(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロータコアと、前記ロータコアの外周上に周方向に並んで配置され、前記ロータコアの軸方向に対して傾いて設けられる複数の永久磁石とを備えるロータの製造方法であって、
前記永久磁石を製造する工程と、
前記ロータコアの外周上に複数の前記永久磁石を設ける工程とを備え、
前記永久磁石を製造する工程は、
薄板状の磁石ブロックを準備する工程と、
前記磁石ブロックを加工することによって、厚み方向において互いに表裏に配置される第1面および第2面と、前記第1面および前記第2面に連なり、互いに表裏に配置される第3面および第4面と、前記第1面、前記第2面、前記第3面および前記第4面に連なり、互いに表裏に配置される第5面および第6面とを含み、前記第1面および前記第2面の平面視が平行四辺形となり、前記第3面および前記第4面が互いに平行となり、前記第5面および前記第6面が、前記第3面から前記第4面に向けて平面状に延在する形状を、前記磁石ブロックに形成する工程とを含み、
前記ロータコアの外周上に複数の永久磁石を設ける工程は、
前記第1面が、前記ロータコアの外周面と向かい合わせとなり、前記第3面および前記第4面が、それぞれ、前記ロータコアの軸方向における前記永久磁石の両端に位置し、互いに隣り合う前記永久磁石間において、前記第5面および前記第6面が向かい合わせとなる姿勢により、前記ロータコアの外周上に複数の前記永久磁石を配置する工程を含む、ロータの製造方法。
前記永久磁石を製造する工程は、前記磁石ブロックを加工する工程の後に、前記磁石ブロックの表面を塗装する工程をさらに含む、請求項2または3に記載のロータの製造方法。
前記永久磁石を製造する工程は、前記磁石ブロックを加工することによって、前記第1面および前記第2面が、前記第5面から前記第6面に向けて円弧状に延在する形状を、前記磁石ブロックに形成する工程をさらに含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のロータの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるように、コギングトルクを低減するために、永久磁石がロータの回転軸に対して斜め(スキュー)に設けられたロータが知られている。このようなロータにおいて、永久磁石の理想的なスキュー形状は、ロータの回転軸に対して平行な永久磁石を回転軸を中心に捩じった形状である。しかしながら、そのような理想的なスキュー形状を得ようとすると、永久磁石の製造工程が複雑となる。
【0005】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、コギングトルクの低減が図られたロータが、簡易な製造工程により得られるロータの製造方法およびロータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従ったロータの製造方法は、ロータコアと、ロータコアの外周上に周方向に並んで配置され、ロータコアの軸方向に対して傾いて設けられる複数の永久磁石とを備えるロータの製造方法である。ロータの製造方法は、永久磁石を製造する工程と、ロータコアの外周上に複数の永久磁石を設ける工程とを備える。永久磁石を製造する工程は、薄板状の磁石ブロックを準備する工程と、磁石ブロックを加工することによって、厚み方向において互いに表裏に配置される第1面および第2面と、第1面および第2面に連なり、互いに表裏に配置される第3面および第4面と、第1面、第2面、第3面および第4面に連なり、互いに表裏に配置される第5面および第6面とを含み、第1面および第2面の平面視が平行四辺形となり、第3面および第4面が互いに平行となり、第5面および第6面が、第3面から第4面に向けて平面状に延在する形状を、磁石ブロックに形成する工程とを含む。ロータコアの外周上に複数の永久磁石を設ける工程は、第1面が、ロータコアの外周面と向かい合わせとなり、第3面および第4面が、それぞれ、ロータコアの軸方向における永久磁石の両端に
位置し、互いに隣り合う永久磁石間において、第5面および第6面が向かい合わせとなる
姿勢により、ロータコアの外周上に複数の永久磁石を配置する工程を含む。
