(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181208
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】人工物及び不要シグナルを除去する磁気共鳴画像法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20170807BHJP
A61B 5/05 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
A61B5/05 311
A61B5/05ZDM
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-555940(P2015-555940)
(86)(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公表番号】特表2016-504958(P2016-504958A)
(43)【公表日】2016年2月18日
(86)【国際出願番号】KR2014004765
(87)【国際公開番号】WO2015102169
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2015年3月31日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0167785
(32)【優先日】2013年12月30日
(33)【優先権主張国】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会名:先進MR/小動物MR/MR工学年次会合(Advanced MR/Small Animal MR/MR Engineering Annual Meeting) 開催年月日:2013年11月29日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514140698
【氏名又は名称】カチョン ユニバーシティ オブ インダストリー−アカデミック コーオペレイション ファウンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ジュン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒョン ウク
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−196432(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0257672(US,A1)
【文献】
高原太郎 監修,第3版 MRI応用自在,株式会社メジカルビュー社,2013年 9月20日,pp.132-133
【文献】
R. Scheidegger et al,Amide Proton Transfer Imaging with Improved Robustness to Magnetic Field Inhomogeneity,Proceedings of ISMRM-ESMRMB Joint Annual Meeting 2010,2010年 5月,5142_1615
【文献】
M. Obara et al,Optimization of motion sensitized driven equilibrium (MSDE) preparation scheme for multi contrast 3D vessel wall imaging at 3.0T,Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 16,2008年 5月,2842
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging、MRI)システムを用いたMRI法であって、前記MRI法は、オフ共鳴高周波(Radio frequency、RF)パルスとして、第1オフ共鳴RFパルス及び第2オフ共鳴RFパルスからなる2つのオフ共鳴RFパルスのみを印加するものであり、
前記第1オフ共鳴RFパルスを印加する段階;
前記第1オフ共鳴RFパルスによって発生する主磁場の不均一を相殺するために、前記第1オフ共鳴RFパルスから180度の位相差を持ち、かつ前記第1オフ共鳴RFパルスと同じパワーの前記第2オフ共鳴RFパルスを印加する段階;及び
前記第1及び第2オフ共鳴RFパルスを印加することによって発生する主磁場の不均一を相殺するための1つ以上の補助傾斜磁場を印加する段階を含み、
