(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1つの前記支持本体(18)は、少なくとも1つの可撓性ホースを有するあるいは少なくとも1つの可撓性ホースに支持された可撓性支持本体(18)であり、前記少なくとも1つの可撓性ホースは、幅方向に延び、その上、当該少なくとも1つの可撓性ホースの加圧状態が前記可撓性支持本体(18)を膨張させるまたは径方向外方に移動させるように、加圧流体源に接続される、請求項1または2に記載の延伸ニップロール(12)。
前記可撓性ジャケット(17)が膨張して内部からの圧力を受けるように、前記可撓性ジャケット(17)内の内部空間に、加圧空気またはガスが供給されるように手配されている、請求項15に記載の延伸ニップロール(12)。
【発明の開示】
【0006】
上述した明細書は、多数の構成要素を含んでいる。装置内で利用される構成要素の数を低減することが望ましい。
【0007】
米国特許第4144124号がティッシュペーパのような紙を製造するための装置を開示している。当該明細書に示された装置は、従来の対のワイヤと、内側押圧ロールと外側押圧ロールとの間の押圧ニップと、を備えている。上側乃至外側押圧ロールは、ヤンキードライシリンダと共に第二ニップを形成する吸引ロールである。パターンをエンボス加工するのに適したワイヤのような無端状のベルトが、おそらく利用され、押圧ニップで紙に模様を作るといわれている。吸引ロールが2つのニップのために利用され、一方のニップがいわゆる「内側ロール」と共に形成され他方のニップがヤンキードライシリンダと共に形成されるので、この装置は押圧部でより少ないロールを利用することが可能である。
【0008】
本発明の目的は、高いかさを持つティッシュペーパウェブを製造することが可能で、さらには、簡略なデザインでより少ない部品をもつティッシュペーパ用の紙製造装置を提供することである。これら及び他の目的が、これから説明されるように本発明によって成し遂げられる。
【0009】
本発明は、紙を作るための紙製造装置に関する。本発明の装置は、紙製造装置において紙を製造する間に、当該紙に三次元構造を付与するよう手配されている。装置は、湿った紙ウェブを乾燥させるように配置されたヒートロールと、前記ヒートロールと共に転移ニップを形成するように配置された延伸ニップロールと、を備える。本明細書の文脈において、用語「ヒートロール」は、加熱されるあるいは加熱されるように手配されたロールとして理解されるべきである。ヒートロールを暖めるべく当該ヒートロールの外面に隣接して配置された例えばバーナーや赤外線ヒータのような加熱するための外部手段が、ヒートロールに設けられていてもよい。ヒートロールは、例えば高温のガスや高温の流体でヒートロールの内面から暖められるように手配されていてもよい。例えば、ヒートロールは、高温の蒸気により内部から暖められるように手配されたヤンキーシリンダであってもよい。前記延伸ニップロールには、当該延伸ニップロールの周囲領域の周りに配置された可撓性ジャケットが設けられている。前記可撓性ジャケットの外面には、テクスチャー部分が設けられている。前記湿った紙ウェブが前記延伸ニップロールと前記ヒートロールとの間の転移ニップを通過するときに、前記可撓性ジャケットの前記外面の前記テクスチャー部分が紙ウェブに三次元テクスチャーを付与する、すなわち紙ウェブに三次元パターンを形成する。
【0010】
さらに、本発明の紙製造装置は、繊維状の紙ウェブが成形され得る成形部を適切に備える。成形部は、成形ロールと、成形繊維と、フェルトと、を有する。本装置は、第2押圧部材、例えば前記延伸ニップロールに対するカウンターロールを選択的に備える。前記延伸ニップロールに対する前記カウンターロールは、前記延伸ニップロールと共に脱水ニップを形成するように配置されてもよく、前記フェルト(すなわち成形部にて利用されるものと同一のフェルト)は、この脱水ニップを通過するように選択的に配置される。本発明によれば、前記延伸ニップロールは、ループを形成する可撓性ジャケットと、前記可撓性ジャケットのループ内の支持本体と、を有する。前記支持本体は、可撓性ジャケットを径方向外方に押圧するようにさせられ得る。その上、前記支持本体は、例えばドライシリンダのようなヒートロールの反対側に配置され、前記支持本体が前記可撓性ジャケットを前記ドライシリンダに向けて押圧して前記転移ニップを閉鎖するようになっている。好ましくは、前記延伸ニップロールは、前記ドライシリンダに関して可動であり、その結果、前記ドライシリンダと前記延伸ニップロールとのあいだの距離が離間動作において大きくなり閉鎖動作において小さくなる。さらに、紙製造装置は、閉鎖動作を停止させるよう配置された機械的停止部を備える。
【0011】
本発明の実施の形態において、前記テクスチャー部分は、幅方向における前記可撓性ジャケットの全長に実質的に沿って延びている。前記テクスチャー部分は、前記可撓性ジャケット17の外面の少なくとも60%、好ましくは前記外面の少なくとも80%、より好ましくは前記外面の実質的に全領域を覆う。好ましくは、清掃装置が、前記テクスチャー部分の外側外面または少なくとも前記外面の前記テクスチャー部分を清掃するように配置される。
【0012】
本発明の実施の形態において、前記延伸ニップロールは、少なくとも1つの支持本体を有し、前記支持本体は、加圧流体によって内方から加圧され得る内部空洞を有する可撓性支持本体であってもよい。
【0013】