【0007】
このように構成されたロータの製造方法によれば、磁石ブロックを、第5面および第6面が第3面から第4面に向けて平面状に延在するスキュー形状に加工する。これにより、コギングトルクが低減されたロータを、簡易な工程により得ることができる。
【0008】
また好ましくは、磁石ブロックを準備する工程は、薄板状の磁石ブロックをその厚み方向に切断することによって、磁石ブロックの分割体を得る工程と、磁石ブロックの分割体を互いに接合することによって、元の磁石ブロックに対応する形状を有する磁石ブロックを得る工程とを含む。
【0009】
このように構成されたロータの製造方法によれば、渦電流損の発生が抑制されるロータを、簡易な工程により得ることができる。
【0010】
また好ましくは、磁石ブロックの分割体を互いに接合する工程は、磁石ブロックの分割体を一方向に積層する工程を含む。磁石ブロックを加工する工程は、磁石ブロックの分割体の積層方向において両端に位置する磁石ブロックの端面を加工する工程を含む。
【0011】
このように構成されたロータの製造方法によれば、磁石ブロックの分割体の積層方向における永久磁石の長さを、精度よく調整することができる。
【0012】
また好ましくは、永久磁石を製造する工程は、磁石ブロックを加工する工程の後に、磁石ブロックの表面を塗装する工程をさらに含む。
【0013】
このように構成されたロータの製造方法によれば、磁石ブロックの分割体を個々に塗装する場合と比較して、塗装工程を簡略化することができる。
【0014】
また好ましくは、永久磁石を製造する工程は、磁石ブロックを加工することによって、第1面および第2面が、第5面から第6面に向けて円弧状に延在する形状を、磁石ブロックに形成する工程をさらに含む。
【0015】
このように構成されたロータの製造方法によれば、磁石ブロックの第1面および第2面を、ロータコアの特性に応じた形状に加工することができる。
【0016】
この発明に従ったロータは、ロータコアと、ロータコアの外周上に周方向に並んで配置され、ロータコアの軸方向に対して傾いて設けられる複数の永久磁石とを備える。永久磁石は、互いに表裏に配置される第1面および第2面と、第1面および第2面に連なり、互いに表裏に配置される第3面および第4面と、第1面、第2面、第3面および第4面に連なり、互いに表裏に配置される第5面および第6面とを含み、第1面および第2面の平面視が平行四辺形となり、第3面および第4面が互いに平行となり、第5面および第6面が、第3面から第4面に向けて平面状に延在する形状を有する。複数の永久磁石は、第1面が、ロータコアの外周面と向かい合わせとなり、第3面および第4面が、それぞれ、ロータコアの軸方向における永久磁石の両端に位置決めされ、互いに隣り合う永久磁石間において、第5面および第6面が向かい合わせとなるように、ロータコアの外周上に配置されている。
【0017】
このように構成されたロータによれば、永久磁石が、第5面および第6面が第3面から第4面に向けて平面状に延在するスキュー形状を有する。これにより、コギングトルクが低減されたロータの製造工程を、簡易化することができる。
【0018】
また好ましくは、永久磁石は、磁石ブロックの分割体が互いに接合されてなる。
このように構成されたロータによれば、渦電流損の発生を抑制することができる。
【0019】
また好ましくは、第1面および第2面は、第5面から第6面に向けて円弧状に延在する形状を有する。
【0020】
このように構成されたロータによれば、永久磁石の第1面および第2面を、ロータの特性に応じた形状とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上に説明したように、この発明に従えば、コギングトルクの低減が図られたロータが、簡易な製造工程により得られるロータの製造方法およびロータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1におけるロータを示す斜視図である。
図1を参照して、本実施の形態におけるロータ10は、ロータ10の外周上に隙間(ギャップ)を設けて配置されるステータ(不図示)と対をなしてモータを構成する。ロータ10は、マシニングセンタの主軸を回転駆動させるモータに用いられる。
