特許第6181181号(P6181181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181181分解炉における熱水蒸気分解によってオレフィンを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181181
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】分解炉における熱水蒸気分解によってオレフィンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 4/04 20060101AFI20170807BHJP
   C10G 51/06 20060101ALI20170807BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20170807BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20170807BHJP
   C10G 9/36 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C07C4/04
   C10G51/06
   C07C11/04
   C07C11/06
   C10G9/36
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-525777(P2015-525777)
(86)(22)【出願日】2013年8月6日
(65)【公表番号】特表2015-528820(P2015-528820A)
(43)【公表日】2015年10月1日
(86)【国際出願番号】EP2013002347
(87)【国際公開番号】WO2014023417
(87)【国際公開日】20140213
【審査請求日】2016年7月28日
(31)【優先権主張番号】12005782.3
(32)【優先日】2012年8月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391009659
【氏名又は名称】リンデ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Linde Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット グンター
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター シュテファニー
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−524506(JP,A)
【文献】 特表2015−524451(JP,A)
【文献】 特表2015−524505(JP,A)
【文献】 特表2009−511657(JP,A)
【文献】 特表2003−525971(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0099398(US,A1)
【文献】 米国特許第06743961(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0194900(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0223754(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 4/02
C07C 11/04、11/06
C10G 9/36
C10G 51/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の分解炉(1)における第1の炭化水素供給物の少なくとも部分的な転化、および少なくとも1つの第2の分解炉(2)における第2の炭化水素供給物の少なくとも部分的な転化を伴う、炭化水素供給物を熱水蒸気分解によって、少なくともエチレンおよびプロピレンを含むオレフィン含有生成物流に転化させる方法であって、第2の炭化水素供給物が、第2の分解炉(2)において、分解炉の出口で0.7〜1.6kg/kgのプロピレン/エチレン比をもたらす分解条件で転化され、第1の炭化水素供給物が、第1の分解炉(1)において、分解炉の出口で0.25〜0.85kg/kgのプロピレン/エチレン比をもたらす分解条件で転化され、第2の炭化水素供給物に関するプロピレン/エチレン比の値が、第1の炭化水素供給物に関するプロピレン/エチレン比の値より大きく、第2の炭化水素供給物が、炭素数が多くとも5の炭化水素を主に含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、第2の炭化水素供給物が、第2の分解炉(2)において、分解炉の出口で1.2kg/kgまでのプロピレン/エチレン比をもたらす分解条件で転化されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