【文献】
SangJun Moon et al.,Lensless Imaging for Point-of-Care Testing,31st Annual International Conference of the IEEE EMBS,2009年,pp. 6376-6379
【文献】
Ramin Soltanzadeh and Hossein Rabbani,CLASSIFICATION OF THREE TYPES OF RED BLOOD CELLS IN PERIPHERAL BLOOD SMEAR BASED ON MORPHOLOGY,ICSP2010 Proceedings,2010年,pp. 707-710
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記コンピュータ可読媒体と動作可能に通信するディスプレイを備え、コンピュータ可読プログラムコードはさらに、前記初期画像を前記ディスプレイに表示する操作を行う一連のコンピュータ可読プログラムステップを含み、前記初期画像は、カウントされ、かつ特定された前記細胞群を表す視覚識別マーク群を含む、請求項1に記載のシステム。
コンピュータ可読プログラムコードはさらに、前記サーバのユーザから、前記所定の閾値に対する変更を表す入力を受信する操作、およびこのような入力に応じて、カウントかつ特定された前記細胞群を、変更後の閾値を基準にして特定するマーク群を含む、グレースケール画像及びカラー画像の少なくとも1つを表示する操作を行う一連のコンピュータ可読プログラムステップを含む、請求項3に記載のシステム。
前記変換する操作は、前記取得データを処理して、対応する空間周波数スペクトルを変化させることにより、例えば前記スペクトルの高周波数成分の振幅を、前記スペクトルの低周波数成分の振幅を保持しながら大きくすることを含む、請求項1に記載のシステム。
前記コンピュータ可読プログラムコードはさらに、前記カウントする操作を、前記標的細胞群が1つの流路の表面の近傍に位置する確率、および結合が、そのようにして位置する標的細胞群とレセプタ群との間に形成される可能性に基づいて可能にするステップ群を含む、請求項6に記載の製品。
【発明を実施するための形態】
【0017】
血液透析法(haemodialysisまたはHDとも表記される)は、腎臓が腎不全の状態になったときに血液中のクレアチニンおよび尿毒素、および遊離水のような老廃物の体外排泄を行うために使用される療法である。腹膜透析法は、HDに替わる手段として使用されるが、この腹膜透析法は広く採用されるには程遠い状態である。PDは従来のHDと比較すると、より高度なケアが提供できるが、これらの療法は共に、患者が利用することができ、かつ使用する際の利便性が高い。以下の開示では、PDについて説明が行われるが、このような説明は、本開示を簡潔にするためにのみ行われ、かつHD液(血液透析液)または他のいずれかの体液を、以下に説明する分析サンプルとして使用しているのは、本発明の範囲に含まれると考えられていたことを理解されたい。
【0018】
腹膜透析において認識されている臨床上の障害は、腹膜炎のリスク、すなわち腹膜の炎症のリスクである。腹膜炎は臨床的に、1マイクロリットル当たり100個よりも多くの白血球(WBCs)を含む濁った透析液の生成として定義され、これらの白血球のうち、50%超は、好中球である。感染が進むと、WBCsが大幅に増えて、腹膜透析液の濁りの程度がより大きくなる。しかしながら、感染の初期段階では、濁りの変化は、視認することができない。
【0019】
感染が生じているかどうかの判断は現在、患者自身が濁りの程度を把握し、そして透析液のような体液の濁度を視覚的に認識することにより行われ、この視覚的な認識は、主観的な理解であり、かつ少なくともそのような理由から、腹膜炎に関してモニタリングするために極めて十分であるとは言えない。臨床的には、WBC数および好中球カウント数は、腹膜炎の発症を把握するために使用される。これとは異なり、細胞カウントプラットフォームに、診療現場(POC)ではアクセスすることができないので、体液または透析液が濁って見える場合、この状態は、潜在的な感染の兆候であると考えられ、そして患者は、患者の介護者を呼び出し始め、続いて直ちに診療所または緊急治療室を訪れると予測される。表1を参照すると、患者が行う観察は、全体として誤解を招いてしまって、不必要に緊急治療室に運ばれ、入院し、続いて診察室に運ばれるが、これらの事象は、臨床検査を確実に行うことにより回避することができる。
【0020】
【表1】
表1:現在の臨床治療に使用される実施形態の比較結果
【0021】
上に説明される状況は、(i)体液または透析液の混濁(濁り)が、腹膜炎を必ずしも示唆している訳ではない他の理由(例えば、塩酸マニジピン、ジヒドロピリジン系カルシウムチャンネル遮断薬のような薬物)により生じ得るという事実、および(ii)適切な定量的モニタリングが可能ではないために、HD/PD患者の健康状態のモニタリングが複雑になっているという事実から深刻になっている。全体的に、透析液を迅速かつ定量的にモニタリングして、感染のリスクを判断するという臨床上の満たされない必要性が解決されずに依然として残っている。
【0022】