別の本発明の実施の形態において、前記支持本体は、凹面をもつ少なくとも1つのシューを有し、前記凹面は、前記ヒートロールの凸面と協働するように、外方を向いている。
【0014】
さらに別の実施の形態において、前記支持本体は、可撓性支持本体及びシューの両方を有してもよい。
【0015】
本発明の実施の形態において、前記可撓性支持本体は、少なくとも1つの可撓性ホースを有するあるいは少なくとも1つの可撓性ホースに支持され、前記少なくとも1つの可撓性ホースは、幅方向に延び、その上、当該少なくとも1つの可撓性ホースの加圧状態が前記可撓性支持本体を膨張させるまたは径方向外方に移動させるように、加圧流体源に接続される。
【0016】
前記延伸ニップロールは、前記可撓性ジャケットのループ内で、凹面がドライシリンダに面する第二支持本体または内部空洞をもつ可撓性支持本体を選択的に有してもよく、これらの支持本体は、前記延伸ニップロールに対する前記カウンターロールに対向して配置され、当該延伸ニップロールに対する前記カウンターロールと協働して前記脱水ニップを形成する。
【0017】
紙製造装置に本発明による機器が設けられる場合、本発明はそのような機械でティッシュペーパを製造する方法の観点からも記載され得る。本方法は、前記延伸ニップロールを取り囲むループを形成する前記可撓性ジャケットの外面に設けられたテクスチャー部分によって、前記湿った紙ウェブに三次元構造を付与する工程を備える。
【0018】
1つ且つ同一のロールを、転移ニップTNを形成するためと、前記紙ウェブにテクスチャー構造を形成するためと(場合によっては脱水ニップPNを形成するためにも)、に利用することにより、より少ない部品が必要とされる。
【0019】
本発明は、凹シューや可撓性支持本体のような少なくとも1つの支持本体の周りにループを形成する可撓性ジャケットを備える延伸ニップロールに関する。本延伸ニップロールは、前記支持本体をして前記可撓性ジャケットの内面を径方向外方に押圧させるための手段を有する。本発明によれば、前記可撓性ジャケットは、外面を有し、当該外面の少なくとも一部が、前記延伸ニップロールとカウンター要素との間に形成されるニップを通過する紙ウェブに三次元構造を付与し得るようにテクスチャー処理がなされている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照すると、本発明は、紙特にティッシュペーパを製造するための紙製造装置1に関して記載されている。本明細書で使用されるように、用語「ティッシュペーパ」は、比較的低い坪量を持つ紙に関する。大抵の場合、比較的低い坪量とは、10g/m
2−50g/m
2の範囲内の坪量を意味する。ただし、ティッシュペーパウェブの用例においては、坪量がこの範囲外にある場合もある。板紙とは異なり、ティッシュペーパは、堅い必要性がなく、それゆえに、低い坪量を持つことができる。大抵の場合、ティッシュペーパの坪量は、15g/m
2−40g/m
2の範囲内にあり、典型的な値は、15g/m
2−30g/m
2の範囲内または20g/m
2−30g/m
2の範囲内にあり得る。このような紙は、例えば、化粧紙、トイレットペーパあるいは吸収紙タオル(例えばキッチンタオル)として利用されることが可能である。本発明による装置は、成形部2を備え、成形部2において湿った繊維状ウェブが成形され得る。
図1にみられるように、成形部2は、成形ロール4、成形繊維5及びフェルト7を有している。適切には、成形繊維5は透過性のワイヤである。成形繊維5は、複数のガイドロール6によってループ内で案内される。フェルト7は、ループ内で部分的に複数のガイドロール8によって案内されることに加えて、部分的に成形ロール4及びカウンターロール13によっても案内される。成形部2は、ヘッドボックス3を有している。ヘッドボックス3は、当業者に知られているように、成形繊維5とフェルト7との間に形成された隙間内に原料を注入するように配置されている。ヘッドボックス3は、選択的に、例えば米国特許6165324号に開示された種類のヘッドボックスのような、複層ヘッドボックスであってもよい。選択的に、ヘッドボックス3は、例えば米国特許6030500号に開示された態様におけるような、希釈ヘッドボックスとして設計されてもよい。本発明の実施の形態において、ヘッドボックス3は、希釈ヘッドボックスとしても設計された複層ヘッドボックスであってもよい。本発明にふさわしい1つまたは複数のフェルト脱水装置26が、当業者に知られたようにフェルト7から水分を取り除くように手配されてもよい。脱水装置26は、例えばユールボックス(Uhle box)であってもよい。
【0022】
図1及び
図3を参照すると、装置1は、延伸ニップロール12と、当該延伸ニップロールに対する選択的なカウンターロール(対向ロール)13と、を有する押圧部11を備えていてもよい。好ましくは、延伸ニップロールに対するカウンターロール13は、延伸ニップロール12と共に脱水ニップPNを形成するよう配置される(
図3も参照)。フェルト7は、脱水ニップPNを通過するように配置されている。
図1にみられるように、フェルト7は、第二脱水部材13の周りにループを形成している。脱水ニップPNにおいて、湿った紙ウェブから水分が押し出され、フェルト7により吸収される。1つまたはいくつかの更なるフェルト脱水装置、例えばユールボックスが、フェルトがプレス部11から成形ロールへ戻るまで動く間にフェルト7を脱水するように配置されていてもよい(これらの更なる脱水装置は
図1に示されていない)。
【0023】
