(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長尺状の樹脂フィルムと該樹脂フィルムの一方の面に設けられた粘着剤層と該粘着剤層に剥離可能に仮着された長尺状のセパレーターとを有する長尺状の積層体を準備すること、および、
該積層体の長尺方向および/または幅方向に所定の間隔で、該樹脂フィルム、該粘着剤層および該セパレーターを一体に貫通する貫通孔を形成すること、
を含み、
該積層体の樹脂フィルム側に当て材を当てた状態で、該セパレーター表面から該当て材の途中にかけて切り込んで該貫通孔を形成し、
該当て材が長尺状である、
粘着フィルムの製造方法。
前記積層体のセパレーター側から切断して、前記セパレーター、前記粘着剤層および前記樹脂フィルムを一体に貫通する前記貫通孔を形成する、請求項1から7のいずれかに記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
本発明の実施形態による粘着フィルムの製造方法は、長尺状の樹脂フィルムと該樹脂フィルムの一方の面に設けられた粘着剤層とを有する長尺状の積層体を準備すること、および、該積層体の長尺方向および/または幅方向に所定の間隔で、該樹脂フィルムおよび該粘着剤層を一体に貫通する貫通孔を形成することを含む。以下、具体的に説明する。
【0010】
A.樹脂フィルム/粘着剤層の積層体
本発明の製造方法においては、最初に、長尺状の樹脂フィルムと該樹脂フィルムの一方の面に設けられた粘着剤層とを有する長尺状の積層体を準備する。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。
【0011】
樹脂フィルムは、得られる粘着フィルムの基材として機能し得る。樹脂フィルムは、硬度(例えば、弾性率)が高いフィルムが好ましい。搬送および/または貼り合わせ時の貫通孔の変形が防止され得るからである。樹脂フィルムの形成材料としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。好ましくは、エステル系樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂)である。このような材料であれば、弾性率が十分に高く、搬送および/または貼り合わせ時に張力をかけても貫通孔の変形が生じにくいという利点がある。
【0012】
樹脂フィルムの厚みは、代表的には20μm〜250μmであり、好ましくは30μm〜150μmである。このような厚みであれば、搬送および/または貼り合わせ時に張力をかけても貫通孔の変形が生じにくいという利点を有する。
【0013】
樹脂フィルムの弾性率は、好ましくは2.2kN/mm
2〜4.8kN/mm
2である。樹脂フィルムの弾性率がこのような範囲であれば、搬送および/または貼り合わせ時に張力をかけても貫通孔の変形が生じにくいという利点を有する。なお、弾性率は、JIS K 6781に準拠して測定される。
【0014】
樹脂フィルムの引張伸度は、好ましくは90%〜170%である。樹脂フィルムの引張伸度がこのような範囲であれば、搬送中に破断しにくいという利点を有する。なお、引張伸度は、JIS K 6781に準拠して測定される。
【0015】
粘着剤層としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な粘着剤層が採用され得る。粘着剤のベース樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂が挙げられる。耐薬品性、浸漬時における処理液の浸入を防止するための密着性、被着体への自由度等の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。粘着剤に含まれ得る架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物が挙げられる。粘着剤は、例えばシランカップリング剤を含んでいてもよい。粘着剤の配合処方は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0016】
粘着剤層は、任意の適切な方法により形成され得る。具体例としては、樹脂フィルム上に粘着剤溶液を塗布し乾燥する方法、セパレーター上に粘着剤層を形成し当該粘着剤層を樹脂フィルムに転写する方法等が挙げられる。塗布法としては、例えば、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法が挙げられる。
【0017】
粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜60μmであり、より好ましくは3μm〜30μmである。厚みが薄すぎると、粘着性が不十分となり、粘着界面に気泡等が入り込む場合がある。厚みが厚すぎると、粘着剤がはみ出すなどの不具合が生じやすくなる。
【0018】
1つの実施形態においては、樹脂フィルム/粘着剤層の積層体は、当該粘着剤層に剥離可能に仮着された長尺状のセパレーターをさらに有し得る。セパレーターは、実用に供するまで粘着フィルム(粘着剤層)を保護する保護材としての機能を有する。また、セパレーターを用いることにより、粘着フィルムを良好にロール状に巻き取ることができる。セパレーターとしては、例えば、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン)フィルム、不織布または紙などが挙げられる。セパレーターの厚みは、目的に応じて任意の適切な厚みを採用することができる。セパレーターの厚みは、例えば10μm〜100μmである。セパレーターは、樹脂フィルム/粘着剤層の積層体に積層してもよく、セパレーター上に粘着剤層を形成し、セパレーター/粘着剤の積層体を樹脂フィルムに積層してもよい。
