶血性尿毒症症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、壊死性腸炎、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘導性毒性などの炎症性障害が挙げられる。
【0058】
本発明の組成物およびキットはまた、臓器移植において、移植のために臓器を調製するためと、臓器移植拒絶を抑えるための両方のために、加えて、移植片対宿主病を処置するために、有用であり得る。したがって、本発明の組成物およびキットは、臓器摘出前に、生存している、もしくは非生存の臓器ドナーに投与されてもよいし、または臓器保存溶液と同時にドナー臓器へ「エクスビボで」、レシピエントに関して外科的吻合の前に、および/またはその後に、投与されてもよい。本発明の組成物およびキットは、血液透析患者および白血球除去(leukophoresis)患者を処置するために用いられてもよい。追加として、本発明の組成物およびキットは、例えば、多発性骨髄腫の処置において、抗転移薬として用いられてもよい。本発明の組成物およびキットは、それ自体、P−セレクチン、E−セレクチン、もしくはL−セレクチン媒介性細胞内接着の阻害剤として、またはセレクチン媒介性細胞内接着の阻害剤を設計するために、用いられてもよい。本発明は、本発明の薬学的組成物およびキットと、本発明の組成物およびキットを用いる処置または使用の治療方法との両方を含む。
【0059】
本発明の組成物およびキットの追加の使用には、虚血および再灌流、細菌性敗血症および播種性血管内凝固、成人呼吸窮迫症候群および関連肺障害、腫瘍転移、関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化の処置が挙げられる。再灌流傷害は、臨床心臓病学における主要な問題である。虚血心筋における白血球接着を低下させる治療剤は、血栓溶解剤の治療効力を有意に増強することができる。組織プラスミノーゲンアクチベーターまたはストレプトキナーゼなどの作用物質を用いる血栓溶解療法は、重篤な心筋虚血を有する多くの患者において、不可逆性心筋細胞死の前に、冠動脈閉塞を軽減することができる。しかしながら、多くのそのような患者はなお、血流の回復にも関わらず、心筋神経症を患っている。この「再灌流傷害」は、虚血領域における血管内皮への白血球の接着に関連していることが知られており、おそらく、一つには、トロンビンおよびサイトカインによる血小板および内皮の活性化が、それらを白血球に対して接着性にさせるためである(Romsonら、Circulation 67:1016〜1023、1983)。これらの接着性白血球は、内皮を通って遊走し、虚血心筋を、それが血流の回復によって救出されつつあるのと同じ程度で、破壊することができる。
【0060】
細菌性敗血症および播種性血管内凝固は、重症患者において同時に存在する場合が多い。それらは、血管系を通しての、トロンビン、サイトカイン、および他の炎症性メディエーターの発生、血小板および内皮の活性化、ならびに白血球の接着および血小板の凝集に関連している。白血球依存性臓器損傷は、これらの状態の重要な特徴である。
【0061】
成人呼吸窮迫症候群は、敗血症を有する患者において、または外傷後に起こる壊滅的な肺障害であり、肺循環における白血球の広範な接着および凝集に関連している。これは、大量の血漿の肺への血管外遊走および肺組織の破壊をもたらし、どちらも、大部分、白血球産物によって媒介される。しばしば致死的である、2つの関連した肺障害は、同種骨髄移植を受けた免疫抑制患者において、およびインターロイキン−2処理LAK細胞(リンホカイン活性化リンパ球)での処置に起因する全身性血管漏出から生じる合併症を患う癌患者において存在する。LAK細胞は、血管壁に接着して、おそらく内皮への毒性がある産物を放出することが知られている。LAK細胞が内皮に接着する機構は知られていないが、そのような細胞は、好中球において作動する機構に類似した機構によって、内皮を活性化する分子を放出し、その後、内皮に結合することができる可能性がある。
【0062】
(癌腫、リンパ腫、および肉腫を含む)多くの悪性病変由来の腫瘍細胞は、脈管構造を通して遠位の部位へ転移することができる。腫瘍細胞の内皮への接着およびそれらのその後の遊走についての機構は、十分理解されていないが、少なくとも一部の場合において、白血球の機構に類似している可能性がある。具体的には、特定の癌腫細胞が、RiceおよびBevilaequa、Science 246:1303〜1306(1991)により報告されているように、E−セレクチン、およびAraffoら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:2292〜2296(1992)によって報告されているようにP−セレクチンの両方に結合することが実証されている。転移性腫瘍細胞との血小板の会合は、十分記載されており、一部の癌の拡散における血小板についての役割を示唆している。P−セレクチンは、活性化血小板上に発現しているため、それは、血小板の少なくとも一部の悪性腫瘍との会合に関与していると考えられている。
【0063】
血小板−白血球相互作用は、アテローム性動脈硬化において重要であると考えられている。血小板は、単球のアテローム性動脈硬化プラークへの動員において役割を果たす可能性がある;単球の蓄積は、アテローム発生中の最初期の検出可能な事象の一つであることが知られている。完全に発達したプラークの破裂は、血小板の沈着および活性化、ならびに血栓形成の促進だけでなく、好中球の虚血の領域への初期動員をももたらす可能性がある。
【0064】
可能性のある適用の別の領域は、関節リウマチの処置においてである。これらの臨床適用において、TSGLまたはその断片は、活性化細胞上に発現したP−セレクチンへ競合的に結合することによりセレクチン依存性相互作用をブロックするために投与することができる。特に、P−セレクチンによる認識において重要な役割を果たす、TSGLの構成要素を投与することができる。同様に、P−セレクチンに結合する、TSGLまたはその断片の天然または合成の類似体もまた、投与することができる。適切な薬学的担体中のTSGLまたはその断片は、即時の軽減が必要とされる場合、好ましくは静脈内に投与される。TSGL、その組成物または断片はまた、筋肉内に、腹腔内に、皮下に、経口で、担体分子にコンジュゲートされたTSGLとして、または薬物送達装置において、投与することができる。TSGLは、そのインビボでの半減期を増加させるために化学修飾することができる。その完全な開示が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,506,382号および米国特許第8,232,252号を参照。
【0065】
本発明の実施は、以下の非限定的実施例において例証されている。多くの改変、バリエーション、および拡張が、本明細書の教示内に留まりながら可能であり、かつ特許請求の範囲内で具体化されることを、当業者は認識するであろう。
【実施例1】
【0066】
TSGL融合タンパク質。新規なアミノ酸配列を有するTSGLを、以下の手順に従って構築することができる。
【0067】
TSGL[PSGL1−19:PSGL6−19]−Fc:シグナルペプチド、PACE切断部位、およびヒトIgG1の突然変異型Fc領域に未変性Fc配列のHis224(Kabatら)において融合した33個のアミノ酸硫酸化TSGL配列をコードするcDNAを構築した。シアリルルイスx(sLe
x)エピトープを有するO連結型グリカンは、成熟タンパク質のThr16残基およびThr30残基に存在する。
【0068】
cDNA構築物の配列は、配列番号3として報告されている。cDNA構築物によってコードされるアミノ酸配列は、配列番号4として報告されている。コードされた融合タンパク質の成熟アミノ酸配列は、配列番号4のアミノ酸42から始まる。Fc部分における突然変異は、未変性Fc配列のLeu234およびGly237のAlaへの変化であった。
配列番号3
配列番号4
【0069】
本開示において引用された全ての特許、特許出願、および科学的参考文献は、引用された教示について、あたかも完全に示されているかのように、本明細書に組み込まれている。