特許第6181190号(P6181190)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181190複合材外板と複合材スティフナとをオートクレーブ内で共硬化するための方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181190
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】複合材外板と複合材スティフナとをオートクレーブ内で共硬化するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/18 20060101AFI20170807BHJP
   B29C 43/12 20060101ALI20170807BHJP
   B29C 70/40 20060101ALI20170807BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20170807BHJP
   B64C 1/12 20060101ALI20170807BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20170807BHJP
   B29L 31/30 20060101ALN20170807BHJP
【FI】
   B29C43/18
   B29C43/12
   B29C70/40
   B64C1/00 B
   B64C1/12
   B29K105:08
   B29L31:30
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-535658(P2015-535658)
(86)(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公表番号】特表2015-535762(P2015-535762A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】US2013057089
(87)【国際公開番号】WO2014055180
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年6月9日
(31)【優先権主張番号】13/644,587
(32)【優先日】2012年10月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴンズ, ジェフリー スコット
(72)【発明者】
【氏名】バイ, スティーヴン ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】デイ, ダン
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0186899(US,A1)
【文献】 特開平07−187085(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0261199(US,A1)
【文献】 特開2001−030997(JP,A)
【文献】 特表2012−508662(JP,A)
【文献】 特開2007−130801(JP,A)
【文献】 特開昭58−056824(JP,A)
【文献】 特開2009−292054(JP,A)
【文献】 特開2000−094623(JP,A)
【文献】 特開昭63−031727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00−43/58
B29C 70/00−70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材スティフナを複合材外板に対してオートクレーブ硬化するための装置であって、
複合材外板が配置され得るツール表面と、前記外板の下で、複合材スティフナが内部に配置されるようにそれぞれ適合される、複数のチャネルとを有する、ツール、
前記スティフナに印加されるオートクレーブ圧力に反応するように、前記チャネル内部に配置されるように適合される、複数の加圧可能なブラダ、
前記外板を前記スティフナに対して圧密化するために、前記ツールの上にシールされるように適合される、真空バッグ、並びに、
オートクレーブ圧力を使用して前記ブラダを加圧するために、前記ブラダに連結されるマニフォールドシステム、を備え、
前記マニフォールドシステムは、前記真空バッグを貫通し且つオートクレーブ圧力に晒される、通気管を含み、前記通気管は前記ブラダと流体連通する、装置。
