(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181079
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】計算流体力学システムおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20120101AFI20170807BHJP
G06Q 10/04 20120101ALI20170807BHJP
G06F 17/50 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
G06Q50/16 300
G06Q10/04ZJG
G06F17/50 612H
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-554979(P2014-554979)
(86)(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公表番号】特表2015-512082(P2015-512082A)
(43)【公表日】2015年4月23日
(86)【国際出願番号】US2013023984
(87)【国際公開番号】WO2013116424
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2016年1月29日
(31)【優先権主張番号】61/592,633
(32)【優先日】2012年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/754,100
(32)【優先日】2013年1月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507202736
【氏名又は名称】パンドウィット・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダン・エフ・ドーハイ
(72)【発明者】
【氏名】サンボディ・チャタジー
(72)【発明者】
【氏名】ゼシュン・カイ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エム・ペドル
(72)【発明者】
【氏名】サウラブ・ケー・シュリヴァスタヴァ
【審査官】
松野 広一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−527491(JP,A)
【文献】
特開2011−059740(JP,A)
【文献】
特開2001−325555(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0038414(US,A1)
【文献】
鄭 愚耕,松尾 啓吾,“省エネ”システム開発に挑戦 電力をできるだけ使わない機器を作る方法 第9章 熱流体解析でシステムを省エネ −データ・センタにおける冷却コスト&電力の削減事例,ディジタル・デザイン・テクノロジ,日本,(株)構造計画研究所・ CQ出版株式会社,2011年11月 1日,No.11,pp.106−113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
G06F 17/50
G06F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデータセンターオブジェクトを収容するデータセンター内の熱力学的挙動を計算する方法であって、前記方法が、
(a)コンピュータによって、前記データセンターオブジェクトのそれぞれの物理的および論理的特性を取得するステップと、
(b)前記コンピュータによって、前記データセンターの物理的および論理的特性を取得するステップと、
(c)前記コンピュータによって、前記データセンターオブジェクトおよび将来のデータセンターオブジェクトの追跡に関するデータを取得するステップと、
(d)前記コンピュータによって、前記データセンターの環境条件情報を取得するステップと、
(e)ステップ(a)乃至(d)で取得された情報に基づいて、前記コンピュータによって、対応する第1の計算流体力学(CFD)モデルが利用可能であるか否かを判断するステップと、
(f)前記第1のCFDモデルが利用可能であるとき、前記第1のCFDモデルを使用して第1のCFDデータ出力パケットを生成するために、前記コンピュータによって、CFD分析要求パケットをCFD解決モジュールに送信するステップであって、前記CFD分析要求パケットはステップ(a)乃至(d)で取得された前記情報を含み、前記第1のCFDデータ出力パケットは前記データセンターの予測された熱力学的挙動モデルを含む、ステップと、