臨床上のこの必要性を解決するために、本発明の種々実施形態は、使い捨て体液分析マイクロチップ(例えば、HD/PDマイクロチップ)、および透析液中の好中球の迅速な定量化を可能にしてHD/PD患者の健康状態をモニタリングするこのようなマイクロチップを操作する対応方法を提供する。予備実験では、20人のHD/PD患者の透析液中のマイクロチップによる好中球のカウントが、最長190日の期間に亘って得られた(100マイクロリットル当たり16±2〜842±29個の範囲の好中球)。HD/PDマイクロチップは、これらの患者の状態を無事把握するように動作することができた。提案されるこれらの実施形態は、体液の定量分析を臨床/診療現場で迅速に行うために広く適用することにより、持続的なモニタリングを必要とする、またはモニタリングを繰り返す必要がある広範な種類の疾患を受け持つことができる。本明細書全体を通じて、「一実施形態」、「ある実施形態」、「関連する実施形態」という表現、または同様の表現を指す場合、これは、「実施形態」という表記に関連して記述される特定の機能、構造、または特徴が、本発明の少なくとも一実施形態に含まれていることを意味している。したがって、本明細書全体を通じて、「一実施形態において」、「ある実施形態において」というフレーズ、および同様の表現が現れる場合、これは、必ずという訳ではないが、全てが同じ実施形態を指すことができる。 本開示のいずれの部分も、そのままで解釈され、かつ場合によってはある図に関連して解釈されて、本発明の全ての特徴についての完全な記述を行っていると捉えられてはならないことを理解されたい。
【0023】
さらに、以下の開示では、本発明の特徴について、対応する図面を参照しながら説明することができ、これらの図面では、同様の参照番号は、可能な限り、同じ構成要素、または同様の構成要素を指している。これらの図面では、図示される構造的要素群は普通、寸法通りには描かれておらず、そして特定の構成要素群を他の構成要素群よりも拡大して図示することにより強調し、そして理解し易くしている。1枚の図面で、本発明の全ての特徴についての完全な記述をサポートするようにはなっていないことを理解されたい。別の表現をすると、所定の図面は普通、本発明のほぼ全ての特徴ではないが、いくつかの特徴のみを表している。所定の図面、およびこのような図面を説明する記述を含む本開示の関連部分は普通、特定の図の全ての構成要素を含んでいる訳ではない、または提示することができる全ての特徴は、この図を見れば分かるようにして、所定の図面および説明を簡易化し、かつ説明を、この図面に特徴が記述されている特定の構成要素群に振り向けるようにしている。当業者であれば、本発明を、特定の機能、要素、構成要素、構造、詳細、または特徴のうちの1つ以上を用いることなく、または他の方法、構成要素、材料などを用いて実施することができることを理解できるであろう。したがって、本発明の一実施形態の特定の詳細は必ずしも、このような実施形態を表す各図面に、かつ図面ごとに図示されている訳ではないが、記載の前後部分に異なることを記載する必要がない限り、このような詳細が前記図面に含まれていることは、暗に理解することができる。他の例では、公知の構造、詳細、材料、または操作は、所定の図面に図示しないか、または詳細には記述しないようにして、説明されている本発明の一実施形態の態様が不明瞭にならないようにしている。さらに、本発明について記載される単体の機能群、構造群、または特徴群は、任意の適切な方法で、1つ以上のさらに別の実施形態において組み合わせることができる。
【0024】
さらに、模式的なフローチャート図が含まれている場合、前記フローチャート図は普通、論理フローチャート図として説明される。したがって、論理フローの図示の順番、および記号付加ステップは、提示される方法の一実施形態を表している。他のステップおよび方法は、機能、論理、または効果の点で、図示の方法の1つ以上のステップ、またはこれらのステップのステップ構成部分と等価であると考えることができる。さらに、採用するフォーマットおよび記号は、前記方法の論理ステップを説明するために提供され、かつ前記方法の範囲を限定しないものとして理解される。種々の種類の矢印および線をフローチャート図に用いているが、これらの矢印および線は、対応する方法の範囲を限定しないものとして理解される。実際、いくつかの矢印または他の結合記号を使用して、前記方法の論理フローのみを指すことができる。例えば、1つの矢印は、図示の方法について列挙されるステップとステップとの間の未指定期間の待機時間長、またはモニタリング時間長を表すことができる。一般性を失わない範囲で、処理ステップ群または特定の方法群が行われる順番は、図示の対応するステップ群の順番に厳密に従うことができる、または厳密に従わなくてもよい。
【0025】
本開示に添付される請求項に記載される本発明は、参照の対象となる先行技術に開示される特徴を含む本開示を全体的に考慮することにより把握できるようになっている。
【0026】
上に既に示唆したように、以下に説明する種々の例では、説明がPDについてのみ行われているが、このような説明は、記載を簡潔にし、かつ簡易化するためにのみ行われ、そしてHD(血液透析)療法およびHD液サンプルの使用は、または分析サンプルとしての他のいずれかの体液の使用は、本発明の範囲に含まれるように行われるものとする。
【0027】
図1を参照するに、概略
図A〜Eは、PD患者の感染を、診療現場での治療形態を利用してモニタリングする原理を例示するために使用される。PDマイクロチップ100は、患者の排泄物に由来する小容量の廃棄透析液114を使用して、CD66b
+好中球を、チップ100の流路の表面に高い特異的結合能力および高い効率で捕捉する。マイクロチップの画像118を撮影し、そして捕捉好中球を自動ソフトウェア120で定量化する。参照番号124で図示されるように、測定した透析液中の好中球カウントは任意であるが、例えば電子記録媒体のような記憶装置に送信され、この好中球カウントを次に、介護者が把握することにより、PD治療中の感染のリスクをモニタリングすることができる。概略
図Bは、PD患者の透析液サンプルを、マイクロチップ100の流路群100aに注入して好中球群を、流路表面で選択的に捕捉する様子を示している。 概略
