特許第6181172号(P6181172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181172アンドロゲン受容体拮抗薬としてのN−[4−(キノリン−4−イルオキシ)シクロヘキシル(メチル)](ヘテロ)アリールカルボキサミド類、医薬品としてのその製造および使用
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  • 特許6181172-アンドロゲン受容体拮抗薬としてのN−[4−(キノリン−4−イルオキシ)シクロヘキシル(メチル)](ヘテロ)アリールカルボキサミド類、医薬品としてのその製造および使用 図000038
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181172
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】アンドロゲン受容体拮抗薬としてのN−[4−(キノリン−4−イルオキシ)シクロヘキシル(メチル)](ヘテロ)アリールカルボキサミド類、医薬品としてのその製造および使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 215/22 20060101AFI20170807BHJP
   C07D 413/12 20060101ALI20170807BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20170807BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170807BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170807BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C07D215/22CSP
   C07D413/12
   C07D401/12
   A61K31/47
   A61P43/00 111
   A61P35/00
   A61P13/08
   A61K31/4709
   A61K45/00
【請求項の数】22
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2015-519023(P2015-519023)
(86)(22)【出願日】2013年6月24日
(65)【公表番号】特表2015-521641(P2015-521641A)
(43)【公表日】2015年7月30日
(86)【国際出願番号】EP2013063118
(87)【国際公開番号】WO2014001247
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年6月6日
(31)【優先権主張番号】12004764.2
(32)【優先日】2012年6月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514298139
【氏名又は名称】バイエル・ファルマ・アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】デュイ・グェン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン・クンザー
(72)【発明者】
【氏名】ホルテンシア・ファウス・ギメネス
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・バーダー
(72)【発明者】
【氏名】シルケ・クアー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・フリッシュ
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−539275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物
【化1】
中、R1は、水素、シアノ、フッ素、塩素または臭素を表し;Aは、フェニルまたは、イソオキサゾール環もしくはピラゾール環から選択される五員環ヘテロアリールを表し、このフェニルまたはこの五員環ヘテロアリールは、場合により:ハロゲン、シアノ、アルキル−、ハロアルキル−、シクロアルキル−、ヘテロシクリル−、ヒドロキシ、アルコキシ−、フルオロアルコキシ−、シクロアルキルオキシ−、アミノ−、アルキルアミノ−、ジアルキルアミノ−、シクロアルキルアミノ−、アルキルシクロアルキルアミノ−、ジシクロアルキルアミノ−、アルキルカルボニルアミノ−、シクロアルキルカルボニルアミノ−、アルキルスルファニル−、シクロアルキルスルファニル−、アルキルスルホニル−、シクロアルキルスルホニル−、アミノスルホニル−、アルキルアミノスルホニル−、シクロアルキルアミノスルホニル−;アルコキシカルボニル−から互いに無関係に選択される1つ、2つまたは3つの置換基で置換され;n=0、1または2であり;あるいは、これらの塩のうちの1つである化合物。
【請求項2】
R1は、水素、シアノ、フッ素または臭素を表し;Aは、フェニルまたは五員環ヘテロアリールを表し、このフェニルまたはこの五員環ヘテロアリールは、場合により:ハロゲン、シアノ、アルキル−、ハロアルキル−から互いに無関係に選択される1つまたは2つの置換基で置換され;n=0または1であることを特徴とする請求項1に記載の化合物;あるいは、これらの塩のうちの1つである化合物。
【請求項3】
R1は、水素、臭素、シアノまたはフッ素を表し;Aは、フェニルまたは五員環ヘテロアリールを表し、このフェニルまたはこの五員環ヘテロアリールは、場合により:フッ素、塩素、シアノ、メチルまたはトリフルオロメチルから互いに無関係に選択される1つまたは2つの置換基で置換され;n=0または1であることを特徴とする請求項1に記載の化合物;あるいは、これらの塩のうちの1つである化合物。
【請求項4】
Aは、フェニルを表し、ここで、このフェニルは、場合により、フッ素、塩素、シアノ、メチル、トリフルオロメチルから互いに無関係に選択される1つまたは2つの置換基で置換されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式中、Aはフェニルを表し、ここで、このフェニルは、場合により、フルオロ−置換基で置換されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−4−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド、N−[trans−4−(4−キノリルオキシ)シクロヘキシル]−3,4−ジフルオロベンズアミド、N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−3−メチルイソオキサゾール−4−カルボキサミド、N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−イソオキサゾール−5−カルボキサミド、N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)イソオキサゾール−3−カルボキサミド、N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド、N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド、N−{[trans−4−(4−キノリルオキシ)シクロヘキシル]メチル}−3,4−ジフルオロベンズアミド、N−{[trans−4−(4−キノリルオキシ)シクロヘキシル]メチル}−3−フルオロベンズアミド、N−{[trans−4−(4−キノリルオキシ)シクロヘキシル]メチル}−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3,4−ジフルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−フルオロ−4−メチルベンズアミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−4−シアノベンズアミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−4−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−クロロ−4−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−(4−キノリルオキシ)シクロヘキシル}−3−フルオロベンズアミド、N−({trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド、N−({trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)イソオキサゾール−3−カルボキサミド、N−{[trans−4−(4−キノリルオキシ)シクロヘキシル]メチル}−4−シアノベンズアミド、N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3,4−ジフルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−4−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド、3−クロロ−N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−4−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−フルオロ−4−メチルベンズアミド、4−クロロ−N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3,5−ジフルオロベンズアミド、N−({trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)イソオキサゾール−3−カルボキサミド、N−({trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミドから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の式(I)の化合物、あるいはその塩のうちの1つを製造する方法であって、式中、R1およびnが請求項1に定義された意味を有する一般式(II)
【化2】
化合物が、式中、Aが請求項1に定義された意味を有する酸塩化物A−COClと、塩基の存在下で反応し、および、生じる式(I)の化合物が、対応する(ii)塩基もしくは酸を用いて、場合により、これらの塩に転換されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の式(I)の化合物、あるいはその塩のうちの1つを製造する方法であって、式中、R1およびnが請求項1に定義された意味を有する一般式(II)
【化3】
化合物が、式中、Aが請求項1に定義された意味を有する酸A−COOHと、適したカップリング試薬および塩基の存在下で反応し、および、生じる式(I)の化合物が、対応する(ii)塩基もしくは酸を用いて、場合により、これらの塩に転換されることを特徴とする方法。
【請求項9】
式中、R1=シアノの請求項1に記載の式(I)の化合物、あるいはその塩のうちの1つを製造する方法であって、式中、nおよびAが請求項1に定義された意味を有する一般式(VII)
【化4】
の化合物が、臭素/シアノ交換反応を受け、および式中、R1=シアノの、生じる式(I)の化合物が、対応する(ii)塩基もしくは酸を用いて、場合により、これらの塩に転換されることを特徴とする方法。
【請求項10】
薬品として使するための請求項1から6のいずれか一項に定義された化合物を含む組成物
【請求項11】
常増殖疾患の治療および/または防止において使用するための請求項1から6のいずれか一項に定義された化合物を含む組成物
【請求項12】
前記異常増殖疾患が、アンドロゲン受容体依存性異常増殖疾患である、請求項11に記載の組成物
【請求項13】
多嚢胞性卵巣症候群の治療および/または防止において使用するための請求項1から6のいずれか一項に定義された化合物を含む組成物
【請求項14】
請求項1から6のいずれか一項に定義された化合物を含む医薬品であって、別の活性物質と組み合わせた医薬品。
【請求項15】
請求項1から6のいずれか一項に定義された化合物を含む医薬品であって、不活性で非毒性の薬剤的に適した賦形剤と組み合わせた医薬品。
【請求項16】
異常増殖疾患の治療および/または防止において使用するための請求項14または15に記載の医薬品。
【請求項17】
アンドロゲン受容体依存性異常増殖疾患の治療および/または防止において使用するための請求項14または15に記載の医薬品。
【請求項18】
多嚢胞性卵巣症候群の治療および/または防止において使用するための請求項14または15に記載の医薬品。
【請求項19】
一般式(II)
【化5】
の化合物であって、式中、R1およびnが請求項1に定義された意味を有する化合物。
【請求項20】
N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−フルオロベンズアミド
【化6】
またはその塩のうちの1つから選択される請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
請求項20に定義された化合物を含む医薬品であって、別の活性物質と組み合わせた医薬品。
【請求項22】
多嚢胞性卵巣症候群の治療および/または防止において使用するための、請求項21に記載の医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−[4−(キノリン−4−イルオキシ)シクロヘキシル(メチル)](ヘテロ)アリールカルボキサミド類、中間体およびその製造の方法、疾患を治療および/または防止するためのその使用、ならびに医薬品を製造するためのその使用、ならびに疾患、特に異常増殖疾患を治療および/または防止するための後者の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
工業国において、前立腺癌は、肺癌に次いで、癌による男性の死亡の第2の主因である。55歳以上の男性において、死亡の4%が前立腺腫瘍疾患に起因しており、80歳を超える男性では、この割合が死亡の70%まで上昇すると推定される。死亡率は依然として比較的低いとみなされているが、年率約14%で上昇している。前立腺腫瘍であると診断された男性の数は、近年30%増加しているが、それは新たに疾患の数が増加したというよりも、むしろ母集団が概して加齢していること、診断の方法が改善していること、および系統的なスクリーニングプログラムが導入されたことによるものと考えるべきである(E.J.Small, D.M.Reese, Curr.Opi.Oncol.2000, 12, 265−272)。
【0003】