、第1の炭化水素供給物が、第1の分解炉(1)において、分解炉の出口で0.3〜0.75kg/kgのプロピレン/エチレン比をもたらす分解条件で転化されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法であって、第1および第2の炭化水素供給物についてのプロピレン/エチレン比の値が、少なくとも0.1kg/kg異なることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、第2の炭化水素供給物の大部分が、炭素数が5または/および4の炭化水素からなることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の方法であって、第2の分解炉に、生成物流から得られ、炭素数が5以下の炭化水素を主に含む1つまたは複数の再循環留分(P、T)が供給されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の方法であって、第1の分解炉、生成物流から分離されて再循環され、炭素数が少なくとも6の炭化水素を主に含む少なくとも1つの留分(U)供給されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の方法であって、新たな供給物が使用され、これが、少なくとも1つの第1の、および少なくとも1つの第2の新たな供給物留分に分留され、第1の新たな供給物留分の少なくとも一部が第1の分解炉中に導入され、第2の新たな供給物留分の少なくとも一部が第2の分解炉中に導入されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項に記載の方法であって、第2の分解炉(2)に、第2の新たな供給物留分(B2)のみならず、炭素数が多くとも5の炭化水素から主になるさらなる新たな供給物(BL)も供給されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の方法であって、第2の分解炉(2)における転化に関する分解炉出口温度が、680℃〜820℃の間であり、第1の分解炉(1)における転化に関する分解炉出口温度が、800〜1000℃の間であり、第1の分解炉(1)の分解炉出口温度が、第2の分解炉(2)の分解炉出口温度より高いことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、第1の分解炉(1)における転化に関する分解炉出口温度が、第2の分解炉(2)における転化に関する分解炉出口温度より、少なくとも10℃高いことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の方法であって、第1の分解炉(1)において1kgの第1の炭化水素供給物につき0.3〜1.5kgの水蒸気が使用され、第2の分解炉(2)において1kgの第2の炭化水素供給物につき0.15〜0.8kgの水蒸気が使用されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の方法であって、炭素数が2または3の炭化水素を主に含む少なくとも1つの留分(V)が、生成物流から得られ、気体状供給物のための分解炉(3)において少なくとも一部が転化されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項8又は9に記載の方法であって、第1の分解炉(1)または/および新たな供給物の分留装置(7)に使用される新たな供給物(B)が、天然ガス凝縮物ならびに/または原油留分、ならびに/または合成および/もしくは生物起源炭化水素、ならびに/またはこれらから誘導される混合物を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素供給物を熱水蒸気分解により少なくともエチレンおよびプロピレンを含む少なくとも1つのオレフィン含有生成物流に転化する方法に関するものであり、少なくとも1つの第1の分解炉における第1の炭化水素供給物の少なくとも部分的な転化、および少なくとも1つの第2の分解炉における第2の炭化水素供給物の少なくとも部分的な転化を伴う。
【背景技術】
【0002】
熱水蒸気分解は、古くからの石油化学的処理である。熱水蒸気分解における一般的な目標化合物は、エチレン(エテンとも呼ばれる)であり、これは多くの化学合成のための重要な出発化合物である。
【0003】
熱水蒸気分解に使用される供給物は、エタン、プロパンもしくはブタンおよび対応する混合物などの気体、または液状炭化水素、例えば、ナフサ、ならびに炭化水素混合物でよい。
【0004】
