特許第6181170号(P6181170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181170
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】針センサを備えた注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/34 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   A61M5/34 510
   A61M5/34 540
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-516699(P2015-516699)
(86)(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公表番号】特表2015-523130(P2015-523130A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】IB2013001213
(87)【国際公開番号】WO2013186618
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2015年7月29日
(31)【優先権主張番号】12004541.4
(32)【優先日】2012年6月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504238862
【氏名又は名称】アレス トレイディング ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ヴュルムバウアー ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ショップ ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】シャッツ ベルンハルト
【審査官】 落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−522853(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0010443(US,A1)
【文献】 特表2010−501283(JP,A)
【文献】 特開2011−50791(JP,A)
【文献】 特開2010−88564(JP,A)
【文献】 特表2004−501737(JP,A)
【文献】 特開平4−312469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/34
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端(4)を針(3)に連結できる薬剤容器(2)と、
薬剤容器(2)への針(3)の連結を検出する磁気センサ手段(12,21,22)と、を有し、
前記磁気センサ手段が、
薬剤容器(2)に針(3)を連結することにより作動されかつ磁気要素(21)を備えた可動部材(12)と、
磁気要素(21)により発生される磁界に感応するセンサ要素(22)と、を有していることを特徴とする、
患者に液体薬剤を注射する注射器。
【請求項2】
前記可動部材(12)は第1端部(15)および第2端部(17)を備えたレバーであり、
該レバーは、針(3)を薬剤容器(2)に連結したときに、針支持体(7)により前記第1端部(15)で作動され、前記第2端部(17)は磁気要素(21)を備えていることを特徴とする請求項1記載の注射器。
【請求項3】
前記第2端部(17)は、第1端部(15)よりも薬剤容器(2)の前記一端(4)から離れていることを特徴とする請求項記載の注射器。
【請求項4】
前記レバー(12)のヒンジ点(13)と前記第2端部(17)との間の距離は、ヒンジ点(13)と前記第1端部(15)との間の距離より大きいことを特徴とする請求項3記載の注射器。
【請求項5】
前記針(3)が前記薬剤容器(2)に連結されていないときにレバー(12)に作用して、レバー(12)を休止位置に維持するスプリング(18)を更に有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載の注射器。
【請求項6】
前記センサ要素(22)を薬剤による汚染から保護するための、前記磁気要素(21)と前記センサ要素(22)との間の壁(24)を更に有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の注射器。
【請求項7】
前記壁(24)は非磁性体で作られていることを特徴とする請求項6記載の注射器。
【請求項8】
前記磁気要素(21)は永久磁石であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の注射器。
【請求項9】