初期段階において、前立腺腫瘍の増殖はアンドロゲン依存性である。腫瘍が前立腺に局所に限定されている場合、外科的に除去または放射線療法により治療することができるが、これらの方法には対応するリスクが伴う。腫瘍がもはや局所に限定されておらず、既に転移を形成している場合、腫瘍は、アンドロゲンの腫瘍への供給を減らすことによって治療される。この治療は、去勢により外科的に、または抗アンドロゲン剤(ビカルタミド、酢酸シプロテロン、フルタミド)、LHRHアゴニスト(リュープロリド、ゴセレリン、ブセレリン、ゾラデックス)、LHRHアンタゴニスト(セトロレリクス)または5α−還元酵素阻害薬(フィナステリド)を用いて治療することにより内科的に行われる。外科的去勢は、副腎性アンドロゲン合成に影響を与えないため、最近では外科的な治療と薬物治療を組み合わせて用いられることがしばしばである(S.Leewansangtong, E.D.Crawford, Endocrine−Related Cancer 1998, 5, 325−339)。しかし、この治療の成功は一時的なものにすぎず、その理由は、通例、遅くとも2年後には腫瘍が再増殖し、また、ほとんどの場合、その時には既存の化学的去勢療法に対して耐性があるためである(L.J.Denis, K.Griffith, Semin.in Surg.Onc.2000, 18, 52−74)。
【0004】
前立腺腫瘍の発症と増殖において、アンドロゲン受容体が、腫瘍進行の初期のホルモン依存性の段階だけでなく、後期の去勢抵抗性の段階においても、重要な役割を果たしていることを示すものがさまざまに存在する。
【0005】
アンドロゲン受容体は、リガンド依存性転写因子として作用する、ステロイドホルモン受容体のファミリーに属する。リガンドに結合していない細胞質アンドロゲン受容体は、シャペロンと複合体を形成する。アンドロゲンがアンドロゲン受容体に結合した後、その構造は変化する。シャペロンが複合体から解離し、リガンドに結合したアンドロゲン受容体は、細胞核内に運ばれる。ここで、ある特定の補因子が関与しながら、いわゆるアンドロゲン応答DNA配列に結合した後、アンドロゲン受容体は、ある特定の標的遺伝子を活性化または抑制する(D.J.Lambら、Vitam.Horm.2001, 62, 199−230)。
【0006】
前立腺腫瘍の調査では、進行した腫瘍の30%でアンドロゲン受容体遺伝子座の増幅が認められたことが明らかになっている。その他の場合では、アンドロゲン受容体分子のさまざまなドメイン内に局在しており、かつ受容体の特性の変化につながるいくつかの変異が、アンドロゲン受容体遺伝子に見つかっている。変異受容体は、アンドロゲンに対して高い親和性を持ったり、恒常的活性化したり、変異受容体のリガンド特異性を変える結果、変異受容体が、他のステロイドホルモンによって、または抗アンドロゲン剤によっても活性化されたり、他の成長促進シグナル伝達経路からの分子との相互作用を通じて活性化されて補因子との相互作用が変わったり、または他の標的遺伝子を活性化したりする(J.P.Elo, T.Visakorpi, Ann.Med.2001, 33, 130−41)。
【0007】
抗アンドロゲン薬投与後の癌再発とアンドロゲン受容体変異との関係に関して、臨床所見がいくつか報告されている。
【0008】
前立腺癌の再発を経験した患者17名のうち5名に、フルタミドと去勢の組み合わせを用いた内分泌療法の後、アンドロゲン受容体変異が観察され、これらはすべて、アンドロゲン受容体の877位におけるアミノ酸のミスセンス変異であった(Taplinら、Cancer Res., 59: 2511−2515, 1999)。これらの877位での変異については、一部の抗アンドロゲン薬は、フルタミドを含め、アゴニストとして振る舞い、前立腺癌細胞増殖を刺激することが見出されている(Veldscholteら、Biochem.Biophys.Res.Commun., 173: 534−540, 1990)。
【0009】
Haapalaら(Lab.Invest., 81: 1647−1651, 2001)は、アンドロゲン受容体の異なる変異について述べており、これらの変異は、前立腺癌の再発を経験した患者からの生検標本中に、ビカルタミドと外科的去勢の組み合わせを用いた内分泌療法の後に確認された。検出された変異のうち3つは、ミスセンス変異(G166S, W741C, M749I)であり、2つはサイレントな多形であった。調査された腫瘍は、いずれもアンドロゲン受容体の増幅を示さなかった。
【0010】
Haapalaらは、前立腺腫瘍において異なるタイプのアンドロゲン受容体の変化が、さまざまなタイプのホルモン療法を通じて選択されると結論付けている。
【0011】
Haraら(Cancer Research, 63: 149−153, 2003)は、最も一般に用いられる抗アンドロゲン薬であるビカルタミドが、アンドロゲン受容体変異W741CおよびW741Lの両方に対してアゴニストとして作用することを実証した。W741CおよびW741L変異は、アンドロゲン受容体のリガンド結合ドメイン内の同じコドン741に影響を与える。ある例では、コドン741のTGG(トリプトファン)がTGT(システイン)に変異する。他の例では、TTG(ロイシン)に変異する。ビカルタミドにインビトロ曝露したわずか6〜13週間以内に、LNCaP−FGC細胞は、その増殖が当初は抑制されたが、コドン741が変異しているため、生存するためにビカルタミドをアンドロゲン受容体アゴニストとして利用するようになった。
W741C変異によって、ビカルタミドがアゴニストとして作用するようになる別の証拠は、異種移植モデルによるデータを通じてもたらされた(Yoshidaら、Cancer Research, 65: 9611−9616, 2005)。
【0012】
Georgetら(Molecular Endocrinology, 20(4): 724−734, 2006)は、E709Y変異が、ビカルタミドの部分アゴニストへの変換を引き起こすことを実証している。
【0013】
非ステロイド系の抗アンドロゲン剤を用いた調査では、ステロイド系の化合物よりも利点があり、したがって好ましいことが示されている。したがって、非ステロイド系の化合物を用いると、より選択的な作用を、より少ない副作用で実現することができる。ステロイド系の抗アンドロゲン剤とは対照的に、既知の非ステロイド系の薬剤であるビカルタミドおよびフルタミドは、例えば、プロゲスターゲン活性を欠き、加えて、これらを使用すると、血清テストステロンのレベルが上昇し、それによって臨床的に効力が保持される可能性がある(P.Reid, P.Kantoff, W.Oh, Investigational New Drugs 1999, 17, 271−284)。
特に前立腺癌のこれらの進行期に対しては、過去50年間にわたる集中的な研究にもかかわらず、依然として効果的な治療法はない。これらの患者の5年生存率は、15%を下回る。
【0014】
したがって、異常増殖疾患、特にアンドロゲン受容体依存性異常増殖疾患を治療および/または防止するのに適しており、かつ、従来の抗アンドロゲン剤に対して、−改善された活性、−異常増殖疾患を治療するための改善された選択性プロファイル、−副作用の改善されたプロファイル(例えば、望ましくない副作用がより少ない、毒性が低下)、−改善された物理化学的特性(例えば、水溶性)、−改善された薬物動態学的特性(例えば、必要な用量の低減につながるものなど)、または−簡略化された、もしくは、より経済的な製造方法などの利点を有する新しい抗アンドロゲン剤が依然として大いに必要とされている。
【0015】
好ましくは、アンドロゲン受容体の野生型(Swiss−Prot Acc.No.P10275, Entry Version 159, Sequence Version 2)だけでなく、アンドロゲン受容体のある特定の変異型、および/またはアンドロゲン受容体を過剰発現させる細胞の細胞増殖も抑制する抗アンドロゲン剤を明らかにすることは、前立腺腫瘍を治療するために、進行期においてさえも、おそらく非常に有用であろう。
【0016】
したがって、アンドロゲン受容体拮抗薬(抗アンドロゲン剤)として作用し、また、前立腺癌、特に(去勢抵抗性)前立腺癌を治療するのに適した別の化合物が必要とされている。
【0017】
現在までのところ、N−[4−(キノリン−4−イルオキシ)シクロヘキシル](ヘテロ)アリールカルボキサミド類またはN−[4−(キノリン−4−イルオキシ)シクロヘキシルメチル](ヘテロ)アリールカルボキサミド類は、先行技術において記述されていない。
【0018】
構造的に最も密接に関係している化合物は、シクロヘキシル環の代わりに別の環構造(芳香族または複素環式芳香族など)を有するという点で、および/またはアミドのカルボニル基に位置する芳香族基の代わりに、その環原子のうちの1つの上にオキソ基を持つ非芳香族環を持つという点で、および/またはキノリンが部分的に水素化されて、さらにオキソ基を持つという点で、本発明による構造とは著しく異なる。これらの化合物は、本発明による化合物とは対照的に、キナーゼ、サイトカインMIFの阻害薬、または5−HT2c受容体などのGPCRの阻害薬である。
【0019】
したがって、国際公開第2006/116713号パンフレット(A1)には、癌を含むHGF媒介性疾患の防止および治療のためのプロテインキナーゼ阻害薬として、置換アミド誘導体が記載されており、また、国際公開第2009/140549号パンフレット(A1)には、アミドのカルボニル基の上に、(ヘテロ)芳香族環の代わりに、さらに置換3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール環を有し、さらにキノリンの7位がメトキシ基で置換されている、癌を治療するためのVEGFR阻害薬および肝細胞増殖因子(c−Met)阻害薬の組み合わせが記載されている。
【0020】
国際公開第2006/117552号パンフレット(A1)および国際公開第2005/117570号パンフレット(A1)には、シクロヘキシル環の代わりに芳香族環を持ち、さらにキノリン環上に本発明による化合物とは全く異なる置換パターンを、特に7位上の複雑な置換基、例えば、4−アミノ−4−シクロペンチルオキシカルボニルブタ−1−イルオキシ基によって示すキノリン類およびキノキサゾリン類がキナーゼ阻害薬として記載されている。
【0021】
国際公開第2010/039248号パンフレット(A1)の請求項11に記載の一般式では、キノリンとアミド結合の間で不飽和環が可能となるのみであるが、シクロヘキシル環を備える3つの化合物が記載されており、しかし、これらはすべて、本発明による化合物内のアミドのカルボニル基上に必須の(ヘテロ)芳香族の代わりに、別の置換3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール環を有する。出願は、癌治療の、特に少なくとも1つのHGF−Met阻害薬および少なくとも1つのEGFR阻害薬を用いる方法に関する。
【0022】
国際公開第2007/146824号パンフレット(A2)において、キノリンが、異常増殖疾患を治療するためのチロシンキナーゼの阻害薬として提案されている。合計でおよそ100例のうち、これらはすべてシクロヘキシル環の代わりに(ヘテロ)芳香族を持ち、開環アミド構造のものはほとんどないが、そのなかでカルボニル基上に存在する環は、単環式芳香族または芳香族でなく、後者の場合、オキソ基を持つ。
【0023】
国際公開第2012/009649号パンフレット(A1)には、MIF関連疾患を治療するためのMIF阻害薬が記載されているが、これらは本発明による化合物とはさらに構造的に異なり、その理由は、キノリンが部分的に水素化されて、2−オキソ基および3−シアノ基を持ち、シクロヘキシル環が、アゼチジン、ピペリジンまたはピロリジンなどの複素環に置き換わっており、また、キノリンと隣の環との間の酸素架橋がないか、または窒素架橋として存在するためである。
【0024】
驚いたことに、一般式(I)のN−[4−(キノリン−4−イルオキシ)シクロヘキシル](ヘテロ)アリールカルボキサミド類またはN−[4−(キノリン−4−イルオキシ)シクロヘキシルメチル](ヘテロ)アリールカルボキサミド類は、アンドロゲン受容体拮抗作用を持つことが明らかになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】国際公開第2012/009649号パンフレット(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明によって解決される問題は、異常増殖疾患を治療するためのアンドロゲン受容体拮抗作用を備えた化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
この問題は、一般式(I)のN−[4−(キノリン−4−イルオキシ)シクロヘキシル(メチル)](ヘテロ)アリールカルボキサミド類を用いた本発明により解決される。
【0028】
したがって、本発明は、一般式(I)
【化1】
(I)の化合物に関し、式中、R1は、水素、シアノ、フッ素、塩素または臭素を表し;Aは、フェニルまたは五員環ヘテロアリールを表し、ここで、このフェニルまたはこの五員環ヘテロアリールは、場合により:ハロゲン、シアノ、C1−C3−アルキル−、ハロアルキル−、シクロアルキル−、ヘテロシクリル−、ヒドロキシ、アルコキシ−、フルオロアルコキシ−、シクロアルキルオキシ−、アミノ−、アルキルアミノ−、ジアルキルアミノ−、シクロアルキルアミノ−、アルキルシクロアルキルアミノ−、ジシクロアルキルアミノ−、アルキルカルボニルアミノ−、シクロアルキルカルボニルアミノ−、アルキルスルファニル−、シクロアルキルスルファニル−、アルキルスルホニル−、シクロアルキルスルホニル−、アミノスルホニル−、アルキルアミノスルホニル−、シクロアルキルアミノスルホニル−;アルコキシカルボニル−から互いに無関係に選択される1つ、2つまたは3つの置換基で置換され;n=0、1または2であり;あるいは、これらの塩の、これらの溶媒和物の、またはこれらの塩の溶媒和物のうちの1つに関する。
【0029】
本発明による化合物は、式(I)の化合物とこれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、式(I)の範囲に含まれる以下に記載の式の化合物とこれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、ならびに式(I)の範囲に含まれる実際的な例として以下に記載の化合物とこれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物であるが、ただし、式(I)の範囲に含まれる以下に記載の化合物は、まだ塩、溶媒和物および塩の溶媒和物ではないものとする。
【0030】
本発明の文脈において、本発明による化合物の生理的に無害な塩は、「塩」として好ましい。しかし、塩はまた、それら自体が製薬での使用に適していないものに含まれるが、本発明による化合物を、例えば分離または精製するために用いることができる。
【0031】
本発明による化合物の生理的に無害な塩には、鉱酸、カルボン酸およびスルホン酸の酸添加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および安息香酸の塩が含まれる。
【0032】
本発明による化合物の生理的に無害な塩には、例えば、好ましくはアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類塩(例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)、およびアンモニアまたは1個から16個の炭素原子を持つ有機アミン、例えば、好ましくはエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、アルギニン、リシン、エチレンジアミンおよびN−メチルピペリジンから誘導されるアンモニウム塩などの通常の塩基の塩も含まれる。
