特許第6181118号(P6181118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181118分枝体製造方法、および、分枝体を有するツールを備えた手術器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181118
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】分枝体製造方法、および、分枝体を有するツールを備えた手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20170807BHJP
   A61B 17/28 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A61B18/14
   A61B17/28
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-148950(P2015-148950)
(22)【出願日】2015年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-34489(P2016-34489A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2015年9月15日
(31)【優先権主張番号】14179742.3
(32)【優先日】2014年8月4日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー・マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】アヒム・ブロドベック
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−075906(JP,A)
【文献】 特開平05−291746(JP,A)
【文献】 特開平09−260013(JP,A)
【文献】 特開2006−247972(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0082767(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0072638(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2807988(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/28−17/285
A61B 18/14
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術器具用の分枝体(11)を製造する方法であって、
少なくとも1個の連結ウェブ(34〜39)を介して単体として相互連結された、支持部(15)と少なくとも1個の機能部(16、17)とを有する金属部分(33)を付加製造プロセスで用意し、
前記金属部分(33)を物質(26)で覆い、
前記連結ウェブ(34〜39)を取り除き、
射出成形による被覆が行われる場合、前記機能部(16、17)の少なくとも1個の表面領域を露出させた状態にし、
前記支持部(15)と前記機能部(16、17)とは、互いに組み合わさって隙間(27、29)を形成し、
アンダーカット構造である少なくとも1個の保持構造(23)が、前記機能部(16、17)の支持部(15)側に形成され、
当該保持構造は前記支持部(15)と接触しない
製造方法。
【請求項2】
前記金属部分(33)は粉末冶金プロセスで用意される
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記金属部分(33)は金属粉末の選択的レーザ溶融法を用いて用意される
請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記機能部(16、17)は、電極板(21)またはレバー(28)である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術器具用の分枝体の製造方法と、当該方法を用いて製造された分枝体を少なくとも1個有する器具に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第2554132号明細書は、手術器具のツールの2個の分枝体の間で生体組織を凝固させるための器具を開示している。各分枝体は、複数の点状溶接連結部を介して薄い板状の電極に連結された電極受けを備えている。当該電極受けは、プラスチック筐体を有してもよい。