熱水蒸気分解で使用される特定の装置および反応条件に関して、ならびに進行する反応および精製技術の詳細に関して、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry.6th ed.Weinheim:Wiley−VCH,2005中のジンマーマン,Hおよびワルズル,RによるEthylene;およびUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry.6th ed.Weinheim:Wiley−VCH,2005中のイリオン,W.Wおよびノーウィルス,O.S.によるOil Refiningなどの参考著作中の該当論文が参照される。オレフィンを調製する方法は、例えば、米国特許第3714282号(A)および米国特許第6743961(B1)号にも開示されており、これらの特許は、重質油を熱分解炉中に導入する前に温和な分解法で前処理するオレフィンの調製方法を含む。
【0005】
さらに、ここで、炭素数が15〜30で、フィッシャートロプシュ合成によって製造され、分留された炭化水素を、水素化し、次いで温和な条件下で熱分解することが開示されている米国特許出願公開第2004/209964号について言及すべきである。
【0006】
熱水蒸気分解には、分解炉が使用される。分解炉は、急冷装置、および形成された生成混合物を処理するための下流デバイスと一緒になって、対応するオレフィン製造用大型プラントに統合され、それらのプラントは本出願の文脈で、「水蒸気分解装置」と呼ばれる。
【0007】
熱水蒸気分解における重要なパラメーターは、分解条件を決定する分解過酷度である。分解条件は、炭化水素および水蒸気の温度、滞留時間および分圧によって、特に影響される。供給物として使用される炭化水素混合物の組成、および使用される分解炉の設計も、分解条件に影響を及ぼす。これらの因子の相互的影響のため、分解条件は、分解ガスにおけるプロピレン(プロペンとも呼ばれる)/エチレン比によって規定されるのが通常である。
【0008】
供給混合物および分解条件に従って、熱水蒸気分解は、一般的な目標化合物であるエチレンのみならず、時には、対応する生成物流から分離できる相当な量の副生成物も生じさせる。これらの副生成物としては、低級アルケン、例えば、プロピレンおよびブテン、さらにはジエン、例えば、ブタジエン、さらには芳香族、例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが挙げられる。これらは比較的高い経済価値を有し、それゆえ、高価値製品としてのそれらの形成は望ましい。
米国特許第6743961(B2)には、原油が蒸発及び分解ユニットの組みあわせで部分的に蒸発されることでオレフィンを製造する方法が開示されている。形成された蒸気と残留した液体は、異なる分解条件下で分解される。
米国特許出願公開第2004/209964号の方法では、フィッシャー−トロプス法で生成物流を分別することが提案されている。異なる鎖長の炭化水素が異なる分解条件下で分解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3714282号明細書
【特許文献2】米国特許第6743961号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明が取り組む課題は、炭化水素から熱水蒸気分解によってオレフィン含有生成物の混合物を得る手段を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この背景に対して、本発明は、炭化水素供給物を熱水蒸気分解によって少なくともエチレンおよびプロピレンを含むオレフィン含有生成物流に転化する方法を提案し、この方法は、少なくとも1つの第1の分解炉における第1の炭化水素供給物の少なくとも部分的な転化、および少なくとも1つの第2の分解炉における第2の炭化水素供給物の少なくとも部分的な転化を伴い、独立請求項に記載の特徴を有する。好ましい形態は、従属請求項および後に続く説明の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、この目的のため、既知のオレフィン製造法の概略図を示す。
図2図2は、とりわけ有利な形態での本発明による方法の本質的ステップの概略図を示す。
図3図3は、本発明のとりわけ有利な形態の本質的ステップを、やはり概略的方式で示す。
図4図4は、本発明のとりわけ有利な形態の本質的ステップを、やはり概略的方式で示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、第2の炭化水素供給物が、第2の分解炉において、分解炉の出口で0.85〜1.6kg/kgのプロピレン/エチレン比をもたらす分解条件で転化され、第1の炭化水素供給物が、第1の分解炉において、分解炉の出口で0.25〜0.85kg/kgのプロピレン/エチレン比をもたらす分解条件で転化され、第2の炭化水素供給物に関するプロピレン/エチレン比の値が、第1の炭化水素供給物に関するプロピレン/エチレン比の値よりも大きい方法が提案される。これらの第1および第2の炭化水素供給物は、組成に関して異なる。
【0014】