【0033】
「溶媒和物」は、本発明の文脈において、固体または液体状態で、溶媒分子を伴う配位による錯体を形成する本発明による化合物の形態を意味する。水和物は溶媒和物の特殊な形態であり、そのなかで水を伴って配位が起こる。
【0034】
本発明による化合物は、その構造に応じてさまざまな立体異性体、すなわち配置異性体の形態で、または、場合により配座異性体(アトロプ異性体の場合を含むエナンチオマーおよび/またはジアステレオマー)としても存在することができる。したがって、本発明は、エナンチオマーおよびジアステレオマーならびにこれらの混合物それぞれを含む。立体異性的に均質な組成物は、周知の方法でエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの上記混合物から分離することができて、このために好ましくはクロマトグラフ法、特にアキラルまたはキラル相HPLCクロマトグラフィーが用いられる。
【0035】
本発明による化合物が互変異性体で発生する可能性がある場合、本発明は、すべての互変異性体を含む。
【0036】
本発明は、本発明による化合物のすべての適した同位体の変種も含む。本発明による化合物の同位体の変種は、この場合、本発明による化合物内の少なくとも1つの原子が、原子番号は同じであるが、原子質量は通常または主に天然に存在する原子質量とは異なる別の原子と交換された化合物と理解されるべきである。本発明による化合物に取り込むことができる同位体の例は、2H(重水素)、3H(三重水素)、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、33S、34S、35S、36S、18F、36Cl、82Br、123I、124I、129Iおよび131Iなど、水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の同位体である。本発明による化合物の特定の同位体の変種、特に1つまたは複数の放射性同位体が取り込まれた変種などは、例えば、体内における作用機序または活性物質の分布を調査するために利用することができるが、その理由は、これらの変種が比較的容易に生成および検出することができて、3Hまたは14C同位体で標識した化合物は、特にこの目的に適している。さらに、同位体、例えば重水素の取り込みは、化合物のより大きな代謝安定性の結果、ある特定の治療上の利点、例えば、体内における半減期の延長、または必要とされる有効な用量の低減などにつながる可能性があり、したがって、本発明による化合物の上記変更は、場合により、本発明の好ましい実施形態を表すこともできる。本発明による化合物の同位体の変種は、当業者に周知の方法、したがって、例えば以下で説明する方法、および実際的な例において示す明細によって、それぞれの試薬および/または出発化合物の対応する同位体の変更を利用して、製造することができる。
【0037】
さらに、本発明は、本発明による化合物のプロドラッグも含む。用語「プロドラッグ」は、それ自体が生物学的に活性または不活性であってもよいが、体内での滞留時間内に本発明による化合物に(例えば、代謝的または加水分解的に)転換される化合物を含む。
【0038】
さらに、本発明は、多形体があらゆる濃度範囲において個々の多形体、またはいくつかの多形体の混合物のいずれかとして存在することができる、本発明による化合物のすべての可能な結晶形および多形に関する。
【0039】
本発明の文脈において、置換基は、特に記載しない限り、以下の意味を有する:
【0040】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素、好ましくは、フッ素、塩素および臭素、特に好ましくは、フッ素および塩素を表す。
【0041】
用語「五員環ヘテロアリール」は、5個の環原子、およびS、OおよびNの系列から最大3個、好ましくは、最大2個のヘテロ原子を持つ芳香族、単環式残基、例えば、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、チエニル、フリル、ピロリル、チアゾリル、イミダゾリル、好ましくは、イソオキサゾリルおよびピラゾリル、特に好ましくは、イソオキサゾリルを表す。
【0042】
アルコキシ−、アルキルアミノ−、アルキルシクロアルキルアミノ−、アルキルカルボニルアミノ−、アルキルスルファニル−、アルキルスルホニル−、アルキルアミノスルホニル−、アルコキシカルボニル−における「アルコ(Alk)」および「アルキル」は、通例、1個、2個、3個、4個、5個または6個の、好ましくは、1個、2個または3個の、特に好ましくは、1個または2個の炭素原子を持つ直鎖または分岐鎖のアルキル残基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを表す。
【0043】
用語「アルキル」は、具体的に記載した数の炭素原子を持つ直鎖または分岐鎖のアルキル残基を表す。例えば、用語C1−C3は、1個、2個または3個の炭素原子、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルを含む。炭素原子の数が具体的に記載されていない場合、用語「アルキル」は、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を持つ直鎖または分岐鎖のアルキル残基(=C1−C6−アルキル−)を表す。1個、2個または3個の炭素原子を持つアルキル基(=C1−C3−アルキル)が好ましく、メチルが特に好ましい。
【0044】
「ハロアルキル−」は、部分的または完全にハロゲン化されたアルキル−を表す。複合的にハロゲン化されたハロアルキル−の場合、ハロゲン原子は、同一でも異なっていてもよい。好ましいハロゲン原子は、フッ素または塩素であり、特にフッ素である。好ましいハロアルキル−は、トリフルオロメチル−である。
【0045】
「シクロアルキル」は、通例、3個、4個、5個、6個、7個または8個(=C3−C8−シクロアルキル)、特に3個、4個、5個または6個(=C3−C6−シクロアルキル)の炭素原子を持つシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルを表す。「シクロアルキル」は、好ましくは、C3−C6−シクロアルキルを表す。用語「C3−C6−シクロアルキル」は、3個、4個、5個または6個の炭素原子を持つシクロアルキル基を表す。
【0046】
用語「ヘテロシクリル」は、通例、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個、好ましくは4個、5個、6個、7個または8個の環原子、および最大3個、好ましくは、最大2個のヘテロ原子、および/または、N、O、S、SO、SO2の系列からのヘテロ基、好ましくは、N、O、Sの系列からのヘテロ基を持つ、単環式または多環式の、好ましくは、単環式または二環式の、非芳香族複素環式の残基を表す。ヘテロシクリル残基は、飽和または部分的に不飽和していることができて、好ましくは飽和している。例えば、以下に言及してもよい:アゼチジニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、パーヒドロアゼピニル。
【0047】
「アルコキシ−」は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシを表す。「C1−C3−アルコキシ−」が好ましく、メトキシ−が特に好ましい。
用語「C1−C3−アルコキシ」は、メトキシ−、エトキシ−またはプロポキシ−を表す。
【0048】
用語「フルオロアルコキシ−」は、1つまたは複数の水素原子が、1つまたは複数のフッ素原子と交換された、上で定義したアルコキシ残基を指し、「C1−C3−フルオロアルコキシ−」が好ましい。用語「C1−C3−フルオロアルコキシ−」は、1個、2個または3個の炭素原子を持つ分岐鎖または直鎖のフルオロアルコキシ残基を表す。例えば、用語「C1−C3−フルオロアルコキシ」は、トリフルオロメトキシ−、ジフルオロメトキシ−、テトラフルオロエトキシ−、ペンタフルオロエトキシ−、好ましくは、トリフルオロメトキシ−を表す。
【0049】
用語「シクロアルキルオキシ−」は、水素原子が酸素原子と交換された、上で定義したシクロアルキル残基を指す。例えば、この用語は、シクロプロピルオキシ−、シクロブチルオキシ−、シクロペンチルオキシ−、シクロヘキシルオキシ−およびシクロヘプチルオキシ−を表し、C3−C6−シクロアルキルオキシ−が好ましい。用語「C3−C6−シクロアルキルオキシ−」は、3個、4個、5個または6個の炭素原子を持つシクロアルキルオキシ残基を表し、シクロプロピルオキシ−が好ましい。
【0050】
「アルキルアミノ−」は、直鎖または分岐鎖のアルキル置換基を持つアルキルアミノ残基、好ましくは、C1−C3−アルキルアミノ−を表す。用語「C1−C3−アルキルアミノ−」は、例えば、1個、2個または3個の炭素原子を持つモノアルキルアミノ残基を表す。例えば、以下に言及してもよい:メチルアミノ−、エチルアミノ−、プロピルアミノ−、イソプロピルアミノ−。
【0051】
用語「ジアルキルアミノ−」は、2つの(互いに無関係に選択される)直鎖または分岐鎖のアルキル置換基を持つアルキルアミノ残基、好ましくは、(C1−C3)−ジアルキルアミノ−を表す。用語「(C1−C3)−ジアルキルアミノ−」は、例えば、それぞれの場合において、アルキル置換基あたり1個、2個または3個の炭素原子を持つジアルキルアミノ残基を表す。例えば、以下に言及してもよい:ジメチルアミノ−、ジエチルアミノ−、エチルメチルアミノ−、メチルプロピルアミノ−、イソプロピルプロピルアミノ−。
【0052】
「シクロアルキルアミノ−」は、上で定義した、シクロアルキル置換基を持つシクロアルキルアミノ残基、好ましくは、C3−C6−シクロアルキルアミノ−を表す。用語「C3−C6−シクロアルキルアミノ−」は、例えば、3個、4個、5個または6個の炭素原子を持つモノシクロアルキルアミノ残基を表す。例えば、シクロプロピルアミノ−、シクロブチルアミノ−、シクロペンチルアミノ−およびシクロヘキシルアミノ−に言及してもよく、シクロプロピルアミノ−が好ましい。
【0053】
用語「アルキルシクロアルキルアミノ−」は、互いに無関係に選択される2つの置換基、アルキル−およびシクロアルキル置換基を持つアミノ残基を表し、好ましくは、C1−C3−アルキル−C3−C6−シクロアルキルアミノ−を表す。用語:「C1−C3−アルキル−C3−C6−シクロアルキルアミノ−」は、例えば、1個、2個または3個の炭素原子を持つアルキル置換基、および3個、4個、5個または6個の炭素原子を持つシクロアルキル残基を持つアミノ残基を表す。例えば、用語「アルキルシクロアルキルアミノ−」は:ブチルシクロヘキシルアミノ−、プロピルシクロヘキシルアミノ−、エチルシクロヘキシルアミノ−、プロピルシクロプロピルアミノ−、エチルシクロプロピルアミノ−、メチルシクロプロピルアミノ−を表す。
【0054】
用語「ジシクロアルキルアミノ−」は、2つの(互いに無関係に選択される)シクロアルキル置換基を持つシクロアルキルアミノ残基、好ましくは、(C3−C6)−ジシクロアルキルアミノ−を表す。用語「(C3−C6)−ジシクロアルキルアミノ−」は、例えば、それぞれの場合において、シクロアルキル置換基あたり3個、4個、5個または6個の炭素原子を持つジシクロアルキルアミノ−残基を表す。例えば、以下に言及してもよい:ジシクロプロピルアミノ−、ジシクロヘキシルアミノ−、シクロプロピルシクロヘキシルアミノ−。
【0055】
用語「アルキルカルボニルアミノ−」は、1個、2個、3個、4個、5個または6個(「C1−C6−アルキルカルボニルアミノ−」)、好ましくは、1個、2個または3個(「C1−C3−アルキルカルボニルアミノ−」)の炭素原子を持つ直鎖または分岐鎖のアルキルカルボニルアミノ残基を表す。非限定的な例には、メチルカルボニルアミノ、エチルカルボニルアミノ、n−プロピルカルボニルアミノ、イソプロピルカルボニルアミノ、n−ブチルカルボニルアミノ、tert−ブチルカルボニルアミノ、n−ペンチルカルボニルアミノおよびn−ヘキシルカルボニルアミノが含まれる。
【0056】
用語「シクロアルキルカルボニルアミノ−」は、シクロアルキル基内に、例えば、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有するシクロアルキルカルボニルアミノ残基(=C3−C6−シクロアルキルカルボニルアミノ−)を表す。非限定的な例には、シクロプロピルカルボニルアミノ−、シクロブチルカルボニルアミノ−、シクロペンチルカルボニルアミノ−およびシクロヘキシルカルボニルアミノ−が含まれる。
【0057】
「アルキルスルファニル−」は、直鎖または分岐鎖のアルキル置換基を持つアルキルスルファニル残基、好ましくは、C1−C3−アルキルスルファニル−を表す。用語「C1−C3−アルキルスルファニル−」は、例えば、1個、2個または3個の炭素原子を持つアルキルスルファニル残基を表す。例えば、以下に言及してもよい:メチルスルファニル−、エチルスルファニル−、n−プロピルスルファニル−、イソプロピルスルファニル−。
【0058】
用語「シクロアルキルスルファニル−」は、シクロアルキル置換基を持つシクロアルキルスルファニル残基、好ましくは、C3−C6−シクロアルキルスルファニルを表す。用語「C3−C6−シクロアルキルスルファニル−」は、例えば、3個、4個、5個または6個の炭素原子を持つシクロアルキルスルファニル残基を表す。例えば、以下に言及してもよい:シクロプロピルスルファニル−、シクロブチルスルファニル−、シクロペンチルスルファニル−、シクロヘキシルスルファニル−。
【0059】
「アルキルスルホニル−」は、直鎖または分岐鎖のアルキル置換基を持つアルキルスルホニル残基、好ましくは、C1−C3−アルキルスルホニル−を表す。用語「C1−C3−アルキルスルホニル−」は、例えば、1個、2個または3個の炭素原子を持つアルキルスルホニル残基を表す。例えば、以下に言及してもよい:メチルスルホニル−、エチルスルホニル−、n−プロピルスルホニル−、イソプロピルスルホニル−。
【0060】
用語「シクロアルキルスルホニル−」は、シクロアルキル置換基を持つシクロアルキルスルホニル残基、好ましくは、C3−C6−シクロアルキルスルホニル−を表す。用語「C3−C6−シクロアルキルスルホニル−」は、例えば、3個、4個、5個または6個の炭素原子を持つシクロアルキルスルホニル残基を表す。例えば、以下に言及してもよい:シクロプロピルスルホニル−、シクロブチルスルホニル−、シクロペンチルスルホニル−、シクロヘキシルスルホニル−。
【0061】