(g)前記対応する第1のCFDモデルが利用可能でないとき、第2のCFDモデルを生成し、前記第2のCFDモデルを使用して、第2のCFDデータ出力パケットを生成するために、前記CFD解決モジュールに指示するように、前記コンピュータによって、CFDモデル要求パケットを前記CFD解決モジュールに送信するステップであって、前記CFDモデル要求パケットはステップ(a)乃至(d)で取得された前記情報を含み、前記第2のCFDデータ出力パケットは前記データセンターの予測された熱力学的挙動モデルを含む、ステップと、
(h)前記第1又は第2のCFDデータ出力パケットを生成すると、前記第1又は第2のCFDモデルの較正を検証するために、前記コンピュータによって、ステップ(e)における判断の結果に関連するオプションを提示するステップと、
(i)前記第1又は第2のCFDモデルのそれぞれの較正を検証するための前記オプションが選択されないとき、前記コンピュータによって、前記データセンターの前記予測された熱力学的挙動モデルを視覚的に表すステップと、
(j)前記第1のCFDモデルの前記較正を検証するための前記オプションが選択されているとき、前記コンピュータによって、前記第1のCFDデータ出力パケットをモジュールに送信するステップであって、前記モジュールは、前記第1のCFDデータ出力パケットを使用して前記第1のCFDモデルを更新する、ステップと、
(k)前記第2のCFDモデルの前記較正を検証するための前記オプションが選択されているとき、前記コンピュータによって、前記第2のCFDデータ出力パケットを前記モジュールに送信するステップであって、前記モジュールは、前記第2のCFDデータ出力パケットを第3のCFDモデルとして保存する、ステップと、
(l)前記コンピュータによって、前記更新された第1のCFDモデルから更新された第1のCFDデータ出力パケットを出力するか、又は、前記第3のCFDモデルから第3のCFDデータ出力パケットを出力するステップであって、前記更新された第1のCFDデータ出力パケットおよび前記第3のCFDデータ出力パケットのそれぞれは、前記データセンターの予測された熱力学的挙動モデルを含む、ステップと、
(m)前記コンピュータによって、前記更新された第1のCFDデータ出力パケット又は前記第3のCFDデータ出力パケットに基づいて、前記データセンターの前記予測された熱力学的挙動モデルを前記データセンターの実際の熱力学的挙動と比較するステップと、
(n)前記比較があらかじめ定義された閾値の範囲内であるとき、前記コンピュータによって、前記更新された第1又は第3のCFDモデルのそれぞれが較正されていると判断し、前記コンピュータによって、ステップ(d)に戻るステップと、
(o)前記比較が前記あらかじめ定義された閾値の範囲外であるとき、前記コンピュータによって、前記更新された第1又は第3のCFDモデルのそれぞれが較正されていないと判断し、前記コンピュータによって、ステップ(a)に戻るステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)乃至(d)のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの発見機器によって、
前記データセンターオブジェクトおよび前記データセンターのそれぞれの前記物理的および論理的特性と、
前記データセンターオブジェクトおよび将来のデータセンターオブジェクトの前記追跡に関する前記データと、
前記データセンターの前記環境条件情報と
を動的に取得することを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2012年1月31日に出願された、米国仮特許出願第61/592,633号の利益を要求し、それは、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、特定の領域内の熱力学的挙動を評価および/または予測するためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、少なくともいくつかの実施形態では、データセンターおよび同類のものの熱力学的挙動を計算および/または予測するために計算流体力学を使用するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
