特許第6181161号(P6181161)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許6181161-変速機をもたない風力発電装置の発電機 図000002
  • 特許6181161-変速機をもたない風力発電装置の発電機 図000003
  • 特許6181161-変速機をもたない風力発電装置の発電機 図000004
  • 特許6181161-変速機をもたない風力発電装置の発電機 図000005
  • 特許6181161-変速機をもたない風力発電装置の発電機 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181161
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】変速機をもたない風力発電装置の発電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/02 20060101AFI20170814BHJP
   F03D 80/00 20160101ALI20170814BHJP
   H02K 19/28 20060101ALI20170814BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H02K3/02
   F03D80/00
   H02K19/28
   H02K7/18 A
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-513097(P2015-513097)
(86)(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公表番号】特表2015-523044(P2015-523044A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】EP2013060081
(87)【国際公開番号】WO2013174700
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2014年12月26日
(31)【優先権主張番号】102012208550.5
(32)【優先日】2012年5月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ギエンギエル、ヴォイチェフ
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0285141(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/006810(WO,A2)
【文献】 特開平09−060575(JP,A)
【文献】 特開平09−135546(JP,A)
【文献】 特開2009−299656(JP,A)
【文献】 特開2010−011686(JP,A)
【文献】 特表2004−537247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/02
F03D 80/00
H02K 7/18
H02K 19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機をもたない風力発電装置の発電機であって、
固定子(302)と回転子(304)を有し、該固定子(302)及び回転子(304)は、アルミニウムからなる巻線を有し、
該発電機(301)は、外側回転子の形式であり、該固定子(302)と該回転子(304)との間の空隙の領域における該発電機(301)の直径を表わす空隙直径は、4.3mを超えており、
該発電機(301)は、外部励磁式の同期発電機として構成されており、該回転子(304)は、アルミニウムからなる外部励磁巻線として巻線を備えた複数の回転子磁極を有し、該回転子磁極は、前記空隙とは反対側において支持構造部と結合されており、
前記外部励磁巻線のために使用可能な空間が、前記空隙から前記支持構造部の方向に向かって増加していること
を特徴とする発電機。
【請求項2】
前記回転子(304)は、外側に位置する回転子支持リング(334)を有し、該回転子支持リング(334)は、回転子支持体(336)に固定されており、該回転子支持体(336)を介してハブ部分(328)において支持されており、該ハブ部分(328)は、回転子軸受(326)を介して短軸部材(324)において支持されていること
を特徴とする、請求項1に記載の発電機。
【請求項3】
前記回転子磁極は、シャフト部(550)を有する磁極片ボディ(532)を有し、隣接する前記シャフト部(550)は、磁極片(552)の方から互いに離れていき、従って前記外部励磁巻線のために前記シャフト部(550)の間で使用可能な巻線空間(554)は、広がっていくこと
を特徴とする、請求項1又は2に記載の発電機。
【請求項4】
