(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粘着体は、シート状の基材を備え、該シート状基材の一方の面に前記粘着剤が保持されることによって粘着シートを形成し、該粘着剤を外側として巻回された粘着シートロールとして構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプレート表面用粘着クリーナー。
前記粘着体の粘着力が、JIS Z0237に規定する180°剥離試験に基づく測定値で1〜7N/25mmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプレート表面用粘着クリーナー。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0013】
ここで開示されるプレート表面用粘着クリーナーは、床やカーペットの清掃に用いられる従来の粘着クリーナーとは異なり、種々のポータブル機器の表示面のような平滑なプレートの表面の汚れを取り除くために好適に用いられることによって特徴づけられるクリーナーである。
本発明のプレート表面用粘着クリーナーの使用対象は、平滑なプレート表面(典型的にはガラス製または合成樹脂製のプレートの表面)であれば特に制限はない。例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置の表示面が好適例として挙げられる。あるいは、ショーウインドウガラス、ガラステーブル、ショーケース等の表面も、ここでいう「平滑なプレート表面」に包含される例である。
本発明のプレート表面用粘着クリーナーの好ましい使用対象として、種々のポータブル機器の表面(特に表示面/入力面)が挙げられる。ここでポータブル機器は、外面の少なくとも一部に平滑なプレート表面(すなわち本発明のプレート表面用粘着クリーナーを適用可能な表面)を有する携帯可能な機器をいい、特定の機器に限定されない。例えば、種々のサイズのノート型パソコン、タブレット型パソコン、電子手帳等のPDA(携帯情報端末)、スマートフォンその他の携帯電話機、携帯ゲーム機、等がポータブル機器に包含される。
【0014】
ここで開示されるプレート表面用粘着クリーナーの形状は、再剥離性の粘着剤を有する粘着体を備え、平滑なプレート表面に当該粘着体を接触させることによって当該表面上の有機物からなる汚れ(特に人の皮脂や手垢)を除去し得る限りにおいて、その形状に特段の制限はない。例えば、粘着体と、該粘着体を支持する支持体とが層状(単層または多層)に積層したシート形状またはパッチ形状のプレート表面用粘着クリーナーであってもよい。好ましくは、円筒状に形成された支持体(巻芯)を備え、ロール形状に形成された粘着体を備える。以下、かかる好適な形態のプレート表面用粘着クリーナー10について
図1〜4を参照しつつ説明する。
【0015】
図1に示すように、第1の実施形態に係るクリーナー10は、平滑なプレート表面2を備えたポータブル機器1の当該プレート表面(ここではタッチパネルを構成する表示部)2の汚れを取り除くために使用される。ポータブル機器1は、ここでは外面全体がアルミノケイ酸ガラス等の平滑な強化ガラスで構成されているタブレット型パソコンである。
本実施形態に係るクリーナー10は、円筒状に形成された支持体(巻芯)20と、該支持体20の外周面に巻回されたロール形状の粘着体(粘着シートロール)30と、該支持体20および粘着体30が転動可能に取り付けられている棒状の把持部材40とを備える。把持部材40の取っ手42側とは反対側の回転可能な先端回転軸部44は、円筒状支持体20の中心孔20Aを貫通するようにして取り付けられている。
【0016】
かかる構成により、本実施形態に係るクリーナー10は、
図1〜3に示すように、作業者(図示せず)が把持部材40を把持してクリーナー10に所定の外力を加えると、当該外力は把持部材40から先端回転軸部44を介して支持体20に伝わり、当該支持体20の外周面に配置されている粘着体(粘着シートロール)30をプレート表面2に接触させ、適度な押圧力で押しつけつつ該プレート表面2に沿って上記粘着体30が所定の方向に転動する。このとき、粘着体30の粘着力等により、プレート表面2に存在する埃、および有機物からなる汚れ、特に人の手垢や皮脂が粘着体30の方に移動、すなわち粘着体30側に取り込まれる。これにより、粘着体30の転動方向に沿ってプレート表面2のクリーニング(汚れ取り)が効率よく迅速に行われる。
なお、本実施形態に係るクリーナー10は、ポータブル機器1その他の平滑なプレート表面2に付着する有機物からなる汚れを除去(クリーニング)する目的に使用されるものであるが、使用者が実際に本実施形態に係るクリーナー10を使用する態様(すなわち上述のように作業者が把持部材40を把持して操作すること)は、カーペットや床の塵や埃を除去する目的に使用されている従来のロール形状クリーナーを使用する態様と同様であり、使用者は容易に本実施形態に係るクリーナー10を使用することができる。
【0017】
好ましくは、粘着体(粘着シートロール)30のほぼ一周長毎に、切断用の切れ目(図示せず)が設けられている。この切れ目は、本実施形態に係るクリーナー10を連続的に使用した後、クリーニング(汚れ除去)性能が低下した粘着体外周面(作業面)を更新することを効率的に行うための切断手段であって、例えば、長孔や波形のスリットを並べたもの、ミシン目等の間欠スリット、等であり得る。好ましくは、シート状粘着体30を幅方向(長手方向と直交する方向)に横断するように上記切れ目が設けられる。あるいは、粘着体外周面(作業面)の更新は、上記切断手段に限られず、例えば、ミシン目等の間欠スリットを粘着シートロール30のシート巻き取り方向に対して交差する方向(典型的には上記幅方向に対して30〜60°の角度で交わる方向)に螺旋状に形成しておいてもよい。あるいはまた、ミシン目等の間欠スリットに代えて粘着シートロール30を構成するシート状粘着体30に所定間隔でスリット(連続した切れ目)を入れておいてもよい。 この形態によると、予めロール巻き取り方向に所定間隔で完全に切断された状態の粘着体外周面(作業面)を剥ぎ取ることにより、容易に当該作業面を更新することができる。
【0018】
本実施形態に係るクリーナー10の支持体20としては、コスト、廃棄処分の容易性、クッション性等の観点から、紙製(典型的にはボール紙製)のものを好ましく用いることができる。あるいは、他の材質(例えばポリオレフィン系その他の合成樹脂)からなる支持体20であってもよい。
円筒状の支持体20のサイズは、使用対象品(例えばポータブル機器)が備える平滑なプレート表面の形状や大きさ(例えばA4サイズ、A5サイズ、A6サイズ、B4サイズ、B5サイズ、またはB6サイズの表示部)に応じて異なり得るものであり特に制限はないが、支持体の直径(外径をいう。以下同じ。)は少なくとも4mm以上が適当であり、10mm以上(例えば20mm以上)が好ましい。プレート表面用粘着クリーナーを小型(例えばペンサイズ)とする場合、支持体の直径は4mm未満であってもよく、例えば1〜3mm程度とすることができる。そして、当該支持体20と該支持体20の外周面に配置された粘着体(粘着シートロール)を合わせたロールの直径は50mm以下が適当であり、35mm以下が好ましい(但しロール直径として50mmより大きい径のものを除外するものではない。)。このような数値範囲にある直径の円筒状支持体20および粘着体(粘着シートロール)30を採用することにより、