【請求項2】
フレームをさらに備え、前記バッグは、再利用可能なバッグであり、前記フレームに取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ブラダは、その一端に通気固定具を含み、前記マニフォールドシステムが前記通気固定具に連結される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記マニフォールドシステムは、マニフォールドボックスを含み、前記通気管は、前記マニフォールドボックス上に設けられ、前記通気固定具に連結される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記マニフォールドボックスは、前記真空バッグが前記ツールの上にシールされる場合に、前記真空バッグの下に位置し且つこれと接触する、上壁を含み、前記通気管は前記上壁を貫通する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記真空バッグと前記通気管との間のシールをさらに含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記マニフォールドシステムと前記通気管とは、前記ツールの1つの側に沿って位置し、
前記真空バッグは、前記通気管にシールされるように適合される、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
複合材スティフナと外板とをオートクレーブ内で共硬化する方法であって、
未硬化のスティフナをツール上に配置すること、
前記未硬化のスティフナ内に複数のブラダをそれぞれ配置すること、
前記ツールの上に未硬化の外板を、前記スティフナと接触させて配置すること、
前記ブラダをマニフォールドに連結すること、
前記ツールと前記マニフォールドとの上にバッグをシールすること、
前記バッグを通じて、前記マニフォールドをオートクレーブ圧力まで通気すること、及び
前記マニフォールドを通じて、オートクレーブ圧力を使用して前記ブラダを加圧すること
を含み、
前記ブラダを前記マニフォールドに連結することは、前記ブラダの各々の端部を、前記オートクレーブ圧力に晒される通気管に連結することを含み、前記通気管は前記ブラダと流体連通する、方法。
【請求項9】
前記バッグをシールすることは、前記バッグを前記通気管の周囲でシールすることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ブラダを前記マニフォールドに連結することは、前記ブラダのうちの複数のブラダの端部を、前記通気管に連結することを含む、請求項又はに記載の方法。
【請求項11】
前記バッグをシールすることは、前記バッグと前記ツールとの上にフレームを配置すること、及び、前記フレームと前記ツールとの間で前記バッグを締結することを含む、請求項から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記マニフォールドは複数のマニフォールドボックスを含み、前記方法は、
前記マニフォールドボックスを、前記ツール上の端から端まで、前記ブラダの一端に沿って、配置すること、及び
各マニフォールドボックスを、複数の前記ブラダと連結すること
をさらに含む、請求項から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、複合材部品の製造に関し、より詳細には、複合材外板と複合材スティフナとをオートクレーブ内で共硬化するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の複合材部品をオートクレーブ内で硬化することが必要となることがあり、これには、部品がオートクレーブ圧力によって倒壊することを防止するための内側ブラダを要する。例えば、航空機産業では、複合材外板が、ハット型の断面を有する複数のスティフナに対して、真空バッグ及びオートクレーブ圧力を使用して圧密化され、共硬化されることがある。オートクレーブ圧力による倒壊を避けるために、ブラダ内の内圧が実質的にオートクレーブ圧力と等しくなるように、ブラダが、オートクレーブ環境まで通気されることがある。ブラダの通気における技術の1つは、真空バッグを通じて通気される穴を、ブラダに配置することである。真空バッグを通じたブラダの通気は、バッグ内への漏れの可能性を増大させ、通気パイプの望ましくない予圧や硬化中の潜在的な繊維補強材の歪みや樹脂の枯渇(resin starvation)といった問題につながることがある。