前記回転子(304)は、周方向において複数の回転子セグメント、又は2つかもしくは4つの回転子セグメントから構成されていること
を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発電機。
【請求項5】
前記回転子セグメントは、風力発電装置(100)を設置する際に現地で組み立てられるように設けられていること
を特徴とする、請求項に記載の発電機。
【請求項6】
前記固定子(302)は、一部材として構成されており、各相のために連続的な巻線を有すること
を特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の発電機。
【請求項7】
該発電機(301)は、少なくとも500kW、少なくとも1MW、又は少なくとも2MWの定格出力を有すること
を特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の発電機。
【請求項8】
該発電機(301)は、少なくとも48極、少なくとも72極、もしくは少なくとも192極の固定子磁極を有する多極発電機として構成されていること
を特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の発電機。
【請求項9】
該発電機(301)は、六相発電機として構成されていること
を特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の発電機。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の発電機を備えた風力発電装置。
【請求項11】
請求項10に記載の風力発電装置を設置するための方法であって、
以下のステップ、即ち、
− 設置すべき風力発電装置(100)のタワー(102)上に発電機(301)の固定子(302)を取り付けるステップ、
− 現地で設置場所又はその近傍において前記発電機(301)の回転子(304)を組み立てるステップ、及び、
− 既に取り付けられている前記固定子(302)と共に前記発電機(301)を構成するために、組み立てられた前記回転子(304)を前記タワー(102)上に取り付けるステップ
を含むこと
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機をもたない(ギヤーレス)風力発電装置の発電機、該発電機を備えた風力発電装置、並びに風力発電装置を設置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変速機をもたない風力発電装置は、一般的に知られている。これらの風力発電装置は、空気力学的ロータを有し、該空気力学的ロータは、風力により駆動されて直接的に電気力学的ロータを回転する。電気力学的ロータは、空気力学的ロータとの混同を避けるため、回転子とも称されるものとする。この際、空気力学的ロータと回転子とは、堅固に連結されており、同じ回転数を有する。最新式の風力発電装置において空気力学的ロータは、例えば1分あたり5回転から25回転の範囲という比較的低速で回転するので、それに対応して回転子も低速で回転する。この理由から、変速器をもたない最新式の風力発電装置の発電機は、大きな直径を有する多極発電機である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】EP 2 388 890 A1
【特許文献2】WO 2010/081560 A1
【特許文献3】US 2009/315329 A1
【特許文献4】EP 2 063 116 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところがそのような大きな発電機は、これらの発電機がその大きさが原因で取り扱いが困難であり、特に取り付けが困難であり、またその大きさが原因で運搬時の問題が発生するという欠点をもつ。これらの発電機は、銅製巻線を大量に有し、それ故、極めて重いものでもある。それに対応し、大掛かりな支持構造が構成されなくてはならない。
【0005】
しかし銅は、発電機内の電気配線用の材料としてその良好な電気特性により無敵と言える。特に今まで、銅ほどに高い導電性を有し、それと同時に比較的問題なく加工することができ、更には基本的にその特性を風力発電装置が設置可能なところにおいて地表上で自然環境のもと発生する全温度範囲にわたって有することのできる、十分量で存在する他の材料はない。従って高い導電性により、発電機を対応箇所において対応して小さく構成することが可能である。
【0006】