【0025】
ロータ10は、図中に示す仮想上の中心軸101を中心に回転可能なように支持されている。ロータ10は、モータの稼働時、中心軸101を回転中心として回転する。ロータ10の最高回転数は、たとえば、10000rpm以上である。
【0026】
図2は、
図1中のロータを構成する永久磁石を示す三面図である。
図1および
図2を参照して、ロータ10は、ロータコア21と、複数の永久磁石31とを有する。
【0027】
ロータコア21は、円筒形状を有する。ロータコア21は、中心軸101を中心にその軸方向に円筒状に延びる形状を有する。ロータコア21は、端面23および端面24を有する。端面23および端面24は、それぞれ、中心軸101の軸方向におけるロータコア21の一方端および他方端に配置されている。端面23および端面24は、中心軸101に直交する平面内で延在する。
【0028】
ロータコア21は、磁性材料から形成されている。本実施の形態では、ロータコア21が、複数枚の電磁鋼板が中心軸101の軸方向に積層されることによって構成されている。
【0029】
複数の永久磁石31は、ロータコア21の外周上に設けられている。複数の永久磁石31は、中心軸101を中心とする周方向に間隔を設けて配置されている。複数の永久磁石31は、等間隔に配置されている。永久磁石31は、接着剤によりロータコア21の外周面に接合されている。
【0030】
永久磁石31は、磁石ブロックの分割体32(以下、「ブロック分割体32」ともいう)が互いに接合されることによって構成されている(
図2中の永久磁石31の正面図を参照のこと)。
【0031】
ブロック分割体32は、中心軸101の軸方向に沿って積層されている。ブロック分割体32同士は、接着剤により接合されている。本実施の形態では、55個のブロック分割体32が互いに接合されることによって、永久磁石31が構成されている。一例として、各ブロック分割体32の厚みは、2mmである。
【0032】
このように永久磁石31を複数のブロック分割体32の接合体から構成することによって、モータの稼動時、ロータ10における渦電流損の発生を抑制することができる。
【0033】
永久磁石31の表面(後述する第1面41、第2面42、第3面43、第4面44、第5面45および第6面46)には、塗装が施されている。ブロック分割体32同士の接合面には、塗装が施されていない。
【0034】
永久磁石31は、ロータコア21の軸方向(中心軸101の軸方向)に対して傾いて設けられるスキュー形状を有する。以下、永久磁石31が有するスキュー形状について、具体的に説明する。
【0035】
永久磁石31は、第1面41と、第2面42と、第3面43と、第4面44と、第5面45と、第6面46とを有する。
【0036】
第1面41および第2面42は、互いに表裏に配置されている。第1面41は、ロータコア21の外周面と向かい合わせに配置されている。永久磁石31は、ロータコア21の外周面と第1面41との間に介挿された接着剤によって、ロータコア21に接合されている。第2面42は、ロータ10と隙間を設けて配置されるステータ(不図示)と向かい合わせとなる。
【0037】
第1面41および第2面42は、第3面43、第4面44、第5面45および第6面46よりも大きい面積を有する。第1面41および第2面42は、中心軸101の半径方向から見た場合に平行四辺形の平面視を有する。第1面41および第2面42は、中心軸101を中心とする周方向において円弧状に延びる湾曲面から構成されている。第1面41および第2面42の、中心軸101の軸方向に沿った端辺は、第1面41および第2面42の、中心軸101を中心とする周方向に沿った端辺よりも長い。
【0038】
なお、第1面41および第2面は、上記の湾曲面から構成される形状に限られない。たとえば、ロータコア21の外周面が多角形断面である場合、第1面41は、そのロータコア21の外周面に合わせて、平面形状を有してもよい。第2面42は、モータの特性に合わせて、平面形状や、周方向において中高の円弧状に延びる湾曲形状を有してもよい。
【0039】
第3面43および第4面44は、第1面41および第2面42に連なり、互いに表裏に配置されている。第3面43および第4面44は、それぞれ、中心軸101の軸方向における永久磁石31の両端に位置決めされている。