前記1つ以上の補助傾斜磁場を印加する段階は、前記1つ以上の補助傾斜磁場の合計が0になるように、
1つ以上の補助傾斜磁場の組み合わせを調節する段階;及び
1つ以上の補助傾斜磁場の符号を変更する段階を含み、
少なくとも1つの補助傾斜磁場が、前記第1オフ共鳴RFパルスの印加前に印加され、かつ、少なくとも1つの補助傾斜磁場が、前記第1オフ共鳴RFパルスの印加から前記第2オフ共鳴RFパルスの印加までの間に印加されるMRI法。
【請求項2】
前記1つ以上の補助傾斜磁場の符号を変更する段階において、
前記1つ以上の補助傾斜磁場の第1補助傾斜磁場の符号が、プラス(+)である請求項1に記載のMRI法。
【請求項3】
前記1つ以上の補助傾斜磁場の符号を変更する段階において、
前記1つ以上の補助傾斜磁場の第1補助傾斜磁場の符号が、マイナス(−)である請求項1に記載のMRI法。
【請求項4】
スポイラー傾斜磁場を印加する段階をさらに含む請求項1に記載のMRI法。
【請求項5】
前記1つ以上の補助傾斜磁場の印加後に、脂肪抑制法(Fat saturation method)、磁化移動法、T1rho画像法及び化学交換飽和移動法(Chemical exchange saturation transfer、CEST)の少なくとも1つのパルスシークエンスを印加する段階をさらに含む請求項1に記載のMRI法。
【請求項6】
前記第1オフ共鳴RFパルスの印加前に、空間的前飽和RFパルス(Spatial Pre−Saturation RF Pulse)を印加する段階をさらに含む請求項1に記載のMRI法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging、MRI)システムを行う画像法に関するもので、より具体的に、MRIシステムにおいて、オフ共鳴高周波数(Radio frequency、RF)パルスを使用する脂肪飽和(抑制)、磁化移動(Magnetization transfer、MT)及び化学交換飽和移動法において、主磁場の不均一に敏感に反応することで発生する人工物の除去を可能にし、前記オフ共鳴RFパルスと、空間的前飽和RFパルスを同時に使用する場合、オフ共鳴RFパルスによって発生する不要シグナルの除去を可能にする画像法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像診断装置には、X線装置、コンピュータ断層撮影(Computed Tomography、CT)装置、超音波装置、RI画像装置、MRI装置などの様々な種類があり、その中で、前記MRI装置は、他の画像診断装置に比べ、人体に害がなく、人体内部の構成物質の特徴を画像化するため、臨床診断において最も重要な測定装置である。
【0003】
前記MRI装置は、体内におけるユニークな情報であるスピン密度、T1、T2、化学シフト、磁化移動、化学交換飽和移動、血流及びスペクトロスコピーなどの組織パラメーターを得ることができ、これらのパラメーターを通じて様々な生体画像を得ることができる。しかし、生体組織では脂肪と水が共存するため、MRI装置で脂肪と水を相互から正確に分離した画像を得ることは非常に困難である。脂肪と水は、T1及びT2の緩和時間の差を生じさせ、MRIシグナルの敏感度による既存のMRI画像法では、不適切なコントラスト又は化学シフトにより人工物が発生する。特に、脂肪及び水成分による化学シフト現象が存在するため、脂肪に取り囲まれた組織周辺帯の詳細な解剖学的形態を得ることができない。
【0004】
このような問題を解決するために、周波数選択的な高周波(RF)パルスを用いて脂肪と水を選択的に励起させる方法が、最も一般的に使用されている。
図1及び2は、オフ共鳴RFパルスを使用した脂肪飽和(抑制)方法の原理を説明する図である。
【0005】
化学シフトの単位は、ppm(parts per million)で表し、相対的な数値で測定される。水分子は、4.7ppmの化学シフトを持ち、脂肪分子は、1.2ppmの化学シフトを持つため、水分子と脂肪分子では、3.5ppmの違いがある(
図1)。この場合、外部磁場が1.5テスラ(共鳴周波数64MHz)である場合、f=(64MHz)×(3.5ppm)に相応する220MHzの周波数差が生じる。すなわち、水分子の1Hは、より大きい化学シフトを持ち、脂肪分子の1Hより大きい最小の有効磁場を経験するため、高い周波数持つ。
【0006】