「アルキルアミノスルホニル−」は、1つまたは2つの(互いに無関係に選択される)直鎖または分岐鎖のアルキル置換基を持つアルキルアミノスルホニル残基、例えば、「C1−C6−アルキルアミノスルホニル−」を表す。用語「C1−C6−アルキルアミノスルホニル−」は、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を持つモノアルキルアミノスルホニル残基、または、それぞれの場合において、アルキル置換基あたり1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を持つジアルキルアミノスルホニル残基を表し、例えば、メチルアミノスルホニル−、エチルアミノスルホニル−、n−プロピルアミノスルホニル−、イソプロピルアミノスルホニル−、tert−ブチルアミノスルホニル−、n−ペンチルアミノスルホニル−、n−ヘキシルアミノスルホニル−、ジメチルアミノスルホニル−、ジエチルアミノスルホニル−、エチルメチルアミノスルホニル−、メチル−n−プロピルアミノスルホニル−、イソプロピル−n−プロピルアミノスルホニル−、tert−ブチルメチルアミノスルホニル−、エチル−n−ペンチルアミノスルホニル−およびn−ヘキシルメチルアミノスルホニル−を表す。「アルキルアミノスルホニル−」は、好ましくは、「C1−C3−アルキルアミノスルホニル−」を表す。用語「C1−C3−アルキルアミノスルホニル−」は、例えば、1個、2個または3個の炭素原子を持つモノアルキルアミノスルホニル残基、または、それぞれの場合において、アルキル置換基あたり1個、2個または3個の炭素原子を持つジアルキルアミノスルホニル残基を表す。
【0062】
用語「シクロアルキルアミノスルホニル−」は、1つまたは2つの(互いに無関係に選択される)シクロアルキル置換基を持つシクロアルキルアミノスルホニル残基、例えば、C3−C6−シクロアルキルアミノスルホニル−またはC5−C6−シクロアルキルアミノスルホニル−を表す。シクロプロピルアミノスルホニル−、シクロブチルアミノスルホニル−、シクロペンチルアミノスルホニル−、シクロヘキシルアミノスルホニル−に言及してもよい。C3−C6−シクロアルキルアミノスルホニル−は、例えば、3個、4個、5個または6個の炭素原子を持つモノシクロアルキルアミノスルホニル残基、または、それぞれの場合において、シクロアルキル置換基あたり3個、4個、5個または6個の炭素原子を持つジシクロアルキルアミノスルホニル残基を表す。
【0063】
「アルコキシカルボニル」は、1個から6個(C1−C6−アルコキシカルボニル−)、好ましくは、1個から4個(C1−C4−アルコキシカルボニル−)、および特に好ましくは、1個から3個(C1−C3−アルコキシカルボニル−)の炭素原子を持つ直鎖または分岐鎖のアルコキシカルボニル残基を表す。好ましい例には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニルおよびtert−ブトキシカルボニルが含まれる。
【0064】
別の実施形態では、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、R1は、水素、シアノ、フッ素または臭素を表し;Aは、フェニルまたは五員環ヘテロアリールを表し、ここで、このフェニルまたはこの五員環ヘテロアリールは、場合により:ハロゲン、シアノ、C1−C3−アルキル−、ハロアルキル−から互いに無関係に選択される1つまたは2つの置換基で置換され;n=0または1であり;あるいは、これらの塩の、これらの溶媒和物の、またはこれらの塩の溶媒和物のうちの1つに関する。
【0065】
別の実施形態では、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、R1は、水素、シアノ、フッ素または臭素を表し;Aは、フェニル、イソオキサゾリルまたはピラゾリルを表し、ここで、このフェニル、イソオキサゾリルまたはピラゾリルは、場合により、フッ素、塩素、シアノ、メチル、トリフルオロメチルから互いに無関係に選択される1つまたは2つの置換基で置換され;n=0または1であり;あるいは、これらの塩の、これらの溶媒和物の、またはこれらの塩の溶媒和物のうちの1つに関する。
【0066】
別の実施形態では、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、R1は、水素、シアノ、フッ素、塩素または臭素を表す。
【0067】
別の実施形態では、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、R1は、水素、シアノ、フッ素または臭素を表す。
【0068】
好ましい実施形態において、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、R1は、水素またはシアノを表す。
【0069】
別の好ましい実施形態において、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、R1は、フッ素またはシアノを表す。
【0070】
別の好ましい実施形態において、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、R1は、フッ素を表す。
【0071】
別の好ましい実施形態において、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、R1は、水素を表す。
【0072】
別の好ましい実施形態において、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、R1は、シアノを表す。
【0073】
別の実施形態では、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、Aは、フェニルまたは五員環ヘテロアリールを表し、ここで、このフェニルまたはこの五員環ヘテロアリールは、場合により、フッ素、塩素、シアノ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、トリフルオロメチルから互いに無関係に選択される1つまたは2つの置換基で置換される。
【0074】
別の実施形態では、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、Aは、フェニルを表し、ここで、このフェニルは、場合により、フッ素、塩素、シアノ、メチル、トリフルオロメチルから互いに無関係に選択される1つまたは2つの置換基で置換される。
【0075】
別の好ましい実施形態において、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、Aは、イソオキサゾリルを表し、ここで、このイソオキサゾリルは、場合により、メチル基で置換される。
【0076】
特に好ましい実施形態において、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、Aは、メチルイソオキサゾリル、好ましくは、5−メチルイソオキサゾリルを表す。
【0077】
好ましい実施形態において、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、Aはフェニルを表し、ここで、このフェニルは、場合により、フルオロ−置換基で置換される。
【0078】
特に好ましい実施形態において、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、Aはフルオロフェニル、好ましくは、3−フルオロフェニルを表す。
【0079】
別の実施形態では、本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、n=0、1または2、好ましくは、n=0または1である。
【0080】
残基のそれぞれの組み合わせ、または好ましい組み合わせにおける、詳細に記載された残基の定義は、また、記載された残基のそれぞれの組み合わせとは無関係に、他の組み合わせの残基のどのような他の定義とも置き換えられる。
【0081】
2つ以上の上述の好ましい範囲の組み合わせは、特に非常に好ましい。
【0082】
別の好ましい実施形態において、本発明は、以下から選択される一般式(I)の化合物に関する:N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−4−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド、N−[trans−4−(4−キノリルオキシ)シクロヘキシル]−3,4−ジフルオロベンズアミド、N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−3−メチルイソオキサゾール−4−カルボキサミド、N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−イソオキサゾール−5−カルボキサミド、N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)イソオキサゾール−3−カルボキサミド、N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド、N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド、N−{[trans−4−(4−キノリルオキシ)シクロヘキシル]メチル}−3,4−ジフルオロベンズアミド、N−{[trans−4−(4−キノリルオキシ)シクロヘキシル]メチル}−3−フルオロベンズアミド、N−{[trans−4−(4−キノリルオキシ)シクロヘキシル]メチル}−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3,4−ジフルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−フルオロ−4−メチルベンズアミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−4−シアノベンズアミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−4−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−クロロ−4−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−(4−キノリルオキシ)シクロヘキシル}−3−フルオロベンズアミド、N−({trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド、N−({trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)イソオキサゾール−3−カルボキサミド、N−{[trans−4−(4−キノリルオキシ)シクロヘキシル]メチル}−4−シアノベンズアミド、N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3,4−ジフルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−4−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド、3−クロロ−N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−4−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−フルオロ−4−メチルベンズアミド、4−クロロ−N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−フルオロベンズアミド、N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3,5−ジフルオロベンズアミド、N−({trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)イソオキサゾール−3−カルボキサミド、N−({trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド。
【0083】
本発明による化合物の合成:
本発明による化合物の製造は、以下の合成スキームによって表すことができる:
【化2】
【0084】
本発明は、本発明による一般式(I)の化合物の製造方法に関し、ここで、本発明による一般式(I)の化合物は、一般式(II)のアミン構成要素を、塩基の存在下で酸塩化物A−COClと、または適したカップリング試薬および塩基の存在下でカルボン酸A−COOHと反応させることによって生成される。本発明により生じる式(I)の化合物は、対応する(i)溶媒、および/または(ii)塩基もしくは酸を用いて、場合により、これらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に転換され、式中、R1、Aおよびnは、本発明による一般式(I)の化合物に関連して記載された意味を有する。
【0085】
一般式(II)のアミンと酸塩化物A−COClとの反応に適した有機塩基は、例えば、トリエチルアミン(米国特許出願公開第2003/232854号明細書)、ピリジン(国際公開第2008/40934号パンフレット)またはN−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン(国際公開第2009/23655号パンフレット)である。本発明による方法に関連して、トリエチルアミンが有機塩基として一般式(II)のアミンとカルボン酸塩化物A−COClとの反応に用いられるのが好ましい。
【0086】
一般式(II)のアミンとカルボン酸塩化物A−COClとの、有機塩基の存在下での反応は、例えば、アセトニトリル(国際公開第2008/64432号パンフレット)、N,N−ジメチルホルムアミド(国際公開第2006/117570号パンフレット)などの非プロトン性極性溶媒中、または、例えば、ジクロロメタン(米国特許出願公開第2003/232854号明細書)などの非プロトン性非極性溶媒中で起こる。本発明による方法に関連して、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)およびピリジンが溶媒として一般式(II)のアミンと一般式A−COClのカルボン酸塩化物との反応に用いられるのが好ましい。
【0087】
一般式(II)のアミンとカルボン酸A−COOHとの反応に適したカップリング試薬は、例えば、O−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATUとも呼ばれる(国際公開第2005/115972号パンフレット、国際公開第2006/52722号パンフレット))、ジシクロヘキシルカルボジイミド(J.Am.Chem.Soc.1992, 114, 9327 ff.)、または1H−ベンゾトリアゾール−1−オールと1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド塩酸塩との組み合わせ(米国特許出願公開第2007/185148号明細書)である。本発明による方法に関連して、HATUがカップリング試薬として用いられるのが好ましい。
【0088】
一般式(II)のアミンとカルボン酸A−COOHとの反応に適した有機塩基は、例えば、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(J.Am.Chem.Soc.1992, 114, 9327 ff.)、ジイソプロピルエチルアミン(国際公開第2005/115972号パンフレット、国際公開第2006/527522号パンフレット)またはトリエチルアミン(米国特許出願公開第2007/185148号明細書)である。本発明による方法に関連して、ジイソプロピルエチルアミンが有機塩基として一般式(II)のアミンとカルボン酸A−COOHとの反応に用いられるのが好ましい。