図1に例示するようなポータブル機器1が備える携帯サイズ(例えばA4〜A6もしくはB5〜B6サイズ)のガラス製または合成樹脂製の平滑なプレート表面(典型的には表示面/入力面)を効率よく迅速にクリーニング(汚れ取り)することができる。
なお、支持体(巻芯)20を使わずに粘着体30のみをロール状に巻回してなる所謂コアレスタイプの粘着シートロールであってもよい。その場合は、粘着体30からなるロールの中心に上記把持部材40の先端回転軸部44を配置するとよい。
【0019】
図4に示すように、本実施形態に係るクリーナー10の粘着体(粘着シートロール)30は、長尺シート状(帯状)の基材36と、該基材36の一方の面36Aに粘着剤が保持されて形成された粘着剤層32とを備える二層構造であり、その粘着剤層32の外表面(すなわち粘着面)32Aが外側(すなわちロールの外周側)を向くようにして、支持体20の周囲にロール状に巻回されて構成されている。
基材36は、典型的には、種々の合成樹脂、不織布、あるいは紙で構成される。また、布、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、これらの複合体、等であってもよい。
合成樹脂の例としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、等が挙げられる。特にポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材を好適に使用することができる。
また、紙としては、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙、等が例示される。布の例としては、各種繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布等が挙げられる。上記繊維状物質としては、綿、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、等が例示される。ゴムシートの例としては、天然ゴムシート、ブチルゴムシート、等が挙げられる。発泡体シートの例としては、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリクロロプレンゴムシート、等が挙げられる。金属箔の例としては、アルミニウム箔、銅箔、等が挙げられる。基材36には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)等の各種添加剤が配合されてもよい。
また、基材36の背面36Bには、シリコーン系剥離剤の塗付等、粘着シートロール30の巻戻し力を適切な範囲に調節するための表面処理(典型的には、巻戻し力が高くなりすぎることを防止する剥離処理)が施されていてもよい。
基材36の厚さは、目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。一般的には、基材36の厚さを凡そ20μm〜200μm(典型的には凡そ30μm〜100μm)程度とすることが適当である。
【0020】
ここで開示されるプレート表面用粘着クリーナー10の粘着体30(粘着剤層32)としては、使用者が適当な押圧力(例えば作業者がクリーナーに対して100〜1200g(典型的には200g〜500g)の押圧力)を加えつつクリーナー10をクリーニング対象であるプレート表面2に接触させ、例えば0.1m〜0.5m/秒であるような適当な移動速度(ロール形状クリーナーである場合は転動速度)で所定の方向に移動させつつ当該プレート表面2に付着する埃や汚れ(特に有機物からなる汚れ)を粘着体30側に取り込む目的に適する粘着力を備えていることが好ましい。
【0021】
特に限定するものではないが、粘着体は、JIS Z0237に規定する180°剥離試験に基づく測定値で1〜7N/25mm程度が適当であり、1.3〜6.5N/25mm程度の粘着力が好適である。このような粘着力を有することにより、プレート表面2上でのスムーズなクリーナー10(すなわち粘着体30)の移動(転動)と、安定した汚れ除去能力を両立させることができる。あるいは、操作性(典型的には低転がり抵抗性)を重視して、上記粘着力を0.05N/25mm以上(例えば0.1N/25mm以上、典型的には0.5N/25mm以上)程度としてもよい。かかるレベルよりも低すぎる粘着力であると、クリーナー10に本来求められる汚れや埃の除去性能が低下するため好ましくない。他方、粘着力が上記レベルよりも高すぎると、対象とする平滑なプレート表面上でのクリーナー10(粘着体30)の移動や当該プレート表面2からの脱離が困難となるため好ましくない。
【0022】
また、ここで開示される粘着体(粘着シートロール)30では、粘着体(粘着シートロール)30の平滑なプレート表面(例えばアルミノケイ酸ガラス等のガラスや合成樹脂からなるプレート表面)2上におけるレール引き現象の発生が抑止されるように、粘着力(例えば上記180°剥離試験に基づく測定値が1〜7N/25mm)と巻戻し力とが調和されていることが好ましい。ここで巻戻し力とは、粘着シートを粘着シートロールから引き出すために要する力(すなわち巻戻しに対する抵抗力、基材36の背面36Bに対する粘着力としても把握される。)をいう。例えば、粘着力に比べて巻戻し力が低すぎる設定であると、粘着シートロール30を平滑なプレート表面2上で転がす際に巻戻し力が粘着体30とプレート表面2の間の粘着力に負けてレール引き現象を生じさせる虞があるため好ましくない。他方、巻戻し力が高すぎる場合には、粘着シートのスムーズな引き出しが困難となるため、やはり好ましくない。
なお、巻戻し力は次のようにして評価することができる。すなわち、粘着シートロール30を所定の引張試験機にセットし、大気圧条件(例えば温度23℃、相対湿度50%の空気中)において、巻回された粘着シートの外周側先端を試験機のチャックに装着して所定の速度(例えば300mm/分)で引っ張ることによって粘着シートロール30を接線方向に巻き戻し、このときの巻戻し力を、粘着剤層32の所定幅(例えば150mm)あたりの値(N/150mm)に換算することにより求めることができる。例えば巻戻し力が0.5〜2.5N/150mm程度のものが好ましい。
【0023】
粘着剤層32の厚さは、目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。一般的には、粘着剤層32の厚さを凡そ30μm〜300μm(典型的には凡そ50〜150μm)程度とすることが適当である。粘着剤層32の厚さが大きいほど、捕捉した皮脂等の成分を粘着剤層に取り込める量が多くなり、汚れ捕捉能力の回復性が向上する傾向がある。あるいは粘着剤層32を薄くした場合、軽量化、小型化が実現され、操作性や持ち運び性が向上する。
なお、粘着剤層32は、基材36の一方の表面の全範囲に亘って形成されていてもよく、あるいは、