発電機の構成サイズは、今日では特に運搬により制限される。つまり特に発電機直径、即ち発電機の外径が5mであると、発電機の運搬にとってクリティカル(kritisch)なサイズであると言える。それに比べ、空隙直径、即ち空隙の領域における発電機の直径は、対応して小さい。空隙は、固定子(ステータ)と回転子との間にあり、その直径は、発電機の全直径よりも、内側回転子(インナロータ)の場合には、固定子の厚さの2倍分だけ小さく、外側回転子(アウタロータ)の場合には、回転子の厚さの2倍分だけ小さい。この際、空隙直径は、発電機の効率と電気的な出力性能とに決定的な影響を及ぼす。換言すると、できるだけ大きな空隙直径が得られるようにすべきである。それに対応し、外側に位置する固定子ないし外側に位置する回転子は、ほぼ5mという外径が与えられている場合に空隙直径をできるだけ大きく構成可能とするために、できるだけスリムに構成されるべきである。
【0007】
1つの可能性は、発電機を軸方向において拡大する、即ちより長くすることにある。それにより基本的に空隙直径が同じ場合には、発電機の定格出力を増加させることができる。しかし軸方向におけるそのような延長は、安定性の問題を有する。特に空隙の外側に位置する発電機の部分ができるだけスリムに構成されるべき場合には、より長く構成されたそのような発電機は、直ぐにその安定性の限界に達することになる。この際、それに加え、巻線(コイル)は大きな重量をもってはいるが、基本的に機械的な安定性には寄与できないということがある。
【0008】
従って本発明の基礎をなす課題は、上記の問題点の少なくとも1つを解消することである。特に、変速機をもたない風力発電装置の発電機が、出力性能、安定性、及び/又は重量に関して改善されるべきである。また少なくとも、従来の解決策に対して代替的な構成が提案されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、請求項1による発電機が提案される。
即ち本発明の第1の視点により、変速機をもたない風力発電装置の発電機であって、固定子と回転子を有し、該固定子及び回転子は、アルミニウムからなる巻線を有し、該発電機は、外側回転子の形式であり、該固定子と該回転子との間の空隙の領域における該発電機の直径を表わす空隙直径は、4.3mを超えており、該発電機は、外部励磁式の同期発電機として構成されており、該回転子は、アルミニウムからなる外部励磁巻線として巻線を備えた複数の回転子磁極を有し、該回転子磁極は、前記空隙とは反対側において支持構造部と結合されており、前記外部励磁巻線のために使用可能な空間が、前記空隙から前記支持構造部の方向に向かって増加していることを特徴とする発電機が提供される。
また本発明の第2の視点により、前記発電機を備えた風力発電装置が提供される。
更に本発明の第3の視点により、前記風力発電装置を設置するための方法であって、以下のステップ、即ち、設置すべき風力発電装置のタワー上に発電機の固定子を取り付けるステップ、現地で設置場所又はその近傍において前記発電機の回転子を組み立てるステップ、及び、既に取り付けられている前記固定子と共に前記発電機を構成するために、組み立てられた前記回転子を前記タワー上に取り付けるステップを含むことを特徴とする方法が提供される。
尚、本願の特許請求の範囲に付記されている図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)変速機をもたない風力発電装置の発電機であって、固定子と回転子を有し、該固定子及び/又は回転子は、アルミニウムからなる巻線を有すること。
(形態2)該発電機は、外側回転子を有することが好ましい。
(形態3)該発電機は、4.3mを超える空隙直径を有することが好ましい。
(形態4)前記回転子は、周方向において複数の回転子セグメント、特に2つか又は4つの回転子セグメントから構成されており、該回転子セグメントは、特に、風力発電装置を設置する際に現地で組み立てられるように設けられており、前記固定子は、好ましくは一部材として構成されており、特に連続的な巻線を有することが好ましい。
(形態5)該発電機は、外部励磁式の同期発電機として構成されており、前記回転子は、アルミニウムからなる励磁巻線を有することが好ましい。
(形態6)該発電機は、少なくとも500kW、少なくとも1MW、特に少なくとも2MWの定格出力を有することが好ましい。
(形態7)該発電機は、低速回転する発電機として、及び/又は、少なくとも48極、少なくとも72極、特に少なくとも192極の固定子磁極を有する多極発電機として構成されており、及び/又は六相発電機として構成されていることが好ましい。
(形態8)前記発電機を備えた風力発電装置。
(形態9)前記風力発電装置を設置するための方法であって、以下のステップ、即ち、設置すべき風力発電装置のタワー上に発電機の固定子を取り付けるステップ、現地で設置場所又はその近傍において前記発電機の回転子を組み立てるステップ、及び、既に取り付けられている前記固定子と共に前記発電機を構成するために、組み立てられた前記回転子を前記タワー上に取り付けるステップを含むこと。
【0011】
本発明により、変速機をもたない風力発電装置の発電機は、固定子(ステータ)と回転子(ロータ)を有する。この固定子及び/又は回転子は、アルミニウムからなる巻線(コイル)を有する。
【0012】