【0089】
この反応に適した溶媒は、例えば、非プロトン性極性溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド。例えば、国際公開第2005/115972号パンフレット、国際公開第2006/527522号パンフレットを参照)、または非プロトン性非極性溶媒(例えば、ジクロロメタン[米国特許出願公開第2007/185148号明細書]またはテトラヒドロフラン[J.Am.Chem.Soc.1992, 114, 9327 ff.])である。本発明による方法に関連して、テトラヒドロフラン(THF)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)が、一般式(II)のアミンとカルボン酸A−COOHとの反応に用いられるのが好ましい。
【0090】
一般式(II)のアミン構成要素とカルボン酸A−COOHまたは酸塩化物A−COClとの反応は、15℃から30℃の間の温度、好ましくは室温(20℃)で起こる。一般式(II)の化合物と酸塩化物A−COClとの反応において、反応物を加える際、反応混合物の冷却が場合により必要である。
【0091】
一般式(II)のアミン構成要素と酸塩化物A−COClまたはカルボン酸A−COOHとの反応は、9時間から72時間の間、好ましくは12時間から30時間の間にわたって起こる。
【0092】
しかし、アミド結合をカップリングするために、Org.Lett.2011, 5048−5051の情報にしたがって、プロパンホスホン酸無水物(T3P)をカップリング試薬として用いるアミンと酸の間の縮合など、他の方法も適している。
【0093】
この手順を用いると、生成物は、水性の沈殿後にしばしば固形状で得られ、したがって、さらに精製するために再結晶が必要である。
【0094】
一般式(II)のアミン構成要素は、一般式(III)の構成要素のtert−ブチルカルバメート保護基(Boc保護基としても知られる)を切断する結果が生じる。Boc保護基の切断について、当業者は、例えば、以下の方法を知っている:−溶媒としてジクロロメタンを用いたトリフルオロ酢酸の使用(米国特許出願公開第2006/293341号明細書)−塩化水素と酢酸の混合物の使用(国際公開第2005/30732号パンフレット)−溶媒としてジクロロメタン(国際公開第2008/40934号パンフレット)またはアセトン(国際公開第2007/91694号パンフレット)を用いた1,4−ジオキサン中、ならびにエタノールおよびクロロホルムの溶媒混合物中(国際公開第2004/67516号パンフレット)の塩化水素の溶液の使用。
【0095】
トリフルオロ酢酸をtert−ブチルカルバメート基の切断に用いるのが好ましい。
【0096】
また、本発明は、一般式(II)
【化3】
のアミン構成要素に関し、式中、R1およびnは、本発明による一般式(I)の化合物に関連して記載された意味を有する。
【0097】
一般式(IV)のN−Boc保護アミノ(メチル)シクロヘキサノール構成要素は、cis/trans混合物および純粋なtrans異性体(ABCR, Betapharm)の両方で市販されている。
【0098】
一般式(III)の構成要素を調製するために、一般式(IV)のアルコール構成要素のcis異性体、および市販されている一般式(V)の4−ヒドロキシキノリン誘導体(Aldrich, Activate)から出発して、以下の方法を用いた:トリフェニルホスフィンを用いた、テトラヒドロフラン中(欧州特許第1712235号明細書)、または代替の溶媒としてトルエン中(欧州特許第1550657号明細書)でのジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIADとも呼ばれる)の室温での使用。ジイソプロピルアゾジカルボキシレートの代わりに、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)を用いることも可能である。
【0099】
この方法を用いると、一般式(IV)の構成要素のカルビノール中心における立体化学は、反応中に反転する(Mitsunobu, O.Synthesis, 1981, 1−28)。
【0100】
一般式(IV)のcis構成要素は、いわゆるMitsunobu反応(Mitsunobu, O.Synthesis, 1981, 1−28)により、カルビノール中心の反転によって調製することができる。
【化4】
【0101】
あるいは、cis構成要素のアミノシクロヘキサノール(n=0)は、文献:Tet.Lett.1998, 39.2059−2062に記載されている以下の方法で調製することもできる。
【0102】
以下の代替の合成ルートは、キノリンのC8上にシアノ置換基を有する本発明による一般式(I)の化合物(一般式(VIII)の化合物)を調製するために用いることができる。一般式のキノリンのC8上の臭素置換誘導体(VII)から出発して、臭素/シアノ交換反応により、シアノ基を挿入することができる(J.Org.Chem.2005, 70, 1508−1510)。
【化5】
【0103】
本発明による化合物は、予測できない、価値のある薬理学的および薬物動態学的に広範な作用を示す。したがって、これらの化合物は、ヒトおよび動物における疾患を治療および/または防止するための医薬品として使用するのに適している。
【0104】
用語「治療」は、本発明の文脈において、予防法(prophylaxis)を含む。
【0105】
本発明による化合物の医薬品の効能は、アンドロゲン受容体のアンタゴニストとしてのこれらの化合物の作用によって説明することができる。
【0106】
さらに、本発明は、疾患、好ましくは、異常増殖疾患、特に好ましくは、アンドロゲン受容体依存性異常増殖疾患を治療および/または防止するための本発明による化合物の使用に関する。
【0107】
本発明による化合物を用いて治療することができる異常増殖疾患には、特に、癌疾患および腫瘍疾患のグループが含まれる。本発明の文脈において、これらの疾患には、特に以下の疾患が含まれるが、これらに限定されない:乳癌(breast carcinomas)および乳腺腫瘍(管状および小葉状、また、in situを含む乳癌(breast cancer))、気道腫瘍(小細胞および非小細胞癌、気管支癌)、脳腫瘍(例えば、脳幹および視床下部の脳腫瘍、星状細胞腫、脳室上衣腫、膠芽腫、神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫ならびに神経外胚葉性および松果体部の腫瘍)、消化器の腫瘍(食道、胃、胆嚢、小腸、結腸、直腸および肛門の癌)、肝腫瘍(肝細胞癌、胆管細胞癌および混合型肝細胞・胆管細胞癌を含む)、頭部および頸部の腫瘍(喉頭、下咽頭、上咽頭、中咽頭、口唇および口腔の癌、口腔黒色腫)、皮膚腫瘍(基底細胞癌、有棘細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、非黒色腫様皮膚癌、メルケル細胞皮膚癌、肥満細胞腫瘍)、支持組織および結合組織の腫瘍(軟部組織肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、線維肉腫、血管肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ肉腫および横紋筋肉腫を含む)、眼の腫瘍(眼球内黒色腫および網膜芽細胞腫を含む)、内分泌腺および外分泌腺の腫瘍(例えば、甲状腺および副甲状腺の腫瘍、膵臓癌および唾液腺癌、腺癌)、尿路の腫瘍(膀胱、陰茎、腎臓、腎盂および尿管の腫瘍)、ならびに生殖器の腫瘍(女性の子宮内膜、子宮頸部、卵巣、膣、外陰部および子宮の癌、ならびに男性の前立腺および精巣の癌)。これらの疾患には、白血病、リンパ腫および骨髄増殖性疾患など、固形状および循環細胞として、血液、リンパ系および脊髄の増殖性疾患も含まれ、例えば、急性骨髄性、急性リンパ性、慢性リンパ性、慢性骨髄性およびヘアリー細胞白血病、ならびにエイズ関連リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫および中枢神経系のリンパ腫も含まれる。
【0108】
特徴がはっきりしたこれらのヒト疾患は、同等の病因で他の哺乳動物にも起きる可能性があり、これらの疾患も本発明の化合物で治療することができる。
【0109】
本発明による化合物を用いた上述の癌疾患の治療は、固形腫瘍の治療、およびその疾患の転移した、または循環する形態の治療の両方を含む。
【0110】
用語「治療」または「を治療する」は、本発明の文脈において慣習的に用いられ、疾患または障害を抑制、縮小、弱毒化または軽減すること、および、例えば、癌疾患などの上記疾患によって損なわれる生活の質を向上することを目的に、患者を看護および管理することを意味する。
【0111】
好ましくは、本発明による化合物は、アンドロゲン受容体依存性異常増殖疾患を治療および/または防止するのに適している。
【0112】
用語「アンドロゲン受容体依存性異常増殖疾患」は、本発明に関連して、特にアンドロゲン依存性前立腺癌、去勢抵抗性前立腺癌、良性前立腺肥大症(BHP)ならびに子宮内膜(例えば、子宮内膜症)および子宮筋(例えば、子宮類線維腫、子宮平滑筋腫)の良性異常増殖疾患を意味する。
【0113】
好ましくは、本発明による化合物は、子宮筋の異常増殖疾患を治療および/または防止するため、特に子宮類線維腫および/または子宮平滑筋腫を治療および/または防止するために用いることができる。国際公開第2011/029782号パンフレットには、アンドロゲン受容体のアンタゴニストが、子宮筋の異常増殖疾患を治療および/または防止するのに原則的に適していることが示されている。
【0114】
好ましくは、本発明による化合物は、前立腺癌、特に好ましくは、アンドロゲン依存性前立腺癌、去勢抵抗性前立腺癌および良性前立腺肥大症(BHP)を治療および/または防止するために用いることができる。
【0115】
特に好ましくは、本発明による化合物は、去勢抵抗性前立腺癌を治療および/または防止するために用いることができる。
【0116】
さらに、本発明は、アンドロゲンレベルの上昇を伴う女性の、特にPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)および多毛症の疾患を治療および/または防止するための、好ましくは、PCOSを治療および/または防止するための本発明による化合物の使用に関する。
【0117】
女性においては、合成速度の上昇およびアンドロゲンの有効性によって引き起こされる、さまざまな症候群が記載されている。アンドロゲン合成および作用の増大の病因は、概して知られておらず、腫瘍のみがトリガーとして少数の症例において明らかになっている[D Rachon, Differential diagnosis of hyperandrogenism in women with polycystic ovary syndrome, Exp Clin Endocrinol Diabetes, 2012, 120(4): 205−209]。起こる症状は、互いに無関係に、または一緒に発生する可能性があるが、症状はすべて一般的に女性の血液中のアンドロゲンレベルが上昇し、これは、重要な診断マーカーにもなっている[Amsterdam ESHRE/ASRM−sponsored 3rd PCOS Consensus Workshop Group Consensus on women's health aspects of polycystic ovary syndrome (PCOS)、Hum Reprod., 2012, 27(1): 14−24]。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、LH刺激の増大を通じてアンドロゲンの放出が増大した女性の卵巣内における発育停止を伴う多くの未成熟卵胞によって特徴付けられる[S.Yarakら、Hyperandrogenism and skin: polycystic ovary syndrome and peripheral insulin resistance. An.Bras.Dermatol.[online] 2005, 80(4): 395−410]。女性の血液中のアンドロゲンレベルの上昇は、PCOSによって引き起こされるが、他の原因を有する可能性もあり、多毛症の発症、すなわち、例えば、目に見える顎髭の発育だけでなく、胸または背中での発毛を伴う男性型の発毛の原因となる。さらに、アンドロゲンレベルの上昇のために、多くの女性がインスリン抵抗性を示し、後に糖尿病を発症する[Amsterdam ESHRE/ASRM−Sponsored 3rd PCOS Consensus Workshop Group Consensus on women's health aspects of polycystic ovary syndrome (PCOS)、Hum Reprod, 2012, 27(1): 14−24]。
【0118】
純粋な抗アンドロゲン剤フルタミドは、女性のアンドロゲン過剰のさまざまな症状を治療するためにうまく用いられている。フルタミドを用いた治療は、多毛症の女性において男性型の発毛の減少につながる[II Muderrisら、A comparison between two doses of flutamide (250mg/d and 500mg/d) in the treatment of hirsutism, Fertil Steril., 1997, 68(4): 644−7]。PCOSを治療するために現在行われているのは、抗アンドロゲン剤と糖尿病に対する薬との組み合わせである[Amsterdam ESHRE/ASRM−sponsored 3rd PCOS, Consensus Workshop Group Consensus on women's health aspects of polycystic ovary syndrome (PCOS)、Hum Reprod, 2012, 27(1): 14−24]。しかし、抗アンドロゲン剤フルタミドを単独で、PCOS、および、しばしば併発する糖尿病を治療するために用いることもできる[A Gambineriら、Effect of flutamide and metformin administered alone or in combination in dieting obese women with polycystic ovary syndrome, Clin Endocrinol, 2004, 60: 241−249]が、明らかに、抗アンドロゲン剤単独でも、インスリンによる刺激下で細胞内のブドウ糖の取り込みが改善される[A Corbould Chronic testosterone treatment induces selective insulin resistance in subcutaneous adipocytes of women, J Endocrinol, 2007, 192: 585−594]。現在は、女性の長期治療に実際に適した選択的な抗アンドロゲン剤はない。フルタミドは、特に女性で急性肝不全が引き起こされる可能性がある[J Brahmら、Acute and fulminant hepatit
