(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第2冷却水流路の前記電磁弁の閉弁完了後には、前記ウォータポンプによって前記冷却水の流量を増加させる制御を行うように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジン冷却装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたエンジン冷却システムでは、ラジエータを経由せずにエンジンに冷却水を流通させる第3流路の弁を閉弁させるために、電動式ポンプを停止させて冷媒の流通を止めるように構成されているため、電動式ポンプが停止される期間において、エンジン冷却システム内において冷媒の流通が行われなくなるという不都合がある。このため、電動式ポンプが停止されている期間中エンジンがほとんど冷却されないため、駆動中のエンジンが高温になってしまうという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ラジエータを経由せずにエンジンに冷却水を流通させる冷却水流路の電磁弁を閉弁状態にする場合に、駆動中のエンジンが高温になるのを抑制することが可能なエンジン冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるエンジン冷却装置は、エンジンを冷却する冷却水の流量を制御可能なウォータポンプと、ラジエータを経由してエンジンに冷却水を流通させる第1冷却水流路と、ラジエータを経由せずにエンジンに冷却水を流通させる第2冷却水流路と、第2冷却水流路に設けられ、弁体を含み、弁体を電気的な吸引力により移動させることによって、開閉を行う電磁弁と、第2冷却水流路の電磁弁を閉弁させる際に、ウォータポンプを冷却水の流量を減少させるように駆動させることにより、流量が減少された冷却水を流通させた状態で少なくとも電気的な吸引力により弁体を閉弁方向に移動させることによって、電磁弁を閉弁させて第2冷却水流路における冷却水の流通を遮断する制御を行う制御部と、を備え
、制御部は、少なくとも冷却水の通水抵抗に基づいて、ウォータポンプの閉弁可能最大回転数を取得し、閉弁可能最大回転数以下の回転数でウォータポンプを駆動させた状態で弁体を移動させることによって、第2冷却水流路の電磁弁を閉弁させる制御を行うように構成されている。
【0009】
この発明の一の局面によるエンジン冷却装置では、上記のように、ラジエータを経由しない第2冷却水流路の電磁弁を閉弁させる際に、流量が減少された冷却水を流通させた状態で電磁弁を閉弁させて、第2冷却水流路における冷却水の流通を遮断する制御を行う制御部を設ける。これにより、冷却水を流通させた状態で電磁弁を閉弁させることにより、ラジエータを経由しない第2冷却水流路の電磁弁を閉弁させる場合であっても、エンジン冷却装置内(ラジエータを経由する第1冷却水流路)に冷却水を流通させるようにすることができるので、エンジンに対して冷却水の流通が行われなくなるのを抑制することができる。この結果、ラジエータを経由しない第2冷却水流路の電磁弁を閉弁させる場合に、流通する冷却水によりエンジンを冷却し続けることができるので、駆動中のエンジンが高温になるのを抑制することができる。また、弁体を閉弁方向に移動させる際に、流量が減少された冷却水を流通させることによって、流通する冷却水に抗して弁体を閉弁方向に移動させるための力が大きくなるのを抑制することができるので、電磁弁において大きな電気的な吸引力が必要になるのを抑制することができる。これにより、電磁弁において閉弁に必要な電力が増大するのを抑制することができるとともに、大きな電気的な吸引力を発生させるために電磁弁が大型化するのを抑制することができる。
また、制御部は、少なくとも冷却水の通水抵抗に基づいて、ウォータポンプの閉弁可能最大回転数を取得し、閉弁可能最大回転数以下の回転数でウォータポンプを駆動させた状態で弁体を移動させることによって、第2冷却水流路の電磁弁を閉弁させる制御を行うように構成されている。これにより、閉弁可能最大回転数以下の回転数でウォータポンプを駆動させた状態で弁体を移動させることによって、エンジン冷却装置内(ラジエータを経由する第1冷却水流路)に冷却水を流通させるようにしつつ、ラジエータを経由しない第2冷却水流路の電磁弁を確実に閉弁させることができる。また、エンジン冷却装置では、冷却水の通水抵抗に応じて電磁弁の上流側の圧力と下流側の圧力との前後差圧が変化し、その結果、ウォータポンプの閉弁可能最大回転数が変化する。そこで、ウォータポンプの閉弁可能最大回転数に関連する冷却水の通水抵抗に基づいてウォータポンプの閉弁可能最大回転数を取得することによって、正確なウォータポンプの閉弁可能最大回転数に基づいて、電磁弁をより確実に閉弁させることができる。
【0010】
上記一の局面によるエンジン冷却装置において、好ましくは、電磁弁は、弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材をさらに含み、ウォータポンプを駆動させながら付勢部材の付勢力および電気的な吸引力により弁体を閉弁方向に移動させるように構成されている。このように構成すれば、付勢部材による付勢力の分、流通する冷却水に抗して弁体を閉弁方向に移動させやすくすることができるので、ラジエータを経由しない第2冷却水流路の電磁弁を閉弁するために冷却水の流量を大きく減少させる必要がない。これにより、冷却水の流量が減少された状態であっても、エンジン冷却装置内(ラジエータを経由する第1冷却水流路)に冷却水を十分に流通させることができる。
【0012】
上記一の局面によるエンジン冷却装置において、好ましくは、第1冷却水流路に設けられ、冷却水の温度に基づいて開度が変化するサーモスタットをさらに備え、制御部は、サーモスタットの開度に基づいて、冷却水の通水抵抗を推定するように構成されている。ここで、エンジン冷却装置では、サーモスタットの開度に基づいて第1冷却水流路における冷却水の流量が変化し、その結果、冷却水の通水抵抗が変化する。そこで、サーモスタットの開度に基づいて、冷却水の通水抵抗を推定することによって、適切に推定された冷却水の通水抵抗に基づいて、より正確なウォータポンプの閉弁可能最大回転数を取得することができる。また、サーモスタットが開状態の場合には、第2冷却水流路における冷却水の流通が遮断された場合であっても、冷却水が第1冷却水流路を流通して、エンジンに冷却水を流通させることができるとともに、第1冷却水流路のラジエータに冷却水を流通させることによって、温度の高い冷却水を効果的に冷却することができる。また、サーモスタットが閉状態の場合は、エンジン暖機中のような、温度が低い冷却水により駆動中のエンジンを冷却するのが好ましくない場合であるため、第1冷却水流路のラジエータに冷却水を流通させないことによって、ラジエータにおいて冷却水が冷却されてしまうのを抑制して、エンジンが過度に冷却されるのを抑制することができる。