図Cは、CD66抗体で官能化された流路表面130、および透析液中の白血球集団から捕捉された好中球群を模式的に図示している。これらのCD66b
+好中球が流路100aに選択的に捕捉されている間に、他の細胞群が流れ、そして流路から、捕捉されることなく、勢いがほとんど衰えることなく流れ出る。概略
図Dは、チップ100の流路群100aに捕捉される好中球群を撮像し、検出し、そして定量化する手段を模式的に示している。手段140は、光をチップ100および捕捉細胞群146に照射するように適合させた光源144を含むことにより、捕捉細胞群146の影148が電荷結合素子(CCD)センサ150の表面に投影されるようにしている。手段140は、CCD150を作動させて、捕捉細胞群146の影148に対応する光強度分布を、対物レンズを必要とすることなく、かつコンピュータシステムに搭載される自動細胞認識定量化コンピュータプログラム製品を使用して検出するように構成される。 概略
図Eは、上から見た図として、PDマイクロ流体チップ100の一実施形態の画像を示している。
【0028】
本開示の以下の部分では、
図2〜8を参照して、好中球群の画像を取得し、そして処理するシステムおよび方法の非限定的かつ例示的な実施形態について詳細に説明する。
【0029】
図2および
図3の概略
図Aは、特定の実施形態100をCCD150の上部に、光学部品を特定の実施形態100とCCD150との間に挟むことなく配置する様子を示している。
図2の概略
図Bは、CCD150で生成される実施形態100の画像200を示している。
図2の概略
図Cは、流路100aの表面に捕捉される細胞群146の影画像210を示しており、これらの細胞146に後に時点で、本発明のコンピュータプログラム製品の一実施形態によってマーキングされて細胞カウント合計が表示されるようにしている。緑色でマーキングされた細胞群246は、
図2の概略
図Dに図示されている。この手順に続いて、個々の細胞群の画像は、このような画像のコントラストを変化させることにより特定され、これらの画像の例は、
図2の概略
図Eの細胞256の画像として図示されている。撮像データの処理、および周波数領域変換処理だけでなく、3D(3次元)帯域通過フィルタを用いたデータフィルタ処理に関連するノイズリダクションを示す概略図は、
図2の概略
図FおよびGにそれぞれ図示されている。
【0030】
アルゴリズムの種々実施形態
本発明のアルゴリズム(本明細書では、HVC法と表記される)を補完するために、本発明のコンピュータプログラム製品の一実施形態は、周波数領域(FD)演算を用いた画像再生の初期段階の後に、電子データ処理コンピュータ回路(このコンピュータ回路は、プロセッサと略記される)が受信する画像データを処理するプログラムコードを含む。FD処理の後、前記データは、空間領域(SD)演算を用いて再処理されて、最終結果を、2つの出力の交点に基づいて生成する。コンピュータプログラム製品は、以下のステップ:
i.チップ上の流路群を自動および/または手動で選択するステップ、
ii.画像を再生して画像コントラストを高めるステップ、
iii.周波数領域で帯域通過フィルタによるフィルタリングを行うステップ、
iv.マッチドフィルタ処理を利用して円形物を検出するステップ、
v.(iii)および/または(iv)で検出される一致度を微調整するステップ、
vi.ユーザフィードバックを取り入れて、どの対象物を細胞群としてカウントする必要があるかについて指定する閾値を更新するステップ、
を実行するプログラムコードを含むことができる。
【0031】
本発明の画像処理アルゴリズムの一実施形態の上記ステップ群について以下に説明する。
【0032】
チップ上の流路群の自動選択および/または手動選択。図1のチップ100の流路群100aの各流路に含まれる細胞群を別々にカウントする必要がある。そのような操作を行うに際して、各CCD画像に特有の撮像不具合である1つの流路の境界近傍の細胞群の画像が光学的に“不鮮明” になる現象のために、1つの流路の境界の内側に収まる領域の全てを考慮に入れなければならないという訳ではない。本発明の実施形態は、この問題を、ユーザに以下の選択肢を与えることにより解決する。
【0033】
完全自動モード。このモードは、特定のチップについて撮影された画像を大量処理する内蔵モードである。
図1および2をさらに参照すると、いくつかの所定の特定用マーカ群(例えば、
図2の概略図の画像中の方形マーカ群260のような)は、チップ100の各コーナーで、流路群100aの位置および向きに対応して、表面形状データ処理アルゴリズム(例えば、Matlabの画像処理ツールボックスのヒットミス変換のような)を用いて彫り込む/刻み込むことができ、この場合、構造的要素は、前記マーカのバイナリマスクに相当する。各チップにこのようなマーカを設ける場合、ユーザは、これらのマーカ260(図示の方形マーカ)、およびカウントを行う必要がある流路群100aの内部のこれらの領域を特定するための「テンプレート」を作成することができる。
図4は、4個の方形260の内部にマゼンタ色の星印でマーキングした状態の画像AおよびBを示している。細胞カウントを行う必要がある(画像Aの)3つの流路100aの内部の領域は、赤(410R)、緑(410G)、および青(410B)で強調されている。チップ100をCCD150の下に配置するときの微小なバラツキ(例えば、チップとCCDの表面との間の平行度のバラツキのような)は許容できる。チップに特定用マーカを設けない場合、この選択肢の有効性は、チップがCCDの下に、テンプレートに一致するように配置される限り発揮される。一旦、コンピュータシステムが、チップの流路群の存在、および位置/向きを特定するか、または認識すると、表面形状データ処理アルゴリズムは、細胞カウントを、更なるユーザ入力を待機することなく、自動的に実施することができる。