【0003】
真空バッグを通じてブラダを通気する必要がなく、ブラダに対するオートクレーブ圧力の十分に均一な分配を促進するような、複合材外板と複合材スティフナとを共硬化するための方法及び装置の提供が望まれる。種々のタイプのアセンブリ用に容易に再構築できるような、上述の装置も求められる。
【発明の概要】
【0004】
記載の実施形態は、オートクレーブ硬化サイクル中に繊維強化樹脂スティフナを圧縮するために、ブラダのアレイにオートクレーブ圧力を分配するための方法及び装置を提供する。マニフォールドシステムは通気管を通じてオートクレーブ圧力をブラダに分配し、通気管は、再利用可能な真空バッグを、当該バッグの領域の外側の位置で貫通し、当該バッグは、硬化される部分を覆う。各通気管を通じ、1つよりも多いブラダを通気することによって、通気のためのバッグの穿通の数が削減される。このマニフォールドシステムは、端から端まで配置される複数の取り外し可能なマニフォールドボックスを備え、通気が必要なブラダの数に適合するように再構成され得る。通気管の予圧は回避され、起こり得る繊維の歪み及び/又は樹脂枯渇が大幅に低減される、あるいは取り除かれる。
【0005】
記載の一実施形態によれば、複合材スティフナを複合材外板に対してオートクレーブ硬化するための装置が提供される。この装置は、複合材外板が配置され得るツール表面と、外板の下で、複合材スティフナが内部に配置されるように適合される、少なくとも1つのチャネルとを有する、ツール、スティフナに印加されるオートクレーブ圧力に反応するように、チャネル内部に配置されるように適合される、少なくとも1つの加圧可能なブラダ、外板をスティフナに対して圧密化するために、ツールの上にシールされるように適合される、真空バッグ、並びに、オートクレーブ圧力を使用してブラダを加圧するために、ブラダに連結されるマニフォールドシステム、を備え、このマニフォールドシステムは、真空バッグを貫通し、オートクレーブ圧力に晒される、通気管を含む。バッグは、再利用可能なバッグであってよく、フレームに取り付けられる。ブラダは、その一端に通気固定具を含み、マニフォールドシステムがこの通気固定具に連結される。マニフォールドシステムは、マニフォールドボックスを含み、通気管はマニフォールドボックスに設けられ、通気固定具と連結される。マニフォールドボックスは、真空バッグがツールの上にシールされる場合に真空バッグの下に位置してこれと接触する、上壁を含み、通気管は上壁を貫通する。装置は、真空バッグと通気管との間のシールをさらに含み得る。マニフォールドシステムと通気管とは、ツールの1つの側に沿って位置し、真空バッグは、通気管にシールされるように適合される。
【0006】
別の実施形態によれば、複数の複合材スティフナと複合材外板とをオートクレーブ硬化するための装置が提供される。この装置は、その上に複合材外板が配置されるように適合されるツールを備え、このツールは複数のチャネルを含み、各チャネルは、内部に複合材スティフナが配置されて外板と接触するように適合される。装置は、外板の上に配置され、外板をスティフナに対して圧密化するためのオートクレーブ圧力に晒されるように適合される、バッグをさらに備え、複数のブラダはそれぞれ、真空バッグを通じてスティフナに印加されるオートクレーブ圧力に反応するように、スティフナ内に配置されるように適合される。装置は、ツールチャネルの一端に沿って位置し、ブラダをオートクレーブ圧力に連結させるために、バッグの下に設けられる、マニフォールドシステムも含む。マニフォールドシステムは、バッグによって係合されるように適合された上壁を有するマニフォールドボックス、マニフォールドボックスの上壁とバッグとを貫通する通気管、及び、通気管をブラダ端部と連結するラインを含む。装置は、バッグを通気管に対してシールするための、通気管とバッグとの間のシール、フレーム、及び、ツールとフレームとの間のバッグ外周を締結するためのクランプをさらに備える。マニフォールドシステムは、シールされたバッグ外周の内側に位置する。各ブラダは細長く、その一端に通気固定具を含み、各通気固定具によって、マニフォールドシステムが解放可能に連結される。マニフォールドシステムは、端から端まで配置されて、各々が頂部を有する、複数のマニフォールドボックス、マニフォールドボックスの頂部とバッグとをそれぞれ貫通する複数の通気管を含む。通気管は、ブラダの端部と連結され、バッグにシールされる。
【0007】