【0013】
上記一の局面によるエンジン冷却装置において、好ましくは、ウォータポンプは、センサレスモータを含む電動式のウォータポンプである。ここで、センサレスモータでは、センサが設けられていないことに起因して、ウォータポンプ(センサレスモータ)が停止された際にセンサレスモータのロータの初期位置が不明になる。このため、センサレスモータでは、一度センサレスモータを停止させてしまうと、センサレスモータを正しく駆動させるためにロータの初期位置を検出する必要がある。その結果、停止状態のセンサレスモータを駆動させる際には、ロータの初期位置を検出するための開始駆動が必要になり、その結果、開始駆動のための余分な時間が必要になってしまう。したがって、エンジンに対して冷却水の流通が行われない期間がさらに長くなってしまう。一方、本発明では、上記のように、エンジン冷却装置において、電磁弁を閉弁させる際に、ウォータポンプを冷却水の流量を減少させるように駆動させることにより、ウォータポンプがセンサレスモータを含む電動式のウォータポンプである場合であっても、開始駆動のための時間のような余分な時間が生じない。これにより、本発明の構成は、ウォータポンプがセンサレスモータを含む場合に特に好適である。
【0014】
上記一の局面によるエンジン冷却装置において、好ましくは、制御部は、第2冷却水流路の電磁弁の閉弁完了後には、ウォータポンプによって冷却水の流量を増加させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、電磁弁の閉弁完了後に冷却水の流量を増加させることによって、冷却水によるエンジンなどの冷却や冷却水からの熱回収などを効果的に行うことができる。
【0015】
なお、本出願のエンジン冷却装置では、以下のような他の構成も考えられる。
【0016】
(付記項1)
すなわち、上記エンジン冷却装置において、第2冷却水流路に配置され、冷却水が熱交換される第1熱交換器をさらに備える。
【0017】
(付記項2)
また、上記第1熱交換器をさらに備える構成において、第2冷却水流路と並列に設けられ、冷却水が流通する第3冷却水流路と、第3冷却水流路に配置され、冷却水が熱交換される第2熱交換器とをさらに備える。
【0018】
(付記項3)
また、上記閉弁可能最大回転数以下の回転数でウォータポンプを駆動させた状態で弁体を移動させる構成において、制御部は、ウォータポンプにおける冷却水の閉弁可能最大吐出圧力と、冷却水の通水抵抗とに基づいてウォータポンプの閉弁可能最大回転数を取得するように構成されている。
【0019】
(付記項4)
また、上記第2冷却水流路の電磁弁の閉弁完了後に冷却水の流量を増加させる構成において、制御部は、冷却水の通水抵抗に応じて、電磁弁の閉弁完了までの期間を設定するとともに、設定された電磁弁の閉弁完了までの期間の経過後、ウォータポンプによって冷却水の流量を増加させる制御を行うように構成されている。
【0020】
(付記項5)
また、上記第1冷却水流路におけるサーモスタットの開度に基づいて冷却水の通水抵抗を推定する構成において、サーモスタットは、エンジンよりも上流側に配置されており、エンジンよりも下流側に配置され、エンジンの下流側における冷却水の下流側温度を検出する温度検出部をさらに備え、制御部は、温度検出部により検出された下流側温度と、エンジンにおける冷却損失とに基づいて、エンジンの上流側における冷却水の上流側温度を推定し、上流側温度に基づいて、サーモスタットの開度を推定するように構成されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ラジエータを経由せずにエンジンに冷却水を流通させる冷却水流路の電磁弁を閉弁状態にする場合に、駆動中のエンジンが高温になるのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
<エンジン冷却装置の構成>
まず、
図1〜
図4を参照して、本発明の一実施形態によるエンジン冷却装置100の構成について説明する。
【0025】
本発明の一実施形態のエンジン冷却装置100は、図示しない車両に搭載されており、冷却水を車両に搭載されたエンジン101に供給してエンジン101を冷却するとともに、エンジン101などの熱により暖められた冷却水をラジエータ2により冷却したり、暖められた冷却水からヒータコア3などを用いて熱回収したりする装置である。なお、冷却水とは、エンジン101を冷却するための水などの液体を意味する。
【0026】
図1に示すように、エンジン冷却装置100は、電動ウォータポンプ(電動W/P)1と、ラジエータ2と、ヒータコア3と、オイルクーラ4と、サーモスタット5と、フローシャッティングバルブ(FSV)6とを備えている。また、エンジン冷却装置100は、エンジン101の回転数などを制御するエンジンコントロールユニット(ECU)7により制御されるように構成されている。なお、電動W/P1は、特許請求の範囲の「ウォータポンプ」の一例であり、FSV6は、特許請求の範囲の「電磁弁」の一例である。また、ECU7は、特許請求の範囲の「制御部」の一例である。
【0027】
また、エンジン冷却装置100では、冷却水循環流路8を冷却水が流通して循環するように構成されている。冷却水循環流路8は、冷却水流路8a、8bおよび8cを含んでいる。なお、冷却水流路8aおよび8bは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1冷却水流路」および「第2冷却水流路」の一例である。
【0028】