化学シフト選択的な画像シークエンス(Chemical Shift Selective Imaging Sequence、CHESS)法は、前記RFパルスを使用して、ある特定の周波数のシグナルを一方的に抑制する方法である。この方法で使用するRFパルスは、測定組織に対して特定の周波数のみを持つため、周波数RFパルスを与え、水又は脂肪だけを選択的に励起させることから、1つの成分だけを持つシグナルを得ることができる。
【0007】
脂肪の共鳴周波数による飽和RFパルスを選択的に印加するCHESS法を、
図2を参考にして説明する。水又は脂肪の磁化が選択的に励起されてX−Yの平面に置かれると、スポイラー傾斜が印加され、脂肪磁化のX−Y成分が分散されるため、脂肪の磁化シグナルが効果的に除去される。次の画像RFパルスは、水の磁化シグナルだけに影響を及ぼすため、得られた画像には水の磁化シグナルだけが生成される。
【0008】
図3は、脂肪抑制方法で一般的に使用される準備パルスシークエンスを示す。
図3に示すように、脂肪を選択的に励起させるために、極小周波数帯域のRFパルス310が印加され、リワインダ320及びスポイラー330傾斜が、位相回復及び脂肪磁化の分散のために用いられる。
【0009】
しかし、脂肪抑制方法において、脂肪抑制の程度が、局所部位で主磁場(B0)の不均一によって異なって現れ、主磁場の中心から離れた区域では検査の際に不均一な脂肪抑制が起こり得る。
【0010】
他の解決法として用いられるDixon法は、水と脂肪分子間の歳差運動周波数の差によるパルスを使用して2つの異なる画像を得て、2つの画像を足し算及び引き算することで、脂肪を抑制する方法であり、2つの画像を再構成する後処理過程のために長時間を要する。さらに、この方法も、脂肪抑制の程度が、主磁場の不均一によって異なって現れる。従って、既存の脂肪抑制方法は、均一の画像を得るのに大きく制限される。
【0011】
IDEAL(iterative decomposition of water and fat with the echo asymmetry and least squares estimation)法の基本原理は、主に水と脂肪間の位相差によるシグナルを相互から分離することである。この方法は、従来用いられた2−point Dixon法を3−point Dixon法に変形したもので、3つの位相差(水−脂肪の位相シフト−π/6、π/2及び 7π/6)における各エコーを脂肪と水間の共鳴周波数の差による位相差を用いて取得し、脂肪シグナルと水シグナルは、エコーに基づいた再構成アルゴリズムによって相互から分離され、独立的な水と脂肪抑制画像を生成する。すなわち、前記各エコーは、エコー時間(TE)当たりの3つの位相差により得られ、水のみの画像、脂肪のみの画像、in−phase画像及びout of phase画像などの4つの画像が、各エコーに基づいた再構成アルゴリズムによって再構成される。IDEAL法において、前記画像は、3つの励起を行うことで得られたシグナルに基づいて再構成されるため、シグナル対ノイズの比率が上昇する。しかし、IDEAL法において、画像のテスト時間及び再構成時間が、既存の脂肪抑制方法に比べて、より長くなる。さらに、IDEAL法もDixon法に基づいており、人体の各部位の脂肪抑制の程度が、主磁場の不均一によって異なって現れる。
【0012】
磁化移動(MT)とは、制限された動きを持つ水の水素原子核から、多自由度を持って動く水の水素原子核への縦磁化移動を意味する。制限された動きを持つ水は、一般的に、一連の水素結合を通じて高分子に結合すると考えられる。飽和した拘束スピンは、小さい周波数帯域を持つオフ共鳴RFパルスを使用して励起されるため、遊離水スピンとの相互作用によりネルギーを交換する。磁化移動の効果は、関節軟骨、隣接した関節滑液、炎症がある滑液などの分類に用いられる。前述のような磁化移動における物理的モデルは、磁化移動コントラスト(MTC)画像の長所を用いた技術的発展として評価される。磁化移動コントラスト(MTC)画像は、連続的な波動を持つオフ共鳴RFパルスを放射して、部分的に制限されたプールで共鳴RFパルスを飽和させることによって得られたコントラストを高める画像である(
図4)。
【0013】
図5は、磁場移動で一般的に用いられるRFパルス及び傾斜磁場の例を示す。小さい周波数帯域を持つオフ共鳴RFパルス510とスポイラー傾斜530が使用され、スポイラー傾斜530の電荷、スポイラー傾斜530の大きさ及びスポイラー傾斜530が印加された軸が、実験値によって決定される。しかし、一般的に、磁化移動で使用される画像法におけるスポイラー傾斜の影響は大きくない。
【0014】
オフ共鳴RFパルスは、磁化移動法でも使用されるため、主磁場の不均一によって生成される人工物に対する後処理過程が必要である。