is induced by flutamide: case series report and review of the literature, Ann Hepatol, 2011, 10(1): 93−8]。ビカルタミドは、生殖可能年齢の女性にはほとんど使用されない。その最長10日の長く変わりやすい薬物動態学的な半減期のために、女性が予想外に妊娠した場合に、男性胎児の損傷を確実に避けるのに十分なほど速やかに抗アンドロゲン作用が無効にならない[ID Cockshottら、The pharmacokinetics of Casodex in prostate cancer patients after single and during multiple dosing, Eur Urol, 1990, 18 Suppl 3: 10−17;HM Scottら、Steroidogenesis in the fetal testis and its susceptibility to disruption by exogenous compounds, Endocr Rev, 2009, 30(7): 883−925]。したがって、胎児の奇形を除外するために、抗アンドロゲン剤がしばしば、経口避妊薬と組み合わされる。経口避妊薬におけるゲスターゲンとの組み合わせに関しては、抗アンドロゲン剤が、ゲスターゲンの分解に影響を与えるべきではない。あるいは、抗アンドロゲンのゲスターゲンは、PCOSおよび多毛症を治療するために用いられる。この場合、両方の効果が1つの分子によって生じるため、抗アンドロゲン作用を最も適切に与えることができない。
【0119】
したがって、アンドロゲン過剰、例えば、PCOSによって引き起こされる可能性がある女性の疾患、例えば、多毛症および糖尿病の、信頼性が高く効果的な治療について、ゲスターゲンの作用をわずかな程度しか妨害せず、好ましくは、全く妨害しない、3日未満、好ましくは2日未満の薬物動態学的な半減期を持つ、適合性の選択的な抗アンドロゲン剤はない。
【0120】
さらに、本発明は、疾患、特に上述の疾患を治療および/または防止するための本発明による化合物の使用に関する。
【0121】
さらに、本発明は、医薬品としての使用のための本発明による化合物に関する。
【0122】
さらに、本発明は、疾患、特に上述の疾患を治療および/または防止するための医薬品を製造するための本発明による化合物の使用に関する。
【0123】
さらに、本発明は、疾患、特に上述の疾患を治療および/または防止するための使用のための本発明による化合物に関する。
【0124】
さらに、本発明は、疾患、特に上述の疾患を治療および/または防止するための方法における本発明による化合物の使用に関する。
【0125】
さらに、本発明は、本発明による少なくとも1つの有効量の化合物を用いて、疾患、特に上述の疾患を治療および/または防止するための方法に関する。
【0126】
本発明による化合物は、単独で、または、必要ならば1つまたは複数の他の薬理学的に有効な物質と組み合わせて用いることができるが、ただし、この組み合わせは、望ましくない容認できない副作用を招かないものとする。
【0127】
したがって、本発明はさらに、本発明による少なくとも1つの化合物および1つまたは複数の他の活性物質を含み、特に上述の疾患を治療および/または防止するための医薬品に関する。
【0128】
例えば、本発明の化合物は、癌疾患を治療するための既知の抗異常増殖性の細胞分裂阻害物質または細胞障害性物質と組み合わせることができる。さらに、本発明による化合物は、放射線療法および/または外科手術と組み合わせることもできる。
【0129】
適した組み合わせの活性物質の例として、以下に言及してもよい:
131I−chTNT、アバレリックス、アビラテロン、アクラルビシン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アムルビシン、アムサクリン、アナストロゾール、アルグラビン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アザシチジン、バシリキシマブ、BAY 80−6946、BAY 1000394、refametinib (BAY 86−9766、RDEA 119)、ベロテカン、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ビカルタミド、ビサントレン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブセレリン、ブスルファン、カバジタキセル、ホリナートカルシウム、レボホリナートカルシウム、カペシタビン、カルボプラチン、カルモフール、カルムスチン、カツマキソマブ、セレコキシブ、セルモロイキン、セツキシマブ、クロラムブシル、クロルマジノン、クロルメチン、シスプラチン、クラドリビン、クロドロン酸、クロファラビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デガレリクス、デニロイキンディフチトクス、デノスマブ、デスロレリン、塩化ジブロスピジウム、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドキソルビシン+エストロン、エクリズマブ、エドレコロマブ、エリプチニウムアセタート、エルトロンボパグ、エンドスタチン、エノシタビン、エピルビシン、エピチオスタノール、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エプタプラチン、エリブリン、エルロチニブ、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、ファドロゾール、フィルグラスチム、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、ホルメスタン、ホテムスチン、フルベストラント、硝酸ガリウム、ガニレリクス、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、glutoxim、ゴセレリン、ヒスタミン二塩酸塩、ヒストレリン、ヒドロキシカルバミド、I−125シード、イバンドロン酸、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イミキモド、インプロスルファン、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、イピリムマブ、イリノテカン、イキサベピロン、ランレオチド、ラパチ
ニブ、レナリドミド、レノグラスチム、レンチナン、レトロゾール、リュープロレリン、レバミソール、リスリド、ロバプラチン、ロムスチン、ロニダミン、マソプロコール、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メピチオスタン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトキサレン、アミノレブリン酸メチル、メチルテストステロン、ミファムルチド、ミルテホシン、ミリプラチン、ミトブロニトール、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ネダプラチン、ネララビン、ニロチニブ、ニルタミド、ニモツズマブ、ニムスチン、ニトラクリン、オファツムマブ、オメプラゾール、オプレルベキン、オキサリプラチン、p53遺伝子治療、パクリタキセル、パリフェルミン、パラジウム103シード、パミドロン酸、パニツムマブ、パゾパニブ、ペガスパルガーゼ、PEGーエポエチンベータ(メトキシPEGーエポエチンベータ)、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンアルファ−2b、ペメトレキセド、ペンタゾシン、ペントスタチン、ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピシバニール、ピラルビシン、プレリキサフォル、プリカマイシン、ポリグルサム、リン酸ポリエストラジオール、ポリサッカライドK、ポルフィマーナトリウム、プララトレキサート、プレドニムスチン、プロカルバジン、キナゴリド、塩化ラジウム−223、ラロキシフェン、ラルチトレキセド、ラニムスチン、ラゾキサン、レゴラフェニブ、リセドロン酸、リツキシマブ、ロミデプシン、ロミプロスチム、サルグラモスチム、シプロイセルT、シゾフィラン、ソブゾキサン、グリシジダゾールナトリウム、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、タラポルフィン、タミバロテン、タモキシフェン、タソネルミン、テセロイキン、テガフール、テガフール+ギメラシル+オテラシル、テモポルフィン、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、テストステロン、テトロホスミン、サリドマイド、チオテパ、チマルファシン、チオグアニン、トシリズマブ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラベクテジン、トラスツズマブ、トレオスルファン、トレチノイン、トリロスタン、トリプトレリン、トロホスファミド、トリプトファン、ウベニメクス、バルルビシン、バンデタニブ、バプレオチド、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、ビノレルビン、ボリノスタット、ボロゾール、イットリウム−90ガラスマイクロスフェア類、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、ゾレドロン酸、ゾルビシン。
【0130】
本発明は、好ましくは、本発明による少なくとも1つの化合物および1つまたは複数の以下の活性物質を含む、特にアンドロゲン受容体依存性増殖性疾患を治療および/または防止するための医薬品に関する:LHRH(黄体化ホルモン放出ホルモン)アゴニスト、LHRH(黄体化ホルモン放出ホルモン)アンタゴニスト、C(17,20)−リアーゼ阻害薬、5−アルファ−リダクターゼ阻害薬I型、5−アルファ−リダクターゼ阻害薬II型、混合5−アルファ−リダクターゼ阻害薬I/II型、骨転移を治療するためのアルファ線を発する放射性医薬品(例えば、塩化ラジウム−223)、細胞分裂阻害薬、VEGF(血管内皮増殖因子)−キナーゼ阻害薬、抗ゲスターゲン薬、抗エストロゲン薬、EGF抗体、エストロゲン、または他のアンドロゲン受容体拮抗薬。
【0131】
さらに、本発明は、疾患、特に上述の疾患を治療および/または防止するための使用のための本発明による医薬品に関する。
【0132】
本発明による化合物は、全身作用および/または局所作用を有することができる。この目的のために、これらの化合物は適した方法で、例えば、経口、非経口、肺、経鼻、舌下、舌、頬側、直腸、皮膚(dermal)、経皮(transdermal)、結膜または耳の経路により、あるいは植込またはステントとして適用することができる。
【0133】
本発明による化合物は、これらの適用の経路に適した剤形で投与することができる。
【0134】
経口適用については、本発明による化合物の迅速かつ/または変更された放出を伴って先行技術にしたがって機能し、結晶形態および/またはアモルファス形態および/または溶解した形態、例えば、錠剤(例えば、腸溶コーティングまたは溶解を遅延させたコーティング、あるいは不溶性のコーティングを備え、本発明による化合物の放出を制御する非コーティング錠またはコーティング錠)、口腔内で速やかに分解する錠剤またはフィルム/オブラート、フィルム/凍結乾燥物、カプセル(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル)、糖衣錠、顆粒、ペレット、粉末、乳剤、懸濁液、エアロゾルあるいは溶液の本発明による化合物を含む剤形が適している。
【0135】
非経口適用は、吸収ステップ(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内)を省略して、または、吸収(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮的または腹腔内)を含めて行うことができる。非経口適用に適した剤形には、溶液、懸濁液、乳剤、凍結乾燥物または無菌粉末の形態で注入および輸注するための製剤が含まれる。
【0136】
他の適用の経路に適した剤形は、例えば、吸入剤形(粉末吸入器、ネブライザーを含む)、点鼻液、溶液およびスプレー;舌、舌下または頬側で適用するための錠剤、フィルム/オブラートまたはカプセル、坐剤、耳または眼の製剤、膣用カプセル、水性懸濁液(ローション、振盪合剤)、親油性懸濁液、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えば、パッチ)、乳剤、ペースト、泡、散布剤、植込またはステントである。
【0137】
本発明による化合物は、上に列挙した剤形に変えることができる。この変形は、それ自体周知の方法で、不活性で非毒性の薬剤的に適した賦形剤と混合することによって行うことができる。これらの賦形剤には、キャリヤー(例えば、微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例えば、液体のポリエチレングリコール)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレアート)、結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン)、合成および天然の高分子(例えば、アルブミン)、安定剤(例えば、アスコルビン酸などの酸化防止剤)、着色剤(例えば、酸化鉄などの無機顔料)ならびに矯味薬および/または矯臭薬が含まれる。
【0138】
さらに、本発明は、本発明による少なくとも1つの化合物を、通常、1つまたは複数の不活性で非毒性の薬剤的に適した賦形剤と共に含む医薬品および上述の目的のためのその使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0139】
図1図1は、異なるドナーからの平滑筋腫組織を用いて実施した独立した実験の4回のうち3回において、実施例23の70mg/kg/日の用量で、子宮平滑筋腫の異種移植片の増殖が大幅に抑制されていることを示している。0日の移植重量(40mgの破線で示す)に対して規格化した異種移植片の増殖抑制の平均は、実施例23の25mg/kg/日の用量に対して−24%、70mg/kg/日の用量に対して−59%である。
【発明を実施するための形態】
【0140】
以下の実際的な例により本発明を説明する。本発明は、実施例に限定されない。
【0141】
以下の試験および実施例におけるパーセントは、特に記載しない限り重量パーセントであり、部は重量部である。液体/液体溶液の溶媒の割合、希釈率および濃縮値は常に体積を指す。
【0142】
実施例
略記
DMSO ジメチルスルホキシド
HATU O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート
DIAD ジイソプロピルアゾジカルボキシレート
DEAD ジエチルアゾジカルボキシレート
HPLC 高圧(高性能)液体クロマトグラフィー
MHz メガヘルツ
MS 質量分析
m/z 電荷質量比
NMR 核磁気共鳴分光法
ppm 百万分率
RT 保持時間
T3P プロパンホスホン酸シクロ無水物
【0143】
構成要素の調製:
構成要素A1:cis−4−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノメチル]シクロヘキシル−4−ニトロベンゾアート