【0040】
第3面43は、中心軸101の軸方向においてロータコア21の端面23と同じ側に配置され、第4面44は、中心軸101の軸方向においてロータコア21の端面24と同じ側に配置されている。第3面43は、ロータコア21の端面23と面一となるように配置され、第4面44は、ロータコア21の端面24と面一となるように配置されている。
【0041】
第3面43および第4面44は、平面形状を有する。第3面43および第4面44は、中心軸101に直交する平面内に配置されている。第3面43および第4面44は、互いに平行である。第3面43および第4面44は、中心軸101の軸方向から見た場合に、中心軸101を中心にその周方向に帯状に延びている。第3面43および第4面44は、平行四辺形の平面視を有する第1面41および第2面42の、中心軸101を中心とする周方向に沿った端辺に連なっている。
【0042】
第5面45および第6面46は、第1面41、第2面42、第3面43および第4面44に連なり、互いに表裏に配置されている。互いに隣り合う永久磁石31間において、第5面45および第6面46は、向かい合わせとなるように配置されている。
【0043】
第5面45および第6面46は、第3面43から第4面44に向けて平面状に延在している。第5面45および第6面46は、互いに平行である。第5面45および第6面46は、中心軸101の軸方向に対して斜め方向の平面内に配置されている。第5面45および第6面46は、中心軸101の軸方向に沿って延在する滑らかな平面である。第5面45および第6面46は、平行四辺形の平面視を有する第1面41および第2面42の、中心軸101の軸方向に沿った端辺に連なっている。
【0044】
図3は、
図1中の矢印IIIに示す方向から見た永久磁石を示す図である。
図3を参照して、第3面43と第5面45とが交わる位置には、稜線51が形成されている。第5面45と第4面44とが交わる位置には、稜線52が形成されている。第3面43と第6面46とが交わる位置には、稜線53が形成されている。第6面46と第4面44とが交わる位置には、稜線54が形成されている。
【0045】
稜線51、稜線52、稜線53および稜線54は、互いに平行である。中心軸101から、永久磁石31の周方向における中心位置(稜線52と稜線53との間の中心位置)に向けて延びる仮想直線102を想定した場合に、仮想直線102と、稜線51、稜線52、稜線53および稜線54とは互いに平行である。
【0046】
第5面45は、稜線51と稜線52との間において、稜線51および稜線52に平行な直線が連続して並ぶ平面により構成されている。第6面46は、稜線53および稜線54の間において、稜線53および稜線54に平行な直線が連続して並ぶ平面により構成されている。
【0047】
図4から
図8は、この発明の実施の形態1におけるロータの製造方法の工程を示す図である。続いて、この発明の実施の形態1におけるロータの製造方法により、
図1中のロータ10を製造する工程について説明する。
【0048】
図4を参照して、まず、永久磁石31を製造する工程を実施する。本工程時、薄板状の磁石ブロック61を準備する。磁石ブロック61は、薄板状の直方体形状を有する。磁石ブロック61は、その厚み方向から見た場合に、長手方向と短手方向とを有する矩形形状の平面視を有する。
【0049】
図5を参照して、次に、磁石ブロック61をその厚み方向に切断することによって、磁石ブロック61の分割体であるブロック分割体32を得る。
【0050】
本実施の形態では、磁石ブロック61を、矩形形状の平面視における短手方向に沿って切断する。磁石ブロック61を、55個のブロック分割体32に分割する。ブロック分割体32は、磁石ブロック61の平面視における長手方向が厚み方向となる薄板形状を有する。
【0051】
図6を参照して、次に、ブロック分割体32を互いに接合することによって、元の磁石ブロック61に対応する形状を有する磁石ブロック(以下、「分割体接合ブロック」という)62を形成する。
【0052】