図2に示されるように、基材20の幅方向の両端に沿って、粘着剤層32が形成されていない非粘着部(ドライエッジ)37,38を有してもよい。粘着剤層32は、典型的には、基材36の全範囲、あるいは
図2に示されるように非粘着部37,38を残した範囲にむらなく連続して形成(ベタ塗り)される。
【0024】
次に、第2の実施形態に係るクリーナー10について
図5を参照しつつ説明する。
図5に示すように、本実施形態に係るクリーナー10は、略球状の粘着体30と、粘着体30の一部(典型的には上方)を支持する支持体20と、支持体20と接続している把持部材40とを備える。粘着体30は、粘着剤のみからなる球体であってもよく、中空または中実の球状基材の表面に粘着剤層を形成したものであってもよい。支持体20は、粘着体30の球形状に沿う曲面を有しており、粘着体30を転動可能に支持する。支持体20の形状はお椀状ということもできる。把持部材40は棒状の長尺部材であり、その一端は支持体20に固定されており、他端には取っ手42が設けられている。かかる構成により、作業者(図示せず)がクリーナー10の取っ手42を持って、球状の粘着体30をポータブル機器1のプレート表面2上の所望の方向(
図5中、矢印で示す方向)に移動(転動)させると、粘着体30は、プレート表面2に存在する埃や有機物からなる汚れを捕捉する。このようにして、プレート表面2のクリーニング(汚れ取り)が効率よく迅速に行われる。球形状を有する粘着体30の直径は、特に限定されないが、5mm〜50mm(例えば10mm〜40mm、典型的には20mm〜30mm)程度とすることが適当である。なお、上記以外の事項については、上記第1の実施形態と基本的に同じとすることができるので、ここでは説明は繰り返さない。
【0025】
なお、プレート表面用粘着クリーナーは、上記実施形態のものに限定されない。プレート表面用粘着クリーナーは、例えば、粘着体のみから構成されるものであってもよい。そのようなプレート表面用粘着クリーナーとしては、例えば球形状や円柱形状、六面体状(例えば直方体状)等の粘着体のみから構成されているクリーナーが挙げられる。あるいは、上記球形状等の粘着体と、該粘着体を支持する支持体とを備えるものであってもよい。かかる支持体は、上記粘着体に直接的または間接的に接続(連結または着脱可能に接続)されるものであり得る。そのようなプレート表面用粘着クリーナーとしては、例えば棒状の支持体の一端に円柱形状や直方体状の粘着体が固定されたものが挙げられる。あるいはまた、平面状の支持体を備え、その片面に粘着体からなる粘着剤層が設けられており、その反対面に、ホールドが設けられているものであってもよい。かかるプレート表面用粘着クリーナーのホールドは、帯状に形成されており、その両端が支持体に固定されたものであり得る。作業者は、ホールドと支持体とで形成された環に手の少なくとも一部(典型的には数本の指)を挿通して保持することで、プレート表面用粘着クリーナーを操作することができる。あるいはさらに、シート状の粘着剤層を複数積層した積層物(粘着体)を備えており、この積層物を支持体によって支持したものであってもよい。上記積層物は少なくとも第1層と第2層とを有し得る。かかるプレート表面用粘着クリーナーによると、使用の結果、最外部に位置する粘着剤層(第1層)の汚れ除去性能が低下した場合、この粘着剤層(第1層)を剥がして、第1層とは異なる粘着剤層(第2層)を露出させ、この第2層によって汚れ除去を行うことが可能となる。かかる粘着剤層(第1層)の背面には、PETフィルム等からなるシート状の基材が設けられていてもよく、該基材の一方の表面(例えば第2層の表面と当接する表面)にシリコーン系の剥離処理が行われていてもよい。
【0026】
上記のような本発明の目的に好ましい粘着力を備え、かつ、平滑なプレート表面2に付着した有機物からなる汚れ(例えば人の手垢や皮脂汚れ、あるいは化粧品成分の付着)を簡易に効率よく除去できるのに適する限りにおいて、粘着体30(粘着剤層32)を構成する粘着剤の組成(成分)は特に限定されない。
例えば、好適な粘着剤としては、種々の溶剤系粘着剤、水系(エマルジョン系)粘着剤等が挙げられる。人の皮脂汚れを除去する目的には、特に溶剤系粘着剤が好ましい。
ベースポリマー別には、好適な粘着剤として、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、等が挙げられる。特にアクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤が好ましい。
【0027】
なかでも、粘着剤は、ベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分、主たる粘着性成分)として、アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤であることが好ましい。ここで「アクリル系ポリマー」とは、典型的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主モノマーとして含み、この主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含んでよいモノマー原料(単一モノマーまたはモノマー混合物)を重合することによって合成された重合体(共重合体)である。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイルおよびメタクリロイルを、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0028】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば式:
CH
2=CR
1COOR
2
で表わされる化合物を好適に用いることができる。
ここで、上記式中のR
1は水素原子またはメチル基である。また、R
2は炭素原子数1〜20のアルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C
1−20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、R
2がC
1−14(例えばC
1−10)のアルキル基である(メタ)アクリル酸アルキルエステルであってもよい。なお、上記アルキル基は、直鎖状または分岐状であり得る。
【0029】
上記C
1−20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニルが好ましい。例えばこれらの1種または2種以上が合計50質量%を超える(例えば60質量%以上99質量%以下、典型的には70質量%以上98質量%以下の)割合で共重合されたアクリル系ポリマーとすることができる。
【0030】
上記アクリル系ポリマーを重合するために用いられるモノマー原料は、低転がり抵抗性等の諸性質の向上を目的として、主モノマーに加えて主モノマーと共重合可能な副モノマーをコモノマー単位として含んでいてもよい。なお、かかる副モノマーはモノマーだけでなくオリゴマーも含むものとする。
【0031】