本発明の文脈において、第1および第2の炭化水素供給物は、それぞれ第1および第2の分解炉中に導入されるすべての炭化水素を指す。したがって、第1の炭化水素供給物は第1の分解炉において、第2の炭化水素供給物は第2の分解炉において、それぞれその少なくとも一部が、請求項1で指定される分解条件下で転化される。対応するプロピレン/エチレン比を伴って第2の分解炉中で存在する、および請求項1で指定される分解条件は、以後、温和な分解条件と呼ばれ、一方、第1の分解炉中で存在する、および請求項1において同様にプロピレン/エチレン比によって指定される分解条件は、以後、通常的分解条件と呼ばれる。通常的分解条件は、熱水蒸気分解において典型的に使用される分解条件である。
【0015】
分解炉は、本発明の文脈において、分解条件が規定されている分解装置を意味すると解される。1つの統合型分解炉中に2つ以上に細区分された分解炉が存在することが可能である。その場合、分解炉セルと呼ばれることが多い。統合型分解炉の一部を形成する複数の分解炉セルは、一般に、独立の輻射ゾーンおよび共通の対流ゾーン、さらには共通の排煙口を有する。これらの場合において、各分解炉セルを、独自の分解条件で稼働させることができる。したがって、各分解炉セルは、1つの分解装置であり、それゆえ、本明細書中では、1つの分解炉と呼ばれる。その場合、統合型分解炉は、複数の分解装置を有する、あるいは換言すれば、それは、複数の分解炉を有する。1つの分解炉セルのみが存在するなら、これが分解装置であり、それゆえ分解炉である。分解炉を組み合わせて、例えば同一供給物を供給される群を形成することができる。分解炉群内の分解条件は、一般に、同一であるか類似するように調整される。
【0016】
典型的な組成の炭化水素、例えば、ナフサの温和な分解条件下での熱分解は、非常に多量の熱分解ガソリンを生じさせ、その大きな量のため対処するのが非常に困難である。これは、温和な分解条件下での分解炉における供給物の転化が比較的より低いことの結果である。しかし、温和な条件下で分解する場合、典型的に使用される通常的分解条件下での分解の場合よりプロピレン/エチレン比が大きいので、温和な分解条件は望ましい。
【0017】
本発明による方法は、供給物と分解条件とが互いに調和されるので、第2の分解炉を温和な分解条件下で稼働させることを可能にする。供給物と分解条件の調和を介してのみ、前記段落に記載の不都合を回避することが可能である。示したこれらの不都合および解決策は、本発明の文脈中で認識される。
【0018】
したがって、本発明による方法は、本発明による方法を使用しない従来のプラントに比べて、新たな供給物に関してより多くのプロピレンが形成されるような方式で、水蒸気分解プラントを稼働させることを可能にする。
【0019】
第2の分解炉における分解条件に関して選択されたプロピレン/エチレン比が大きいほど、新たな供給物に関してより多くのプロピレンが形成される。このことは、本発明の文脈において有利である。しかし、プロピレン/エチレン比が大きいほど、供給物の転化がより低く、それゆえ、プロピレン/エチレン比の値は、技術的および経済的上限によって制約される。請求項中で指定される限界内において、一方で、本発明の利点が達成され、他方で、水蒸気分解装置が、工業的文脈で制御可能であり、経済的に実現可能な方式で稼働可能であることが保証される。
【0020】
第1の分解炉における分解条件に関して指定される限界内で、主要生成物として価値のあるエチレンおよびプロピレンを形成する、工業的および経済的に有利な水蒸気分解が可能である。
【0021】
有利には、第2の炭化水素供給物は、第2の分解炉において、分解炉の出口で1.4kg/kgまで、より好ましくは0.85〜1.2kg/kgのプロピレン/エチレン比をもたらす分解条件で転化される。
【0022】
有利には、第1の炭化水素供給物は、第1の分解炉において、分解炉の出口で0.3〜0.75kg/kg、より好ましくは0.4〜0.65kg/kgのプロピレン/エチレン比をもたらす分解条件で転化される。
【0023】
より詳細には、第1および第2の炭化水素に関するプロピレン/エチレン比の値は、本発明の利点を特定の度合まで達成するために、少なくとも0.1kg/kg、好ましくは少なくとも0.15kg/kg、より好ましくは少なくとも0.2kg/kg異なる。
【0024】
本発明によれば、第2の炭化水素供給物は、炭素数が多くとも5の炭化水素を主に含む。このような炭化水素供給物は、温和な条件下で分解するのにとりわけ適している。このことは、第2の炭化水素供給物の大部分が、炭素数が5または/および4の炭化水素からなる場合に、非常に著しい度合まで当てはまる。
【0025】