より具体的には、複数のブロック分割体32を、前の工程におけるブロック分割体32の切断面同士が向かい合わせとなるように、一方向に積層する。接着剤を用いて、ブロック分割体32同士を接合する。本工程により得られる分割体接合ブロック62は、磁石ブロック61に対応する形状の薄板状の直方体形状を有する。しかしながら、磁石ブロック61の切断時における切り屑の発生や、接着剤層の厚みまたは組み立て精度のばらつき等に起因して、分割体接合ブロック62の形状は、必ずしも磁石ブロック61の形状に一致するわけではない。
【0053】
分割体接合ブロック62は、第1側面71、第2側面72、第3側面73、第4側面74、第5側面75および第6側面76を有する。
【0054】
第1側面71および第2側面72は、互いに表裏に配置されている。第1側面71および第2側面72は、分割体接合ブロック62の厚み方向に直交する平面である。分割体接合ブロック62をその厚み方向から見た場合に、第1側面71および第2側面72は、矩形形状の平面視を有する。
【0055】
第3側面73および第4側面74は、互いに表裏に配置されている。第3側面73および第4側面74は、それぞれ、ブロック分割体32の積層方向における分割体接合ブロック62の両端に配置されている。第3側面73および第4側面74は、矩形形状の平面視を有する第1側面71および第2側面72の短辺に連なっている。第3側面73および第4側面74は、積層された複数のブロック分割体32のうち、その両端に配置されたブロック分割体32の表面により構成されている。
【0056】
第5側面75および第6側面76は、互いに表裏に配置されている。第5側面75および第6側面76は、それぞれ、分割体接合ブロック62の厚み方向およびブロック分割体32の積層方向に直交する方向における分割体接合ブロック62の両端に配置されている。第5側面75および第6側面76は、矩形形状の平面視を有する第1側面71および第2側面72の長辺に連なっている。
【0057】
図7および
図8を参照して、次に、分割体接合ブロック62を加工することによって、厚み方向において互いに表裏に配置される第1面41および第2面42と、第1面41および第2面42に連なり、互いに表裏に配置される第3面43および第4面44と、第1面41、第2面42、第3面43および第4面44に連なり、互いに表裏に配置される第5面45および第6面46とを含み、第1面41および第2面42の平面視が平行四辺形となり、第3面43および第4面44が互いに平行となり、第5面45および第6面46が、第3面43から第4面44に向けて平面状に延在する形状(すなわち、
図2中の永久磁石31が有するスキュー形状)を、分割体接合ブロック62に形成する。
【0058】
より具体的には、
図7中に示すように、分割体接合ブロック62の第3側面73を、第3側面73に対して斜め方向に沿って切断し(
図7中の点線103に示す加工)、分割体接合ブロック62の第4側面74を、第4側面74に対して斜め方向に沿って切断する(
図7中の点線104に示す加工)。これにより、第3側面73の加工面を、永久磁石31の第3面43とし、第4側面74の加工面を、永久磁石31の第4面44とする。また、第5側面75を、未加工のまま永久磁石31の第5面45とし、第6側面76を、未加工のまま永久磁石31の第6面46とする。第5面45および第6面46は、第3面43から第4面44に向けて延在する滑らかな平面となる。
【0059】
なお、分割体接合ブロック62の第5側面75および第6側面76を切断し、これらの加工面を、永久磁石31の第5面45および第6面46としてもよい。
【0060】
図8中に示すように、分割体接合ブロック62の第1側面71を、第2側面72から見て凹となる円弧形状に切断する(
図8中の点線105に示す加工)。分割体接合ブロック62の第2側面72を、第1側面71から見て凸となる円弧形状に切断する(
図8中の点線106に示す加工)。これにより、第1側面71の加工面を、永久磁石31の第1面41とし、第2側面72の加工面を、永久磁石31の第2面42とする。
【0061】
次に、分割体接合ブロック62の表面に塗装処理を行なうことにより、
図2中の永久磁石31を得る。
【0062】
本実施の形態では、塊状の分割体接合ブロック62に対して塗装処理を行なうため、ブロック分割体32の個々に塗装処理を行なう場合と比較して、塗装工程を簡略化することができる。
【0063】