上記副モノマーとしては、官能基を有するモノマー(以下、官能基含有モノマーともいう。)が挙げられる。かかる官能基含有モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入し、アクリル系ポリマーの凝集力を高める目的で添加され得るものである。そのような官能基含有モノマーとしては、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基(グリシジル基)含有モノマー、アルコキシ基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマーが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、アクリル系ポリマーに架橋点を好適に導入することができ、また、アクリル系ポリマーの凝集力をより高めることができることから、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基等の官能基含有モノマーが好ましく、カルボキシル基含有モノマーまたはヒドロキシル基含有モノマーがより好ましい。
【0032】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和モノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。なかでも、アクリル酸および/またはメタクリル酸が好ましく、アクリル酸が特に好ましい。
酸無水物基含有モノマーとしては、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸等の上記エチレン性不飽和ジカルボン酸等の酸無水物等が挙げられる。
ヒドロキシル基(水酸基)含有モノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
アミド基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
アミノ基含有モノマーとしては、例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基(グリシジル基)含有モノマーとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
アルコキシ基含有モノマーとしては、例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルコキシシリル基含有モノマーとしては、例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
アクリル系ポリマーを構成するモノマーとして上述の官能基含有モノマーを用いる場合、アクリル系ポリマーを重合するためのモノマー原料中に上記官能基含有モノマー(好適にはカルボキシル基含有モノマー)が1〜10質量%(例えば2〜8質量%、典型的には3〜7質量%)配合されていることが好ましい。
【0034】
また副モノマーとして、アクリル系ポリマーの凝集力を高める等の目的で、上記官能基含有モノマー以外のモノマーを含んでもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;等が挙げられる。
【0035】
なかでも、アクリル系ポリマーとして、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソノニル、等の種々のアクリル酸エステルをメインモノマー成分とし、該メインモノマー成分に、アクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリル酸グリシジル、等の官能基含有モノマー成分、あるいはさらに酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、スチレン、等のモノマー成分(例えば凝集力の調整に寄与する。)を混合、共重合して得られるアクリル系ポリマー(共重合体)が好ましい。特にアクリル酸2−エチルヘキシルをメインモノマー成分とするアクリル系ポリマーが好ましい。
【0036】
上記モノマーまたはその混合物を重合する方法は特に限定されず、従来公知の一般的な重合方法を採用することができる。そのような重合方法としては、例えば溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合が挙げられる。なかでも、溶液重合が好ましい。重合の態様は特に限定されず、従来公知のモノマー供給方法、重合条件(温度、時間、圧力等)、モノマー以外の使用成分(重合開始剤、界面活性剤等)を適宜選択して行うことができる。例えばモノマー供給方法としては、全モノマー混合物を一度に反応容器に供給(一括供給)してもよく、徐々に滴下して供給(連続供給)してもよく、何回分かに分割して所定時間ごとに各分量を供給(分割供給)してもよい。上記モノマーまたはその混合物は、一部または全部を、溶媒に溶解させた溶液、もしくは水に乳化させた分散液として供給してもよい。
重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤、フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せ等の過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が例示される。
重合開始剤の使用量は、重合開始剤の種類やモノマーの種類(モノマー混合物の組成)等に応じて適宜選択できるが、通常は全モノマー成分100質量部に対して、例えば0.005質量部〜1質量部程度の範囲から選択することが適当である。重合温度は、例えば20℃〜100℃(典型的には40℃〜80℃)程度とすることができる。
その他、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤等の乳化剤(界面活性剤)や、従来公知の各種連鎖移動剤を必要に応じて使用することができる。
【0037】
また、粘着剤組成物には、架橋剤を配合することが好ましい。この点について、使用するモノマーに応じて適当な架橋剤を用いてベースポリマーを形成することは従来技術と何ら異なるところはない。例えば、アクリル系粘着剤の架橋剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム等の有機金属塩、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、等が好適例として挙げられる。オキサゾリン系架橋剤やアジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン系架橋剤を用いてもよい。なかでも、カルボキシル基と好適に架橋することができ、また良好な操作性(典型的には低転がり抵抗性)が得やすく、さらに耐酸性にも優れることから、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が特に好ましい。架橋剤の配合量は特に限定されないが、上記好適な数値範囲の粘着力を実現するために、総モノマー成分100質量部に対し、0.01〜10質量部(例えば0.05〜5質量部、典型的には0.1〜5質量部)程度とすることができる。なお、架橋剤は、1種類の単独使用でもよく、2種類以上の併用でもよい。
