(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181127
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】無冷媒型磁石のための管状の熱スイッチ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20170807BHJP
F25B 9/00 20060101ALI20170807BHJP
H01F 6/04 20060101ALI20170807BHJP
G01R 33/3815 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
A61B5/05 360
A61B5/05 331
F25B9/00 ZZAA
H01F6/04
G01N24/06 510D
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-187065(P2015-187065)
(22)【出願日】2015年9月24日
(62)【分割の表示】特願2012-545492(P2012-545492)の分割
【原出願日】2010年12月7日
(65)【公開番号】特開2016-34509(P2016-34509A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2015年10月20日
(31)【優先権主張番号】61/290,270
(32)【優先日】2009年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】アケルマン ロバート エイ
(72)【発明者】
【氏名】メントゥール フィリッペ エイ
【審査官】
伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3673410(JP,B2)
【文献】
特開2005−101613(JP,A)
【文献】
特許第5815557(JP,B2)
【文献】
特開2011−125686(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0209919(US,A1)
【文献】
特開平11−325768(JP,A)
【文献】
特開平10−089867(JP,A)
【文献】
特開平11−354317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
F25B 9/00
G01R 33/38
H01F 6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1段の冷却器、
前記第1段の冷却器に熱的に結合した第1の熱交換器、
第2段の冷却器、
前記第2段の冷却器に熱的に結合した第2の熱交換器、
前記第2の熱交換器が前記第1の熱交換器よりも温かいとき、高密度の冷却したガスが自然対流により前記第1の熱交換器から前記第2の熱交換器に流れ落ちるのに通る下向流管、
前記第2の熱交換器が前記第1の熱交換器よりも温かいとき、低密度の温かいガスが自然対流により前記第2の熱交換器から前記第1の熱交換器に流れ上がるのに通る上向流管、並びに
前記第2の熱交換器に熱的に結合した超電導体
を有する、前記超電導体を冷却するために、第1及び第2の冷却段を受動的に切り替えることを容易にする冷凍システム。
【請求項2】
前記下向流管は、前記第1の熱交換器の低位側にあるローポートと、前記第2の熱交換器の低位側にあるローポートとに結合され、
前記上向流管は、前記第1の熱交換器の高位側にあるハイポートと、前記第2の熱交換器の高位側にあるハイポートとに結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ガスはヘリウムガスである、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ガスは、水素ガス、ネオンガス又は窒素ガスの1つである請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1段の冷却器は前記ガスを約25ケルビン(K)に冷却する、請求項1乃至4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