冷却水流路8aには、エンジン101と、電動W/P1と、ラジエータ2と、サーモスタット5とが配置されている。なお、電動W/P1は、エンジン101の上流側に、ラジエータ2は、エンジン101の下流側に、サーモスタット5は、ラジエータ2の下流側にそれぞれ配置されている。つまり、冷却水流路8aは、ラジエータ2を経由してエンジン101に冷却水を流通させるように構成されている。なお、本実施形態における「上流側」および「下流側」とは、それぞれ、冷却水の流通方向(
図1の二重鎖線)の上流側、および、下流側を意味している。
【0029】
冷却水流路8bおよび8cは、冷却水流路8aのエンジン101の下流側で、かつ、ラジエータ2の上流側の分岐点9aで共に分岐し、冷却水流路8aのサーモスタット5の下流側で、かつ、電動W/P1の上流側の合流点9bで共に合流している。つまり、冷却水流路8bと冷却水流路8cとは並列に設けられている。
【0030】
冷却水流路8bには、ヒータコア3と、FSV6とが配置されている。つまり、冷却水流路8bは、FSV6が設けられた冷却水流路であるとともに、ラジエータ2を経由せずに合流点9bで冷却水流路8aに合流して、エンジン101に冷却水を流通させることが可能なように構成されている。なお、ヒータコア3は分岐点9a側に配置されているとともに、FSV6は合流点9b側に配置されている。
【0031】
また、冷却水流路8cには、オイルクーラ4が配置されている。つまり、冷却水流路8cは、ラジエータ2を経由せずに合流点9bで冷却水流路8aに合流して、エンジン101に冷却水を流通させることが可能なように構成されている。
【0032】
電動W/P1は、電動式であり、ECU7の制御に基づいて吐出される冷却水の流量が制御されるように構成されている。また、電動W/P1は、冷却水流路8aにおいて、エンジン101とは反対側から冷却水を吸入するとともに、エンジン101側に向かって冷却水を吐出するように構成されている。なお、電動W/P1は、吐出効率に優れた遠心ポンプである。
【0033】
また、遠心ポンプである電動W/P1は、図示しないインペラを回転させるためのブラシレス・センサレスモータ1aを含んでいる。これにより、電動W/P1を、エンジン101に対して独立して駆動させることが可能である。なお、「ブラシレスモータ」とは、接触摺動するブラシや電流の方向を切り替える整流子を用いずに、電気的な制御により電流方向の切り替えなどの制御が行われて駆動するモータである。これにより、ブラシレス・センサレスモータ1aを用いることによって、ブラシを有するモータを用いる場合と異なりブラシの損耗がないので、電動W/P1を長寿命化させることが可能である。また、ブラシレス・センサレスモータ1aには、ロータ(永久磁石)の位置を検出するためのセンサ(ホール素子など)が設けられていない。このため、ブラシレス・センサレスモータ1aは、ロータが回転することで発生する起電力の変化に基づいてロータの初期位置を検出するように構成されている。なお、ブラシレス・センサレスモータ1aは、特許請求の範囲の「センサレスモータ」の一例である。
【0034】
また、電動W/P1は、ブラシレス・センサレスモータ1aの回転数(インペラの回転数)をECU7にポンプ回転数情報として送信可能に構成されている。
【0035】
ラジエータ2では、ラジエータ2内を流通する冷却水と走行風(空気)との間で熱交換が行われるように構成されている。これにより、ラジエータ2を流通する冷却水が冷却される。
【0036】
ヒータコア3は、図示しない車内において暖房運転が行われる際に、ECU6からの信号に基づいて図示しないファンにより送風されるように構成されている。これにより、ヒータコア3(冷却水流路8b)を流通する冷却水と風(空気)との間で熱交換が行われて、冷却水が冷却されるとともに、暖かい空気が車内に供給されて、車内が暖房される。
【0037】
オイルクーラ4は、オイルクーラ4(冷却水流路8c)を流通する冷却水と、エンジン101の摺動部(図示せず)の潤滑などに用いられるオイルとの間で熱交換が行われて、冷却水が暖められるとともに、オイルが冷却される。
【0038】
サーモスタット5は、冷却水の温度に基づいて開度が変化するように構成されている。これにより、サーモスタット5は、冷却水流路8aのラジエータ2に冷却水を流通させるか否かを切り替える機能と、ラジエータ2に冷却水を流通させる際の冷却水の流量を調整する機能とを有している。
【0039】
具体的には、サーモスタット5は、
図2に示すように、サーモスタット5を流通する冷却水の温度が第1の温度(=約80℃)未満である場合には、完全に閉弁する(開度0%になる)ことによって、冷却水流路8aのラジエータ2に冷却水を流通させないように構成されている。この際、冷却水は、分岐点9aから冷却水流路8b(FSV開弁状態の場合)および冷却水流路8cを流通して、合流点9bから再度電動W/P1に戻るよう流通(循環)し、ラジエータ2において冷却水は冷却されない。また、サーモスタット5は、冷却水の温度が第1の温度以上である場合には、冷却水の温度に応じて変化する開度に基づいてサーモスタット5を流通する冷却水の流量が調整されるように構成されている。この際、開度に応じて流量が調整された冷却水が冷却水流路8aのラジエータ2を流通して、冷却水の一部がラジエータ2において冷却されるとともに、残りの冷却水が冷却水流路8b(FSV開弁状態の場合)および冷却水流路8cを流通して、合流点9bから再度電動W/P1に戻るよう流通(循環)する。また、サーモスタット5は、冷却水の温度が第2の温度以上である場合には、完全に開弁する(開度100%になる)ように構成されている。この際、冷却水は、冷却水流路8a、冷却水流路8b(FSV開弁状態の場合)および冷却水流路8cを流通して再度電動W/P1に戻るよう流通(循環)して、冷却水の一部がラジエータ2において冷却される。
【0040】
この結果、エンジン冷却装置100では、サーモスタット5の開弁状態に応じて冷却水の流通する流路や流路毎の流量が変化するため、サーモスタット5の開度に応じて、エンジン冷却装置100(冷却水循環流路8)を流通する冷却水の抵抗(通水抵抗)が変化するように構成されている。なお、
図3に示すように、サーモスタット5の開度が小さい場合には、冷却水の流量に対して通水抵抗は大きくなり、サーモスタット5の開度が大きい場合には、冷却水の流量に対して通水抵抗は小さくなる。また、通水抵抗は、冷却水循環流路8の径などのエンジン冷却装置100の構造により変化するため、構造の異なるエンジン冷却装置100毎に求められる。