前記センサ要素(22)はホール効果センサであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針に連結可能なカートリッジのような薬剤容器を備えた形式の、患者に液体薬剤を注射する注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような注射器の1つが国際公開第2005/077441号パンフレット(特許文献1)に開示されている。この注射器には、針がカートリッジに連結されているか否かを検出する光学センサ手段が設けられている。この光学センサ手段は、発光ダイオードと、ミラーと、フォトダイオードとを有している。針がカートリッジに適正に連結されていない場合には、発光ダイオードにより放出された光線は、ミラーによりフォトダイオードに向けて反射される。針がカートリッジに適正に連結されている場合には、針を支持しかつ針が穿刺されたカートリッジの端部に嵌合された支持体が、光線がミラーに到達する前に光線を遮断するため、光線がフォトダイオードにより受けられることはない。このようなセンサは、非接触型であっても、薬剤による汚染に感応する。針から落下した薬液の滴は、実際に、発光ダイオード、ミラーおよび/またはフォトダイオードを汚染することがあり、したがって、針が全くカートリッジに連結されていなくても、フォトダイオードによる受光が妨げられてしまい、針検出の失敗を引き起こす。
【0003】
従来技術の他の文書である米国特許第6,406,460号明細書(特許文献2)には、針が適正に連結されたときの電気的接続または圧力を検出する接点を備えた注射器が開示されている。このようなセンサは接点であることおよび針の近くに配置されることから、特許文献1に開示のセンサよりも一層薬剤による汚染に感応し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/077441号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,406,460号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、汚染に対する抵抗性がより大きい針センサを備えた注射器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的のため、薬剤容器を有し、該薬剤容器の一端が針に連結でき、薬剤容器への針の連結を検出する磁気センサ手段を更に有する、患者に液体薬剤を注射する注射器が提供される。
【0007】
概して、磁気センサ手段は、
薬剤容器に針を連結することにより作動されかつ磁気要素を備えた可動部材と、
磁気要素により発生される磁界に感応するセンサ要素とを有している。
【0008】
特定実施形態では、可動部材は第1端部および第2端部を備えたレバーであり、該レバーは、針を薬剤容器に連結したときに、針支持体により第1端部で作動され、第2端部は磁気要素を備えている。
【0009】
好ましくは、第2端部は、第1端部よりも薬剤容器の前記端部から離れており、レバーのヒンジ点と第2端部との間の距離は、ヒンジ点と第1端部との間の距離より大きい。
【0010】
注射器は更に、針が薬剤容器に連結されていないときにレバーに作用して、レバーを休止位置に維持するスプリングを有している。
【0011】
センサ要素を薬剤による汚染から保護するための、磁気要素とセンサ要素との間の壁を更に有することが有利である。
【0012】
一般に、壁は非磁性体で作られる。
磁気要素は永久磁石であることが好ましい。
【0013】
センサ要素はホール効果センサで構成できる。
【0014】
本発明の他の特徴および長所は、添付図面を参照して述べる以下の詳細な説明を読むことにより明瞭に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による注射器の一部の断面図であり、針が装着されていない状態を示すものである。
図2】本発明による注射器の図1と同じ部分の断面図であり、針が不適正に装着された状態を示すものである。
図3】本発明による注射器の図1と同じ部分の断面図であり、針が適正に装着された状態を示すものである。
図4】本発明による注射器の前記部分の幾つかの部品を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図4を参照すると、本発明による注射器は、着脱可能な薬剤カートリッジ2を受入れかつ保持するホルダ1を有している。注射器は、特許文献1に開示された形式のものである。したがって、この注射器は、その内部に、ハウジング(図示せず)と、カートリッジホルダ1と、カートリッジ2のピストンを軸線方向に移動させる第1電気機械手段と、該第1電気機械手段およびカートリッジホルダ1を含む構造体を軸線方向に移動させる第2電気機械手段とを有している。
【0017】
針3は、カートリッジ2の下端部4に連結される。針3は後端部および前端部6を有し、これらは、それぞれ、カートリッジ2の下端部4および患者の皮膚を穿刺することを意図している。針3は、カートリッジ2の下端部4が針3の後端部5により穿刺される間にカートリッジホルダ1の下端部8上に嵌合される針支持体すなわちハブ7に固定されかつ該ハブ7から突出している。カートリッジホルダ1の下端部8上への針支持体7の嵌合は、カートリッジホルダ1の下端部8の周囲に固定されかつ弾性フランジ10を備えている中間部品9(図4参照)により達成される。弾性フランジ10は、針支持体7の円筒壁11がカートリッジホルダ1の下端部8の周囲と係合すると、円筒壁11の内面により押圧される。変更形態として、カートリッジホルダ1は、針支持体7が、カートリッジホルダ1上に嵌合するのではなく、カートリッジ2の下端部4上に嵌合するように構成できる。
【0018】