【0019】
B.貫通孔の形成
次に、上記の樹脂フィルム/粘着剤層(/必要に応じてセパレーター)の積層体に貫通孔を形成する。貫通孔は、樹脂フィルムおよび粘着剤層(および、存在する場合にはセパレーター)を一体に貫通する。貫通孔は、例えば、積層体の切断または積層体の所定部分の除去(例えば、レーザーアブレーションまたは化学的溶解)により形成され得る。切断方法としては、例えば、トムソン刃、ピクナル刃等の切断刃(打抜き型)、ウォータージェット等を用いて機械的に切断する方法、レーザー光を照射して切断する方法が挙げられる。
【0020】
切断刃による切断は、任意の適切な様式により行われ得る。例えば、複数の切断刃を所定のパターンで配置した打抜装置を用いて行ってもよく、XYプロッターのような装置を用いて切断刃を移動させて行ってもよい。このように、切断刃を積層体の所定の位置に対応するよう移動して切断できるので、積層体の所望の位置に高精度で貫通孔を形成することができる。1つの実施形態においては、切断刃による切断は、長尺状の積層体をロール搬送しながら、当該搬送と適切に連動して行われ得る。より詳細には、切断のタイミングおよび/または切断刃の移動速度を積層体の搬送速度を考慮して適切に調整することにより、積層体の所望の位置に貫通孔を形成することができる。なお、上記打抜装置は、レシプロ方式(平打ち)であってもよいし、ロータリー方式(回転)であってもよい。
【0021】
切断に用いられるレーザーとしては、上記積層体を切断し得る限り、任意の適切なレーザーが採用され得る。好ましくは、193nm〜10.6μmの範囲内の波長の光を放射し得るレーザーが用いられる。具体例としては、CO
2レーザー、エキシマレーザー等の気体レーザー;YAGレーザー等の固体レーザー;半導体レーザーが挙げられる。好ましくは、CO
2レーザーが用いられる。切断の際、レーザー光の照射条件は、例えば、用いるレーザーに応じて、任意の適切な条件に設定され得る。出力条件は、CO
2レーザーを用いる場合、例えば0.1W〜250Wである。
【0022】
上記レーザーアブレーションは任意の適切な様式により行われる。レーザーアブレーションに用いられるレーザーとしては、任意の適切なレーザーを採用し得る。具体例としては、上記切断の際に用いられるレーザーと同様のレーザーが挙げられる。レーザーアブレーションの際、レーザー光の照射条件(出力条件、移動速度、回数)は、粘着フィルム(実質的には、樹脂フィルムおよび粘着剤層)の形成材料、粘着フィルムの厚み、貫通孔の平面視形状、貫通孔の面積等に応じて任意の適切な条件を採用し得る。
【0023】
積層体を切断する際、積層体の片側には当て材を当てることが好ましい。具体的には、切断方向終端側の積層体表面に当て材を当てる。当て材を用いることで、切断後に積層体から当て材を剥離する際、穿孔カスも同時に除去し得る。具体的には、穿孔カスが当て材に付着した状態で、当て材を積層体から剥離し得る。その結果、積層体に貫通孔を複数個形成する場合、生産性が格段に向上し得る。また、当て材を用いることで、切断による積層体の変形を抑制することができる。例えば、切断刃で切断する場合、特に粘着剤層の変形を抑制することができる。
【0024】
好ましい実施形態においては、積層体表面から当て材の途中まで切り込んで、上記貫通孔を形成する。このような形態によれば、上記樹脂フィルムおよび粘着剤層(および、存在する場合にはセパレーター)を一体に貫通する貫通孔を良好に形成することができる。また、当て材を積層体から剥離する際に、穿孔カスを良好に除去し得る。
【0025】
上記当て材としては、好ましくは、高分子フィルムが用いられる。高分子フィルムとしては、上記樹脂フィルムと同様のフィルムが用いられ得る。さらに、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)フィルムのような柔らかい(例えば、弾性率が低い)フィルムも用いることができる。1つの実施形態においては、高分子フィルムとして、硬度(例えば、弾性率)が高いフィルムが好ましく用いられる。切断による積層体の変形を良好に抑制し得るからである。高分子フィルムの厚みは、好ましくは20μm〜100μmである。
【0026】
好ましくは、当て材は、積層体に粘着剤で貼り合わされる。当て材を積層体に貼り合わせることにより、切断の際に当て材がずれる等の不具合を防止することができる。また、当て材を積層体から剥離する際に、穿孔カスを良好に除去し得る。当て材を貼り合わせる粘着剤としては、切断後に積層体から当て材を剥離可能な粘着力を有する限り、任意の適切な粘着剤が用いられ得る。1つの実施形態においては、予め、当て材には粘着剤層が形成されている。当て材に形成された粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜50μmである。
【0027】
1つの実施形態においては、当て材の形状を積層体の形状に対応させることが好ましい。例えば、長尺状の積層体に対して、長尺状の当て材が用いられる。このような形状によれば、当て材を積層体から剥離する際に、穿孔カスを良好に除去し得る。また、積層体に貫通孔を複数個形成する場合、穿孔カスを連続的に除去することができ、生産性が格段に向上し得る。
【0028】