【0034】
半自動モード。このモードでは、
図4の画像Aを参照するに、ユーザは、1チップ当たり1つの「テンプレート」を作成し、そして各新規画像中の流路群は、自動的に色付けされる(例えば、上に説明したように、赤色の影、緑色の影、および青色の影で強調される)。プログラムコードは待機状態になり、そしてこれらの流路の境界の特定、微調整、および流路選択が完了したことを表すユーザ入力を待機する。
【0035】
完全手動モード。このモードでは、コンピュータプログラム製品によってプロセッサは、ユーザに許可して、1つの流路の長さよりも短くすることができる画像中のいずれかの領域にサイズ変更可能に、かつ移動可動にマーキングさせることができ(例えば、
図4の画像Bの領域430のように、矩形形状または方形形状であるかどうかに関係なく)、そして次に、細胞カウントを、マーキングされた区分領域430内においてのみ実施させることができる。
【0036】
画像再生。取得画像が低コントラストを有する場合、正規化処理および/または標準化処理を実行して、確実に細胞の画像が、背景から浮かび上がるようにする。例えば、
図5Aの画像510を参照すると、これらの取得画像のうちのいくつかの画像は、カラー画像を含む。カラー情報によって、実用的価値が細胞カウント作業に付加されることはない、または細胞カウント作業が変更されることはないことを理解されたい。本発明の一実施形態による画像再生処理の1つの特定の実施形態における第1ステップでは、画像510をグレースケール画像512に変換する。グレースケール画像512は、依然として低コントラストによって特徴付けることができ;この場合、画像のヒストグラムの形状は、参照番号514で図示される通り、裾広がりになる(例えば、Matlab関数adapthisteqを使用して)。これに続いて、ハイブーストフィルタを用いて、参照番号516で示すように、画像の高周波数成分を、低周波数成分を維持しながら強調することにより、高域強調画像518を形成する。この画像は、周波数領域フィルタ処理の入力画像である。
【0037】
周波数領域で帯域通過フィルタによるフィルタリングを行う処理。画像514の高周波数成分を強調した結果として、高周波数成分強調フィルタ処理画像518の2D(2次元)フーリエ変換画像524は、
図5Bに示す「光輪」528を示すことができる。光輪528が、低周波数領域における高エネルギー領域(周波数領域画像の中心に位置する)を取り囲む様子を観察することができる。この光輪は、細胞群の存在および性質に起因して現れる。プログラムコードで専用設計帯域通過フィルタ530を画像518のフーリエ変換画像524に適用すると、変換画像524を空間領域(図示せず)に戻すことができ、かつ空間画像中の細胞群を視覚的に強調する効果を、光輪に影響しない空間周波数成分を除去することにより発揮させることができる。この専用フィルタの一実施形態の周波数特性は、
図5Cの上側の斜視図に図示されている。
【0038】
周波数領域で帯域通過フィルタによるフィルタリングを行うと、画像の細胞群を強調し、そして他の不所望な要素を減衰させることができるが、細胞群は、「光輪」に影響する唯一の要素ではなく、相当量のノイズが残っている。これらのノイズ発生要素として、例えば細胞群ではないサンプル由来の気泡、繊維、および微細構造物を挙げることができる。画像ノイズに影響する各要素を処理しようとするのではなく、本発明のHCC治療法の一実施形態では、(i)注目細胞群はほとんど必ず丸みを帯びており、かつ略同じ直径を有するという事実、(ii)撮像が、同じシステムを用いて行われるという事実、(iii)チップが必ず、CCDからほぼ同じ距離の位置に配置されるという事実を利用する。これにより、以下に詳細に説明するように、注目細胞群の表面形状を利用し、かつ特定の直径の円形物を特定することができる。
【0039】
マッチドフィルタ処理を利用した円形物の検出。この段階では、高域強調(ハイブースト)フィルタ処理画像518を表す撮像データはこの場合も同じく、入力として使用される。画像518はまず、2値画像に変換され、そして次に、「ディスク」のテンプレートによる畳み込み演算が施される。
図6は、
図5の画像518の2値画像618だけでなく、丸みを帯びた細胞の2値画像であるテンプレート620(方形形状が、ノイズの多い画像中のディスク形状を十分に近似表現する)を図示しており、このテンプレート620により、コンピュータプログラム製品の形態のプログラムコードでその後、画像618に畳み込み演算を行う。
【0040】
一致度の微調整。図7Aおよび7Bは、グレースケール画像710、および周波数領域フィルタ処理および空間領域フィルタ処理の出力を表す白黒画像720を示している。細胞群の最終カウントは、周波数領域フィルタ処理により閾値化された白黒画像720の結果と、マッチドフィルタ処理により出力される白黒画像の結果の交点を求めることにより算出される。この2値の交点画像では、細胞群が、隣接する3画素内で衝突すると、崩壊して1つの細胞になる。これにより確実に、重複が生じることがなく、かつ細胞カウントが多く見積もられることがない。
【0041】
ユーザフィードバックを取り入れて、どの対象物を細胞群としてカウントする必要があるかについて指定する閾値の更新。最終結果は、指定された閾値の値によって異なる。一旦、細胞群のカウントが完了すると、正しい各細胞に原画像上でマーキングし、そして各細胞をユーザに対して表示して目で確認させる。この時点で、ユーザは、閾値の値を、したがってこれらの結果を調整することができる。細胞群の個数は、図窓に表示され、そして動的に更新される。閾値が大きくなると、細胞群として特定されるポイントの個数が少なくなるが、これらのポイントは、実際に細胞群である可能性がより高くなる。閾値が小さくなると、より多くのポイントが、細胞群として特定されるが、誤検出の数が普通、増える。