化学交換飽和移動(Chemical Exchange Saturation Transfer、CEST)として知られている新技術は、MR分子画像のための重要な新しい手法を提供することができる。CESTでは、異なる分子の陽子から発生する異なるシグナルを解決するために、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)の可能性を利用する方法である。特定の陽子シグナルの選択的な飽和によって(特定の分子又はCEST製剤に関する)、周辺の水分子との交換が生じ、周辺のバルク水分子からのMRIシグナルも減少させる。RF飽和パルスの存在及び不在の状態で得られた画像は、CEST製剤の位置を示すことができる。前記化学交換は、バルク水シグナルを効果的に飽和させるのに十分に速く交換が発生する場所で、しかし、交換可能な陽子と水陽子の共鳴の間に化学シフトの違いが十分に遅く生じる場所の中間時点でなければならない。CEST効果の大きさは、交換率と交換可能な陽子の数の両者に依存する。
【0015】
前記CEST法は、伝統的な分子画像技術に比べ、長所を持つ。画像コントラストは、高周波(RF)パルスにより制御され、随意にON/OFFを調節することができる。目的の内在性分子、場合によっては、目的の分子に特異的に反応したり移動させるコントラスト剤を必要とせずに直接的に検出することができる。
【0016】
図6を参考すると、CEST画像法において磁化移動画像法が2度使用されることが分かる。小さい周波数帯域を持つ2つのオフ共鳴RFパルスは、反対符号を持つ周波数で使用され、シグナルを得る。飽和した拘束スピンは、各周波数で励起され、遊離水スピンと相互作用することによってエネルギーを交換し、化学移動量は、これらのシグナル間の比率に基づいて算出される。
【0017】
前記CEST法において、
図7に示すように、RFパルス710とスポイラー傾斜730が使用され、スポイラー傾斜730の符号、スポイラー傾斜730の大きさ及びスポイラー傾斜730が使用される軸が、実験値によって決定される。しかし、一般的に、CEST法で使用されるスポイラー傾斜の影響は、磁化移動で用いられる画像法におけるスポイラー傾斜の影響と同様に、大きくない。
【0018】
さらに、CEST法において磁化移動法が使用されるため、オフ共鳴RFパルスを使用しなければならない。前記オフ共鳴RFパルスを使用する場合、主磁場の不均一によって発生する人工物を除去するための後処理過程が必要である。
【0019】
図8は、オフ共鳴RFパルス及び前飽和RFパルスを用いた画像で使用されるパルスシークエンスを示す。
このような映像法において、
図8に示すように、前飽和RFパルス805が、オフ共鳴RFパルス810が印加される前に使用される。この際に、前飽和RFパルス805によって励起されたスピンが、オフ共鳴RFパルス810によって再び励起されるため、シグナルが復帰し、最終的に得られたシグナルと不要なシグナルが重なる現象が発生する。これらの現象は、前飽和RFパルスの周波数帯域幅内に存在する周波数がオフ共鳴RFパルスを使用して励起される場合に発生する。
【0020】
脂肪抑制画像法、磁化移動画像法及びCEST画像法において、周波数帯域幅が、狭く、励起された周波数は、遊離水陽子及び主磁場の大きさによって変化する。しかし、ほとんどの場合、前飽和RFパルスの周波数帯域幅内に存在する周波数がオフ共鳴RFパルスを使用して励起されるため、前飽和RFパルスによる干渉シグナルによって問題が発生する。
【0021】
CEST法は、伝統的な分子画像技術に比べ、長点を持つ。前記画像コントラストは、外部から印加された高周波数によって調節又は制御され得る。目的の内在性分子は、目的の内在性分子と反応する造影剤(Contrast media)を使用することなく、直接検出することができる。しかし、CEST法において磁化移動法も使用されるため、オフ共鳴RFパルスを使用しなければならない。前述のように、オフ共鳴RFパルスを使用する場合、主磁場の不均一によって発生する人工物を除去するための後処理過程が必要になる。
【0022】
近年、スピンロック(Spin−lock)法を用いてCEST法を行う方法が提示されており、筋骨格系疾患に用いられるT1rho値を強調する画像にも使用されている。しかし、スピンロック法では3つのオフ共鳴RFパルスを使用するため、生体におけるエネルギーの吸収率測定の指標である比吸収率(Specific Absorption Rate、SAR)値が高くなるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の一態様は、磁気共鳴画像(MRI)システムを用いることで、人体の全身画像を得るためのオフ共鳴高周波(RF)パルスを使用して、従来の画像法で発生する問題を解決できる画像法を提供する。
