【課題を解決するための手段】
【0004】
デバイスは、本体と、本体内の内部ハウジングと、吸入チャネルと、吸入チャネルがそれと連通するように提供されるマウスピースと、用量供給部材(dose provisioning member)とを備える。用量供給部材は、粉末状の薬剤を収容するための少なくとも1つの空洞を備え、用量供給部材はさらに、空洞が吸入チャネルと一直線になっていない第1の位置、および空洞が吸入チャネルと一直線になった第2の位置をとることができる。
【0005】
第1の実施形態によれば、これまでに示したデバイスは、用量供給部材の第1の位置において、吸入チャネルが用量供給部材の壁によって少なくとも部分的に覆われるように、用量供給部材の一部が吸入チャネルの中に位置することを特徴とする。用量供給部材は、吸入チャネルの断面が部分的にまたは完全に覆われるように配置することができる。
【0006】
用量供給部材は、少なくとも2つの機能性を満たすことができる。第1の機能性は、用量供給部材がその第2の位置にあるとき、すなわち、空洞が吸入チャネルと一直線になったときだけ、用量供給部材が患者への粉末状の薬剤の投与を可能にすることによって与えられる。用量供給部材の第1の位置では、空洞が吸入チャネルと一直線になっていないため、患者への粉末状の薬剤の供給、およびその後の患者による粉末状の薬剤の吸入が妨げられる。
【0007】
さらに、用量供給部材の第2の機能性は、用量供給部材が吸入チャネルの断面を部分的にまたは完全に覆うことによって与えられる。したがって、用量供給部材はその第1の位置にあるとき、吸入チャネルを塞ぐことができる。これは、用量供給部材の第1の位置では、粉末状の薬剤は言うまでもなく、空気も吸入チャネルを通ってデバイスのマウスピースに向かって流れることができないため、デバイスを使用する患者による吸入が行われることがないことを意味する。
【0008】
したがって、デバイスは、ただ1つの単一部品、すなわち用量供給部材によって実現することが可能な二重の安全機構を有する。用量供給部材の第1の位置では、患者への粉末状の薬剤の供給も、吸入チャネルを通したマウスピースの方向の吸入も妨げられる。意図しない粉末状の薬剤の投与、ならびに吸入のために粉末状の薬剤が準備されていない状態で患者が吸入することによるデバイスの起動が防止される。
【0009】
これまでに説明した用量供給部材の設計によって、デバイス内の部材の数を減らすこと、したがって、デバイスの総費用を削減することが可能になる。
【0010】
第1の実施形態の代替実施形態になり得る、または第1の実施形態に加えて機能を提供することができる第2の実施形態によれば、デバイスは、粉末状の薬剤を収容するための少なくとも1つの空洞、すなわち1つまたはそれ以上の空洞を備え、各空洞は粉末状の薬剤の単一用量で充填済みであり、粉末状の薬剤は各空洞に収納されるだけであり、デバイスには複数の用量を収納するための粉末リザーバがないことを特徴とする。
【0011】
用語「充填済み」は、デバイスを最初に使用する前に、各空洞が既に粉末で充填されていることを意味する。各空洞は、粉末状の薬剤の単一用量を含む。これは、デバイスが、所定の量、用量または「ショット」の粉末状の薬剤で充填された1つまたはそれ以上の空洞を提供し、用量供給部材の吸入チャネルに対する動きによって、各空洞を吸入チャネルと一直線にすることが可能であり、したがって、空洞の中に含まれる粉末状の薬剤を患者による吸入ができる位置に動かすことが可能であることを意味する。こうして、患者がデバイスを使用する必要があり、かつ粉末状の薬剤を吸入する必要があるときに、ある特定の数の単一用量をそれまでに準備しておくことができる。
【0012】
デバイス内に、複数の用量を収納するための粉末リザーバは不要である。これは、デバイスが、粉末状の薬剤を収納するための追加の空間を伴わない、コンパクトな小型デバイスとして設計可能であることを意味する。さらに、粉末状の薬剤の所定の量、すなわち用量を集め、その所定の量を粉末リザーバ内の粉末から分離するための追加の機構は不要である。
【0013】
