特許第6181205号(P6181205)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181205
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】圧力スイッチ
(51)【国際特許分類】
   F16B 4/00 20060101AFI20170807BHJP
   H01H 35/34 20060101ALI20170807BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20170807BHJP
   F16J 3/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   F16B4/00 J
   H01H35/34 Q
   H01H35/34 M
   F16B7/04 301B
   F16J3/02 B
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-554508(P2015-554508)
(86)(22)【出願日】2014年11月5日
(86)【国際出願番号】JP2014005578
(87)【国際公開番号】WO2015097964
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2016年4月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-269109(P2013-269109)
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 理
(72)【発明者】
【氏名】濱邉 義弘
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−262203(JP,A)
【文献】 特開昭62−182596(JP,A)
【文献】 特開平10−160383(JP,A)
【文献】 特開平02−260331(JP,A)
【文献】 特開平10−104951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 4/00
F16B 7/04
F16J 3/02
H01H 35/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー部材に収容される圧力感知手段としてのダイヤフラムを有するとともに圧力源に連通するように形成されている圧力応動部材、前記ダイヤフラムの圧力感知により切り換え動作をするスイッチを有するマイクロスイッチ、および、前記圧力応動部材と前記マイクロスイッチとを保持するホルダ部材を備え、
前記ホルダ部材は、隔壁を有し、該隔壁を挟んで一方の側で前記マイクロスイッチを保持し、前記隔壁を挟んで他方の側で前記圧力応動部材をカシメ加工により保持し得るように形成され、
前記圧力応動部材を保持する前記ホルダ部材の前記隔壁の前記他方の側には、前記圧力応動部材を取り囲み、前記圧力源の圧力に対する耐圧性能を確保する程度の肉厚である下部環状側壁が形成され、該下部環状側壁の前記圧力応動部材を保持する環状のカシメ部には、前記下部環状側壁を貫通する法線方向に対して傾斜した溝が所定の間隔をおいて複数形成されていることを特徴とする圧力スイッチ
【請求項2】
カバー部材に収容される圧力感知手段としてのダイヤフラムを有するとともに圧力源に連通するように形成されている圧力応動部材、前記ダイヤフラムの圧力感知により切り換え動作をするスイッチを有するマイクロスイッチ、および、前記圧力応動部材と前記マイクロスイッチとを保持するホルダ部材を備え、
前記ホルダ部材は、隔壁を有し、該隔壁を挟んで一方の側で前記マイクロスイッチを保持し、前記隔壁を挟んで他方の側で前記圧力応動部材をカシメ加工により保持し得るように形成され、
前記圧力応動部材を保持する前記ホルダ部材の前記隔壁の前記他方の側には、前記圧力応動部材を取り囲み、前記圧力源の圧力に対する耐圧性能を確保する程度の肉厚である下部環状側壁が形成され、該下部環状側壁の前記圧力応動部材を保持する環状のカシメ部には、前記下部環状側壁の外径側もしくは内径側に設けられ、所定の間隔をおいて複数形成されている環状溝が形成されることを特徴とする圧力スイッチ