【0041】
FSV6は、電気的な吸引力により開閉が行われる弁部材であり、閉弁することにより、冷却水流路8bにおける冷却水の流通を遮断する機能を有している。FSV6は、
図4に示すように、円筒状のハウジング61と、ハウジング61内に配置される、弁体62、弁座63、付勢部材64およびソレノイド65とを含んでいる。ハウジング61は、ヒータコア3側から冷却水が流入する流入路61aと、流入路61aが延びる方向(Z方向)に対して略直交する方向に延び、電動W/P1側に冷却水が流出する流出路61bと、流入路61aおよび流出路61bを接続する弁体収容部61cとを有している。弁体収容部61cには、弁体62および付勢部材64が収容されている。
【0042】
ソレノイド65は、環状の部材から構成されており、磁性体から構成されたボディ65aと、ボディ65aの内側に配置されたボビン65bと、ボビン65bに巻き付けられ、通電により磁界を発生させる巻線65cと有している。また、ソレノイド65は、ソレノイド65の内側が流入路61aを形成するとともに、ソレノイド65の弁体収容部61c側(Z1側)の表面が、弁体62と当接する弁座63になるようにハウジング61内に配置されている。
【0043】
弁体62は、断面が逆T字状の円柱形状に形成されており、Z方向に移動可能に構成されている。また、弁体62は、鉄などの磁性体で形成されている。これにより、ソレノイド65の巻線65cに通電されることによりソレノイド65が励磁されると、弁体62が弁座63に向かう閉弁方向(Z2方向)に向かって、弁体62とソレノイド65との間で電気的な吸引力が発生するように構成されている。また、付勢部材64は、コイルばねから構成されており、弁体62を閉弁方向に付勢した状態で弁体収容部61c内に配置されている。
【0044】
これらの結果、付勢部材64による付勢力と通電されたソレノイド65による電気的な吸引力とにより、弁体62が閉弁方向(Z2方向)に移動して弁座63に当接することによって、FSV6は、閉弁状態になるように構成されている。また、ソレノイド65への通電を解除した状態で、流入路61aにおける冷却水の圧力と流出路61bおよび弁体収容部61cにおける冷却水の圧力とに基づいて弁体62にZ2側から加えられる力が付勢力を超えた場合に、弁体62が開弁方向(Z1方向)に移動されて、FSV6は、閉弁状態から開弁状態に切り替えられる。
【0045】
ここで、付勢部材64の付勢力とソレノイド65による吸着力とは共に小さい。また、開弁状態においてZ2側からの圧力が加えられる弁体62の面積(
図4の開弁状態の図において二重鎖線で囲む領域の面積)S1は、閉弁状態においてZ2側からの圧力が加えられる弁体62の面積(
図4の閉弁状態の図において二重鎖線で囲む領域の面積)S2よりも大きい。この結果、FSV6は、開弁状態において約2000rpmなどの大きな流量の冷却水を吐出する回転数で電動W/P1を駆動させているような通常駆動状態の場合では、付勢部材64の付勢力およびソレノイド65による吸引力だけでは冷却水による圧力に抗することができない。したがって、FSV6において、開弁状態において冷却水を通常の流量で流通させている場合には、開弁状態から閉弁状態に切り替えることは困難である。
【0046】
そこで、本実施形態のエンジン冷却装置100では、ECU7は、冷却水流路8bのFSV6を開弁状態から閉弁状態に切り替える際に、たとえば約700rpm以下の低回転数で電動W/P1を低駆動させて電動W/P1をから吐出される冷却水の流量を通常の流量よりも減少させつつ、ソレノイド65に通電するように構成されている。これにより、エンジン冷却装置100において、電動W/P1を駆動させながら付勢部材64の付勢力と電気的な吸引力とにより弁体62が閉弁方向に移動されて、冷却水流路8bのFSV6が閉弁し、その結果、冷却水流路8bにおける冷却水の流通が遮断される。一方、FSV6の閉弁動作時および閉弁完了後においても、冷却水は、冷却水流路8b以外の、サーモスタット5の開弁時の冷却水流路8aおよび冷却水流路8cを流通する。これにより、エンジン101に冷却水を流通させることが可能である。なお、ECU7のFSV6の閉弁制御の詳細については後述する。
【0047】
また、FSV6を閉弁してヒータコア3への冷却水の流通を遮断する場合としては、エンジン101により暖められた冷却水がヒータコア3(冷却水流路8b)を流通するのを遮断して、車内の冷房効率を向上させる場合や、ヒータコア3の冷却水の流通を遮断してオイルクーラ4(冷却水流路8c)側を流通する冷却水の流量を増加させることによって、オイルクーラ4におけるオイルの冷却効率を向上させる場合などがある。なお、FSV6を閉弁してヒータコア3への冷却水の流通を遮断するか否かはECU7により判断される。
【0048】
また、
図1に示すように、エンジン冷却装置100には、冷却水流路8aのエンジン101の下流側における冷却水の下流側温度(出口水温To)を検出する水温センサ7aが配置されている。水温センサ7aは、出口水温Toに関する情報(出口水温情報)をECU7に送信するように構成されている。
【0049】
<FSV閉弁時のタイミングチャートによる本実施形態と従来例との比較>
次に、
図1および
図4〜
図6を参照して、本発明の一実施形態におけるFSV6の閉弁時のタイミングチャートと、従来例におけるFSVの閉弁時のタイミングチャートとの比較について説明する。
【0050】
(本実施形態におけるFSV閉弁時のタイミングチャート)
まず、
図5に示す本実施形態におけるFSV6の閉弁時のタイミングチャートについて説明する。
【0051】
電動W/P1が通常駆動状態である状態から、冷却水流路8bのヒータコア3(
図1参照)への冷却水の流通を遮断する場合において、本実施形態では、まず、ECU7により、FSV6を閉弁可能な電動W/P1の最大の回転数(閉弁可能最大回転数)が算出される。そして、ECU7は、算出された閉弁可能最大回転数で低駆動するように、電動W/P1の駆動制御を行う。これにより、電動W/P1は低駆動状態になるものの、エンジン冷却装置100内(ラジエータ2を経由する冷却水流路8a(サーモスタット5の開弁時)および冷却水流路8c)における冷却水の流通(循環)は継続される。また、ECU7は、電動W/P1を低駆動させる指示を行うのと略同時に、FSV6に対して通電する。これにより、弁体62に閉弁方向(