【0024】
本発明の他の態様は、主磁場の不均一に敏感ではない脂肪飽和(抑制)、磁化移動及び化学交換飽和移動法を提供する。
本発明のさらに他の態様は、オフ共鳴RFパルスと空間的前飽和RFパルスを同時に使用する画像法においてオフ共鳴RFパルスによって再び発生する不要なシグナルの除去法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前述の課題を解決するために、第1オフ共鳴RFパルスと、第1オフ共鳴RFパルスから180度の位相差を持つ第2オフ共鳴RFパルスを印加し、第1及び第2オフ共鳴RFパルスの印加によって発生する主磁場の不均一を相殺するための1つ以上の補助傾斜磁場を印加する。
【0026】
本発明の一態様によると、第1オフ共鳴RFパルスを印加する段階;前記第1オフ共鳴RFパルスによって発生する主磁場の不均一を相殺するための第2オフ共鳴RFパルスを印加する段階;及び、第1及び第2オフ共鳴RFパルスを印加することによって発生する主磁場の不均一を相殺するための1つ以上の補助傾斜磁場を印加する段階を含み、前記1つ以上の補助傾斜磁場を印加する段階は、前記1つ以上の補助傾斜磁場の組み合わせを調節する段階;及び前記1つ以上の補助傾斜磁場の符号を変更する段階を含むMRIシステムを通じたMRI法を提供する。
【0027】
前記1つ以上の補助傾斜磁場の組み合わせの調節において、前記1つ以上の補助傾斜磁場の合計が0になるように、前記1つ以上の補助傾斜磁場の組み合わせを調節し、前記1つ以上の補助傾斜磁場の符号の変更において、前記1つ以上の補助傾斜磁場の合計が0になるように、前記1つ以上の補助傾斜磁場の符号を変更することができる。
【0028】
1つ以上の補助傾斜磁場の符号を変更において、前記1つ以上の補助傾斜磁場の第1補助傾斜磁場の符号が、プラス(+)又はマイナス(−)になるようにすることができる。
前記MRI法は、補助傾斜磁場の印加と共にスポイラー傾斜磁場を印加する段階をさらに含んでもよい。
【0029】
前記補助傾斜磁場は、前記第1オフ共鳴RFパルスの印加前;前記第1オフ共鳴RFパルスの印加後及び前記第2オフ共鳴RFパルスの印加前;及び前記第2オフ共鳴RFパルスの印加後のいずれか1つの時点で印加することができる。
【0030】
前記第2オフ共鳴RFパルスは、前記第1オフ共鳴RFパルスから180度の位相差を有してもよい。
前記MRI法は、1つ以上の補助傾斜磁場の印加後に、脂肪抑制法、磁場移動法、T1rho画像法及び化学交換飽和移動法のいずれか1つを使用するためのパルスシークセンスを印加する段階をさらに含んでもよい。
【0031】
前記MRI法は、第1オフ共鳴RFパルスの印加前に、空間的前飽和RFパルスを印加する段階をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の実施例による第1及び第2オフ共鳴RFパルスと傾斜磁場を使用する画像法によってMRI画像を得る場合、オフ共鳴RFパルスを使用する画像法において主磁場の不均一によって発生する人工物を除去することができる。さらに、本発明の実施例による画像法が、空間的前飽和RFパルスを使用する画像法に適用されると、前飽和RFパルスによって励起されたスピンがオフ共鳴RFパルスによって再び励起されることで、シグナルが復帰され、最終的に得られたシグナルに不要なシグナルが重なる現象を除去することができる。
【0033】
前述のように、主磁場の不均一によって発生する人工物を除去することができることから、従来の技術のような後処理過程が不要になり、主磁場の不均一を解決するために追加でRFパルスを使用せず、傾斜磁場の組み合わせを用いることでSAR値を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】オフ共鳴RFパルスを使用して脂肪飽和(抑制)法の原理を説明する図である。
【
図2】オフ共鳴RFパルスを使用して脂肪飽和(抑制)法の原理を説明する図である。
【
図3】脂肪抑制法で一般的に使用される準備パルスシークエンスを示す。
【
図4】オフ共鳴RFパルスを使用して磁化移動の画像法の原理を説明する図である。
【
図5】磁化移動で一般的に使用されるRFパルス及び傾斜磁場の例を図示したものである。
【
図6】オフ共鳴RFパルスを使用して化学交換飽和移動の画像法の原理と、一般的に使用されるRFパルスと傾斜磁場の例をそれぞれ図示したものである。
【