【請求項3】
前記下部環状側壁の複数の環状溝は、前記下部環状側壁の内径側に形成されていることを特徴とする請求項に記載の圧力スイッチ
【請求項4】
前記下部環状側壁の複数の環状溝は、前記下部環状側壁の外径側に形成されていることを特徴とする請求項に記載の圧力スイッチ
【請求項5】
前記下部環状側壁の複数の環状溝は、断面が三角形状であることを特徴とする請求項に記載の圧力スイッチ
【請求項6】
前記下部環状側壁の複数の環状溝は、断面が矩形状であることを特徴とする請求項に記載の圧力スイッチ
【請求項7】
カバー部材に収容される圧力感知手段としてのダイヤフラムを有するとともに圧力源に連通するように形成されている圧力応動部材、前記ダイヤフラムの圧力感知により切り換え動作をするスイッチを有するマイクロスイッチ、および前記圧力応動部材と前記マイクロスイッチとを保持するホルダ部材を備え、
前記ホルダ部材は、隔壁を有し、該隔壁を挟んで一方の側で前記マイクロスイッチを保持し、前記隔壁を挟んで他方の側で前記圧力応動部材をカシメ加工により保持し得るように形成され、
前記圧力応動部材を保持する前記ホルダ部材の前記隔壁の前記他方の側には、前記圧力応動部材を取り囲み、前記圧力源の圧力に対する耐圧性能を確保する程度の肉厚である下部環状側壁が形成され、該下部環状側壁の前記圧力応動部材を保持する環状のカシメ部には、前記下部環状側壁の厚さが方形状に薄くされた部分が所定の間隔をおいて複数形成されていることを特徴とする圧力スイッチ
【請求項8】
前記下部環状側壁の厚さが薄い部分が、前記下部環状側壁の内周側に形成されていることを特徴とする請求項に記載の圧力スイッチ
【請求項9】
前記下部環状側壁の厚さが薄い部分が、前記下部環状側壁の外周側に形成されていることを特徴とする請求項に記載の圧力スイッチ
【請求項10】
カバー部材に収容される圧力感知手段としてのダイヤフラムを有するとともに圧力源に連通するように形成されている圧力応動部材、前記ダイヤフラムの圧力感知により切り換え動作をするスイッチを有するマイクロスイッチ、および、前記圧力応動部材と前記マイクロスイッチとを保持するホルダ部材を備え、
前記ホルダ部材は、隔壁を有し、該隔壁を挟んで一方の側で前記マイクロスイッチをカシメ加工により保持し、前記隔壁を挟んで他方の側で前記圧力応動部材をカシメ加工により保持し得るように形成され、
前記圧力応動部材を保持する前記ホルダ部材の前記隔壁の前記他方の側には、前記圧力応動部材を取り囲み、前記圧力源の圧力に対する耐圧性能を確保する程度の肉厚である下部環状側壁が形成され、該下部環状側壁の前記圧力応動部材を保持する環状のカシメ部には、前記下部環状側壁を貫通する溝が所定の間隔をおいて複数形成され、
前記下部環状側壁は、前記隔壁の一方の側で前記マイクロスイッチをカシメ加工により保持する上部環状側壁より肉厚が厚いことを特徴とする圧力スイッチ。
【請求項11】
前記マイクロスイッチは、少なくとも1つの固定接点と弾性を有する支持アームに支持される可動接点とを有し、
前記圧力応動部材は、ダイヤフラムの変形に連動するシャフトを備え、
前記圧力応動部材の前記シャフトは、前記ホルダ部材の隔壁を貫通して前記マイクロスイッチの弾性を有する支持アームに当接し得るように形成されていることを特徴とする請求項乃至10のいずれか1項に記載される圧力スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力スイッチに関し、特に、高い耐圧性能を有する高圧用のカシメ構造を有する圧力スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