つまり本発明により、アルミニウムの導電性は確かに銅よりも劣るが、その重量が比較的少ない(軽い)ことに基づき、発電機のための全コンセプトにおいては利点であり得ることが認識された。
【0013】
銅と比べてアルミニウムの導電性が劣ることには、先ず、該当の巻線の横断面を大きくすることで対処することが必要であり、このことは、先ず、より高い容積要求をもたらすことになる。しかしそれに対し、アルミニウムは銅よりも遥かに軽く、従って発電機は、全体としてアルミニウムの使用にもかかわらずより軽くなる。より少ない重量により、場合により支持構造に対する要求、即ち風力発電装置全体の機械的な構造に対する要求、また発電機の機械的な構造に対する要求も低くすることができる。従って重量が削減され、場合により容積を取り戻すことができる。
【0014】
アルミニウムからなる巻線の使用としては、特にアルミニウムからなる巻線が設けられており、勿論、絶縁部、特に絶縁塗装などを有することとして理解される。また基本的にアルミニウムのための合金も考慮され、これらの合金は、例えばアルミニウムの加工性、特に曲げやすさのようなアルミニウムの幾つかの特性に影響を及ぼすことができる。決定的なことは、アルミニウムが軽量の導電体として使用可能であり且つ各々の巻線の大部分を構成するということである。アルミニウムの基本的な導電性並びにアルミニウムの基本的な比重をなんら変化させることのない幾つかの補助的成分の存在は、重要ではない。アルミニウム自体が、巻線の重量と導電性にとって決定的なものである。
【0015】
好ましくは、発電機が外側回転子(アウタロータ)を有することが提案される。従って固定子、即ち静止部分は、内側にあり、この固定子の周りで回転子が回転する。このことは、先ず、空隙直径を基本的に増加させることが可能であるという利点を有するが、その理由は、回転子が基本的に固定子よりも少ない厚さを必要とするためである。それに対応し、回転子が空隙と最大外径との間に必要とするスペースは少なくて済み、従って与えられた外径において空隙直径を増加させることが可能である。
【0016】
更に固定子には、多くの場合、積層コア(シート状コア材の積層体 Blechpaket)が設けられており、これらの積層コアには、空隙側において巻線(コイル)が備えられることを考慮することができる。そのような固定子積層コアは、外側回転子の場合には、内側に向かい、即ち発電機の中心軸線に向かい、基本的に任意に補強され、また冷却路などを備えることが可能である。この際、外側回転子の場合は、固定子のために十分なスペースがあり、従って外側回転子の形式の発電機を設けることにより、事実上、固定子のために多くのスペースが作られる。
【0017】
回転子は、ともかく回転子が外部励磁式の場合には、全く異なって構成されており、つまり回転子は、巻線が完成装備された複数の回転子磁極から構成され、これらの回転子磁極は、空隙とは反対側において、支持構造部、即ち円筒外殻部と結合されている。従って外側回転子の形式の発電機の場合には、磁極片ボディは、空隙から基本的に僅かにスター形状で外側に向かって延在している。換言すると、使用可能な空間は、空隙から支持構造部の方向に向かって増加している。従って外部励磁用の巻線の収容は、外側回転子の場合にはそこで多くのスペースが使用可能であるので容易化される。
【0018】
従ってアルミニウムの使用は、ともかく回転子の励磁巻線にとって、外側回転子型(アウタロータ型)のために得られる追加的な空間容積と肯定的に連携(相乗)作用する。
【0019】
従ってアルミニウム巻線を、有利には回転子(ロータ)のために設けることが可能である。固定子を支持するための既述の追加的なスペース提供は、同様に固定子においてアルミニウム巻線を設けるために利用することもできる。この際、固定子は、例えば追加的な巻線空間を半径方向の拡大により獲得することができる。空隙直径は、それにより影響されることはない。また固定子内の磁気抵抗の万一の増加も、空隙の磁気抵抗と比べ無視可能なものであろう。場合により、軽量のアルミニウムの使用に基づき銅製回転子と比べて軽くなった軽量回転子を用いることで、回転子用の更に堅固な構造体が達成可能であり、このことは、空隙の厚さの減少を可能とし、それにより磁気抵抗を減少させることができるだろう。
【0020】
好ましくは、4.3mを超える空隙直径を有する発電機が提案される。それにより本発明が、変速機をもたない大型の風力発電装置の発電機に関するものであることが明確にされる。本発明は、単にアルミニウム巻線を有する発電機の発明であることを請求するものではない。変速機をもたない最新式の風力発電装置の大型発電機のためにアルミニウム巻線を使用することは、その代わりに発電機を他の方法で最適化することが試行され続けたため、今まで当業者の間では邪道(ないし的外れ abwegig)とされていた。それらの他の方法にはできるだけ少ない容積を獲得することが含まれ、このことが当業者にとって今まで巻線材料としてのアルミニウムの使用を排除してきた。
【0021】