また、装置は、ドライシリンダとして作用し得るヒートロール14を備えている。適切には、ドライシリンダは、蒸気により内部から暖められるヤンキードライシリンダ(Yankee drying cylinder)であってもよい。ドライシリンダ14は、他の手段、例えば赤外線ヒータ、ホットオイルあるいは誘導加熱(不図示)によって暖められてもよい。ドライシリンダ14は、延伸ニップロール12(
図3参照)と共に転移ニップTNを形成するよう配置されている。本発明によれば、
図3にも示されているように、延伸ニップロール12は、ループを形成する可撓性ジャケット17と、可撓性ジャケット17のループ内の支持本体18と、を有している。好ましくは、支持本体18は、内部空洞を持つ可撓性支持本体であってもよい。前記内部空洞は、支持本体18を膨張させるように加圧流体で満たすことができる。装置の作動中に、テクスチャー部分15も含む可撓性ジャケット17の表面を清掃するための清掃装置16が、可撓性ジャケット17付近に設けられてもよい。
【0024】
図2に本発明の装置の一部が詳細に示されている。延伸ニップロール12は、テクスチャー部分15を有する可撓性ジャケット17を備えている。前記可撓性ジャケット17は、幅方向において延伸ニップロール12の外幅を取り巻いている。テクスチャー部分の三次元テクスチャー(乃至三次元構造)が、紙ウェブに作用して湿った繊維状紙ウェブに三次元構造を付与することができるように、延伸ニップロール12から紙ウェブに向けて外側に向けられている。
【0025】
図1及び
図2を参照すると、支持本体18は、ヒートロール14と協働して転移ニップTNを形成することができるように、ヒートロール14に対向して配置されていることが理解されるべきである。支持本体18が可撓性ジャケット17の内面に対して膨張乃至径方向外方に移動させられたときに、それにより、可撓性ジャケット17がヒートロール14に押圧されるようにして径方向外方に移動させられる、というような態様で、支持本体18はヒートロール14と協働する。
【0026】
好ましくは、延伸ニップロール12は、
図1−3に示されるように、更なる支持本体19を有している。可撓性ジャケット17が、カウンターロール13、及び、可撓性ジャケット17とカウンターロール13との間を動くフェルト7に対して押圧されるように、支持本体19が膨張乃至カウンターロール13に向けて径方向外方に移動させられたときに、
図1においてカウンターロール13に対向して配置された支持本体19は、カウンターロール13と協働して脱水ニップPNを形成することができることが理解されるべきである。
【0027】
可撓性ジャケット17及びテクスチャー部分15は、ある程度圧縮可能な材料からなってもよいことが理解されるべきである。使用される材料は、熱に敏感であってもよい。このことは、とりわけ可撓性ジャケット17がポリマー材料を含有する場合に該当する。好ましくは、可撓性ジャケット17は、ポリウレタンからなる、あるいは、ポリウレタン材料またはポリウレタンに類似する材料を含んでもよい。ただし、他の材料が適切な可能性もあり得ることが理解されるべきである。可撓性ジャケット17が押圧ニップを通過するときに可撓性ジャケット17の厚みが一時的に減少するように、可撓性ジャケット17は、ある程度弾性的に圧縮可能なことが好ましい。紙ウェブが脱水ニップPNを通過するときに、可撓性ジャケット17の圧縮により、紙ウェブがフェルト7の代わりに可撓性ジャケット17に付き従うことが容易になる。
【0028】
好ましくは、前記テクスチャー部分15は、可撓性ジャケット17の全外周の周りを延びる。ただし、前記テクスチャー部分15が可撓性ジャケット17の全外周の一部だけの周り、例えば全360°の代わりに外周の350°を覆う弧に沿って延びる実施の形態も想定される。幅方向において、テクスチャー部分は、可撓性ジャケット17の全長の主要な部分に沿って延びることが好ましい。テクスチャー部分15は、可撓性ジャケット17の外面の少なくとも60%、好ましくは前記外面の少なくとも80%、より好ましくは前記外面の実質的に全領域を覆うのが好ましい。幅方向における可撓性ジャケット17の長さは、幅方向における延伸ニップロールの長さと実質的に同じである。ゆえに、テクスチャー部分は、延伸ニップロール12の外側外面の全長を実質的に覆っている。
【0029】
テクスチャー部分15(すなわちストラクチャー構造を持つ部分)は、隆起部(ナックル)及び陥没部を有している。
【0030】
本発明の実施の形態において、テクスチャー部分15は、米国特許第6547924号明細書に記載されたテクスチャーベルトのように成形された表面を有してもよい。前記特許明細書には、規則的に分散された多数のくぼみと、多数のくぼみの間に配置された表面部分と、を規定するウェブ接触面を有する実質的に不透過性のテクスチャーベルトが記載されている。この実質的に不透過性のベルトは、ウェブ接触面のくぼみが厚い部分と薄い部分とを持つ対応するテクスチャーパターンを紙ウェブに当初成形するよう、押圧部を紙ウェブとともに通過するように手配されている。ウェブ接触面は、複数のくぼみと、複数のくぼみの間に位置する表面部分と、をもつ構造を有してもよい。表面部分は、アーチ状または凸状の形状を有してもよい。アーチ状または凸状の表面部分は、一方向且つ同一方向に延びる繊維状筋により形成された複数のナックルを有してもよい。前記ナックルは、25−150個のナックル/cm2内で規則的に分散されている。本発明の可撓性ジャケットのテクスチャー部分は、そのように設計されてもよい。
【0031】
可撓性ジャケット17のナックル(隆起部分)は、規則的に分散されておらず、不規則的な態様で分散される実施の形態が想定され得る。