冷却したガスは、重力により前記第1の熱交換器の低位側から前記下向流管を通り前記第2の熱交換器の低位側に流れ落ち、前記超電導体が約25Kよりも温かい間、前記超電導体から熱を吸収し、前記超電導体から熱を吸収した前記温かいガスは、前記第2の熱交換器の高位側から前記上向流管を通り前記第1の熱交換器の高位側に上昇し、熱が放散され、前記ガスは、第1の熱交換器において約25Kに冷却される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記超電導体が約25Kに達したときガス流が生じ、前記第2段の冷却器は、前記第2の熱交換器を約4Kに冷却し、それにより前記超電導体を約4Kに冷却し前記超電導体を約4Kに維持する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記冷凍システムは、前記超電導体は、磁場を発生させるのに用いられる超電導磁石を含んでいるMR装置に結合されている請求項1乃至7の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
検査領域を通る定常磁場を生成する超電導磁石、
請求項1乃至8の何れか一項に記載の冷凍システム、
前記検査領域から信号を受信する少なくとも1つの無線周波数コイル、及び
前記磁気共鳴信号を処理する電子モジュール
を有する磁気共鳴システム。
【請求項10】
第1段の冷却器を用いて、作動ガスを第1段の温度に冷却するステップ、
前記冷却した作動ガスは、自然対流により、前記第1段の冷却器に熱的に結合した第1の熱交換器から下向流管を通り超電導体と熱接触している第2の熱交換器に流れ落ち、前記超電導体から熱を吸収することを可能にするステップであって、前記第2の熱交換器が前記第1の熱交換器よりも温かいとき、前記冷却した作動ガスが自然対流により前記第1の熱交換器から前記第2の熱交換器に流れ落ちる、ステップ、
前記第2の熱交換器が前記第1の熱交換器よりも温かいとき、温かい作動ガスが自然対流により前記第2の熱交換器から上向流管を通り前記第1の熱交換器に流れ上がることを可能にするステップ、
前記温かい作動ガスから熱を放散し、前記作動ガスを前記第1段の温度に再冷却するステップ、並びに
前記第2の熱交換器がひとたび前記第1段の温度に凡そ達すると、前記超電導体に熱的に結合した第2段の冷却器を用いて、前記超電導体を超電導する温度に冷却するステップ
を有する超電導体を超電導する温度に冷却する方法。
【請求項11】
前記超電導する温度は約4Kである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記超電導体は、磁気共鳴装置に用いられる磁石を含んでいる請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記作動ガスはヘリウムガスである請求項10乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記作動ガスは水素ガス、ネオンガス又は窒素ガスの1つである請求項10乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記作動ガスは、前記第2の熱交換器が前記第1の熱交換器よりも冷たくなると、前記第1及び第2の熱交換器の間を流れることをやめ、それにより前記第1及び第2の熱交換器を断熱する、請求項11乃至14の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、例えば超電導磁気共鳴撮像又は分光法の磁石のような、超電導体をその臨界温度より下に冷却する冷却手続き及びシステムに特に有用であることが分かる。しかしながら、説明する技術は、他の形式の医用システム、他の冷却システム及び/又は他の冷却アプリケーションに応用されることも分かっている。
【背景技術】
【0002】
超電導MRI磁石を冷却する従来の冷却システムは、液体の低温流体(例えば液体ヘリウム等)で満たされた大きなデュワー(dewar)を用いている。このデュワーは高価であり、かなり場所を取る。
【0003】
初期冷却中、ヘリウムガス及び磁石は通例、第1段の冷却器を用いて約25ケルビン(K)に冷却される。第2段の冷却器は、前記ヘリウムを25Kからこのヘリウムの凝結温度の4.2Kに冷却する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度がひとたび25Kより下に達したら、温かい25Kの第1段は、前記第2段から熱的に切り離される。25K辺りの温度で効果的に熱を切り替えるのは、不便であり、複雑になり得る。