【0003】
また、米国特許出願公開第2011/0073246号明細書は、プラスチックと金属の複合部品からなる分枝体を有する器具を開示している。これは、周縁に凹部または孔があるU型に湾曲したエッジを有する電極板で形成される。プラスチックは電極板の下に射出され、電極板のエッジにわたり広がる。
【0004】
また、国際公開第02/080785号は、医用器具の分枝体用の電気絶縁基板へ電極板を固定する方法に関する。電極板は、形を組み合わせてプラスチック基板と係合するオフセットエッジを有してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生体組織を凝固させる医用器具を設計する場合は、トング状のツールを精密に設計し、生体組織にかなり高い圧力をかけることができることを保証しなければならない。また、滅菌、耐熱性、電極板の電気絶縁、周辺組織に対する電極板の断熱など、さらなる制約も考慮しなければならない。
【0006】
上記に鑑みて、本発明の目的は、高品質な医用器具を製造するために、改良型分枝体の製造方法の概念を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に係る方法で解決される。
【0008】
本発明に係る方法では、まず、金属部分を用意する。この金属部分には支持部と機能部とがあり、これらは、完成品の分枝体では互いに電気的に絶縁されるが、最初は、導電連結ウェブを介して単体として互いに連結されている。この金属部分は、射出成形によりプラスチックで覆われる。その際、機能部の少なくとも1個の表面領域を露出させた状態にしてもよく、そうすることが好ましい。また、連結ウェブも少なくとも部分的に露出させることが好ましい。プラスチックにより、支持部と機能部とが機械的に連結される。つまり、プラスチックが支持部と機能部の両方に接触することで、接着連結部か、形を組み合わせた連結部かの少なくとも一方が形成される。上記機械的連結がなされると、連結ウェブは取り除かれる。このとき、連結ウェブも射出成形によってプラスチックで覆われていれば、プラスチックも部分的に取り除いて構わない。連結ウェブが露出した状態であれば、プラスチックの表面を貫通させずに取り除いてもよい。連結ウェブは、切り落としたり、折り取ったり、研削、レーザカット、または、その他適切な分離方法で取り除くことができる。
【0009】
1個または複数の連結ウェブを取り除いた後、支持部と機能部とは互いに電気的に分離される。しかしながら、プラスチックで連結されているため、支持部と機能部とは相互固定連結されたままであり、ほとんど隙間がないコンパクトな部品となる。機能部と支持部の間に金属連結部がないとすると、これらは互いに電気的に絶縁されているだけでなく、機能部と支持部との間の熱伝導も低減される。
【0010】
有利な実施の形態では、付加製造プロセスなどの第1造形プロセス、例えば、金属部分を構築するために液体金属滴を既存の金属部分へ局所的に加えることにより、金属部分を用意する。代替案として、金属部分を、精密鋳造などの鋳造プロセスまたは金属粉末射出成形法(MIM)で製造してもよい。好適な実施の形態では、金属部分を、粉末冶金プロセス、例えば、金属粉末の選択的レーザ溶融法を用いて用意する。金属部分は、金属粉末を敷き詰めた領域をレーザ溶融することにより一層一層作成される。アンダーカットや狭い隙間などが複数ある複雑な形状は、このような方法で製造してもよい。その他、3Dプリント法を用いて金属部分を製造することも可能である。
【0011】
分枝体の機能部は、電極板、レバーアーム、または、その他の部分でもよい。この機能部は、電気的および/または熱的に支持部と分離されていなければならないが、機械的に、つまり、形を組み合わせるか、接着するかの少なくとも一方で支持部と連結されている。
【0012】
機能部と支持部とは、互いに隙間を形成するように設けられることが好ましい。この隙間は、プラスチックなどの物質で完全に埋められることが好ましい。隙間には、機能部と支持部の少なくとも一方に保持構造を形成してもよい。当該保持構造は、それぞれ他方の部に向けて延出しているが、接することはない。保持構造は、例えば、フック形状、T構造、マッシュルームヘッド構造、ハンマーヘッド構造などのアンダーカット構造であることが好ましい。これにより、特に、露出表面領域を有する部、具体的には機能部を形を組み合わせてプラスチックに固定することができる。支持部は、このような構造を備えてもよいし、全体的にプラスチックで覆われていてもよい。それにより、形を組み合わせて支持部にプラスチックを固定する。機能部と支持部とを連結するのに用いられる物質は、これら機能部と支持部とを接着連結できるような成分を含んでいてもよい。それにより、形を組み合わせるか接着させるかの少なくとも一方で機能部と支持部とを互いに連結することが可能になる。