用語「主に」は、本出願の文脈において、供給物または留分が、もっぱら指定された炭素数を有する炭化水素からなることはなく、他の炭素数を有する炭化水素およびその他の不純物も、指定された炭素数の炭化水素と一緒に存在していてもよいことを明確にするために使用される。新たな供給物、生成物流、および/または留分の分離および処理は、生成物流中または留分中に成分の残留物を常に残している。その他の不純物も消えずに残り、それゆえ、処理された生成物流または留分流は、常に残留物を含む。分離および処理に付随する費用および不都合は、達成されるべき純度と共に極度に高い度合まで高まるので、経済的因子が、流の中に存在できる残留物の比率を決定する。この比率のレベルは、経済的考察により比較検討すべきである。不必要な炭化水素およびその他の不純物の比率に関するおおよその指針値は、一般に、30〜40重量%を超えず、生成物流中および/または留分中に存在できる値である。通常、15重量%以下の最大値が実際に達成される。したがって、炭化水素供給物は所望の炭化水素を、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%で含む。このことは、新たな供給物に、新たな供給物の分留から得られる供給物に、および再循環成分からの供給物に適用される。
【0026】
本発明のとりわけ有利な形態において、第2の分解炉には、生成物流から得られ、炭素数が5以下の炭化水素を主に含む1つまたは複数の再循環留分が供給される。したがって、第2の炭化水素供給物は、再循環留分を含む。このような留分を再循環すると、第2の分解炉に適した供給物の量が増加するか、このような留分が、第2の分解炉に適した第2の炭化水素供給物を構成する。炭素数が4の炭化水素を含む留分、および炭素数が5の留分も、水蒸気分解装置における生成物流の処理で得られ、これらの留分を、価値ある生成物を分離した後に、直接的にまたはさらなる処理ステップの後に再循環することができる。
【0027】
さらに、第1の分解炉に、生成物流から分離、再循環され、炭素数が少なくとも6の炭化水素を主に含む少なくとも1つの留分を供給することが有利である。このような留分は、第1の分解炉のための第1の炭化水素供給物として適している。
【0028】
とりわけ有利には、新たな供給物が使用され、それは、少なくとも1つの第1の、および少なくとも1つの第2の新たな供給物留分に分留され、第1の新たな供給物留分は、少なくとも一部が第1の分解炉中に導入され、第2の新たな供給物留分は、少なくとも一部が第2の分解炉中に導入される。新たな供給物を分留すると、とりわけ第2の分解炉に関して、本発明の利点を顕著な方式で達成できる供給物が利用可能であるという効果を達成することができる。これらの第1および第2の新たな供給物留分は、異なる組成を有する。したがって、新たな供給物の分割は、分留であって、2つの量への単純な分割ではないことが強調される。分留において、分離は、成分の相違によりもたらされる。したがって分留後、新たな供給物の一部の成分は第1の新たな供給物留分中に主に存在し、新たな供給物の他の成分は第2の新たな供給物留分中に主に存在する。
【0029】
本発明のさらなる有利な形態において、第2の分解炉には、炭素数が多くとも5の炭化水素から主になる新たな供給物が供給される。このような新たな供給物は、例えば、精製装置で、または天然ガスの製造で得ることができる。その特徴ゆえに、それは、温和な分解条件下の第2の分解炉中への供給物として非常に良好な適合性を有する。
【0030】
ここで、前述の供給物(炭素数が多くとも5の炭化水素から構成される再循環留分、新たな供給物留分および新たな供給物)は、それらのすべてが温和な分解に著しく適しているので、第2の分解炉用の供給物として適していることが再び強調されるべきである。本発明の利点を得るために、ここで提案される供給物を、第2の分解炉中に個別的にまたは混合物として導入することができる。したがって、使用される第2の炭化水素供給物は、炭素数が多くとも5の炭化水素から構成される、1つもしくは複数の再循環留分、または新たな供給物留分、または別の供給物でよい。炭素数が多くとも5の炭化水素から構成される再循環留分と新たな供給物留分、または再循環留分と別の供給物、または炭素数が多くとも5の炭化水素から構成される新たな供給物留分と別の供給物、または第2の炭化水素供給物として可能なすべての供給物の混合物を使用することも可能である。
【0031】
初めに説明したように、熱水蒸気分解操作におけるプロピレン/エチレン比は、影響を与える多くの様々な要因に由来し、中でも、分解炉出口温度、すなわち使用した反応器コイルを出ていく生成物流の温度(コイル出口温度)は、重要な役割を演じる。第2の分解炉における転化に関する分解炉出口温度は、有利には680℃〜820℃の間、好ましくは700℃〜800℃の間、さらに好ましくは710℃〜780℃の間、より好ましくは720℃〜760℃の間であり、第1の分解炉における転化に関する分解炉出口温度は、有利には800℃〜1000℃の間、好ましくは820℃〜950℃の間、より好ましくは840℃〜900℃の間である。第1の分解炉における分解炉出口温度は、第2の分解炉におけるよりも常に高い。
【0032】
第1の分解炉における転化に関する分解炉出口温度は、第2の分解炉における転化に関する分解炉出口温度より、少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも15℃、最も好ましくは少なくとも20℃高い。
【0033】