CO2機器用圧力スイッチや建機用圧力スイッチのような従来の高圧用の圧力スイッチは、特許文献1および2に示されるように、概略、スイッチケース、圧力応動部材およびホルダを備えている。スイッチケースは、圧力応動部材の圧力検知にともなって開閉する接点部を有する。圧力応動部材は、ダイヤフラムのような圧力感知部材、圧力感知部材の動きをスイッチケースの接点部に伝達するロッドおよび導圧パイプを介して圧力源に連通する感圧室を含んでいる。ホルダは、スイッチケースおよび圧力応動部材をカシメ加工により一体に連結し、これらを保持する。このような圧力スイッチにおいては、特に、高圧にさらされる圧力応動部材の保持において、非常に高い耐圧性能が要求される。高い耐圧性能を確保するために、圧力応動部材を保持するホルダの環状側壁の肉厚を増大させることが従来から普通に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−279875号公報
【特許文献2】特開平2−135636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耐圧性能を向上させるために、圧力応動部材に対応するホルダの環状側壁の肉厚を大きくすることは、例えば、ローラーカシメにより厚肉の環状側壁をカシメ加工する時、大きなカシメ荷重を必要とし、設備コストや製造スペースを増大させる。また、金型の磨耗が早くなり、製造コストを押し上げる。さらに、環状側壁は、カシメ加工により内側に向けて曲げられることになるため、環状側壁のカシメ部にしわが形成され、それにより、外観を損ねるばかりではなく、寸法精度の低下やメッキ割れ、カシメ不足などの品質の低下を招く恐れがある。
【0005】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、カシメ加工時における大きなカシメ荷重を必要とすることがなくカシメ加工が容易であり、しわの発生を防止することが可能であるとともに、耐圧性能に優れた高圧用のカシメ構造体を有する圧力スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧力スイッチは、また、カバー部材に収容される圧力感知手段としてのダイヤフラムを有するとともに圧力源に連通するように形成されている圧力応動部材、ダイヤフラムの圧力感知により切り換え動作をするスイッチを有するマイクロスイッチ、および圧力応動部材とマイクロスイッチとを保持するホルダ部材を備え、該ホルダ部材は、隔壁を有し、該隔壁を挟んで一方の側でマイクロスイッチをカシメ加工により保持し、隔壁を挟んで他方の側で圧力応動部材をカシメ加工により保持し得るように形成され、圧力応動部材を保持するホルダ部材の隔壁の他方の側には、圧力応動部材を取り囲み、圧力源の圧力に対する耐圧性能を確保する程度の肉厚である下部環状側壁が形成され、該下部環状側壁の圧力応動部材を保持する環状のカシメ部には、溝が所定の間隔をおいて複数形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、圧力スイッチを構成するホルダ部材の下部環状側壁に形成される溝は、該下部環状側壁を法線方向に対して傾斜して形成されていてもよく、また、環状側壁に形成された溝は、該環状側壁の外径側もしくは内径側に設けられ、所定の間隔をおいて複数形成されている環状溝であってもよく、また、下部環状側壁は、隔壁の一方の側でマイクロスイッチをカシメ加工により保持する上部環状側壁より肉厚が厚いものとしてもよい。
【0010】
本発明に係る圧力スイッチは、また、該圧力スイッチを構成するホルダの下部環状側壁に形成される溝に代えて方形状の薄肉部分が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記構成を備えることで、カシメ加工によるカシメ部の塑性変形時の変形代が溝に逃げるため、加工時の抵抗が少なく、低い荷重でカシメ部のカシメ加工が可能となるとともに、しわも発生しにくい。
【0012】
また、溝を形成することでカシメ部のカシメ工具との接触面積が小さくなるとともに円周方向の抵抗が低減されるため、同じカシメ荷重でもカシメ部に作用する荷重が大きくなるので、結果として、低い荷重でのカシメ加工が可能となる。言い換えれば、同じカシメ荷重であれば、より肉厚のカシメ部をカシメ加工することが可能となり、耐圧構造が要求される高圧用の圧力スイッチに製造に有利である。
【0013】