貫通孔の形成に際し、積層体のセパレーター側から切断することが好ましい。セパレーター側から切断することで、切断により得られる粘着フィルムの貼り合せに及ぼす影響を抑えることができる。具体的には、切断刃で切断する場合、積層体の粘着剤層が切断刃に追従して変形し得る。樹脂フィルム側から切断すると、得られる粘着フィルムの粘着面側に粘着剤層が膨らんで、貫通孔の周縁に膨出部が形成されるおそれがある。その結果、得られる粘着フィルムを被着体に貼り合わせると貫通孔の周辺に気泡が発生し得る。一方、セパレーター側から切断すると、切断刃に追従して粘着剤層は変形し得るが、得られる粘着フィルムの貫通孔の粘着面側の周縁は滑らかな状態(例えば、円弧面)で、被着体に貼り合わせても気泡の発生は防止され得る。また、セパレーター側から切断することで、当て材を用いた場合、切断後に積層体から当て材を剥離する際に、穿孔カスを良好に除去し得る。例えば、穿孔カスの一部(代表的には、セパレーター部分)のみが除去されるという不具合を防止することができる。
【0029】
貫通孔の配置パターン(形成パターン)は、目的に応じて適切に設定され得る。
図1Aは、本発明の実施形態による製造方法により得られる粘着フィルムにおける貫通孔の配置パターンの一例を説明する概略平面図であり、
図1Bは、貫通孔の配置パターンの別の例を説明する概略平面図であり、
図1Cは、貫通孔の配置パターンのさらに別の例を説明する概略平面図である。例えば、貫通孔30は、
図1Aに示すように、得られた粘着フィルム100の長尺方向および幅方向のいずれにおいても実質的に等間隔で配置され得る。なお、「長尺方向および幅方向のいずれにおいても実質的に等間隔」とは、長尺方向の間隔が等間隔であり、かつ、幅方向の間隔が等間隔であることを意味し、長尺方向の間隔と幅方向の間隔とが等しい必要はない。例えば、長尺方向の間隔をL1とし、幅方向の間隔をL2としたとき、L1=L2でもよく、L1≠L2であってもよい。あるいは、貫通孔は、長尺方向に実質的に等間隔で配置され、かつ、幅方向に異なる間隔で配置されてもよく;長尺方向に異なる間隔で配置され、かつ、幅方向に実質的に等間隔で配置されてもよい(いずれも図示せず)。長尺方向または幅方向において貫通孔が異なる間隔で配置される場合、隣接する貫通孔の間隔はすべて異なっていてもよく、一部(特定の隣接する貫通孔の間隔)のみが異なっていてもよい。また、粘着フィルムの長尺方向に複数の領域を規定し、それぞれの領域ごとに長尺方向および/または幅方向における貫通孔の間隔を設定してもよい。
【0030】
また、貫通孔30は、1つの実施形態においては、
図1Aに示すように、長尺方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、長尺方向に対して実質的に平行であり、ならびに、幅方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、幅方向に対して実質的に平行であるように配置され得る。別の実施形態においては、貫通孔30は、
図1Bに示すように、長尺方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、長尺方向に対して実質的に平行であり、ならびに、幅方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、幅方向に対して所定の角度θ
Wを有するように配置される。さらに別の実施形態においては、貫通孔30は、
図1Cに示すように、長尺方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、長尺方向に対して所定の角度θ
Lを有し、ならびに、幅方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、幅方向に対して所定の角度θ
Wを有するように配置される。θ
Lおよび/またはθ
Wは、好ましくは0°を超えて±10°以下である。ここで、「±」は、基準方向(長尺方向または幅方向)に対して時計回りおよび反時計回りのいずれの方向も含むことを意味する。
図1Bおよび
図1Cに示す実施形態は、以下のような利点を有する:後述するように、本発明の製造方法により得られる粘着フィルムは、用途の1つとして、非偏光部を有する偏光子の製造に用いられ得る。本発明の製造方法により得られる粘着フィルムを用いることにより、長尺状の偏光子をロール搬送しながら所望のパターン(貫通孔の配置パターンに対応したパターン)で非偏光部を形成することができる。その結果、長尺状の偏光子の全体にわたって配置パターンを精密に制御して非偏光部を形成することができる。ここで、画像表示装置によっては表示特性を向上させるために偏光子の吸収軸を当該装置の長辺または短辺に対して最大で10°程度ずらして配置することを要求される場合がある。偏光子の吸収軸は長尺方向または幅方向に発現するので、
図1Bおよび
図1Cに示すようなパターンの粘着フィルムを用いて非偏光部を形成することにより、このような場合において、非偏光部と吸収軸との位置関係を長尺状の偏光子全体において統一的に制御でき、軸精度に優れた(したがって、光学特性に優れた)最終製品を得ることができる。したがって、裁断(例えば、長尺方向および/または幅方向への切断、打ち抜き)された枚葉の偏光子の吸収軸の方向を所望の角度に精密に制御することができ、かつ、偏光子ごとの吸収軸の方向のばらつきを顕著に抑制することができる。なお、貫通孔の配置パターンが図示例に限定されないことは言うまでもない。例えば、貫通孔30は、長尺方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、長尺方向に対して所定の角度θ
Lを有し、ならびに、幅方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、幅方向に対して実質的に平行であるように配置されてもよい。また、粘着フィルム100の長尺方向に複数の領域を規定し、それぞれの領域ごとにθ