カートリッジホルダ1には、レバー12がヒンジ点13でヒンジ連結されており、レバー12は、軸線Aで示すカートリッジ2およびカートリッジホルダ1の軸線方向にほぼ配向されている。レバー12は、ヒンジ点13からレバー12の下端部15までの第1アーム14と、ヒンジ点13からレバー12の上端部17までの第2アーム16とを形成している。理解されようが、第2アーム16は第1アーム14より非常に長い。より詳しくは、ヒンジ点13と上端部17との間の距離は、ヒンジ点13と下端部15との間の距離より大きい。カートリッジ2の下端部4に針3が存在しないとき、レバー12は、スプリング18がストップ19に対して第2アーム16を押付けることにより休止位置に保持される(図1および図2)。例示において、ばね18は、カートリッジホルダ1に固定されたレバー保持部分20により規定される平ばねである(図4参照)。レバー12の上端部17にはマグネット21が固定されており、該マグネット21は、軸線Aを横切る方向にセンサ22に対面している。センサ22は、一般にリニアホール効果センサである。センサ22は、射出成形デバイスの固定部品(すなわちハウジングに対して固定された部品)に取付けられたプリント回路基板(PCB:printed circuit board)23上に取付けられている。センサ22およびPCB23は、前記固定部品に取付けられるか該固定部品により形成された壁24により、カートリッジ2から不意に落下する薬液の滴から保護される。壁24は、プラスチックのような非磁性体で作られる。壁24は、カートリッジ2、カートリッジホルダ1およびマグネット21を備えたレバー12を含む射出成形デバイスの部分からセンサ22およびPCB23を分離する。
【0019】
第2電気機械手段の作用により、カートリッジホルダ1およびこれと一緒にカートリッジ2が、図1図3に示す後退位置すなわち頂位置(この頂位置では、カートリッジ2およびこれに針3が連結されている場合には針3が、ハウジング内に配置される)と、図示しない底位置(この底位置では、患者の皮膚を穿刺すべく、針3がハウジングの孔からハウジングの外側へと軸線方向に突出する)との間で軸線方向に移動する。カートリッジホルダ1およびカートリッジ2が後退位置にあるとき、マグネット21がセンサ22に対面する。特許文献1に説明されているように、カートリッジ2への針3の連結は、針支持体7およびこれに固定された針3を収容する針キャップが使用者によってハウジングの前記孔内に係合された後に、カートリッジホルダ1を下方に、次いで上方に移動させることにより自動的に達成される。しかしながら、変更態様として、本発明は、カートリッジが移動不可能で、針が手動によってのみ連結される構成の注射器にも適用できる。
【0020】
針がカートリッジ2に全く連結されていないとき(図1参照)または針3が不適正に連結されているか一部のみが連結されているとき(図2参照)は、レバー12はその休止位置にあって、マグネット21はセンサ22から或る距離を隔てた位置にある。針支持体7がカートリッジホルダ1の下端部8上に適正に嵌合されたときは、針支持体7がレバー12の第1アーム14に作用して、該レバー12をスプリング18の力に抗して作動位置(この作動位置ではマグネット21がセンサ22に接近する)へと回転させる(図3参照)。この目的のため、針支持体7の円筒壁11がレバーの下端部15の傾斜面25と協働する。針3および針支持体7がカートリッジ2に完全に組付けられると、円筒壁11がレバーの第1アーム14の側面26と協働してレバー12を作動位置に保持する。
【0021】
かくして、レバー12の作動位置では、センサ22は、レバー12が休止位置にあるときよりも高いレベルの磁界を受ける。受けた磁界のレベルと所定の閾値とを比較することにより、センサ22およびこれに関連する回路は、針が適正に連結されたことを決定する。次に、注射器の制御ユニットは、注射を許容するか否かを決定する。
【0022】
本発明の提案による磁気センサ手段を使用すれば、針の検出を、薬剤による汚染に対する抵抗性が非常に高いものとできることが判明している。カートリッジ2または針3から漏洩した薬剤がマグネット21とセンサ22との間の領域に到達したとしても、信頼性ある検出を行うことができる。磁気センサはまた、検出を行うのに、可動部材(マグネット)21とセンサ22との間の距離を小さくする必要がないという長所を有している。したがって、レバー12の作動位置におけるマグネット21とセンサ22との間に充分大きな距離をとって、保護壁24を設けることが可能になる。
【0023】
また、第2レバーアーム16の長さが大きいため、マグネット21をカートリッジ2の下端部4から離れた位置に配置でき、したがって、マグネット21とセンサ22との間の領域が薬剤によって汚染される危険性は小さい。
【0024】
第1レバーアーム14に対する第2レバーアーム16の長さが大きいことによる他の長所は、レバーの下端部15の変位が小さくてもレバーの上端部17したがってマグネット21に大きい変位を生じさせることができ、したがって、センサ22が受ける磁界レベルの差が大きくなり、針検出の信頼性を向上できる。
【符号の説明】
【0025】
1 カートリッジホルダ
2 薬剤カートリッジ
3 針
7 針支持体(ハブ)
10 弾性フランジ
12 レバー
13 ヒンジ点
14 第1アーム
16 第2アーム
18 スプリング
21 マグネット
22 センサ
24 壁
図1
図2
図3
図4