また、上記アクリル系粘着剤のような溶剤系粘着剤を採用する場合、使用する溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、テトラリン、ジペンテン等の芳香族炭化水素、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール、トリデシルアルコール等のアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、等が好適例として挙げられる。
なお、使用(合成)するベースポリマーの分子量(MW:重量平均分子量)は、特に限定されないが、概ね30万〜100万程度の重量平均分子量(MW)であるポリマー(例えばアクリル系ポリマー)を好適に使用することができる。
【0038】
本発明の実施に好適な粘着剤には、その物性を調整するために、アクリル系ポリマー、天然ゴム系ポリマー、等のベースポリマー成分の他、種々の副成分が含まれる。
例えば、粘着力の調整のために種々の粘着付与樹脂(タッキファイヤー)が使用される。一般的なロジン系、テルペン系、炭化水素系(例えばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂)、エポキシ系、ポリアミド系、エラストマー系、フェノール系、ケトン系、等を単独または2種以上組み合わせて使用することができる。例えば、タッキファイヤーとして、テルペンフェノール樹脂を好適に用いることができる。
タッキファイヤーの配合量は特に限定されないが、上記好適な数値範囲の粘着力を実現するために、ベースポリマー100質量部に対し、例えば1〜40質量部、典型的には2〜20質量部程度(好ましくは5〜10質量部)とすることができる。
【0039】
また、他の副成分として、可塑剤、プロセスオイル等の種々の軟化成分が含まれ得る。粘着剤の汚れ除去性能を向上する観点から、可塑剤を配合させることが好ましい。
例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル、あるいは、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル、あるいは、トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル、セバシン酸エステル、等が可塑剤の好適例として挙げられる。特に、アジピン酸エステルが好ましい。
特に限定するものではないが、ベースポリマー100質量部に対する軟化成分(典型的には可塑剤)の配合量は、例えば5〜50質量部程度が適当であり、10〜40質量部程度(例えば20〜30質量部程度)が好ましい。また、軟化成分(典型的には可塑剤)の配合量が多くなるほど、粘着剤の汚れ除去性能(汚れ捕捉能力)が回復しやすい傾向がある。そのような観点から、軟化成分(典型的には可塑剤)の配合量は、ベースポリマー100質量部に対して20質量部以上(典型的には20〜70質量部)が好ましく、30質量部以上(典型的には30〜50質量部)がより好ましい。
【0040】
なお、粘着剤層を構成する粘着剤には、さらに、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料など)等の各種添加成分を配合することができる。これら必須成分ではない添加剤の種類や配合量は、この種の粘着剤における通常の種類および配合量と同様とすることができる。
【0041】
上述の構成を有する粘着剤は、プレート表面用粘着クリーナーを使用した結果、人の手垢や皮脂等の有機物からなる汚れの除去性能(汚れ捕捉能力)が低下しても、所定時間(例えば数分、好ましくは数時間)経過すると、上記汚れの除去性能(汚れ捕捉能力)が回復するものであり得る。かかる回復作用について
図6を参照しながら説明する。
図6に模式的に示すように、粘着体30は、粘着剤層32をポータブル機器等のプレート表面2に当接させることにより、該プレート表面2に存在する有機物からなる汚れ50を捕捉する。この粘着剤層32は、有機物からなる汚れ50を捕捉するのみならず、層内に移行させる性質を有する。そのため、粘着剤層32の表面に付着した有機物からなる汚れ50は経時的に粘着剤層32内に移行し、粘着剤層32の表面に存在する有機物からなる汚れ50は減少し、最終的に粘着剤層32の表面には、有機物からなる汚れ50がほとんど存在しない状態となる。つまり、プレート表面用粘着クリーナーを使用する前の状態に戻ることとなる。したがって、上記の「回復作用」とは、粘着剤が汚れを捕捉して汚れ捕捉能力が一旦低下した場合において、所定時間(例えば数分、好ましくは数時間)を経ることで、汚れ捕捉能力が復活し、粘着剤が再び汚れを捕捉することが可能となる作用のことをいい、汚れ捕捉能力の回復に要する時間が短いことを包含する。
【0042】
上記実施形態に係るクリーナー10の粘着体30は、従来公知の手法を適宜採用することにより作製することができる。例えば上記第1の実施形態に係るクリーナー10の粘着体30は、従来のロール形状クリーナーと同様に作製することができる。すなわち、従来の種々のコーティング技法によって長尺なシート状の基材36の表面36A上に粘着剤をコーティングし、次いで乾燥処理等を行うことによって粘着剤層32を形成する。また、粘着剤層32が外周面となるように粘着体30を支持体20に巻回することによって、ロール状の粘着体(すなわち粘着シートロール)30が形成される。そして、得られた粘着シートロール30を、把持部材40の先端回転軸部44に脱着可能かつ転動可能に取り付けることにより、第1の実施形態に係るクリーナー10が構築される。なお、把持部材40の先端回転軸部44に対する粘着シートロール30の取り付け構造自体は従来のロール形状クリーナーと同様の構造でよく、本発明を何ら特徴づけるものではないため詳細な説明は省略する。
【0043】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0044】
<例1>
粘着剤として、アクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHA)とアクリル酸(AA)とを質量比で2−EHA:AA=95:5となるように3つ口フラスコに投入し(溶剤はトルエンを使用した。)、窒素気流下にて、重合開始剤として過酸化ベンゾイルを添加し、60℃に昇温させて2時間反応させ、さらに80℃に昇温して1時間反応させることにより、重量平均分子量(MW)が凡そ50万〜60万のアクリル系ポリマー溶液を調製した。次いで、かかるアクリル系ポリマー溶液のポリマー固形分100質量部に対し、タッキファイヤー(テルペンフェノール樹脂:「タマノル(登録商標)803L」、荒川化学工業(株)製品)5質量部、可塑剤(アジピン酸ジイソノニル:「モノサイザー(登録商標)W−242」、DIC(株)製品)30質量部、および、架橋剤(エポキシ系架橋剤:「TETRAD(登録商標)C」、三菱瓦斯化学(株)製品)0.2質量部を混合し、アクリル系粘着剤を調製した。
【0045】
上記で得られたアクリル系粘着剤を、厚さ38μmのPET製のシート状基材(幅:約8cm)の表面に塗付し、80〜120℃のオーブンを通過させる乾燥処理を行い、厚さ(糊厚)が約80μmの粘着剤層を形成した。