【0042】
上に説明した画像処理アルゴリズムの概要は、
図8のフローチャートに要約される。
【0043】
本開示の以下の部分では、
図9を参照し、かつ
図1も参照しながら、細胞捕捉(例えば、CD66b
+細胞のような)を最適化するために提案されるチップのマイクロ流路群の構造に関連する実施形態についてさらに詳細に説明する。マイクロチップ表面に至るCD66b
+好中球群の流動運動および移動は、
図9の概略
図Aに示すように、白血球群(CD66b
+好中球群)および血小板群の多体相互作用によって特徴付けられる。低せん断速度では、徐々に減少する速度の概要、および促進されるCD66b
+好中球の融合がマイクロベッセル内で観察されている。本開示の目的のために、矩形断面を有するマイクロ流路群100aを、2つの異なる高さ(または、深さ)、h=50μmおよび80μmを有するように作製した。容積流量を両方の場合に、Q=2μl/分が成り立つように設定したので、対応するレイノルズ数Re=ρuh/μ=ρQ/μwは、両方の場合に成り立ち、かつRe≒0.01が成り立つ。この場合、ρは、流体の密度であり、Qは、容積流量であり、μは、流体の速度であり、そしてwは、流路の幅である。これらのマイクロ流路100aのレイノルズ数は低く、かつ慣性力は、粘性力と比較すると小さいので、流れは、クリープ流れとして特徴付けることができ、クリープ流れの場合、Re≪1が成り立つ。クリープ流れは、それ自体では、低Re流体(低レイノルズ流体)の運動の公知の時間可逆性に起因して、好中球群がこれらのマイクロ流路の周辺に移動するという基礎的な機構を解決することはできない。時間可逆性によって、硬質のしたがって好中球群がマイクロチップ壁に融合する現象が促進されることはない。CD66b
+好中球群の表面の微小な曲率変化は、理論的には、反対称性をもたらすように作用してしまい、したがってこれらの細胞の移動は、流線が交差することにより生じる。しかしながら、これは、CD66b
+好中球群を壁に向かってではなく、マイクロ流路中心に向かって緩慢に移動させるように作用すると予測される。
【0044】
患者の透析液サンプルに由来するCD66b
+好中球群を効果的に捕捉する
図1の実施形態100のマイクロ流路群100aを設計するために、
図9の概略
図B〜Eに模式的に図示される本発明による理論モデルは、親和性細胞捕捉過程が、2つの確率的期間を含むものと仮定する。
【0045】
これらの確率は、(1)概略
図Bのグラフに示すように、問題の細胞群が、マイクロ流路100aの表面の近傍に位置し、かつ細胞群が平衡ゾーンに向かって移動して融合することにより(細胞が存在する場合に)、細胞集団を流路表面の近傍に送り込むことができる確率;および(2)
図9の概略
図Cのグラフに示すように、結合が、流路表面の近傍に位置する細胞群とレセプタ群との間に形成される可能性を含む。後者の可能性を求めるために、確率論的運動方程式を用いることができる。融合の重要性、すなわち平衡ゾーンに向かうCD66b
+好中球群の移動を把握するために、我々はまず、融合速度(
図9の概略
図Dのグラフに示す)を計算する:
【数1】
式中、y
WBCは、CD66b
+好中球群の垂直方向距離であり、dy
WBC/dtは融合速度であり、y
WBC*は平衡垂直方向距離であり、αは、CD66b
+好中球群の半径であり、ρ
0およびε
0は、流体密度および流体粘度である。
次のステップでは、平均融合速度および平均流速が、
【数2】
、および
【数3】
としてそれぞれ計算される。この計算の後、時間スケールが、t
*=(h/u
m)/(L/u
f)により比較される。
【0046】
融合と流動の時間スケール比は≫1(t
*〜100)であるので、好中球群の初期分布が決定因子となる。この場合、我々は単に、次式の通り、細胞群が流れ全体に亘って正規分布していると仮定する:
【数4】
式中、μは平均位置であり、そしてσ
2は細胞分布の分散である。
図9の概略
図Bをさらに参照するに、細胞群が流路表面とリガンド−レセプタ結合を形成することができる閾値位置h
0(最大距離)との間の薄いゾーンに位置する確率は次式の通りに表される:
【数5】
【0047】
これらの好中球は、マイクロ流路の底面に付着した。好中球群を剥がすことができる実効流動力は、F=6πalμSF
SおよびM=6πa3μST
Sで与えられ、式中、lは、壁までの離間距離であり、μSは、壁におけるせん断応力であり、F
SおよびT
Sは形状依存係数である。マイクロ流路表面におけるせん断応力τ
wは、次式の通りに計算することができる:
τ
w=6μQ/(wh
2) (4)
【0048】
この場合、せん断応力は、h=80μmの場合に0.0078Paであり、そしてh=50μmの場合に0.02Paである。したがって、
図9の概略
図Cをさらに参照すると、強固に付着する確率は、次式の通りに表され:
【数6】
式中、m
rおよびm
lは、それぞれレセプタ密度およびリガンド密度であり;Kα0は、リガンド−レセプタペアのゼロ荷重における結合定数であり;Acは接触面積であり;λはリガンド−レセプタ結合の結合長であり;kbは、ボルツマン定数であり;Fdisは、単位リガンド−レセプタペア当たりに作用する引き剥がし力であり;γは細胞のアスペクト比であり;そしてTは温度である。
【0049】
最後に、
図9の概略
図Eを参照するに、表面に捕捉される好中球群の結合確率は、P
t=P
sP