【化6】
tert−ブチル[(trans−4−ヒドロキシシクロヘキシル)メチル]カルバメート(5.0g、21.15mmol)、4−ニトロ安息香酸(5.3g、31.72mmol)およびトリフェニルホスフィン(8.32g、31.72mmol)をテトラヒドロフラン(290mL)に入れた。ジエチルアゾジカルボキシレート(13.81g、31.72mmol)を加えた後、反応混合物を20時間、室温で撹拌した。水を加え、酢酸エチルで2回抽出した。次いで、合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤および溶媒残留物を取り除いた後、続いて残留物のクロマトグラフィーにより、所望の生成物を60%の収率(4.81g)で得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ [ppm] 1.20-1.65 (m, 16 H)、1.80 - 1.90 (m, 2 H)、2.75 - 2.85 (m, 2H)、5.10 - 5.20 (m, 1H)、6.80 - 6.90 (m, 1H)、8.15 (d, 2H)、8.35 (d, 2H)
構成要素A2:tert−ブチルN−[(cis−4−ヒドロキシシクロヘキシル)メチル]カルバメート
【化7】
cis−4−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノメチル]シクロヘキシル−4−ニトロベンゾアート(4.81g、12.7mmol)をメタノール(345mL)に溶解し、水酸化ナトリウム(10.17g、254.2mmol)を加えた。室温で20時間後、メタノールを真空下で除去した。残留物を水中に取り、酢酸エチルで抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤を取り除き、真空下で溶媒残留物を除去後、生成物を88%の収率(2.57g)で得て、精製せずに次の反応に用いた。
1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ [ppm] 1.18 - 1.38 (m, 14 H)、1.40 - 1.60 (m, 2 H)、2.74 (t, 2 H) 3.66 (m, 1 H)、4.19 (d, 1 H)、6.74 (t, 1 H)
構成要素A3:tert−ブチル−N−(cis−4−ヒドロキシシクロヘキシル)カルバメート
【化8】
この構成要素は、文献:Tet.Lett.1998, 39, 2059−2062の情報にしたがって得た。
構成要素B1:tert−ブチル−N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)カルバメート
【化9】
8−フルオロキノリン−4−オール(948mg、5.81mmol)、トリフェニルホスフィン(1.52g、5.81mmol)およびDIAD(1.17g、5.81mmol)をテトラヒドロフラン(140mL)に溶解した。tert−ブチル−N−[(cis−4−ヒドロキシシクロヘキシル)メチル]カルバメート(1.11g、4.84mmol)を加えた後、反応混合物を一晩、室温で撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出して、合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒残留物を除去し、残留物をクロマトグラフィーにより精製した後、生成物を42%の収率(960mg)で得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ [ppm] 1.05 - 1.19 (m, 2 H)、1.35 (s, 9 H)、1.38 - 1.52 (m, 2 H)、1.70 - 1.82 (m, 2 H)、2.08 - 2.20 (m, 2 H)、2.80 (t, 2 H)、4.52 - 4.69 (m, 1 H)、6.84 (t, 1 H)、7.16 (d, 1 H)、7.39 - 7.61 (m, 2 H)、7.83 - 7.93 (m, 1 H)、8.69 (d, 1 H)
【0144】
表1の以下の構成要素を同様に調製した。
【0145】
【表1】
【0146】
構成要素C1:trans−{4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチルアミン
【化10】
tert−ブチル−N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)カルバメート(950mg、2.54mmol)をジクロロメタン(7.0mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(2.0mL、25.4mmol)を室温で加えた。室温で1時間後、反応混合物を蒸発により濃縮し、次いでトルエンと共に同時蒸発させた。残留物をアンモニア性メタノール溶液(7 N)中に取り、再び蒸発により濃縮して乾固させた。クロマトグラフィーの後、所望の生成物を68%の収率(470mg)で得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ [ppm] 1.02 - 1.14 (m, 2 H)、1.21 - 1.34 (m, 1 H)、1.39 - 1.51 (m, 2 H)、1.80 - 1.89 (m, 2 H)、2.13 - 2.20 (m, 2 H)、3.13 (s, 2 H)、4.56 - 4.66 (m, 1 H)、7.15 (d, 1 H)、7.48−7.55 (m, 2 H)、7.86 - 7.93 (m, 1 H)、8.69 (d, 1 H)
【0147】
表2の以下の構成要素を同様に調製した。
【0148】
【表2】
【0149】
実施例1:
N−({trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチル)−4−フルオロベンズアミド
【化11】
{trans−4−[(8−フルオロキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}メチルアミン(1.82g、6.63mmol)をテトラヒドロフラン(415mL)に溶解した。HATU(2.78g、7.30mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(1.30mL、7.30mmol)および4−フルオロ安息香酸(1.02g、7.30mmol)を加えた後、反応混合物を一晩、室温で撹拌した。クロマトグラフィーの後、所望の生成物を71%の収率(1.96g)で得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ [ppm] 1.19 - 1.29 (m, 2 H)、1.43 - 1.56 (m, 2 H)、1.60 - 1.70 (m, 1 H)、1.80 - 1.90 (m, 2 H)、2.14 - 2.24 (m, 2 H)、3.18 (t, 2 H)、4.57 - 4.76 (m, 1 H)、7.19 (d, 1 H)、7.28 (t, 2 H)、7.42 - 7.59 (m, 2 H)、7.86 - 7.97 (m, 3 H)、8.50 (t, 1 H)、8.72 (d, 1 H)
【0150】
実施例2:N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド
【化12】
trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシルアミン(321mg、1.0mmol)および5−メチルイソオキサゾール−3−カルボン酸(153mg、1.2mmol)をピリジン(4.0mL)に入れ、プロパンホスホン酸シクロ無水物(637mg、2.0mmol)を加えた。反応混合物を一晩、室温で撹拌した。沈殿物が生成するまで水を加えた。さらに10分後、沈殿物を吸引により濾過して取り、水で洗った。乾燥後、所望の化合物を92%の収率(400mg)で得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ [ppm] 1.50−1.62 (m, 2 H)、1.78 - 1.95 (m, 2 H)、2.23 - 2.45 (m, 4 H)、2.52 (s, 3 H)、4.08 - 4.25 (br m, 1 H)、4.50 - 4.68 (br m, 1 H)、5.98 (d, 1 H)、6.42 (s, 1 H)、6.79 (d, 1 H)、7.38 (t, 1 H)、8.08 (d, 1 H)、8.20 (d, 1 H)、8.86 (d, 1 H)
【0151】
実施例3:N−[trans−4−(4−キノリルオキシ)シクロヘキシル]−3,4−ジフルオロベンズアミド
【化13】
trans−4−(4−キノリルオキシ)シクロヘキシルアミン(400mg、1.65mmol)をピリジン(12mL)に入れ、触媒量のトリエチルアミンを加えた。0℃で、3,4−ジフルオロ安息香酸クロリド(291mg、1.65mmol)を加えた。次いで、反応混合物を室温で一晩撹拌した。水を加え、沈殿物を吸引により濾過して取り出した。乾燥後、所望の生成物を96%の収率(610mg)で得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ [ppm] 1.48 - 1.70 (m, 4 H)、1.88 - 2.04 (m, 2 H)、2.15 - 2.30 (m, 2 H)、3.80 - 3.95 (m, 1 H)、4.60 - 4.72 (m, 1 H)、7.11 (d, 1 H)、7.45 - 7.56 (m, 2 H)、7.65 - 7.78 (m, 2 H)、7.84−7.93 (m, 2 H)、8.11 (d, 1 H)、8.48 (d, 1 H)、8.67 (d, 1 H)
【0152】
表3の本発明による以下の化合物を同様に調製した。
【0153】
【表3A】
【表3B】
【表3C】
【表3D】
【表3E】
【0154】
実施例23:N−{trans−4−[(8−シアノキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−フルオロベンズアミド
【化14】
N−{trans−4−[(8−ブロモキノリン−4−イル)オキシ]シクロヘキシル}−3−フルオロベンズアミド(500mg、1.13mmol)(実施例12参照)、炭酸ナトリウム(120mg、1.13mmol)および酢酸パラジウム(II)(13mg、0.06mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド(23mL)に溶解し、微粉砕したヘキサシアノ鉄酸カリウム(105mg、2.5mmol)を加えた。反応混合物を窒素雰囲気下で3時間、120℃で撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物を水および飽和塩化ナトリウム溶液で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、次いで、硫酸ナトリウムと溶媒残留物を取り除いた。残留物のクロマトグラフィーの後、所望の生成物を43%の収率(190mg)で得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ [ppm] 1.50 - 1.70 (m, 4 H)、1.90 - 2.01 (m, 2 H)、2.17 - 2.29 (m, 2 H)、3.80 - 3.94 (m, 1 H)、4.67 - 4.79 (m, 1 H)、7.33 (d, 2 H)、7.44 - 7.53 (m, 1 H)、7.59 - 7.71 (m, 3 H)、8.31 (dd, 1 H)、8.36 - 8.45 (m, 2 H)、8.85 (d, 1 H).
【0155】
表4の本発明による以下の化合物を同様に調製した:
【0156】
【表4A】
【表4B】
【表4C】
【0157】
本発明による化合物の薬理学的な特徴付け
野生型アンドロゲン受容体に対するトランス活性化アッセイ
アンドロゲン受容体依存性転写を測定するために、PC−3細胞からなる細胞アッセイシステムを用いた(Kaighnら、Invest.Urol.17: 16−23, 1979)が、これは、ヒトアンドロゲン受容体を安定して組換え発現させる(全長の野生型。Swiss−Prot Acc.No.P10275, Entry Version 159, Sequence Version 2参照)。さらに、これらのPC−3細胞は、市販のプラスミドpGL4.14に基づく、安定して組み込まれたレポーター遺伝子プラスミド(#E6691, Promega Corporation、米国ウィスコンシン州マディソン)を含み、また、MMTVプロモーターの制御下(Catoら、EMBO J.6: 363−368, 1987)で、アメリカのホタル(Photinus pyralis)のルシフェラーゼ遺伝子を含む。これらの細胞は、通常の細胞培養で、37℃、5% CO2で、90% RPMI 1640 (Invitrogen GmbH、ダルムシュタット、ドイツ)、100 U ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン (Invitrogen)、4 mM L−グルタミン (Invitrogen)、10% ウシ胎児血清 (FCS Serum Gold, PAA Laboratories GmbH、ケルベ、ドイツ)、600 μg/ml ジェネテシン (G418−sulphate, Invitrogen)および10 μg/ml ピューロマイシン (Sigma Aldrich GmbH、ドイツ)を含む培地で繁殖した。
【0158】
トランス活性化アッセイを実施するために、活性炭処理したウシ血清(FCS Serum Gold, PAA Laboratories)を濃度5% (v/v)で含む培地中、384ウェル細胞培養プレートにて約1000細胞/ウェルで播種した。試験物質を、5.12x10−12 Mから1x10−5 Mの濃度系列に、1x10−10 R1881 (メチルトリエノロン)の存在下で加えた。テストプレートを一晩、37℃、5% CO2でインキュベートした。16時間後、ウェルあたり15 μlのSteady Glo Lysis and Detection試薬(E2550, Promega Corporation、米国ウィスコンシン州マディソン)を加え、ウェルあたり4秒間、発光をTopcount Luminometer (PerkinElmer、米国マサチューセッツ州ウォルサム)で読み取った。得られた発光値を規格化したが、ここで、100%は、無刺激の対照(R1881なし)の効果に対応し、0%は、刺激の対照(試験物質の代わりに、R1881にDMSOを加えたもの)の効果に対応していた。IC50値を、4パラメータの式(最小、最大、IC50、Hill係数;Y=最大+(最小−最大)/(1+(X/IC50)Hill))に基づいて回帰分析により求めた。
【0159】
本発明による化合物について、このアッセイを用い、野生型アンドロゲン受容体に対して以下のIC50値を求めた:
【0160】
【表5】
【0161】
アンドロゲン受容体変異W741Cに対するトランス活性化アッセイ