第2の実施形態によるデバイスは、少数の部材を有するように設計することも可能であり、粉末状の薬剤の単一用量が患者に提供されるように準備される。そうしたデバイスは、費用効果が高く使用が容易である。これまでに説明したように、用量供給部材のその第1の位置からその第2の位置への動きによって、吸入およびその後の患者への粉末状の薬剤の投与を簡単な方法で実施することができるように、粉末状の薬剤の単一用量で充填済みの空洞を吸入チャネルと一直線にすることが可能である。
【0014】
以下では、これまでに説明したデバイスの第1の実施形態および第2の実施形態に関連する実施形態、ならびに機能が示される。
【0015】
一実施形態では、デバイスはさらに、用量供給部材の第1の位置において、粉末状の薬剤が空洞およびハウジングの内壁によって囲まれるように、空洞がハウジングの内壁によって覆われることを特徴とする。これは、用量供給部材の第1の位置では、空洞内に充填済みの粉末状の薬剤が空洞から流出するのを防止することが可能であることを意味する。
【0016】
この文脈において、用語「空洞」は、粉末状の薬剤の収容を可能にする、用量供給部材内の任意の陥凹部または孔を意味することがある。これは、空洞が用量供給部材の中の壁によって形成され、それによって、粉末状の薬剤が空洞を出ることができるような少なくとも1つの開口部を提供することを意味する。
【0017】
第1の位置では、デバイス内のハウジングの内壁によって空洞を覆うことが可能であり、したがって、空洞の開口部は、ハウジングのこうした内壁によって閉じられる。これは、ハウジングの内壁が用量供給部材内の空洞の壁と共に、内部に粉末状の薬剤が含まれ封入された、閉じたチャンバを提供することが可能であることを意味する。こうして、粉末状の薬剤を環境の影響から保護することができる。さらに、デバイス内での粉末状の薬剤の意図しない分布を防止するように、粉末状の薬剤は空洞を出ないように保証される。
【0018】
一実施形態では、空洞は用量供給部材を通って延び、用量供給部材の第2の位置において、空洞は吸入チャネルの中で、用量供給部材の第1の位置と第2の位置との間の動きの方向に沿って得られる空洞の断面が、吸入チャネルの断面と一直線になるように位置する。空洞の設計は、用量供給部材の壁を通って延びる孔を提供することができる。こうして、空洞は、用量供給部材を通るある種のチャネルまたはトンネルを提供する。これは、用量供給部材が、空気が空洞に入るだけではなく空洞を通って流れ、粉末状の薬剤を空洞から伴出することができるように、外部に対する少なくとも2つの開口部を有することを意味する。
【0019】
空洞は吸入チャネルの中で、用量供給部材の第1の位置と第2の位置との間の動きの方向に沿って得られる空洞の断面が、吸入チャネルの断面と一直線になるように位置することができる。こうして、粉末状の薬剤は、吸入チャネルに入ることが可能になる。さらに、空洞が吸入チャネルの中に位置するとき、空気は、吸入チャネルおよび用量供給部材の空洞を通って流れることができる。したがって、吸入チャネルを通って流れる空気によって空気と粉末の混合物を作成し、粉末を空洞から伴出することができる。
【0020】
これまでに説明した空洞の設計は、1回の吸入サイクルの間に、粉末状の薬剤のすべてを患者に投与することができるように、適切かつ効果的に空洞を消耗させるまたは空にすることを可能にする。これは、患者に粉末状の薬剤のある特定の用量をより適切に投与するのを助けることができ、また粉末状の薬剤の正確な投薬を提供することができる。
【0021】
これまでに説明した、空洞が吸入チャネルの中に位置する用量供給部材の第2の位置では、薬剤の吸入が患者によって開始されるまで粉末状の薬剤が吸入チャネルに入るのを防ぐように、空洞を、用量供給部材に対して可動とすることができる可動壁によって部分的に囲むことができる。この場合、可動壁は解放位置で摺動することが可能であり、それによって空洞を解放し、粉末状の薬剤が吸入チャネルに流入できるようにする。
【0022】
一実施形態によれば、ハウジングの中に保護部材が提供され、保護部材は、吸入チャネルの断面が保護部材の壁によって覆われるように、保護部材の一部が吸入チャネルの中に位置する第1の位置をとること、および吸入チャネルの断面が保護部材の壁によって覆われないように、保護部材が吸入チャネルの中に位置しない第2の位置をとることが可能である。
【0023】