【0005】
MRI磁石のための2段の蓄冷型冷凍システムの第1段を熱的に切り替えることを容易にするシステム及び方法に対し技術的に満たされていない要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある態様によれば、超電導体を冷却するために第1及び第2の冷却段の間を受動的に切り替えることを容易にする冷凍システムは、第1段の冷却器、この第1段の冷却器に熱的に結合した第1の熱交換器、第2段の冷却器及び前記第2段の冷却器に熱的に結合した第2の熱交換器を含む。このシステムはさらに、高密度の冷却したガスが前記第1の熱交換器から前記第2の熱交換器に流れ落ちるのに通る下向流管、並びに前記第2の熱交換器が前記第1の熱交換器よりも温かいとき、低密度の温かいガスが前記第2の熱交換器から前記第1の熱交換器に流れ上がるのに通る上向流管を含んでいる。加えて、このシステムは、前記第2の熱交換器に熱的に結合した超電導体を含んでいる。
【0007】
他の態様によれば、超電導体を超電導する温度に冷却する方法は、第1段の冷却器を用いて、作動ガス(working gas)を第1段の温度に冷却するステップ、前記冷却した作動ガスは、第1の熱交換器から前記超電導体と熱接触している第2の熱交換器に流れ落ち、前記超電導体から熱を吸収することを可能にするステップ、及び温かい作動ガスが前記第2の熱交換器から前記第1の熱交換器に流れ上がることを可能にするステップを有する。この方法はさらに、前記温かい作動ガスから熱を放散し、この作動ガスを前記第1段の温度に再冷却するステップ、及び前記第2の熱交換器がひとたび前記第1段の温度に凡そ達すると、前記超電導体に熱的に結合した第2段の冷却器を用いて、前記超電導体を超電導する温度に冷却するステップを有する。
【0008】
他の態様によれば、超電導磁石を動作温度に冷却する装置は、作動ガスを約25Kに冷却する手段、並びに前記作動ガスが循環する及び超電導磁石が約25Kになるまで、対流によって前記超電導磁石から熱を取り除く手段を有する。前記装置はさらに、約25Kから約4Kに前記超電導磁石を冷却する、並びに動作中、前記超電導磁石を約4Kに維持する手段を含む。
【0009】
1つの利点は、切り替え動作が受動的であり、機械的又は可動部品を必要としないことである。
【0010】
他の利点は、約4Kでの冷凍機の第1段と磁石との間の断熱が最大であることである。
【0011】
他の利点は、全ての温度範囲にわたる高圧、高密度のガスの動作にある。
【0012】
本発明のさらに他の利点は、以下の詳細な説明を読み、理解すると、当業者によって分かるだろう。
【0013】
これら図面は様々な態様を説明するためだけであり、限定するとは考えない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】2段の冷凍システムを含む磁気共鳴システムを説明し、選択した内部の構成要素を概略的に公開するために部分断面図で示す。
【
図2】開示される様々な実施例に従って、管状の熱スイッチを用いた2段の冷凍システムを説明している。
【
図3】開示される1つ以上の態様に従って、MRI磁石を室温から約4Kに冷却するように2段の冷凍機の動作を制御するために使用される熱スイッチを受動的に調整するための処理フローを説明している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
MRI磁石又は他の超電導体をそれが超電導をする温度、例えば4Kに冷却するためのシステム及び方法が開示され、この冷却は、選択した温度、例えば25Kでシステムの第1段を受動的に断熱し、システムの第2段を稼働させる管状の熱スイッチを備える2段冷凍機を使用する。
図1を参照すると、磁気共鳴(MR)システムは、通常は円筒形状又は環状のハウジング12を有するMRスキャナ10を含み、このハウジングは、選択した内部部品を図示するために、
図1において部分断面図で示される。このハウジング12は、ハウジング12の円筒又はトロイド(toroid)軸と同心のボア14を定めている。被験者は、撮像するためにボア14内に収容される。ソレノイド巻き線により定められる熱遮蔽された主磁石20は、少なくともボア14の検査領域内に、前記円筒又はトロイド軸と通常は平行である場の方向を持つ静磁場(B