aと算定される。流量が増加し、かつ好中球濃度が高くなる場合に合計細胞カウントが増えるのは、これらの細胞が、マイクロ流路壁に向かって拡散して衝突する運動が助長されるからであることが容易に分かる。好中球濃度が同じ場合、マイクロ流路の厚さが薄くなると、せん断速度が大きくなり、かつ捕捉細胞群の合計数が増える。細胞群の個数を一定に保ちながら、より多くの個数の細胞群を同じ領域に詰め込むか、または前記領域のサイズを小さくすると、融合が促進され、かつ捕捉される好中球群が増える。最後に、せん断速度が大きくなると、捕捉された好中球群を引き剥がす力が大きくなるだけでなく、自由に流動する好中球群が照射される時間が長くなる。前記過程が前の現象によってほぼ決定されていた場合、または前の現象の影響が大きくなっていた場合、前記現象によって、好中球群が(より迅速に)引き剥がされるようになり、かつ細胞カウントが少なくなる。
【0050】
マイクロ流体チップの実施形態の例
図1を再度参照するに、一実施形態では、実施形態100は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)(ジョージア州アトランタにあるMcMaster Carr社製)を、チップのバッキング材として使用することにより製造され、前記バッキング材は、約50μm〜約80μm厚さの両面接着剤(DSA)フィルム(ニュージャージー州スコッチプレインズにあるiTapstore社製)に取り付けられて流路高さを確保している。これらの構成部材は共に、約24×40mmの大きさに切断された。等しい幅の6個の細孔を、PMMA中を切開して作製し、この場合、一方の端部に位置する3個の細孔が流入口となり、そして反対側の端部に位置する3個の細孔が流出口となる。各流路が4.3mm長さ×25mm長さの形状であるこれらの流路を、DSA中を切開して作製し;組み付け中に、これらの流路を各組の入口細孔および出口細孔に位置合わせし、そしてPMMA表面に固定した。一旦、プラズマ処理済みガラススライドを中央に配置し、そしてDSAの残りの面に固定すると、マイクロ流体チップが形成され、そしてマイクロ流体チップにシラン化処理を行う状態になる。流路100aの長さは、約30mmになるように、このような長さが、好中球を固定するために十分なCD66b細胞間相互作用を実現するので選択された。約4mmの流路幅は、約100μLのPDサンプルの細胞捕捉を行うために十分な大きさの表面積を確保することができる。ガラススライド(マサチューセッツ州ローウェルにあるコーニング社製)を、酸素プラズマ(約100mWおよび1%濃度の酸素)で、約1分の時間をかけて、PX−250チャンバ(マサチューセッツ州コンコードにあるMarch Instruments社製)内でプラズマ処理し、そしてチップ100のキャップとして使用して、流路群100aの気密状態を確保した。
【0051】
マイクロ流体流路に官能基を導入する例
官能基を流路に導入するための材料。流路の100%エタノール(EtOH)希釈洗浄液、およびジメチルスルホキシド(DMSO)、GMSB標準原液の溶媒は、Sigma−Aldrich Chemical Company(ミズーリ州セントルイス)から購入した。3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(3−MPS)、シラン化剤をさらに、Sigma−Aldrich Chemical Company(ミズーリ州セントルイス)から購入した。N−y−マレイミドブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)、カップリング剤は、Pierce Biotechnology(イリノイ州ロックフォード)から購入した。水性試薬を希釈して洗浄に用いる1Xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)は、Gibco(ニューヨーク州グランドアイランド)から購入した。ニュートラビジン、ビオチン結合を利用した官能性タンパク質は、Fisher Scientific(ニュージャージー州フェアローン)から購入した。非特異的結合反応/相互作用を防ぐための凍結乾燥ウシ血清アルブミン(BSA)は、Sigma−Aldrich Chemical Company(ミズーリ州セントルイス)から購入した。臨床PDサンプル中の好中球群を捕捉するために使用されるビオチン化抗ヒトがん胎児性抗原関連細胞接着分子8(CEACAM−8)抗体は、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)から購入した。
【0052】
好中球を捕捉して分析するための材料。PDサンプルをマイクロ流体チップ内で流動させるために使用されるシリンジポンプは、SyringePump.com(ニューヨーク州ファーミングデール)から購入した。PD(腹膜透析)液をマイクロ流体チップ内に注入するために使用される1mLの容量のLuer Lock(ルアーロック)シリンジは、BD Biosciences(ニュージャージー州フランクリンレイクス)から購入した。シリンジをマイクロ流体チップに接続するために使用される0.01インチ(0.254mm)の内径を持つナイロンチューブは、Cole−Parmer(イリノイ州ヴァーノンヒルズ)から購入した。マイクロ流体チップは、Carl Zeiss Optical Inc.(オハイオ州クリーブランド)から購入したZeiss Lens Cleanerでクリーニングした。チップを撮像して好中球捕捉を計測するために使用される電荷結合素子(CCD)は、Imperx Inc.(フロリダ州ボカラトン)から購入し、そして86.9kΩ抵抗および2.3V電源を備えるLED光源を作り出す「ブラックボックス」内に組み込んだ。
【0053】
溶液調製。一旦、マイクロ流体チップを組み付けると、これらのマイクロ流体流路に官能基を導入するために必要な手順を、表2および3の概略に従って実施した。
【0054】