さらに別の実施形態によれば、複合材スティフナと複合材外板とをオートクレーブ内で共硬化する方法が提供される。この方法は、未硬化のスティフナをツール上に配置すること、未硬化のスティフナ内にブラダをそれぞれ配置すること、ツールの上に未硬化の外板を、スティフナと接触させて配置すること、ブラダをマニフォールドに連結すること、ツールとマニフォールドとの上にバッグをシールすること、バッグを通じて、マニフォールドをオートクレーブ圧力まで通気すること、及び、マニフォールドを通じて、オートクレーブ圧力を使用してブラダを加圧することを含む。ブラダをマニフォールドに連結することは、ブラダの端部を、オートクレーブ圧力に晒される通気管に連結することを含む。バッグをシールすることは、バッグを通気管の周囲でシールすることを含む。ブラダをマニフォールドに連結することは、ブラダのうちの複数の端部を、通気管に連結することを含む。バッグをシールすることは、バッグとツールとの上に、フレームを配置すること、及び、フレームとツールとの間でバッグを締結することを含む。マニフォールドは複数のマニフォールドボックスを含み得、当該方法は、マニフォールドボックスを、ツール上に端から端まで、ブラダの一方の端部に沿って配置すること、及び、各マニフォールドボックスを複数のブラダと連結することをさらに含み得る。
【0008】
さらなる実施形態によれば、複合材部品に印加される圧力を、当該部品のオートクレーブ硬化中に、分配する方法が提供される。この方法は、複合材部品をツール上に配置すること、オートクレーブ圧力に反応するように、ブラダを当該部品内に配置すること、ツールの1つの側に沿って複数のマニフォールドボックスを配置すること、各マニフォールドボックスを、ブラダのうちの少なくとも1つに連結すること、ツールとマニフォールドボックスとの上に真空バッグをシールすること、及び、真空バックを通じて各マニフォールドボックスを通気することを含み、真空バッグを通じて各マニフォールドボックスを通気することは、通気管を真空バッグに貫通させることと、各通気管を真空バッグにシールすることとを含む。各マニフォールドボックスを、ブラダのうちの少なくとも1つに連結することは、マニフォールドラインをブラダ上の通気吸気口固定具に連結するための、クイックディスコネクトを使用することを含む。
【0009】
例示的な実施形態の特徴と考えられる新規の機能は、添付の特許請求の範囲に明記される。しかしながら、例示的な実施形態と、好ましい使用モードと、更にはその目的及び利点とは、添付図面を参照して、本開示の例示的な実施形態の後述の詳細な説明を読むことにより、最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】補強複合材外板の上面斜視図である。
図2図1に示す補強外板の底面斜視図であり、オートクレーブにおいて外板と共硬化されたスティフナが見えている。
図3図1及び2に示す外板を補強するために使用され得る、ハット型スティフナの斜視図である。
図4】ブレード型スティフナの一部分の図である。
図5】外板とスティフナとをオートクレーブ内で共硬化するための装置の機能ブロック図である。
図6図5に示す装置の一実施形態の上面斜視図である。
図7図6に示す装置の底面斜視図であるが、ツールおよびツール基部は明示するために図示していない。
図8図6の線8−8で切り取った断面図である。
図9図5〜8に示す装置の部分を形成するツールの上面斜視図である。
図10図5〜8に示す装置の底面斜視図であり、ツールも図示する。
図11図10に示す底部ツールの分解斜視図である。
図12図1及び2に示す外板を補強するために使用される、スティフナのアレイの斜視図である。
図13】オートクレーブ硬化中、図12に示すスティフナ内にそれぞれ配置される、ブラダのアレイの斜視図である。
図14図13に示すブラダの端面斜視図であり、ブラダ通気固定具が示されている。
図15】装置の斜視図であり、スティフナとブラダの位置が見えるよう、フレーム及び真空バッグは明示のために除去されている。
図16】マニフォールドシステムの部分を形成するマニフォールドボックスの1つの斜視図である。
図17図16の線17−17で切り取った断面図である。
図18図16と同様の図であるが、マニフォールドボックスのカバーを除去し、明示のために固定用の接続ホースを図示せずに示している。
図19図6の線19−19で切り取った断面図であり、明示のために固定具間の接続ホースは示していない。
図20】マニフォールドボックスの1つの一部分の等角図であり、通気管と、隣接する2つのマニフォールド固定具とを見せるために、カバーが除去されている。
図21】外板とスティフナとをオートクレーブ内で共硬化する方法のフロー図である。