保護部材はさらに、意図しない吸入またはデバイスの作動を防止する、単純であるが効果的な安全機構である。保護部材が吸入チャネルの中に位置するとき、吸入チャネルは、患者が吸入を行うことができないように塞がれる。この機構は、用量供給部材の第1の位置では、吸入チャネルの断面が用量供給部材の壁によって覆われるように、用量供給部材の一部が吸入チャネルの中に位置する、これまでに説明した第1の実施形態と同様である。別々に見える用量供給部材と保護部材はどちらも、使用者が意図する場合のみデバイスを作動させることができるような安全機構を提供する。
【0024】
デバイスは、保護部材の第1の位置において、用量供給部材がその第1の位置にあるときには、保護部材が用量供給部材の一部を囲み、それによって、用量供給部材がその第2の位置にあるときには、保護部材が用量供給部材の空洞を囲むように設計することができる。この設計は、デバイスの二重の安全機構を示すものである。用量供給部材がその第1の位置にあるとき、空気が吸入チャネルを通って流れることができないように、吸入チャネルを用量供給部材の壁によって覆うことができる。さらに、吸入チャネルが保護部材によってさらに塞がれ覆われるように、保護部材は、吸入チャネル内で用量供給部材の一部を囲む。
【0025】
空洞が吸入チャネルと一直線になるように、用量供給部材を第1の位置から第2の位置へ移動させた場合、保護部材は依然として第1の位置にあり、したがって、粉末状の薬剤で充填され、吸入チャネルの中に位置する空洞は、保護部材によって覆われる。これは、空洞内の粉末状の薬剤が、用量供給部材の空洞の壁ならびに保護部材の壁によって囲まれたままであり、したがって、用量供給部材の第2の位置で、保護部材がその第1の位置にある状態では、吸入チャネルの中に閉じたチャンバが形成されたまま、粉末状の薬剤を封入することを意味する。したがって、保護部材は、これまでに説明した種類の可動壁として働くことができる。
【0026】
空洞および保護部材によって形成されたチャンバは、保護部材をその第1の位置から、保護部材が吸入チャネルの中に位置しないその第2の位置へ移動させるまで、閉じたままである。後者の場合、用量供給部材の空洞は吸入チャネルの中に位置し、したがって、粉末状の薬剤は空洞から吸入チャネルの中に入ることができる。
【0027】
結果として、最初に用量供給部材をその第1の初期位置からその第2の位置へ移動させ、それによって、粉末状の薬剤で充填された空洞が吸入チャネルと一直線になった場合、およびその後、保護部材をその第1の初期位置からその第2の位置へ移動させ、それによって、吸入チャネルを解放して空洞を露出させ、粉末状の薬剤が吸入チャネルに入ることができるようにした場合のみ、デバイスを作動させることが可能になる。こうして、デバイスをさらに安全かつ確実なものにする。
【0028】
一実施形態において、保護部材は、使用者がマウスピースを介して加えることができる所定の圧力差によって、第1の位置から第2の位置へ移動させるように設計される。これは、患者がデバイスを吸い、圧力差が作成されるような吸入によって低い圧力(under−pressure)を提供したときのみ、保護部材が作動されることを意味する。この圧力差が、保護部材をその第1の位置からその第2の位置へ移動させる。
【0029】
一実施形態において、保護部材は案内部材によって案内され、圧力差が所定の閾値を超えた場合のみ、保護部材の第1の位置から第2の位置への動きが許容されるように、保護部材と案内部材との間の接触領域に所定の摩擦が提供される。これは、使用者がデバイスを十分に吸っていないときには、保護部材がその第1の位置からその第2の位置へ移動されないことを意味する。この効果により、使用者が小さい吸入動作で吸気しているが、まだ粉末状の薬剤の用量を強く吸入したくない、またはそうした吸入の準備がまだできていないときには吸入が妨げられるため、意図しない吸入を防止することができる。
【0030】
さらに、その機構は、目標の場所、例えば患者の肺への適切かつ確実な粉末状の薬剤の輸送を可能にし、不十分な吸入動作のために、粉末状の薬剤が十分に輸送されず、例えば肺ではなく、口領域または口腔粘膜にしか入らないことを防止するのを助けることができる。さらに、強い吸入動作は、患者の肺の中の肺胞のより適切な開放をもたらす。これは、患者による吸入動作が強いほど、患者の肺の中の肺胞による粉末状の薬剤の吸収が良くなることを意味する。