【0032】
好ましくは、可撓性ジャケット17のナックル(または他の隆起表面)は、流れ方向に指向されてもよい。
【0033】
本発明による実施の形態において、テクスチャー部分は、単位平方センチメートル当り、25個よりも少ない数のナックルまたは他の隆起表面を有していてもよい。例えば、テクスチャー部分は、単位平方センチメートル当り10−24個のナックルを有することができる。ただし、単位平方センチメートル当りより少ないナックルは、紙ウェブに三次元構造を付与する可撓性ジャケットの能力がより小さいなる、という結果になる。したがって、テクスチャー部分は、単位平方センチメートル当り少なくとも25個のナックルを有することが好ましい。
【0034】
本発明の可撓性ジャケット17は、可撓性ジャケットと支持本体との間の摩擦を減らすために、可撓性ジャケット内で利用される潤滑剤に対して不透過である必要がある。
【0035】
本発明の実施の形態において、テクスチャー部分15は、可撓性ジャケット17と一体の部品である。つまり、可撓性ジャケット17の円周外面の実質的全面にテクスチャーが付与されている。前記テクスチャーは、例えば可撓性ジャケット17の表面へのグラビア印刷またはエンボス加工によって付与されてもよい。代替的に、テクスチャー部分15は、可撓性ジャケット17に固定された別々の繊維によって形成されてもよい。
【0036】
テクスチャー部分15の構造は、例えば、米国特許第6547924号明細書に開示されたものと同じデザインであってもよい。可能性のある別のデザインの例が、米国特許第8002950号明細書に開示されている。ただし、本発明の範囲内である限り、テクスチャー部分15の構造は、前記例に限定されず、紙に別の三次元構造を形成するための他の可能性のあるデザインを有してもよいことが理解される。
【0037】
テクスチャー部分15によって、ティッシュペーパーに特に重要な特性を高めることができ、この結果、優れたかさ、強度及び吸収性を、ティッシュペーパーに提供することが可能である。紙ウェブが脱水ニップPN及び/または転移ニップTNを通過するときに、テクスチャー部分15の使用が紙ウェブに三次元構造を付与することによって紙ウェブのかさを向上/増してもよい。かさ増しの結果として、紙の吸収性が改善され、それはティッシュペーパーにとって極めて有益である。
【0038】
清掃装置16が、可撓性ジャケット17の外面の清掃にとって適切ないかなる種類の清掃装置であってもよい。例えば、清掃装置は、可撓性ジャケット17の表面にブラシをかけるよう手配されたブラシ、あるいは、表面を吹くために加圧空気をノズルを介して提供するための手段を有してもよい。他の代替手段は、可撓性ジャケット17の表面の全長に沿って不純物を取り上げるために適切に設計された1つまたは複数のノズルを有するある種の掃除機であってもよい。さらに別の代替手段は、適切なクリーニング液で清掃してもよく、この場合、例えば噴霧によってクリーニング液が加えられ、その後、不純物を含んだクリーニング液を適切に払って拭き取ったり、及び/または、不純物を含んだクリーニング液を吸引ノズルで吸い上げてもよい。本発明は、清掃装置の所定の選択に制限されず、多くの異なる種類の清掃装置が適しているであろう。最もよくあるのは、前記不純物は、紙ウェブから落とされたセルロース繊維を含むだけでなく、紙装置の周りからの異なる不純物を含むほこりである。清掃装置は、例えば、紙装置の適切な部分に固定して取り付けられることによって適切に配置される。ある実施の形態において、延伸ニップロール12を修理したり、磨耗した押圧部材を交換することができる必要性が生じた場合、可撓性ジャケット17及びそのテクスチャー部分15の付近から清掃装置16を動き去らせることができるように、清掃装置16が手配されているのが好ましい。
【0039】
通常、延伸ニップロールは、凹シューのような1つだけの支持本体を有する。しかしながら、本発明の延伸ニップロール12は、可撓性ジャケット17のループ内に2つの支持本体18、19を好ましく有する。
図3によりはっきりと示されているように、延伸ニップロール12は、2つの支持本体18、19、好ましくは2つの可撓性支持本体を有してもよい。この場合、第1支持本体18は、ドライシリンダ14に対して作用するように配置され、第2支持本体19は、延伸ニップロールに対するカウンターロール13に対して作用するように配置される。各支持本体18、19は、径方向外方に可撓性ジャケット17を押圧するようにさせられることも可能である。支持本体18が可撓性である場合、このことは、各支持本体18、19が少なくともいくらかはドライシリンダ14や延伸ニップロールに対するカウンターロール13のような対向する要素の輪郭に従うような形状を採ることができることを意味するものとして、理解されるべきである。延伸ニップロール13に対するカウンターロールは、メッツォぺーパ社(Metso Paper)製のシムロール(Sym Roll)のような偏心制御ロール(偏心補償ロール)が適している。本発明の有利な実施の形態において、延伸ニップロールに対するカウンターロール13に、溝(不図示)が設けられていてもよい。このような状況での溝加工されたロールの使用は、脱水を改善する。他の実施の形態では、延伸ニップロールに対するカウンターロール13は、平滑な表面をもつ押圧ロールであってもよい。平滑な表面をもつ押圧ロールの一例として、例えばカバーをもつロール、例えばゴムまたはゴムと類似の特性をもつ材料からなるカバーのようなエラストマーカバーをもつロールが挙げられる。カバーは、セラミックカバーであってもよい。カウンターロール13は、カバーのないロールであってもよい。また、ある実施の形態において、カウンターロール13に、テクスチャー表面構造が付与されていてもよい。前記カウンターロール13のテクスチャー表面は、さらに溝が設けられたものであることも可能である。