図7】オフ共鳴RFパルスを使用して化学交換飽和移動の画像法の原理と、一般的に使用されるRFパルスと傾斜磁場の例をそれぞれ図示したものである。
【
図8】オフ共鳴RFパルスと前飽和RFパルスを使用して画像法で使用されるパルスシークエンスを示す。
【
図9】一般的なオフ共鳴RFパルスを使用する画像法で発生する人工物を除去するための本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスを使用した画像法の原理を説明する図面である。
【
図10a】本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスを使用する画像法で使用される準備パルスシークエンスを示すもので、
図9を参考にして説明した本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスの基本原理を適用することによって傾斜磁場を組み合わせて使用したものである。
【
図10b】本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスを使用する画像法で使用される準備パルスシークエンスを示すもので、
図9を参考にして説明した本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスの基本原理を適用することによって傾斜磁場を組み合わせて使用したものである。
【
図10c】本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスを使用する画像法で使用される準備パルスシークエンスを示すもので、
図9を参考にして説明した本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスの基本原理を適用することによって傾斜磁場を組み合わせて使用したものである。
【
図11】オフ共鳴RFパルスと前飽和RFパルスを使用する一般的な画像法で発生する人工物を除去するための本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスを使用する画像法を示す図である。
【
図12a】オフ共鳴RFパルスと前飽和RFパルスを使用する画像法において、傾斜磁場を印加することによって不要なシグナルを除去するための本発明の実施例による準備パルスシークエンスを示す。
【
図12b】オフ共鳴RFパルスと前飽和RFパルスを使用する画像法において、傾斜磁場を印加することによって不要なシグナルを除去するための本発明の実施例による準備パルスシークエンスを示す。
【
図13】本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスと傾斜磁場の組み合わせを含むパルスシークエンスをショルダー部の画像の脂肪抑制画像法に適用した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施例による磁気共鳴画像(MRI)システムを通じた画像法を、添付した図面を参考にして詳細に説明する。しかし、本発明の要旨を不要に曖昧にする公知の機能及び構成に関する詳細な説明は省略する。
【0036】
本発明に適用されるMRIシステムの構成はよく知られているので省略する。
一般的に、オフ共鳴RFパルス(RF)を使用する画像法には、脂肪飽和(抑制)法、磁化移動法及び化学交換飽和移法がある。さらに、地域的にスピンを先に励起することによって画像の特定の位置のシグナルを減少できる前飽和RFパルスを用いたオフRF共鳴も使用される。
【0037】
前述の方法において、人工物は主磁場の不均一によって発生する。詳細には、オフ共鳴RFパルスの使用によって発生する主磁場の不均一により選択的に励起されたスピンの位相が一定ではなくなり、このような位相差によって選択された周波数のスピンから得られたシグナルが同一位相を持たなくなるため、再構成された画像で不均一な形態を持つ人工物を示すようになる。
【0038】
前述のような人工物の問題を解決するために、本発明でダブルオフ共鳴RFパルスが使用された。
図9は、オフ共鳴RFパルスを使用する画像法で一般的に発生する人工物を除去するためのダブルオフ共鳴RFパルスを使用する画像法の原理を説明するための図面である。
【0039】
図9に示すように、第1オフ共鳴RFパルス910が印加された後、反対位相、つまり、180度の位相差を持つ第2のオフ共鳴RFパルス920が印加される。