図1を参照して、続いて、ロータコア21の外周上に複数の永久磁石31を設ける工程を実施する。本工程時、第1面41が、ロータコア21の外周面と向かい合わせとなり、第3面43および第4面44が、それぞれ、ロータコア21の軸方向(中心軸101の軸方向)における永久磁石31の両端に位置決めされ、互いに隣り合う永久磁石31間において、第5面45および第6面46が向かい合わせとなるように、ロータコア21の外周上に複数の永久磁石31を配置する。
【0064】
永久磁石31の第1面41および/またはロータコア21の外周面に塗布された接着剤によって、複数の永久磁石31をロータコア21に接合する。以上の工程により、
図1中のロータ10が完成する。
【0065】
図9は、
図6中に示す分割体接合ブロックの第1変形例を示す斜視図である。
図9を参照して、本変形例では、磁石ブロック61をその厚み方向に切断することによって、磁石ブロック61の分割体であるブロック分割体33を得る。この際、磁石ブロック61を、矩形形状の平面視における長手方向に沿って切断する。次に、ブロック分割体33を互いに接合することによって、磁石ブロック61に対応する形状を有する分割体接合ブロック63を形成する。
【0066】
図10は、
図6中に示す分割体接合ブロックの第2変形例を示す図である。
図10を参照して、本変形例では、磁石ブロック61をその厚み方向に切断することによって、磁石ブロック61の分割体であるブロック分割体34を得る。この際、磁石ブロック61を、矩形形状の平面視における短手方向および長手方向に沿って切断する。次に、ブロック分割体34を互いに接合することによって、磁石ブロック61に対応する形状を有する分割体接合ブロック64を形成する。
【0067】
これらの変形例に示すように、磁石ブロック61の分割方法は、渦電流損の発生を抑制可能なものであれば、特に限定されない。
【0068】
続いて、本実施の形態におけるロータ10およびロータの製造方法によって奏される作用効果について、理想的なスキュー形状や比較例におけるスキュー形状の問題点を交えながら説明する。
【0069】
図11および
図12は、理想的なスキューの基本概念を示す斜視図である。図中では、中心軸101の軸方向における永久磁石130の長さ(高さ)がHである場合に、その高さ方向における永久磁石130の上端位置が「+H/2」と示され、その高さ方向における永久磁石130の下端位置が「−H/2」と示され、永久磁石130の上端位置と下端位置との中間位置が「0」と示されている。
図12中では、ある特定位置からの、中心軸101の軸周りにおける角度が「θ」と示されている。
【0070】
図11および
図12を参照して、理想的なスキュー形状を有する永久磁石131は、半径方向から見た場合に矩形形状を有する永久磁石130を、中心軸101を中心とする周方向に捩じることによって得られる。
【0071】
より具体的には、永久磁石130の中間位置から上端位置にかけて、永久磁石130を矢印111に示す一方向に捩じり、永久磁石130の中間位置から下端位置にかけて、永久磁石130を矢印112に示す反対方向に捩じることによって、理想的なスキュー形状を有する永久磁石131が得られる。
【0072】
図13は、
図12中の矢印XIIIに示す方向から見た永久磁石を示す図である。図中には、
図3中の永久磁石31に対応付けて永久磁石131に参照番号が付されている。
【0073】
図13を参照して、理想的なスキュー形状を有する永久磁石131では、稜線51および稜線53が、互いに平行であり、稜線52および稜線54が、互いに平行である。中心軸101から、永久磁石131の周方向における中心位置(稜線52と稜線53との間の中心位置)に向けて延びる仮想直線102を想定した場合に、稜線51および稜線53は、仮想直線102に対して、周方向における一方の側(
図11中の矢印111に示す捩じり方向)に傾いており、稜線52および稜線54は、仮想直線102に対して、周方向における他方の側(
図11中の矢印112に示す捩じり方向)に傾いている。
【0074】