計算流体力学(CFD)は、20世紀初頭から使われている。しかし、データセンターでのCFD分析の適用は、比較的新しい出来事である。データセンターでは、温度および気流が、不可視かつ非線形であり、熱的性能を視覚化するための計算システムに対する必要性を必要とする。たとえCFDモデリングがデータセンターの気流構成を最適化するための効果的な方法であっても、かかるモデリングを採用する利用可能なシステムは、いくつかの欠点を持ち得る。例えば、これらのシステムは、多くの場合、初期CFDモデルのセットアップが非常に高くつく。加えて、データセンターの動的調査の不足および効果的なCFDモデル検証の不足が、CFD出力報告の精度に著しく影響を及ぼし得る。
【0004】
従って、データセンターなどの環境内で実装され得る、改善されたCDFモデリングシステムおよび方法に対する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その結果、本発明の実施形態は、一般に、データセンターなどの環境において使用するためのCFDモデリングシステムおよびその使用方法を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本発明は、データセンターの変更が生じると、動的熱解析モデリング更新機構を提供することにより、正確なCFD結果を所与のデータセンター室に長期間にわたって保持するためのシステムである。この技術は、セットアップ費用を削減して、CFD精度を向上させ、かつ、データセンター運営の効率を改善して費用を削減し得る詳細な情報を得た上での決断を行う役に立つ。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、データセンター内の熱力学的挙動を計算するためのシステムであって、本システムは;少なくとも1つのモジュールをその上で実行するための電子装置を含み、その少なくとも1つのモジュールは:入力情報を取得および格納するためのデータ取得モジュールであって、その入力情報が、データセンター資産情報、データセンターの物理的特性、資産追跡情報、および環境条件情報のうちの少なくとも1つを含む、データ取得モジュール;出力データパケットを出力するために入力情報を受信および分析するためのデータ解決モジュールであって、出力データパケットがデータセンターの予測された熱力学的挙動モデルを含む、データ解決モジュール;データセンターの予測された熱力学的挙動モデルの精度をデータセンターの実際の挙動に対して検証するためのデータモデル検証モジュール;ならびに出力データパケットをフォーマットおよび出力するためのデータモデル出力モジュールを含む。
【0008】
さらに別の実施形態では、本発明は、データセンター内の熱力学的挙動を計算する方法であり、本方法は、電子装置上で入力情報を取得および格納することであって、その入力情報が、データセンター資産情報、データセンターの物理的特性、資産追跡情報、および環境条件情報のうちの少なくとも1つを含む、電子装置上で入力情報を取得および格納すること;出力データパケットを生成するために入力情報を分析することであって、その出力データパケットがデータセンターの予測された熱力学的挙動モデルを含む、入力情報を分析すること;データセンターの予測された熱力学的挙動モデルの精度をデータセンターの実際の挙動に対して検証すること;ならびに出力データパケットをフォーマットおよび出力すること;の各ステップを含む。
【0009】
さらにまた別の実施形態では、データセンター内の熱力学的挙動を計算するためのシステムであり、本システムは:コンピュータソフトウェアをその上で実行するための電子装置;および電子装置上で実行されるインフラストラクチャ管理ソフトウェアを備える。インフラストラクチャ管理ソフトウェアは:入力情報を取得および格納するためのデータ取得モジュールであって、その入力情報が、データセンター資産情報、データセンターの物理的特性、資産追跡情報、および環境条件情報のうちの少なくとも1つを含む、データ取得モジュール;出力データパケットを出力するために入力情報を受信および分析するためのデータ解決モジュールであって、その出力データパケットがデータセンターの予測された熱力学的挙動モデルを含む、データ解決モジュール;データセンターの予測された熱力学的挙動モデルの精度をデータセンターの実際の挙動に対して検証するためのデータモデル検証モジュール;ならびに出力データパケットをフォーマットおよび出力するためのデータモデル出力モジュールを含む。
【0010】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の図、記述、およびそれに続き得るいずれかの請求項を参照すると、より良く理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態によるシステムおよび/または方法のためのプロセスフローを示す。