さらに、ローラーカシメのようにカシメ工具とホルダ部材が相対的に回転する場合、溝を回転方向に合わせて傾斜させることで、より低い荷重でのカシメ加工が可能となる。
【0014】
また、本発明に係る高圧用圧力スイッチは、1つのホルダ部材で2つの部材(スイッチケースと圧力応動部材)をカシメ加工で保持するように構成されているので部品点数が少なくてすみ、構造が簡単で製造が容易であるので製造コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明に係る圧力スイッチの1つの実施形態としての圧力スイッチ全体の断面図である。
図1B図1Aの円IB内の部分拡大断面図である。
図1C図1Aの円IC内の部分拡大断面図である。
図2図1Aの圧力スイッチの斜視図である。
図3図1Aの圧力スイッチの断面斜視図である。
図4】本発明に係る圧力スイッチとしての圧力スイッチの別の実施形態の斜視図である。
図5図4の圧力スイッチの断面斜視図である。
図6A】本発明に係る圧力スイッチとしての圧力スイッチのさらに別の実施形態であって、外抜きタイプのカシメ構造体の部分断面斜視図である。
図6B】本発明に係る圧力スイッチとしての圧力スイッチのさらに別の実施形態であって、内抜きタイプのカシメ構造体の部分断面斜視図である。
図7】本発明に係る圧力スイッチのさらに別の実施形態としての圧力スイッチのホルダ部材であって、内径側に断面が三角形状の複数の環状溝加工を設けたホルダ部材の断面図である。
図8図7に示すホルダ部材のカシメ構造体をかしめた状態を示す断面図である。
図9】本発明に係る圧力スイッチのさらに別の実施形態としての圧力スイッチのホルダ部材であって、内径側に断面が矩形状の複数の環状溝加工を設けたホルダ部材の断面図である。
図10】本発明に係る圧力スイッチのさらに別の実施形態としての圧力スイッチのホルダ部材であって、外径側に断面が三角形状の複数の環状溝加工を設けたホルダ部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1A〜10を用いて本発明に係る圧力スイッチが適用されている高圧用の圧力スイッチの好ましい実施形態について説明する。
【0017】
本発明に係る高圧用の圧力スイッチ10の代表的な実施形態が図1A〜1Cに示されている。本実施形態に係る圧力スイッチ10は、概略、マイクロスイッチ20、圧力応動部材30およびホルダ部材40を備えている。
【0018】
マイクロスイッチ20は、電気絶縁性の合成樹脂からなり、円筒状のスイッチケース21およびガイド板22を有し、図1Aにおいて上方に向かって開放する、概略有底筒状の筐体として形成されている。マイクロスイッチ20の筐体内部に可動接点23および固定接点24を有するスイッチ25が設けられている。可動接点23は、弾性を有する支持アーム28を介して、スイッチケース21に沿って設けられる第1の接続端子26に接続され、固定接点24は、第1の接続端子26に対向してスイッチケース21に沿って設けられている第2の接続端子27に直接接続されている。本実施形態では、可動接点23と固定接点24は、両接点23、24が可動接点23を支持する支持アーム28の弾性により常に接触した状態を維持するように、したがって、スイッチ25が常に閉じた状態を維持するように、上下方向に対向して配置されている。支持アーム28は、後述する圧力応動部材30を構成するシャフト31の上端に当接し得るように配置され、図1Aにおいて、該シャフト31の上方への移動によりスイッチ25を開くことができる。シャフト31は、図1Aにおいて、ガイド部材としてのガイド板22に形成されている貫通孔22a内に上下動可能に配置される。スイッチ25は、例えば、第1および第2の接続端子26および27を介して接続される制御回路などの電気回路に、スイッチ25の開閉に伴う電流のオン・オフ信号を伝達する。なお、スイッチ25は、本実施形態のように、常閉型に限定されるものではなく、常開型であってもよいし、あるいは、1つの可動接点と2つの固定接点を備えて可動接点を一方の固定接点から他方の固定接点に切り換えるタイプであってもよい。
【0019】