オフ共鳴RFパルス910を使用する画像法において、傾斜のないオフ共鳴RFパルス910が単独で使用されるため、主磁場の不均一によって選択的に励起されたスピンの位相情報が一定ではなくなる。このような位相差によって、選択された周波数のスピンから得られたシグナルが同一位相を持たなくなるため、再構成された画像で不均一な形態を持つ人工物を示すようになる。
【0040】
このような位相差を補償するための方法として、付加的な傾斜磁場を印加する方法がある。
しかし、オフ共鳴RFパルス910は、同時に印加する選択傾斜磁場が存在せず、主磁場の不均一による少量の傾斜磁場のみが影響を受けると見なされ、歪んだ位相を補償することができない。さらに、オフ共鳴RFパルス910は、選択傾斜磁場を使用せず、全体の体積に対して周波数を選択し励起させる原理を利用するので、位相を補正するためのオフ共鳴RFパルス910と同様な他のオフ共鳴RFパルス920を使用しなければならない。この際に、他のオフ共鳴RFパルス920は、1つ目の印加したオフ共鳴RFパルス910から180度の位相差を持つため、主磁場の不均一によって歪んだパルスを元のパルスに戻すことでパルスを補償することができる。
【0041】
図10a〜10cは、本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスを用いた画像法で使用される準備パルスシークエンスを示すもので、
図9を参考にして説明した本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスの基本原理を適用することによって傾斜磁場を組み合わせて使用したものである。
【0042】
2つの連続的なRFパルスが印加されると、オフ共鳴RFパルスによってパルスが補償される。しかし、連続的に印加する磁場の画像技術を追加する前に、全てのスピンを再び縦方向に磁化しなければならない。このような残留スピンを除去する方法として、本発明の実施例では付加的な傾斜磁場を印加する。
【0043】
この場合、従来の技術による方法とは異なって、リワインダとスポイラー傾斜磁場の組み合わせを最適化するため、ダブルオフ共鳴RFパルスの印加に必要な時間の増加を最小化することができる。
【0044】
すなわち、本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスを使用する画像法において、第1オフ共鳴RFパルスを印加し、第1オフ共鳴RFパルスによって発生する主磁場の不均一を相殺するための第2オフ共鳴RFパルスを印加し、第1及び第2オフ共鳴RFパルスの印加によって発生する主磁場の不均一を相殺するための1つ以上の補助傾斜磁場を印加する。この際、補助傾斜磁場を印加することにおいて、1つ以上の補助傾斜磁場の組み合わせを調節し、その符号を変更することで最適の補助傾斜磁場の組み合わせを得る。
【0045】
最適の補助傾斜磁場の組み合わせとしては、1つ以上の印加される補助傾斜磁場の合計が0になるように、補助傾斜磁場の組み合わせと符号が調節され得る。
補助傾斜磁場の極性は、プラス(+)極性から始ってもよく、マイナス(−)極性から始まってもよい。例えば、(+、−、−、+)、(−、+、+、−)、(+、0,0、−)、(−、0、0、+)などの様々な組み合わせが可能である。
【0046】
図10a〜10cに、本発明の実施例による画像法のパルスシークエンスを示す。
図10aに示すように、第1オフ共鳴RFパルス1010と、第1オフ共鳴RFパルス1010から180度の位相差を持つ第2オフ共鳴RFパルス1020を印加するダブルオフ共鳴RFパルスの印加法において、第1オフ共鳴RFパルス1010の印加前、第1及び第2オフ共鳴RFパルス1010と1020の間、及び第2オフ共鳴RFパルス1020の印加後に、傾斜磁場1030を印加する。
【0047】
前記傾斜1030は、x、y及びz軸に対して同様に印加され、その合計が0になるようにその値と符号が調節される。
本発明の他の実施例によると、
図10bに示すように、第1オフ共鳴RFパルス1010の印加前と、第1及び第2オフ共鳴RFパルス1010と1020の間に傾斜1040を印加し、第2オフ共鳴RFパルス1020の印加後にスポイラー傾斜1100を印加することができる。
【0048】
この場合にも、前記傾斜1040は、x、y及びz軸に対して同様に印加され、その合計が0になるようにその値と符号が調節される。
本発明のさらに他の実施例によると、
図10cに示すように、第1オフ共鳴RFパルス1010の印加前、第1及び第2オフ共鳴RFパルス1010と1020の間、及び第2オフ共鳴RFパルス1020の印加後に傾斜1050を印加し、その後にスポイラー傾斜1100を印加することができる。
【0049】
この場合にも、前記傾斜1050は、x、y及びz軸に対して同様に印加され、それらの合計が0になるようにその値と符号が調節される。