更なる一実施形態により、発電機の形式として外側回転子(アウタロータ)が使用されることが提案され、この際、外側回転子は、周方向において複数の回転子セグメント、特に2つか3つか又は4つの回転子セグメントから構成されている。特に回転子セグメントは、風力発電装置を設置する際に現地で組み立てられるように準備されている。しかし固定子は、好ましくは一部材として構成されており、特に固定子は、各相のために連続的な巻線を有する。
【0022】
巻線材料としてアルミニウムを使用することにより、回転子の重量、ともかく外部励磁式の同期発電機の回転子の重量は少なくなり、従って回転子(ロータ)が組み立てられるという構成にとって有利である。基本的に各々半円形状の2つの回転子セグメントを使用することにより既に、5mのクリティカル(限界的)な運搬サイズを超過することなく、5mよりも大きい直径を有する発電機を作ることが可能である。そのような外側回転子に対して一部材式の固定子を使用する場合には、ほぼ空隙直径に対応する固定子の外径は、ほぼクリティカルな運搬サイズ、特に5mの値をとることができる。回転子は、道路運搬がもはや必要でなくなった場合に現地で組み立てられる。この場合、発電機のサイズの正確性、即ち回転子セグメントのサイズの正確性は、問題があるとしても些細なことにすぎない。それよりも重要なことは、構成要素の重量である。ところが重量は、アルミニウムの使用により減少させることが可能である。銅を用いる代わりにアルミニウムを用いて同じ絶対的な導電性を実現するためには、ほぼ50%だけ多くの巻線容積が必要とされるが、この巻線容積分は、対応する銅製巻線と比べると単に半分の重さに該当するだけである。従ってアルミニウムが使用されると、容積が増加するにもかかわらず重量を劇的に減少させることが可能である。また分割式の回転子を使用することにより、容積上の上限はもはや存在せず、回転子を幾らか大きく構成することが可能であり、このことは、アルミニウムの使用が可能であるため、逆説的ではあるが、より軽量の回転子をもたらしてくれる。
【0023】
それに対応し、発電機が外部励磁式の同期発電機として構成されており、回転子がアルミニウムからなる励磁巻線を有すると有利である。このことは、既述のように、外側回転子、特に分割式の外側回転子にとって特に有利であるが、また内側回転子にとっても有効であると言いうる。
【0024】
好ましくは、発電機は、少なくとも1MW、特に少なくとも2MWの定格出力を有する。更にこの実施形態は、本発明が特に変速機をもたないメガワット級の風力発電装置の発電機に関することを強調している。そのような発電機は、今日では最適化されており、それ故、今まで巻線用の材料としてのアルミニウムは考慮されるに至らなかった。しかしアルミニウムの使用は、利点であり得て、銅と比べて制限や粗悪化を呈するものではないことが認識された。たとえ、例えばある国である時期に原料不足が原因で開発されたかもしれないアルミニウム巻線を有する発電機が既にあったとしても、このことが、変速機をもたないメガワット級の風力発電装置の発電機をアルミニウム巻線で装備するということを暗示又は示唆させることはありえない。
【0025】
好ましくは、発電機は、環状発電機(リングジェネレータ)として構成されている。環状発電機とは、磁気的に有効な領域が実質的に発電機の回転軸線を中心に同心状(環状領域)に配設されているという発電機の構造形式を意味している。特に磁気的に有効な領域、即ち回転子及び固定子の磁気的に有効な領域は、発電機において半径方向で外側の四分の一の範囲内にだけ配設されている。
【0026】
有利な一実施形態は、発電機が、低速回転(低速運転)する発電機として、或いは少なくとも48極、又は少なくとも72極、又は特に少なくとも192極の固定子磁極を有する多極発電機として構成されている。追加的に又は選択的に発電機を六相発電機として構成することが有利である。
【0027】
そのような発電機は、特に最新式の風力発電装置における使用のために設けることができる。発電機の多極性により発電機は、回転子の極めて低速の回転運転を可能とし、該回転子は、変速機が設けられていないことにより、低速回転する空気力学的ロータに適合され、空気力学的ロータと共に極めて良好に使用することができる。この際、48極、72極、192極、又はそれよりも多くの固定子磁極においては、それに対応して巻線費用が高くなることを考慮しなくてはならない。特にそのような巻線が相ごとに連続している場合には、アルミニウム巻線への変更は、極めて大きな開発ステップである。巻き上げを行うべき固定子ボディ、即ち積層コア(シート状コア材の積層体)が、変更されたスペース要求に既に適合される必要がある。同様にそのような巻線用のアルミニウムの取り扱い方が新たに習得される必要があり、また場合により、変更されたそのような巻き上げを容易にするアルミニウム合金を用いることもできる。変更された固定子は、風力発電装置における固定に関し、特に対応する固定子支持体における固定に関しても、新たに考慮される必要がある。この際、機械的な接続点も電気的な接続点も変更することが可能であり、また全支持構造部を減少された重量に適合させる可能性も開かれている。特に発電機が機械底部又は固有の基礎部に立設されることのない風力発電装置の使用は、基礎となる発電機の変更により、基本的に風力発電装置のナセル構成部の完全な改良の必要性がもたらされるか、又は更に広範囲に及ぶ改良の必要性を結果として伴うことになる。