Lおよび/またはθ
Wを設定してもよい。
【0031】
貫通孔の形成手段を適切に構成することにより、所望の配置パターンで貫通孔を形成することができる。打抜装置を用いる場合には、複数の切断刃を所定のパターンで配置することにより、切断刃の配置パターンに対応したパターンで貫通孔を形成することができる。XYプロッターのような装置を用いる場合には、プロッターに取り付けた切断刃をXY方向(二次元方向)に移動させながら打ち抜きを行うところ、XY方向の移動様式を制御することにより所望の配置パターンで貫通孔を形成することができる。レーザーアブレーションにより貫通孔を形成する場合には、XYプロッターの場合と同様に、レーザー光源の移動様式を制御することにより所望の配置パターンで貫通孔を形成することができる。化学的溶解を用いる場合には、所定のパターンの開口部を有するマスクを粘着フィルムの両側に積層した状態で処理液と接触させることにより、開口部の配置パターンに対応したパターンで貫通孔を形成することができる。
【0032】
貫通孔30の平面視形状は、目的に応じて任意の適切な形状が採用され得る。具体例としては、円形、楕円形、正方形、矩形、ひし形が挙げられる。貫通孔の形成手段を適切に構成することにより、所望の平面視形状を有する貫通孔を形成することができる。打抜装置またはXYプロッターのような装置を用いる場合には、切断刃の形状に対応した平面視形状の貫通孔を形成することができる。レーザーアブレーションにより貫通孔を形成する場合には、レーザーの走査様式を調整することにより、所望の平面視形状の貫通孔を形成することができる。化学的溶解を用いる場合には、マスクの開口部の形状に対応した平面視形状の貫通孔を形成することができる。
【0033】
以上のようにして、所定の配置パターンで貫通孔を有する長尺状の粘着フィルムが得られ得る。
【0034】
C.得られる粘着フィルムの用途
本発明の実施形態による製造方法により得られる粘着フィルムは、例えば、フィルム(代表的には、長尺状のフィルム)の所定の部分を選択的に処理する際の表面保護フィルムまたはマスクとして好適に用いられ得る。当該選択的な処理の具体例としては、脱色、着色、穿孔、現像、エッチング、パターニング(例えば、活性エネルギー線硬化型樹脂層の形成)、化学的変性、熱処理が挙げられる。このような粘着フィルムを用いることにより、ロール搬送しながらの連続的処理が可能となるので、各種の選択的な処理の処理効率を非常に高くすることができる。さらに、このような粘着フィルムを用いることにより、長尺状のフィルムの全体にわたって選択的に処理される部分を精密に制御して配置することができるので、当該長尺状のフィルムから所定サイズの最終製品を裁断した場合に、最終製品ごとの品質のばらつきを顕著に抑制することができる。1つの実施形態においては、この粘着フィルムは、非偏光部を有する偏光子(代表的には、長尺状の偏光子)の製造に用いられ得る。この粘着フィルムを当該用途に用いることにより、画像表示装置等の電子デバイスの多機能化および高機能化に適した偏光子の低コスト・高歩留り・高生産性での製造を実現し得る。以下、上記の選択的処理の代表例として、非偏光部を有する偏光子の製造について具体的に説明する。
【0035】
D.非偏光部を有する偏光子の製造
D−1.偏光子
非偏光部が形成され得る偏光子としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。偏光子は、代表的には樹脂フィルムで構成される。樹脂フィルムは、代表的には、二色性物質を含むポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)フィルムである。偏光子は、単一のフィルムであってもよく、樹脂基材上に形成された樹脂層(代表的には、PVA系樹脂層)であってもよい。樹脂基材と樹脂層との積層体は、例えば、上記樹脂フィルムの形成材料を含む塗布液を樹脂基材に塗布する方法、樹脂基材に樹脂フィルムを積層する方法等により得ることができる。
【0036】
上記二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で、または、二種以上組み合わせて用いられ得る。好ましくは、ヨウ素が用いられる。本発明の粘着フィルムを用いた化学処理による脱色により非偏光部を形成する場合に、樹脂フィルム(偏光子)に含まれるヨウ素錯体が適切に還元されるので、適切な特性を有する非偏光部を形成することができるからである。
【0037】
上記PVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%〜100モル%であり、好ましくは95.0モル%〜99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%〜99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子を得ることができる。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
【0038】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000〜10000であり、好ましくは1200〜4500、さらに好ましくは1500〜4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0039】