圧力応動部材30は、圧力を感知して上記マイクロスイッチ20内に設けられたスイッチ25をオン・オフする部材であって、シャフト31、ダイヤフラム32、感圧室34を有するカバー部材33および導圧パイプ35を備えている。シャフト31は、圧力感知手段としてのダイヤフラム32の変形(反転)を支持アーム28に伝え、スイッチ25を開閉することができるように配置されている。シャフト31は、図1Aに示されるように、圧力応動部材30のダイヤフラム32から、カバー部材33を構成する上カバー36に設けられている貫通孔33a、隔壁41に設けられている貫通孔41a、ガイド板22を貫通する貫通孔22aを通って、マイクロスイッチ20内に延在している。シャフト31は、シャフト31が上方に移動したとき、該シャフト31の上端が、弾性を有する支持アーム28に当接し得るように、また、シャフト31の下端が、ダイヤフラム32の変形に連動し得るように、その長さが設定される。
【0020】
圧力感知手段としてのダイヤフラム32は、本実施形態では、これに限定されるものではないが、金属薄板の積層体として形成されている。ダイヤフラム32は、該ダイヤフラム32の上面がシャフト31に当接し、下面が後述する感圧室34に面するように、カバー部材33内に収容され、保持される。ダイヤフラム32は、図1Aに示されるように、感圧室34に向って突出するように配置されることが好ましい。それにより、圧力を感知したときのダイヤフラム32の変形量が大きく取れ、スイッチ25の開閉が確実になる。
【0021】
圧力応動部材30を構成するカバー部材33は、本実施形態では、上カバー36および下カバー37を備え、上下のカバー36および37は、それらの間にダイヤフラム32を挟み、該ダイヤフラム32とともに溶接部38で溶接され、互いに固定される。カバー部材33を構成する下カバー37とダイヤフラム32との間に圧力源に連通する感圧室34が形成される。したがって、感圧室34は、ダイヤフラム32と下カバー37とで画定されるとともに、周囲環境に対して気密性を要求される。カバー部材33を構成する上カバー36には、上述したように、ダイヤフラム32の変形に連動するシャフト31が通り抜ける貫通孔33aが形成される。カバー部材33内に形成される感圧室34は、該カバー部材33を構成する下カバー37に予めろう付で接合されている導圧パイプ35を介して圧力源に連通する。なお、本実施形態では、感圧室34が特に高圧の圧力源に連通しているため、ダイヤフラム32は、上述したように、感圧室34が外部に対して気密性を確実に保つ必要がある。したがって、図1Aに示される本実施形態のように、ダイヤグラム32を挟む上下のカバー36および37とともに溶接部38で溶接され、カバー部材33内に保持されることが好ましい。
【0022】
このように圧力応動部材30を構成することで、ダイヤフラム32が感圧室34の流体の圧力を感知して変形(反転)すると、シャフト31が上方に移動し、シャフト31の上端が可動接点23に接続される弾性を有する支持アーム28に当接する。それにより、可動接点23は、固定接点24から離れ、したがって、スイッチ25が開かれる。
【0023】
ホルダ部材40は、金属製であり、耐圧構造を要求される圧力応動部材30を確実に保持するとともに、該圧力応動部材30とマイクロスイッチ20とを一体的に保持する部材である。本実施形態におけるホルダ部材40は、2つの部材を保持し得るように、具体的には、その上方でマイクロスイッチ20を、その下方で圧力応動部材30をカシメ加工により保持し得るように、構成されている。
【0024】
本実施形態においては、ホルダ部材40は、隔壁41、隔壁41の上方に設けられている上部環状側壁42および隔壁41の下方に設けられている下部環状側壁43を備えている。隔壁41には、圧力応動部材30のシャフト31が通り抜けるための貫通孔41aが形成されている。また、隔壁41の一方の側である上側に設けられている上部環状側壁42は、その上部自由端に、第1の被カシメ部材としてのマイクロスイッチ20を保持する薄肉のマイクロスイッチ・カシメ部42aを備えている。さらに、隔壁41の他方の側である下側に設けられている下部環状側壁43は、その下部自由端に、第2の被カシメ部材としての圧力応動部材を保持する厚肉の圧力応動部材カシメ部43aを備えている。