【0028】
同様に、少なくとも上記の実施形態の1つにおいて記載された発電機を使用する風力発電装置が提案される。
【0029】
同様に、そのような風力発電装置を設置するための方法が提案される。好ましくは、該方法は、分割可能な外側回転子を備えた発電機を有する風力発電装置の取り付けを含んでいる。この際、先ず発電機の固定子をタワー上に即ちナセルないしナセルの第1部分に取り付けることが提案される。
【0030】
その後、回転子は、現地でないし現地で並行作業として設置場所か又は例えば小工場のようなその近傍において組み立てられる。その後、そのように組み立てられた回転子は、タワー上で、既に取り付けられた固定子と一緒になるよう取り付けられ、従って組み立てられた回転子は、固定子と共に実質的に発電機を構成する。
【0031】
以下、例として、本発明について、本発明の実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】一風力発電装置を斜視図として示す図である。
図2】内側回転子の形式の発電機を側面から見た断面図として示す図である。
図3】外側回転子の形式の発電機を側面から見た断面図として示す図である。
図4】内側回転子の形式の発電機の回転子における2つの磁極片を模式的に示す図である。
図5】外側回転子の形式の発電機の回転子における2つの磁極片を模式的に示す図である。
【実施例】
【0033】
図1は、タワー102とナセル104を備えた風力発電装置(風力エネルギー設備)100を示している。ナセル104には、3つのロータブレード108とスピナ110を備えたロータ(空気力学的ロータ)106が配設されている。ロータ106は、運転時には風力により回転運動を行い、それによりナセル104内の発電機を駆動する。
【0034】
図2は、内側回転子(インナロータ)の形式の発電機1を示しており、従って外側に位置する固定子2と、それに対して内側に位置する回転子4とを示している。固定子2と回転子4との間には、空隙6が設けられている。固定子2は、固定子鐘状部材8を介して固定子支持体10において支持されている。固定子2は、巻線(コイル)を受容する積層コア(シート状コア材の積層体 Blechpaket)12を有し、それらの巻線のうち巻線端部(巻線ヘッド)14が示されている。巻線端部14は、基本的に1つの固定子溝から次の固定子溝へ入るよう配設されたコイル巻線を示している。固定子2の積層コア12は、支持リング16に固定されており、該支持リング16は、固定子2の一部として見ることもできる。この支持リング16を用い、固定子2は、固定子鐘状部材8の固定子フランジ18に固定されている。従って固定子鐘状部材8は、固定子フランジ18を介して固定子2を支持している。それに加え、固定子鐘状部材8は、該固定子鐘状部材8内に配設される冷却用ファンを有することもできる。従って空隙6を介しても冷却用空気を送ることができ、それにより空隙6の領域を冷却することができる。
【0035】
図2は、更に発電機1の外周部20を示している。作業用ラグ22だけが外周部20から突出しているが、これらの作業用ラグ22は全周にわたり設けられているわけではないので、それらの突出が問題となることはない。
【0036】
固定子支持体10には、部分的にのみ図示された短軸部材(Achszapfen)24が連結している。回転子4は、回転子軸受26を介して短軸部材24において支持されている。この際、回転子4は、ハブ部分28に固定されており、該ハブ部分28は、空気力学的ロータのロータブレードとも連結されており、従ってロータブレードが風力で動かされ、回転子4をこのハブ部分28を介して回転することが可能である。
【0037】
この際、回転子4は、励磁巻線30を備えた磁極片ボディ(Polschuhkoerper)を有する。空隙6に向かい、励磁巻線30のところに磁極片32の一部分を見ることができる。空隙6に背を向けた側、即ち内側へ向かい、励磁巻線30を支持する磁極片32は、回転子支持リング34に固定されており、該回転子支持リング34は、回転子支持体36を用いてハブ部分28に固定されている。回転子支持リング34は、基本的に円筒形状の連続した堅固な部材である。回転子支持体36は、ストラットのような多数の補強部材を有する。
【0038】
図2では、回転子4の半径方向の寸法、即ち回転子支持リング34から空隙6までの半径方向の寸法が、固定子2の半径方向の寸法、即ち空隙6から外周部20までの半径方向の寸法よりも明らかに小さいことが見てとれる。
【0039】