偏光子は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子(非偏光部を除く)の単体透過率(Ts)は、好ましくは39%以上、より好ましくは39.5%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは40.5%以上である。なお、単体透過率の理論上の上限は50%であり、実用的な上限は46%である。また、単体透過率(Ts)は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値であり、例えば、顕微分光システム(ラムダビジョン製、LVmicro)を用いて測定することができる。偏光子の偏光度は、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.93%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
【0040】
偏光子の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。厚みは、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm未満である。一方で、厚みは、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。このような厚みであれば、優れた耐久性と光学特性とを有する偏光子が得られ得る。また、厚みが薄いほど、非偏光部が良好に形成され得る。例えば化学処理による脱色により非偏光部を形成する場合に、処理液と樹脂フィルム(偏光子)との接触時間を短くすることができる。
【0041】
偏光子の吸収軸は、目的に応じて任意の適切な方向に設定され得る。吸収軸の方向は、例えば、長尺方向であってもよく幅方向であってもよい。長尺方向に吸収軸を有する偏光子は、製造効率に優れるという利点がある。幅方向に吸収軸を有する偏光子は、例えば長尺方向に遅相軸を有する位相差フィルムといわゆるロールトゥロールで積層できるという利点がある。
【0042】
偏光子は、任意の適切な方法により作製され得る。偏光子が単一のPVA系樹脂フィルムである場合には、偏光子は当業界で周知慣用されている方法により作製され得る。偏光子が樹脂基材上に形成されたPVA系樹脂層である場合には、偏光子は、例えば特開2012−73580号公報に記載の方法により作製され得る。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0043】
偏光子は、任意の適切な形態で後述の非偏光部の形成に供される。具体的には、非偏光部の形成に供される偏光子は、単一のPVA系樹脂フィルムであってもよく、樹脂基材/PVA系樹脂層の積層体であってもよく、PVA系樹脂フィルムまたはPVA系樹脂層の片側または両側に保護フィルムが配置された積層体(すなわち、偏光板)であってもよい。非偏光部の形成に供される偏光板は、画像表示装置に貼付可能となるように粘着剤層を有していてもよい。また、偏光板は、目的に応じて任意の適切な光学機能層をさらに有していてもよい。光学機能層の代表例としては、位相差フィルム(光学補償フィルム)、表面処理層が挙げられる。以下、一例として、偏光子/保護層の構成を有する偏光板の偏光子に非偏光部を形成する場合について説明する。
【0044】
D−2.非偏光部の形成
図2に示すように、偏光板200の偏光子側の面に、粘着フィルム100をロールトゥロールにより貼り合わせる。粘着フィルム100は、上記A項〜C項に記載の本発明の製造方法により得られる粘着フィルムである。図示例では、粘着フィルムにおける貫通孔の配置パターンは、
図1Aの配置パターンに対応する。本明細書において「ロールトゥロール」とは、ロール状のフィルムを搬送しながら互いの長尺方向を揃えて積層することをいう。粘着フィルムは、代表的には偏光子に剥離可能に貼り合わせられる。本発明の製造方法により得られる粘着フィルムを用いることにより、脱色液への浸漬による脱色処理による非偏光部の形成が可能となるので、非常に高い製造効率で非偏光部を有する偏光子を得ることができる。なお、この粘着フィルムは脱色処理における偏光板の表面保護フィルムとして機能し得るので、便宜上、当該粘着フィルムを第1の表面保護フィルムと称する場合がある。ここで、表面保護フィルムとは、作業時に偏光板を一時的に保護し、任意の適切な時点で剥離されるフィルムであり、単に保護フィルムと称する偏光子保護フィルムとは異なるものである。
【0045】
偏光子と粘着フィルムとをロールトゥロールで積層する場合、長尺状の粘着フィルムがロール状に巻き取られた粘着フィルムロールから粘着フィルムを巻き出して、偏光子に積層してもよいし、上記積層体に貫通孔を形成して粘着フィルムを得た後、連続的に(一旦、粘着フィルムを巻き取ることなく)偏光子に積層してもよい。
【0046】
一方、偏光板の保護フィルム側の面に、表面保護フィルム(第2の表面保護フィルム)をロールトゥロールにより貼り合わせる(図示せず)。第2の表面保護フィルムは、任意の適切な粘着剤を介して偏光子保護フィルムに剥離可能に貼り合わせられる。第2の表面保護フィルムを用いることにより、浸漬による脱色処理において偏光板(偏光子/保護フィルム)が適切に保護され得る。第2の表面保護フィルムは、貫通孔が設けられていないこと以外は本発明で得られる粘着フィルム(第1の表面保護フィルム)と同様のフィルムが用いられ得る。さらに、第2の表面保護フィルムとしては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)フィルムのような柔らかい(例えば、弾性率が低い)フィルムも用いることができる。第2の表面保護フィルムは、第1の表面保護フィルムと同時に貼り合わせてもよく、第1の表面保護フィルムを貼り合わせる前に貼り合わせてもよく、第1の表面保護フィルムを貼り合わせた後に貼り合わせてもよい。好ましくは、第2の表面保護フィルムは、第1の表面保護フィルムを貼り合わせる前に貼り合わせられる。このような手順であれば、保護フィルムの傷つきが防止される、および、巻き取り時において粘着フィルムの貫通孔が痕として保護フィルムに転写されるのが防止されるという利点を有する。第1の表面保護フィルムを貼り合わせる前に第2の表面保護フィルムを貼り合わせる態様は、例えば、偏光子が樹脂基材上に形成されたPVA系樹脂層である場合に好適に適用され得る。具体的には、偏光子保護フィルムと第2の表面保護フィルムとの積層体を作製し、当該積層体を樹脂基材/偏光子の積層体に貼り合わせた後樹脂基材を剥離し、当該剥離面に第1の表面保護フィルムを貼り合わせることができる。