こうして得られた粘着体を、直径(外径)が4mm、20mm、35mmおよび50mmである計4種類のボール紙製の円筒状支持体の表面に、それぞれ、少なくとも5周以上巻回されるように粘着体を巻回し、支持体の直径が異なる計4種類の粘着シートロールを形成した。そして、各粘着シートロールを上述した
図1に示すような把持部材40の先端回転軸部44に転動(回転)可能に装着し、本例1に係るクリーナーを構築した。
【0046】
<例2>
上記例1で使用したアクリル系粘着剤に代えて、市販される同種の溶剤型アクリル系粘着剤(メインモノマー成分が2−EHAである粘着剤:株式会社ニトムズ製品)を使用した以外は、同様のプロセスを経て形成された粘着体(厚さ38μmのPET製基材+厚さ約80μmの粘着剤層)を使用し、支持体の直径(4mm、20mm、35mm、50mm)が異なる計4種類の粘着シートロールを形成した。そして、各粘着シートロールを例1と同様に把持部材40の先端回転軸部44に転動(回転)可能に装着することにより、本例2に係るクリーナーを構築した。
【0047】
<例3>
上記例1で使用したアクリル系粘着剤に代えて、市販される溶剤型の天然ゴム系粘着剤(重量平均分子量が10万〜100万の天然ゴムを主ゴム成分として含むゴム系感圧接着剤:株式会社ニトムズ製品)を使用した以外は、同様のプロセスを経て形成された粘着体(厚さ38μmのPET製基材+厚さ約80μmの粘着剤層)を使用し、支持体の直径(4mm、20mm、35mm、50mm)が異なる計4種類の粘着シートロールを形成した。そして、各粘着シートロールを例1と同様に把持部材40の先端回転軸部44に転動(回転)可能に装着することにより、本例3に係るクリーナーを構築した。
【0048】
<例4>
上記例1で使用したアクリル系粘着剤に代えて、市販されるウレタン系粘着剤(ポリオールと多価イソシアネートを重合して得られる再剥離・再粘着性の両面テープ用粘着剤:株式会社ニトムズ製品)を使用した以外は、同様のプロセスを経て形成された粘着体(厚さ38μmのPET製基材+厚さ約80μmの粘着剤層)を使用し、支持体の直径(4mm、20mm、35mm、50mm)が異なる計4種類の粘着シートロールを形成した。そして、各粘着シートロールを例1と同様に把持部材40の先端回転軸部44に転動(回転)可能に装着することにより、本例4に係るクリーナーを構築した。
【0049】
<例5>
上記例1で使用したアクリル系粘着剤に代えて、市販される合成ゴム系粘着剤(ブチルゴムをメインポリマー(エラストマー)とする人工芝固定用両面テープの粘着剤:株式会社ニトムズ製品)を使用した以外は、同様のプロセスを経て形成された粘着体(厚さ38μmのPET製基材+厚さ約80μmの粘着剤層)を使用し、支持体の直径(4mm、20mm、35mm、50mm)が異なる計4種類の粘着シートロールを形成した。そして、各粘着シートロールを例1と同様に把持部材40の先端回転軸部44に転動(回転)可能に装着することにより、本例5に係るクリーナーを構築した。
【0050】
<例6>
上記例1で使用したアクリル系粘着剤に代えて、市販されるホットメルト型粘着剤(エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)をメインポリマー(酢酸ビニル含有量25%)とする感熱性接着剤:株式会社ニトムズ製品)を使用した以外は、同様のプロセスを経て形成された粘着体(厚さ38μmのPET製基材+厚さ約80μmの粘着剤層)を使用し、支持体の直径(4mm、20mm、35mm、50mm)が異なる計4種類の粘着シートロールを形成した。そして、各粘着シートロールを例1と同様に把持部材40の先端回転軸部44に転動(回転)可能に装着することにより、本例6に係るクリーナーを構築した。
【0051】
<例7>
従来品であるフローリング用ロール形状クリーナー(商品名「コロコロ(登録商標)」:株式会社ニトムズ製品)を例7として使用した。
【0052】
[粘着力の評価試験]
供試体(被着体)としてSUS304を使用し、当該SUSの表面に対する粘着力をJIS Z0237に規定する180°剥離試験に基づいて評価した。
具体的には、上記例1〜例7に係るクリーナーに備えられる粘着体(幅25mmに裁断したもの)をSUS304製の板材に貼り付け、23℃、RH50%の測定環境にて、引張速度300mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力(N/25mm)を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
[皮脂汚れ除去性能評価試験]
供試体としてタブレット型パソコン(iPad(登録商標):アップル社製品)を使用し、当該タブレット型パソコンの平滑なプレート表面(アルミノケイ酸ガラス製)に付着する有機物からなる汚れ(具体的には人の皮脂汚れ)を除去する能力を調べた。
具体的には、試験者の顔面その他の皮膚に付着する皮脂成分を手指にこすり付け、当該手指に付いている皮脂成分や汗を上記タブレット型パソコンの平滑なプレート表面の一部に擦りつけて転写した。かかる皮脂や汗の転写量は、(株)堀場製作所製品:ハンディ光沢計「グロスチェッカ(商標)IG−331」を測定角60°で使用し、光沢度(測定値)が約60となる量とした。
次いで、上記例1〜例7に係るクリーナーを使用し、皮脂汚れが付いたプレート表面(上記光沢度:約60)の上にて当該クリーナーの粘着体(粘着シートロール)を1回転がした。転がし速度は約0.5m/秒とした。また、転がす際の作業者の押圧力は約300gとした。而して、1回転がした後のプレート表面の光沢度を上記ハンディ光沢計で測定し、測定した光沢度により、皮脂汚れ除去性能の指標とした。結果を表2に示す。
【0056】
上記試験の結果、粘着剤がアクリル系粘着剤である例1および例2のクリーナー、粘着剤が天然ゴム系粘着剤である例3のクリーナー、ならびに粘着剤がウレタン系粘着剤である例4のクリーナーについては、光沢度が90以上という高い皮脂汚れ除去性能を有することが認められた。特に例1のクリーナーについては、光沢度が平均値95という高いクリーニング性能を有していた。
また、例1〜例4のクリーナーについては、上記180°剥離試験における粘着力が1〜7N/25mm程度(より具体的には1.3〜6.5N/25mm)であった。したがって、例1〜例4のクリーナーは、使用者が平滑なプレート表面を適度な転がり抵抗(回転抵抗)を有しつつ移動(転動)させることができる極めて使用勝手のよいロール形状クリーナーである。なお、ここでは具体的な数値は示していないが、転がり抵抗(回転抵抗)は、
図3に示すような状態で、大気圧条件(例えば温度23℃、相対湿度50%の空気中)にて、試験者が取っ手42を持ち、プレート表面2と把持部材40(取っ手42)の間の角度が一定(例えば55°)となるようにして、所定の速度(例えば725mm/秒)でプレート表面2上を転がし、このとき取っ手42にかかる力(回転抵抗値)を、デジタルフォースゲージで測定し、粘着剤層32の所定幅(例えば150mm)あたりの値(N/150mm)に換算することにより求めることができる。
【0057】
他方、例5〜例7のクリーナーについては、光沢度が90未満(平均値で66〜86)であり、充分な皮脂汚れ除去性能を有していないことが認められた。