それに加え、ほぼ、固定子鐘状部材8から、固定子鐘状部材8とは反対側の固定子2の端部、即ち巻線端部14とは反対側の固定子2の端部までの軸方向の寸法を表わす支持長さ(軸方向寸法)38が記入されている。この構成において、この軸方向の支持長さ38は、比較的長く、固定子2が固定子鐘状部材8からどのくらい離れて片持ち状態で支持されなくてはならないかを示している。つまり回転子4が内側に位置することにより、固定子鐘状部材8の反対側(固定子鐘状部材8に指向しない側)には、固定子2のための更なる支持可能性又は軸受可能性は設けられていない。
【0040】
図3の発電機301は、外側回転子(アウタロータ)の形式を有する。それに対応し、固定子302は内側に位置し、回転子304は外側に位置している。固定子302は、中央の固定子支持構造部308を介して固定子支持体310において支持されている。冷却用として、固定子支持構造部308内にはファン309が設けられている。従って固定子302は、その中央において支持されており、このことにより安定性を極めて向上させることが可能である。更に固定子302は、内側からファン309により冷却可能である。因みにこのファン309は、単に更なるファンの配設の典型例を示すものである。この構成において固定子302は、内側からアクセス可能(手が届くこと)である。
【0041】
回転子304は、外側に位置する回転子支持リング334を有し、該回転子支持リング334は、回転子支持体336に固定されており、該回転子支持体336を介してハブ部分328において支持されており、またハブ部分328は、回転子軸受326を介して短軸部材(Achszapfen)324に支持される。
【0042】
基本的に(図2のものと比べ)取り替えられた固定子302と回転子304の配設構成に基づき、内側回転子の形式の発電機1における図2の空隙6よりも大きな直径を有する空隙306が得られる。
【0043】
更に図3は、ブレーキ(制動器)340の有利な配設構成を示しており、該ブレーキ340は、回転子304と結合されたブレーキディスク342を介し、回転子304を必要に応じて制動ないし停止することができる。ブレーキ340がかけられている場合には、回転子304が軸方向において2つの側方部で保持され、即ち一方では最終的に回転子軸受326を介して保持され、他方では停止状態に入れられたブレーキ340を介して保持されるという安定状態が得られる。
【0044】
図3には、同様に固定子支持構造部308から回転子支持体336までの平均的な間隔を示す軸方向の支持長さ338が記入されている。この際、固定子302と回転子304の両方の支持構造部の間の間隔は、図2の内側回転子の形式の発電機において示された軸方向の支持長さ38と比べ、明らかに減少されている。図2の軸方向の支持長さ38も、一方では固定子2のための支持構造部と、他方では回転子4のための支持構造部との間の平均的な間隔を示している。そのような軸方向の支持長さ38ないし338が小さいほど、達成可能な安定性は高くなり、特に固定子と回転子との間の傾き安定性も高くなる。
【0045】
外周部320の外径344は、図2図3の両方の図示の発電機において同じである。従って図2の発電機1の外周部20は、同様に外径344を有する。外径344が同じであるにもかかわらず、外側回転子の形式の発電機301を示す図3の構成においては、図2における空隙6と比べ、空隙306のためにより大きな空隙直径を達成することが可能である。
【0046】
図4には、外側に位置する固定子402と、内側に位置する回転子404とが図示されている。図4は、シャフト部450と磁極片452を有する磁極片ボディ432を極めて模式的に2つ示している。両方の磁極片ボディ432の間、特に両方のシャフト部450の間には、巻線空間454が形成されている。この巻線空間454に励磁巻線(励磁コイル)430の電線を配設することができる。各磁極片ボディ432は励磁巻線430を支持するので、巻線空間454は、基本的に2つの励磁巻線(励磁コイル)430の電線を収容しなくてはならない。
【0047】
図4の磁極片ボディ432は内側回転子に属するという事実に基づき、シャフト部450は、磁極片452の方から(内側回転子の中心に向かって)集束するように延在し、それにより巻線空間454は(内側回転子の中心に向かって)狭められている。従って励磁巻線430の収容時には、問題が発生する可能性がある。
【0048】
図5には、内側に位置する固定子502と、外側に位置する回転子504とが図示されている。図5は、2つの磁極片ボディ532の(図4のものと)類似の模式図を示しているが、外側回転子のものである。この際、2つのシャフト部550は(半径方向外方に行くに従って)磁極片552の方から互いに離れてゆき、従って巻線空間554は広がってゆき、それにより励磁巻線(励磁コイル)530の電線のために多くの空間が作られている。
【0049】
図5は、特に図4と比べ、外側回転子を使用することだけで、明らかに増大された巻線空間554の作成が可能であることを具体的に示しており、このことは、巻線用材料としてのアルミニウムの使用にとって有利である。図示されたように(巻線の巻かれていない)絶対的な巻線空間454(図4)に比べて(巻線の巻かれていない)絶対的な巻線空間554(図5)の増大を介し、図5において具体的に示された外側回転子では、更に取り扱い作業と、特に取り付け作業を改善することができる。