【0047】
次に、
図3に示すように、第1の表面保護フィルム/偏光子/保護フィルム/第2の表面保護フィルムの積層体を化学的脱色処理に供する。化学的脱色処理は、代表的には、積層体を脱色液(例えば、塩基性溶液)と接触させることを含む。化学的脱色処理は、必要に応じて、塩基性溶液を除去すること、積層体を酸性溶液と接触させること、および、酸性溶液を除去することをさらに含み得る。以下、具体的に説明する。
【0048】
積層体と塩基性溶液との接触は、任意の適切な手段により行われ得る。代表例としては、積層体の塩基性溶液への浸漬、あるいは、塩基性溶液の積層体への塗布または噴霧が挙げられる。浸漬が好ましい。
図3に示すように積層体を搬送しながら脱色処理を行うことができるので、製造効率が顕著に高いからである。上記のとおり、第1の表面保護フィルム(および、必要に応じて第2の表面保護フィルム)を用いることにより、浸漬が可能となる。具体的には、塩基性溶液に浸漬することにより、偏光子における第1の表面保護フィルムの貫通孔に対応する部分のみが塩基性溶液と接触する。例えば、偏光子が二色性物質としてヨウ素を含む場合、偏光子と塩基性溶液とを接触させることにより、偏光子の塩基性溶液との接触部分のヨウ素濃度を低減させ、結果として、当該接触部分(貫通孔により設定され得る)のみに選択的に非偏光部を形成することができる。このように、本実施形態によれば、複雑な操作を伴うことなく非常に高い製造効率で、偏光子の所定の部分に選択的に非偏光部を形成することができる。なお、偏光子にヨウ素が残存している場合、ヨウ素錯体を破壊して非偏光部を形成したとしても、偏光子の使用に伴い再度ヨウ素錯体が形成され、非偏光部が所望の特性を有さなくなるおそれがある。本実施形態では、後述の塩基性溶液の除去によって、ヨウ素自体が偏光子(実質的には、非偏光部)から除去される。その結果、偏光子の使用に伴う非偏光部の特性変化を防止し得る。
【0049】
塩基性溶液による非偏光部の形成について、より詳細に説明する。偏光子の所定の部分との接触後、塩基性溶液は当該所定部分内部へと浸透する。当該所定部分に含まれるヨウ素錯体は塩基性溶液に含まれる塩基により還元され、ヨウ素イオンとなる。ヨウ素錯体がヨウ素イオンに還元されることにより、当該部分の偏光性能が実質的に消失し、当該部分に非偏光部が形成される。また、ヨウ素錯体の還元により、当該部分の透過率が向上する。ヨウ素イオンとなったヨウ素は、当該部分から塩基性溶液の溶媒中に移動する。その結果、後述の塩基性溶液の除去により、塩基性溶液と共にヨウ素イオンも当該部分から取り除かれる。このようにして、偏光子の所定部分に選択的に非偏光部が形成され、さらに、当該非偏光部は経時変化のない安定なものとなる。なお、粘着フィルム(より具体的には、樹脂フィルムおよび粘着剤層)の材料、厚みおよび機械的特性、塩基性溶液の濃度、ならびに積層体の塩基性溶液への浸漬時間等を調整することにより、塩基性溶液が所望でない部分まで浸透すること(結果として、所望でない部分に非偏光部が形成されること)を防止することができる。
【0050】
上記塩基性溶液に含まれる塩基性化合物としては、任意の適切な塩基性化合物を用いることができる。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩、アンモニア水等が挙げられる。塩基性溶液に含まれる塩基性化合物は、好ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムである。アルカリ金属の水酸化物を含む塩基性溶液を用いることにより、ヨウ素錯体を効率良くイオン化することができ、より簡便に非偏光部を形成することができる。これらの塩基性化合物は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
上記塩基性溶液の溶媒としては、任意の適切な溶媒を用いることができる。具体的には、水、エタノール、メタノール等のアルコール、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、および、これらの混合溶媒が挙げられる。ヨウ素イオンが良好に溶媒へと移行し、後の塩基性溶液の除去において容易にヨウ素イオンを除去できることから、溶媒は水、アルコールが好ましい。
【0052】
上記塩基性溶液の濃度は、例えば、0.01N〜5Nであり、好ましくは0.05N〜3Nであり、より好ましくは0.1N〜2.5Nである。塩基性溶液の濃度がこのような範囲であれば、効率よく偏光子内部のヨウ素濃度を低減させることができ、かつ、所定部分以外の部分におけるヨウ素錯体のイオン化を防止することができる。
【0053】
上記塩基性溶液の液温は、例えば、20℃〜50℃である。積層体(実質的には、偏光子の所定部分)と塩基性溶液との接触時間は、偏光子の厚みや、用いる塩基性溶液に含まれる塩基性化合物の種類、および、塩基性化合物の濃度に応じて設定することができ、例えば、5秒間〜30分間である。
【0054】