図22】航空機の製造および保守方法のフロー図である。
図23】航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず図1及び2を参照すると、記載の実施形態は、外板30の底部側34と共硬化された複合材積層スティフナ32で補強される、繊維強化された複合材積層外板30を作製するための方法及び装置に関する。下記でより詳細に述べるように、外板30及びスティフナ32は、レイアップされて所望の形状に成形され、次いで、オートクレーブ(図1及び2に図示せず)内で共硬化される。スティフナリブと称することもあるスティフナ32は、既知の数種のタイプのいずれかであり得る。例えば、図3に示すように、スティフナ32は、ハット状セクション36と共硬化プロセス中に外板30の底部側34に取り付けられるフランジセクション38とを有する、ハット型スティフナ32であり得る。図4は、ブレードセクションもしくはウェブセクション40及びフランジセクション38を有する、ブレードスティフナ32と称される別のタイプのスティフナ32を示す。
【0012】
ここで図5を参照すると、外板30及びスティフナ32は、全体的に42で示す装置を使用して、オートクレーブ44内で共硬化され得る。装置42は、全体として、再利用可能な真空バッグ48がシールされ得るツール46を含む。ツール46はその中に、スティフナチャージと称されることがある、複数の未硬化の複合材スティフナ32を有するように構成される。ブラダ52は、オートクレーブ44及び真空バッグ48によって印加される圧密圧力に反応するように、各スティフナ32の内部に配置される。未硬化の複合材外板(図5には図示せず)は、未硬化のスティフナ32のフランジセクション38上を覆い且つこれに接触して、ツール46上に配置される。装置42に連結された真空システム63は、真空バッグ48を外板30に対して引き下げるように真空バッグ48内で真空引きし、硬化プロセス中に外板30をスティフナ32のフランジセクション38(図3及び4)に対して圧密化するために使用される。ブラダ52が倒壊しないよう、ブラダ52をオートクレーブ圧力まで通気するために、各ブラダ52にマニフォールドシステム54が連結47される。マニフォールドシステム54は、ツール46の1つの側65に沿って端から端まで、ブラダ52の端部からわずかに離間されて配列され得る、一又は複数のマニフォールドボックス57を含む。硬化サイクル中、各マニフォールドボックス57は真空バッグ48の下に位置し、ツール46の境界の外側のある位置で真空バッグ48を通って上方に伸びる、通気管56を含む。オートクレーブ44環境内へと伸びる通気管56により、オートクレーブ圧力がブラダ52に対して内側で印加されることができ、換言すれば、マニフォールドシステム54が、オートクレーブ44環境とブラダ52の内部容積との間の圧力を等しくする。
【0013】
ここで図6、7、8を参照すると、装置42のさらなる詳細が示されている。装置42は、広義には、再利用可能な真空バッグ48が取り付けられるフレームアセンブリ50を備える。真空バッグ48は、非限定的に、例えば、繰り返される圧密化サイクルと再利用に耐えられる、エラストマ又はその他の材料を含み得る。フレームアセンブリ50は、金属などの剛性材料で形成される、概して矩形の外側フレーム53、及び、外側フレーム53に取付けられるクロスフレーム部材51を備える。真空バッグ48は、外側フレーム53に取り付けられ、ツール46とマニフォールドシステム54との双方の全領域を覆う。
【0014】
フレームアセンブリ50は、外側フレーム53の外周に、ハンドル59及びクランプ58も含み得る。ハンドル59は、フレームアセンブリ50を真空バッグ48と共に手動で持ち上げて取り去ることを可能にし、これにより外板30とスティフナ32と(図6〜8には示さず)をロード及びアンロードできる。外側フレーム53は、フレームアセンブリ50がツール46の上に降下される(図5)場合、アセンブリの位置あわせを補助するための、ガイド62を備えてもよい。図8で最もよく見て取れるように、真空バッグ48は、ツール基部プレート68に対して、フレームアセンブリ50の部分を形成するクランププレート67で締結されるように適合される、平坦な外周縁64を含む。クランプ58の作動により、外側フレーム53をツール46に対してロードし、これによりクランププレート67を平坦な外周縁64に対してロードし、真空バッグ48とツール46との間に真空気密シールを作成する。
【0015】