【0050】
それに加え、図4を見ると、シャフト部450に接続する隣接の(内側の)接続空間456も(内側に向かって)狭くなっている。このことを具体的に示すためにシャフト部450が鎖線(延長補助線457)を用いて更に示されている。(この際、接続空間456は、延長補助線457で示されたシャフト部450の延長領域も、またそれらの領域の間の領域も含んでいる。)特に問題なのは、いかに、磁極片ボディ、従って回転子の磁極(複数)が全体として基本的に個々に設けられ且つ取り付けられるかということである。つまり基本的に接続空間456内にあるスペースの利用は、極めて困難である。
【0051】
それに対し、図5における対応の接続空間556は、外側回転子としての配設構成に基づき(外側に向かって)広がっている。
【0052】
従ってアルミニウムを発電機において使用することを提案する解決策が創作される。当業者が銅を自由に使えるのであれば、差し当たり、風力発電装置の最新式の発電機を構成するにあたっては採用しないであろう時代遅れの緊急解決策と思われることが、実は有利な解決策であると分かった。発電機におけるアルミニウムの使用は、内側回転子に関するものであるならば、有利であるとは余り言えないだろう。内側回転子式の発電機は、それらの構造形式により構造的に制限されているためである。しかし外側回転子式の発電機において発電機は、異なって定義されないし基本的に異なって構成されているので、このことがアルミニウムの使用を可能とし、むしろ有利なものとしてくれる。
【0053】
また回転子の計算においては、回転子が通常では予め定められた空隙半径rに基づかなくては(orientieren)ならないことも述べておくべきである。この空隙半径から出発し、内側回転子は、内側に向かって(空間的に)制限されているが、そうでなければ、図4で延長補助線(鎖線)457によりその延長の様子が具体的に示されている磁極のシャフト部は、図4に示された点Pでぶつかることになるためである。従って内側回転子の半径方向の大きさは制限されている。ところが外側回転子の場合にこの制限はなく、それは、シャフト部が外側に向かって互いに離れていくように延在し、このことは延長補助線(鎖線)557により具体的に示されているが、従って互いにぶつかることはなく、シャフト部の半径方向の大きさが制限されていないためである。それにより外側回転子は、より多くの巻線空間を必要とするアルミニウム巻線を用いた使用に極めて良好に適している。
【0054】
アルミニウムを固定子のため又は回転子のため又はその両方のために使用することが提案される。外側回転子の構成により、より大きな空隙直径が達成可能であり、このことは、アルミニウムの使用を可能とするないし有利なものとする。
【0055】
更なる利点として、ともかく外側回転子の構成において、アルミニウムのためのコストが比較的少なく、また改善された材料アクセス性(材料に手が届くこと)が提供されているということが挙げられる。従って少なくとも固定子又は回転子において銅の使用が回避される。確かに銅を用いることで基本的に容積効率をより高くすることができるが、このことは、材料の銅の直接的なコストにおいても、場合により、重い銅のための構成部と必要不可欠な支持構造部とが大掛かりになるとの意味においても、より高い価格を要求する。
【符号の説明】
【0056】
1 発電機
2 固定子(ステータ)
4 回転子(ロータ)
6 空隙
8 固定子鐘状部材
10 固定子支持体
12 積層コア(シート状コア材の積層体)
14 巻線端部
16 支持リング
18 固定子フランジ
20 外周部
22 作業用ラグ
24 短軸部材
26 回転子軸受
28 ハブ部分
30 励磁巻線
32 磁極片
34 回転子支持リング
36 回転子支持体
38 支持長さ

100 風力発電装置
102 タワー
104 ナセル
106 空気力学的ロータ
108 ロータブレード
110 スピナ

301 発電機
302 固定子(ステータ)
304 回転子(ロータ)
306 空隙
308 固定子支持構造部
309 ファン
310 固定子支持体
320 外周部
324 短軸部材
326 回転子軸受
328 ハブ部分
334 回転子支持リング
336 回転子支持体
338 支持長さ
340 ブレーキ
342 ブレーキディスク
344 外径

402 固定子(ステータ)
404 回転子(ロータ)
430 励磁巻線
432 磁極片ボディ
450 シャフト部
452 磁極片
454 巻線空間
456 接続空間
457 延長補助線

502 固定子(ステータ)
504 回転子(ロータ)
530 励磁巻線
532 磁極片ボディ
550 シャフト部
552 磁極片
554 巻線空間
556 接続空間
557 延長補助線
図1
図2-3】
図4
図5
図2