また、例5〜例7のクリーナーについては、上記180°剥離試験における粘着力がほぼ10〜60N/25mmであり、使用者が平滑なプレート表面を移動(転動)させるには、かなりの抵抗があり、この種の用途には向かないことが認められた。
【0058】
<例8〜例13>
粘着剤として、アクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHA)とアクリル酸(AA)とを質量比で2−EHA:AA=95:5となるように3つ口フラスコに投入し(溶剤はトルエンを使用した。)、窒素気流下にて、重合開始剤として過酸化ベンゾイルを添加し、60℃に昇温させて2時間反応させ、さらに80℃に昇温して1時間反応させることにより、重量平均分子量(MW)が凡そ50万〜60万のアクリル系ポリマー溶液を調製した。次いで、かかるアクリル系ポリマー溶液のポリマー固形分100質量部に対し、表3に示す割合の可塑剤(アジピン酸ジイソノニル:「モノサイザー(登録商標)W−242」、DIC(株)製品)と、0.1質量部の架橋剤(エポキシ系架橋剤:「TETRAD(登録商標)C」、三菱瓦斯化学(株)製品)を混合し、例8〜13に係るアクリル系粘着剤を調製した。
【0059】
上記得られたアクリル系粘着剤を、厚さ38μmのPET製のシート状基材(幅:約8cm)の表面に塗付し、オーブンにて110℃で3分間の乾燥処理を行い、厚さ(糊厚)が約50μmの粘着剤層を形成した。
こうして得られた粘着体を、直径(外径)が20mmのボール紙製の円筒状支持体の表面に、それぞれ、少なくとも5周以上巻回されるように粘着体を巻回し、例8〜13に係る粘着シートロールを形成した。そして、各粘着シートロールを上述した
図1に示すような把持部材40の先端回転軸部44に転動(回転)可能に装着し、例8〜13に係るクリーナーを構築した。
【0060】
[汚れ除去性能評価試験]
(光沢度)
可塑剤の配合量と光沢度との関係について検討した。具体的には、試験者の顔面その他の皮膚に付着する皮脂成分を手指にこすり付け、当該手指に付いている皮脂成分や汗をタブレット型パソコン(iPad(登録商標):アップル社製品)の平滑なプレート表面(アルミノケイ酸ガラス製)の一部に擦りつけて転写した。かかる皮脂や汗の転写量は、(株)堀場製作所製品:ハンディ光沢計「グロスチェッカ(商標)IG−331」を測定角60°で使用し、光沢度(測定値)が約60となる量とした。
次いで、上記例8〜13に係るクリーナーを使用し、皮脂汚れが付いたプレート表面(上記光沢度:約60)の上にて当該クリーナーの粘着体(粘着シートロール)を1回転がした。転がし速度は約0.5m/秒とした。また、転がす際の作業者の押圧力は約700gとした。而して、1回転がした後のプレート表面の光沢度を上記ハンディ光沢計で測定し、測定した光沢度により、皮脂汚れ除去性能の指標とした。上記評価試験は、2人の試験者でそれぞれ行い、その平均値を記録した。
また、上記皮脂成分をグリセロールモノオレエート(花王社製、商品名「レオドール(登録商標)MO−60」)に代えて上記と同様の試験を2回行い、その平均値を記録した。なお、上記グリセロールモノオレエートは皮脂に代替するものとして用いた。
評価結果を表3に示す。
【0061】
(汚れ除去率)
クリーニング回数と汚れ除去率との関係について検討した。具体的には、上記皮脂汚れ除去性能評価試験と同様に、皮脂成分や汗をタブレット型パソコンの平滑なプレート表面の一部に擦りつけて転写した。かかる皮脂や汗の転写量は、上記ハンディ光沢計を測定角60°で使用し、光沢度(測定値)が約60となる量とした。
上記例11に係るクリーナーを使用し、皮脂汚れが付いたプレート表面(具体的にはプレート表面の左半分)の上にて当該クリーナーの粘着体(粘着シートロール)を1回転がした(1回目クリーニング)。転がし速度は約0.5m/秒とした。また、転がす際の作業者の押圧力は約700gとした。転がした後のプレート表面の光沢度を上記ハンディ光沢計で測定した。この測定値を1回目クリーニング後の光沢度とした。
下記式より、例11に係るクリーナーによる上記タブレット型パソコンの汚れ除去率(%)を求めた。
汚れ除去率(%)=(C−A)/(B−A)×100
A:皮脂成分と汗を転写した状態の光沢度
B:予め測定しておいたクリーンな状態の光沢度
C:1回目クリーニング後の光沢度
1回目クリーニング後の光沢度を測定した後、当該クリーナーの粘着シートロールを再度プレート表面(1回目クリーニングと同じ領域)の上で1回転がした(2回目クリーニング)。転がし速度および押圧力は1回目と同じとした。転がした後のプレート表面の光沢度を上記ハンディ光沢計で測定した。この測定値を2回目クリーニング後の光沢度とした。この測定値を上記式のCに代入して、1回目クリーニング後と同様に、2回目クリーニング後の汚れ除去率(%)を求めた。
1回目クリーニング、2回目クリーニングと同じ要領で3回目以降のクリーニングを行い、光沢度の測定を行い、2回目クリーニング後の場合と同様にして3回目以降のクリーニング後の汚れ除去率(%)を求めた。これを汚れ除去率が100%になるまで繰り返した。
また、上記皮脂成分をグリセロールモノオレエート(花王社製、商品名「レオドール(登録商標)MO−60」)に代えて上記と同様の試験を行った。
結果を表4に示す。タブレット型パソコンのプレート表面の各回におけるクリーニング状態を
図7〜9に示す。
図7〜9において、プレート表面の左半分が例11に係るクリーナーによるクリーニング状態である。
【0062】
上記と同様に、皮脂汚れを付けることにより光沢度(測定値)を約60としたプレート表面を有するタブレット型パソコンを用意した。上記例11に係るクリーナーに代えてTV用クリーニングクロス(日立マクセル社製、大画面テレビクリーニングクロス:ドライタイプ)を用いて、皮脂汚れが付いたプレート表面(具体的にはプレート表面の右半分)の上にて、上記例11に係るクリーナーによる転がり方向と同じ方向にワイピングを1回行った(1回目クリーニング)。ワイピング速度は約0.5m/秒とした。また、ワイピングの際の作業者の押圧力は約700gとした。ワイピングした後のプレート表面の光沢度を上記ハンディ光沢計で測定した。この測定値を1回目クリーニング後の光沢度とした。この測定値を用いて、上記式から、上記クリーニングクロスによる上記タブレット型パソコンの汚れ除去率(%)を求めた。
1回目クリーニング後の光沢度を測定した後、当該クリーニングクロスで再度プレート表面(1回目クリーニングと同じ領域)の上を1回目と同じ方向にワイピングした(2回目クリーニング)。ワイピング速度および押圧力は1回目と同じとした。ワイピングした後のプレート表面の光沢度を上記ハンディ光沢計で測定した。この測定値を2回目クリーニング後の光沢度とした。この測定値を上記式のCに代入して、1回目クリーニング後と同様の方法により、2回目クリーニング後の汚れ除去率(%)を求めた。
1回目クリーニング、2回目クリーニングと同じ要領で3回目以降のクリーニングを行い、光沢度の測定を行った。2回目クリーニング後の場合と同様にして3回目以降のクリーニング後の汚れ除去率(%)を求めた。これを汚れ除去率が100%になるまで繰り返した。