一方、第1及び第2オフ共鳴RFパルスの周波数帯域幅、中心周波数及びパルス形態は、必要に応じて調節され得る。例えば、脂肪抑制方法を用いる場合には、オフ共鳴RFパルスの幅が相対的に大きいが、しかし、磁化移動又はCEST法を用いる場合には、脂肪抑制法に比べて幅が狭いオフ共鳴RFパルスが使用される。すなわち、第1及び第2オフ共鳴RFパルスの周波数帯域幅、中心周波数及びパルス形態は、使用される画像法によって適切に選択してもよく、本発明では、これらを特に制限しない。
【0050】
前述のように、第1及び第2オフ共鳴RFパルスと傾斜の組み合わせを使用することで主磁場の不均一による人工物を持たない画像が得られるため、従来と関連して主磁場の不均一を補償するための後処理過程と、後処理のための追加画像獲得が不要である。
【0051】
さらに、第1及び第2オフ共鳴RFパルスを使用しながら傾斜磁場の組み合わせを使用して、主磁場の不均一に関する問題を解決する本発明の実施例による画像法は、第3のRFパルスを印加するスピンロック法に比べ、RFパルスの数を減らし、主磁場の不均一に関連した問題をより容易に解決できるため、生体における電波吸収率の指標である特定の吸収率(SAR)値を下げることを可能にする。
【0052】
図11は、前飽和RFパルスによって励起されるスピンがオフ共鳴RFパルスによって再び励起されることで、シグナルが復帰され最終的に得られるシグナルに不要なシグナルが重なって現れる現象を除去するための本発明の実施例を示す図面である。
【0053】
図11に示すように、前飽和RFパルス1105と共に2つのオフ共鳴RFパルス1110及び1120が使用される。
この際に、
図10a〜10cを参考にして説明した実施例では同様に適切な組み合わせで傾斜磁場を印加するため、不要なシグナルを最小化することができる。
【0054】
図12aと12bは、オフ共鳴RFパルスと前飽和RFパルスを使用する画像法で傾斜磁場を印加することによって不要なシグナルを除去するための本発明の実施例による準備パルスシークエンスを示す。
【0055】
まず、
図12aに示すように、前飽和RFパルス1205が印加された後、第1オフ共鳴RFパルス1210の印加前と、第1及び第2オフ共鳴RFパルス1210及び1220の間に傾斜磁場1230を印加する。さらに、第2オフ共鳴RFパルス1220の印加後にスポイラー傾斜磁場110を印加することができる。
【0056】
さらに、
図12bに示した本発明の他の実施例においては、前飽和RFパルス1205が印加された後、第1オフ共鳴RFパルス1210の印加前、第1及び第2オフ共鳴RFパルス1210と1220の間及び第2オフ共鳴RFパルス1220の印加後に傾斜磁場1240を印加する。
【0057】
図12aと12bの両方に示した2つの実施例において、傾斜磁場の値と符号の合計が、それぞれ0になるように調節されるのが好ましい。
図13は、本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスと傾斜磁場の組み合わせを含むパルスシークエンスをショルダー部の画像を脂肪抑制画像法に適用した例を示す。
図13では、
図10aに示した実施例のパルスシークエンスを使用した。
【0058】
図13において、左側は脂肪抑制を行わずに得られた画像で、中間は、現在臨床で使用される単一オフ共鳴RFパルス画像法を用いて得られた画像で、右側は本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスと傾斜磁場の組み合わせを用いて得られた画像である。単一オフ共鳴RFパルスを使用して得られた画像法は、ダブルオフ共鳴RFパルスを使用する画像法に比べ、大きい脂肪抑制効果を持つが、参考画像(中間)に比べ、主磁場の不均一によって発生する人工物を含む。
【0059】
一方、本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルス画像法では、全く人工物を含まず、改善された結果で示すように、均一の脂肪抑制を完成させた。
本発明の実施例によるダブルオフ共鳴RFパルスを用いたMRI法は、脂肪抑制法、磁場移動法、T1rho画像法及び化学飽和移動法に適用することができる。
【0060】
本発明の好ましい実施例では、例示的な目的で説明したが、当分野の当業者であれば、請求項に記載される本発明の範囲と思想から逸脱することなく、修正、追加及び変更が可能であることを理解できるであろう。従って、このような修正、追加及び変更は、本発明の範囲内に含まれるものとして理解されるべきであろう。