0)を生成する。主磁石20の巻き線は超電導を行い、例えば真空チャンバ又はヘリウムガス若しくは他の作動ガス(例えば熱交換ガス)を含むデュワー、及び加熱を最小限にするための他の断熱形式により断熱される。
【0016】
ハウジング12はさらに、ボア14の検査領域内において選択した方向への傾斜磁場を重畳するための複数の傾斜磁場巻き線22を含む又は支持する。これら傾斜磁場は一般に時間的に変化する。説明する実施例として、スライス選択式の傾斜磁場は、軸スライスを選択するために、磁気共鳴励起中に前記ボアの軸16に沿って印加され、この軸スライスを横断する位相符号化傾斜磁場が印加される休止時間が続き、周波数符号化傾斜磁場が前記軸16及び位相符号化方向の両方を横断する方向に印加される読み出し時間が続く。さらに複雑なシーケンス、例えばエコープラナー撮像法(EPI)において、正弦波又は他の急速時変する傾斜磁場が前記傾斜磁場巻き線22を選択的に通電することにより印加される。
【0017】
前記磁気共鳴励起は、1つ以上の無線周波数コイル24に無線周波数(B
1)パルスを磁気共鳴周波数(例えば3.0Tの場における
1Hの励起に対し128MHz)で印加することにより生成される。説明する実施例において、無線周波数コイル24は、軸16と同軸のハウジング12に又はその中に配される"全身用"ボリュームコイル、例えばバードケージ型コイル又はTEM(transverse electromagnetic)コイルである。より一般的には、例えば頭部コイル、四肢コイル、表面コイル等のような局所コイル又はコイルアレイがMR励起に使用される。MRの読み出しは、励起に使用したのと同じ(複数の)コイル24を用いて行われてもよいし、又はこのMRの読み出しは、(複数の)異なる無線周波数コイル(図示せず)により行われてもよい。
【0018】
説明する実施例において、患者ローディングシステムは、ベッド32上の患者がMRスキャナ10のボア14内に移送されるように、ハウジング12の端に配される患者寝台30を含んでいる。このMRシステムはさらに、MRデータを取得し、この取得したMRデータを処理するようにMRスキャナ10を制御するのに適したMR電子機器モジュール34を含んでいる。例えば、このMR電子機器モジュール34は、画像再構成モジュール、分光モジュール等を含んでもよい。コンピュータ又はGUI(graphic user interface)36は、MRシステムとのユーザインタフェースを提供し、このコンピュータ36で実行するソフトウェアとしてMR電子機器モジュール34の一部又は全てを包含してもよい。このように、MRスキャナ10は、ボア14の検査領域内に位置決められる関心領域(VOI)の画像を生成する。
【0019】
MRシステムは液体ヘリウムを使わずに動作することができる磁石冷却システム又は冷凍機42も含んでいる。超電導磁石20を磁石が超電導する温度にさせるために用いられる低温(例えば約4K)を達成するために、冷却システム42は、約25K(又は他の選択した温度)に冷却する第1段52、及び約4K(又は他の何らかの既定の温度)に冷却する第2段54を含んでいる。磁石の初期冷却中、この磁石を約25Kに下げさせるために第1段の冷却器を使用し、次いで磁石を約4Kに下げさせるために、第2段の冷却器に切り替えることが有利である。この冷却システム42は、
図2に関して詳細に説明されるように、第1段との熱伝達を受動的にオンにしたりオフにしたりするような方法で前記第1段及び第2段を結合する。
【0020】
説明するMRスキャナ10は一例である。ここに開示される、MRスキャナシステムにおいて無冷媒(cryo-free)磁石を冷却する手法は、説明した水平円筒形ボアのスキャナ10、すなわち開放型のMRスキャナ、垂直磁石のMRスキャナ等を含む如何なる形式のMRスキャナ、並びに極低温で動作する他のスキャナと共に応用可能である。
【0021】
図2は、冷却システム42の実施例を説明する。このシステムは、2段の蓄冷型冷凍機であり、この冷凍機において、第1段の冷却器52は、作動ガス(及びそれにより磁石20)を第1の温度(例えば約25K)に冷却し、第2段の冷却器54は、磁石が第1の温度に達したときオンになり、作動ガス及び磁石を第2の温度(例えば約4K)に下がるまで冷却し続ける。この第1段は、"高位"側58及び"低位"側60を持つ(例えば銅等から形成される)熱交換器56を含んでいる。ヘリカル又は螺旋状に巻かれた管62は、前記高位側58にあるハイポート64から前記低位側60にあるローポート66まで第1段の熱交換器の周りに巻かれている。管はさらに第2段の熱交換器70の周りをヘリカル又は螺旋状に巻かれている。