第2の分解炉において、第1の分解炉より低い水蒸気希釈を使用することもできる。これは、必要とされる希釈用水蒸気の量を低減し、エネルギーを節約する。しかし、第2の分解炉におけるより低い水蒸気希釈は、本発明の重要な利点が立証されるために必須ではない。有利には、第2の分解炉では、供給物中で1kgの炭化水素につき0.15〜0.8kgの水蒸気が使用され、一方、第1の分解炉では、供給物中で1kgの炭化水素につき0.3〜1.5kgの水蒸気が使用される。
【0034】
生成物流中に存在する特に炭素数が2〜3の飽和炭化水素を、気体状供給物のための分解炉における熱水蒸気分解によって転化することも有利には可能である。この目的のため、気体状飽和炭化水素を、生成物流から得て、気体状供給物のための分解炉中に再循環し、転化する。
【0035】
第1の炭化水素供給物に使用される新たな供給物および/または新たな供給物の分留に使用される新たな供給物は、気体もしくは気体留分、例えば、エタン、プロパンもしくはブタン、ならびに対応する混合物および凝縮物、または液状炭化水素および炭化水素混合物でよい。これらの気体混合物および凝縮物は、特に、いわゆる天然ガス凝縮物(液状天然ガス、NGL)を含む。液状炭化水素および炭化水素混合物は、例えば、いわゆる原油のガソリン留分に由来することができる。このような粗製ガソリンまたはナフサ(NT)およびケロシンは、35℃〜210℃の間の沸点を有する好ましくは飽和化合物の混合物である。しかし、本発明は、原油処理からの、中間留分、常圧残渣油、および/またはこれらから誘導される混合物を使用する場合においても有利である。中間留分は、軽質暖房油およびディーゼル油、ならびに重質暖房油を製造するための出発原料として使用できる、いわゆる軽質および重質ガス油を含む。存在する化合物は、180℃〜360℃の沸点を有する。それらは、好ましくは、主に飽和化合物であり、熱水蒸気分解操作で転化され得る。さらに、公知の蒸留分離プロセスにより得られる留分および対応する残渣油を使用することも可能であるが、それらから、例えば水素化(水素化処理)または水素化分解によって誘導された留分を使用することもできる。例は、軽質、重質および真空ガス油(常圧ガス油、AGO、または真空ガス油、VGO)、ならびにまた言及した水素化法によって処理された混合物および/または残渣油(水素化処理真空ガス油、HVGO、水素化分解装置残渣油、HCR、または未転化油、UCO)である。
【0036】
第1の炭化水素供給物のための非常に特に有利な新たな供給物は、液状炭化水素である。より詳細には、使用される新たな供給物は、天然ガス凝縮物および/もしくは原油留分ならびに/またはこれらから誘導される混合物である。
【0037】
したがって、有利には、本発明は、第1の炭化水素供給物用の新たな供給物としての第1の炭化水素供給物として600℃までの沸点範囲を有する炭化水素混合物の使用を包含する。この全範囲内で、様々な沸点範囲を有する、例えば、360℃まで、または240℃までの沸点範囲を有する炭化水素混合物を使用することも可能である。ここで、分解炉における反応条件は、それぞれの場合に使用される炭化水素混合物に調和させる。
【0038】
しかし、例えば、本発明を、類似の特性を有する任意の望ましい新たな供給物、例えば生物起源の、または/および合成の炭化水素と共に、有利に使用することもできる。
【0039】
とりわけ有利な形態での本発明による方法を、本質的な処理ステップを概略的方式で示すプロセスフロー図を参照して詳細に説明する。より確実な理解のために、まず既知のプロセスを、図1を参照して説明する。
【0040】
図1は、この目的のため、既知のオレフィン製造法の概略図を示す。図2は、とりわけ有利な形態での本発明による方法の本質的ステップの概略図を示し、図3および4は、本発明のとりわけ有利な形態の本質的ステップを、やはり概略的方式で示す。図中、対応する要素は、同一の参照数字を有する。
【0041】
既知の方法に関する図1の概略プロセスフロー図100は、分解炉1を含み、その中に、炭化水素供給物として、新たな供給物A(例えばナフサ)ならびに再循環留分SおよびPが導入される。分解炉1において、炭化水素供給物は、対流および輻射ゾーンで加熱され転化される。分解炉に、水蒸気、通常的には、1kgの炭化水素につき0.5〜1kgのプロセス水蒸気が添加される。生成物流Cは、分解炉1から出現し、この流れは、分解炉からの出口で単刀直入に分解生成物流とも呼ばれる。分解炉からの出口で、この分解生成物流は、通常、840℃〜900℃の間の温度を有する。プロピレン/エチレン比は、一般に、0.35〜0.6kg/kgである。第1の急冷(示さない)に次いで、生成物流は、処理装置4において処理される。処理装置から次の留分が本質的生成物留分E〜Nとして得られ:Eは水素、Fは廃棄液、Gはメタン、Hはエチレン、Iはプロピレン、Lは炭素数が4の気体状炭化水素、Mは熱分解ガソリン、およびNは熱分解油である。炭素数が4の気体状炭化水素Lは、炭素数が4の炭化水素を処理するために利用されるC4処理装置5においてさらに処理される。このようなC4処理装置5は、炭素数が4の留分を、ブタジエンOを除去することができるような方式でさらに処理する。炭素数が4のその他の炭化水素は、分解炉1中に再循環される留分Pを構成する。炭素数が5以上の炭化水素を含む熱分解ガソリンMは、熱分解ガソリン処理装置6においてさらに処理され、芳香族Qおよび炭素数が例えば9を超える炭化水素Rが除去される。炭素数が5以上のその他の炭化水素は、留分Sとして分解炉1中に再循環される。処理装置4、また、C4処理装置5および熱分解ガソリン処理装置6は、生成物流または生成物留分をさらに処理するために、種々の処理ステップ、例えば、圧縮、凝縮および冷却、乾燥、蒸留および分留、抽出、ならびに水素化を実行するのに役立つ通常的な装置を含む。この処理ステップは、オレフィンプラントで通常的であり、当業者にとって公知である。