図4参照)への電気的な吸引力が加えられる。ここで、電動W/P1は、閉弁可能最大回転数で駆動されているので、FSV6において冷却水の流通が行われていたとしても、冷却水の圧力に基づく力よりもソレノイド65による吸引力と付勢部材64による付勢力とを合計した力が大きくなる。これにより、FSV6は閉弁される。
【0052】
FSV6の閉弁完了後、ECU7は、通常駆動するように電動W/P1の駆動制御を行う。これにより、電動W/P1の回転数が大きくなり、吐出される冷却水の流量が増加される。
【0053】
(従来例におけるFSV閉弁時のタイミングチャート)
次に、
図6に示す従来例におけるFSVの閉弁時のタイミングチャートについて説明する。なお、従来例としては、上記実施形態のエンジン冷却装置100と同様の構成を有する一方、FSVの閉弁時において電動W/Pの駆動を停止させる場合を示す。
【0054】
電動W/Pが通常駆動状態である状態から、ヒータコアへの冷却水の流通を遮断したい場合において、従来例では、ECUにより電動W/Pの駆動が停止される。その後、ECUは、FSVの前後差圧の変動が落ち着いて前後差圧がほとんどなくなるまで経過した後に、FSVに対して通電する。これにより、FSVは閉弁される。また、ECUは、FSVに対して通電するのと略同時に、再度駆動するように電動W/Pの駆動制御を行う。この際、電動W/Pがブラシレス・センサレスモータを含んでいることに起因して、ECUが電動W/Pの駆動指示を行ってから実際に電動W/Pが通常駆動するまでに開始駆動のための期間が必要になる。
【0055】
(本実施形態と従来例との比較)
この結果、FSVの閉弁時において、従来例のエンジン冷却装置では、FSVを閉弁するために必要な電動W/P停止期間と開始駆動のための期間とにおいて、エンジン冷却装置における冷却水の循環が停止されてしまう。これにより、エンジンの冷却が行われない期間が長くなり、その結果、駆動中のエンジンが十分に冷却されないことに起因して、エンジンが高温になってしまう。一方で、本実施形態のエンジン冷却装置100では、FSV6の閉弁制御中であっても電動W/P1が低駆動され続けることにより、エンジン冷却装置100内(サーモスタット5の開弁時の冷却水流路8aおよび冷却水流路8c)において冷却水が流通されて、駆動中のエンジン101に冷却水が流通される。さらに、従来例のエンジン冷却装置と異なり、電動W/P1を開始駆動のための期間が発生しない。これにより、エンジン101が十分に冷却されないことに起因する不都合が生じるのが効果的に抑制される。
【0056】
(FSVの閉弁制御)
次に、
図1〜
図5および
図7〜
図10を参照して、本発明の一実施形態におけるFSV6の閉弁制御フローについて説明する。なお、本制御フローは、ECU7(
図1参照)により行われる。
【0057】
まず、
図7に示すように、ステップS1において、冷却水流路8bのFSV6の閉弁が必要か否かが判断されるとともに、必要であると判断されるまで、ステップS1の制御が繰り返される。FSV6の閉弁が必要であると判断された場合には、ステップS2において、水温センサ7aから送信された出口水温情報に基づいてエンジン101の下流側(出口)における冷却水の下流側温度(出口水温To)が取得される。ステップS3において、エンジン101から送信されたエンジン回転数情報およびトルク情報に基づいて、現在のエンジン101のエンジン回転数およびエンジントルクが取得されるとともに、電動W/P1から送信されたポンプ回転数情報に基づいて、現在の電動W/P1の回転数(ポンプ回転数)が取得される。
【0058】
そして、ステップS4において、取得した出口水温To、エンジン回転数およびエンジントルクに基づいて、エンジン101の上流側(入口)における冷却水の上流側温度(入口水温Ti)が推定される。
【0059】
具体的には、まず、ECU7は、ECU7の記憶部(図示せず)に予め記憶された
図8に示す冷却損失マップに基づいて、取得したエンジン回転数およびエンジントルクから冷却損失を求める。この冷却損失マップには、エンジン回転数毎のエンジントルクに対する冷却損失が示されている。たとえば、ECU7は、エンジン回転数が約2000rpmで、エンジントルクが約150N・mである場合には、冷却損失マップから冷却損失が約25kWであると求める。
【0060】
そして、エンジン出入口水温差△T=(出口水温To−入口水温Ti)=(冷却損失/(冷却水の流量×冷却水の比熱×冷却水の密度))という式(1)を用いて、冷却損失および出口水温Toからエンジン出入口水温差△Tおよび入口水温Tiが推定される。なお、式(1)において、「冷却水の流量」は電動W/P1から吐出される冷却水の流量であり、ECU7により、ポンプ回転数に基づいて取得される。また、式(1)において、「冷却水の比熱」および「冷却水の密度」は、簡易的に各々1であると近似してもよいし、予め測定等を行うことにより各々求めてもよい。
【0061】
次に、ステップS5において、入口水温Tiに基づいて、サーモスタット5の開度が推定される。具体的には、入口水温Tiは、エンジン101の上流側においてエンジン101の近傍に配置されるサーモスタット5における冷却水の温度と略等しい。そこで、ECU7は、ECU7の記憶部に予め記憶された
図2に示す開度特性マップを用いて、入口水温Tiからサーモスタット5の開度を推定する。この開度特性マップには、入口水温Tiに対するサーモスタット5の開度が示されている。たとえば、入口水温Tiが約80℃である場合には、開度特性マップからサーモスタット5の開度が0%であると推定される。
【0062】
次に、ステップS6において、サーモスタット5の開度に基づいて、電動W/P1から吐出される冷却水の流量に対する冷却水の通水抵抗が推定される。具体的には、ECU7は、ECU7の記憶部に記憶された
図3に示す通水抵抗マップを用いて、推定したサーモスタット5の開度に対応する冷却水の通水抵抗を推定する。この通水抵抗マップには、サーモスタット5の開度毎の電動W/P1の冷却水の流量に対する冷却水の通水抵抗が示されており、サーモスタット5の開度が小さくなるに従い、冷却水の流量に対する冷却水の通水抵抗が大きくなる。
【0063】