まず、シラン化溶液をピペットで各流路内に流し込み、そして30分の時間をかけて培養した。シラン化溶液は、200mM(200ミリモル)の3−MPSをEtOH(100%エタノール)中に含む希釈液である。GMBS溶液は、2mMのGMBS溶液をEtOH中に含む希釈液である。ニュートラビジン溶液は、ニュートラビジンをPBS中に100μg/mLの割合で含む溶液である。1%BSA溶液は、BSAをPBS中に10mg/mLの割合で含む溶液である。抗体溶液は、CEACAM−8抗体をPBS中に200ng/mLの割合で含む溶液である(原液の1000倍希釈液)。
【0055】
全ての非結合3−MPSを流路から、EtOH(エタノール)を用いてフラッシュした。次に、GMBS溶液をピペットで各流路内に流し込み、そして30分の時間をかけて培養した。未反応GMBSを流路から、EtOH(エタノール)を用いてフラッシュした。次に、これらの流路を、PBS(緩衝生理食塩水)で洗浄して有機溶媒を除去した。ニュートラビジン溶液をピペットで各流路内に流し込み、そして60分の時間をかけて暗室内で(感光性を有しているので)培養して、GMBSに固定した。非結合ニュートラビジンを流路からPBSと一緒に洗い流した。次に、1%BSA溶液をピペットで各流路内に流し込み、そして30分の時間をかけて培養して、表面を安定化させた。非結合BSAをこれらの流路からPBS(緩衝生理食塩水)と一緒に洗い流した。次に、抗体溶液をピペットで各流路内に流し込み、30分の時間をかけて培養し、再びピペットで各流路内に流し込み、そして30分以上の時間をかけて培養した。
【0056】
【表2】
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
EtOH:100%エタノール
表2.マイクロ流体チップを作製して最初に官能基を導入するための操作手順の例(全てのステップが室温で行われる)
【0057】
【表3】
表3.表面化学反応をマイクロ流体流路内で応用する操作手順の例
【0058】
好中球群をマイクロ流体流路内で捕捉する例
表4を参照すると、シリンジおよびシリンジポンプを取り付けている。各シリンジを200μLの臨床PDサンプルで満たした(1サンプル当たり3つのシリンジ)。先が丸くなったルアーロック型30ゲージ針をこれらのシリンジに取り付け;ナイロンチューブを各針の尖鋭端に嵌め込んだ。次に、これらのシリンジをシリンジポンプ内に装着した。前記ポンプは、プランジャー群の全ての高さが同じになり、かつ流体がナイロンチューブを流れるようになるまで作動させた。次に、各ナイロンチューブ部材の自由端を、マイクロ流体チップのそれぞれの各入口ポートにエポキシ樹脂で接着させた。200μL容量のピペットの先端を、各出口ポートに配置して、劣化したサンプルを回収した。シリンジポンプは、100μLが各マイクロ流体流路内を流れてしまうまで作動させた。次に、チューブ先端およびピペット先端を、これらのマイクロ流体チップ入口から取り外し、マイクロ流体チップの表面を、Zeiss Lens Cleanerを使用してクリーニングした。最後に、上に説明したように、マイクロ流体チップをCCDイメージセンサの上に配置し、そして画像をコンピュータに保存して定量化を行った。
【0059】
【表4】
表4.表面化学反応で官能基を導入した臨床腹膜透析液(PD)サンプルを試験する操作手順の例
【0060】
濁ったPD透析液サンプルを分析する際に発揮されるマクロ流体チップの一実施形態のロバストな性能
PDマイクロ流体チップについて提案される実施形態は、PD患者サンプルから採取されるサンプルが、繊維またはRBC(赤血球)のようなさらに別の粒子を含んでいても、正確な結果をもたらす能力を備えている。詳細には、
図10を参照すると、マイクロチップの一実施形態は、免疫測定用チップを含み、この免疫測定用チップでは、結合好中球は必ず、他の粒子が洗浄用緩衝液で除去されている状態でも表面に残留する。
【0061】
流体サンプルの不透明度が光学撮像の品質に及ぼす影響も解決した。粒子濃度が高いPD液(腹膜透析液)は、洗浄用緩衝液を用いてフラッシュした後では、CCD画像に影響を及ぼさないと判断された。しかしながら、PDチップを、サンプルをフラッシュする前に撮像した場合、CCD画像のノイズが極めて大きくなる。例えば、
図11Aおよび11Bに示すように、不透明度(濁度)が高いPDサンプルを、PDチップの実施形態100に注入し、そして注入後直ちに撮像して
図11Aの画像を生成した。同じサンプルを、PBS(緩衝生理食塩水)フラッシュステップの後にさらに撮像して、
図11Bの画像を生成した。濁度の上昇は、繊維がPD透析液中に蓄積した結果であった。
図11Aの画像と
図11Bの画像を比較すると、ノイズの大幅な減少が、洗浄用緩衝液を投入した場合に生じることが分かる。流体の濁度が高いにも拘わらず、CCD150はそれでも、表面への全ての捕捉物の明瞭な画像を形成することができた。
【0062】
FACS(流動血球計算)結果も、PD液中の種々の粒子の影響を受けた。死細胞群によって多くの場合、FACS(流動血球計算)画像にノイズが生じて、好中球群のような標的細胞群をゲートすることが困難になる。全粒子数が増える場合、細胞密度値を求めるために必要な時間がさらに長くなる。
図12Aおよび12Bは、リンパ球群、単核白血球群、および好中球群を含む代表的なサンプルを特徴付けるFACS(流動血球計算)プロットを示している。FITC(フルオレセインイソチオシアネート:蛍光色素の一種)標識抗ヒトCD66抗体で染色した好中球群がゲートされ、そして対応するFSC対SSC領域に表示される。
図12Cおよび12Dは、患者から採取される濁ったPDサンプルを特徴付けした結果を表すFACSプロットを示している。死細胞群だけでなく、さらに別の粒子によって、ノイズレベルがFSC対SSCの関係に見られるように大きくなって、細胞群をゲートするのが複雑になる(例えば、