【0013】
本発明に係る電気手術器具は、同じ組成と構造の金属から形成される支持部と機能部とを有する分枝体を少なくとも1個備える。これら支持部と機能部とは、本体、好ましくはプラスチック本体を介して相互固定連結される。金属の組成および構造が同じ理由は、支持部と機能部とが単一の第1造形プロセスで一緒に製造されたことによるのが好ましい。その際、連結ウェブが支持部と機能部の製造中に設けられ、当該連結ウェブは、隙間を埋めた後、および/または、射出成形によりプラスチックなどの連結物質で金属部分を覆った後に取り除かれる。したがって、支持部および機能部は、予め一体化した部品、つまり、単体部品である。
【0014】
電極板やレバーアームなどの機能部は、支持部と共に本体に埋め込まれ、接着するか、形を組み合わせるかの少なくとも一方で固定される。したがって、保持構造、例えば、隙間に延出する凸部を設けることができる。このような1以上の凸部を、機能部の支持部に対向する側に配置する。さらに、または、あるいは、このような1以上の凸部を、支持部の機能部に対向する側に配置してもよい。少なくとも1個の凸部は、アンダーカットを有することが好ましい。それにより、温度変化に強く、連結ウェブを取り除いた後でも機能部と支持部との間に存在する、頑丈で着脱可能な連結を保証できる。
【0015】
本発明の実施の形態のさらなる効果は、図面、明細書、または、請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る器具の概略部分斜視図である。
図2図2は、図1における器具のツールの分枝体の一部を露出させた簡略側面図である。
図3図3は、図2における分枝体の上面図である。
図4図4は、図2および図3における分枝体の断面図である。
図5図5は、図2図4における分枝体を形成する金属部分の概略側面図である。
図6図6は、図5における金属部分を拡大した水平断面図である。
図7図7は、図5および図6における金属部分の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、手術器具のツール部分10を示す。当該ツール部分10を用いて、2個の分枝体11、12の間で掴んだ生体組織を凝固する。ツール部分10は、シャフト13に取り付けられている。このシャフト13の中を通って、ツール部分10に対する駆動部材が少なくとも1個延びており、この駆動部材によって、少なくとも一方の分枝体11、12が可動、特に、軸14を軸にして回転することができる。
【0018】
図2は、分枝体11の例示である。以下の説明を分枝体12にも同様に適用できるように、分枝体12の構造は同じであることが好ましい。
【0019】
分枝体11は、プラスチックと金属の複合部品である。分枝体11は、支持部15と、少なくとも1個(本件の場合は2個)の機能部16、17を備える。支持部15は、図2の点線で示された細長い指体18を備え、この指体18は、分枝体11上で生じる力を吸収できるように固いものである。また、別の構造に加え、ヒンジ用開口部19も、例えば、さらなる部品を固定するためなどの通孔20として支持部15に形成してもよい。
【0020】
本実施の形態では、機能部16は、凝固対象の生体組織と接触させることが目的の電極板21で形成される。電極板21の機能面は、平坦か、または、図1および2に示すように、例えば、横向きに並んだリブ形状の構造を備えてもよい。機能面は、組織と接触できるよう完成品の分枝体11において露出している。電極板21は、真っ直ぐか、または、図3に示すように、縦方向に湾曲していてもよい。電極板21は、リード線を取り付けるために接続手段(図示せず)を設けることが好ましい。最も簡易な場合では、リード線を、例えば、ポイント溶接で電極板21の平坦ポイント22(図3)に留めてもよい。また、他の接続方法および実施形態も可能である。また、プラスチックで覆われた複数の機能面を設けてもよい。
【0021】
機能部16に、例えば1以上の凸部24として保持構造23を設けてもよい。なお、保持構造23は、凹部であってもよい。このような凸部24は、機能部16の支持部15に対向する側から支持部15に向かって延出するのが好ましい。この凸部24は、連続したものでもよいし、または、機能部16から離れるほど1以上のポイントで断面が大きくなるものでもよい。図4は、段階的断面拡大図であり、凸部24は頭部25を有することが分かる。この頭部25は、指体18側から見ると、アンダーカットとなる。この頭部25を用いて、支持部15の周りで射出成形された物質カバー、好ましくはプラスチックカバー26などの物質に機能部16を固定する。このように形成されたプラスチックカバー26は、特に、機能部16と支持部15との間にできた隙間27を埋める。この隙間27に延出している凸部24は、形を組み合わせるようにして、プラスチックカバー26の本体に機能部16を固定する。プラスチックカバー26は、支持部15の周りで係合することにより、形を組み合わせて支持部15に取り付けられる。支持部15と機能部16とは、熱的かつ電気的に互いに分離している。これら2つの間に金属的なつながりはない。