上記塩基性溶液は、偏光子の所定部分と接触後、必要に応じて任意の適切な手段により除去され得る。塩基性溶液の除去方法の具体例としては、洗浄、ウエス等による拭き取り除去、吸引除去、自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。洗浄が好ましい。塩基性溶液の除去性能に優れ、複雑な装置を必要とせず、かつ、製造効率に優れるからである。洗浄に使用する液は、例えば、水(純水)、メタノール、エタノール等のアルコール、酸性水溶液、および、これらの混合溶媒等が挙げられる。好ましくは、水である。洗浄は、代表的には、
図3に示すように積層体を搬送しながら行われる。洗浄は複数回行ってもよい。塩基性溶液を乾燥により除去する場合の乾燥温度は、例えば、20℃〜100℃である。
【0055】
必要に応じて、塩基性溶液と接触した積層体(実質的には、偏光子の所定部分)を酸性溶液とさらに接触させることができる。積層体と酸性溶液との接触は、任意の適切な手段により行われ得る。塩基性溶液との接触の場合と同様に、浸漬が好ましい。酸性溶液と接触させることにより、非偏光部に残存する塩基性溶液をさらに良好なレベルまで除去することができる。また、酸性溶液と接触させることにより、非偏光部の寸法安定性および耐久性が向上し得る。酸性溶液との接触は、塩基性溶液の除去を行った後に行ってもよく、塩基性溶液を除去することなく行ってもよい。
【0056】
上記酸性溶液に含まれる酸性化合物としては、任意の適切な酸性化合物を用いることができる。酸性化合物としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素等の無機酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、安息香酸等の有機酸等が挙げられる。酸性溶液に含まれる酸性化合物は、好ましくは無機酸であり、さらに好ましくは塩酸、硫酸、硝酸である。これらの酸性化合物は単独で使用しても、混合して使用しても良い。
【0057】
上記酸性溶液の溶媒としては、上記塩基性溶液の溶媒として例示したものを用いることができる。上記酸性溶液の濃度は、例えば、0.01N〜5Nであり、好ましくは0.05N〜3Nであり、より好ましくは0.1N〜2.5Nである。
【0058】
上記酸性溶液の液温は、例えば、20℃〜50℃である。積層体(実質的には、偏光子の所定部分)と酸性溶液との接触時間は、樹脂フィルム(偏光子)の厚みや、用いる酸性溶液に含まれる酸性化合物の種類、および、酸性化合物の濃度に応じて設定することができ、例えば、5秒間〜30分間である。必要に応じて、積層体と酸性溶液とを接触させた後、直ちに拭き取り等により除去してもよい。
【0059】
上記酸性溶液は、偏光子の所定部分と接触後、必要に応じて任意の適切な手段により除去され得る。塩基性溶液の除去の場合と同様に、洗浄が好ましい。洗浄に使用する液は、例えば、水(純水)、メタノール、エタノール等のアルコール、酸性水溶液、および、これらの混合溶媒等が挙げられる。好ましくは、水である。洗浄は、代表的には、
図3に示すように積層体を搬送しながら行われる。洗浄は複数回行ってもよい。
【0060】
本実施形態において酸性溶液を洗浄により除去する場合、酸性溶液除去後の積層体は、必要に応じて、洗浄液除去および乾燥に供される(図示せず)。洗浄液(代表的には、水)除去は、任意の適切な手段により行われ得る。具体例としては、ブロワーによる吹きとばし、積層体をスポンジロールに通過させること、およびこれらの組み合わせが挙げられる。洗浄液除去により、第1の表面保護フィルムの貫通孔部分に残存する洗浄液をさらに良好なレベルまで除去することができるので、残存洗浄液による偏光子への悪影響を防止することができる。乾燥は、例えば積層体をオーブン内で搬送することにより行われ得る。乾燥温度は、例えば20℃〜100℃であり、乾燥時間は例えば5秒〜600秒である。
【0061】
代表的には、上記のようにして非偏光部が形成された後、粘着フィルム(第1の表面保護フィルム)および第2の表面保護フィルムは剥離除去され得る。
【0062】
以上のようにして、粘着フィルムの貫通孔の配置パターンを設定することにより、長尺状の偏光子の所定の位置に所定の配置パターンで非偏光部が形成され得る。非偏光部を有する偏光子は、例えば、カメラ部を有する画像表示装置に用いられ得る。
【0063】
非偏光部は、代表的には、偏光子を所定サイズの画像表示装置に取り付けるために所定サイズに裁断した際に、該画像表示装置のカメラ部に対応する位置に配置されている。したがって、1つの長尺状偏光子から1つのサイズの偏光子のみを裁断する場合には、非偏光部は、
図1Aに示すように、長尺方向および幅方向のいずれにおいても実質的に等間隔で配置され得る。このような構成であれば、画像表示装置のサイズに合わせた偏光子の所定サイズへの裁断の制御が容易であり、歩留まりを向上させることができる。さらに、非偏光部の位置を正確に設定することができるので、得られる所定サイズの偏光子における非偏光部の位置も良好に制御することができる。その結果、得られる所定サイズの偏光子ごとの非偏光部の位置のばらつきが小さくなるので、品質にばらつきのない所定サイズの偏光子を得ることができる。1つの長尺状偏光子から複数のサイズの偏光子を裁断する場合には、長尺方向および/または幅方向における非偏光部の間隔を裁断すべき偏光子のサイズに応じて変更することができる。上記のとおり、粘着フィルムにおける貫通孔の配置パターンを適切に設定することにより、所望の配置パターンで非偏光部を形成することができる。
【0064】