【
図2A】本発明の実施形態に従って生成されたCFD出力モデルの例を示す。
【
図2B】本発明の実施形態に従って生成されたCFD出力モデルの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、ユーザーの必要性を適切に満足する機器配置代替案の初期CFDモデルの作成、モデル精度の検証、および評価のための前記モデルの使用のためのシステムに対するプロセスフローの実施形態例を示す。かかるシステムは、スタンドアロンシステムであり得るか、またはPanduitのPhysical Infrastructure Manager(登録商標)(PIM(登録商標))のようなインフラストラクチャ管理ソフトウェア(IMS)(
図1に示すような)の一部として実装され得る。
【0013】
CFDモデル分析を開始するために、ユーザーは、IMS内にエントリ10を作成することにより開始し、IMS内には、キャビネット、ネットワーク機器/装置、空気圧調整ユニットなどの、データセンターのオブジェクトに関する物理的および/または論理的特性、ならびにデータセンターの位置またはマッピング特性が格納できる。この情報は、1つまたは複数のIMSファイル(複数可)に格納され得るか、またはそれは、別個のデータベースファイルのサブセットであり得る。
【0014】
次のステップ12の間に、特定のデータセンターのオブジェクト情報がIMSに入力される。一実施形態では、この情報は、ユーザーにより手動で入力できる。別の実施形態では、このステップは、オブジェクト情報を、かかる情報を既に含む別のファイルからインポートすることによって実行され得る。さらに別の実施形態では、必要な情報が、データセンターのオブジェクトの様々な特性を検出して前記情報をIMSに(静的または動的に)報告できるセンサーまたは他の発見機器/システムによって収集され得る。
【0015】
次のステップ14で、ユーザーは、その物理的な配置および気流閉塞の位置などの、データセンターの物理的特性を入力する。さらに、実施形態に応じて、この情報は、ユーザーにより手動で、または別のファイル(コンピューター支援設計アプリケーションで作成された間取り図など)、センサーデータ、発見機構、もしくは他の利用可能な手段からのインポートによって自動的に、入力され得る。自動インポートは、静的または動的のいずれかであり得る。
【0016】
ステップ12で入力されたデータセンターのオブジェクト情報およびステップ14で入力された物理的特性は:データセンター内の設備の位置のマップ;データセンター室の寸法;室内の空冷ユニット位置、供給空気温度および気流;室内のラック/キャビネットの位置および方向;ラック/キャビネットの吸込温度および吐出し温度;ラック内の発熱設備の配置;設備によって消費される電力およびかかる電力消費によって発生する熱;発熱設備を通った気流の示度;ブランキングパネルおよび/または障害物、底流、および天井障害の位置;ならびに床タイル孔(perforation)の特性のうちの1つまたは複数を含み得る。しかし、特定の用途に応じて、他の情報および特性の記録がより好ましくあり得る。
【0017】
標準的なデータセンターでは、冷却ユニット、床グリル、およびPDUなどの設備は動かないオブジェクトである。しかし、サーバーおよびスイッチなどの発熱資産は、キャビネットからキャビネットへ、またはデータセンターの外にさえ、頻繁に移動され得る。いくつかの(PIM(登録商標)のような)IMSは、発熱資産および障害物の移動を資産追跡機能によって追跡する機能を有する。PIM(登録商標)資産追跡に関する追加の情報が、2012年8月15日に出願された「INTEGRATED ASSET TRACKING,TASK MANAGER,AND VIRTUAL CONTAINER FOR DATA CENTER MANAGEMENT」という名称の出願第13/586,569号で提供されており、それは、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、データセンター内のオブジェクトは静的に配置されない可能性があるので、現在および将来のデータセンターのオブジェクトの追跡に関する情報がステップ16で入力できる。これは、本発明が追跡可能な環境および資産属性を動的に監視して、CFDモデルに関する入力情報をリアルタイムまたはほぼリアルタイムで更新することを可能にできる。
【0018】