そして、ステップS7において、冷却水の通水抵抗に基づいて、FSV6を閉弁可能な電動W/P1の最大の回転数(閉弁可能最大回転数)が取得される。具体的には、ECU7の記憶部には、予め求められたFSV6を閉弁可能な電動W/P1の最大吐出圧力(閉弁可能最大吐出圧力)と、
図9に示す回転数マップとが記憶されている。この回転数マップには、電動W/P1の回転数毎の電動W/P1の冷却水の流量に対する電動W/P1の吐出圧力が示されている。
【0064】
なお、閉弁可能最大吐出圧力は、FSV6における通電により閉弁可能な最大の前後差圧と電動W/P1から吐出される冷却水の圧力に対するFSV6の前後差圧の比率とを測定等により取得するとともに、閉弁可能な最大の前後差圧を前後差圧の比率で除することによって、予め求められている。たとえば、FSV6における通電により閉弁可能な最大の前後差圧が約0.2kPaであり、電動W/P1から吐出される冷却水の圧力に対するFSV6の前後差圧の比率が10%である場合には、閉弁可能最大吐出圧力は、約2kPa(=0.2/0.1)になる。
【0065】
そして、ECU7により、回転数マップにおいて、閉弁可能最大吐出圧力と冷却水の通水抵抗との交点Oを通る電動W/P1の回転数が、閉弁可能最大回転数として取得される。たとえば、電動W/P1から吐出される冷却水の流量に対する冷却水の通水抵抗(直線で図示)および閉弁可能最大吐出圧力が
図9に示すように交点Oで交わる場合には、交点Oを通る回転数(=約400rpm)が閉弁可能最大回転数として取得される。なお、
図9に示すように、冷却水の通水抵抗が大きくなるに従い、閉弁可能最大回転数は小さくなる。
【0066】
そして、ステップS8において、冷却水の通水抵抗に基づいて、FSV6の閉弁時間が取得される。具体的には、ECU7は、
図9の交点Oに対応する冷却水の流量と、予め求めた電動W/P1から吐出される冷却水の流量に対する冷却水流路8b(FSV6)における冷却水の流量の比率とから、電動W/P1を閉弁可能最大回転数で駆動させた場合のFSV6における冷却水の流量を取得する。なお、FSV6における冷却水の流量は、約1(L/min)以下であるのが好ましく、約0.5(L/min)以下であるのがより好ましい。
【0067】
そして、ECU7は、ECU7の記憶部(図示せず)に予め記憶された
図10に示す閉弁時間マップに基づいて、取得したFSV6における冷却水の流量と、ステップS6で取得した冷却水の通水抵抗とからをFSV6の閉弁時間を取得する。この閉弁時間マップには、冷却水の通水抵抗毎のFSV6における冷却水の流量に対するFSV6の閉弁時間が示されており、冷却水の通水抵抗が大きくなるに従い、閉弁時間が長くなる。
【0068】
そして、ステップS9において、電動W/P1を取得した閉弁可能最大回転
数で駆動するように電動W/P1を駆動制御する。これにより、
図5に示すように、電動W/P1の駆動状態が通常駆動状態から低駆動状態に切り替わり、電動W/P1から吐出される冷却水の流量が減少される。そして、ステップS10において、FSV6のソレノイド65に通電する。これにより、冷却水を流通させた状態であっても、冷却水の流量が減少されていることにより、電気的な吸引力と付勢部材64の付勢力とを合計した力が冷却水の圧力に基づく力を超えて大きくなり、弁体62が閉弁方向(
図4参照)に移動される。これにより、冷却水流路8bのFSV6が閉弁状態になる。なお、流量が減少された冷却水は、冷却水流路8b以外の、サーモスタット5の開弁時の冷却水流路8aおよび冷却水流路8cを流通する。これにより、エンジン101に冷却水が流通させ続けられる。
【0069】
その後、ステップS11において、FSV6のソレノイド65に通電してから、ステップS8において取得したFSV6の閉弁時間が経過したか否かが判断されるとともに、経過したと判断されるまで、ステップS11の制御が繰り返される。FSV6の閉弁時間が経過したと判断された場合には、ステップS12において、電動W/P1の駆動状態が低駆動状態から通常駆動状態に戻されて、電動W/P1から吐出される冷却水の流量が増加される。つまり、エンジン冷却装置100において、ECU7によりFSV6の閉弁時間が設定されるとともに、閉弁時間の経過後、冷却水循環流路8における冷却水の流量が増加される。そして、FSV6の閉弁制御フローが終了される。
【0070】
この際、電動W/P1の低駆動期間においても電動W/P1が駆動され続けていることによって、電動W/P1は、開始駆動のための期間を要さずに低駆動状態から迅速に通常駆動状態に切り替わる。これにより、エンジン101が高負荷で駆動されるような、電動W/P1の低駆動状態では十分にエンジン101を冷却することができない場合であっても、電動W/P1が迅速に通常駆動状態に切り替わることにより、エンジン101が迅速かつ十分に冷却される。
【0071】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0072】
本実施形態では、上記のように、ラジエータ2を経由しない冷却水流路8bのFSV6を閉弁させる際に、流量が減少された冷却水を流通させた状態でFSV6を閉弁させて、冷却水流路8bにおける冷却水の流通を遮断する制御を行うECU7を設ける。これにより、冷却水を流通させた状態でFSV6を閉弁させることにより、ラジエータ2を経由しない冷却水流路8bのFSV6を閉弁させる場合であっても、エンジン冷却装置100内(ラジエータ2を経由する冷却水流路8a(サーモスタット5の開弁時)および冷却水流路8c)に冷却水を流通させるようにすることができるので、エンジン101に対して冷却水の流通が行われなくなるのを抑制することができる。この結果、ラジエータ2を経由しない冷却水流路8bのFSV6を閉弁させる場合に、流通する冷却水によりエンジン101を冷却し続けることができるので、駆動中のエンジン101が高温になるのを抑制することができる。また、弁体62を閉弁方向に移動させる際に、流量が減少された冷却水を流通させることによって、流通する冷却水に抗して弁体62を閉弁方向に移動させるための力が大きくなるのを抑制することができるので、FSV6において大きな電気的な吸引力が必要になるのを抑制することができる。これにより、FSV6において閉弁に必要な電力が増大するのを抑制することができるとともに、大きな電気的な吸引力を発生させるためにFSV6が大型化するのを抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、FSV6を、電動W/P1を駆動させながら付勢部材64の付勢力および電気的な吸引力により弁体62を閉弁方向に移動させるように構成する。