通気管56は、真空バッグ48の1つの側65に沿って配置され、円形の通気管リングシール60によって画定される、真空バッグ48の開口部を通って、上方に伸びる。通気管リングシール60は、硬化サイクルに備えてフレームアセンブリ50がツール46上に降下されるとき、通気管56を摺動可能に受け、真空バッグ48と通気管56との間で、実質的に真空気密の外周シールを形成する。幾つかの実施形態で、通気管56を、真空バッグ48を穿通しないよう、下方に向けることが可能であり得る。真空バッグ48をツール46とマニフォールドボックス57とに対して引かせて、真空バッグ48を排気するために、真空バッグ48の内側を適切な真空システム63(図3)と連結するための一又は複数の真空ライン固定具66が設けられてもよい。
【0016】
図9、10a及び11は、図5に示すツール46の典型的な一形態のさらなる詳細を示す。ツール46は、ツールビレット70、及び、溶接又はその他の適切な技術でツールビレット70に取付けられる、下部のツール基部プレート68を含む。ツールビレット70は、金属などの中実の材料を含み得、この材料から、機械加工などによりチャネル74が形成され得る。各チャネル74は、スティフナ32のハット状セクション36のような、スティフナ32の一部に対応する断面形状を有する。ツールビレット70は、外板30と共にスティフナ32のフランジセクション38が置かれる、ツール上面72も有する。
【0017】
図10に示すように、ツール基部プレート68は、複数のツール基部プレート開口76を含み、図示の例でこれらは概して矩形の形状である。ツール基部プレート開口76は、ツールビレット70の底部側へのアクセスを可能にし、ツール46のより均質な加熱/冷却とともに、より素早く加熱及び冷却を行うために、ツールビレット70裏側周辺の空気循環を可能にする。ツール基部プレート68は、ツールビレット70に必要な剛性を与え、材料費やツール重量を削減するよう、より薄いツールビレット70を使用できるようにする。しかしながら、他の実施形態で、ツールビレット70が必要な剛性を備えるよう十分に厚い場合には、ツール基部プレート68が不要となることがある。図10では、真空ライン吸気口固定具66とツールビレット70の頂部とに連結されて、真空バッグ48の排気を可能にする、ツール基部プレート68を通る真空ライン78の配置も見て取れる。
【0018】
先述のように、予備成形された未硬化のスティフナ32が、硬化サイクルに備えて、ツールビレット70のチャネル74内に配置される。図1及び2に示す、補強外板30の場合、ツールビレット70は、図12に示すように、未硬化のスティフナ32のアレイがロードされる。図13は、これより前にツールビレット70のチャネル74内に置かれた未硬化のスティフナ32内にそれぞれ配置される、対応するブラダ52のアレイを示す。一般的に、ブラダ52は、未硬化のスティフナ32のものと実質的に一致する断面形状と長さとを有する。幾つかの応用例では、部品のアセンブリに応じて、個々のスティフナ32やブラダ52が、異なる断面形状及び/又は長さを有し得る。図14は、図2及び3に示すスティフナ32のハット状セクション36を形成するのに適した、概して正方形の断面形状を有するブラダ52の1つを示す。先述のように、ブラダ52は、一般的に可撓性、不浸透性の、弾性ラバーなどの材料で形成され得る。各ブラダ52は、ブラダ52をマニフォールドシステム54(図5)と解放可能に連結するように適合されるクイックディスコネクトを部分的に形成する、ブラダ通気固定具80を含む。
【0019】
図15は、ツール基部81上で支持されるツール46を示し、未硬化のスティフナ32がツールビレット70のチャネル74内にロードされ、ブラダ52がスティフナ32内に配置されている。各マニフォールドボックス57は、ブラダ通気固定具80(図14)に連結され、互いに連結され、及び、後述する送気管又はホース(図15では図示せず)によって通気管56に連結される、マニフォールド固定具82を含む。この図で見て取れるように、マニフォールド固定具82と通気管56とを含むマニフォールドボックス57は、ブラダ52の一端で、フレームアセンブリ50がツール46の上に設けられる場合には真空バッグ48の下方で、ツール46の1つの側に沿って位置する。
【0020】