【0040】
延伸ニップロール12及び可撓性支持本体18は(さらに選択的に第二支持本体19も)、例えば米国特許第7527708号明細書に示された態様で設計され得る。前記明細書の開示は、参照としてここに組み込まれる。
図3からわかるように、可撓性支持本体18は、可撓性ジャケット17のループ内に配置される。可撓性ジャケット17は、例えばポリウレタンまたはポリウレタンと類似の特性をもつ材料から全体的にまたは部分的になってもよい。可撓性ジャケット17は、このようにポリウレタンを含む場合だけでなく、テクスチャー加工されるのに適した他の成分からなってもよい。可撓性支持本体18は、内部空洞をもつ可撓性ホースとして記載され得る本体からなる、あるいは当該本体を含んでもよい。可撓性ホースは、米国特許第7527708号に開示されたように、内部空洞に接続された加圧流体源から内部空洞に流される加圧流体によって内方から加圧され得る。流体源は、制御装置により制御され得る。例えば、制御装置はコンピュータであってもよい。支持本体18、19は、同じ流体源に接続され得る。各可撓性支持本体18、19は、各々の加圧流体源に接続され得ることが理解されるべきである。可撓性支持本体18は、ホルダの流路(不図示)に配置され得る。可撓性支持本体18は、その軸方向端部で封止され得ることが理解されるべきである。可撓性支持本体18が弾性的に変形可能となるよう、可撓性支持本体18の全部または少なくとも一部がエラストマー材料からなるように、可撓性支持本体18がエラストマー材料からなるのが好ましい。例えば、支持本体18は、ポリマー場合によっては強化ポリマ−のようなゴム材料またはプラスチックからなってもよい。流体が内部空洞に流入する場合、可撓性支持本体18が径方向外方に膨張する。可撓性ジャケット17は可撓性支持本体18を超えて動くことが理解されるべきである。可撓性支持本体18が径方向外方に膨張する場合、可撓性支持本体18が可撓性ジャケット17を押圧し、その結果、可撓性ジャケット17も外方に押圧されるであろう。
上述のように内部空洞を有する可撓性支持本体18は、幅方向にも延びることが理解されるべきである。
【0041】
可撓性支持本体18は、米国特許第7527708号明細書のように必ずしも成形されなければならないわけではない。別の種類の可撓性支持本体の配列が、欧州特許2085513B1号明細書に示されている。そのような配列は、本発明においても利用されてもよい。そのような実施の形態において、可撓性支持本体18は、凹面をもつ薄いシューである。凹面は、ロールのような凸反対要素(対向要素)と共に協働して当該凸反対要素と共にニップを形成することができるように、外方に面している。可撓性支持本体を形成する薄いシューは、例えばアルミニウムからなってもよい。前記薄いシューは、当該シューがカウンターロール(例えばヤンキードライシリンダのような)の輪郭にほぼ適用することを許容するほど十分に薄くてもよい。薄いシューは、1つ、2つまたはそれ以上の可撓性ホースにより支持される。可撓性ホースは、エラストマー材料または可撓性のみでありエラストマーでない材料からなることができる。1つまたは複数の可撓性ホースが、幅方向に延び、
図2及び
図3を参照して記載されたものと同じ態様で加圧流体源に接続される。ある実施の形態において、さらに薄いシート及び多数の別々の中間部品が、可撓性支持本体18と(複数の)可撓性ホースとの間に選択的に配置されてもよい。前記薄いシートは、中間部品から可撓性ホースを保護するように機能してもよい。中間部品は、径方向(すなわち実質的に押圧面)において互いに対して移動する能力をもつことが可能である。
したがって、可撓性支持本体18は、ヤンキードライシリンダ14のようなカウンター要素の形状により容易に適用することができる。可撓性ホースが加圧流体で満たされている場合、このことは(複数の)可撓性ホースを膨張させ、これにより、可撓性支持本体18を可撓性ジャケット17の内面に対して外方に移動させ、この結果、可撓性ジャケット17が径方向外方に押圧される。
【0042】
可撓性支持本体18は、少なくとも1つの可撓性ホースを有する、あるいは、可撓性ホースによって支持されるものとして記載されてもよい。この少なくとも1つの可撓性ホースへの加圧が可撓性支持本体18を膨張させるか、あるいは、径方向外方に移動させるように、当該少なくとも1つの可撓性ホースが加圧流体源に接続され、幅方向外方に延びる。
【0043】
可撓性支持本体がどのように設計され配置されたかによらず、延伸ニップロールは、可撓性ジャケット17の内面に潤滑液(例えばオイル)を供給するための内部潤滑装置を有し、この結果、可撓性支持本体18(または支持要素18)と可撓性ジャケット17の内面との間に、潤滑液の薄い膜がなされてもよい。これにより、可撓性ジャケット17と可撓性支持本体との間の摩擦が低減されるであろう。延伸ニップ押圧部に潤滑剤を供給するための種々の装置が当業者に知られている。
【0044】
さらに、第1支持本体18は、可撓性ジャケット17をドライシリンダ14に向けて押圧することができるよう、ドライシリンダ14の反対側に配置されている。ゆえに、可撓性支持本体18は、転移ニップTNを閉鎖可能である。
【0045】