また、上記皮脂成分をグリセロールモノオレエート(花王社製、商品名「レオドール(登録商標)MO−60」)に代えて上記と同様の試験を行った。
結果を表4に示す。タブレット型パソコンのプレート表面の各回におけるクリーニング状態を
図7〜9に示す。
図7〜9において、プレート表面の右半分がクリーニングクロスによるクリーニング状態である。
【0063】
[粘着力の評価試験]
また、例8,9,11および13に係る粘着剤について、供試体(被着体)としてタブレット型パソコン(iPad(登録商標):アップル社製品)を使用し、JIS Z0237に準拠して、当該タブレット型パソコンのプレート表面(アルミノケイ酸ガラス製)に対する粘着力を評価した。
具体的には、上記各例に係るクリーナーに備えられる粘着体(幅25mmに裁断したもの)をタブレット型パソコンのプレート表面に貼り付け、23℃、RH50%の測定環境にて、引張速度300mm/分および1000mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力(N/25mm)を測定した。測定は各引張速度で2回づつ行い、平均値を記録した。結果を表5に示す。
【0067】
表3に示されるように、アクリル系粘着剤中における可塑剤の配合量が増加するにつれて、光沢度が向上する傾向が見られた。また、具体的な数値は示さないが、可塑剤を含有する粘着剤を用いた例9〜13に係る粘着シートロールは、可塑剤を含有しない例8の粘着シートロールと比べて転がり抵抗(回転抵抗)が小さく、操作性に優れるものであった。さらに、具体的な数値は示さないが、可塑剤の含有量が少なくなるほど投錨性が向上する傾向が見られた。また、表5に示されるように、可塑剤の配合量が多くなるにつれて粘着力は低下する傾向が確認された。
さらに、表4に示されるように、例11に係る粘着シートロールを用いて構築されたクリーナーは、3回の転がしでタブレット型パソコンのプレート表面上の汚れを完全に除去することができた。一方、市販のクリーニングクロスを用いた場合、汚れを完全に除去するまでに5〜7回のワイピングを要した。また、
図7〜9から、クリーニングクロスでは汚れを引き伸ばしているようなワイピングとなってしまうことがわかる。これらの結果から、本発明に係る粘着クリーナーが実用性に優れることがわかる。
【0068】
[汚れ除去性能回復性評価試験]
(汚れ捕捉量)
(1)充分量のグリセロールモノオレエート(花王社製、商品名「レオドール(登録商標)MO−60」)が供給されたタブレット型パソコン(iPad(登録商標):アップル社製品)の平滑なプレート表面(アルミノケイ酸ガラス製)に、例11に係るクリーナーの粘着シートロールを3分間転がし、グリセロールモノオレエートを上記クリーナーの粘着体に転写させた。押圧力は約700gとした。
(2)このときの上記クリーナーの重量を測定し、初期重量との差をグリセロールモノオレエートの捕捉量として記録した。これを1回目捕捉量とした。
(3)3分間転がした直後から1分間隔で、上記と異なるタブレット型パソコン(iPad(登録商標):アップル社製品)の平滑なプレート表面(クリーンな状態)に上記クリーナーの粘着シートロールを押圧力約1kgで約1/4回転させ、上記プレート表面へのグリセロールモノオレエートの転写レベルを目視で観察した。3回連続して転写が認められなかった時点で、上記(1)の操作を再び行い、このときの上記クリーナーの重量を測定し、1回目捕捉量との差をグリセロールモノオレエートの捕捉量として記録した。これを2回目捕捉量とした。
上記転写レベルの目視観察は次のような基準で行った。すなわち、グリセロールモノオレエートの転写の程度を相対評価として5段階に分けて採点した。点数が低いほど転写が多く、点数が高いほど転写が少ないことを示す。
1点:転写が多く認められた。
2点:転写が認められた。
3点:少量の転写が認められた。
4点:わずかな転写が認められた。
5点:転写は認められなかった。
(4)上記(1),(3)と同様の操作を行い、3回目捕捉量を求めた。
(5)上記(1),(3)と同様の操作を行い、4回目捕捉量を求めた。ただし、4回目は転写レベルの目視観察は行わなかった。
捕捉量(mg)については、上記の評価を3つのサンプルを用いて行い、その平均値を採用した。また、粘着シートロールの粘着体の表面積を除することにより単位面積換算の捕捉量(mg/cm
2)も求めた。結果を表6に示す。転写レベルの目視観察の結果を
図10に示す。
【0069】
(汚れ捕捉能力の回復性)
可塑剤の配合量と汚れ捕捉能力の回復性との関係について検討した。
(1)充分量のグリセロールモノオレエート(花王社製、商品名「レオドール(登録商標)MO−60」)が供給されたタブレット型パソコン(iPad(登録商標):アップル社製品)の平滑なプレート表面(アルミノケイ酸ガラス製)に、例8,9,11および13に係るクリーナーならびに例7に係る従来のフローリング用ロール形状クリーナーの粘着シートロールをそれぞれ3分間転がし、グリセロールモノオレエートを上記クリーナーの粘着体に転写させた。押圧力は約700gとした。
(2)このときの上記クリーナーの重量を測定し、初期重量との差をグリセロールモノオレエートの捕捉量として記録した。これを1回目捕捉量とした。
(3)上記3分間転がした直後から1分間隔で、上記と異なるタブレット型パソコン(iPad(登録商標):アップル社製品)の平滑なプレート表面(クリーンな状態)に上記クリーナーの粘着シートロールを押圧力約1kgで約1/4回転させ、上記プレート表面へのグリセロールモノオレエートの転写レベルを目視で観察した。3回連続して転写が認められなかった時点で、上記(1)の操作を再び行い、このときの上記クリーナーの重量を測定し、1回目捕捉量との差をグリセロールモノオレエートの捕捉量として記録した。これを2回目捕捉量とした。
上記転写レベルの目視観察は上述の基準で行った。捕捉量(mg)については、粘着シートロールの粘着体の表面積を除することにより単位面積換算の捕捉量(mg/cm
2)も求めた。結果を表7に示す。転写レベルの目視観察の結果を
図11に示す。
【0072】
表6に示されるように、例11に係るクリーナーのグリセロールモノオレエート捕捉量は、最大で20mgであった。人の皮脂に対しても同様の効果が期待できる。また、表6および
図10に示されるように、クリーナーは特に捕捉物を除去しなくても汚れ捕捉能力が回復することがわかる。したがって、タブレット型パソコン上の皮脂や汗を除去した後、しばらく時間を置くことにより何度でも繰り返し使用することができる。
【0073】
表7に示されるように、粘着剤中に可塑剤を配合することにより、汚れの捕捉量を増大させることができた。また、
図11に示されるように、粘着剤中における可塑剤の配合量が増加するほど汚れ捕捉能力の回復に要する時間が短縮される傾向が見られた。これらの結果から、可塑剤を粘着剤に配合することにより、皮脂等の有機物からなる汚れを捕捉する能力が向上することがわかる。また、そのように捕捉量が増大するにもかかわらず、可塑剤の配合量を増加させることにより、汚れ捕捉能力の回復時間が短縮され得ることがわかる。
【0074】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。