ここで図16〜19を参照すると、マニフォールドボックス57の1つのさらなる詳細が示される。マニフォールドボックス57は、シート状金属などの任意好適な剛性材料で形成され、概して開かれた内部を有する。端から端まで配置される場合、マニフォールドボックス57の端壁90は、横並びに配置される。図16及び17で最もよく見て取れるように、マニフォールドボックス57は、実質的に平坦な上壁84と、外側の、傾斜した側壁88とを含む。上壁84は、通気管開口86を含み、これを通って通気管56が上壁84を越えて上方に伸びる。しかしながら、先述のように、通気管56は、マニフォールドボックス57の底部とツール基部81(図15)とを通って下方に伸びてもよく、これにより、真空バッグ48の穿通を回避する。上壁84及び傾斜した側壁88は、一体構成であってもよく、あるいは、別個の部分であって、作業員がマニフォールドボックス57の開かれた内部にアクセスできるようそれぞれ取り外し可能であってもよい。図18及び19に最もよく見て取れるように、マニフォールドボックス57は、長手方向に離間した複数の強化用リブ98をさらに含み得る。
【0021】
図17、19、及び20に最もよく見て取れるように、通気管56は、概して開かれた内部を有し、図20に示すように適切なホース又は送気管102によって固定具82に連結され得る固定具95を備える、通気管基部100に設けられる。図18及び19で見て取れるように、マニフォールドボックス57は、ツール46に面した側壁開口94を有し、これにより、固定具82を、クイックディスコネクト96を使用して、各ブラダ52の通気固定具80に連結させる。クイックディスコネクト96は、各マニフォールドボックス57の、ブラダ52からの連結解除を可能にする。連結解除されると、マニフォールドボックス57のうちの一又は複数は、マニフォールドシステム54を、硬化される特定の部品アセンブリに適応するよう再構成するために、必要に応じて取り外され得る。例えば、図1及び2に示す補強外板は、オートクレーブ圧力を対応するスティフナ32(図12)内に配置されたブラダ52(図13)に送達するために、端から端まで配置されたマニフォールドボックス57のうちの4つを用いる。補強外板30が、より少ない数のスティフナ32を要する(したがって、より少ないブラダ52を要する)場合、マニフォールドボックス57のうちの一又は複数は、単純にこれらをツール基部81(図15)から持ち上げ取り去るだけで、取り除かれ得る。
【0022】
上述の装置42は、図21に示す方法を使用して、外板30とスティフナ32とをオートクレーブ内で共硬化するために用いられ得る。開始ステップ104で、予備成形された、未硬化の複合材積層スティフナ32がツール46上に配置され、その後106で、ブラダ52がスティフナ32内に配置される。次いで108で、未硬化の複合材積層外板30が、ツール46の上に配置され、スティフナ32と接触させられる。ステップ110で、各ブラダ52は、ブラダ52にオートクレーブ圧力を供給可能なマニフォールドシステム54と連結される。次いで、ステップ112で、ツール46の上及びマニフォールドシステム54の上に、真空バッグ48がシールされる。通気管56は、真空バッグ48を貫通し、これにシールされる。ステップ114で、マニフォールドシステム54を使用して、ブラダ52が、真空バッグ48を通じてオートクレーブ圧力まで通気される。ステップ126で、ブラダ52が、通気管56を通じて送達されるオートクレーブ圧力を使用して加圧される。
【0023】
本願の実施形態は、潜在的に様々な用途、例えば、航空宇宙産業、海洋産業、自動車産業などとりわけ運輸業における用途、及び複合材部品のオートクレーブ硬化が利用され得るその他の用途に応用され得る。したがって、ここで図22及び23を参照すると、本願の実施形態は、図22に示す航空機の製造及び保守方法94、及び図23に示す航空機120に関して使用することが可能である。本明細書に記載の実施形態の航空産業への応用は、例えば、非限定的に、スティフナと補強外板との硬化を含み得、これらは非限定的に、ごく一部の例として、ビーム、スパー、ストリンガ、及び翼外板などを含み得る。製造前の段階では、例示的な方法118は、航空機120の仕様及び設計122と、材料調達124とを含み得る。製造段階では、航空機120のコンポーネント及びサブアセンブリの製造126とシステムインテグレーション128とが行われる。その後、航空機120は認可及び納品130を経て運航132に供される。顧客により運航される間に、航空機120は定期的な整備及び保守134(改造、再構成、改修なども含み得る)を受ける。
【0024】
方法118の工程の各々は、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実行され、又は実施され得る。本明細書の目的のために、システムインテグレータは、限定しないが、任意の数の航空機製造者、及び主要システムの下請業者を含むことができ、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含むことができ、オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などであり得る。