可撓性支持本体をもつ延伸ニップロール12の代わりに、延伸ニップロール12の(複数の)支持要素が、実質的に剛体の1つまたは複数の従来の凹シューを有することが可能であることが理解されるべきである。また、延伸ニップロール12は、1つの可撓性支持要素を有する一方で、他の支持要素が窪んで且つカウンターロール(例えばヤンキーシリンダ)に面する外輪郭をもつ剛体シューであることも可能である。
【0046】
図3から理解されるように、ドクターブレード27は、ドライシリンダ14から紙ウェブWにクレーピング加工を施すように配置されている。転移ニップにおける可撓性支持本体の利用は、紙ウェブのかさを向上させる驚くべき効果をもつことを発明者が見出した。
かさはたいていティッシュペーパにとって望まれる特性であるため、このことは大きく実用的な価値がある。理論に拘束されることを望むことなく、可撓性支持本体の利用により、紙ウェブがドライシリンダの表面により強力に接着させられることを、発明者は確信している。ドクターブレード27によるそれに続くクレーピング操作は、かさが増加させられるように紙ウェブに大きな効果をもつであろう。
【0047】
また、可撓性ジャケット17のループ内に、延伸ニップロール12が第二可撓性支持本体19を有することが、
図3からさらに理解され得る。第二可撓性支持本体19は、延伸ニップロール13に対するカウンターロールに対向して配置され、延伸ニップロール13に対するカウンターロールと共に協働して脱水ニップPNを形成する。
【0048】
また、第二可撓性支持本体19の代わりに、従来のシュープレスにおけるような実質的に剛体の凹シューが、脱水ニップPNのために利用されてもよい。延伸ニップロール13に対するカウンターロールは、溝をもつロールであってもよい。例えば、延伸ニップロール13に対するカウンターロールは、吸い込みロールや偏心補償ロールであってもよい。
【0049】
可撓性支持要素の代わりに剛体凹シューが利用された場合、剛体凹シューを径方向外方に押圧させて、可撓性ジャケット17が転移ニップTNや脱水ニップPNのようなニップを閉じるようにシューにより外方に押圧される、油圧シリンダのような手段が延伸ニップロールに設けられるであろう。油圧シリンダは、幅方向に延び且つ可撓性ジャケット17により囲まれた支持はり上に配置されてもよい。シューがカウンターロールの凸面と協働してニップを形成するよう、シューの凹面が径方向外方に向くであろう。
【0050】
支持本体18、19が可撓性支持本体18、19である場合、可撓性支持本体を径方向外方に押圧させる手段は、支持本体内の内部空洞付近に形成されてもよい。前記内部空洞は、加圧流体で満たされ、可撓性支持本体が可撓性ジャケット17の内面に対して径方向外方に膨張して、これにより可撓性ジャケット17がヤンキーシリンダやカウンターロール13のようなカウンター要素に対して外方に押圧されるようにすることも可能である。
【0051】
支持本体18、19が可撓性支持本体18、19である場合、可撓性支持本体を径方向外方に押圧させる手段は、例えば、欧州特許2085513B1号明細書に開示されたように、支持本体が載置される1つまたは複数の可撓性ホースにより形成されてもよい。
【0052】
好ましくは、延伸ニップロール12は、包囲ロールであり、当該包囲ロールにおいて、可撓性ジャケット17の軸方向端部が、例えば米国特許第5098523号明細書、または米国特許第4625376号明細書に開示された態様で、締結手段を利用して端壁に締結される。可撓性ジャケット17が膨張し、内部から加圧下となるように、可撓性ジャケット17内の内部空間に加圧空気乃至ガスが供給されるように選択的に手配されることも可能である。また、延伸ニップロール12には、1つ/複数の支持本体にきれいな潤滑液(例えばオイル)を絶えず供給するための手段、並びに、使用した潤滑油を取り除くための手段が設けられてもよい。
【0053】
選択的に、可撓性ジャケットがヤンキーシリンダのようなあるカウンタ要素に接触するようになる前に可撓性ジャケットを駆動するための手段が、延伸ニップロール12に設けられてもよい。可撓性ジャケットを駆動させるそのような手段は、米国特許第6189442号明細書に開示されており、本発明による延伸ニップロールのために利用され得る。
そのような機器は、熱から可撓性ジャケット17を保護することができる。
【0054】
脱水ニップPNが可撓性支持本体19によって形成された場合、適切には、脱水ニップPNは、100kN/m−600kN/mの範囲内での線圧で且つ6MPaのピーク圧力で作動されてもよい。発明者により検討されたある実施の形態において、可撓性支持本体により形成された脱水ニップPNは、125mm−140mmのニップ長及び150kN/mの線圧を有してもよい。
【0055】
脱水ニップが剛体シュー(対向する押圧部材に面する凹面を有し得る従来の金属シュー)で形成された場合、そのような剛体シューの流れ方向長さは、50mm−150mmの範囲にある一方で、その場合、脱水ニップの線圧は、200kN/m−1000kN/mの範囲、好ましくは300kN/m−1000kN/mの範囲内にあってもよい。多くの実際的な実施の形態において、剛体凹シューが脱水ニップPNで利用される場合、線圧は、400kN/m−600kN/mの範囲内にあり得る。このことは、製造された紙のかさの不必要な減少を引き起こすことなく十分な脱水をもたらす。
【0056】