【0025】
圧力スイッチ10の組み立てに際し、第1の被カシメ部材であるマイクロスイッチ20は、ホルダ部材40の隔壁41の上に配置され、それにより、上部環状側壁42によりマイクロスイッチ20の下部外周が取り囲まれる。続いて、図1Bに示されるように、上部環状側壁42の自由端の薄肉のマイクロスイッチ・カシメ部42aがマイクロスイッチ20の下部外周に対してカシメ加工されることで、第1の被カシメ部材であるマイクロスイッチ20がホルダ部材40に固定される。
【0026】
同様に、第2の被カシメ部材としての圧力応動部材30は、ホルダ部材40の隔壁41の下に配置され、下部環状側壁43により扁平なカバー部材33全体が取り囲まれる。したがって、図1Cに示されるように、下部環状側壁43の厚肉の圧力応動部材カシメ部43aがカバー部材33の下カバー37に対してカシメ加工されることで、第2の被カシメ部材である圧力応動部材30は、ホルダ部材40にしっかりと固定される。このような説明から理解されるように、本実施形態において、ホルダ部材40は、第1または第2の被カシメ部材としてのマイクロスイッチ20または圧力応動部材30をカシメ加工により保持するカシメ部材であるといえる。したがって、本実施形態では、マイクロスイッチ20または圧力応動部材30とホルダ部材40とが、カシメ構造体を構成しているといえる。なお、本実施形態では、マイクロスイッチ20がホルダ部材40にカシメ加工されるものとしたが、これには限定されず、マイクロスイッチ20が圧入や接着材によりホルダ部材40に固定されるものとしてもよい。
【0027】
本実施形態では、耐圧性を要求される圧力応動部材30をホルダ部材40が確実に保持することができるとともに、ホルダ部材40のカシメ加工が容易にできるようにするために、ホルダ部材40の下部環状側壁43に対し本発明に係る工夫が加えられている。なお、本実施形態では、下部環状側壁43の圧力応動部材30を保持する厚肉の圧力応動部材カシメ部43aは、ローラーにより塑性変形し、カシメ加工されることが好ましい。また、本実施形態では、圧力応動部材カシメ部43aの肉厚は、厚肉であるとしているが、被カシメ部材としての圧力応動部材30の連通する圧力源の圧力が小さく、したがって、要求される気密性が小さいのであれば、薄肉であってもよい。
【0028】
図2及び図3には、本発明に係る圧力スイッチが適用されている圧力スイッチの下部環状側壁43の第1の実施形態が示されている。図2及び図3に示されるように、下部環状側壁43の下方に位置し、カシメ加工により変形させられる厚肉のカシメ部43aには、カシメ加工される前の状態で、下部環状側壁43を半径方向内側から外側(または外側から内側)に向って貫通する溝44が形成されている。このように溝44を所定の間隔で複数形成することにより、カシメ部43aがカシメ工具としてのローラーでカシメ加工されるとき、変形代が溝44内に逃げることができるため、カシメ加工時におけるカシメ部43aの抵抗が小さくなる。したがって、ローラーによりカシメ部43aに加えられるカシメ荷重が小さくてすみ、カシメ加工が容易に且つ迅速に行える。言い換えれば、同じカシメ荷重で加工するのであれば、下部環状側壁43の壁厚を従来のものより肉厚にすることができるので、ホルダ部材40による圧力応動部材30の保持をより耐圧構造とすることができる。変形代が溝44内に逃げることができることにより、また、しわが発生する確率が小さくなり、外観をきれいに保つとともに、カバー部材33の下カバー37をしっかりと均一に押圧し、耐圧性を要求される圧力応動部材30を確実に保持することができる。さらに、溝44が形成されていることで、カシメ工具としてのローラーが接触するカシメ部43aとの接触面積が小さくなり、したがって、カシメ部43aに作用する荷重が大きくなり、耐圧構造を要求される圧力応動部材30を保持することに対して有利である。
【0029】