次に、ステップ18で、IMSは、特定のデータセンターに対する環境条件情報が提供される。一実施形態では、この情報は、データセンター内に配置された1つまたは複数のセンサーによって取得され、これらのセンサーは必要なデータをIMSに伝達することが可能である。一実施形態では、収集された環境条件情報は:室温、電力消費、および部屋の湿度のうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
全ての必要な情報がステップ12〜18から取得されると、IMSは、対応するCFDモデルが既に利用可能であるかどうかの判断20に進む。かかるモデルが利用可能である場合、既存のCFDモデルを呼び出し、そのモデルを使用して出力を生成するために、CFD分析要求パケット34がCFD解決モジュール24に送信される。対応するCFDモデルが利用可能でない場合、新しいCFDモデルを生成し、次いで、そのモデルを使用して出力を生成するために、CFDモデル要求パケット22が、CFD解決モジュール24に送信されて解決モジュール24に指示する。ステップ22およびステップ34で両方のパケットは、前のステップ中に収集されたデータを含む。
【0020】
以前に収集されたデータを受信すると、CFD解決モジュール24は、CFDモデリング技術を使用して、温度を予測し、データセンター内の気流パターンを返す。これらの結果は、CFDデータ出力パケット26として出力され、次いで、CFDモデルの較正が検証される必要があるかを判断する(28)ために使用される。一実施形態では、この判断は、ユーザーによって行われ得る。別の実施形態では、ある条件が満足される場合(例えば、ステップ20で対応するCDFモデルが見つからなかった場合)、較正の自動検証が要求され得る。較正検証が要求される場合、CFDデータ出力がモジュール30に供給され、そこでは、CFDモデルが以前に存在しなかった場合、このデータが新しく作成されたCFDモデルとして保存されるか、または以前の対応するモデルが存在することが分かった場合、そのデータが更新として既存のCFDモデルに組み込まれる。その後、ステップ32で、出力データが、CFDモデルが較正されるかどうかを判断するために使用される。
【0021】
一実施形態では、ステップ32で実装されたCFDモデル較正検証モジュールが、誤差値を計算するために、二乗平均平方根誤差法を前述のCFDデータ出力パケット26に適用する。計算された値が定義された閾値以下である場合、モデルは較正されない。他方、計算された誤差値が定義された閾値を上回る場合、システムはデータセンターおよび資産情報を再収集して、仮想設備をさらに較正するために、その情報に基づいて出力を生成する。本明細書では、用語「仮想設備」は、離散時または連続時に、データセンター室の物理的要素とその対応する観測可能で予測可能な熱力学的挙動(温度、気流、気圧、熱エネルギー、電力など)との間の関係(または領域マッピング)を表す、任意の計算モデルを指し得る。
【0022】
一実施形態では、モデルの精度が、測定されたセンサー示度と計算されたセンサー示度との間の二乗平均平方根差を計算することによりチェックされる。二乗平均平方根差は、2つのセットの入力:CFD解決モジュール24から生成された計算されたセンサー示度(複数可)およびデータセンター内に配置されたセンサー(複数可)から取得された実際の測定された示度(複数可)を必要とする。かかる二乗平均平方根差を計算するこの方法は、次のように機能する(この例では、n個の計算されたセンサー示度およびn個の測定された示度がある):
各対応する計算された示度と測定された示度との差をとり:cal_1−mea_1、cal_2−mea_2、...、cal_n−mea_n;
各差を2乗し:(cal_1−mea_1)
2、(cal_2−mea_2)
2、...、(cal_n−mea_n)
2;
2乗された結果を全て合計して値wという結果になり;
wを示度数(この場合はn)で割って、値yという結果になり;そして、
yの平方根をとる。
数学的に言うと、公式は次のように見える:
【0026】
RMSDの理想値は0であるので(これは、計算されたセンサー示度が測定されたセンサー示度と同じである場合に起こる)、RMSDの低値が望まれる。許容可能なRMSD値の範囲を定義する測定基準または閾値が本発明のいくつかの実施形態で実装できる。
【0027】
較正検証の結果に応じて、IMSは、CFDモデルが較正されると判断される場合、ステップ18に直ちに戻り、(ステップ18でデータセンサーの環境条件も更新しながら)以前に利用可能な入力データで処理し得るか、または、CFDモデルが較正されないと判断される場合には、ステップ12〜18に詳述のように、ステップ12に戻って、データセンターおよびデータセンターオブジェクトの物理的および論理的特性を再収集し得る。
【0028】