これにより、付勢部材64による付勢力の分、流通する冷却水に抗して弁体62を閉弁方向に移動させやすくすることができるので、ラジエータ2を経由しない冷却水流路8bのFSV6を閉弁するために冷却水の流量が大きく減少されるのを抑制することができる。この結果、冷却水の流量が減少された状態であっても、エンジン冷却装置100内(ラジエータ2を経由する冷却水流路8a(サーモスタット5の開弁時)および冷却水流路8c)に冷却水を十分に流通させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、ECU7を、少なくとも冷却水の通水抵抗に基づいて、電動W/P1の閉弁可能最大回転数を取得し、閉弁可能最大回転数の回転数で電動W/P1を駆動させた状態で弁体62を移動させることによって、冷却水流路8bのFSV6を閉弁させる制御を行うように構成する。これにより、閉弁可能最大回転数で電動W/P1を駆動させた状態で弁体62を移動させることによって、エンジン冷却装置100内(ラジエータ2を経由する冷却水流路8a(サーモスタット5の開弁時)および冷却水流路8c)に冷却水を流通させるようにしつつ、ラジエータ2を経由しない冷却水流路8bのFSV6を確実に閉弁させることができる。また、電動W/P1の閉弁可能最大回転数に関連する冷却水の通水抵抗に基づいて電動W/P1の閉弁可能最大回転数を取得することによって、正確な電動W/P1の閉弁可能最大回転数に基づいて、FSV6をより確実に閉弁させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、ECU7を、サーモスタット5の開度に基づいて、冷却水の通水抵抗を推定するように構成する。これにより、適切に推定された冷却水の通水抵抗に基づいて、より正確な電動W/P1の閉弁可能最大回転数を取得することができる。また、サーモスタット5が開状態の場合には、冷却水流路8bにおける冷却水の流通が遮断された場合であっても、冷却水が冷却水流路8aを流通して、エンジン101に冷却水を流通させることができるとともに、冷却水流路8aのラジエータ2に冷却水を流通させることによって、温度の高い冷却水を効果的に冷却することができる。また、サーモスタット5が閉状態の場合は、エンジン暖機中のような、温度が低い冷却水により駆動中のエンジン101を冷却するのが好ましくない場合であるため、冷却水流路8aのラジエータ2に冷却水を流通させないことによって、ラジエータ2において冷却水が冷却されてしまうのを抑制して、エンジン101が過度に冷却されるのを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、電動W/P1が、ブラシレス・センサレスモータ1aを含む電動式のウォータポンプである場合であっても、エンジン冷却装置100において、FSV6を閉弁させる際に、電動W/P1を冷却水の流量を減少させるように駆動させることにより、開始駆動のための期間のような余分な時間が必要ない。この結果、電動W/P1がブラシレス・センサレスモータ1aを含んでいる場合であっても、エンジン101に対する冷却水の流通が行われなくなるのを抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態では、ECU7が、冷却水流路8bのFSV6の閉弁完了後には、電動W/P1によって冷却水の流量を増加させる制御を行う。これにより、冷却水によるエンジン101やオイルクーラ4のオイルなどの冷却などを効果的に行うことができる。
【0078】
また、本実施形態では、FSV6が配置される冷却水流路8bに、冷却水が熱交換されるヒータコア3を配置する。これにより、FSV6が開弁状態の場合には、ヒータコア3において、冷却水から回収した熱により車内の暖房を行うことができるので、冷却水の熱を効率的に利用することができる。また、FSV6を閉弁状態にすることによって、エンジン101により暖められた冷却水がヒータコア3(冷却水流路8b)を流通するのを遮断することができるので、車内の冷房効率を向上させることができる。
【0079】
また、本実施形態では、冷却水流路8cに冷却水が熱交換されるオイルクーラ4を配置する。これにより、冷却水循環流路8を循環する冷却水を用いてオイルを冷却することができる。また、FSV6を閉弁状態にすることによって、ヒータコア3(冷却水流路8b)の冷却水の流通を遮断して、オイルクーラ4(冷却水流路8c)側を流通する冷却水の流量を増加させることができるので、オイルクーラ4におけるオイルの冷却効率を向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態では、ECU7を、電動W/P1における冷却水の閉弁可能最大吐出圧力と冷却水の通水抵抗とに基づいて、電動W/P1の閉弁可能最大回転数を取得するように構成する。これにより、電動W/P1の閉弁可能最大回転数を確実に取得することができる。
【0081】
また、本実施形態では、ECU7を、冷却水の通水抵抗に応じて、FSV6の閉弁完了までの期間(閉弁時間)を設定するとともに、設定されたFSV6の閉弁時間経過後、電動W/P1によって冷却水の流量を増加させる制御を行うように構成する。これにより、FSV6が完全に閉弁しない状態でFSV6を流通する冷却水の流量が増加されるのを抑制することができるので、FSV6が完全に閉弁されずに、冷却水流路8bにおける冷却水の流通が継続されてしまうのを抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態では、ECU7を、水温センサ7aにより検出されたエンジン101の下流側における冷却水の下流側温度(出口水温To)と、エンジン101における冷却損失とに基づいて、エンジン101の上流側における冷却水の上流側温度(入口水温Ti)を推定し、入口水温Tiに基づいて、エンジン101よりも上流側に配置されるサーモスタット5の開度を推定するように構成する。これにより、エンジン101の下流側に一般的に配置される水温センサ7aの検出結果(出口水温To)を用いて、サーモスタット5の開度を推定することができるので、エンジン101の上流側に水温センサ7aとは別個に水温センサを配置する必要がない。これにより、部品点数を削減することができる。