【0031】
所定の圧力の閾値によって保護部材の作動を引き起こすことにより、肺の肺胞内での粉末状の薬剤の吸収レベルを制御することができる。結果として、保護部材および案内部材を2つの部材間の所定の摩擦を用いて設計することによって、患者の肺の中での粉末状の薬剤の吸収の制御がもたらされる。これにより、患者に対するより適切かつ効果的な粉末状の薬剤の投与が得られる。
【0032】
一実施形態では、用量供給部材および保護部材は、用量供給部材の第1の位置において、保護部材をその第1の位置からその第2の位置へ変位させるために必要な作動力が、用量供給部材の第2の位置より大きくなるように互いに相互作用する。
【0033】
用量供給部材の第1の位置における用量供給部材と保護部材の相互作用は、もう1つの安全機構を提供し、用量供給部材が、空洞が吸入チャネルの中に配置されるその第2の位置に配置された場合のみ、保護部材の作動が許容される。これは、患者に粉末を提供するように粉末が吸入チャネルの中に配置されていないときには、保護部材を作動させることができないことを意味する。さらに、この安全機構は、例えばデバイスの輸送中、保護部材の意図しない作動を防止する。
【0034】
一実施形態によれば、保護部材と用量供給部材との間の相互作用は、互いに相互作用するフック形の部材によって得ることができる。他の実施形態によれば、保護部材と用量供給部材との間の相互作用は、用量供給部材がその第1の位置にあるとき、用量供給部材の吸入チャネルの中に位置する部分における用量供給部材の広げられた断面によって得ることができ、用量供給部材のこの部分が保護部材と接触するようにする。こうして、用量供給部材の広げられた断面によって、吸入チャネル内の保護部材の壁に対して圧力による力をもたらすことが可能になり、したがって、この圧力による力に対する保護部材の動きが抑えられる。「抑えられる」は、動きは可能であるが、困難になることを意味する。
【0035】
さらに、保護部材は、例えば用量供給部材の広げられた断面を収容するためのノッチまたは陥凹部として設計された保持部材を提供することができる。広げられた断面は、例えば用量供給部材上の突出部によって実現することができる。
【0036】
一実施形態では、デバイスの本体の外面上の1つまたはそれ以上の開口部、例えばデバイスのマウスピースによって形成される開口部が、封止部材によって覆われ、封止部材は、本体の内部を環境の影響に対して封止する。封止部材は、好ましくは開口部から取り外すことができる。封止部材は、デバイスを水分または湿気、ならびに開口部を通してデバイスの内部に入り込む可能性があるごみから保護するのを助ける。水分または湿気は、薬剤の乾燥した粉末が湿っぽくなるか、または湿る可能性があり、その結果、粉末の塊が生じ、薬剤の吸入中にデバイスの不調または不十分な空気と粉末の混合物をもたらす恐れがある限り危険である。したがって、粉末状の薬剤をデバイスの中で乾燥した状態に保つと有利である。封止部材によって保護物がもたらされる。すべての開口部に対するただ1つの封止部材、または開口部のそれぞれに対して1つである複数の封止部材を提供することが考えられる。
【0037】
封止部材の他の利点は、最初の使用の前に、デバイスがより長い期間にわたって収納可能になることによって与えられる。患者がデバイスを使用したいとき、患者は、マウスピースを通した吸入動作を行うことができるように、デバイスの(1つまたはそれ以上の)開口部、例えばデバイスのマウスピースから封止部材を取り外すことができる。
【0038】
さらに、デバイス内の封止部材の有無により、使用者に対してデバイスが既に使用されているか否かを示すことができる。この文脈では、封止部材が、封止された構成において、使用者に対してデバイスがまだ手がつけられていない状態であることを示す、ある特定の警告用の色、例えば赤色または緑色を有するようにすることが考えられる。
【0039】
さらなる実施形態、機能および利点は、従属請求項、図および以下の説明において開示される。
【0040】
以下では、いくつかの図面を用いて、これまでに説明したデバイスの有利な設計について説明する。