非偏光部の透過率(例えば、23℃における波長550nmの光で測定した透過率)は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは75%以上であり、特に好ましくは90%以上である。このような透過率であれば、非偏光部としての所望の透明性を確保することができる。その結果、非偏光部が画像表示装置のカメラ部に対応するよう偏光子を配置した場合に、カメラの撮影性能に対する悪影響を防止することができる。
【0065】
非偏光部の二色性物質の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以下である。非偏光部の二色性物質の含有量がこのような範囲であれば、上記透過率を十分に満足することができる。
【0066】
非偏光部の平面視形状は、偏光子が用いられる画像表示装置のカメラ性能に悪影響を与えない限りにおいて、任意の適切な形状が採用され得る。粘着フィルムにおける貫通孔の形状を適切に設定することにより、所望の平面視形状を有する非偏光部を形成することができる。
【0067】
ここまで、本発明の製造方法により得られる粘着フィルムを用いた長尺状のフィルムの所定部分の選択的な処理の一例として長尺状の偏光子における非偏光部の形成について述べてきたが、当該粘着フィルムが上述のような他の選択的処理にも類似の手順で適用可能であることは当業者に明らかである。
【実施例】
【0068】
[実施例1]
エステル系フィルム(厚み38μm)/粘着剤層(厚み5μm)/セパレーター(厚み25μm)の構成を有する長尺状の積層体(幅:1200mm、長さ:43m)を準備した。この積層体のエステル系フィルム面に、エステル系フィルム(厚み38μm)/粘着剤層(厚み5μm)の構成を有するキャリアフィルム(幅:1200mm、長さ:43m)をロールトゥロールで貼り合わせ、キャリアフィルム付積層体を作製した。
次いで、打抜装置を用いてキャリアフィルム付積層体に対してセパレーター面より深さ80μmの切断刃を入れ、キャリアフィルムが貫通しないように直径2.4mmの円形にハーフカットした。ハーフカットは、長尺方向に250mmおきに、幅方向に400mmおきに行った。
続いて、積層体からキャリアフィルムを剥離し粘着フィルムを得た。
【0069】
[実施例2]
打抜装置のかわりに、レーザー切断機(CO
2レーザー、波長:9.4μm、出力:10W)を用いてハーフカット(切断深さ:80μm)したこと以外は実施例1と同様にして、粘着フィルムを得た。
【0070】
各実施例について以下の評価を行った。
1.穿孔カス
切断による穿孔カスがキャリアフィルムの剥離の際に除去されるか否かを確認した。
2.粘着フィルムの貼り合せ外観
セパレーターを剥離して粘着フィルムを市販の偏光子に貼り合わせ、その外観を顕微鏡で観察した。
【0071】
各実施例では、キャリアフィルムを剥離する際に、ハーフカットにより生じた穿孔カスが完全に除去された。
【0072】
得られた粘着フィルムを偏光子に貼り合わせ、偏光子と粘着フィルムとの貼り合せ状態を観察したところ、
図4に示すように偏光子と粘着フィルムとの間に気泡の混入は確認されなかった。
【表1】
【0073】
[偏光板の作製]
基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)を用いた。基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.5重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
続いて、積層体のPVA系樹脂層表面に、PVA系樹脂水溶液(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー(登録商標)Z−200」、樹脂濃度:3重量%)を塗布して保護フィルム(厚み25μm)を貼り合わせ、これを60℃に維持したオーブンで5分間加熱した。その後、基材をPVA系樹脂層から剥離し、透過率42.3%、厚み5μmの偏光子を有する偏光板(幅:1200mm、長さ:43m)を得た。
【0074】
[透明部の形成]
得られた偏光板の偏光子側に、各実施例で得られた粘着フィルムを、セパレーターを剥離してロールトゥロールで貼り合わせ、偏光フィルム積層体を得た。
得られた偏光フィルム積層体の粘着フィルムから偏光子が露出した部分に、常温の水酸化ナトリウム水溶液(1.0mol/L(1.0N))を滴下し、60秒間放置した。その後、滴下した水酸化ナトリウム水溶液をウエスで除去してから粘着フィルムを剥離し、透明部が形成された偏光板(偏光子)を得た。
【0075】
各実施例の粘着フィルムを用いて形成した透明部について、以下の測定を行った。
1.透過率(Ts)
分光光度計(村上色彩技術研究所(株)製 製品名「DOT−3」)を用いて測定した。透過率(T)は、JlS Z 8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
2.ヨウ素含有量
蛍光X線分析により、偏光子の透明部におけるヨウ素含有量を求めた。具体的には、下記条件により測定したX線強度から、あらかじめ標準試料を用いて作成した検量線により、偏光子のヨウ素含有量を求めた。
・分析装置:理学電機工業製 蛍光X線分析装置(XRF)、製品名「ZSX100e」
・対陰極:ロジウム
・分光結晶:フッ化リチウム
・励起光エネルギー:40kV−90mA
・ヨウ素測定線:I−LA
・定量法:FP法
・2θ角ピーク:103.078deg(ヨウ素)
・測定時間:40秒
【0076】
いずれにおいても透過率が93%〜94%、ヨウ素含有量0.15重量%以下の透明部が形成されており、これらは非偏光部として機能し得る。また、非偏光部は、粘着フィルムの貫通孔の形状に対応して直径2.4mmの円形であった。