【0025】
図23に示すように、例示的な方法118によって製造された航空機120は、複数のシステム138及び内装140を有する機体136を含むことができる。高次システム138の例には、推進システム142、電気システム144、油圧システム146、および環境システム148のうちの一又は複数が含まれ得る。任意の数の他のシステムが含まれることもある。航空宇宙産業の例を示したが、本開示の原理は、海洋産業及び自動車産業などの他の産業にも適用しうる。
【0026】
本書で具現化されたシステム及び方法は、製造及び保守方法118の一又は複数の任意の段階において用いられ得る。例えば、製造プロセス126に対応するコンポーネント又はサブアセンブリは、航空機120の運航中に製造されるコンポーネント又はサブアセンブリに類似の方法で作製又は製造される。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせは、例えば、航空機120の組立てを実質的に効率化するか、又は航空機120のコストを削減することにより、製造段階126及び128で利用することができる。同様に、装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせのうちの一又は複数を、航空機120の運航中に、例えば限定しないが、整備及び保守34に利用することができる。
【0027】
種々の例示的な実施形態の説明は、例示及び説明を目的として提供されているものであり、網羅的な説明であること、又は開示された形態に実施形態を限定することを意図していない。当業者には、多数の修正例及び変形例が明らかであろう。さらに、種々の例示的な実施形態は、他の例示的な実施形態に照らして別の利点を提供することができる。選択された一又は複数の実施形態は、実施形態の原理、実際の用途を最もよく説明するため、及び、様々な実施形態の開示内容と考慮される特定の用途に適した様々な修正との理解を、他の当業者に対して促すために選択及び記述されている。
【0028】
本発明の代替的実施形態は以下のように特許請求され得る。
【0029】
A8.
複数の複合材スティフナと複合材外板とをオートクレーブ加工するための装置であって、
その上に複合材外板が配置されるように適合され、複数のツールチャネルを内部に含む、ツールであって、各ツールチャネルは、その内部に、複合材スティフナが外板と接触して配置されるように適合される、ツール、
外板の上に配置され、外板をスティフナに対して圧密化するためのオートクレーブ圧力に晒されるように適合される、バッグ、
バッグを通じてスティフナに印加されるオートクレーブ圧力と反応するように、スティフナ内に配置されるようにそれぞれ適合される、複数のブラダ、及び、
ブラダをオートクレーブ圧力と連結するために、ツールチャネルの一端に沿って位置し、バッグの下に設けられる、マニフォールドシステム
を備える、装置。
【0030】
A9.
マニフォールドシステムは、
バッグによって係合されるように適合された上壁を有する、マニフォールドボックス、
マニフォールドボックスの上壁とバッグとを貫通する通気管、及び、
通気管をブラダ端部と連結するライン
を含む、請求項A8に記載の装置。
【0031】
A10.
バッグを通気管に対してシールするための、通気管とバッグとの間のシール
をさらに備える、請求項A9に記載の装置。
【0032】
A11.
フレーム、及び、
ツールとフレームとの間のバッグ外周を締結するための、クランプ
をさらに備える、請求項A8に記載の装置。
【0033】
A12.
マニフォールドシステムはバッグ外周の内側に位置する、請求項A11に記載の装置。
【0034】
A13.
各ブラダは細長く、その一端に通気固定具を含み、
各通気固定具によって、マニフォールドシステムが解放可能に連結される、請求項A8に記載の装置。
【0035】
A14.
マニフォールドシステムは、
端から端まで配置され、各々が頂部を有する、複数のマニフォールドボックス
マニフォールドボックスの頂部とバッグとを各々が貫通する、複数の通気管
を含み、
通気管は、ブラダの端部に連結され、バッグにシールされる、
請求項A9に記載の装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23