このため、理想的なスキュー形状においては、第5面45が、稜線51から稜線52に向けて、仮想直線102に対する傾きを変化させながら延在する湾曲面により構成され、第6面46が、稜線53から稜線54に向けて、仮想直線102に対する傾きを変化させながら延在する湾曲面により構成されている。この場合、第5面45および第6面46を3次元的な湾曲面に加工する必要があるため、永久磁石131の製造工程が複雑となる。
【0075】
一方、本実施の形態では、永久磁石31が、第5面45および第6面46が第3面43から第4面44に向けて平面状に延在し、互いに平行となるスキュー形状を有する。このため、スキュー形状を得るための永久磁石31の加工工程が簡易となる。
【0076】
図14は、本実施の形態におけるスキュー形状と、理想的なスキュー形状とのずれ(ステータとのギャップ側)を示すグラフである。
図15は、本実施の形態におけるスキュー形状と、理想的なスキュー形状とのずれ(ロータコア側)を示すグラフである。
【0077】
図14および
図15を参照して、本実施の形態におけるスキュー形状が実線141によって示され、理想的なスキュー形状が点線142によって示されている。本実施の形態におけるスキュー形状は、永久磁石130の中間位置「0」から上端位置「+H/2」および下端位置「−H/2」に向かうほど、理想的なスキュー形状からのずれ量が大きくなるものの、そのずれ量は、コギングトルクを低減するスキュー効果に大きく影響しない程度であり、許容可能である。
【0078】
図16は、比較例におけるスキュー形状を有する永久磁石を示す図である。
図16を参照して、本比較例におけるスキュー形状を有する永久磁石231は、複数の分割体接合ユニット232が組み合わさって構成されている。複数の分割体接合ユニット232が、周方向に一定間隔でずれながらロータの回転軸方向に積層されることによって、疑似的なスキュー形状が実現されている。各分割体接合ユニット232は、ロータの回転軸方向に積層された複数のブロック分割体233(本実施の形態におけるブロック分割体32に対応)から構成されている。
【0079】
本比較例では、まず、複数のブロック分割体233を接合することによって、分割体接合ユニット232を形成する。そのあと、複数の分割体接合ユニット232をロータコアの外周面に接合する。この場合、複数の分割体接合ユニット232をロータの回転軸方向に積み重ねるため、ロータの回転軸方向における永久磁石231の寸法精度が悪くなる。また、ロータコアの外周面に接合する分割体接合ユニット232の数が多く、さらに、各永久磁石231において、複数の分割体接合ユニット232を位置をずらしながらロータコアの外周面に貼り付ける必要があるため、ロータの製造工程が煩雑となる。
【0080】
これに対して、本実施の形態では、
図7中に示す工程において、分割体接合ブロック62の第3側面73および第4側面74を加工するため、ブロック分割体32の積層方向(ロータの回転軸方向)において永久磁石31の寸法を精度よく仕上げることができる。また、各永久磁石31は、1つの分割体接合ブロック62から構成されるため、より少ない工数で、かつ、熟練の技術を要することなく、永久磁石31の貼り付け作業を行なうことができる。
【0081】
このように構成された、この発明の実施の形態1におけるロータ10およびロータの製造方法によれば、コギングトルクの低減が図られたロータを、簡易な製造工程により得ることができる。
【0082】
なお、本実施の形態では、本発明を工作機械の主軸モータ用ロータに適用した場合について説明したが、このような場合に限られず、たとえば、本発明を一般的な産業機械に用いられるモータに適用することも可能である。
【0083】
(実施の形態2)
図17は、この発明の実施の形態2におけるロータを構成する永久磁石を示す三面図である。
図17は、実施の形態1における
図2に対応する。本実施の形態におけるロータおよびロータの製造方法は、実施の形態1におけるロータ10およびロータの製造方法と比較して、基本的には、同様の構造および工程を備える。以下、重複する構造および工程については、その説明を繰り返さない。
【0084】
図17を参照して、本実施の形態におけるロータは、実施の形態1における永久磁石31に替えて、永久磁石36を有する。永久磁石36は、磁石ブロックから構成されている。永久磁石36は、実施の形態1における、複数のブロック分割体32の接合体からなる永久磁石31と同じ外観を有する。
【0085】