転移ニップTNは、例えば50kN/m−100kN/mの範囲内にある線圧で作動されてもよい。しかし、高い線圧はウェブWをドライシリンダ14の表面に強く接着させ得るため、転移ニップTNにおけるより高い線圧(及び高い圧力レベル)は、かさを向上させる利益を実際的に有する場合がある。転移ニップTNにある可撓性支持本体18が内部空洞をもつ可撓性ホースにより形成される場合、流れ方向における転移ニップTNの長さは、適切には30mm−100mmの範囲にあり、好ましくは30mm−80mmの範囲にあってもよい。この範囲内の長さは、利用される構成要素の不要に大きな寸法を避けながら、ドライシリンダへのウェブの良好な接着を成し遂げることに対して有益である、と本発明者は確信している。転移ニップTNにおける適切な最も高い圧力は、1MPa− 3MPaの範囲内であり得る。本発明者によって検討された或る実施の形態において、転移ニップTNにおける最も高い圧力は、2MPaまたは約2MPaであり得る。一方で、より高いピーク圧力はドライシリンダ14の表面へのウェブのより良好な接着をもたらし得ると、本発明者は確信している。したがって、6MPaまでのピーク圧力は試されてもよく、場合によってはより高いピーク圧力であってもよい。
【0057】
ある場合において、転移ニップTNのために利用される可撓性支持本体18は、80mmよりも長いニップ長を有する場合もある。そのような実施の形態において、可撓性支持本体18は、 米国特許第7527708号明細書に開示された(そのような実施の形態は米国特許第7527708号明細書の
図12に示されている)ようにそれぞれ加圧され得るいくつかの水路を有してもよい。そのような実施の形態において、転移ニップTNにおけるニップ長は、50−150mmの範囲内であり得る。そのような比較的長い転移ニップに対する線圧はより高くなされ得る。
【0058】
延伸ニップロール12においてテクスチャー加工された可撓性ジャケット17を利用することで、別個のテクスチャーベルトが必要とされない。
【0059】
また、成形部及び脱水ニップPNにおいて同じフェルトを利用することで、構成要素の数を減らすことが可能となる。
【0060】
ただし、成形部で利用されるフェルトは脱水ニップで利用されるフェルトと同一である必要はないことが理解されるべきである。
【0061】
延伸ニップロール12は、作動位置(不図示)を規定する機械的停止部から離れたり、当該停止位置に向かうように可動であってもよい。そのような機械的停止部は、装置の両側(すなわち保守側及び駆動側の両方)に配置され、ベアリングハウジングが1つまたは複数の機械的停止部に到達したときに、延伸ニップロールのベアリングハウジングとともに協働し、延伸ニップロールの作動位置への動きが停止するように配置されてもよい。
【0062】
そのような1つまたは複数の機械的停止部の利用は、延伸ニップロールの可動位置がその作動位置に向かって及びその作動位置から可動である場合であっても明確に規定される、という利点をもたらす。可撓性支持本体18が作動する前に、延伸ニップロール12がドライシリンダ14付近の明確に規定された位置に運ばれたとき、ニップが適切に閉鎖される前に支持本体18の可撓性ホースにおける圧力があまりにも高くなる、というリスクが避けられ得る。
【0063】
延伸ニップロールは可動ではないがその代わりに決まった位置に固定する実施の形態が想定されることが理解されるべきである。
【0064】
転移ニップTNにおいて可撓性支持本体18を利用することは、紙ウェブのかさを改善する利益をもたらす。
【0065】
本発明の方法がここに記載されていく。成形部において、素材が成形繊維5とフェルト7との間の隙間にヘッドボックス3から射出されたとき、初期の紙ウェブが成形される。
図1に示される実施の形態において、新たに成形された紙ウェブがフェルト7上で延伸ニップロール12とカウンターロール13との間に形成された脱水ニップPNを通過させられる。
図1の実施の形態において、フェルト7は、そのループ内で走行するように「時計まわり」に移動することが理解されるべきである。脱水ニップPNにおいて、水分が紙ウェブから押し出され、これにより、紙ウェブWの乾燥度合いが向上する。好ましい状態において、ウェブの乾燥度合いは、脱水ニップPN後に50%を超える場合もある。走行する紙ウェブWが脱水ニップPNから出るとき、紙ウェブはフェルト7を離れ、代わりに、延伸ニップロール12により案内される。より正確には、紙ウェブWは、延伸ニップロール12の可撓性ジャケット17の外面に追従する。紙ウェブは可撓性ジャケット17の外面に追従し転移ニップTNに向かう。転移ニップTNにおいて、走行する紙ウェブWは延伸ニップロール12からヒートロール(ドライシリンダ)14に移される。脱水ニップPNに入ったときに、紙ウェブWは、延伸ニップロール12の可撓性ジャケット17の外面に設けられたテクスチャー部分15に接触するようになる。これは、紙ウェブWの三次元構造の成形の初めの地点となる。第二ニップつまり転移ニップTNにおいて、紙ウェブWの三次元構造は、可撓性ジャケット17の外面上のテクスチャー部分15によってさらに向上させられる。紙ウェブが延伸ニップロールからヒートロール14に移されるときに、紙ウェブはその最終的な三次元構造を受ける。ヒートロール14は、通常、ヤンキードライシリンダのようなドライシリンダである。ウェブを可撓性ジャケット17の外面からヒートロール14の外面に移させる平滑外面をヒートロール14が有している(ウェブは最も平滑な表面に従い、ヒートロールの表面は可撓性ジャケット17の表面よりも平滑である)。紙ウェブが高い乾燥度合いまで乾燥されるように、ヒートロール14上でウェブ中の水分が熱により蒸発させられる。ウェブがヒートロール14の平滑外面に従うので、紙ウェブはドクターブレード27まで運ばれる。そこで、紙ウェブはヒートロールの表面からドクターブレード27によってクレーピング加工される。その後、紙ウェブは巻取装置まで移動させられてもよい。紙製造処理が完了したときつまり乾燥工程後、製造された紙に、なんらかの後処理工程において更なる追加構造が付与されてもよい。