【0042】
次いで、図2の概略プロセスフロー図10は、とりわけ有利な形態の本発明による方法、およびその本質的な処理ステップを示す。分解炉1、第2の分解炉2に加えて、ここには、新たな供給物の分留装置7が存在する。新たな供給物B(例えば、ナフサ)は、次いで、新たな供給物の分留装置7において分留され、第1の新たな供給物留分B1は第1の分解炉1中に導入され、第2の新たな供給物留分B2は第2の分解炉2中に導入される。新たな供給物の分留法については、オレフィンプラントおよび精製装置から公知のように、炭化水素流を分離および処理するための通常的な方法が使用される。当業者は、これらの方法、およびその利用方法を熟知している。さらに、留分Uは第1の分解炉1中に再循環され、さらに、留分TおよびPは第2の分解炉2中に再循環される(さらなる詳細については後記参照)。さらに、第2の分解炉には、新たな供給物として、炭素数が多くとも5の炭化水素から構成されるさらなる供給物BLが供給される。前に述べた特性を有する分解生成物流Cが、同様に、第1の分解炉1から出現する。分解生成物流Xが、第2の分解炉2から出現する。分解生成物流Xは、有利には700℃〜800℃の間の温度である。そこでのプロピレン/エチレン比は、有利には、0.7〜1.5kg/kgの間である。生成物流CおよびXは、処理装置4においてさらに処理され、適切な箇所で混合され共通の生成物流を与える。さらなる処理方法および処理装置4における処理は、公知であり、先ほど説明したばかりである。したがって、処理装置4も、先ほど説明したように、生成物留分E〜Nをもたらす。生成物留分LおよびMも、先ほど説明したように、特定の処理装置5および6においてさらに処理される。図1に記載した方法とは対照的に、炭素数が4の炭化水素を含む留分Pもまた、次いで、分解炉1中ではなく、第2の分解炉2中に有利に再循環される。熱分解ガソリン処理装置6において、前に述べた留分QおよびRに加えて、留分TおよびUが得られる。炭素数が5の炭化水素を含む留分Tは、第2の分解炉2中に有利に再循環され、一方、炭素数が6以上、特に6〜9の間の炭化水素を含む留分Uは、第1の分解炉1中に有利に再循環される。図2において、第2の分解炉に種々の供給物が導入される。これらは、次いで、第2の炭化水素供給物を形成する。種々の供給物の列挙は、決定的ではないこと、より詳細には、第2の分解炉に関して図2に示した供給物(B2、BL、TおよびP)は、常にすべてが分解炉2中に導入されることを必要とするわけではなく、代わりに、多くの場合、分解炉2中への可能な供給物のいくつか、例えば炭素数が5の炭化水素から構成される再循環留分T、および炭素数が多くとも5の炭化水素から構成される新たな供給物BL、または例えば炭素数が5および4の炭化水素を含む再循環留分TおよびP、ならびにLPG BLを導入することで十分であることを言及すべきである。要するに、第2の分解炉中への供給物としては、次の物:B2、BL、T、P、B2+BL、B2+T、B2+P、BL+T、BL+P、T+P、B2+BL+T、B2+BL+P、B2+P+T、BL+P+TまたはB2+BL+P+Tがあり得る。
【0043】
本発明のとりわけ有利な形態は図3にも示される。図3は、図2に示したと同様の概略プロセスフロー図を有する。この図は、留分Vが供給物として導入される気体状供給物のための分解炉3で補足されている。留分Vは、同じく処理装置4中で得られる炭素数が2または3の気体状飽和炭化水素を含む。
【0044】
図4も、本発明の有利な形態を示す。図4は、新たな供給物の分留装置が存在しないことを除いて、図2と同一の概略プロセスフロー図を含む。ここで、新たな供給物は、新たな供給物Bとして第1の分解炉1に添加され、炭素数が多くとも5の炭化水素から構成される新たな供給物BLは、第2の分解炉2に添加される。さらなる処理ステップは、図2に関する図面の説明中で既に説明されている。
【符号の説明】
【0045】
1 分解炉(通常の分解条件)、 2 分解炉(温和な分解条件)、 3 気体状供給物のための分解炉、 4 処理装置、 5 C4処理装置、 6 熱分解ガソリン処理装置、 7 新たな供給物の分留装置、 10 既知プロセスのための概略プロセスフロー図、 100 とりわけ有利な形態の本発明によるプロセスのための概略プロセスフロー図、 A、B、BL 新たな供給物、 B1、B2 新たな供給物留分、 C、D、X 生成物流、 E〜V 生成物留分。
図1
図2
図3
図4