【0022】
上向流(up flow)管72は、第2段の熱交換器のハイポート74を第1段の熱交換器56のハイポート64に接続している。下向流(down flow)管76は、第1段の熱交換器56の低位側60にあるローポート66と、第2段の熱交換器70の低位側にあるローポート78とに結合される。弁を備える充填管80は、この閉ループのシステム、例えば下向流管76に結合される。弁が開かれるとき、加圧した熱交換器ガス(例えば"作動"ガス)、例えばヘリウムが冷却システム42に加えられ、システムが動作する準備をする。動作するとき、熱交換器ガスは、第1段の冷却器52と第2段の熱交換器70との間を流れる。第2段の熱交換器70の下端84は、磁石20と(直接又は間接的に)熱的に結合し、磁石から熱を逃がす。
【0023】
第2段の熱交換器70が第1段の熱交換器56よりも熱くなるとき、冷却した、より高密度の熱交換ガス(又は濃縮した液体)は、前記下向流管76を通り、温かい第2段の熱交換器の下端に流れる。この熱交換器ガスが第2段の熱交換器から熱を奪うので、このガスは温まり、密度が低くなる。この低密度の熱交換器ガスは、第2段の熱交換器の最上端にある上部ポート74まで上昇し、上向流管を通り第1段の熱交換器の最上部のポート64に上昇する。熱交換器ガスは第1段52により冷却されるので、このガスは、密度が高くなり、第1段の熱交換器の最下部のポート66に流れ落ち、下向流管76を下る。このようにして、第1段及び第2段の熱交換器の間の温度勾配は、熱交換器ガスを循環させる。
【0024】
第1段及び第2段の熱交換器がひとたび平衡になったら、熱交換器ガスの密度の変化はなくなり、前記循環は止まる。第2段54は次いで、第2段の熱交換器70をさらに低い温度に冷却することを始める。第2段の熱交換器にある熱交換器ガスが最も冷たいので、このガスは最も密度が高く、第1段の熱交換器に上昇しない、すなわち循環が止まったままである。第2段54は、第2段の熱交換器を超電導する又は臨界温度に冷却し続ける。前記第2段の熱交換器は、熱伝導性の固体又は材料によって磁石と熱接続されることができ、この磁石から熱を奪う。前記作動ガスが加熱されるとき、このガスは、再冷却されるべき第1段の熱交換器に上昇する。この循環は磁石を臨界温度に又はその温度より下に保ち続ける。
【0025】
ある実施例において、前記第1段の冷却器は、第1段の熱交換器を約25Kに冷却し、管は、少なくとも約25Kまで下がり、ガス状のままである熱交換器ガスで満たされると共に、封止されている。磁石20が25Kより上にあるとき、第1段の冷却器52により冷却されたガスは、重力によって前記流管を通り第2段及びMRI磁石に隣接しているコイル管に流れる。第2段の熱交換器70に結合されるコイル内のガスは、磁石が約25Kであるとき、この磁石により温められる。この温められたガスは、前記第2段の熱交換器70から流れ、温かいガスと冷たいガスとの密度の差によって、上向流管62を通り上昇し、第1段の熱交換器56に戻り、ここで再び冷却される。このようにして、熱交換器ガスは、熱交換器ガスの循環が止まる約25KにMRI磁石が冷却されるまで、循環し続ける。第2段は次いで、磁石を25Kより下の約4Kに冷却する。
【0026】
前記第1段は第2段よりも高位にあるため、上向流管にあるガスの自然対流によって、第2段の熱交換器から上向流管を通り第1の熱交換器に熱が移動する。この向きは、上方の熱交換器から下方の熱交換器への冷たい高密度のガスの重力により引き起こされる循環、及び下端で加熱された温かいガスの帰還を生じさせる。管の下端が上端よりも冷たくなる場合にこの循環は止まる。冷凍機の第1及び第2段にこの現象を適応させることは、室温から約4.2Kまでの全ての冷却範囲にわたるこの冷凍機の最も効果的な使用を可能にする。
【0027】
2段の蓄冷型冷凍機の冷却特性は、上記熱スイッチの使用に役立つことである。第1段の冷却器25は、約300Kから約25Kまでの温度範囲にわたり第2段の冷却器54よりも良好な冷却能力を提供するように設計される。前記冷凍機の第2段は、約25Kから約4Kまでの良好な冷却能力を提供する。それ故に、約300Kから約4Kまでの全範囲にわたり最大の冷却を磁石20に供給するために、磁石は300Kからの初期冷却中、第1段の冷却器52に熱的に取り付けられ、次いで磁石が約25Kよりも下に冷却された後、第1段の冷却器52から切り離される。