図4を参照して、本実施の形態におけるロータの製造方法では、永久磁石36を製造する工程時、薄板状の磁石ブロック61を準備する。
【0086】
図17を参照して、次に、磁石ブロック61を加工することによって、厚み方向において互いに表裏に配置される第1面41および第2面42と、第1面41および第2面42に連なり、互いに表裏に配置される第3面43および第4面44と、第1面41、第2面42、第3面43および第4面44に連なり、互いに表裏に配置される第5面45および第6面46とを含み、第1面41および第2面42の平面視が平行四辺形となり、第3面43および第4面44が互いに平行となり、第5面45および第6面46が、第3面43から第4面44に向けて平面状に延在し、互いに平行となる形状を、磁石ブロック61に形成する。具体的には、実施の形態1における分割体接合ブロック62の加工に倣って、磁石ブロック61の加工を実施する。
【0087】
次に、磁石ブロック61の表面に塗装処理を行なうことにより、
図17中の永久磁石36を得る。
【0088】
このように構成された、この発明の実施の形態2におけるロータおよびロータの製造方法によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0089】
(実施の形態3)
図18は、この発明の実施の形態3におけるロータを構成する永久磁石を示す図である。
図18は、実施の形態1における
図3に対応する。本実施の形態におけるロータおよびロータの製造方法は、実施の形態1におけるロータ10およびロータの製造方法と比較して、基本的には、同様の構造および工程を備える。以下、重複する構造および工程については、その説明を繰り返さない。
【0090】
図18を参照して、本実施の形態におけるロータは、実施の形態1における永久磁石31に替えて、永久磁石37を有する。
【0091】
第5面45および第6面46は、第3面43から第4面44に向けて平面状に延在している。第5面45および第6面46は、互いに非平行である。第5面45および第6面46は、永久磁石37を中心軸101の半径方向外側から見た場合に、中心軸101に対して斜め方向に傾いている。第5面45および第6面46は、永久磁石37を中心軸101の軸方向から見た場合に、中心軸101の半径方向に沿って設けられている。第5面45および第6面46は、中心軸101の内周側から外周側に向かうほど、中心軸101および仮想直線102を含む仮想平面から遠ざかるように設けられている。稜線51および稜線52は、互いに平行であり、稜線53および稜線54は、互いに平行である。稜線51および稜線52と、稜線53および稜線54とは、互いに非平行である。
【0092】
本実施の形態におけるロータの製造方法では、実施の形態1における分割体接合ブロック62の加工時に、第5面45および第6面46が、第3面43から第4面44に向けて平面状に延在し、かつ、中心軸101の半径方向に沿って延在するスキュー形状を、分割体接合ブロック62に加工する。
【0093】
なお、実施の形態2における永久磁石36に、本実施の形態における第5面45および第6面46の形状を適用してもよい。
【0094】
このように構成された、この発明の実施の形態3におけるロータおよびロータの製造方法によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0095】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【解決手段】ロータの製造方法は、ロータコアの軸方向に対して傾いて設けられる複数の永久磁石36を備えるロータの製造方法である。ロータの製造方法は、永久磁石36を製造する工程と、ロータコアの外周上に複数の永久磁石36を設ける工程とを備える。永久磁石36を製造する工程は、第1面41および第2面42の平面視が平行四辺形となり、第3面43および第4面44が互いに平行となり、第5面45および第6面46が、第3面43から第4面44に向けて平面状に延在する形状を、磁石ブロックに形成する工程を含む。ロータコアの外周上に複数の永久磁石36を設ける工程は、隣り合う永久磁石36間において、第5面45および第6面46を互いに向かい合わせとする工程を含む。