PC−3細胞(Kaighnら、Invest.Urol.17: 16−23, 1979)を、活性炭処理したウシ血清(FCS Serum Gold, PAA Laboratories)を濃度5%(v/v)で含むRMPI 1640培地(F1235, Biochrom AG、ベルリン、ドイツ)中、96ウェル細胞培養プレートに10000細胞/ウェルの密度で播種した。翌日、細胞を、アンドロゲン受容体変異W741Cの配列を含むpSG5−vector(#216201 Stratagene)(Haapalaら、Lab Invest.81(12): 1647−51, 2001)、およびpGL4.14に基づくレポータープラスミド(#E6691, Promega)を、MMTVプロモーターの制御下のルシフェラーゼ遺伝子(Photinus pyralis製)(Catoら、EMBO J.6: 363−8, 1987)と共に用いて、過渡的にトランスフェクトした。細胞を、1x10−8 Mから1x10−10 Mの濃度の試験物質を用いて、1x10−10 MのR1881の存在下で処理し、一晩、37℃、5% CO2でインキュベートした。24時間後、ウェルあたり100 μlのSteady Glo Lysis and Detection試薬(E2550, Promega)を加え、ウェルあたり1秒間、発光をVictor3 Luminometer (PerkinElmer)で読み取った。得られた発光値を規格化したが、ここで、100%は、無刺激の対照(R1881なし)の効果に対応し、0%は、刺激の対照(試験物質の代わりに、R1881にDMSOを加えたもの)の効果に対応していた。IC50値を、4パラメータの式(最小、最大、IC50、Hill係数;Y=最大+(最小−最大)/(1+(X/IC50)Hill))に基づいて回帰分析により求めた。
【0162】
本発明による選択した化合物について、このアッセイを用い、以下のIC50値を明らかにした:
【0163】
【表6】
【0164】
アンドロゲン受容体変異E709Yに対するトランス活性化アッセイ
PC−3細胞(Kaighnら、Invest.Urol.17: 16−23, 1979)を、活性炭処理したウシ血清(FCS Serum Gold, PAA Laboratories)を濃度5%(v/v)で含むRMPI 1640培地(F1235, Biochrom AG、ベルリン、ドイツ)中、96ウェル細胞培養プレートに10000細胞/ウェルの密度で播種した。翌日、細胞を、アンドロゲン受容体変異E709Yの配列(Georgetら、Mol.Endocrinol.20(4): 724−734, 2006)を含むpSG5−vector(#216201 Stratagene)、およびMMTVルシフェラーゼプラスミド(上述のアンドロゲン受容体変異W741Cに対するトランス活性化アッセイを参照)を用いて、過渡的にトランスフェクトした。細胞を、1x10−8 Mから1x10−10 Mの濃度の試験物質を用いて、1x10−10 MのR1881の存在下で処理し、一晩、37℃、5% CO2でインキュベートした。24時間後、ウェルあたり100 μlのSteady Glo Lysis and Detection試薬(E2550, Promega)を加え、ウェルあたり1秒間、発光をVictor3 Luminometer (PerkinElmer)で読み取った。得られた発光値を規格化したが、ここで、100%は、無刺激の対照(R1881なし)の効果に対応し、0%は、刺激の対照(試験物質の代わりに、R1881にDMSOを加えたもの)の効果に対応していた。IC50値を、4パラメータの式(最小、最大、IC50、Hill係数;Y=最大+(最小−最大)/(1+(X/IC50)Hill))に基づいて回帰分析により求めた。
【0165】
本発明による選択した化合物について、このアッセイを用い、以下のIC50値を明らかにした:
【0166】
【表7】
【0167】
LNCaP細胞を用いた増殖アッセイ
LNCaP細胞(Horoszewiczら、「Models for Prostate Cancer」(ed.G.P.Murphy)、Alan R.Liss, New York 1981, p.115−132に記載;Horoszewiczら、Cancer Res.43: 1809−1818, 1983)を、活性炭処理したウシ血清(FCS Serum Gold, PAA Laboratories)を濃度5% (v/v)で含むRMPI 1640培地(F1275, Biochrom AG)中、96ウェル細胞培養プレートに2000細胞/ウェルの密度で播種した。3日後、細胞を、1x10−8 Mから1x10−10 Mの濃度の試験物質を用いて、1x10−10 MのR1881の存在下で処理した。細胞増殖は、AlamarBlue (DAL1100, Invitrogen)を用いた2時間のインキュベーションの後、7日後に測定した(Nakayamaら、J Immunol Methods, 204(2): 205−8, 1997)。得られた蛍光値を規格化したが、ここで、100%は、無刺激の対照(R1881なし)の効果に対応し、0%は、刺激の対照(試験物質の代わりに、R1881にDMSOを加えたもの)の効果に対応していた。IC50値を、4パラメータの式(最小、最大、IC50、Hill係数;Y=最大+(最小−最大)/(1+(X/IC50)Hill))に基づいて回帰分析により求めた。
【0168】
本発明による選択した化合物について、このアッセイを用い、以下のIC50値を明らかにした:
【0169】
【表8】
【0170】
LAPC−4細胞を用いた増殖アッセイ
LAPC−4細胞(Kleinら、Nat Med.3(4): 402−8, 1997)を、活性炭処理したウシ血清(FCS Serum Gold, PAA Laboratories)を濃度10% (v/v)で含むRMPI 1640培地(F1275, Biochrom AG)中、96ウェル細胞培養プレートに4000細胞/ウェルの密度で播種した。翌日、細胞を、1x10−8 Mから1x10−10 Mの濃度の試験物質を用いて、1x10−9 MのR1881の存在下で処理した。細胞増殖は、AlamarBlue (DAL1100, Invitrogen)を用いた2時間のインキュベーションの後、7日後に測定した(Nakayamaら、J Immunol Methods, 204(2): 205−8, 1997)。得られた蛍光値を規格化したが、ここで、100%は、無刺激の対照(R1881なし)の効果に対応し、0%は、刺激の対照(試験物質の代わりに、R1881にDMSOを加えたもの)の効果に対応していた。IC50値を、4パラメータの式(最小、最大、IC50、Hill係数;Y=最大+(最小−最大)/(1+(X/IC50)Hill))に基づいて回帰分析により求めた。
【0171】
本発明による選択した化合物について、このアッセイを用い、以下のIC50値を明らかにした:
【0172】
【表9】
【0173】
平滑筋腫組織からのヒトの異種移植片の免疫不全マウスにおける増殖
アンドロゲン受容体の阻害薬の増殖抑制作用を、異種移植動物モデルにおいて、ヒトの平滑筋腫からの皮下に移植された組織断片を用いて試験した。
【0174】
ヒト子宮平滑筋腫組織は、診断に基づいて子宮摘出術または筋腫摘出術のいずれかを実施した外科手術由来であった。次いで、子宮平滑筋腫(UL)を、切除した子宮から、またはin situの筋腫摘出術によるいずれかによって自由に調製し、最後に挙げた方法では、腹腔から筋腫をすべて、または細切して切除した。
【0175】
次いで、調製した筋腫をさらに輸送するために、すぐに4℃の適した滅菌緩衝液(Vitron V7 Buffer(米国特許第5328821号明細書)またはViaspan臓器移植緩衝液)に入れた。次いで、無菌ベンチで絶えず湿らせながら、UL組織を辺長2x2x2mmまたは2x4x4mmの小さなブロックに切断し、組織片を細胞培養皿のPBS中に室温で移植するまで保管した(M Fritschら、2010, ISGE abstract & presentation)。
【0176】
免疫不全マウス(ICR SCID、CB17 SCID、ICR−Hrhr SCIDまたはSCIDベージュマウス)の卵巣を6〜8週齢(OVX)で切除した。OVX後の最初の週に、17β−エストラジオール(E2、0.05mg/90日、Innovative Research of America、カタログナンバーNE−121)およびプロゲステロン(P、25mg/60日、Innovative Research of America、カタログナンバーSP−131)(Innovative Research of America、米国フロリダ州サラソタ)を放出するペレットを動物の頸部に移植した。あるいは、17β−エストラジオールおよびプロゲステロンのホルモンを連続的に放出することができる他の植込または方法を用いて、動物に補充療法を施すことができる。これらには、例えば、他のマトリクスをベースとした植込、ミニ浸透圧ポンプ、またはホルモンを満たしてシールしたシリコーンチューブも含まれる。
【0177】
同時に、ホルモンペレットを用い、動物それぞれについて、8片の2x2x2mmまたは4片の2x4x4mmのUL組織片を腹部の皮下に移植した。対照群および治療群それぞれについて、患者あたり同じ数の異種移植片を移植した。原則として、治療群および患者からの組織あたり、4〜5匹のマウスを用いた。
【0178】
創傷は、外科手術後にクリップを用いて、またはアクリルベースの組織接着剤(ヒストアクリル、Braun)を用いて閉鎖した。外科手術の約10〜14日後、マウスを2つの群に分けた。対照群には、毎日1回または2回、胃管より当該物質、例えば、1%チロースMH 300/2.5% PEG 400(水中)または10% NMP/90% PEG−300に適した長期の適合性媒体を投与した。治療群には、毎日1回または2回、同じ媒体で試験物質を投与した。UL異種移植実験のための典型的な実験計画は以下の通りであった:
【0179】
【表10】
【0180】
約50〜60日にわたる試験の後、マウスを殺し、UL異種移植片を切除して調製した。強い作用を持つ化合物の場合、試験期間は40日に短縮することができた。
【0181】
in situのUL組織は、概して、細胞外マトリクスのタンパク質の過剰な合成および蓄積、ならびに細胞増殖の増加によって特徴付けられた。いずれも移植片の重量または体積の増加につながった。上述の実験方法を用いると、マウスの皮下でUL異種移植片のホルモン依存性の増殖が続き、組織学的に、これらの移植片は、上述したこれらに典型的な特性を有していた(M Fritschら、2010, ISGE abstract & talk)。したがって、試験の終わり頃には、移植片の重量を、異種移植片の増殖を評価するための主要なパラメータとして採用した。試験物質の特定の作用機序が既知の場合、または推定された場合、さらに、細胞増殖および/または細胞外マトリクスの割合を組織染色によって測定した。
【0182】
実験の統計的評価
観察した移植片の重量は、対数正規分布を有すると仮定した。治療の有効性を測定するために、「治療」を固定効果、「患者」を変量効果として混合線形モデルに重量の対数を用いた。マウスあたりの測定値間の相関を記述するために、「複合対称(compound symmetry)」構造を仮定した。自由度を不等分散性に対して調整し、ダネット検定により、すべての治療群をUL異種移植対照群と比較した。
【0183】
同様の評価において、移植片の重量も対数正規分布を有すると仮定し、ダネット検定(GraphPadPrism v.5.04)により、治療群の重量の対数をUL異種移植対照群と比較した。
【0184】
本発明の実施例23による化合物について、UL異種移植片の増殖に対する抑制効果を、このアッセイを用いて求めた(図1参照)。
【0185】
図1は、異なるドナーからの平滑筋腫組織を用いて実施した独立した実験の4回のうち3回において、実施例23の70mg/kg/日の用量で、子宮平滑筋腫の異種移植片の増殖が大幅に抑制されていることを示している。0日の移植重量(40mgの破線で示す)に対して規格化した異種移植片の増殖抑制の平均は、実施例23の25mg/kg/日の用量に対して−24%、70mg/kg/日の用量に対して−59%である。
【0186】
卵巣切除したアンドロゲン置換マウスにおける子宮筋増殖試験
アンドロゲン受容体の阻害薬の増殖抑制作用は、動物モデルにおいて、ジヒドロテストステロン(DHT)で置換した卵巣切除した(OVX)雌マウスにて試験する。
【0187】
17β−エストラジオールで置換した卵巣切除した雌のげっ歯類(例えば、ラットおよびマウス)における子宮増殖試験は、エストロゲン作用または抗エストロゲン作用を持つ物質の強度を求めるための確立されたアッセイである。しかし、子宮の子宮筋もまた、アンドロゲン依存性の臓器である。アンドロゲン受容体の発現は、エストロゲンによって刺激することができるが、子宮筋およびULにおいて(Weihuaら(2002) Biol.Reprod., 67: 616f;Mertensら(2001) Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol)、また、前駆体分子アンドロステンジオンから、活性のあるアンドロゲンであるテストステロンおよびジヒドロテストステロンへの代謝において(Jasonniら(1982) J Steroid Biochem)免疫組織化学的に検出されている。動物モデルにおいて、アンドロゲンは、子宮の子宮筋層の増殖を刺激し(Mobini Farら(2007) Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol;Nantermetら(2005) Endocrinology)、この増殖は、抗アンドロゲン剤を投与することによって抑制することができる。したがって、子宮筋増殖試験は、物質のアンドロゲン/抗アンドロゲン作用の迅速な試験として用いることができる。
【0188】
この試験のために、4〜6週齢の雌ラット、または6〜8週齢のマウスの卵巣を切除する。卵巣切除後の最初の週に、動物に毎日7日間、安息香酸ベンジル/ヒマシ油(1+4)中の10mg/kgジヒドロテストステロンを皮下注入で投与した。同時に7日間にわたり、動物に毎日、注入あたりNMP/PEG−300(1+9)中の試験物質を投与した。試験の最後に、動物を殺し、アンドロゲンの増殖刺激効果の主要なパラメータとして、調製した子宮の重量を測定する。より詳しい組織学的解析では、さらに、子宮筋の増殖のパラメータとして組織切片における子宮筋の高さ、または面積を測定することができる。ジヒドロテストステロンおよび経口の物質の媒体を用いて治療しただけの試験群は、陽性対照として役目を果たし、ジヒドロテストステロンの皮下注射の溶媒および経口の媒体を用いて治療しただけの群は、陰性対照として役目を果たす。
【0189】
実験のために、子宮増殖試験は、4週齢の雌ラットで実施する(株:Han−Wistar)。動物は卵巣を切除し、1〜2週後に、7日間、10mg/kgのDHT、ならびにそれぞれの試験物質を20mg/kgおよび50mg/kgの用量で用いて、上述の通り治療する。次いで、動物を殺し、子宮を切除して重量を測定する。子宮の重量は、動物の体重に対して規格化するが、増殖0%は、ジヒドロテストステロンなし、物質なしの対照群における相対的な子宮の重量に対応し、増殖100%は、ジヒドロテストステロンを用いるが、物質なしの対照群に対応する。
図1