【0028】
ガス管の配置は、この管が低沸点温度のガスで満たされているとき、この能力を提供する。これは、例えばヘリウム、水素、ネオン及び窒素のようなガスを含んでいる。水素及びヘリウムは、これらの優れた熱伝導特性及び低沸点温度のために効果的である。加えて、受動型スイッチから最大の熱効率を達成するために、前記管の配置の上端及び下端での伝熱は最大となる。つまり、ここに開示される管の設計は、冷凍機の第1及び第2段に取り付けられた、螺旋(例えばヘリカル)状に巻かれた熱交換器を介して最適な熱性能を可能にする。
【0029】
その上、ここで説明される第1及び第2の温度(例えば夫々25K及び4K)は説明であること、並びに説明されるシステム及び方法がこれらの温度に限定されないことは分かっている。寧ろ、第1段の冷却器は、熱交換器ガスを他の選択した温度に冷却してもよい。すなわち、第1及び第2の温度は、使用される特定のガスの沸点によって単に限定される。選択したガスが前記第1の温度、及び既定の圧力(例えば500psi又は他の何からかの好ましい圧力)でガス状態のままでいる限り、説明したシステム及び方法における使用に適している。例えば、窒素ガスが熱交換器ガスとして使用される場合、第1の温度は約60Kであり、N
2ガス流はその温度より下では循環を止め、第2段の冷却器は、最終的な動作温度(例えば第2の温度)まで磁石を冷却することを引き継ぐ。
【0030】
図2は故に、管状の受動型熱スイッチの概念設計を説明している。このスイッチは、冷凍機の第1段52、及びMRI磁石20に熱的に結合した冷凍機の第2段54に夫々取り付けられる2つの熱交換器56、70を有する。下向流管76及び上向流管62は、管に含まれるガスに流れの巡回を供給する前記2つの熱交換器に接続される。ある実施例において、これら熱交換器は、冷凍機並びに磁石及び/又は第2段に取り付けられる銅製の冷却板上に管を螺旋状に巻くことにより製造される。この設計は、冷凍機の第1段が磁石よりも冷却されるとき、重力により引き起こされる熱対流によって磁石20を冷却し、磁石及び第2段がひとたび冷凍機の第1段よりも冷たくなると前記流れを止めることにより、前記磁石を切り離す効果的な熱伝導スイッチを生成する。管の設計は、従来の手法よりもより簡単であり、最小限の構造的制限を用いた高圧、高密度のガスの使用を可能にする。前記システムの受動的動作は、熱交換する及び熱交換しないのスイッチを調整するための機械的な対話を必要としない。
【0031】
図3は、ここに開示される1つ以上の態様に従って、室温から例えば約4KまでMRI磁石又は他の低温の超電導体を冷却するための2段の冷凍機の動作を制御するのに使用される熱スイッチを受動的に調整するための処理フローを説明する。100において、冷凍機の配管システムは作動ガス(例えば水素、ヘリウム、窒素、ネオン等)で満たされている。102において、第1段の冷却器は、この冷却器を又はその近くを通るガスを第1段の温度、例えば25Kに冷却する。104において、冷えたガスは、下向流管を通り第2段の熱交換器に流れ、ここでガスは、MR磁石から熱を吸収する。106において、温められたガスは、上向流管を通り前記第1段の熱交換器に上昇し、ここで熱は放散され、前記第1段の冷却器は再びガスを冷却する。この処理は、磁石及び第2段の熱交換器が第1段の温度に達するまで続く。
【0032】
108において、前記磁石及び第2段の熱交換器がひとたび第1段の温度に又はそれより下になると、管を通る流れは止まる。第1段の冷却器及び熱交換器が、第2段の構成要素及びMRI磁石の温度に等しい又はそれより高くなる場合、ガスは第2段の熱交換器から熱を吸収すること及び第1段に上昇することを止める。第2段の冷却器は110においてオンになり、磁石をその周囲温度、例えば約4Kに冷却する。第2段の冷却器は、112において磁石が用いられるMR装置の動作中、超電導する温度を維持する。
【0033】
本発明は、幾つかの実施例を参照して説明されている。上記詳細な説明を読み、理解すると、他の者に改良案及び変更案が思いつくことがある。このような改良案及び変更案の全てが添付した特許請求の範囲又はそれに相当するものの範囲内にある限りにおいて、本発明はこれら改良案及び変更案の全てを含んでいると解釈されることを目的としている。