【0066】
全ての実施の形態において、適切な流れ速度は2200m/分であり得る。例えば、流れ速度は、1000m/分−2200m/分の範囲内であり得る。通常は、生産高を維持する必要性に加えてニップで脱水するための適切な滞在時間をウェブに与えるべく、適切な流れ速度は、約1500m/分−2200m/分であってもよい。しかしながら、生産性の理由のために、さらに高い速度で装置を動かすことが望まれる場合もある。一般に言えば、紙製造装置の分野における技術の発展は、流れ速度をさらに速める結果となる傾向にある。したがって、本発明の装置構想は、あるときに例えば2500m/分、3000m/分またはより高い速度で利用され得ることを想定することが可能である。
【0067】
多くの実際的な実施の形態において、装置の幅は、2−8mの範囲にあり得る。例えば、装置の幅は、3.5−7mの範囲であってもよい。ただし、8mを超える幅の装置も想定可能である(例えば10m以上の幅までの装置)。2mよりも狭い幅の装置もまた想定され得る。本製造過程で利用されるパルプは、例えば化学パルプである。消費者の需要に応じて、バージンパルプやリサイクルパルプが利用されてもよい。バージンパルプは、人間の肌に接触して利用されたり、調理場で利用されることが意図された紙製品にとって好ましい。本発明に関して利用されるバージンパルプは、広葉樹繊維、針葉樹繊維または針葉樹繊維と広葉樹繊維との混合材料に基づいてもよい。パルプに利用される広葉樹繊維は、例えば、ユーカリ繊維やアカシア繊維またはこれらの混合材料を含み得る。
【0068】
典型的には、ドライシリンダの下流に巻取装置が配置され得る。巻取装置は、例えば米国特許第5901918号明細書や米国特許第5875990号明細書に示された種類のような任意の既知の種類であってもよい。
【0069】
本発明による装置において、ドライシリンダと巻取装置との間の領域には、例えば米国特許第6176898号明細書によるほこりを集めるための機器が選択的に設けられてもよい。例えば米国特許第5738760号明細書に開示されたような、ドライシリンダと巻取装置との間の領域でウェブを支持するための手段が、本発明の装置に選択的に設けられてもよい。
【0070】
ヤンキーシリンダが利用される場合、メッツォペーパー社(Metso Paper)から提供されたアドバンテージエアキャップヤンキーフード(Advantage(登録商標) AirCap(登録商標) Yankee hood)のようなヤンキーフード(Yankee hood)が選択的に設けられてもよい。
【0071】
図1に示されるように、選択的に蒸気ボックス28が、延伸ニップロール12上流の地点でフェルト7に隣接して配置されてもよい。蒸気ボックス28を利用することで、ヒートロール14に到達する前に既に紙ウェブの脱水が改善され、55重量%までの乾燥度合い(レベル)またはさらに高い乾燥度合いが、紙ウェブがヒートロール14に到達する前に達成される。
【0072】
ヒートロールの表面温度は、種々の前提条件及び作動状態に応じて変化し得る。しかし、多くの実用的な実施の形態において、ヒートロール14の表面温度は、85℃−125℃または90℃−110℃の範囲となり得る。例えば、前記表面温度は、90℃−100℃の範囲であってもよい。このように、本発明の方法は、ヒートロール14を加熱する工程、好ましくはヒートロール14の表面温度が85℃−125℃の範囲内の度合いに到達する程度までヒートロール14を加熱する工程を含むものとして記載され得る。
【0073】
本発明は、紙製造装置、ティッシュペーパを製造する方法及び延伸ニップロールの観点から、上記のように記載されたが、これらの表現は、1つ且つ同一の発明の異なる局面を反映しているにすぎないことが理解されるべきである。上述のように、本発明による延伸ニップロールは、本発明による装置及び本発明による方法で利用される。上述のように、本発明による方法は、装置及び延伸ニップロールを利用する(操作する)必然的な因果関係となる工程を、この工程について言及されたかどうかに関わらず含み得る。
【0074】
上述した発明は、テクスチャー部分が設けられた外面を有する可撓性ジャケットを備えるものとして記載されたが、可撓性ジャケットの外面(すなわちウェブ接触面)がテクスチャー部分を有さず平滑になっている装置及び方法が想定される。この外面にテクスチャー加工が施される代わりに当該外面が平滑である場合、可撓性ベルトは、紙ウェブに三次元構造を付与しないであろう。しかしながら、可撓性ジャケットが紙ウェブをヒートロールに効果的に移し換えることができるため、そのような装置及び方法はそれでもなお有利であり得る。延伸ニップロール12は、平滑な外面をもつ可撓性ジャケット17を有してもよい。可撓性ジャケットがニップを通過するときに圧縮され、ニップの通過後再び厚みを増加させることができるように、可撓性ジャケット17はある程度弾性的に圧縮可能であってもよい。平滑な外面をもつ可撓性ベルト17をもつ延伸ニップロールを利用するそのような装置は、テクスチャー加工された外面をもつ可撓性ベルトを利用する上述した装置とその他の点で同一であってもよい。