CFDモデルの較正の初期検証および後続の較正が、結果として生じるCFDモデル出力の精度を向上させ得、それは、データセンター環境のより正確な予測となり得る。加えて、データセンター資産および環境変数の動的追跡を採用する本発明の実施形態は、CFDモデルを構築するために必要な変数のサンプリングとその較正の後続の検証との間の時間を短縮し得る。時間におけるかかる短縮は、CFDモデルの出力に影響を及ぼし得るデータセンター内の変化を回避し得、従って、より正確なCFDモデルに寄与して、より良く予測された出力をもたらす。
【0029】
ステップ28で、CFDモデルが較正の検証を要求しないと判断されていると、CFDデータが、ユーザーの必要性に応じてフォーマットされ(36)、必要に応じて出力される(38)。CFDデータは、任意の数の方法で出力され、それは、ユーザーに可視な画面上での視覚表示および/またはさらなるタスク/処理のためにIMSによって利用可能なデータセットとして、を含む。
【0030】
CFDモデルがデータセンターの物理的要素に合わせて較正された後、データセンターに対する提案された変更のさらなるモデルが、温度、気流、および他の熱力学的要因に関する結果で予測できる。複数のシミュレーションされたモデル(例えば、異なる位置での新しい設備の配置をシミュレーションするモデル)にわたる差異の比較により、好都合な結果を有するモデルを識別できるようになる。かかる好都合な結果は、熱的性能、効率、経費節減、および同類のものなどを含むが、それらに限定されない、任意の数のユーザー定義またはシステム定義の基準に基づき得る。
【0031】
本発明によって生成されたCFDモデルの例が、
図2Aおよび
図2Bに示されている。一実施形態では、
図2Aのモデルは、変更前のデータセンター内の温度および気流を示す基本モデルであり得、
図2Bは、提案された変更に基づく予測されたモデルであり得る。2つのモデル間の差は、ユーザーが、その時‐現在の構成に対する任意の移動、追加、および変更の潜在的な利点および/または欠点をもっと容易に実感できるようにし得る。代替として、
図2Aおよび
図2Bは両方とも、提案された変更に基づくモデルであり得る。2つの潜在的な結果を見ることにより、ユーザーが、特定の構成を別の構成と比較してより良く選択することを可能にし得る。
図2Aおよび
図2Bに示すモデルは、IMSに埋め込まれた特定のタスク要求の出力であり得る。いくつかの実施形態では、これらのモデルは、目視比較を容易にするために、並べて表示できる。特定の設備をデータセンターのある位置に配置するための改善されたオプションの選択プロセスは、所与のデータセンターのインフラストラクチャの改善された利用および拡張要求の潜在的な延期をもたらし得る。
【0032】
本発明の他の実施形態は、(ステップ12〜ステップ18で入力された任意の情報を含むことができる)モデルフレームワークおよびインフラストラクチャにおける提案された変更を受信すること、ならびにCFD出力を、所与の空間内の、必ずしもセンサー位置と一致する必要のないどこかで、予測された熱力学的挙動(例えば、温度、気流、熱エネルギー、電力など)の形で生成することを含む方法を含み得る。
【0033】
本請求項に係る発明の1つの付加価値のある提案は、データセンターの担当者によって実行されるMAC(Move:移動、Add:追加、Change:変更)作業指示などのデータセンター熱モデルのオンデマンドでの動的更新を可能にするためのフレームワークを提供することにより生じる時間および経費の節約であり得る。
図1に概説するプロセスは、比較的短期間で、不要な手作業の介在を必要とすることなく、各々およびあらゆる設備を変更して、データセンター室モデルの検証された改善をもたらし得る。データセンターの規則的に更新されて検証された熱モデルを維持するフレームワークは、CFDおよび他のモデリング技術の使用を可能にして、データセンターの試運転、プロビジョニング、およびキャパシティプランニング活動を費用効率の高い方法で強化し得る。
【0034】
本発明は、1つまたは複数の実施形態(複数可)に関して記述されてきたが、これらの実施形態(複数可)は(それらが例示的とラベルを付けられているか否かに関わらず)限定されず、本発明の範囲内に含まれる、代替、置換、および均等物があることに留意されたい。本発明の方法および機器を実装する多数の代替方法があることも留意されるべきである。従って、後に続き得る請求項は、全てのかかる代替、置換、および均等物を本発明の真の精神および範囲に含まれるものとして含むと解釈されることを意図する。
【符号の説明】
【0035】
22 CFDモデル要求パケット
24 CFD解決モジュール
26 CFDデータ出力パケット
34 CFD分析要求パケット
38 出力CFDデータ