【0022】
分枝体11のもう一方の機能部17は、例えば、機械的に固定されるが電気的には接触しないように支持部15に連結されたレバー28である。レバー28は、ヒンジ用開口部19から見ると、指体18とは逆の方向に延在する。例えば、閉じる方向に分枝体を動かす、つまり、生体組織を掴むために、レバー28を用いて分枝体11に力を加える。また、必要に応じて、レバー28は、例えば、機能面として、射出成形によってプラスチックで覆われていない露出面領域を有してもよい。
【0023】
機能部17の構造は、特に、図5〜7から明らかになり、これらの図は、プラスチックカバー26が適用される前の分枝体11を示している。機能部17と支持部15とは、互いに組み合わさって、隙間29を規定する。この隙間29は、続く製造プロセスにおいて物質で埋められる。隙間29は、真っ直ぐ、U型湾曲、オフセット、または、その他幾何学的に複雑な形状でもよい。例えば、隙間29の外形は、図7に示すように、蟻継ぎ形状でもよい。隙間29を曲がりくねったものとして規定するために、外形において、機能部17またはレバー28の凸部30は、対応する支持部15の凹部と係合する。また、横方向を向いているレバー28の凸部31が、対応する支持部15の凹部32と係合してもよい。したがって、隙間29は、例えば、円筒またはマッシュルーム形状の凸部31の周りに広がっていてもよい。
【0024】
分枝体11は、以下のように製造される。
【0025】
まず、図5〜7に示すような金属部分33を用意する。この金属部分33は、機能部16、17だけでなく支持部15も含む。支持部15は、少なくとも1個、好ましくは複数個の連結ウェブ34、35を介して機能部16と連結されている。同様に、機能部17は、1以上の連結ウェブ36、37、38、39を介して支持部15と連結されている。金属部分33を製造するには、適切な第1造形プロセスを用いることが好ましい。特に、全体的に構造および組成が均一な単体として所望の金属部分33が製造される、選択的レーザ溶融法、3Dプリント、または、MIM法といった他の粉末冶金法などの適切な付加製造プロセスを用いることが好ましい。続く製造ステップでは、適切な手段で、金属部分33に物質カバー26が設けられる。物質カバーは、隙間27、29に入り込み、特に、外部に対して隙間を封止する。隙間27、29は、完全に物質で埋められることが好ましい。また、ヒンジ用開口部19は、完全にまたは部分的に埋められてもよい。例えば、金型コアを用いて、寸法安定性のある軸受け穴を形成してもよい。物質を適用する手段はプラスチック射出成形でもよく、その物質はプラスチックでもよい。
【0026】
プラスチックカバー26が硬化した後、連結ウェブ34〜39を取り除く。物質の特性に応じて、連結ウェブは、切り落としたり、折り取ったり、はぎ取ったり、または、レーザ処理、穿孔、研削、または、圧延などその他の手段で取り除くことができる。これは、連結ウェブ34〜39が物質カバー26の外側にある場合、および、連結ウェブ34〜39に物質を残しておく場合の実施の形態に適用される。
【0027】
本発明に係る分枝体11は、支持部15と機能部16、17という少なくとも2個の部分を備える金属部分33を製造する付加製造プロセスを用いて作成される。金属部分33は単体部品であり、対応する連結ウェブ34、35を用いて、支持部15と機能部16、17とが一体的に相互連結されている。物質26を適用した後に、連結ウェブは取り除かれる。このように製造された分枝体11は、寸法的に正確かつコンパクトであり、優れた電気的、熱的、および、機械的特性を有する。
【符号の説明】
【0028】
10 ツール部分
11、12 分枝体
13 シャフト
14 軸
15 支持部
16、17 機能部
18 指体
19 ヒンジ用開口部
20 通孔
21 電極板
22 ポイント
23 保持構造
24 凸部
25 頭部
26 物質、物質カバー、プラスチックカバー
27 隙間
28 レバー
29 隙間
30 凸部
31 凸部
32 凹部
33 金属部分
34、35 連結ウェブ
36〜39 連結ウェブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7