【0083】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0084】
たとえば、上記実施形態では、エンジン冷却装置100を、FSV6を閉弁させる際に、出口水温などの様々なパラメータから閉弁可能最大回転数を取得し、取得した閉弁可能最大回転数で電動W/P1を低駆動させるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、エンジン冷却装置は、冷却水の流量が減少させた状態で少なくとも電気的な吸引力によりFSVが閉弁されるように構成されていればよい。たとえば、エンジン冷却装置を、FSVを閉弁させる際に、予め設定された小さな回転数で電動W/Pを低駆動させるように構成してもよい。これにより、閉弁可能最大回転数を求める必要がないので、その分、ECUの制御負荷を軽減することが可能である。
【0085】
また、上記実施形態では、ECU7が取得した閉弁可能最大回転数で電動W/P1を低駆動させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ECUは、閉弁可能最大回転数未満の回転数で電動W/Pを低駆動させてもよい。この際、閉弁可能最大回転数未満で、かつ、閉弁可能最大回転数近傍の回転数で、電動W/Pを低駆動させるのが好ましい。これにより、電動W/Pの低駆動状態における冷却水の流量を十分に確保しつつ、FSVの閉弁をより確実に行うことが可能である。
【0086】
また、上記実施形態では、入口水温Ti、サーモスタット5の開度および冷却水の通水抵抗をそれぞれ推定する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、入口水温、サーモスタットの開度および冷却水の通水抵抗を、センサなどの検出部を用いて各々直接的に検出するように構成してもよい。なお、冷却水の通水抵抗を直接的に検出する場合には、入口水温およびサーモスタットの開度を取得(推定)する必要がなく、サーモスタットの開度を直接的に検出する場合には、入口水温を取得(推定)する必要がない。
【0087】
また、上記実施形態では、ECU7により、冷却水の通水抵抗およびFSV6における冷却水の流量からFSV6の閉弁時間を求めた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ECUは、FSVの閉弁時間として、予め設定された閉弁時間を用いてもよい。これにより、閉弁時間を求める必要がないので、その分、ECUの制御負荷を軽減することが可能である。
【0088】
また、上記実施形態では、ウォータポンプとして、電動W/P1を用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ウォータポンプとして、エンジンのクランクシャフトなどから回転駆動力が伝達される、電動ではないウォータポンプを用いてもよい。なお、この場合、ウォータポンプ内のインペラとカバーとの離間距離を調整可能に構成することによって、ウォータポンプから吐出される冷却水の流量を制御することが可能である。また、トランスミッションやクラッチなどの駆動力を制御することが可能な部材を用いてクランクシャフトから伝達される回転駆動力を制御することによっても、ウォータポンプから吐出される冷却水の流量を制御することが可能である。
【0089】
また、上記実施形態では、電動W/P1がブラシレス・センサレスモータ1aを含む電動式のウォータポンプである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ブラシレス・センサレスモータの代わりに、ロータの位置を検出するセンサが設けられたブラシレスモータ、または、ブラシを有するモータを電動W/Pが含むように構成してもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、FSV6(電磁弁)がソレノイド65に加えて付勢部材64を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電磁弁は、少なくとも電気的な吸引力により弁体が閉弁方向に移動するように構成されていればよい。つまり、電磁弁を、付勢部材を含まないように構成してもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、ラジエータ2が配置される冷却水流路8a(第1冷却水流路)にサーモスタット5を配置し、ヒータコア3を配置し、FSV6が配置される冷却水流路8b(第2冷却水流路)にヒータコア3を配置し、冷却水流路8c(第3冷却水流路)にオイルクーラ4を配置する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1冷却水流路にラジエータ以外に熱交換器を配置してもよい。また、第1冷却水流路にサーモスタットを配置しなくてもよい。また、第2冷却水流路にヒータコア以外の熱交換器を追加して配置してもよいし、ヒータコアに代えて別の熱交換器を配置してもよいし、ヒータコアを含む熱交換器自体を配置しなくてもよい。また、第3冷却水流路にオイルクーラ以外の熱交換器を追加して配置してもよいし、オイルクーラに代えて別の熱交換器を配置してもよいし、オイルクーラを含む熱交換器自体を配置しなくてもよい。ここで、ヒータコアおよびオイルクーラ以外の熱交換器としては、EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラや、排熱回収器、ミッション冷却器、インバータ冷却器などを用いることが可能である。
【0092】
また、上記実施形態では、オイルクーラ4が配置される冷却水流路8c(第3冷却水流路)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第3冷却水流路は設けなくてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、エンジン冷却装置100が車両に搭載される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明のエンジン冷却装置をエンジンが取り付けられた船舶などに設けてもよい。