本発明を特徴付ける溝44の形成は、図2及び図3に示される実施形態においては、下部環状側壁43を半径方向に真っ直ぐに突き抜けるように形成されている。しかしながら、該溝44の形成は、このような構造に限定されるものではなく、図4及び図5に示されるように、圧力スイッチ10aのホルダ部材40の下部環状側壁43を半径方向に対して若干傾斜して貫通するように溝44aが形成されていてもよい。このように溝44aを形成することで、カシメ工具がローラーであり、ローラーと下部環状側壁43のカシメ部43aが相対的に回転する場合、溝44の傾斜方向と回転方向を合わせることで、カシメ加工が容易に且つ迅速に行えることが理解されるであろう。
【0030】
さらに、本発明に係る溝44の形成は、図6Aまたは6Bに示されるように、図2及び図3に示される溝44が、下部環状側壁43を完全に貫通していなくてもよい。すなわち、図6Aに示されるように、下部環状側壁43の外側から壁を一部削り取られたような外抜きタイプの薄肉部分44bとして形成されてもよい。あるいは、図6Bに示されるように、下部環状側壁43の内側から壁を一部削り取られたような内抜きタイプの薄肉部分44bとして形成されてもよい。このような薄肉部分44bも、溝44と同様に一定の間隔で下部環状側壁43に複数形成される。このような薄肉部分44bを形成することでも、上記溝44を形成したホルダ40と同様にカシメ加工を容易に且つ迅速に行うことが可能となるとともに、その他の作用効果も同様に期待することができる。
【0031】
さらに、図7に示すホルダ部材140のように、溝の形状として、下部環状側壁143の内径側に断面が三角形状の複数の環状溝144を設けるものとしてもよい。このような形状を設けることにより、図8に示すように、圧力応動部材30を容易に且つ迅速にカシメ加工を行うことが可能となる。環状溝144は、旋盤による中ぐり加工などにより加工される。また、環状溝144の深さは、下部環状側壁143の最薄部がカシメ加工を行うカシメ工具の圧力に合うように調整される。
【0032】
また、環状溝144を複数設けることにより、ダイヤフラム32の枚数の変更などの被カシメ部材である圧力応動部材30の部品構成の変更や、バラツキが生じた場合においても、それぞれの構成に合わせてカシメの曲げ支点となる環状溝144が変わることとなり、ホルダ部材140を変更することなく、容易にカシメ加工を行うことができる。
【0033】
また、さらに、溝の形状として、図9に示すホルダ部材240のように、下部環状側壁243の内径側に断面が矩形状の複数の環状溝244を設けるものとしてもよいし、図10に示すホルダ部材340のように、厚肉の下部環状側壁343の外径側に断面が三角形状の複数の環状溝344を設けるものとしてもよい。このような環状溝244及び環状溝344を形成することによっても、上記環状溝144を形成したホルダ部材140と同様にカシメ加工を容易に且つ迅速に行うことが可能となるとともに、その他の作用効果も同様に期待することができる。
【0034】
なお、下部環状側壁143の内径側、あるいは、外径側に形成される環状溝の断面形状としては、図7乃至図10に示す形状の他にねじ山として使用される形状であれば、全て適応可能である。例えば、三角ねじ、角ねじ、台形ねじ、電球ねじなどの形状は適用可能である。また、図7図8に示すように、断面形状が三角形状の場合には曲げの支点がある形状となり、図9に示すように、断面が矩形状の場合には応力集中しすぎずかつ曲げの支点が薄肉部となる形状となる。カシメ加工のしやすさの点から、図7図8に示すような断面形状が三角形状の環状溝が望ましいが、この形状には限定されない。また、本実施形態のように、環状溝は平行に形成されていることが好ましいが、ねじのように螺旋上に溝が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 圧力スイッチ
20 マイクロスイッチ
25 スイッチ
30 圧力応動部材
32 ダイヤフラム
33 カバー部材
34 感圧室
35 導圧パイプ
36 上カバー
37 下カバー
40 ホルダ部材
41 隔壁
42 上部環状側壁
42a マイクロスイッチ・カシメ部
43 下部環状側壁
43a 圧力応動部材カシメ部
44、44a、144、244、344 溝
44b 薄肉部分
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10