図12CにおいてゲートされたR2領域の左側のプロット領域から分かるように)。このようなノイズレベルでは、特定の細胞カウントを求め、そして細胞濃度を正確に求めるのが困難になる。
図12Eおよび12Fは、イコデキストリンを患者の透析液糖(従来のブドウ糖透析液ではなく)として使用する患者から得られるサンプルを特徴付けるFACSプロットを示している。1モル当たりの質量が大きい糖であるイコデキストリンは、流動血球計算器に1つの現象として認識される。その結果、これらの現象の100倍よりも多くの現象が、相当高いWBC(白血球)濃度を得るために必要とされる。
【0063】
図13は、本発明の種々実施形態の動作性能の検証を示すプロットA〜Fを示している。
図13Aは、本発明の実施形態によるPDサンプル中の好中球群を自動でカウントする場合と、手動で細胞カウントする場合を統計的に比較した結果を示すプロットである。手動カウントとソフトウェアによる細胞カウントとの間で強い相関(r=0.96、p<0.01)が観察された。
図13Bは、流路寸法および流量が好中球捕捉効率に及ぼす影響を示し、かつ上に説明した80μm流路と比較して50μm流路の場合に得られる捕捉効率が高いことを示すプロットである。
図13Bは、流路寸法および流量が好中球捕捉効率に及ぼす影響を示し、かつ上に説明した80μm流路と比較して50μm流路の場合に得られる捕捉効率が高いことを示すプロットである。さらに、50μm高さの構造は、80μm高さの流路構造(r=0.74、p<0.01)と比較して、流動血球計算器による好中球カウントとより強い相関(r=0.90、p<0.01)を示した。
図13Cは、PD患者サンプルに対して行われる好中球カウントを表すプロットである。非常に強い相関(r=0.90、p<0.05)が、サンプル好中球濃度とPDチップ細胞カウントとの間に観察された。
図13Dは、PDチップの一実施形態の捕捉効率が表2に示すサンプル中の好中球濃度に応じて変化する様子を表すプロットである。PD患者サンプルで得られたマイクロチップカウントは、FACS(流動血球計算器による)カウントと統計的に非常に強い相関(r=0.83、p<0.01)を示した。測定結果が
図13Eおよび13Fに図示されている臨床サンプルの測定は、非常に強い相関(r=0.90、p<0.01)を流動血球計算器による結果(究極の判断基準)とマイクロチップから取得される0〜300細胞数/μlの範囲の好中球カウントとの間で示した。このような範囲は、臨床的に関連する検出範囲を含んでいる。
【0064】
種々実施形態の例によれば、マイクロ流体システム、および感染を早期に検出してPD(腹膜透析)における衛生遵守率を文書化する方法が提供される。本開示において説明される腹膜透析療法の管理を向上させる在宅ヘルスケアポータルは、患者のヘルスケアを診療現場でモニタリングする臨床医を支援するように適合させる。本願発明者らは、PD液を患者の臨床でモニタリングするためにPOC(診療現場)で迅速な診断に基づいて行われる治療が存在しているということに全く気付いていない。想到される実施形態では、廃棄PD液を利用して、前記透析液中のWBC(白血球)群および好中球群をカウントすることができるようにする。PDのこのような測定値に基づいて、前記システムはインジケータ(例えば、カラーインジケータ、赤色または緑色LED)を提供し、前記インジケータに応答して、対話が臨床医と患者との間で開始されて、感染の可能性に関する臨床判定が行われることにより、治療の遅れを減らすか、または無くすことができる。記録データは電子記録媒体に送信され、この記録媒体に、患者、介護者がアクセスすることができる。診断判定は依然として、患者と対話する医師および看護師によって行われることになる。提案する実施形態では、不確実な濁度測定方法または濁り測定方法に替えて別の方法を用いることにより、患者に利点をもたらして重症例、治療の遅れを回避し、かつ血液透析よりも患者に優しいPD(腹膜透析)の特徴を引き出す方法を提供する。
【0065】
これらの実施形態について選択される特定の値が説明されているが、本発明の範囲内で、パラメータ群の全ての値を広範囲に変化させて異なる用途に適合させることができることを理解されたい。
【0066】
上に説明した本発明の方法の実施、および/または本発明のシステムの動作の実現化は、必要なアルゴリズムのステップ群を実行するように詳細かつ具体的にプログラムされるプロセッサを使用することにより可能になる。このようなプロセッサは、有形コンピュータ可読メモリに格納される命令群により制御することができる。この技術分野の当業者であれば、本発明の機能を定義する命令群またはプログラム群をプロセッサに様々な形式で供給することができ、これらの形式として、これらには限定されないが、非書込記憶媒体に永久的に格納される情報の形式、書込記憶媒体に消去再書込可能に格納される情報の形式、またはコンピュータに、有線または無線コンピュータネットワークを含む通信媒体を介して伝送される情報の形式を挙げることができることを容易に理解できるであろう。さらに、本発明は、ソフトウェアとして具体化することができるが、本発明を実施するために必要な機能は、任意であるが、または別の構成として、適切なファームウェア要素および/またはハードウェア要素(例えば、組み合わせ論理、特定用途向け集積回路、およびフィールドプログラマブルゲートアレイのような)を使用して部分的に、または全体的に具体化することができる。
【0067】
本発明は、例示的な上記実施形態を通して説明されているが、この技術分野の当業者であれば、例示される実施形態の変形および変更は、開示される発明コンセプトから逸脱しない範囲で行うことができることを理解できるであろう。したがって、本発明は、開示される実施形態(群)に限定されるものとして捉えられてはならない。